説明

タイヤ、及びタイヤの製造方法

【課題】走行によって色が落ちることのないタイヤを簡単に製造する。
【解決手段】タイヤ10の骨格部材であるタイヤケース17を、着色剤を含んで色が付けられた第1の熱可塑性材料でインジェクション成形する。走行によって色が落ちることのないタイヤを簡単に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムに装着するタイヤ、及びタイヤの製造方法にかかり、特には、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ、及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材等から構成された空気入りタイヤが用いられている。
しかしながら、使用後のゴムはリサイクルの用途に制限があり、焼却してサーマルリサイクルする、破砕して道路の舗装材料として用いる等して処分することが行われていた。
【0003】
近年では、軽量化やリサイクルのし易さから、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易で、低コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開03−143701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のゴム製の空気入りタイヤでは、サイドゴムは、カーボンブラックを含んだ黒いゴムが殆どであった。
このゴム製の空気入りタイヤに対して、意匠や色彩パターンを提供する方法が種々提案されている。
黒色のゴム製の空気入りタイヤをカラー化するためにタイヤ成形時に色ゴムを積層する方法があるが、工程が複雑で製造が難しくなる問題がある。また、この方法では、製造時に色が決定されてしまうため、選択肢を多数用意することが難しかった。
【0006】
タイヤ成形時にシート等を挿入し、モールドで加硫することが考えられるが、この場合には、加硫成形時にシートが傾いたり、シートの存在によってゴムの流動に影響が出てゴムの入り具合が難しい面がある。
また、加硫後のタイヤに接着剤等を用いてシールを貼り付けることも考えられるが、タイヤ転動に伴う屈曲によりシールが剥がれてしまう問題がある。
【0007】
このように、ゴム製の空気入りタイヤにおいては、サイド部をカラー化する手法が種々あるが、各々問題を有していた。
ところで、熱可塑性材料を用いて構成された空気入りタイヤでは、タイヤを構成する材料が全く異なるため、ゴム製の空気入りタイヤをカラー化する手法を用いることが出来ず、接着剤で張られたシートが走行によって剥がれる、即ち、色が落ちる問題も依然として解決されない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性樹脂を用いたタイヤにおいて、走行によって色が落ちることのない簡単に製造できるタイヤ、及びタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のタイヤは、着色剤を含んだ熱可塑性材料で少なくとも一部が成形されている。
【0010】
次に、請求項1に記載のタイヤの作用を説明する。
熱可塑性材料の素材自体は、通常透明または半透明であるが、請求項1に記載のタイヤでは、熱可塑性材料に着色剤で色が付けられている。
請求項1に記載のタイヤは、熱可塑性材料が着色剤で着色されているので、走行によって色が落ちることが無い。
また、熱可塑性材料に着色剤を混ぜるだけで色付きの熱可塑性材料とすることができるため、色付きのタイヤを簡単に製造できる。
【0011】
請求項2に記載のタイヤの製造方法は、熱可塑性材料に着色剤を付与する着色工程と、前記着色剤の含まれた前記熱可塑性材料を用いてタイヤの少なくとも一部を成形する成形工程と、を有する。
【0012】
次に、請求項2に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
先ず、着色工程では、熱可塑性材料に着色剤を付与する。
成形工程では、着色剤の含まれた前記熱可塑性材料を用いてタイヤの少なくとも一部を成形する。
これによって、着色された熱可塑性材料部分で少なくとも一部が形成された色付きのタイヤを効率的に製造できる。
【0013】
請求項3に記載のタイヤは、少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体と、前記タイヤ本体の前記第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面に熱溶着され、着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材と、を有する。
【0014】
次に、請求項3に記載のタイヤの作用を説明する。
請求項3のタイヤでは、タイヤ本体の第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面に、着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材が熱溶着によって強固に接合されているので、シート状の着色部材を接着剤でタイヤ本体に貼り付けた従来技術のタイヤの様に、走行によって変形を繰り返しても着色部材がタイヤ本体から剥がれる虞がなく、走行によって色が落ちることがない。
