説明

ソバスプラウトの溶媒抽出物およびその組成物

【課題】抗炎症作用を有するソバスプラウトの抽出物を提供する。
【解決手段】ソバスプラウトを溶媒で抽出して得られるソバスプラウトの抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年炎症性腸疾患患者数の増大が報告され、様々なタイプの抗炎症剤や抗サイトカイン療法が行われているが、副作用の問題を含め解決すべき問題も多く残されている(非特許文献1)。したがって、副作用の少ない抗炎症剤の開発が求められている。
【0002】
これまでに、培養細胞を使って食品抽出物の抗炎症効果が報告されている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0003】
しかし、ソバスプラウトおよびソバスプラウトの抽出物の抗炎症作用についての報告はない。
【0004】
さらに、これまで食品抽出物の抗炎症効果の報告が培養細胞を用いたものがほとんどであったのに対し、本発明者は、培養細胞を用いた実験に加えさらにマウスを用いた実験においても、ソバスプラウトの抽出物が経口で抗炎症作用を示すことを見出した。
【非特許文献1】綜合臨牀2007.8/Vol.56/No.8, p.2423-2424
【非特許文献2】J.Altern.Compl.Med.2004.10:1009-1013
【非特許文献3】Biochem.Biophys.Res.Commun.2005.327:742-749
【非特許文献4】Planta Med.2006.72:697-702
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗炎症作用を有するソバスプラウトの抽出物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ソバスプラウトの抽出物が抗炎症作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
よって、
(1)本発明は、ソバスプラウトを溶媒で抽出して得られるソバスプラウトの抽出物に関する。
(2)本発明は、溶媒が、水性溶媒、有機溶媒またはその混合溶媒である、上記(1)に記載の抽出物に関する。
(3)本発明は、有機溶媒が、アルコールである、上記(2)記載の抽出物に関する。
(4)本発明は、抗炎症作用のための、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の抽出物に関する。
(5)本発明は、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の抽出物を含有する組成物に関する。
(6)本発明は、食料である、上記(5)に記載の組成物に関する。
(7)本発明は、化粧料である、上記(5)に記載の組成物に関する。
(8)本発明は、医薬である、上記(5)に記載の組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
培養細胞及びマウスを用いた経口投与の実験からソバスプラウト抽出物に強い抗炎症作用を持つ物質が含まれることが明らかになった。したがって炎症性の疾患の予防もしくは治療への応用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるソバとは、タデ科(Polygonaceae)ソバ属(Fagopyrum)に属する一年草で、Fagopyrum esculentumを意味する。
【0010】
本発明で用いるスプラウトとは、植物の新芽の総称であるが、根、茎、新芽を含む植物体全体を意味する。好ましくは、子葉(双葉)が開いた状態で、茎と新芽を合わせた長さが5cm〜20cm、より好ましくは5cm〜10cmのものである。スプラウトには、バーティカルスプラウト、カールスプラウト、もやしスプラウト等が挙げられるが、好ましくは、暗室で育て、その後光をあてて育成させたバーティカルスプラウトまたは光をあてて育成させたバーティカルスプラウトである。
【0011】
バーティカルスプラウトの栽培期間における暗期間と明期間の比は、例えば、栽培期間が合計8日間の場合、暗期間が0〜4日間、明期間が8〜4日間である。好ましくは、暗期間が0〜1日間、明期間が8〜7日間である。栽培期間における暗期間と明期間の比が様々であるバーティカルスプラウトの混合物であっても良い。
【0012】
光は、自然光、人工光であってもよい。光の強さはソバの芽が育つ強度であれば限定されないが、好ましくは2000〜25000ルクスである。
【0013】
栽培の温度は、ソバの芽が育つ温度であれば限定されないが、好ましくは20〜35℃、より好ましくは、25〜35℃である。
【0014】
栽培の湿度は、ソバの芽が育つ湿度であれば限定されないが、好ましくは60〜90%、より好ましくは、70〜90%である。
【0015】
抽出に用いるソバスプラウトは、生であっても、乾燥されたものであってもよい。乾燥は、天日乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥であってよい。好ましくは凍結乾燥したソバスプラウトである。また、抽出に用いるソバスプラウトは、細断されていてもされていなくてもよい。
【0016】
本発明で用いる溶媒は、液体であれば限定されないが、水性溶媒、有機溶媒またはそれらの混合溶媒、または超臨界COのような超臨界液体も含む。
【0017】
水性溶媒は、水を含む液体であれば限定されないが、水、緩衝溶液(リン酸緩衝液など)などが挙げられる。これらには、無機塩(NaClなど)、無機酸(HClなど)、無機塩基(NaOHなど)、有機酸(CHCOOHなど)、アミノ酸などが含まれても良い。
