説明

ソレノイド及びシート給送装置

【課題】装着時の向きに応じた付勢力や磁力の調整を不要とし、誤投入の防止、管理コストの削減を図ることができるソレノイドを提供する。
【解決手段】フレーム部材36と、フレーム部材36に対し回転可能に支持され、かつ伝達部材に係止可能に構成されたアマーチュア30と、アマーチュア30を伝達部材に係止せしめる一方の回転方向に付勢する付勢部材33と、アマーチュア30の伝達部材との係止状態を解除せしめ、かつアマーチュア30がフレーム部材36に設けられた当接部に突き当たるまで、アマーチュア30を付勢部材33の付勢力に抗して他方の回転方向に回転させる磁力を通電により発生する磁力発生部材34と、を備えるソレノイド43において、アマーチュア30がフレーム部材36に支持される支点32の位置が、アマーチュア30の重心と略一致することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置に用いられるソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置及び画像読取装置にはシート給送装置が備えられている。図7〜図9を参照して、従来例に係るシート給送装置について説明する。図7は、シート給送装置の一例を示す概略図である。図8は、ソレノイドの動作を説明する概略図であり、(a)はソレノイド非動作状態、(b)はソレノイド動作状態を示す概略図である。図9は、ソレノイドの配置例を示す概略図であり、(a)はソレノイドを下側に配置した概略図、(b)はソレノイドを上側に配置した概略図である。
図7において、シート給送装置は、図示しないモータ等の駆動源に接続された駆動歯車38と、回転軸40に固定され、駆動歯車38と噛合可能な位置に設けられたクラッチ機構が備わっている欠歯歯車(被係止部材)39を備えている。図8(a)に示すように、欠歯歯車39には、ソレノイド52に備えられているアマーチュア53の係止部31で係止される係止爪44が設けられており、駆動歯車38と噛合わない位置で保持される。アマーチュア53は、支点32においてフレーム36に取り付けられ、バネ33の付勢力により矢印Fの方向に付勢されている。ソレノイド52は、電流を流すことにより磁気を発生するコイル35と、コイル35により発生した磁気を効率よく通すフレーム36と、磁力を発生する固定鉄心34から構成されている。
シートSは中板42に積載されており、中板42の両端には中板昇降用カム41と摺動するように中板突起部46が設けられている。給紙ローラ17と中板昇降用カム41は回転軸40に係合されており、回転軸40の回転と一体となって回転する。
ソレノイド52に電流が流れると、コイル35に発生した磁気により、固定鉄心34に磁力が生まれ、図8(b)に示すように、アマーチュア53は固定鉄心34に引き寄せられる。アマーチュア53が固定鉄心34に引き付けられることで、アマーチュア53の係止部31と欠歯歯車39の係止爪44との係止が解かれ、欠歯歯車39がWの方向に回転し、駆動歯車38と噛合う。欠歯歯車39は駆動歯車38により回転され、欠歯歯車39と係合されている回転軸40を回転し、回転軸40に一体に設けられた中板昇降用カム41も回転される。中板昇降用カム41が回転することで中板42の両端に設けられた中板突起部46を介して中板42が上がる。中板42が上がることで、シートSが給紙ローラ17に圧接する。
欠歯歯車39と給紙ローラ17とは、共に回転軸上に固定されているため、給紙ローラ17は欠歯歯車39に伴って回転され、給紙ローラ17に圧接したシートSを給紙する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−153247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置で所定のタイミングで駆動源から回転軸に動力が伝達するシート給紙装置において、アマーチュアを備えたソレノイドには、以下のような課題があった。
バネ33の力に対向してアマーチュア53が固定鉄芯34に引き付けられる力を吸引力とする。ソレノイドは、吸引力が大きいと、アマーチュアがフレームに当たる衝撃音が大きくなる。ソレノイドの吸引力が小さいと、アマーチュアが動作しないおそれがある。そのため、ソレノイドの吸引力は所定の値にする必要がある。
近年、画像形成装置において、ユーザ要求の多様化から様々な仕様の装置が生産されている。そのため、一つの生産工場の中で様々な種類の画像形成装置を組み立てる場合が増えている。一方、各々の画像形成装置の中で複数のシート給送装置の配置は最適化されている。その結果、シート給送装置で用いられているソレノイドの配置(欠歯歯車39に対する位置や向き)も上下左右と様々な位置に配置されうる。