着色部材をタイヤ本体に熱溶着させるので、色付きのタイヤを効率的に製造できる。
【0015】
請求項4に記載のタイヤの製造方法は、少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の前記第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面、及び着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材の少なくとも一方を加熱し、前記タイヤ本体の前記表面、及び前記着色部材の表面の少なくとも一方を軟化または溶融させる溶融工程と、前記タイヤ本体と前記着色部材とを接触させて前記タイヤ本体に前記着色部材を溶着させる溶着工程と、を有する。
【0016】
次に、請求項4に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
先ず、溶融工程では、少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面、及び着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材の少なくとも一方を加熱し、タイヤ本体の第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面、及び着色部材の表面の少なくとも一方を軟化または溶融させる。
溶着工程では、タイヤ本体と着色部材とを接触させてタイヤ本体と着色部材と溶着させる。
これにより、着色されたタイヤを簡単に製造することができる。なお、複数の異なる色の着色部材を用意しておけば、種々の色のタイヤを容易に製造できる。
【0017】
また、このようにして製造されたタイヤは、タイヤ本体の第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面に、着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材が熱溶着されているので、タイヤが走行によって変形を繰り返しても、着色部材がタイヤ本体から剥がれる虞がない。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のタイヤの製造方法において、前記着色部材はシート状とされ、かつ前記第2の熱可塑性材料よりも耐熱性を有する台紙に仮止めされており、前記溶着工程では、前記着色部材を前記タイヤ本体に接触させ、前記台紙を前記タイヤ本体に向けて押圧することで前記タイヤ本体と前記着色部材と溶着させる。
【0019】
次に、請求項5に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
溶着工程では、着色部材をタイヤ本体に接触させ、台紙をタイヤ本体に向けて押圧することでタイヤ本体と着色部材とが溶着する。なお、台紙は、タイヤ本体と着色部材とが溶着した後、剥がして除去する。
シート状の着色部材は柔軟で変形し易いが、台紙に仮止めされているので、取り扱いが容易となる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1または請求項3に記載のタイヤにおいて、前記第1の熱可塑性材料と前記第2の熱可塑性材料とは、同種の熱可塑性材料である。
【0021】
次に、請求項6に記載のタイヤの作用を説明する。
第1の熱可塑性材料と第2の熱可塑性材料とを同種の熱可塑性材料としているので、異種の熱可塑性材料同士を溶着する場合に比較して、タイヤ本体と着色部材との接合(溶着)強度が高い。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載のタイヤの製造方法において、前記第1の熱可塑性材料と前記第2の熱可塑性材料とは、同種の熱可塑性材料である。
【0023】
次に、請求項7に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
第1の熱可塑性材料と第2の熱可塑性材料とを同種の熱可塑性材料としているので、異種の熱可塑性材料同士を溶着する場合に比較して、タイヤ本体と着色部材との接合(溶着)強度を高くすることが出来る。
【0024】
請求項8に記載の発明は、前記溶融工程では、加熱した加熱部材で前記タイヤ本体、及び前記着色部材の少なくとも一方を加熱する、請求項4、請求項5、及び請求項7の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【0025】
次に、請求項8に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
溶融工程では、加熱された加熱部材で、タイヤ本体、及び着色部材の少なくとも一方が加熱され、タイヤ本体、及び着色部材の少なくとも一方の表面が軟化または溶融される。
