説明

ソルダーレジスト樹脂組成物、その製造方法及びその硬化物

【課題】
低反り性、耐溶剤性に優れ、さらに電気絶縁性に優れた先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物、及びその硬化物を提供する。
【解決手段】
(A)一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂からなる樹脂を含有してなる先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物およびその硬化体。
【化1】


式(I)中、複数個のRは、それぞれ独立に、炭素数8〜9のアルキレン基を示し、複数
個のXは、それぞれ独立に、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜20の整数を示し、Yは4価の有機基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物及びこれを用いて得られる電気絶縁性に優れた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の分野においては、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、耐薬品性、及び、耐湿性に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が使用されている。例えば、特開2002−145981号公報、特開2003−198105号公報、特開2003−335944号公報に非含窒素系極性溶媒に可溶であり、低反り性及び柔軟性を有するポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が開示されている。これらのポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂は封止材との密着性、耐溶剤性、耐薬品性(耐ハンダフラックス性)、耐湿性等の試験ではよい成績を示している。
【0003】
しかし、近年、電子部品配線のファインピッチ化が進み、特にフレキシブル基盤の先スズメッキ用ソルダーレジストに関しては、従来の製品では被膜の電気絶縁性の信頼性に欠けるという問題が生じている。ここで先スズメッキとは、基板の酸化防止性能の向上あるいはソルダーレジストと基板との密着性改善のために基板に形成された配線パターンにソルダーレジスト層を形成する前に予めスズメッキ加工を施し、その後ソルダーレジストを塗工することを意味している。
【特許文献1】特開2002−145981号公報
【特許文献2】特開2003−198105号公報
【特許文献3】特開2003−335944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来技術の問題点を解消し、低反り性、耐溶剤性に優れ、さらに電気絶縁性に優れた先スズメッキ用のソルダーレジストの製造を可能にする樹脂組成物、及びそれを用いた硬化物の提供をその目的とする。
【0005】
さらに、本発明は上記のような樹脂組成物を製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、先スズメッキ用のソルダーレジスト被膜の親水性と疎水性のバランスが電気絶縁性に影響を及ぼすこと、即ち、使用する樹脂原料の炭素数などに最適値があることを見いだし、この知見に基づき、従来の特性に加えて、電気絶縁性に優れたソルダーレジストを得ることができる先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物、及びそれを用いた硬化物を見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物は、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂を含有してなることを特徴としている。
【0008】
【化3】

【0009】
上記式(I)において、複数個のRは、それぞれ独立に、分岐しても良い炭素数8〜9のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜20の整数を示し、Yは4価の有機基を示す。
【0010】
また、本発明の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法は、(a)酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸、(b)一般式(II)で表されるジイソシアネート及び(c)ポリイソシアネート化合物を反応させて前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂を製造し、これを用いることを特徴としている。
【0011】
【化4】

【0012】
上記式(II)中、複数個のRは、それぞれ独立に、分岐しても良い炭素数8〜10のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜20の整数を示す。
【0013】
さらに本発明の先メッキ用ソルダーレジスト組成物の硬化体は、上記の樹脂組成物を硬化してなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の先スズメッキ用ソルダーレジスト組成物を用いれば、従来の特性に加えて、電気絶縁性に優れた先スズメッキ用ソルダーレジスト硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明(I)の樹脂組成物は、前記のような(A)成分のポリイミド樹脂を含有する。
(A)成分のポリイミド樹脂は、好ましくは(a)酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸及び(b)一般式(II)で表されるジイソシアネートを必須成分として反応させることにより得られる。前記一般式(I)において、Yは4価の有機基であるが、一般にイソシアネート化合物やアミン化合物と反応してイミド構造を形成する4価のテトラカルボン酸二無水物の残基である。
【0016】
本発明における(A)成分のポリイミド樹脂の製造に(a)成分として用いられる酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸としては、特に制限はないが、例えば、一般式(III)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、Yは
【0019】
【化6】