図9(a)に示すようにソレノイド52の配置が上の場合や、図9(b)に示すようにソレノイド52の配置が下の場合、吸引力を所定の値にしようとすると、アマーチュア53の重力を考慮して、バネ33の付勢力やコイル35の磁力を変える必要がある。従って、生産工場の中で、ソレノイド52の配置が異なる多種の装置を組み立てる場合、工場のラインの中でバネ33の付勢力やコイル35の磁力を調整した様々なソレノイド52が混在する状況になってしまう。そのような場合、ある装置に間違ったソレノイド52を投入するという誤投入の問題が発生する確率が増してしまう。ソレノイド52の誤投入を防ぐため、工場内の管理を強化すると管理コストが増えるという課題もある。また、同一の装置の中に配置が異なるソレノイドが複数存在している場合、上述の誤投入、もしくは誤投入防止の管理コスト増大の課題はさらに大きなものとなる。
【0005】
本発明の目的は、装着時の向きに応じた付勢力や磁力の調整を不要とし、誤投入の防止、管理コストの削減を図ることができるソレノイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係るソレノイドは、
駆動源から動力を得てシートの給送動作を行うシート給送装置に設けられ、駆動源からの動力を伝えるべく回転する伝達部材の回転の規制・非規制を通電により切換可能に構成されたソレノイドであって、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に対し回転可能に支持され、かつ伝達部材に係止可能に構成されたアマーチュアと、
前記アマーチュアを伝達部材に係止せしめる一方の回転方向に前記アマーチュアを付勢する付勢部材と、
前記アマーチュアの伝達部材との係止状態を解除せしめ、かつ前記アマーチュアが前記フレーム部材に設けられた当接部に突き当たるまで、前記アマーチュアを前記付勢部材の付勢力に抗して他方の回転方向に回転させる磁力を通電により発生する磁力発生部材と、を備えるソレノイドにおいて、
前記アマーチュアが前記フレーム部材に支持される支点の位置が、前記アマーチュアの重心と略一致することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、装着時の向きに応じた付勢力や磁力の調整を不要とし、誤投入の防止、管理コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係るソレノイドを示す概略図。
【図2】画像形成装置の構成を示す概略図。
【図3】ソレノイドに作用するモーメントの概略図。
【図4】本発明の実施例2に係るソレノイドを示す概略図。
【図5】本発明の実施例3に係るソレノイドを示す概略図。
【図6】本発明の実施例4に係るソレノイドを示す概略図。
【図7】シート給送装置の一例を示す概略図。
【図8】ソレノイドの動作を示す概略図。
【図9】ソレノイドの配置例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
(画像形成装置の全体構成)
図2を参照して、本発明に係るソレノイドを備えたシート給送装置が用いられるフルカラー画像形成装置(以下、画像形成装置という)について説明する。図2は、画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、ここで示す画像形成装置の構成は一例であり、かかる構成に限定されるものではない。また、シート給送装置の構成は、ソレノイドの構成を除き、図7に示すものと同様であるが、これに限られるものではない。
【0011】
画像形成装置1は、各色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット2a、2b、2c、2dが着脱自在に構成されている。また、画像形成装置1には、中間転写体である中間転写ベルト8を有する中間転写ベルトユニット7や、定着器20が設けられている。
ここで、各画像形成ユニット2a、2b、2c、2dは、像担持体である感光体ドラム3a、3b、3c、3dを有している。感光体ドラム3a、3b、3c、3dの周囲に、帯電手段としての帯電ローラ5a、5b、5c、5d、現像手段である現像ローラ4a、4b、4c、4d、およびクリーニング手段としてのクリーニングブレード6a、6b、6c、6dを一体に有している。各画像形成ユニット2a、2b、2c、2dは、中間転写ベルト8に沿って並列配列されている。
【0012】