【0018】
有機溶媒には、アルコール、クロロホルム、酢酸エチル、エーテル、アセトンなどが挙げられる。
【0019】
アルコールには、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
【0020】
水性溶媒と有機溶媒の混合溶媒中の水性溶媒と有機溶媒の混合比率は、いずれの比率であってもよいが、好ましくは、混合溶媒100容量部中の有機溶媒の量が50〜100容量部、より好ましくは、50〜80容量部である。
【0021】
抽出は、ソバスプラウトに溶媒を加えた後、攪拌または振とうして抽出を行う。
【0022】
抽出における、ソバスプラウトと溶媒の混合比率は、凍結乾燥したソバスプラウト100重量部に対して、溶媒が1000〜10000重量部、好ましくは1000〜5000重量部である。
【0023】
抽出の温度は、10〜40℃、好ましくは15〜25℃である。
【0024】
攪拌または振とうの回転数は、ソバスプラウトと溶媒が接触する回転数であれば特に限定されないが、50〜150rpm、好ましくは80〜120rpmである。
【0025】
攪拌または振とうの時間は、特に限定されないが5〜48時間、好ましくは16〜24時間である。
【0026】
抽出の回数は、特に限定されないが、1回又は2回以上行うことができる。
【0027】
抽出処理後、濾紙又は濾布による濾過又は遠心分離などの分離手段によりソバスプラウトの抽出液を得ることができる。
【0028】
本発明で用いるソバスプラウトの抽出物は、ソバスプラウトの抽出液であってもよい。あるいは、ソバスプラウトの抽出液から溶媒を完全に又は部分的に除去したものであってよい。好ましくは、抽出液を乾燥させた固体、もしくは乾燥させた固体を70容量%エタノール溶液に可溶化した液体である。抽出液の乾燥は、溶媒を蒸発させる方法であれば限定されないが、ロータリーエバポレーターを用いた方法及び/または凍結乾燥を用いた方法により乾燥させることが好ましい。
【0029】
本発明で用いる、抗炎症作用とは、炎症の発生を抑制する作用、および/または、既に起こっている炎症を抑制する作用を意味する。ここで、炎症の発生を抑制する作用とは、リポポリサッカライド(LPS)により誘導される炎症性サイトカイン遺伝子の発現上昇および/または炎症性サイトカインの産生上昇を抑制する作用を意味し、また、既に起こっている炎症を抑制する作用とは、既に発現しているリポポリサッカライド(LPS)により誘導される炎症性サイトカイン遺伝子の発現量および/または既に産生されている炎症性サイトカインの産生量を抑制する作用を意味する。
【0030】
リポポリサッカライド(LPS)による炎症の発生はグラム陰性細菌による敗血症において詳細に研究され(Chest 1991.100 :164-168)、リポポリサッカライド(LPS)抗体を用いることで炎症が抑えられた実験的結果からリポポリサッカライド(LPS)と炎症との関連性が証明されている(J.Immunol.1984.132:2590-2592)。また、リポポリサッカライド(LPS)により発生した炎症は、炎症性肝障害(Hepatology 2001.33 :1441-1450)、関節リウマチ(Scand.J.Immunol.2005.62:117-122)、炎症性腸疾患(J.Immunol.2005.174 :6416-6423)などの炎症性疾患モデルとなっている。
【0031】
そして、本発明で用いる抗炎症作用は、IL−6、IL−8、TNFαからなる群から選択される少なくとも1つの炎症性サイトカンの遺伝子発現量および/または炎症性サイトカインの産生量を測定することで決定できる。
【0032】
炎症性サイトカインの抑制と抗炎症作用との関連性については、炎症に対する炎症性サイトカインをブロックするモノクローナル抗体を用いた実験結果からその関連性が証明されている。
【0033】
IL−8に対するモノクローナル抗体は、肺における急性炎症を顕著に抑制する(Nature 1993.365:654-657)。また、TNFαやIL−6については臨床的にも抗体が応用され、炎症性腸疾患に対する抗TNFα抗体(Gastroenterology 2004.126:1593-1610)や、関節リウマチに対する抗IL−6抗体(Arthritis Rheum.2004.50:1761-1769)が、炎症を治療しすばらしい臨床成績を上げている。
【0034】
よって、IL−6、IL−8、またはTNFα遺伝子の発現量および/またはIL−6、IL−8、またはTNFαの産生量の測定は、炎症の発生を抑制する作用、および/または、既に起こっている炎症を抑制する作用を測定する上でよい指標となりうる。したがって、(処理された対象でのIL−6、IL−8、またはTNFα遺伝子の発現量)÷(未処理の対象でのIL−6、IL−8、またはTNFα遺伝子の発現量)×100が、80%〜0%、好ましくは50%〜0%となる場合、および/または、(処理された対象でのIL−6、IL−8、またはTNFαの産生量)÷(未処理の対象でのIL−6、IL−8、またはTNFαの産生量)×100が80%〜0%、好ましくは50%〜0%となる場合を、抗炎症作用があると判断する。
【0035】
また、本願発明には、本発明のソバスプラウトの抽出物を含む組成物が含まれる。組成物は、限定されないが、食品、化粧料、医薬の形態などが挙げられる。
【0036】
本発明のソバスプラウトの抽出物は、それ自体で食品または食品添加物として使用することもできるし、食品の製造のために使用することもできる。特に、本発明のソバスプラウトの抽出物は、抗炎症作用を有するので、抗炎症作用を有する機能性食品の製造に使用することができる。ここで、食品には飲料品も含まれる。また、食品の形態は限定されないが、固体、粉体、溶液、懸濁液、クリーム、ゲル、グミ、シロップなどが挙げられる。