【0020】
から選ばれた4価の基を示す。)で表されるテトラカルボン酸二無水物が使用される。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記のテトラカルボン酸二無水物の他に必要に応じて、脂肪族ジカルボン酸(例
:コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、 デカ
ン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(例:イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)、酸無水物基を有する3価のトリカルボン酸(例:トリメリット酸無水物、トリメリット酸無水物モノエステル等)を使用することができる。
【0021】
本発明において(b)成分として用いる前記一般式(II)で表されるジイソシアネー
トは、例えば、一般式(IV)で表されるカーボネートジオール類
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、複数個のRはそれぞれ独立に分岐しても良い炭素数8〜9のアルキレン基を示し、mは、2〜20の整数である。)と、
【0024】
一般式(V)で表されるジイソシアネート類
OCN−X−NCO (V)
(式中、Xは、炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基等の好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基(これはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基を置換基として有していてもよい)を示す。)とを無溶媒あるいは有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0025】
上記の一般式(IV)で表されるカーボネートジオール類としては、例えば、株式会社クラレ製の商品名クラレポリオールC−1015N、C−1065N、C−2015N,C−2065Nとして市販されているものが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
また、上記一般式(V)で表されるジイソシアネート類としては例えば、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジエチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメトキシジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4′−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0027】
上記の一般式(V)で表されるカーボネートジオール類と一般式(V)で表されるジイソシアネート類との配合量は、水酸基数とイソシアネート基数との比率が、イソシアネー
ト基/水酸基=1.01以上になるようにすることが好ましい。
【0028】
反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件などにより適宜選択することができる。
【0029】
このようにして得られる(b)成分のジイソシアネートの数平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、1,200〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均分子量が1,000未満であると、反り性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、ジイソシアネートの反応性が低下し、ポリイミド樹脂化、又は、ポリアミドイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。
【0030】
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
本発明においては、さらに(c)成分として上記(b)成分以外のポリイソシアネート化合物を用いることが、耐熱性の点で好ましい。このようなポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、例えば、(b)成分で用いられる一般式(VI)で表されるジイソシアネート類又は3価以上のポリイソシアネート類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
(c)成分のポリイソシアネート化合物としては、その総量の50〜100重量 %が
芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面などのバランスを考慮すれば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、トリレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0032】
本発明における(b)成分の一般式(II)で表されるジイソシアネートと(c)成分のポリイソシアネート化合物の配合割合は、(b)成分/(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。この当量比が0.1/0.9未満では、低弾性率化できず、反り性及び密着性が低下する傾向があり、0.9/0.1を超えると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向がある。
【0033】
また、(a)成分の酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸、及び、酸無水物を有する3価の芳香族ポリカルボン酸の配合割合は、(b)成分と(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分の酸無水物基とカルボン酸基の総数の比が0.6〜1.4であることが好ましく、更に0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2である。この比が0.6未満又は1.4を超えると、樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0034】
本発明に用いられる樹脂の製造法における反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。上記非含窒素系極性溶媒としてはエーテル系溶媒、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなど;含硫黄系溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなど;エステル系溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブなど;ケトン系溶媒、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなど;芳香族炭化水素系媒、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが
好ましい。合成後、そのままペーストの溶媒として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンもしくは酢酸セロソルブが好ましい。
【0035】
溶媒の使用量は、生成する樹脂の0.8〜5.0倍(重量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0036】
このようにして得られた樹脂の数平均分子量は、4,000〜40,000であることが好ましく、5,000〜38,000であることがより好ましく、6,000〜36,000であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満であると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向があり、40,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解しにくくなり、合成中に不溶化しやすい。また、作業性に劣る傾向がある。
【0037】
また、合成終了後に樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等のブロック剤でブロックすることもできる。
本発明に用いられる(B)成分のエポキシ樹脂としては、例えば、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成(株)製の商品名YDF−170等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート152、154、日本化薬(株)製の商品名EPPN−201、ダウケミカル社製の商品名DEN−438等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製のEOCN−125S、103S、104S等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名Epon1031S、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイト0163、ナガセ化成(株)製の商品名デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−311等の多官能エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート604、東都化成(株)製の商品名YH−434、三菱ガス化学(株)製の商品名TETRAD−X、TETRAD−C、日本化薬(株)製の商品名GAN、住友化学(株)製の商品名ELM−12等のアミン型エポキシ樹脂、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイトPT810等の複素環含有エポキシ樹脂、UCC社製のERL4234、4299、4221、4206等の脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ樹脂のうち、1分子中にエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。本発明で用いられる(B)成分のエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。このようなエポキシ化合物は、樹脂全量に対して0〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物としては、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等がある。また、メチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物を使用することができる。
【0038】
本発明における(B)成分のエポキシ樹脂の使用量は、(A)成分及び(A’)成分の樹脂100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、
さらに好ましくは3〜40重量部とされる。エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満では、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50重量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
【0039】
エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を予め樹脂に含まれる溶媒と同一の溶媒に溶解してから添加してもよく、また、直接樹脂に添加してもよい。
