説明

タイヤカーカス補強材用の現場ゴム引き3層コード

現場でゴム引きされた3つの層(C1,C2,C3)を備える金属コード(C‐1)であって、この金属コードは、直径dのコア又は第1の層(C1)を有し、直径dのN(Nは、5〜7)本のフィラメントが第2の層(C2)としてピッチpで螺旋の状態に第1の層に一緒に巻き付けられており、直径dのP本のフィラメントが第3の層(C3)をなしてピッチpで螺旋の状態に第2の層に一緒に巻き付けられている、コードにおいて、コードは、次の特徴(d、d、P、及びPは、mmで表される)を有し、即ち、‐0.08<d<0.40、‐0.08<d<0.35、‐0.08<d<0.35、‐5π(d+d)<p≦p<10π(d+2d+d)、‐コードの任意の2cm長さ分にわたり、「充填ゴム」(13)と呼ばれるゴムコンパウンドが一方においてコア(C1)と第2の層(C2)のN本のフィラメントとの間に且つ他方において第2の層(C2)のN本のフィラメントと第3の層(C3)のP本のフィラメントとの間に位置した毛管の各々の中に存在し、コード中の充填ゴムのレベルは、コード1g当たり5〜30mgである、コード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にゴムで作られた製品を補強するために使用可能な3層金属コードに関し、特に、「現場ゴム引き」形式の3層金属コード、即ち、実際の製造中、ゴムが未架橋状態のままで内部からゴム引きされた3層金属コードに関する。
【0002】
本発明は又、タイヤ、特に、「カーカス」とも呼ばれているタイヤのカーカス補強材中へのかかるコードの使用、特に産業車両用のタイヤのカーカスの補強材に関する。
【背景技術】
【0003】
公知のように、ラジアルタイヤは、トレッド、2つの非伸長性ビード、ビードをトレッドに連結する2つのサイドウォール及びカーカス補強材とトレッドとの間に周方向に位置決めされたベルトを有している。このカーカス補強材は、公知の仕方で、ゴムから成る少なくとも1枚のプライ(又は「層」)で構成され、このゴムプライは、産業車両用のタイヤの場合、一般に金属製の補強要素(「補強材」)、例えばコード又はモノフィラメントで補強されている。
【0004】
上述のカーカス補強材を補強するため、一般に、中央層及びこの中央層の周りに位置決めされたワイヤから成る1つ又は2つ以上の同心層で構成された「層状」スチールコードと呼ばれているものが用いられている。最も用いられる場合の多い層状コードは、本質的に、M+N+P構造のコードであり、かかるコードは、M(Mは、1〜4)本のワイヤの中央層をN(典型的には、Nは、3〜12)本のワイヤの中間層で包囲し、かかる層をそれ自体、P(典型的には、Pは、8〜20)本のワイヤの外側層で包囲したものであり、かかる組立体全体を外側層の周りに螺旋の状態に巻いた外側ラッパ又は包装体で包むことができる。
【0005】
周知のように、これら層状コードは、タイヤが走行しているときに高い応力、特に、繰り返し曲げ又は曲率の変化を受け、それにより、特に隣り合う層相互間の接触によりワイヤのところに摩擦が生じ、従って摩耗及び疲労が生じ、従って、これら層状コードは、「フレッチング疲労」と呼ばれている現象に対して高い耐性を備えなければならない。
【0006】
また、多層コードには、ゴムがコードを構成するワイヤ相互間の空間の全てに入り込むためにできるだけ遠くまでゴムを含浸させることが特に重要である。確かに、この侵入が不十分であると、コードに沿って且つコード内に空のチャネル又は毛管(又は毛管状隙間)が形成され、例えばこれらトレッドに生じた切れ目の結果としてタイヤの中に入り込みやすい腐食物質、例えば水又は空気中の酸素がこれら空のチャネルに沿ってタイヤのカーカス中に移動する。この水分の存在は、乾燥状態の雰囲気で用いられる場合と比較して、腐食を生じさせると共に上述の劣化プロセス(「腐食疲労」現象)を促進させるうえで重要な役割を果たす。
【0007】