加熱部材は、電気ヒーター等で加熱すればよく、簡単な装置でもってタイヤ本体、及び着色部材の少なくとも一方を加熱することが出来る。
【0026】
請求項9に記載の発明は、前記加熱部材は、前記着色部材の溶着位置の外表面形状に沿った外表面を備えている、請求項8に記載のタイヤの製造方法。
【0027】
次に、請求項9に記載のタイヤの製造方法の作用を説明する。
例えば、タイヤサイド部は湾曲しているので、平坦な加熱部材をタイヤサイド部に接近させると、加熱部材とタイヤサイド部との間隔が一定とならず、加熱部材に近い部分と遠い部分とでは受ける熱量が異なり、溶着位置を均一に加熱することが出来なくなる。
加熱部材の外表面を着色部材の溶着位置の外表面形状に沿った形状とすることで、加熱部材を溶着位置に接近させた際に、加熱部材と溶着位置との間隔を一定に保つことができ、溶着位置を均一に加熱でき、溶着位置を均一に軟化または溶融させることができる。
【0028】
請求項10に記載のタイヤは、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体と、前記本体の表面に熱溶着され、着色剤を含む材料で形成された着色部材と、を有する。
【0029】
次に、請求項10に記載のタイヤの作用を説明する。
請求項10のタイヤでは、タイヤ本体の熱可塑性材料で形成された部分の表面に、着色剤を含む材料で形成された着色部材が熱溶着によって強固に接合されているので、シート状の着色部材を接着剤でタイヤ本体に貼り付けた従来技術のタイヤの様に、走行によって変形を繰り返しても着色部材がタイヤ本体から剥がれる虞がなく、走行によって色が落ちることがない。
着色部材をタイヤ本体に熱溶着させるので、色付きのタイヤを効率的に製造できる。
【0030】
請求項11に記載のタイヤの製造方法は、 少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の前記熱可塑性材料で形成された部分の表面を加熱し、前記表面を軟化または溶融させる溶融工程と、前記タイヤ本体と着色剤を含む材料で形成された前記着色部材とを接触させて前記タイヤ本体と前記着色部材と溶着させる溶着工程と、を有する。
【0031】
次に、請求項11に記載のタイヤの作用を説明する。
先ず、溶融工程では、少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面を加熱し、表面を軟化または溶融させる。
溶着工程では、タイヤ本体(軟化または溶融された第1の熱可塑性材料部分)と着色部材とを接触させてタイヤ本体と着色部材と溶着させる。
これにより、着色されたタイヤを簡単に製造することができる。なお、複数の異なる色の着色部材を用意しておけば、種々の色のタイヤを容易に製造できる。
【0032】
また、このようにして製造されたタイヤは、タイヤ本体の熱可塑性材料で形成された部分の表面に、着色剤を含む材料で形成された着色部材が熱溶着されているので、タイヤが走行によって変形を繰り返しても、着色部材がタイヤ本体から剥がれる虞がない。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように請求項1に記載のタイヤは上記の構成としたので、製造が簡単で、走行によって色が落ちない。
請求項2に記載のタイヤの製造方法によれば、着色された熱可塑性材料部分で少なくとも一部が形成された色付きのタイヤが効率的に得られる。
請求項3に記載のタイヤは上記の構成としたので、製造が簡単で、走行によって色が落ちない。
請求項4に記載のタイヤの製造方法によれば、走行により色が落ちない色付きタイヤを効率的に製造することができる。
請求項5に記載のタイヤの製造方法によれば、シート状の着色部材の取り扱いが容易となる。
請求項6に記載のタイヤは上記の構成としたので、 異種の熱可塑性材料同士を溶着する場合に比較して、タイヤ本体と着色部材との接合強度を高くすることが出来る。
請求項7に記載のタイヤの製造方法によれば、タイヤ本体と着色部材との接合強度が高いタイヤを効率的に製造することが出来る。
請求項8に記載のタイヤの製造方法によれば、簡単な装置でタイヤ本体と着色部材とを効率的に溶着することが出来る。
請求項9に記載のタイヤの製造方法によれば、溶着位置を均一に加熱でき、溶着位置を均一に軟化または溶融させることができる。
請求項10に記載のタイヤは上記の構成としたので、製造が簡単で、走行によって色が落ちない。
請求項11に記載のタイヤの製造方法によれば、走行により色が落ちない色付きタイヤを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を断面にした斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。
【図2】第2の実施形態に係るタイヤの一部を断面にした斜視図である。
【図3】台紙に仮止めされた着色シートの一例を示す平面図である。
【図4】溶着工程を示す説明図である。
【図5】第2の実施形態に係るタイヤ(着色シート溶着前)の側面図である。
【図6】他の実施形態に係る加加熱部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施形態]