本発明の樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、必要に応じて、有機又は無機のフィラー類、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、硬化促進剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤を添加することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、フレキシブル基板分野の先スズメッキ用ソルダーレジスト層に使用できる。
本発明の樹脂組成物は、前記した(b)成分のジイソシアネートを用いて得られる樹脂を用いること又はさらにエポキシ樹脂を用いることにより所期の目的の効果を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
〔実施例1〕
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、クラレポリオールC−2015N(株式会社クラレ製ポリカーボネートジオールの商品名、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=15:85)1000.0g(0.50モル)及びT−80(三井武田ケミカル株式会社製トリレンジイソシアネートの商品名、原料ジイソシアネートモル比:2,4−トリレンジイソシアネート:2,6−トリレンジイソシアネート=80:20))176.0g(1.01モル)と、γ−ブチロラクトン1000.0gを仕込み、窒素を導入し、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、(b)成分としてのジイソシアネート[一般式(III)において、分子量分布がないと仮定して仕込み比から計算すると、Rの15%がノナメチレン基、85%の2位がメチル化されたオクタメチレン基を示し、Xの80%が2,4−トリレン基、20%が2,6−トリレン基を示し、m=10、n=1であるジイソシアネート]を得た。更に、この反応液に(a)成分として3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物310.2g(1.00モル)、(c)成分としてT−80 87.2g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン1230.0gを仕込み、160℃まで昇温した後、5時間反応させて、前記一般式(I)で表される繰り返し単位[一般式(I)において、分子量分布がないと仮定して仕込み比から計算すると、Rの65%がノナメチレン基、35%が2位がメチル化されたオクタメチレン基を示し、Xの80%が2,4−トリレン基、20%が2,6−トリレン基を示し、m=10、n=1、Yがジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトライル基である繰り返し単位]を有する、粘度300Pa・s、数平均分子量が14,000、不揮発分40重量%のポリイミド樹脂溶液を得た。なお、(b)成分/(c)成分のモル比は、0.5/0.5である。得られたポリイミド樹脂溶液400gにアエロジルR974(日本アエロジル株式会社製シリカ微粒子の商品名、1次粒子平均径12nm、表面積170m2/g)8.0gを加え、さらに、γ−ブチロラクトンで希釈して粘度調整後、粗
混練し、次いで三本ロールミル((株)小平製作所製 型式,RIII−1RM−2)を用い
て3回混練を繰り返して本混連を行い、均一にシリカ粒子が分散したポリイミド樹脂ペーストを得た。さらに、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度55Pa・s、不揮発分30重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1で得られたポリイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434(東都化成(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加えて混合し、粘度58Pa・s、不揮発分32重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0043】
〔実施例3〕
実施例2において、YH−434、10重量部の代わりに、エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約189、エポキシ基2個/分子)10重量部を用いた以外は、実施例2と全く同様の操作を行い、粘度54Pa・s、不揮発分32重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0044】
〔比較例1〕
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、ETERNACOLL UH−200(宇部興産株式会社製 1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及びT−80(三井武田ケミカル株式会社製トリレンジイソシアネートの商品名、原料ジイソシアネートモル比:2,4−トリレンジイソシアネート:2,6−トリレンジイソシアネート=80:20))176.0g(1.01モル)と、γ−ブチロラクトン1000.0gを仕込み、窒素を導入し、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、(b)成分としてのジイソシアネート[一般式(III)において、Rがすべてヘキサメチレン基を示し、Xの80%が2,4−トリレン基、20%が2,6−トリレン基を示し、m=13、n=1であるジイソシアネート]を得た。更に、この反応液に(a)成分として3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物310.2g(1.00モル)、(c)成分としてT−80 87.2g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン1230.0gを仕込み、160℃まで昇温した後、5時間反応させて、前記一般式(I)で表される繰り返し単位[一般式(I)において、Rがすべてヘキサメチレン基を示し、Xの80%が2,4−トリレン基、20%が2,6−トリレン基を示し、m=10、n=1、Yがジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトライル基である繰り返し単位]を有する、粘度280Pa・s、数平均分子量が13,000、不揮発分40重量%のポリイミド樹脂溶液を得た。なお、(b)成分/(c)成分のモル比は、0.5/0.5である。
【0045】
得られたポリイミド樹脂溶液400gにアエロジルR974(日本アエロジル株式会社製シリカ微粒子の商品名、1次粒子平均径12nm、表面積170m2/g)8.0gを
加え、さらに、γ−ブチロラクトンで希釈して粘度調整後、粗混練し、次いで三本ロールミル((株)小平製作所製 型式,RIII−1RM−2)を用いて3回混練を繰り返して本
混連を行い、均一にシリカ粒子が分散したポリイミド樹脂ペーストを得た。さらに、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度55Pa・s、不揮発分30重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0046】
〔比較例2〕
比較例1で得られたポリイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434(東都化成(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度57Pa・s、不揮発分34重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0047】
〔比較例3〕
比較例2において、YH−434、10重量部の代わりに、エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約189、エポキシ基2個/分子)10重量部を用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行い
、粘度56Pa・s、不揮発分34重量%のポリイミド樹脂組成物を得た。
【0048】
上記の実施例2,3、及び比較例2,3で得られたポリイミド樹脂組成物の物性を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0049】
(1)反り性
厚さ25μmのポリイミドフィルム上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、80℃で30分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で90分加熱後、いったん冷却し、120℃120分、引き続き150℃30分加熱した。この硬化条件は先スズメッキ工程を想定したものである。得られた塗膜厚さは10〜15μmであった。熱硬化後のフィルムを直径50mmの円形に切り出し、印刷面を上にして置いて下記基準で評価した。
○:最大の反り高さが5mm未満
×:最大の反り高さが5mm以上。
【0050】
(2)耐溶剤性
厚さ12μmの電解銅箔の粗面上に形成した無電解スズメッキ(使用メッキ液 TINPOSIT LT−34、ロームアンドハース社製)の粗面上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、80℃で30分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で90分加熱後、いったん冷却し、120℃120分、引き続き150℃30分加熱した。この硬化条件は先スズメッキ工程を想定したものである。得られた塗膜厚さは10〜15μmであった。この塗膜を室温でアセトン中に1時間塗膜を浸漬させ、塗膜外観の変化について下記基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観に変化あり
×:全面外観に変化あり
【0051】
(3)電気絶縁性(高温高湿バイアステスト)
東洋メタライジング株式会社製基板(厚さ25μmのポリイミドフィルム、厚さ8μmの銅箔)のを用いて櫛型パターン(ライン(μm)/スペース(μm)=15/15)を作成し、その上に、得られたポリイミド樹脂組成物を塗布し、80℃で30分間乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で90分加熱後、いったん冷却し、120℃120分、引き続き150℃30分加熱した。この硬化条件は、先スズを想定したものである。得られた塗膜の厚さは10〜15μmであった。その基板を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において直流60Vのバイアス電圧を印加して1000時間放置し、絶縁抵抗が10の6乗未満となる時間数で電気絶縁性を評価した。
【0052】
(4)電気絶縁性(高温高湿ストレス加速試験)
上記(3)の電気絶縁性(高温高湿バイアステスト)と同様の方法で熱硬化塗膜を作成し、その基盤を120℃、相対湿度85%の雰囲気下において直流60Vのバイアス電圧を印加して200時間放置し、絶縁抵抗値(Ω)が10の6乗未満となる時間数で電気絶縁性を評価した。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物は非含窒素系極性溶媒に可溶で低温硬化性を有し、それからなる硬化物は低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性及び耐薬品性に優れ、しかも、耐熱性、電気特性、絶縁信頼性、及び経済性に優れるものである。本発明の樹脂組成物を用いて硬化被膜を形成して得られる各種電気部品、電子部品等の先スズメッキ用ソルダーレジストは、信頼性に優れるものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂;
【化1】