【0037】
また、本発明のソバスプラウトの抽出物は、化粧料の製造のために使用することもできる。特に、本発明のソバスプラウトの抽出物は、抗炎症作用を有するので、炎症を抑制する成分として化粧料に配合することができる。化粧料の形態は限定されないが、パウダー、クリーム、溶液、懸濁液、乳液、ローションなど挙げることができる。
【0038】
また、本発明のソバスプラウトの抽出物は、医薬の製造において使用することもできる。特に、本発明のソバスプラウトの抽出物は、抗炎症作用を有するので、抗炎症剤の製造に使用することができ、炎症性の疾患もしくは障害の予防もしくは治療に使用することができる。
【0039】
炎症性の疾患もしくは障害とは、炎症性肝障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患を意味する。好ましくは、炎症性肝障害である。
【0040】
予防とは、疾患もしくは障害の発症を防ぐことまたは遅らせることを意味する。また、治療とは、既に発症している疾患もしくは障害の進行を抑制したり、または症状を改善もしくは軽減することを意味する。
【0041】
予防もしくは治療は、疾患もしくは障害の予防や治療を必要とする被験者に、治療または予防のために有効な量の本発明のソバスプラウトの抽出物を投与することによって実施することができる。
【0042】
被験者とは、哺乳動物、例えば、ヒト、犬、猫等の愛玩動物、ウシ、ブタ、ニワトリ等の家畜動物であるが、特にヒトであることが好ましい。
【0043】
投与とは、全身投与、局所投与であってよく、全身投与、局所投与は、経皮投与、舌下投与、経口投与、経腸投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈投与、経鼻投与、吸入投与、点眼などいずれの投与形態であってもよい。そのため、医薬の形態は限定されないが、クリーム、舌下剤、マッサジ油、溶液、懸濁液、ローション、軟膏、ゲル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤などを挙げることができる。
【0044】
治療または予防のために有効な量とは、疾患もしくは障害の程度、投与方法によって異なり、炎症を抑制するために有効な量であれば限定されないが、乾燥形態の本発明のソバスプラウトの抽出物の量が、1〜100mg/体重kg・日、好ましくは5〜50mg/体重kg・日である。
【0045】
本発明の組成物には、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等をさらに含んでもよい。慣用の担体、賦形剤、または添加剤等には、溶媒、植物油、鉱油、脂肪油、流動パラフィン、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐剤基剤、浸透促進剤、芳香剤、甘味料、着色料、香料および皮膚保護剤などが挙げられる。
【0046】
本発明について、以下の例によって更に説明する。ただし本発明は以下に示す例に限られたものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0047】
ソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の調製
新得物産株式会社より入手したボタンそば(Fagopyrum esculentum)種子を、連続して4日間暗所で、その後連続して4日間明所(自然光、2000〜25000ルクス)で栽培(合計8日間栽培)してソバスプラウト(5〜15cm)を得た。栽培は、PS(ポリスチレン)のスプラウト用容器(赤松化成工業(株)、SG−150)にウレタンマット(田源(株)、AH)を敷き、洗浄したボタンそば種子を播種し、水道水を2時間毎に散布し、約30℃、湿度約80%で栽培した。
【0048】
得られたスプラウト(根も含むスプラウト全体)は、凍結乾燥後、粉末化する。この乾燥粉末30g(生鮮で約400g相当)と2リットルの70容量%エタノール(残りの30容量%は水である)を、角型透明瓶(NALGENE)に入れて混合する。次に、室温(約22.5℃)で17時間振とう(100rpm/min、振とう培養装置IM41、ヤマト科学(株))を行った後、ADVANTECろ紙(No.2、90mm)を用いた吸引ろ過により70容量%エタノール部分を回収して、ソバスプラウトの70%エタノール抽出液(2リットル)を調製した。
【0049】
次に、このソバスプラウトの70%エタノール抽出液をロータリーエバポレーター(EL131型、柴田科学(株))を用いて、約2時間濃縮(0.2リットル)した後、真空凍結乾燥機(TFD−550−8、(株)宝製作所)で約48時間の凍結乾燥を行った。凍結乾燥物の重量(1.5g)を秤量し、再度70%容量エタノール溶液で溶解し、これをソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)として用いた。
【実施例2】
【0050】
ヒト大腸ガン細胞によるソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の抗炎症効果
ヒト大腸ガン細胞(CoLoTC細胞(RCB1984);理研細胞バンクより購入)を用いてソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の抗炎症効果を、LPS刺激による炎症性サイトカインであるIL−8の産生および遺伝子発現を測定することにより決定した。