これら疲労現象の全ては、一般に、「フレッチング腐食疲労」という包括的な用語でグループ化でき、かかる現象は、コードの機械的性質に累進的な劣化をもたらすと共に過酷な走行条件下においてコードの寿命に悪影響を及ぼす場合がある。
【0008】
上述の欠点を軽減するため、国際公開第2005/071157号パンフレットは、1+M+N構造、特に1+6+12構造の3層状コードを提案しており、かかる3層状コードの本質的な特徴のうちの1つは、ジエンゴムコンパウンドから成るシースが少なくとも、M本のワイヤで構成された中間層を覆い、コードそれ自体のコアがゴムで被覆されているか被覆されていないかのいずれかであることが可能である。この特定の設計により、先行技術のコードと比較して、腐蝕の問題を抑える優れたゴム侵入度が得られるだけでなく、耐フレッチング疲労性も又特に向上している。かくして、重量物運搬車両用タイヤの耐用寿命及びこれらのカーカス補強材の耐用寿命は、非常に目に見えて向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/071157号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、提案されているこれらコードの製造方法及びその結果として得られるコードそれ自体は、欠点がないわけではない。
【0011】
まず最初に、これら3層コードは、数個のステップで得られ、これら数個のステップは、不連続であるという欠点を有し、かかるステップでは、まず最初に、中間の1+M(特に1+6)コードを作り、次に押出ヘッドを用いてこの中間コード又はコアを外装し、最後に、外側層を形成するために残りのN(特に12)本のワイヤをこのように外装されたコア周りにケーブリングするという最終作業を行う必要がある。外側層をコア周りにケーブリングする前にゴムシースの未硬化ゴムの粘着性が非常に高いという問題を回避するために、中間スプール巻き取り及び巻き出し作業中、層間プラスチックフィルムも又使用しなければならない。これら連続して行われる取り扱い作業の全ては、工業上の観点からは問題があり、高い製造速度の達成に反する。
【0012】
さらに、コード軸線に沿うコードの考えられる限り最も低い通気度を得るためにコード中へのゴムの高い侵入レベルを達成することが望ましい場合、先行技術のこれら方法を用いると、外装作業中、ゴムを比較的多量に使用することが必要であることが判明した。量が多いことにより、製造されたばかりの完成状態のコードの周囲に未硬化ゴムの幾分顕著な望ましくないオーバースピル(あふれ出し)が生じる。
【0013】
今や、上述したように、未硬化(未架橋)状態のゴムの粘着性が非常に高いので、かかる望ましくないオーバースピルは、最終のタイヤの製造作業及び最終の硬化に先だって、未硬化状態の場合と同様、コードの後の取扱中、特にゴムのストリップ中へのコードの組み込みのために次に行われる圧延作業中、相当な不利益を生じさせる。
【0014】
上述の欠点の全ては、当然のことながら、工業的生産速度を落とし、コードの最終コスト及びこれらコードが補強するタイヤの最終コストにマイナスの影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、自分の研究の実施中、上述の欠点を軽減することができる特定の製造方法を用いることによって得られた改良型3層状コードを発明した。
【0016】
したがって、本発明の第1の要旨は、現場でゴム引きされた3つの層(C1,C2,C3)を備える金属コードであって、直径d1のコア又は第1の層(C1)を有し、直径d2のN本のワイヤが第2の層(C2)をなしてピッチp2で螺旋の状態に第2の層に一緒に巻き付けられており(Nは、5〜7)、直径d3のP本のワイヤが第3の層(C3)をなしてピッチp3で螺旋の状態に第1の層に一緒に巻き付けられている、コードにおいて、コードは、次の特徴(d1、d2、P1、及びP2は、mmで表される)を有し、即ち、
‐0.08<d1<0.40
‐0.08<d2<0.35
‐0.08<d3<0.35
‐5π(d1+d2)<p2≦p3<10π(d1+2d2+d3
