説明

タイヤの補強に用いる層状ハイブリッドケーブル

【課題】重車両またはアースムーバ用タイヤの少なくとも一つのクラウン保護プライの補強用層状ハイブリッドケーブル、自動二輪車等のモータ付き軽車両用タイヤのビード補強用層状ハイブリッドケーブル、重車両またはアースムーバ等のクラウン保護プライとして用いる複合テキスタイル、タイヤのリムを補強するためのビードワイヤおよび得られたタイヤ。
【解決手段】本発明層状ハイブリッドケーブル(C)は非金属の内層(Ci)と、この内層上に螺旋状に巻付けられた少なくとも一部が金属である複数のストランドを含む不飽和の外層(Ce)とを有し、このケーブルは1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtが7%以上である。内層は相対破断点伸びArが20℃で6%以上の少なくとも一つの材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は層状ハイブリッドケーブル(cables hybrids a couches)に関するものである。この層状ハイブリッドケーブルは重車両用または土木作業車両(genie civil)用のタイヤの少なくとも一つのクラウン保護プライの補強に用いることができる他、自動二輪車のようなモータ付き軽車両用タイヤのビードの補強に用いることができる。
本発明はさらに、上記重車両または土木作業車両のタイヤクラウン保護プライとして有用な複合テキスタイル、タイヤビードの補強用ビードワイヤおよび上記タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用のスチールケーブルは一般にカーボン量が0.2〜1.2%のパーライト(またはフェライト−パーライト)のカーボンスチール(以降、カーボンスチールとよぶ)のワイヤからなり、このワイヤの直径は大抵の場合、0.10〜0.40mmである。このワイヤは引張強度が非常に高くなければならず、一般には2000MPa、好ましくは2500MPa以上でなければならない。こうした極めて高い引張強度はワイヤの冷鍛(ecrouissage)時に生じる組織硬化によって得られる。得られたワイヤはケーブルまたはストランド(torons)の形に組立てる。そのため、使用するスチールは種々のケーブル化作業に耐えるのに十分な捩れ延性を有していなくてはならない。
【0003】
重量車両、土木作業車両(アースムーバ等)およびモータ付き軽車両用のタイヤは一般にカーカス補強材を有し、このカーカス補強材は2つのビード間にアンカーされ、カーカス補強材の放射方向上側に一つまたは複数のクラウンプライ(nappes sommet de travail)を有するクラウン補強材を有し、このクラウン補強材の上部にはトレッドが載っており、トレッは2つのサイドウォールを介してビードに接合されているということは周知である。重量車両または土木作業車両のクラウン補強材の場合にはさらに、クラウンプライの上部に一つまたは複数のクラウン保護プライをさらに有している。
【0004】
このクラウン保護プライの基本的機能は走行時に異物がクラウン保護プライ中に放射方向に侵入するのを防止することである。すなわち、アースムーバ等の土木作業車両のタイヤは尖った石で覆われた地面上を走行することが多いため、異物によってタイヤが傷付くことが多い。
【0005】
重車両タイヤのようなタイヤでは、ラジアルタイヤのカーカス補強材およびクラウンプライの補強に一般に「層状コード」または「多層コード」とよばれるスチールケーブルが用いられる。このスチールケーブルは中心のコアとこのコアの周りに配置された一つまたは複数の同心なフィラメント層とで構成されている。従って、ケーブルの剛性はケーブルを構成する各フィラメントの剛性の和にほぼ等しい。一般に、層状ケーブルはコンパクト構造の層状ケーブルと管状または円筒状の層状ケーブルとに分類できる。
【0006】
この層状ケーブルは極めて多くの刊行物に記載されており、特に特許文献1〜23および非特許文献1〜6が挙げられる。
【0007】
ラジアルタイヤのカーカス補強材およびクラウンプライで最も広く用いられている層状ケーブルは基本的に[M+N]または[M+N+P]の式のケーブルである。これらは一般に最大タイヤに用いられる。これらのケーブルは一般にM本の糸(fils)のコアとこのコアの周りのN本の糸の少なくとも一つの層(場合によってはこの層をP本の糸の外側層が取り囲んでいる場合がある)とで形成されている。Mは一般に1〜4本、Nは3〜12本、Pは8〜20本であり、必要な場合には最後の層の周りを外側輪型フィラメントで螺旋状に巻いて全体を被覆することもできる。
【0008】
特許文献24(米国特許第4,176,705号明細書)には重車両またはアースムーバのタイヤカーカス補強材を補強するために設計された層状ハイブリッドケーブルが開示されている。このケーブルの内層はスチールの引張強度に等しい引張強度を有する非金属材料から成るマルチフィラメントコアで構成され、ケーブルの外層不飽和(insaturee)で、例えば6本の金属ストランドで構成され、各ストランドはS−Z構造でストランドの方向と反対の方向に撚った4本のワイヤを有する。
【0009】
マルチフィラメントを構成する非金属材料、好ましくはアラミドは構成要素の剛性の合計に近い剛性を有するケーブルに与えず、ケーブル全体の引張強度を低下させないように選択される。これは引張強度がスチールよりはるかに低い脂肪族ポリエステル等の材料とは対照的である。このアラミドコアはストランド間の隙間を満たす役目もする。それによって水が浸潤してケーブルが腐食するのを最小にする。そのためコアの直径は各金属ストランドの直径に等しくするか、それ以上に選択される。
【0010】
重車両またはアースムーバタイヤのクラウン保護プライの補強材で現在一般に用いられているケーブルは層状ケーブルではなく、ストランドケーブル(「ストランドコード」)である。このストランドケーブルは周知の撚線技術で組み立てられる。定義上、ストランドケーブは螺旋状に撚り合わされた複数の金属ストランドで構成され、各ストランドも螺旋状に撚り合わされた複数のスチールワイヤを有している。
【0011】
クラウン保護プライ用ケーブルで用いられる大部分のフィラメントは直径が一般に0.20mm以上、例えば約0.25mmで、上記タイヤのカーカス補強材用ケーブルで用いられるフィラメントの直径より大きい。これらのクラウン保護プライ用ケーブルはクラウン保護プライが走行時に衝突する障害物の形に順応できるようにするためにケーブルを含むプライに最適な柔軟性を与えるとともに、異物がプライに放射方向に侵入するのを防ぐことができるように設計されている。
【0012】
さらに、上記ストランドケーブルはゴムでできる限り完全に含浸する必要がある。すなわち、ケーブルを構成するワイヤ間の全ての空間中にゴムが侵入しなければならない。侵入が不十分な場合にはケーブルに沿って中空の流路ができ、腐食性液体(例えば水)がタイヤのクラウン補強材の例えば切れ目や傷からタイヤ中に侵入し、上記流路に沿ってクラウン補強材中を移動する。こうした湿気の存在は乾燥大気中で用いる場合に比較して腐食の発生および疲労の加速の大きな要因となる(いわゆる「疲労−腐食」現象)。
【0013】
本出願人は現在、アースムーバ用タイヤのクラウン保護プライの補強材に4×6のストランドケーブル(すなわち、6本のスチールワイヤを有する4本のストランドからなるケーブル)を用いている(本出願人の市販のサイズ「40.00 R57XDR」のアースムーバタイヤで、ストランド中の各ワイヤは直径が例えば0.26mm)。このケーブルはトレッドとクラウン保護プライとの間に生じる孔や切れ目の発生および伝搬が遅いので、上記補強機能に関してはこのケーブルは完全に満足するものであることが経験から分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第2,080,845号公報
【特許文献2】米国特許第3,922,841号明細書
【特許文献3】米国特許第4,158,946号明細書
【特許文献4】米国特許第4,488,587号明細書
【特許文献5】欧州特許第168,858号公報
【特許文献6】欧州特許第176,139号公報(米国特許第4,651,513号明細書)
【特許文献7】欧州特許第194,011号公報
【特許文献8】欧州特許第260,556号公報(米国特許第4,756,151号明細書)
【特許文献9】米国特許第4,781,016号明細書
【特許文献10】欧州特許第362,570号公報
【特許文献11】欧州特許第497,612号公報(米国特許第5,285,836号明細書)
【特許文献12】欧州特許第567,334号公報(米国特許第5,661,965号明細書)
【特許文献13】欧州特許第568,271号公報
【特許文献14】欧州特許第648,891号公報
【特許文献15】欧州特許第601,402号公報(米国特許第5,561,974号明細書)
【特許文献16】欧州特許第669,421号公報(米国特許第5,595,057号明細書)
【特許文献17】欧州特許第675,223号公報
【特許文献18】欧州特許第709,236号公報(米国特許第5,836,145号明細書)
【特許文献19】欧州特許第719,889号公報(米国特許第5,697,204号明細書)
【特許文献20】欧州特許第744,490号公報(米国特許第5,806,296号明細書)
【特許文献21】欧州特許第779,390号公報(米国特許第5,802,829号明細書)
【特許文献22】欧州特許第834,613号公報(米国特許第6,102,095号明細書)
【特許文献23】国際特許第98/41982号公報
【特許文献24】米国特許第4,176,705号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】RD(Research Disclosure)第316107号、1990年、8月、681頁
【非特許文献2】RD第34054号、1992年、8月、624〜633頁
【非特許文献3】RD第34370号、1992年、11月、857〜859頁
【非特許文献4】RD第34779号、1993年、3月、213〜214頁
【非特許文献5】RD第34984号、1993年、5月、333〜334頁
【非特許文献6】RD第36329号、1994年、7月、359〜365頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は新規なケーブル、特に重量車両または土木作業車両(アースムーバ)用のタイヤの少なくとも一つのクラウン保護プライの補強に用いられる新規なケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、驚くべきことに、層状ハイブリッドケーブルにおいて、ケーブルのコアを形成する内層を相対破断点伸びArが20℃で6%以上である少なくとも一つの非金属材料を用いて構成し、この内層上に少なくとも一部が金属である複数のストランドを含む不飽和な外層を螺旋状に巻付けることによって1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtを7%以上にすることができ、本発明の上記目的が達成できる、ということを発見した。
【発明の効果】
【0018】
本発明の層状ケーブルは、クラウン保護プライの補強用に現在使用されている公知の撚線技術で組立てられたケーブルの代わりに使用することができる。すなわち、本発明の層状ケーブルは公知のケーブルよりもはるかに高い相対破断点伸びAt(構造伸びAs、弾性伸びAeおよび塑性伸びApの合計の合計伸びAt)を有している。
既に述べたように、4×6のストランドケーブルは1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtが5.4%である(これは相対伸びAs、Ae、Ap=1.9%、2.3%、1.2%の合計)。
【0019】
本発明ケーブルは相対破断点伸びAt値が上記のように高く、ケーブルの柔軟性が高いので、本発明ケーブルで補強されたクラウン保護プライは大きな力を受けた時のテンションを低下させることができ、従って、切れ目、特に腐食に至る傷の伝搬に対するプライの感度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】外層のストランドが完全に金属である本発明の第1実施例による層状ハイブリッドケーブルの断面図。
【図2】外層のストランドの一部のみが金属である本発明の第2実施例による層状ハイブリッドケーブルの断面図。
【図3】「基準」ストランドケーブルおよび本発明の2つの層状ハイブリッドケーブルの破断点引張強度と相対破断点伸びとを示す力(daN)−変形(%)図で、ケーブルは複合テキスタイルに組込む前の単独状態で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
このような高い値のAtは内層にストランド用のスチールケーブルよりはるかに低い剛性を有する材料、例えば脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリエステルまたはレーヨンからなるテキスタイル(織物)材料を用いることによって得られる(これに対して、例えばアラミドは20℃での相対破断点伸びArが約3%で、低温延伸スチールの相対破断点伸びである約1.8%に近いため本発明では用いることができない)。
【0022】
内層は20℃での相対破断点伸びArが10%以上である少なくとも一つのテキスタイル材料で作るのが好ましい。
本発明のケーブルの内層を用いることによってケーブルで補強されたクラウン保護プライに対してタイヤ製造時には弾性を与えることができ、走行時の応力下には剛性を低下させることができる。
【0023】
本発明ケーブルの外層は「不飽和(insaturee)」または「不完全(incomplete)」とよばれるN本のストランドからなる管状の層である。この定義は、この管状の層中にN本のストランドと同じ径の少なくとも一本の(N+1)番目のストランドを追加するのに十分なスペースがあるということを意味する。なお、N本のストランドは互いに接触していてもよい。逆に、管状の層が「飽和(saturee)」または「完全(complete)」とみなされるのは、同じ径の少なくとも一本の(N+1)番目のストランドを追加できるだけの十分なスペースが管状の層にない場合である。
【0024】
この不飽和の外層は内層の周り(すなわちストランド間)にゴムを侵入させるのに都合がよく、腐食に起因する損害を最小にするのに役立つ。
本発明の層状ハイブリッドケーブルは1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtが10%以上、好ましくは12%以上であるのが有利である。
【0025】
本発明ケーブルのコアを形成する内層は単一のフィラメントまたは複数のフィラメントを撚り合わせて作った撚糸(retors)(一般に、コード、cordまたは合撚糸(プライドヤーン、plied yarn)とよばれる)で構成できる。
「糸またはフィラメント」という用語は下記のいずれかを意味する:
(1)径の小さい基本フィラメントを互いに平行にしたマルチフィラメントファイバ。
(2)基本フィラメントを多数撚り合わせたものをベースにした糸(当業者は「もろより糸」(surtor、フォールデッドヤーン、folded yarn)とよぶことが多い)。これは例えば直径が約10ミクロンの基本フィラメントを約百本たばねたものをベースにすることができる)
(3)単一のモノフィラメント。
【0026】
「モノフィラメント」とは通常のものであり、直径または厚さD(円でない場合の垂直断面の最小横断寸法)が100μm以上である単一のフィラメントを意味する。すなわち、この定義には実質的に円筒形(円形断面を有する)のモノフィラメントおよび楕円形のモノフィラメントの他に平らな形のモノフィラメント、さらには厚さがDのバンドまたはフィルムも含まれる。
【0027】
本明細書では非金属要素の内層またはコアの各非金属要素の質量(titre、以下、線形質量という)は少なくとも3本のサンプルで長さ50mの非金属要素を秤量して求める。
この線形質量は各非金属要素を(乾燥後に)欧州規格DIN EN20139(温度20×2℃、湿度65×2%)に従って標準大気中で少なくとも24時間貯蔵するコンディショニング後に測定し、テックス(tex)で表される(非金属要素1000m当たりのg重量、0.111テックスは1デニールに等しい)。
【0028】
各非金属要素の引張下の機械的特性(テナシティ、初期モジュラス、相対破断点伸びAr)は「ZWICK GmbH&Co.(ドイツ)」の1435型または1445型引張り試験機を用いた周知の方法で求める。各非金属要素を初期長さ400mmで公称速度50mm/分で引っ張る。以下の結果は全て上記コンディショニング後に実施した10回の測定の平均である。
【0029】
テナシティ(破断力を線形質量で割ったもの)および初期モジュラスはcN/tex(1cN/tex=0.11g/den)で示す。初期モジュラスは標準予備引張力0.5cN/texの直後に生じる力−伸び曲線の線形部分の傾きと定義する。相対破断点伸びはパーセンテージで示す。
モノフィラメントの直径Dはモノフィラメントの線形質量およびこれらの密度から下記式を用いた計算で求める:
【0030】
【数1】