【0051】
CoLoTC細胞は10%牛胎仔血清(Biological Industries)を含む培養液{Dulbecco's modified Eagle's medium (Sigma)}を用いて5%CO、37℃で培養した。
【0052】
抗炎症効果の実験ではCoLoTC細胞(106 cells/well)を6−well培養プレート(BD Falcon)で培養し、4時間後培養液中にLPS(L2880, Sigma)を濃度100ng/mlになるように添加して細胞を刺激した。また同時にExtBS(100mg/ml、実施例1で得られた凍結乾燥物を70%容量エタノールに溶解して調製した)を培養液の100分の1量添加し、対象群にも同量の70%容量エタノールを加え、培養した。16時間培養後、上清を回収し、培養液中のインターロイキン−8(IL−8)産生量をヒトIL−8 ELISAキット(R&D Systems)を用いキットの指示書に従って測定した。結果は、独立した3つの実験結果の平均±SDで図1Bに示す。
【0053】
また、細胞はPhosphate-buffered saline(PBS, Sigma)により洗浄した後、セルスクレーパー(住友ベークライト)を用いて回収した。回収した細胞からRNAiso(TaKaRa BIO)を用いてtotal RNAを調製した。なお、このRNAisoは、グアニジンイソチオシアン酸塩とフェノールなどを含むtotal RNA抽出溶液(Anal.Biochem.1990.188:338-343)であるが、公知の他のtotal RNA抽出方法を用いてもよい。
【0054】
細胞にRNAiso 500μlを加え、ピペッティングにより懸濁し、室温で5分間放置する。次に100μlのクロロホルムを加え強く振って混合する。室温で5分間放置した後、インバータマイクロ冷却遠心機(1720、(株)久保田製作所)を用いて12,000xg、4℃、15分間遠心し、上清150μlを別のチューブに移し、同量のイソプロパノールを加えて混合し、室温で10分間放置する。これをインバータマイクロ冷却遠心機により12,000xg、4℃、10分間遠心し、沈殿を得る。これを500μlの70%容量エタノール溶液を加えて洗浄し、12,000xg、4℃、5分間遠心して沈殿を得、乾燥後30μlのRNA water(TaKaRa BIO)に溶解し、RNAサンプルとした。
【0055】
260nmでの吸光度によりRNA濃度を0.25mg/mlに調製し、TaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0(TaKaRa BIO)を用いて以下の記載するようにRT−PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)を行った。なお、RT−PCRは、TaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0(TaKaRa BIO)以外の他の市販のキットを用いても実施できる。
【0056】
サンプルRNA 25μg/mlを含む逆転写反応溶液(5 mM MgCl2, 1x RT buffer, 1 mM dNTP mix, 1 U/μl RNase inhibitor, 0.25 U/μl AMV reverse transcriptase XL, 2.5 μM random 9 mers)を調製し、サーマルサイクラー(2720、アプライドバイオシステムズ)にセットし、30℃で10分、42℃で15分、99℃で5分、5℃で5分の反応を行った。反応の終わった逆転写反応溶液をIL−8とコントール遺伝子増幅用とに分注し、逆転写反応溶液1容量に対し、4倍量のPCR反応液(1x PCR buffer, 25 mU/μl TaKaRa Ex Taq(登録商標) HS, 0.2μMフォーワードプライマーおよびリバースプライマー)を加えてサーマルサイクラーにセットし、94℃で2分反応後、PCR反応(94℃で30秒、58℃で30秒、72℃で30秒)を30サイクル行い、最後に72℃で1分反応後、4℃で保存した。
【0057】
IL−8の増幅には、IL−8用フォーワードプライマー(配列番号1):5'-acatgacttccaagctgg-3'とIL−8用リバースプライマー(配列番号2):5'-gaagtttcactggcatcttc-3')を用いた。コントロール遺伝子としてのグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の増幅には、GAPDH用フォーワードプライマー(配列番号3):5'-accacagtccatgccatca-3'とGAPDH用リバースプライマー(配列番号4):5'-caccctgttgctgtagcc-3')を用いた。増幅産物はミューピッド2プラス((株)アドバンス)を用いた2%アガロースゲル上で電気泳動された後、エチジウムブロマイドで染色された。その後、トランスイルミネーター(デンシトグラフAB−1500、アトー株式会社)上で染色されたDNAのバンドをポラロイド撮影し、目視で増幅の比較を行った。結果を図1Aに示す。
【0058】
ソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の細胞に対する毒性はトリパンブルーを用いた染色により、生細胞と死細胞を計数する方法で行った。細胞は抗炎症効果実験と同一の方法で処理し、処理後16時間後に細胞を回収し、PBSで細胞を懸濁し、同量のトリパンブルー溶液(Sigma)を添加して5分後に顕微鏡下で計数した。その結果を図1Cに示す。
【0059】