(上記式(I)において、複数個のRは、それぞれ独立に、分岐しても良い炭素数8〜9のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に、炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜20の整数を示し、Yは4価の有機基を示す。)を含有してなることを特徴とする先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂の数平均分子量が4,000〜40,000の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項3】
前記複数個のRがそれぞれ独立に1,9−ノニレン基、もしくは2−メチル−1,8−オクチレン基である請求項1に記載の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項4】
前記複数個のXが、それぞれ独立に、トリレン基又はジフェニルメタン−4,4’−イル基であることを特徴とする請求項3に記載の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項5】
有機溶媒として非含窒素系極性溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分の樹脂100重量部及び(B)エポキシ樹脂1〜50重量部を含有してなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物。
【請求項7】
(a)酸無水物基を有する4価のポリカルボン酸、
(b)一般式(II)で表されるジイソシアネート;
【化2】

(式中、複数個のRは、それぞれ独立に分岐しても良い炭素数8〜10のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数2〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す。)及び
(c)ポリイソシアネート化合物を反応させた前記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する樹脂を用いることを特徴とする先スズメッキ用ソルダーレジスト樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(b)成分及び前記(c)成分の配合割合[(b)成分/(c)成分]が(b)成分及び(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1であり、かつ(b)及び(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分の酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6の何れかに記載の樹脂組成物を硬化してなる先スズメッキ用ソルダーレジスト硬化物。

【公開番号】特開2007−70528(P2007−70528A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260752(P2005−260752)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】