各画像形成ユニット2a、2b、2c、2dにおいて、帯電ローラ5a、5b、5c、5dは、感光体ドラム3a、3b、3c、3dの外周表面上に設置され、感光体ドラム表面を一様に帯電する。また、現像ローラ4a、4b、4c、4dは各レーザ露光器(露光手段)26a、26b、26c、26dからの露光により形成された感光体ドラム表面上の各色の静電潜像を対応する色のトナーを用いて現像する。なお現像ローラ4a、4b、4c、4dは、感光体ドラム3a、3b、3c、3dから離間し回転を停止させることで、現像剤(不図示)の劣化を防止できるように構成されている。すなわち、現像ローラ4a、4b、4c、4dは各感光体ドラム3a、3b、3c、3dに対して当接又は離間可能に構成されている。クリーニングブレード6a、6b、6c、6dは、トナー画像が転写された後、感光体ドラム表面に付着している転写残りトナーを除去する。
【0013】
中間転写ベルトユニット7は、中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9、テンションローラ10、一次転写ローラ11a、11b、11c、11d、二次転写対向ローラ12を備えている。そして、ベルト駆動モータ(不図示)により駆動ローラ9を回転駆動させることで中間転写ベルト8を回転搬送している。感光体ドラム3a、3b、3c、3dと共に中間転写ベルト8を挟持する位置には、感光体ドラム3a、3b、3c、3dと共に一次転写部を形成する一次転写ローラ11a、11b、11c、11dが対向設置されている。
【0014】
また、二次転写対向ローラ12と中間転写ベルト8を挟んだ位置には、二次転写対向ローラ12と共に二次転写部28を形成する二次転写ローラ14が対向配置されている。この二次転写ローラ14は、転写搬送ユニット13によって保持されている。
【0015】
画像形成装置の下部には、二次転写部28にシートSを給送するシート給送部15が配置されている。このシート給送部15には、複数枚のシートSを収納する給紙カセット1
6からシートSを給紙する給紙ローラ17と、分離手段である分離ローラ18を有する。給紙ローラの動作においては、本発明において特徴的なソレノイド43を除き、従来と同じであるため、説明を割愛する。給紙カセット16に収納されたシートSは、給紙ローラ17が回転することによって圧接され、分離ローラ18によって一枚ずつ分離され搬送される。分離されたシートSは、本体給紙搬送路27を経て、レジストローラ対19に搬送され、一時停止する。その際、記録材検知手段29により、シートSの厚みを検知する。その後、レジストローラ対19によりシートSは二次転写部28に搬送される。
【0016】
もう一つのシート給送手段として、画像形成装置の側面に手差しシート給紙部47がある。手差しシート給紙部47は、シートSを積載する中板48と、シートSを給紙する給紙ローラ49と、分離手段である分離パット50を有する。手差しシート給紙部47においても、給紙ローラ49の動作においては、シート給送部15と同じであるため、説明を割愛する。中板48が持ち上がり、中板48上に積載されたシートSが給紙ローラ49に圧接され、分離パット50によって一枚ずつ分離され搬送される。そして、分離されたシートSは手差し給紙搬送路51を経て、レジストローラ対19に搬送される。
【0017】
以上、説明したように、レジストローラ対19上流側では、2つの搬送路が合流する構成である。
【0018】
二次転写部28において、二次転写ローラ14に正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに中間転写ベルト上の複数色のトナー像を二次転写する。定着器20は加熱部材としての定着部材21、加圧部材としての加圧ローラ22があり、この定着部材21と加圧ローラ22との圧接により加熱ニップ部としての定着ニップ部が形成される。未定着トナー像を担持したシートSが、定着ニップ部に搬送され、定着ニップ部を挟持搬送されることで、未定着トナー像が加熱されて熱定着される。定着ニップ部を通過したシートSは排紙ユニット23に設置された排紙ローラ対24によって排出トレイ25に排出される。
【0019】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係るソレノイドを示す概略図である。上述したように、本実施例に係るソレノイド43は、不図示の駆動源から動力を得てシートの給送動作を行うシート給送部(シート給送装置)15、47に設けられている。ソレノイド43は、駆動源からの動力を伝えるべく回転する伝達部材としての欠歯歯車39の回転の規制・非規制を切換可能に構成されている。具体的には、ソレノイド43は、アマーチュア30と、バネ33と、固定鉄心34と、コイル35と、フレーム36と、から構成される。コイル35は、電流を流すことにより磁気を発生する。フレーム部材としてのフレーム36は、コイル35により発生した磁気を効率よく通す強磁性体で構成されている。磁力発生部材としての固定鉄心34は、コイル35により発生した磁力により磁力を発生する。