ヒト大腸ガン細胞を用いた実験結果からExtBSには、LPS刺激による炎症性サイトカインIL−8の遺伝子発現を抑制する作用が確認された(図1A)。また、IL−8の産生量についても抑制する作用が確認された(図1B)。すなわち、コントロール細胞の培養液中IL−8は62.1±6.4pg/mlであったが、LPS刺激によりIL−8は168.8±16.5pg/mlに上昇し、ExtBSの添加によりIL−8は110.8±22.0pg/mlと顕著に抑制された。
【0060】
また、このとき細胞毒性はいずれの処理によっても認められなかった(図1C)。これより、LPS刺激による炎症の発生を、ソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)が抑制する可能性がin vitroで示された。
【実施例3】
【0061】
LPS刺激によるIL−8遺伝子発現に対するポリフェノールおよびソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の効果比較
ソバにはルチン等ポリフェノールが含まれていることが知られており、HPLC分析によりExtBSにも6種類のポリフェノール(ビテキシン、イソビテキシン、オリエンチン、イソオリエンチン、クロロゲン酸、ルチン)が存在し、総量で約50mg/g含有することを確認した。
【0062】
そこで、含有する6種類を含む7種類のポリフェノール{ビテキシン(V)、イソビテキシン(IV)、オリエンチン(O)、イソオリエンチン(IO)、ケラシアニン(K)、クロロゲン酸(CA)それにルチン(R);これらのポリフェノールはすべてフナコシより購入}についてLPS刺激により誘導されるIL−8遺伝子発現に対する影響をExtBSと比較した。
【0063】
個々のポリフェノールとExtBSとの比較
ExtBSは培養液中に1mg/mlの濃度で添加していることから、1mg/mlのExtBS中には約50μg/mlポリフェノールが含まれると考えられる。そこで、それぞれの標準品をその2倍に相当する100μg/mlの濃度で添加し、その効果を観察した。IL−8遺伝子発現の測定は、実施例2と同様に行った。
【0064】
結果を図2Aに示す。ルチンで弱い抗炎症効果が認められたが、ExtBSのそれより著しく弱かった。
【0065】
6種類のポリフェノールの混合物とExtBSとの比較
ExtBSは培養液中に1mg/mlの濃度で添加していることから、1mg/mlのExtBS中には約50μg/mlの濃度でポリフェノールが含まれると考えられる。そこで、ExtBSに含まれるポリフェノールと同じ組成と濃度のポリフェノール標準品からなる約50μg/mlのポリフェノール混合溶液(2.0μg/mlクロロゲン酸、6.4μg/mlオリエンチン、12.6μg/mlイソオリエンチン、10.8μg/mlビテキシン、8.3μg/mlイソビテキシン、9.4μg/mlルチン)を調製し、培養液に添加し、その効果を観察した。IL−8遺伝子発現の測定は、実施例1と同様に行った。
【0066】
結果を図2Bに示す。ExtBSに含まれるポリフェノールと同じ組成のポリフェノール標準品の混合溶液ではIL−8遺伝子発現の抑制は認められなかった。
【0067】
以上の結果より、ExtBSの抗炎症作用は、ExtBS中のポリフェノールの作用だけでは説明できないことが明らかとなった。
【実施例4】
【0068】
マウスを用いた抗炎症効果(経口投与)
マウスはC57Blcメスマウス8週齢(日本チャールズリバー)を購入し、4日間の飼育後、一晩絶食させ、1群3匹で実験を行った。20mg/ml LPSと100mg/ml ExtBSの70容量%エタノールもしくは70容量%エタノールを等量混和し、マウスあたり0.2mlを強制経口投与した。対照群には35容量%エタノールを0.2ml投与した。投与後4時間で採血し、脾臓と肝臓を摘出した。抗炎症効果は、LPS刺激により誘導される炎症性サイトカインであるIL−6とTNF−αの産生および遺伝子発現を測定することにより決定した。
【0069】
脾臓と肝臓については、それぞれの臓器約0.2gに500μlのRNAiso(TaKaRa BIO)を加え、マイクロホモジナイザーヒスコトロン((株)マイクロテック・ニチオン)を用いてホモジナイズし、その後は実施例2と同様の方法でtotal RNAを調製した。260nmでの吸光度によりRNA濃度を0.25mg/mlに調製し、TaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.3.0 (TaKaRa BIO)を用いて実施例2と同様の方法でRT−PCRを行った。ただし、プライマーは次のIL−6とTNF−α用プライマーを用いた。
【0070】
IL−6とTNF−αの増幅にはそれぞれIL−6用プライマーセット(IL−6用フォーワードプライマー(配列番号5):5'-gagacttcacagaggatac-3'およびIL−6用リバースプライマー(配列番号6):5'-tgtactccaggtagctatg-3')とTNF−α用プライマーセット(TNF−α用フォーワードプライマー(配列番号7):5'-gctcttctgtctactgaac-3'と用リバースプライマー(配列番号8):5'-cttgtcccttgaagagaac-3')を用いて行った。GAPDH用プライマーセットは実施例2と同一のもの(配列番号3と4)を使用した。
【0071】
結果を図3に示す。脾臓、肝臓ともIL−6やTNF−αといった炎症性サイトカイン遺伝子の発現はLPS投与により顕著に上昇するが、その上昇はExtBSの同時投与により抑制され、ほぼコントロールと同レベルであった。
【0072】