【0031】
(ここで、Dはμmで表され、Tiは線形質量(tex)であり、ρはg/cm3で表される密度である)
非円形断面を有するモノフィラメント(すなわち円筒形モノフィラメント以外のモノフィラメント)の場合には、上記の計算ではなくパラメータDを求める。このパラメータDはモノフィラメント断面を光学顕微鏡で見てモノフィラメントの軸線に垂直な面におけるモノフィラメントの最小寸法を表し、実験で求める。この場合、モノフィラメントは切断を容易にするために例えば予め樹脂中に埋め込んでおく。
【0032】
本発明の別の実施例では、本発明ケーブルのコアを形成する内層が脂肪族ポリアミド、好ましくは6.6ポリアミドからなる。
本発明のさらに別の実施例では、内層が脂肪族ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)からなる。
本発明のさらに別の実施例では内層がレーヨンからなる。
本発明のさらに別の実施例では内層がポリビニルアルコール(PVA)からなる。
【0033】
本発明の一実施例では、コアを形成する内層がモノフィラメントからなる。
本発明の別の好ましい実施例では内層がマルチフィラメントであり、このマルチフィラメントは多数の基本フィラメントをベースにした一本または複数の糸か、複数の糸を束にして作った一本または複数のもろより糸か、複数のもろより糸を撚り合わせて作った一本または複数の撚りケーブルか、テキスタイルケーブルで構成することができる。
【0034】
このマルチフィラメントコアは本発明ケーブルの外層より軸線方向に短くでき、それによってケーブルの両端の溶着作業および「ストレートフィラメント」ケーブルプライの組立て作業が容易になるという利点がある。さらに、このマルチフィラメントコアはコストが安い。
【0035】
本発明の別の特徴では外層が3〜12本のストランドを有し、各ストランドが少なくとも3本のフィラメントを有し、これらのフィラメントは一部または全部が金属ワイヤで且つ内層上へのストランドの巻付けピッチに等しいか、それより大きいピッチで螺旋状に巻き付けられる。
ストランド中に含まれるこの金属ワイヤは例えばカーボン量が0.2〜1.2%、好ましくは0.5〜1.0%のスチールからなる。
【0036】
本発明のケーブルは直径di、di'の内層上にNまたはN'本のストランドがピッチpi、pi'で螺旋状に巻付けられ、各ストランドは下記(a)または(b)を有するのが好ましい:
(a)全体がピッチpeで螺旋状に巻付けらた直径deのn本の金属ワイヤまたはストランドのコアワイヤ上にピッチpe'で巻付けられたn−1本のワイヤ、この場合、ケーブルは下記の条件を全て満たす:
【0037】
【数2】

【0038】
(b)直径dfaの非金属のコアフィラメント上にピッチpe''で螺旋状に巻付けられた直径de'のm本の金属のワイヤ、この場合、ケーブルは下記の条件を全て満たす:
【0039】
【数3】