アマーチュア30は、フレーム36に対し回転可能に支持され、かつ一方の端部に設けられた係止部31が欠歯歯車39に係止可能に構成されている。アマーチュア30は、一方の端部とは反対側の端部が折り曲げられており、アマーチュア30の支点32が略重心となるように、フレーム36に取り付けられている。また、アマーチュア30は付勢部材としてのバネ33の付勢力により矢印Fの方向(一方の回転方向)に付勢されている。
【0020】
ソレノイド43は、コイル35を通電すると、コイル35に磁気が発生し、固定鉄心34がアマーチュア30をバネ33の付勢力に抗して矢印Fとは反対の方向(他方の回転方向)に回転させる磁力を発生する。これにより、アマーチュア30は、固定鉄心34に引き寄せられ、フレーム36の当接部36aに突き当たり、欠歯歯車39との係止状態が解除される。電流を流すのをやめるとコイル35から磁気が発生しなくなり、アマーチュア30はバネ33の付勢力により矢印Fの方向に付勢される。
【0021】
図3に示すように、従来のソレノイド52では、アマーチュア53に作用する吸引力が大きいと、アマーチュア53がフレーム36に当たる衝撃音が大きくなる。また、アマーチュア53に作用する吸引力が小さいと、アマーチュア53が動作しないおそれがある。そのため、アマーチュア53に作用する吸引力は所定の値にする必要がある。従来のソレノイド52では、アマーチュア53の片方に重心があるため、アマーチュア30に支点32まわりの重力モーメントが発生していた。そのため、ソレノイド52の配置(向き)に応じてアマーチュア53に作用する吸引力が所定の値となるようにバネ33の付勢力やコイル35の磁力を変更していた。
【0022】
本実施例に係るソレノイド43によれば、アマーチュア30の支点32が略重心となる配置にすることにより、支点32周りの重力モーメントが発生しない。そのため、重力の影響を受けないのでソレノイド43の配置によってバネ33の付勢力やコイル35の磁力を変更する必要がない。これによって、同一の本体内で複数のソレノイドや同一の工場内で組み立てられる複数のソレノイドが誤投入されるおそれがなくなり、それによる管理コストも削減できる。
【0023】
次に、図3を参照して、コイル35の磁力、バネ33の付勢力、アマーチュア30の重力の関係について、さらに詳細を述べる。図3は、従来のソレノイドに発生するモーメントの概略図であり、(a)はソレノイドを下側に配置したモーメントの概略図、(b)はソレノイドを上側に配置したモーメントの概略図である。
【0024】
コイル35の磁力による支点32の磁力モーメントをMk、バネ33の付勢力によるバネモーメントをMb、アマーチュア30重量による重力モーメントをMw、ソレノイド43が必要とされる吸引力モーメントをMaとする。吸引力モーメントMaがMmaxを超えると、アマーチュア30がコイル35の磁力により引き寄せられ、フレーム36の当接部36aに衝突したときの衝撃音が大きくなる。また、吸引力モーメントMaがMminより下がると、アマーチュア30がコイル35の磁力に引かれず、動作不良となる。そのため、吸引力モーメントMaが正常に動作するためには、次式の範囲となる。
Mmax>Ma>Mmin・・・(式1)
【0025】
ソレノイド43の配置でアマーチュア30のモーメントの影響を考えるために、ソレノイド43が上側に配置された時と、下側に配置された時について述べる。
【0026】
ソレノイド43が下に配置されている場合(鉛直方向において、アマーチュア30が下方、固定鉄心34やコイル35等が上方となるように配置された場合)、ソレノイド43の吸引力モーメントMaは次式で表される。
Ma=(Mk−Mb)+Mw・・・(式2)
【0027】
また、ソレノイド43が上に配置されている場合(鉛直方向において、アマーチュア30が上方、固定鉄心34やコイル35等が下方となるように配置された場合)、ソレノイド43の吸引力モーメントMaは次式で表される。
Ma=(Mk−Mb)−Mw・・・(式3)
【0028】
従って、ソレノイド43の配置が上側、下側共に配置されたことを考慮すると、式1〜式3よりソレノイド43の吸引力モーメントMaは次式で表される。
Mmax>(Mk−Mb)±Mw(=Ma)>Mmin
【0029】
従来のソレノイド52の場合、ソレノイド52の配置によって、アマーチュア53のモーメントMwが変わるため、吸引力モーメントMaを上限Mmaxと下限Mminの間の
値にする場合、コイル35の磁力やバネ33の付勢力を調整する必要がある。
【0030】
本実施例1によれば、アマーチュア30の支点32が重心であるため、ソレノイド43が下に配置されている場合と、ソレノイド43が上に配置されている場合のどちらにおいても、アマーチュア30の重力モーメントMwを無視できる。よって、ソレノイド43の吸引力Maは次式で表される。
Mmax>(Mk−Mb)(=Ma)>Mmin・・・(式4)
【0031】