また、血液は室温で凝固させ、遠心により血清を分離した。血清中のIL−6とTNF−αの量をマウスIL−6 ELISAキット及びマウスTNF−αELISAキット(R&D Systems)を用いて測定した。
【0073】
結果は1群4ないし5匹のマウス血清サンプルの測定結果の平均±SDで図4に示す。LPS投与により血清中のIL−6量は3.6±1.3pg/mlから235.2±86.0pg/mlに、またTNF−α量は6.3±3.8pg/mlから106.7±37.4pg/mlに上昇するが、ExtBSの同時投与で、IL−6は28.8±16.3pg/ml、TNF−aは23.7±11.7pg/mlとその上昇を有意に低下させた。
【0074】
これより、LPS刺激による炎症の発生を、ソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)が、in vivoにおいても抑制する可能性が示された。
【実施例5】
【0075】
マウスを用いた抗炎症効果(腹腔内投与)
次に投与方法を腹腔内投与に変えてExtBSの効果を検討した(図6)。腹腔内投与ではLPSに対する感受性が高まることから投与量は強制経口投与の2000分の1量、すなわちマウスあたり1μg LPSで刺激した。ExtBSは強制経口投与の場合と同一割合で希釈したものとその100倍量との2種類の濃度を以下のように調製した。10μg/ml LPS−PBS溶液と{PBSと0.5または50mg/ml ExtBSの70%エタノールとの混合液(9:1)}とを等量混和し、これらをマウスあたり0.2mlを腹腔内投与した。対照群には3.5%エタノール−PBS溶液を0.2ml投与した。
【0076】
マウスはC57Blcメスマウス8週齢(日本チャールズリバー)を4日間の飼育後、一晩絶食させ、1群3匹で実験を行った。投与後4時間で脾臓と肝臓を摘出し、実施例4の方法で脾臓と肝臓からtotal RNAを調製し、RT−PCRによりIL−6とTNF−αの発現量を比較した。アガロースゲル電気泳動画像をスキャナーGT-X750(エプソン)で取り込み、画像読み取りソフトScion Image(Scion Corporation)によりDNAバンドを数値化し、GAPDHのバンドで補正して比較した(図5)。
【0077】
図5からも明らかなようにExtBSは腹腔内投与ではLPSによる刺激を抑えることができないばかりか、脾臓においてはむしろIL−6の発現量を顕著に上昇させることが明らかとなった。これよりExtBSがLPSとの非特異的結合によりLPSのLPS受容体(TLR4)への結合を阻害して、炎症の発生を抑制しているのではないことがわかった。
【0078】
ExtBSの抗炎症作用が、LPSのような炎症を引き起こす物質と非特異的に結合することで炎症の発生を抑制する作用でないことから、ExtBSの炎症発生予防効果は、LPSによる刺激に限らず、広く炎症の発生を予防できると考えられた。
【実施例6】
【0079】
マウスを用いた急性肝障害に対する効果
LPSとガラクトサミン投与による急性肝障害の発生に対する影響を検討した。なお、高濃度のガラクトサミンを投与することにより、肝障害が引き起こされることは古くから良く知られたことであり(Gastroenterology 1978.74:664-671)、また、LPSをガラクトサミンと同時投与することでこの肝障害の発生が顕著になることも、そしてこれがLPSにより産生されたTNFαによるものであることもまた証明されている(Hepatology 1990.12:1187-1191)。
【0080】
マウスは1群10匹を用い、LPSのみ、またはLPS及びExtBSは実施例4と同様に強制経口投与し、同時にそれぞれのマウスの腹腔内に50mg/mlガラクトサミン(和光)PBS溶液を0.2ml投与し、その後の生存率を5日間観察した(図6A)。
【0081】
24時間後の生存率はLPSのみでは60%であったが、同時にExtBSを投与すると生存率は80%に上昇した。これより、ExtBSがLPSとガラクトサミンによる急性肝障害の発生を予防できることが示された(図6A)。
【0082】
また、同様にLPSのみ、またはLPS及びExtBSを強制経口投与し、対照には35%エタノールを投与し、同時にそれぞれのマウスの腹腔内にガラクトサミン(和光)PBS溶液を投与し、24時間後に肝臓を摘出し、へマトキシリン−エオシン(HE)染色した(図6B)。
【0083】
24時間後に摘出した肝臓は1辺約5mmのブロックに裁断し、10%ホルマリン液(和光純薬)で固定した。順じエタノール濃度を上げていくことで脱水し、溶解させたパラフィン(和光純薬)を用いて包埋した。ミクロトームRM2125RT(ライカ)で4μmの切片を調製した後、ヘマトキシリン溶液(和光純薬)とエオシン溶液(和光純薬)を用いて染色した。これを顕微鏡(BX51、オリンパス)下で観察した。図内のバーは100μmを示す(図6B)。
【0084】
組織染色による観察でもLPS刺激により肝臓に炎症が認められたが、ExtBSによりその炎症が抑制されていることも観察された(図6B)。これより、ExtBSがLPSとガラクトサミンによる肝臓における炎症の発生を予防できることが示された。
【実施例7】
【0085】
IL−6とIL−8を高発現する細胞におけるソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の抗炎症効果