【0040】
本発明ケーブルは各ストランドのフィラメントとストランドとが同じ撚り方向(S/SまたはZ/Z方向)に巻き付けられるのが好ましい。
各ストランドが完全に金属である(a)の場合には本発明ケーブルは下記関係式を満足するのが好ましい:
【0041】
【数4】

【0042】
この(a)の場合にはさらに、本発明ケーブルは下記関係式を満足するのが好ましい:
【0043】
【数5】

【0044】
(a)の場合の第1実施例では、本発明ケーブルがN=4本の金属ストランドを有し、各ストランドがn=6本の金属ワイヤからなり、1本の金属コアワイヤの周りに5本の他の金属ワイヤが螺旋状に巻き付けられている。すなわち、ケーブルの式は1+4×(1+5)である。ケーブルの内層は脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリエステル、PVAまたはレーヨンのモノフィラメントで構成することができる。このモノフィラメントの直径は0.6〜0.8mmにするのが有利であるがこれらに限定されるものではない。
【0045】
この(a)の場合の第2実施例では、本発明ケーブルがN=5本の金属ストランドを有し、各ストランドはn=6本の金属ワイヤからなり、1本の金属コアワイヤの周りに5本の他の金属ワイヤが螺旋状に巻き付けられている。すなわち、ケーブルの式は1+5×(1+5)である。このケーブルの内層は脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリエステル、PVAまたはレーヨンのモノフィラメントで構成でき、このモノフィラメントの直径は0.7〜0.9mmであるのが有利であるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
各ストランドの一部のみ金属である上記の(b)の場合には、本発明ケーブルは下記関係式を満足するのが好ましい:
【0047】
【数6】