以下に、図面にしたがって本発明のタイヤの第1の実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、自動車用の従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
タイヤ10は、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなるタイヤケース(タイヤ骨格部材)17を備えている。
【0036】
本実施形態のタイヤケース17は、第1の熱可塑性材料で形成されている。
本実施形態のタイヤケース17は、一つのビード部12、一つのサイド部14、及び半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状の、タイヤ構成部材としてのタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されており、リムとの間で空気室を形成する。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、例えば、一方のビード部12とサイド部14と一体とした第1の部材、トレッド部(タイヤ外周部)に対応する第2の部材、及び他方のビード部12とサイド部14とを一体とした第3の部材等、3以上の部材を接合して形成しても良く、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであっても良い。
また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強しても良い。
【0037】
第1の熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0038】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が上げられる。
【0039】
これらの熱可塑性材料としては、たとえば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
【0040】
第1の熱可塑性材料からなるタイヤ半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等の成形工程を経て成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短くて済む。
また、本実施形態では、タイヤ半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットがある。
【0041】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されているが、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければビードコア18は省略しても良い。なお、ビードコア18は、有機繊維コード等、スチール以外のコードや材料で形成されていても良い。
【0042】
本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、第1の熱可塑性樹脂よりもシール性に優れたゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシートと接触する部分にも形成されていても良い。シール層24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略しても良く、サイド部14を形成している第1の熱可塑性樹脂よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂を用いても良い。
【0043】
クラウン部16には、螺旋状に巻回されたスチールの補強コード26からなるクラウン部補強層28が埋設されている。なお、補強コード26は、全体がクラウン部16に埋設されていても良く、一部分がクラウン部16に埋設されていても良い。このクラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0044】
クラウン部補強層28の外周側には、サイド部14を形成している第1の熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層30が配置されている。トレッドゴム層30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、サイド部14を形成している第1の熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層を外周部に設けても良い。
本実施形態のトレッドゴム層30には、一般のゴム製空気入りタイヤに用いる黒色のゴムを用いているが、黒色以外の色のゴムを用いても良い。
【0045】