HeLa細胞は、炎症性サイトカインであるIL−6もしくはIL−8遺伝子を高発現している細胞である(Cell Biochem.Funct.2004.22:41-44)。そこで、HeLa細胞中のIL−6もしくはIL−8遺伝子発現に対するExtBSの効果を測定した。HeLa細胞には、LPSを添加しないでExtBSのみを添加した。ExtBS添加16時間後に、IL−6もしくはIL−8遺伝子およびコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をそれぞれRT−PCRにより測定し、比較した。IL−6、IL−8、GAPDH遺伝子の発現測定は、実施例2と4と同様に実施した。
【0086】
ヒト頚部癌細胞であるHeLa細胞はIL−6とIL−8を高発現する細胞であるが、ExtBSは、すでに高レベルであるこれらサイトカインの発現を顕著に抑制した、すなわちIL−6では無処理の18.9%に、またIL−8では無処理の37.9%に発現が低下した(図7AおよびB)。
【実施例8】
【0087】
8日間明所のみで栽培したソバスプラウトを用いて、実施例1と同様にExtBSを調製し、実施例2〜7の実験を行ったところ、明所のみで栽培したExtBSにも、実施例1のExtBS(4日間暗所+4日間明所)と同様に強い抗炎症作用が認められた。これより、ソバスプラウトの栽培には、暗期間が無くてもよいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のソバスプラウトの抽出物は、食品、食品添加物、化粧料、医薬の製造に使用することができる。特に、本発明のソバスプラウトの抽出物は、抗炎症作用を有するので炎症性の疾患の予防、治療に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】ヒト大腸ガン細胞(CoLoTC)を用いた抗炎症効果。(A)CoLoTC細胞中の炎症性サイトカインであるIL−8とコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をRT−PCR用いて測定した。増幅産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイドで染色された。LPS:100ng/ml LPS、ExtBS:1mg/ml ExtBS、+:培地中に含まれていること、−:培地中に含まれていないことを表す。(B)培養液中のインターロイキン−8(IL−8)産生量をヒトIL−8 ELISAキット(R&D Systems)を用いて測定した。結果は、独立した3つの実験結果の平均±SDで示す。*は、統計学的に有意であることを示す(p<0.05)。LPS:100ng/ml LPS、ExtBS:1mg/ml ExtBS、+:培地中に含まれていること、−:培地中に含まれていないことを表す。(C)CoLoTC細胞の生存率を示す。生存率は、トリパンブルーを用いた染色により、生細胞と死細胞を計数後、(生細胞数)÷(生細胞数+死細胞数)×100により求めた。結果は、独立した3つの計数結果の平均±SDで示す。LPS:100ng/ml LPS、ExtBS:1mg/ml ExtBS、+:培地中に含まれていること、−:培地中に含まれていないことを表す。
【図2】LPS刺激によるIL−8遺伝子発現に対するポリフェノールおよびソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の効果比較。(A)各ポリフェノール(クロロゲン酸、オリエンチン、イソオリエンチン、ビテキシン、イソビテキシン、ルチン、ケラシアニン)とExtBSとの比較。CoLoTC細胞中の炎症性サイトカインであるIL−8とコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をRT−PCR用いて測定した。増幅産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイドで染色された。+ExtBS:1mg/ml ExtBSが培地中に含まれていること、+V:100μg/mlビテキシンが培地中に含まれていること、+IV:100μg/mlイソビテキシンが培地中に含まれていること、+O:100μg/mlオリエンチンが培地中に含まれていること、+IO:100μg/mlイソオリエンチンが培地中に含まれていること、+K:100μg/mlケラシアニンが培地中に含まれていること、+CA:100μg/mlクロロゲン酸が培地中に含まれていること、+R:100 μg/mlルチンが培地中に含まれていることを表す。+;100ng/ml LPSが培地中に含まれていること、−:LPSが培地中に含まれていないことを表す。(B)6種類のポリフェノールの混合物(+Pmix)とExtBSとの比較。CoLoTC細胞中の炎症性サイトカインであるIL−8とコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をRT−PCR用いて測定した。増幅産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイドで染色された。+Pmix:ポリフェノール混合液(2.0μg/mlクロロゲン酸、6.4μg/mlオリエンチン、12.6μg/mlイソオリエンチン、10.8μg/mlビテキシン、8.3μg/mlイソビテキシン、9.4μg/mlルチン)が培地中に含まれていること、+ExtBS:1 mg/ml ExtBSが培地中に含まれていることを表す。+;100g/ml LPSが培地中に含まれていること、−:LPSが培地中に含まれていないことを表す。