【0048】
この(b)の場合ではさらに、本発明ケーブルは下記関係式を満足するのが好ましい:
【0049】
【数7】

【0050】
(b)の場合の一つの実施例では、本発明ケーブルがN=3本のストランドを有し、各ストランドが7本のフィラメントからなり、1本の非金属コアフィラメントの周りにm=6本の金属ワイヤが螺旋状に巻き付けられている。このケーブルの式は1+3×(1+6)である。例えば、このケーブルの内層およびコアフィラメントは脂肪族ポリアミド、脂肪族ポリエステル、PVAまたはレーヨンのモノフィラメントで構成できる。
【0051】
本発明の層状ハイブリッドケーブルは基本的に下記の撚合せ(retordage)方法を用いて組み立てられる:
(1)内層の周りに外層のストランドを所定の暫定撚り合わせピッチで螺旋状に巻き付け、
(2)もろより糸にして、暫定ピッチを減らし(すなわち外層のねじれ角、従って、ねじれ曲率を大きくし)、
(3)得られたケーブルのよりを戻して安定化させ、残留トルクをゼロにする。
【0052】
クラウン保護プライで使用する場合、本発明の層状ハイブリッドケーブル全体の直径は2mm以上にするのが好ましく、さらに好ましくは2.2〜4mmにする。
本発明ケーブルを得るための上記撚り合わせ方法を実施するとケーブルのストランド外層に過剰な曲率が付与され、外層が内層から離される。この曲率は外層のねじれ直径と外層のねじれ角(ケーブルの軸線に対して測定される角)とによって定義される。
【0053】
本発明ケーブルの内層を用いることでねじれ直径とねじれ角の両方を同時に大きくすることができる。
本発明ではこのねじれ角はかなり大きく、25〜45×である。
【0054】
内層の弾性特性によって、上記撚合せ方法で外層を圧縮するために内層に加わる初期張力の一部を最終的に得られるケーブル中に保持でき、それによってケーブルの構造伸びAsを大幅に増加できる(これはtg2(ねじれ角)に比例する)。また、外層がストランドで構成されることで構造伸びAsはさらに増加する。
【0055】
本発明の複合テキスタイルは重車両またはアースムーバ用タイヤのクラウン保護プライとして用いることができる。この複合テキスタイルは少なくとも一種のジエンエラストマーをベースとするゴム組成物を有し、それを本発明ケーブルからなる補強要素で補強する。
このゴム組成物は少なくとも一種のジエンエラストマーをベースとし(形成され)、ジエンエラストマーの他にタイヤ用ゴム組成物で使用可能な任意の一般的成分、例えば補強充填剤、架橋系、その他の添加剤を含む。
【0056】
「ジエン」エラストマーとは少なくとも一部がジエンモノマー、すなわち二つの炭素−炭素二重結合を有する共役ジエンまたは非共役ジエンモノマーから得られるエラストマー(すなわちホモポリマーまたはコポリマー)を意味する。
「実質的に不飽和な」ジエンエラストマーとは少なくとも一部が共役ジエンモノマーから得られ、ジエン由来の単位またはユニット(共役ジエン)の含有率が15%(モル%)以上のジエンエラストマーを意味する。上記の定義に含まれないブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα−オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは「実質的に飽和な」ジエンエラストマー(ジエン由来の単位の含有率が低いか、非常に低く、常に15%以下)に分類することができる。
【0057】
「実質的に不飽和な」ジエンエラストマーの範疇の中で特に「高度に不飽和な」ジエンとはジエン由来の単位(共役ジエン)の含有率が50%以上のジエンエラストマーを意味する。
上記定義から、本発明複合物のジエンエラストマーはポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、各種ブタジエンコポリマー、各種イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群の中から選択するのが好ましい。
【0058】
ポリブタジエンの中では−1,2単位の含有率が4〜80%のポリブタジエンまたはシス−1,4含有率が80%以上であるポリブタジエンが特に適している。合成ポリイソプレンの中ではシス−1,4ポリイソプレンが特に適しており、シス−1,4結合含有率が90%以上であるものが好ましい。ブタジエンまたはイソプレンのコポリマーの中ではこれら2種のモノマーの少なくとも一方と、8〜20個の炭素原子を有する一種以上のビニル芳香族化合物との共重合で得られるコポリマーが特に好ましい。ビニル芳香族化合物の例としてはスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、市販の「ビニル−トルエン」混合物、p−tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、または、ビニルナフタレンが挙げられる。このコポリマーは99〜20重量%のジエン単位と1〜80重量%のビニル芳香族単位とを含むことができる。ブタジエンまたはイソプレンのコポリマーの中ではブタジエン−スチレンコポリマー、イソプレン−ブタジエンコポリマー、イソプレン−スチレンコポリマーまたはイソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマーが好ましい。
【0059】
要約すると、ジエンエラストマーはポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン−ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン−スチレンコポリマー(SIR)、ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマー(SBIR)およびこれらエラストマーの混合物からなる群の中から選択される高度に不飽和なジエンエラストマーであるのが好ましい。
【0060】
さらに好ましくは、本発明のゴム組成物中のエラストマーマトリックスの大部分(すなわち50重量%以上)を天然ゴムまたは合成ポリイソプレンからなるジエンエラストマーとするのが好ましく、さらには天然ゴムからなるジエンエラストマーにするのが最も好ましい。
しかし、本発明の別の有利な実施例では、ポリイソプレンとその他の高度に不飽和なジエンエラストマー、特に上記のSBRまたはBRエラストマーとのブレンドを用いることができる。
【0061】
本発明の複合テキスタイルのゴムマトリックスは一種以上のジエンエラストマーを含むことができる。このジエンエラストマーは任意タイプの非ジエンの合成エラストマー(すなわちエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマー)と組み合わせて用いることができるということは理解できよう。
本発明の複合テキスタイルのゴム組成物はタイヤ製造で通常用いられている全てまたは一部の添加剤、例えばカーボンブラック等の補強充填剤および/またはシリカ等の無機補強充填剤、酸化防止剤等の老化防止剤、伸展油、可塑剤(すなわち組成物の未加硫状態での使用を容易にするための試薬)、硫黄または硫黄供与体および/または過酸化物をベースにした架橋系、加硫促進剤、加硫活性剤または遅延剤、メチレン受容体および供与体、「RFS」(レソルシノール−ホルムアルデヒド−シリコン)型または金属塩、特にコバルト塩の公知の接着促進剤系をさらに含んでいる。
【0062】
本発明の複合テキスタイルは当業者に公知の種々の方法、例えば成形、カレンダ加工、プレッシングによって金属補強材を組み込んだ種々の形態、例えばプライ、ストリップ、細いストリップまたはゴムブロックの形態をとることができる。
本発明複合テキスタイルの別の特徴は、ASTM D412規格に従って測定した架橋状態でのゴム組成物の割線係数(module secant)M10が5〜12MPa、好ましくは6〜11MPaである点にある。
【0063】
本発明ケーブルは、テキスタイル1dm当たりのケーブルの本数である密度(「d」)と互いに隣接した2本のケーブル間のゴムの「ブリッジ」幅(以下、「トL」)とで複合テキスタイル中に互いに平行に配置される。周知のように「ブリッジ」幅(トL)はmmで表され、この幅はカレンダ加工ピッチまたはテキスタイル中でのケーブル取付けピッチとケーブル直径との差を表す。dおよびトLは本発明で望まれる所定の補強材すなわち重量タイヤおよび土木作業車両のトレッド保護プライの補強剤であることを考慮して明確に決定される。
【0064】
本発明の複合テキスタイルでアースムーバ用タイヤのクラウン保護プライを構成する場合には、隣接する2本ケーブルの軸線間距離を例えば3〜4mmにする。この最小値より小さい値では狭くなり過ぎ、プライ作動中に伸びまたは剪断によってゴムブリッジ自体の面が変形し、ゴムブリッジが機械的に劣化する危険がある。逆に、上記最大値より大きな値ではケーブル間の孔ができる危険がある。
【0065】
本発明の複合テキスタイルはケーブル密度dがテキスタイル1dm当たり20〜40本のケーブルとなるようにするのが好ましい。