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17を形成する第1の熱可塑性材料が、着色剤で着色されている。着色剤としては、熱可塑性材料に用いる公知のものを用いることができ、第1の熱可塑性材料の素材(着色されていない)に着色剤を混ぜることで着色された第1の熱可塑性材料を得ることが出来る。第1の熱可塑性材料に着色剤を混ぜる工程(本発明の着色工程)は、一般的に知られている公知の方法を用いることが出来る。
なお、赤色の着色剤、黄色の着色剤、青色の着色剤、緑色の着色剤、及び白色の着色剤の具体例としては、例えば、ウレタン系トナーやエラストマー用の着色剤を上げることができ、黒色の着色剤の具体例としては、カーボンブラックを上げることができる。
なお、その他の色の着色剤を用いて第1の熱可塑性材料を着色できることは勿論のこと、複数の着色剤を混ぜても良いのは勿論である。
また、上記具体例の、例えば、蛍光物質(紫外線等の照射によって光る)、夜光物質(光を照射し、光の照射を停止した後に発光する)も本発明の着色剤に含まれる。
【0046】
(作用)
次に、本実施形態のタイヤ10の作用を説明する。
本実施形態のタイヤ10は、タイヤケース17が、着色剤で着色された第1の熱可塑性材料で形成されているため、走行によって色が落ちることが無い。また、第1の熱可塑性材料に着色剤を混ぜるだけで、色の付いたタイヤを簡単に製造することができる。
熱可塑性材料からなるタイヤケース17に色が付いているので、タイヤ10は、意匠性に優れたものとなる。
【0047】
なお、本実施形態では、2つのタイヤ半体17Aを接合してタイヤケース17を形成しているので、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとで色を変えることもできる。
また、着色剤の他に、一般の合成樹脂に混入される種々の微粒子(金属粉等)等を第1の熱可塑性材料に混ぜても良い。第1の熱可塑性材料に金属粉等を混入させることで、第1の熱可塑性材料をパール調やメタリック調にすることも可能である。
【0048】
また、第1の熱可塑性材料に混入する蛍光物質の種類を変えることで、紫外線を照射した際に、種々の色に発光させることができ、また、見た目を鮮やかにすることができる。
第1の熱可塑性材料に金属粉等の微粒子を混入することで、見た目をパール調やメタリック調にすることが可能である。
また、着色剤に加え、蛍光物質、夜光物質、微粒子の何れか1以上を第1の熱可塑性材料に混入しても良いのは勿論である。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明のタイヤの第2の実施形態を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図2に示すように、本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17の側面に、着色された着色シート32が溶着されている。なお、本発明のタイヤ本体は、着色シート32が溶着されていないタイヤ10を意味する。
【0050】
着色シート32は、着色剤で着色された第2の熱可塑性材料で形成されている。
着色シート32に用いる第2の熱可塑性材料としては、タイヤケース17に用いる第1の熱可塑性材料と同様のものを用いることができる。なお、着色シート32に用いる第2の熱可塑性材料は、タイヤケース17に用いる第1の熱可塑性材料と同種の熱可塑性材料が好ましいが、異種の熱可塑性材料でも良い。
【0051】
着色シート32の第2の熱可塑性材料を着色する着色剤は、タイヤケース17の第1の熱可塑性材料を着色する着色剤と同様のものを用いることができる。
本実施形態の着色シート32色は、タイヤケース17の色と異なっているが、同じであっても良い。着色シート32の形状は、図2、図3に示すものに限らず、文字、マーク、絵柄、記号等、他の形状のものであって良い。
【0052】
次に、タイヤ10のタイヤケース17に、着色シート32を溶着する方法を説明する。
(1) 図3に示すように、着色シート32は、予め台紙34に仮止めしておく。台紙34には、粘着剤等が塗布されており、その粘着剤等によって着色シート32が仮止めされている。台紙34は、着色シート32よりも耐熱性に優れたシート状部材、例えば、着色シート32の第2の熱可塑性材料の融点温度でも軟化や溶融しない紙や布、合成樹脂シート等が用いられている。
【0053】
(2) タイヤケース17の着色シート溶着予定部位、及び着色シート32の少なくとも一方を、例えば、内臓された電気ヒーター等で加熱された金属板等で形成された平板状の加熱部材36で加熱して軟化(溶着できる程度に)または溶融させ(溶融工程)、着色シート32をタイヤケース17の溶着予定部位に向けて接触させ、台紙34を押圧部材42でタイヤケース17に向けて押圧したり、押圧ローラ(図示せず)を転がしながら台紙34をタイヤケース17に向けて押圧し、着色シート32とタイヤケース17とを溶着する(溶着工程)。
なお、加熱部材36は、溶着予定部位を軟化または溶融できれば良く、加熱する相手に接触させなくても良い。
【0054】
なお、着色シート32を位置決めし易いように、例えば図5に示すように、タイヤ10のサイド部14に、着色シート32を貼り付けるための貼り付け領域40を設けることが出来る。本実施形態の貼り付け領域40は、微小に凸とされた枠形状であるが、他の構成であっても良い。