‐コードの任意の2cm長さ分にわたり、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドが一方においてコア(C1)と第2の層(C2)のN本のワイヤとの間に且つ他方において第2の層(C2)のN本のワイヤと第3の層(C3)のP本のワイヤとの間に位置した毛管の各々の中に存在し、
‐コード中の充填ゴムの含有量は、コード1g当たり5〜30mgであることを特徴とするコードにある。
【0017】
本発明のこの3層状コードは、先行技術の現場ゴム引き3層状コードと比較した場合、充填ゴムの含有量が少ないという顕著な利点を有し、それにより、コードがコンパクトになり、このゴムは又、その毛管の各々の中でコードの内部に一様に分布され、かくして、コードにその軸線に沿って最適な不浸透性が与えられる。
【0018】
本発明は又、ゴムの半完成品又は製品、例えばプライ、ホース、ベルト、コンベヤベルト及びタイヤを補強するためのかかるコードの使用に関する。
【0019】
本発明のコードは、産業車両(かかる車両は、重量物を運搬する)、例えばバン、重車両と呼ばれている車両、即ち、地下軌道車両、バス、路上重量物輸送車、例えばローリ、トラクタ、トレーラ又は路上外(オフロード)走行車、農業機械又は土木作業機械及び任意型式の輸送又は取扱い車両向けのタイヤのカーカス補強材用の補強要素として使用されるのに最適である。
【0020】
本発明は又、本発明のコードで補強された場合のこれらゴム製品又は半完成品をそれ自体、特に産業車両、例えばバン又は重車両用のタイヤに関する。
【0021】
本発明の内容及びその利点は、以下の説明及び実施形態並びにこれら実施形態に関する図1〜図4に照らして容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンパクト(高密度)型の本発明の現場ゴム引き1+6+12構造のコードの概略断面図である。
【図2】コンパクト型の従来の非現場ゴム引き1+6+12構造のコードの概略断面図である。
【図3】本発明のコンパクト型コードを製造するために使用できる現場ゴム引き及びツイスティング設備の一例を示す図である。
【図4】この概略化された記載において本発明によるにせよそうでないにせよいずれにせよ、半径方向カーカス補強材を備えた重車両用タイヤケーシングの半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I−1.引張特性(ダイナモメトリック)測定
【0024】
金属ワイヤ及び金属コードに関し、破断荷重Fm(単位N(ニュートン)の最大荷重)、Rmにより示された引張強度(単位MPa)及びAtにより示された破断点伸び率(単位%の全伸び率)の測定は、1984年の規格ISO6892に従って張力下で行われる。
【0025】
ゴムコンパウンド(配合物)に関し、弾性率(モジュラス)の測定は、別段の指定がなければ、1998年の標準ASTM・D・412(試験体“C”)に従って引張下で実施され、即ち、E10と呼ばれていてMPaで表された10%伸び率における「真」の割線モジュラス(試験体の実断面に関する割線モジュラス)を1999年の規格ASTM・D・1349による通常の温度及び湿度条件下で第2の伸びで(即ち、1回の適合サイクル後に)測定する。
【0026】
I‐2.通気度試験
【0027】
この試験により、試験対象のコードの長手方向通気度を所与の時間にわたり一定の圧力下で試験体を通過した空気の量を測定することによって決定することができる。当業者には周知であるかかる試験の原理は、コードが空気に対して不透過性であるようにするためにコードの処理の有効性を実証することにある。この試験は、例えば、規格ASTM・D・2692‐98に記載されている。
【0028】
この試験は、ここでは、タイヤ又はタイヤを補強しているゴムプライから抽出したコード(従って、既に外側が硬化ゴムですでに被覆されたコード)か製造されたばかりのコードかのいずれかに対して行われる。
【0029】