式4より、アマーチュア30の支点32が重心となる構成ならば、コイル35の磁力によるモーメントMkとバネ33の付勢力によるモーメントMbのみでソレノイド43の吸引力モーメントMaが求められる。そのため、アマーチュア30に発生するモーメントMwの影響がなくなり、ソレノイドを自由に配置しても吸引力モーメントMaは変わらない。
【0032】
ソレノイド43を構成する一般的な部品には寸法上必ずバラつきがあるため、アマーチュア30の支点32が重心に対してわずかにずれる場合がある。ここで、アマーチュア30の支点32が重心から寸法上のバラつき範囲内でわずかにずれ、重力モーメントMwが厳密に0にならなくても本発明が有効であることを以下に示す。
【0033】
コイル35の磁力によるモーメントMkのバラつきをΔk、バネ33の付勢力によるモーメントMbのバラつきをΔb、アマーチュアの支点回りに発生するモーメントMwのバラつきをΔwとする。Δwはアマーチュアの寸法バラつきによる支点のズレで生じる重力モーメント差である。それぞれの部品が工場で作られているとすると、部品のバラつきは、正規分布している。従って、各モーメントを組み合わせた時のバラつきは自乗平均法で求めることができ、式4でモーメントのバラつきを組み合わせると、次式で表される。

【0034】
吸引力モーメントMaのバラつきΔaとすると、

【0035】
それぞれのバラつきの範囲について、コイル35の磁力のバラつきが10%、バネ33の付勢力のバラつきが10%、アマーチュア30の寸法バラつきが2%であれば経験的に量産可能なバラつきの範囲である。従って、Δkに10%、Δbに10%、Δwに2%を式6に代入すると、Δaは14.3%となる。また、支点周りに発生するアマーチュア30の重力モーメントMwのバラつきΔwがなく、Δw=0とすると、式3よりΔaは14.1%となる。従って、支点周りに発生するアマーチュア30の重力モーメントMwのバラつきΔwを考慮しても、無視してもほぼ同等である。以上のことから、一般的な部品寸法のバラつき範囲内であれば、本発明は有効である。
【0036】
また、従来のソレノイドの構成では、製品落下など強い衝撃がかかった場合、従来の構成ではアマーチュア30端部の片方に重心があるため、アマーチュア30の係止側の端部にモーメントMwが発生し、係止部31が外れてしまうという課題があった。本実施例によれば、アマーチュア30の支点32を重心とした構成であるため、モーメントMwはアマーチュア30の支点32周りに発生する。そのため、アマーチュア30の片方の端部にモーメントMwがかかることなく、係止部31が外れてしまうことはない。
【0037】
端部に係止部をもつアマーチュアを有するソレノイドにおいて、動作時の衝撃音や動作保障するために所定の吸引力が必要である。しかし、ソレノイドの配置(向き)によって
、アマーチュアの重力によるモーメントを考慮しなければならず、ソレノイドの配置ごとにアマーチュアに付勢するバネの強さやコイルの磁力が異なる。そのため、様々の仕様に設定されたソレノイドを用意する必要があり、それを原因として、誤投入や部品管理によるコストアップが発生していた。本実施例によれば、ソレノイドに備えられたアマーチュアの支点の位置を重心と略一致させることで、アマーチュア重力のバランスがとれる。そのため、ソレノイドの配置によって、吸引力を所定の値にするために、バネの付勢力やコイルの磁力を変更することはないので部品の種類が増えることはない。従って、誤投入の防止や管理コストを削減することができる。
【0038】
<実施例2>
図4は、本発明の実施例2に係るソレノイドを示す概略図である。なお、ソレノイド43の基本的な構成は実施例1と同様のため、本実施例の説明の中では説明を割愛し、本実施例の特徴となる構成部について説明する。
【0039】
本実施例に係るソレノイド43は、アマーチュア30において係止部31が備えられた一方の端部とは反対側の他方の端部に重量物37を差し込む構成としている。アマーチュア30の係止部31と反対側の端部に重量物37を設けたことで、アマーチュア30の重心バランスをとり、アマーチュア30の支点32を略重心となるように構成している。例えば、アマーチュア30の係止部31が支点32からより離れた構成にすると、係止部側の重量が大きくなるが、アマーチュア30の端部に設けた重量物37の重量調整を行うことでアマーチュア30の支点32を重心にすることができる。
【0040】
以上、説明した構成とすることで、実施例1で述べた効果のほかに、アマーチュア30の係止部31が支点32からより離れていても、重量物32の重量調整で対応することができる。
【0041】
<実施例3>
図5は、本発明の実施例3に係るソレノイドを示す概略図である。なお、ソレノイド43の基本的な構成は実施例1と同様のため、本実施例の説明の中では説明を割愛し、本実施例の特徴となる構成部について説明する。