本発明の複合テキスタイルの別の特徴から、隣接する2本のケーブル間のゴムブリッジの幅トLは0.5〜1.3mm、好ましくは0.6〜0.9mmである。
本発明のビードワイヤは自動二輪車等のモータ付き軽車両用のタイヤを補強するためのものであり、上記(a)の場合の第3実施例に記載の層状ハイブリッドケーブルを有し、このケーブルはN=7本の金属ストランドを有し、各ストランドは螺旋状に撚り合わされたn=3本の金属ワイヤからなる。
【0066】
本発明の重車両またはアースムーバ用タイヤのエンベロップは周知のように2つのビード間にアンカーされたカーカス補強材を有し、このカーカス補強材の放射方向上側にクラウン補強材を有し、このクラウン補強材は一つまたは複数のクラウンプライとこのクラウンプライ上に載った一つまたは複数のクラウン保護プライとを有し、このクラウン補強材の上部にはトレッドが載り、このトレッドは2つのサイドウォールを介してビードに連結されており、少なくとも一つのクラウン保護プライが本発明の複合テキスタイルを有している。
【0067】
本発明の別の観点から、自動二輪車のようなモータ付き軽車両用タイヤにおいて、2つのビードの間にアンカーされるカーカス補強材を有するタイヤの各ビードが本発明のビードワイヤによって補強される。
本発明の上記および上記以外の特徴は本発明の複数の実施例を示す添付図面を参照した以下の説明からより良く理解できよう。しかし、下記実施例は説明のためのもので、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
本発明ケーブルの実施例と、それと「基準」ケーブルとの比較
[図1]は外層が完全に金属である上記(a)の場合の本発明層状ハイブリッドケーブルCの第1実施例を示している。
このケーブルCはコアを形成する非金属の層Ciと、N本のストランドT(図を明瞭にするために5本のみ示してある)を有する不飽和の外層Ceとを含む。各ストランドは全体が金属で、直径diの内層Ciの周りにピッチpiで螺旋状に巻き付けられている。
【0069】
[図1]から分かるように、各ストランドTはピッチpeで螺旋状に撚り合わされた直径deのn本の金属ワイヤfmを有する。本発明では内層Ciは20℃での相対破断点伸びが6%以上の材料で構成される。
すなわち、[図1]のケーブルCは上記の(a)の場合の第3実施例に対応し、式1×7×3を有する。この第3実施例のケーブルCは直径diが0.8mmの「標準」タイプのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントからなる内層Ciと、直径が0.23mmのn=3本のスチールワイヤから成るN=7本のストランドとを含んでいる。このケーブルCのピッチpeおよびpiは撚り方向S/S([図1]の矢印S参照)にそれぞれ5.5mm、10mmである。
【0070】
ケーブルCの本発明の第1変形例(C1で表す)は、[図3]の上側にケーブルC1を特徴づける力−変形曲線と対向して示してある。
この第1変形例ではケーブルC1の各ストランドT1がコアフィラメントfaの周りにピッチpe'で巻付けられたn−1本の金属ワイヤfmを有している。ケーブルC1は上記の(a)の場合の第1実施例に従い、1+4×(1+5)である。この第1実施例ではケーブルC1はポリアミド6.6の低温延伸モノフィラメント〔ナイロン(登録商標)、テナシティ=45cN/tex、直径di=0.7mm〕と、N=4本のストランドT1とを含み、このストランドT1の各ストランドは1本のコアスチールワイヤfaとその周りに螺旋状に巻付けられた5本の他の金属ワイヤfmからなるのn=6本のスチールワイヤである。各ストランドT1の6本のワイヤfm、faは直径が0.26mmで、上記ピッチpeおよびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5.5mm、10mmである。
【0071】
[図1]のケーブルCの本発明の第2変形例(C2で表す)は、[図3]の上側にケーブルC2を特徴づける力−変形曲線と対向して示してある。
この第2変形例もケーブルC2の各ストランドT2がコアワイヤfmの周りにピッチpe'で巻き付けられたn−1本の金属ワイヤfmを有している。ケーブルC2は上記の(a)の場合の第2実施例に従い1+5×(1+5)である。この第2実施例ではケーブルC2は標準サイズの6.6ポリアミドモノフィラメント〔ナイロン(登録商標)、テナシティ=45cN/tex、直径di=1mm〕と、N=5本のストランドT2とを含んでいる。ストランドT2の各ストランドは1本のコアスチールワイヤfaとその周りに螺旋状に巻付けられた5本の他の金属ワイヤfmとのn=6本のスチールワイヤからなる。各ストランドT2の6本のワイヤfm、faは直径が0.26mmで、上記ピッチpeおよびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5.5mm、10mmである。
【0072】
[図2]は外層が一部のみ金属である上記の(b)の場合の本発明の層状ハイブリッドケーブルC'の第1実施例を示している。
このケーブルC'もまたコアを形成する非金属内層Ciと、直径diの内層Ciの周りにピッチpiで螺旋状に巻き付けられたN'本のストランドT'を有する不飽和の外層とを含んでいる。
[図2]から分かるように、各ストランドT'は直径dfaの非金属コアフィラメントfa'の周りにピッチpe''で螺旋状に巻き付けられた直径de'のm本の金属ワイヤfmを有する。本発明では内層Ciおよびコアフィラメントfa'が20℃での相対破断点伸びが6%以上の同一または互いに異なる材料で構成される。
【0073】
正確には[図2]の実施例の本発明ケーブルC'はケーブルの式が1+3×(1+6)で、N=3本のストランドで、各ストランドは1本のコアフィラメントfa'とその周りに螺旋状に巻き付けられたm=6本のスチールワイヤfmとの7本のフィラメントからなる。直径diが1mmの内層Ciと直径dfaが0.6mmのコアフィラメントfa'はそれぞれ例えば「標準」タイプのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントから成る。ピッチpeおよびpiはそれぞれ例えば4.4mm、6.6mmである。
【0074】
以下、式1+4×(1+5)および1+5×(1+5)を有する本発明の上記2本のケーブルC1およびC2とストランド型の「基準」ケーブルCTとの機械的特性を詳細に説明する。
「基準」ケーブルCTは[図3]の上側にこのケーブルを特徴づける力−変形曲線と対向して示してある。このケーブルは直径が0.26mmのスチールワイヤfm'を6本有する4本のストランドT''で構成されている(このケーブルCTの商品名は「24.26」で、本出願人から市販のサイズ「40.00R57」のアースムーバ用タイヤで使用されている)。
【0075】
ケーブルCT、C1、C2のそれぞれの剛性R(daN)および相対破断点伸びAt(%)は[図3]に示してある。
ケーブルC2の変形例として、式1+5×(1+5)を有する本発明の別の4本のケーブルC2bis、C2ter、C2quaterおよびC2quinquies(図示せず)を製造した。
【0076】
ケーブルC2bisは内層Ciが標準サイズのPETのモノフィラメント(直径di=1mm)と、6本の直径が0.26mmのスチールワイヤからなる5本のストランドT2とで構成され、上記ピッチpe'およびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5.3mm、9.9mmである。
ケーブルC2terは内層Ciがマルチフィラメント型で、撚合せた2本のPETのもろより糸で構成され、各もろより糸は線形質量が440texで、220texの糸を2本組み合わせて作られる。5本のストランドT2は直径が0.26mmのスチールワイヤ6本で構成され、上記ピッチpe'およびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5mm、9.4mmである。
【0077】
ケーブルC2quaterは内層Ciがマルチフィラメント型で、撚り合わせた2本のETのもろより糸で構成され、各もろより糸は線形質量が440texで、220texの糸を2本組み合わせて作られる。5本のストランドT2は直径が0.26mmのスチールワイヤ6本で構成され、上記ピッチpe'およびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5.8mm、11.5mmである。
ケーブルC2quinquiesは内層Ciがマルチフィラメント型で、撚合わせた2本のPETのもろより糸で構成され、各もろより糸は線形質量が334texで、167texの糸を2本組み合わせて作られる。5本のストランドT2は直径が0.26mmのスチールワイヤ6本で構成され、上記ピッチpe'およびpiは撚り方向S/Sにそれぞれ5.2mm、9.5mmである。
【0078】
〔表1〕は各ケーブルCT、C1、C2、C2bis、C2ter、C2quater、C2quinquiesの機
械的特性を示している。測定はこれらのケーブル単独で(すなわち複合テキスタイルに組み込む前に)行った。
【0079】
【表1】