なお、貼り付け領域40は、タイヤ表記(例えば、表面を凹凸させることで形成されているタイヤサイズ、メーカー名、回転方向を示すマーク、商品名、法で定められた表記等)に影響の無い部分に設けることが好ましい。
【0055】
なお、溶着前のタイヤケース17、及び着色シート32において、溶着部位は、予めアルコール等の溶剤で洗浄しておくことが好ましい。また、溶着し易い様に、溶着部位にコロナ処理や紫外線処理等を行っても良い。さらに、タイヤケース17においては、溶着部位を予めバフ研磨しても良い。
【0056】
(3) 溶着後、溶着部分を自然空冷、又はファン等による強制空冷を行い、溶着部分の温度が低下して第1,2の熱可塑性材料が完全に固化した後、タイヤケース表面から台紙34を剥がす。以上により、着色シート32が溶着されたタイヤ10が完成する。
【0057】
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、タイヤケース17の表面に、着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色シート32が熱溶着されているので、タイヤ10が走行によって変形を繰り返しても、着色シート32がタイヤケース17から剥がれる虞がない。
なお、着色シート32の形状をタイヤ側部(ビード部12、サイド部14)の大きさに合わせた円環状とし、これをタイヤ側部に溶着しても良い。これにより、タイヤ側部の色を簡単に変えることが出来る。種々の色の着色シート32を用意しておけば、タイヤ10の色を容易に変更でき、色の異なる複数種類のタイヤ10を在庫しておく必要が無く、在庫スペースが少なくて済み、在庫管理も簡単になる。
【0058】
本実施形態の方法では、製造されたタイヤ10に対して、後から簡単に色の付いた着色シート32を付与することができるので、例えば、上記工程(2)〜(4)を販売店等において行うことができ、販売店等においてタイヤ10を種々の色に変更したり、種々のマーク、文字等を熱溶着によって貼り付けることで、タイヤ10の外観意匠を簡単に向上乃至変更することができる。
即ち、本実施形態の方法を用いれば、例えば、タイヤ販売店の店頭にてユーザーに多数の模様、色彩の中から好みのデザインの着色シート32を選んでもらい、ユーザーの好みの位置に着色シートを溶着することができる。
【0059】
なお、タイヤケース17及び着色シート32の溶着部位は、軟化させるよりも、溶融させた方が高い接合強度が得られる。さらに、タイヤケース17と着色シート32の両方を加熱して軟化乃至溶融させた方が、何れか一方のみを軟化乃至溶融するよりも高い接合強度が得られる。
溶融した熱可塑性材料同士を付着させると、タイヤケース17の第1の熱可塑性材料と着色シート32の熱可塑性材料との間に、タイヤケース17の第1の熱可塑性材料と着色シート32の第2の熱可塑性材料とが混ざり合った混合層が設けられ、接合強度を高める上で好ましい。
【0060】
上記実施形態では、平板状の加熱部材36を用いてタイヤケース17や加熱したが、図6に示すように、サイド部14のカーブに沿った形状に湾曲された加熱部材36を用いることも出来る。
この加熱部材36を用いることで、加熱部材36とサイド部14との間隔を一定にでき、サイド部14を均一に加熱し、表面を均一に軟化、または溶融させることが可能となる。
【0061】
上記実施形態では、加熱部材36を用いてタイヤケース17や着色シート32を軟化または溶融させたが、熱風、赤外線ランプ、レーザビーム等を当てるこによりタイヤケース17や着色シート32を軟化または溶融させても良く、第1,2の熱可塑性材料を加熱する手段は特に問わない。
【0062】
上記実施形態のタイヤ10では、第1の熱可塑性材料からなるタイヤケース17の外周にゴム製のトレッドゴム層30が設けられているが、トレッドゴム層30を第1の熱可塑性材料または、他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層としても良い。なお、トレッド層の熱可塑性材料は、タイヤケース17と同様に、着色剤で着色することが出来、熱可塑性材料からなるトレッド層と、タイヤケース17は、同じ色にしても良く、異なる色にしても良い。
【0063】
なお、本実施形態のタイヤケース17は、2つのタイヤ半体17Aを接合して形成したが、熱可塑性材料からなる3つ以上の部材から構成されていても良く、部材毎に色を変えても良く、すべての部材を同じ色にしても良い。
第1の熱可塑性材料と第2の熱可塑性材料とは、同種の熱可塑性材料の場合、異種の熱可塑性材料の場合もあるので、第1の熱可塑性材料の融点と第2の熱可塑性材料の融点は、同じである場合や異なる場合もあるが、何れか一方を溶融できれば良い。
着色シート32は、単一の材料からなる1層構造であっても良く、材料の異なる複数層構造であっても良い。着色シート32が材料の異なる複数層構造の場合、タイヤケース17に溶着する側の層は、熱可塑性材料で形成されていることが好ましい。
【0064】