後者の場合、製造されたばかりのコードは、まず最初に外部から被覆ゴムと呼ばれているゴムで被覆されなければならない。これを行うため、互いに平行であるように配列された一連の10本のコード(20mmのコード間距離)を硬化ゴムコンパウンドの2つのスキム(80×200mmの2つの長方形)相互間に配置し、各スキムの厚さは、3.5mmであり、次に、組立体全体をモールド内にクランプし、コードの各々は、クランプモジュールを用いてモールド内に配置されたときにこれが真っ直ぐのままであるようにするために十分な張力(例えば、2daN)下に維持され、加硫(硬化)プロセスは、140℃の温度で且つ15バールの圧力(80×200mmの長方形ピストンによって加えられる)下で40分にわたって行われる。その後、組立体を脱型し、ば特徴付けのために7×7×20mmの平行六面体の形態をした上述のように被覆されているコードの10個の試験体の状態に切断する。
【0030】
従来型タイヤゴムコンパウンドを被覆ゴムとして用い、かかるゴムコンパウンドは、天然(解凝固)ゴム及びN330カーボンブラック(60phr)を主成分とし、更に以下の通常の添加剤、即ち、硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)及びコバルトナフテネート(1.5phr)を更に含み(なお、phrは、ゴムの100部当たりの重量部を意味している)、被覆ゴムの弾性率E10は、約10MPaである。
【0031】
例えば、試験を以下の仕方で、ここでは包囲ゴムコンパウンド(又は被覆ゴム)で被覆されたコードの2cm長さ分について実施し、1バールの圧力下で空気をコードの入口に注入し、流量計を用いてこれから出る空気の量を測定する(例えば、0〜500cm3/分まで較正する)。測定中、コード試験体をコードの長手方向軸線に沿って一端から他端までコードを通過した空気の量だけが測定されるよう圧縮気密シール(例えば、高密度フォーム又はゴムシール)中に不動化し、シールの密封能力を前もって、中実ゴム試験体を用いて、即ち、コードなしのゴム試験体を用いてチェックする。
【0032】
コードの長手方向不透過性が高ければ高いほど、測定された平均空気流量(10個の試験体の平均値)がそれだけ一層低い。測定値は±0.2cm3/分という精度を持っているので、0.2cm3/分以下の測定値は、ゼロと見なされ、これら測定値は、コード軸線に沿って(即ち、コード長手方向に沿って)気密(完全に気密)であるといえるコードに対応している。
【0033】
I‐3.充填ゴム含有量
【0034】
充填ゴムの量は、初期コード(従って、現場ゴム引きコード)の重量と適当な電解処理によって充填ゴムを除去したコード(従って、そのワイヤのコード)の重量の差を測定することによって測定される。
【0035】
サイズを減少するためにそれ自体巻かれたコード試験片(長さ1m)は、電解槽のカソード(発電機の負端子に接続されている)を構成し、アノード(正端子に接続されている)は、白金ワイヤから成っている。
【0036】
電解質は、1リットル当たり1モルの炭酸ナトリウムを含む水溶液(脱イオン水)から成っている。
【0037】
電解質中に完全に浸漬された試験片には、15分間電圧が印加され、流れた電流は300mAである。次に、コードを浴から取り出し、十分に水ですすぎ洗いする。この処理により、ゴムをコードから容易に取り去ることができる(そうでない場合でも、電解は数分間続く)。例えば、ワイヤをコードから1本ずつほどきながら吸収布を用いてゴムを単に拭うことによりゴムを注意深く除去する。再び、ワイヤを水ですすぎ洗いし、次に脱イオン水(50%)とエタノール(50%)の混合液の入っているビーカ内に浸漬させる。ビーカを10分間超音波浴内に浸漬する。このようにして全ての微量ゴムを取り除いたワイヤをビーカから取り出し、窒素又は空気の流れ中で乾燥させ、最後に秤量する。
【0038】
このことから、計算により、10回の測定(即ち、全部でコード10m分について)の平均された初期コードの1g(グラム)当たりの充填ゴムのmg(ミリグラム)で表わされたコード中の充填ゴム含有量が導き出される。
【0039】
II.発明の詳細な説明