【0080】
マルチフィラメントコアCiを有する本発明ケーブルすなわちC2ter、C2quaterおよびC2quinquiesはC2bisのようなモノフィラメントコアCiが軸線方向に長い本発明のケーブルとは対照的にコアCiがケーブルの軸線方向にストランドによって形成される外層よりも短いことを確認した。
このようにマルチフィラメントコアが軸線方向に短いことによってマルチフィラメントコアは2本のケーブルの端と端の接合で要求される電気溶着の作業中に溶けなくなり、すなわち、マルチフィラメントコアを有する本発明のケーブルはこの溶着作業を妨げなくなる。
このように軸線方向に短いことによってコアの余分な軸線方向長さを切り離す必要がないため、「ストレートフィラメント」のケーブルのプライを作るのが容易になる。
【0081】
クラウン保護プライを本発明ケーブルC1、C2または「基準」ケーブルCTで補強したタイヤの走行テスト
サイズ「18.00R33×P51」のアースムーバタイヤを備えた車両に対して最初に尖った石で覆われた地面上で、次に、丸みの付いた石で覆われた地面上での走行テストを実施して、「基準」タイヤPTと本発明タイヤP1およびP2の衝撃抵抗性および穿孔抵抗性を評価した。
「基準」タイヤPTは2つのクラウン保護プライNSP1およびNSP2にそれぞれ上記「基準」ケーブルCT(式「25.26」)を有している。このケーブル密度dはテキスタイル1dm当たり40本で、隣接する2本のケーブルCT間のゴム「ブリッジ」幅トLは0.6mmである(隣接する2本のケーブルCTの軸線間距離は2.5mmで、ケーブルCTの直径は1.9mmである)。
【0082】
本発明の第1タイヤP1は2つのクラウン保護プライNSP1およびNSP2を有し、これらのプライはそれぞれ上記本発明ケーブルC1(式「1+4×(1+5)」を有するケーブル)を有する。このケーブルの密度dは31で、ゴム「ブリッジ」幅トLは0.8mmである(隣接する2本のケーブルC1の軸線間距離は3.2mmで、ケーブルC1の直径は2.4mmである)。
【0083】
本発明の第2タイヤP2は2つのクラウン保護プライNSP1およびNSP2を有し、これらのプライはそれぞれ上記本発明ケーブルC2(式「1+5×(1+5)」を有するケーブル)を有する。このケーブルの密度dは28で、ゴム「ブリッジ」幅トLは0.6mmである(隣接する2本のケーブルC2の軸線間距離は3.5mmで、ケーブルC2の直径は2.9mmである)。
【0084】
所定時間走行した後に停止し、テストしたタイヤを「剥離」して各タイヤごとに下記の数を数える:
(1)トレッド中の孔の数、次に放射方向下側クラウン保護プライ(放射方向で下に向かってNSP2、次にNSP1)中の孔の数、次にクラウンプライ(放射方向でさらに下に向かってNST2およびNST1)中の孔の数、
(2)各クラウンプライNSP2、NSP1、NST2、NST1中で破損したケーブルの数、
(3)クラウン保護プライNSP2とトレッド下層との間の「ブリスター」の数および面積(この「ブリスター」または表面剥離の主原因はタイヤの放射方向上側混合物中の裂け目の伝播にある。この面積は楕円に例えて評価する)。
【0085】
〔表2〕は上記の孔の数、破損ケーブル数、「ブリスター」数および面積を「基準」タイヤPTを基準100として表した時の相対値として得られた結果を示している。本発明タイヤP1およびP2の値を対応する「基準」値に対するパーセンテージで表してある。すなわち、それらの絶対値が「基準」値よりも低いか高いかでそれぞれ100よりも大きい値または小さい値で表される。
【0086】
【表2】