【図3】経口投与マウスにおける抗炎症効果(IL−6とTNF−αの遺伝子発現)。脾臓と肝臓における、炎症性サイトカインであるIL−6とTNF−αとコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をRT−PCR用いて測定した。増幅産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイドで染色された。対照群:35容量%エタノール0.2ml、LPS投与群:10mg/ml LPSの35%容量エタノール溶液0.2ml、LPS+ExtBS投与群:10mg/ml LPS+50mg/ml ExtBSの35容量%エタノール溶液0.2mlをそれぞれマウスに経口投与し、投与4時間後に各臓器を摘出した。
【図4】経口投与マウスにおける抗炎症効果(IL−6とTNF−αの産生)。血清中のIL−6とTNF−αの量をマウスIL−6 ELISAキット及びマウスTNF−αELISAキット(R&D Systems)を用いて測定した。結果は、1群4ないし5匹のマウス血清サンプルの測定結果の平均±SDで示す。*は、統計学的に有意であることを示す(p<0.005)。対照群:35容量%エタノール0.2ml、LPS投与群:10mg/ml LPSの35容量%エタノール溶液0.2ml、LPS+ExtBS投与群:10mg/ml LPS+50mg/ml ExtBSの35容量%エタノール溶液0.2mlをそれぞれマウスに経口投与し、投与4時間後に心臓より採血した。
【図5】腹腔内投与マウスにおける抗炎症効果(IL−6とTNF−αの遺伝子発現)。LPSまたはLPS+ExtBSをマウス(1群3匹)に腹腔内投与し、投与後4時間の脾臓と肝臓におけるIL−6、TNF−α、GAPDHの発現量をRT−PCRにより測定した。IL−6とTNF−αの発現量は、増幅産物のアガロースゲル電気泳動画像をスキャナーで取り込み、Scion ImageによりDNAバンドを数値化し、GAPDHに対する比で表した。結果は、独立した3匹の実験結果の平均±SDで示す。対照群:3.5容量%エタノール−PBS溶液0.2ml、LPS投与群:5μg/ml LPSの3.5容量%エタノール−PBS溶液0.2ml、LPS+ExtBS投与群:5μg/ml LPS+25μg/ml ExtBSの3.5容量%エタノール−PBS溶液0.2ml、LPS+ExtBS(×100)投与群:5μg/ml LPS+2.5mg/ml ExtBSの3.5容量%エタノール−PBS溶液0.2mlをそれぞれマウスに腹腔内投与し、投与4時間後に各臓器を摘出した。
【図6】マウスを用いた急性肝障害に対する効果(経口投与)。(A)生存率:マウスは1群10匹(n=10)を用い、10mg/ml LPSの35容量%エタノール溶液0.2mlまたは10mg/ml LPS+50mg/ml ExtBSの35容量%エタノール溶液0.2mlをマウスに強制経口投与し、同時に腹腔内に50mg/mlガラクトサミン(和光純薬)PBS溶液を投与し、その後の生存率を観察した。(B)組織染色:LPSのみ、またはLPS及びExtBSを強制経口投与し、対照には35容量%エタノールを投与し、同時にそれぞれのマウスの腹腔内にガラクトサミン(和光)PBS溶液を投与した。24時間後に肝臓を摘出し、肝臓をへマトキシリン−エオシン(HE)染色した画像を示す。図内のバーは100μmを示す。
【図7】HeLa細胞のIL−6、IL−8遺伝子発現に対するソバスプラウトのエタノール抽出物(ExtBS)の効果比較。HeLa細胞中の炎症性サイトカインであるIL−6もしくはIL−8遺伝子発現に対するExtBSの効果を測定した。測定は、ExtBS処理16時間後のIL−6もしくはIL−8遺伝子発現とコントロール遺伝子であるグリセロ3リン酸脱水素酵素(GAPDH)の発現をそれぞれRT−PCRにより測定し、比較した。増幅産物は、2%アガロースゲル上で電気泳動され、エチジウムブロマイドで染色された。IL−6とIL−8の発現量は、増幅産物のアガロースゲル電気泳動画像(B)をスキャナーで取り込み、Scion ImageによりDNAバンドを数値化し、GAPDHに対する比で表した(A)。+ExtBS:1mg/ml ExtBSが培地中に含まれていることを表す。−:ExtBSが培地中に含まれていないことを表す。結果は、独立した3回の実験結果の平均±SDで示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソバスプラウトを溶媒で抽出して得られるソバスプラウトの抽出物。
【請求項2】
溶媒が、水性溶媒、有機溶媒またはその混合溶媒である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
有機溶媒が、アルコールである、請求項2に記載の抽出物。
【請求項4】
抗炎症作用のための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抽出物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の抽出物を含有する組成物。
【請求項6】
食料である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
化粧料である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
医薬である、請求項5に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−149572(P2009−149572A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329936(P2007−329936)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【出願人】(596075417)財団法人十勝圏振興機構 (20)
【Fターム(参考)】