上記実施形態のタイヤ10は、タイヤケース17が第1の熱可塑性材料で形成され、トレッド部がゴムで形成されていたが、トレッド部が熱可塑性材料等、ゴム以外の材料で形成されていても良く、タイヤ全体が熱可塑性材料で形成されていても良い。
【0065】
上記第2の実施形態では、タイヤケース17が第1の熱可塑性材料で形成され、着色シート32が第2の熱可塑性材料で形成され、両者が熱可塑性材料で形成されていたが、タイヤケース17と着色シート32が溶着でき、走行によって剥がれないような接合強度が得られるのであれば、何れか一方は、熱可塑性材料以外の材料(例えば、柔軟性を有する熱硬化性材料(熱硬化性樹脂)等)で形成されていても良い。
上記実施形態のタイヤ10は、所謂空気入りタイヤであったが、空気を入れないタイヤ(中実タイヤ)であっても本発明は適用できる。また、本発明は、乗用車用に限らず、2輪車等の他のタイヤにも適用できる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。

【符号の説明】
【0066】
10 タイヤ(タイヤ、タイヤ本体)
17 タイヤケース(タイヤ骨格部材、熱可塑性材料、第1の熱可塑性材料)
32 着色シート(着色部材、第2の熱可塑性材料)
34 台紙
36 加熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を含んだ熱可塑性材料で少なくとも一部が成形されている、タイヤ。
【請求項2】
熱可塑性材料に着色剤を付与する着色工程と、
前記着色剤の含まれた前記熱可塑性材料を用いてタイヤの少なくとも一部を成形する成形工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【請求項3】
少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体と、
前記タイヤ本体の前記第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面に熱溶着され、着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材と、
を有するタイヤ。
【請求項4】
少なくとも一部が第1の熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の前記第1の熱可塑性材料で形成された部分の表面、及び着色剤を含む第2の熱可塑性材料で形成された着色部材の少なくとも一方を加熱し、前記タイヤ本体の前記表面、及び前記着色部材の表面の少なくとも一方を軟化または溶融させる溶融工程と、
前記タイヤ本体と前記着色部材とを接触させて前記タイヤ本体に前記着色部材を溶着させる溶着工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記着色部材はシート状とされ、かつ前記第2の熱可塑性材料よりも耐熱性を有する台紙に仮止めされており、
前記溶着工程では、前記着色部材を前記タイヤ本体に接触させ、前記台紙を前記タイヤ本体に向けて押圧することで前記タイヤ本体と前記着色部材と溶着させる、請求項4に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1の熱可塑性材料と前記第2の熱可塑性材料とは、同種の熱可塑性材料である、請求項1または請求項3に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の熱可塑性材料と前記第2の熱可塑性材料とは、同種の熱可塑性材料である、請求項4または請求項5に記載のタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記溶融工程では、加熱した加熱部材で前記タイヤ本体、及び前記着色部材の少なくとも一方を加熱する、請求項4、請求項5、及び請求項7の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記加熱部材は、前記着色部材の溶着位置の外表面形状に沿った外表面を備えている、請求項8に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体と、
前記本体の表面に熱溶着され、着色剤を含む材料で形成された着色部材と、
を有するタイヤ。
【請求項11】
少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ本体の前記熱可塑性材料で形成された部分の表面を加熱し、前記表面を軟化または溶融させる溶融工程と、
前記タイヤ本体と着色剤を含む材料で形成された前記着色部材とを接触させて前記タイヤ本体と前記着色部材と溶着させる溶着工程と、を有するタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158297(P2012−158297A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20818(P2011−20818)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】