【0087】
これらの結果からは本発明層状ハイブリッドケーブルC1またはC2で補強されたクラウン保護プライNSP2およびNSP1を用いることによってクラウン補強材中の各プライの破損ケーブルの数を減らすことができ、また、剥離で生じる「ブリスター」の数および面積は「基準」ストランドケーブルCTで補強されたプライNSP1およびNSP2に比べて大幅に少なくなることがわかる。
【0088】
これらの結果はケーブルC1またはC2で補強されたクラウン保護プライNSP2およびNSP1はトレッドとクラウンプライとの間の孔の数が平均して減少していることも示している。
本発明ケーブルC2を組み込んだタイヤは、孔の数、破損ケーブル数、「ブリスター」数だけでなく、衝撃抵抗性および穿孔抵抗性で最高の結果が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを形成する非金属の内層(Ci)と、この内層(Ci)上に螺旋状に巻き付けられた少なくとも一部が金属である複数のストランド(T、T'、T1、T2)を含む不飽和(insaturee)な外層(Ce)とを有する層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)において、
1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した時に7%以上の相対破断点伸びAtを有することを特徴とする層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項2】
1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtが10%以上である請求項1に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項3】
1984年のISO規格6892に従う引張り方法で測定した相対破断点伸びAtが12%以上である請求項1に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項4】
内層(Ci)を構成する少なくとも一つの材料が20℃での相対破断点伸びArが6%
以上の材料である請求項1に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項5】
3〜12本のストランド(T、T'、T1、T2)を有し、各ストランド(T、T'、T1、T2)は少なくとも3本のフィラメント(fm、fa、fa')を有し、このフィラメントはその全部または一部が金属で且つ内層(Ci)上のストランド(T、T'、T1、T2)の巻き付けピッチ(pi、pi')と同じかそれより大きなピッチ(pe、pe'、pe'')で螺旋状に巻き付けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項6】
、直径di、di'の内層(Ci)上にNまたはN'本のストランド(T、T'、T1、T2)がピッチpi、pi'で螺旋状に巻き付けられ、各ストランド(T、T'、T1、T2)が下記(a)または(b)を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2):
(a)全体がピッチpeで螺旋状に巻付けらた直径deのn本の金属ワイヤ(fm)またはストランド(T、T'、T1、T2)のコアワイヤ(fa)上にピッチpe'で巻付けられたn−1本のワイヤ(fm)、この場合、ケーブル(C、C1、C2)は下記の条件を全て満たす:
【数1】