【0042】
図5(a)は実施例3であり、アマーチュア30の係止部側を肉抜きし、軽量化することで、係止部側のアマーチュア30に発生するモーメントの影響を小さくした構成としている。肉抜きの範囲は、係止部31と固定鉄心34が当たる範囲を残して行うことができる。
【0043】
図5(b)は実施例3の変形例であり、アマーチュア30の係止部側を樹脂等の軽い部材を差し込むことで、係止部側のアマーチュア30に発生するモーメントの影響を小さくした構成としている。固定鉄心34が当たるところまでは磁力でアマーチュア30を引き寄せるため金属のアマーチュア30とし、そこから先を樹脂部材の係止部43として金属のアマーチュア30に差し込んだ構成としている。
【0044】
アマーチュア30の支点32を略重心とするという点で、実施例1と同じであるが、ここではアマーチュア30の係止部側を肉抜きし、軽量部材とすることで、アマーチュア30に発生するモーメントの影響を小さくすることができる。さらに、実施例1および実施例2で行ったアマーチュア30の係止部側とは反対側の端部形状を変更することによってアマーチュア30の重量をバランスさせ、アマーチュア30の支点32を略重心としている。
【0045】
以上、説明した構成とすることで、実施例1で述べた効果のほかに、アマーチュア30
が軽量化され、モーメントの影響も小さくできるため、係止部31の反対側の端部形状の変更や、重量物も少なくすることができる。
【0046】
<実施例4>
図6は、本発明の実施例4に係るソレノイドを示す概略図である。なお、ソレノイド43の基本的な構成は実施例1と同様のため、本実施例の説明の中では説明を割愛し、本実施例の特徴となる構成部について説明する。
【0047】
従来のソレノイド52や実施例1〜3において、アマーチュア30の係止部31は支点32に対して固定鉄心側にあった。本実施例では係止部31を支点32に対してバネ側に配置し、係止部31の向きを図中の下向きにした構成としている。また、アマーチュア30の支点32はアマーチュア30の略重心となるように配置した。
【0048】
以上、説明した構成とすることで、実施例1で述べた効果のほかに、ソレノイド43のスペース効率が上がる。本実施例であれば、ソレノイド43を動作させる最低限のアマーチュア30の構成において、アマーチュア30の固定鉄心側に引き寄せられる部分と係止部側が支点32に対し同じ長さにとることが可能である。これは、支点32を重心にするために、アマーチュア30の一端を延長したり、重りを追加したりする必要がないからである。
【0049】
上記各実施例におけるそれぞれの特徴的な構成は、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
30…アマーチュア、33…バネ、35…コイル、36…フレーム、39…欠歯歯車、43…ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から動力を得てシートの給送動作を行うシート給送装置に設けられ、駆動源からの動力を伝えるべく回転する伝達部材の回転の規制・非規制を通電により切換可能に構成されたソレノイドであって、
フレーム部材と、
前記フレーム部材に対し回転可能に支持され、かつ伝達部材に係止可能に構成されたアマーチュアと、
前記アマーチュアを伝達部材に係止せしめる一方の回転方向に前記アマーチュアを付勢する付勢部材と、
前記アマーチュアの伝達部材との係止状態を解除せしめ、かつ前記アマーチュアが前記フレーム部材に設けられた当接部に突き当たるまで、前記アマーチュアを前記付勢部材の付勢力に抗して他方の回転方向に回転させる磁力を通電により発生する磁力発生部材と、を備えるソレノイドにおいて、
前記アマーチュアが前記フレーム部材に支持される支点の位置が、前記アマーチュアの重心と略一致することを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記磁力発生部材は、前記支点に対して前記アマーチュアが伝達部材に係止する位置とは反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
駆動源から動力を得てシートの給送動作を行うシート給送装置であって、
駆動源からの動力を伝えるべく回転する伝達部材と、
請求項1又は2に記載のソレノイドと、
を備えることを特徴とするシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248685(P2012−248685A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119338(P2011−119338)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】