(b)直径dfaの非金属のコアフィラメント(fa'')上にピッチpe''で螺旋状に巻付けられた直径de'のm本の金属のワイヤ(fm)、この場合、ケーブル(C')は下記の条件を全て満たす:
【数2】

【請求項7】
各ストランド(T、T'、T1、T2)のフィラメント(fm、fa、fa')およびストランド(T、T'、T1、T2)が同じ撚り方向(S/S)に巻き付けられている請求項5または6に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項8】
コアを形成する内層(Ci)がモノフィラメントからなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項9】
コアを形成する内層(Ci)が一本または複数の糸(files)で構成され、各々の糸が多数の基本フィラメントをベースにしたものである請求項1〜7のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項10】
コアを形成する内層(Ci)が一本または複数のもろより糸(surtors)からなり、各もろより糸が複数の糸を束にしてえられたものである請求項9に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項11】
内層(Ci)が脂肪族ポリアミドからなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項12】
内層(Ci)が6.6ポリアミドからなる請求項11に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項13】
内層(Ci)が脂肪族ポリエステルからなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項14】
内層(Ci)がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートからなる請求項11に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項15】
内層(Ci)がレーヨンからなる請求項1〜10のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2)。
【請求項16】
上記(b)の場合に、各ストランド(T')のコアフィラメント(fa')がモノフィラメントからなる請求項6に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項17】
コアフィラメント(fa')が脂肪族ポリアミドからなる請求項16に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項18】
コアフィラメント(fa')が6.6ポリアミドからなる請求項17に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項19】
コアフィラメント(fa')が脂肪族ポリエステルからなる請求項16に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項20】
コアフィラメント(fa')がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートからなる請求項19に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項21】
コアフィラメント(fa')がレーヨンからなる請求項16に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項22】
下記の2つの条件のいずれか一方をさらに満たす請求項6に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2):
【数3】

【請求項23】
下記の2つの条件のいずれか一方をさらに満たす請求項6または22に記載の層状ハイブリッドケーブル(C、C'、C1、C2):
【数4】

【請求項24】
N=4本のストランド(T1)を有し、各ストランドがn=6本の金属ワイヤ(fm、fa)からなり、各ストランドは1本のコア金属ワイヤ(fa)とその上に螺旋状に巻付けられた別の金属ワイヤ5本(fm)とからなる請求項1〜23のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C1)。
【請求項25】
N=5本のストランドを有し、各ストランドT1がn=6本の金属ワイヤ(fm、fa)からなり、各ストランドが1本のコア金属ワイヤ(fa)とその上に螺旋状に巻付けられた別の金属ワイヤ5本(fm)とからなる請求項1〜23のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C2)。
【請求項26】
N=3本のストランド(T')を有し、各ストランドが7本のフィラメント(fm、fa')からなり、各ストランドが1本の非金属のコアフィラメント(fa')とその上に螺旋状に巻付けられたm=6本の金属ワイヤ(fm)とからなる請求項1〜23のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C')。
【請求項27】
N=7本のストランド(T)を有し、各ストランドがn=3本の金属ワイヤ(fm)からなり、各ストランドが一緒に螺旋状に巻付けられている請求項1〜23のいずれか一項に記載の層状ハイブリッドケーブル(C)。
【請求項28】
補強要素によって補強された少なくとも一種のジエンエラストマーをベースとしたゴム組成物を有する、重車両用または土木作業車両用のタイヤのエンベロップのクラウン保護プライとして用いられる複合テキスタイル(tissu)において、
上記補強要素が請求項1〜26のいずれか一項に記載のケーブル(C'、C1、C2)で構成される複合テキスタイル。
【請求項29】
上記ジエンエラストマーがポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー、イソプレン−ブタジエンコポリマー、イソプレン−スチレンコポリマーおよびブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーからなる群から選択される請求項28に記載の複合テキスタイル。
【請求項30】
ゴム組成物が天然ゴムをベースとする請求項29に記載の複合テキスタイル。
【請求項31】
ASTM D412規格に従う引張り方法で測定した架橋状態でのゴム組成物の割線係数(module secant) M10が5〜12MPaである請求項28〜30のいずれか一項に記載の複合テキスタイル。
【請求項32】
テキスタイル1dm当たりのケーブル密度が20〜40本のケーブルであるケーブル(C'、C1、C2)を有する請求項28〜31のいずれか一項に記載の複合テキスタイル。
【請求項33】
隣接する2本のケーブル(C'、C1、C2)間のゴム組成物のブリッジ幅トLが0.5〜1.3mmである請求項28〜32のいずれか一項に記載の複合テキスタイル。
【請求項34】
ブリッジ幅トLが0.6〜0.9mmである請求項33に記載の複合テキスタイル。
【請求項35】
請求項27に記載のケーブル(C)を有することを特徴とする自動二輪車等のモータ付き軽車両用タイヤのビードを補強するためのビードワイヤ。
【請求項36】
2つのビード中にアンカーされたカーカス補強材とこのカーカス補強材の放射方向上側に配置されたクラウン補強材とを有し、このクラウン補強材は一つまたは複数のクラウンプライとこのクラウンプライ上に載った一つまたは複数のクラウン保護プライとを有し、クラウン補強材の上部にはトレッドが載り、このトレッドは2つのサイドウォールを介してビードに連結されている重量車両またはアースムーバー用のタイヤのエンベロップにおいて、
クラウン保護プライの少なくとも一つが請求項28〜34のいずれか一項に記載の複合テキスタイルを有することを特徴とするタイヤのエンベロップ。
【請求項37】
2つのビード中にアンカーされたカーカス補強材を有する自動二輪車等のモータ付き軽車両のためのタイヤのエンベロップにおいて、各ビードが請求項35に記載のビードワイヤによって補強されていることを特徴とするタイヤのエンベロップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24611(P2010−24611A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211644(P2009−211644)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2004−516637(P2004−516637)の分割
【原出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【出願人】(599140471)ソシエテ ドゥ テクノロジー ミシュラン (96)
【出願人】(597011441)ミシュラン ルシェルシェ エ テクニク ソシエテ アノニム (94)
【Fターム(参考)】