【0040】
本明細書において、別段の指定がなければ、百分率(%)は全て、重量パーセントである。
【0041】
さらに、「aとbとの間」(又は「a〜b」)という表現によって示される値域は、aよりも大きい値からbよりも小さい値までの範囲を表わし(即ち、端点a,bは排除される)、これに対し、「aからbまで」という表現によって示される間の値は、aからbまでの値の範囲を意味している(即ち、厳密な意味での端点a,bは含まれる)。
【0042】
II‐1.本発明のコード
【0043】
したがって、本発明の金属コードは、次の3つの同心層、即ち、
‐直径d1の第1の層(C1)、
‐第1の層の周りにピッチp2で螺旋の状態に一緒に巻き付けられた直径d2のN(Nは、5〜7)本のワイヤを含む第2の層(C2)、及び
‐第2の層の周りにピッチp3で螺旋の状態に一緒に直径d3のP本のワイヤを含む第3の層(C3)を有する。
【0044】
公知のように、第1の層は、コードのコアとも呼ばれており、第1の層及び第2の層は一緒になって、慣例上コードの中心と呼ばれている部分を形成する。
【0045】
本発明のコードは又、次の本質的な特徴(d1、d2、P1、及びP2は、mmで表される)を有する。
‐0.08<d1<0.40
‐0.08<d2<0.35
‐0.08<d3<0.35
‐5π(d1+d2)<p2≦p3<10π(d1+2d2+d3
‐コードの任意の2cm長さ分にわたり、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドが一方においてコア(C1)と第2の層(C2)のN本のワイヤとの間に且つ他方において第2の層(C2)のN本のワイヤと第3の層(C3)のP本のワイヤとの間に位置した毛管の各々の中に存在する。
‐コード中の充填ゴムの含有量は、コード1g当たり5〜30mgであることを特徴とするコードにある。
【0046】
本発明のこのコードは、現場ゴム引きコードと呼ばれる場合があり、一方においてコア(C1)と第2の層(C2)のN本のワイヤとの間に位置すると共に他方において第2の層(C2)のN本のワイヤと第3の層(C3)のP本のワイヤとの間に位置した毛管又は隙間(隣り合うワイヤにより形成されていて、充填ゴムが存在しない場合には空の空間)の各々は、少なくとも部分的に、連続して又はコードの軸線に沿って、充填ゴムで満たされており、その結果、コードの任意の2cm長さ分に関して、毛管の各々は、ゴムで作られた少なくとも1つの栓を有する。
【0047】
特に好ましい一実施形態によれば、コードの任意の2cm長さ分にわたり、上述の各毛管又は隙間は、この毛管又は隙間を防ぐゴムで作られた少なくとも1つの栓を有し、段落I‐2に記載された通気度試験において、本発明のコードの平均空気流量は、2cm3/分未満である、より好ましくは0.2cm3/分未満であり又はせいぜい0.2cm3/分に等しい。
【0048】
本発明のコードの他の本質的な特徴は、その充填ゴム含有量がコード1g当たり5〜35mgの充填ゴムであるということにある。指定した最小値を下回る場合、充填ゴムは、少なくとも2cmのコードの長さにわたり、コードの隙間の各々の中に少なくとも部分的に正しく存在するようにすることは可能ではなく、これに対し、指定した最大値を上回る場合、充填ゴムがコードの周囲のところでオーバースピルを生じることに起因した上述の種々の問題がコードに生じる場合がある。これらの理由の全てにより、充填ゴム含有量は、コード1g当たり5〜25mg、より好ましくは5〜20mg、特に10〜20mgであることが好ましい。
【0049】
かかる充填ゴム含有量は、この含有量が上述の限度内で制御されることと相まって、コードの幾何学的形状に適合した特定のツイスティング‐ゴム引きプロセスを実施することによってのみ可能になり、これについては以下に詳細に説明する。
【0050】
この特定のプロセスの実施により、充填ゴムの量が制御されたコードを得ることができるが、それと同時に、ゴムの内部仕切り(コードの軸線に沿って連続ししおり又は不連続である)又は栓が本発明のコードの毛管中に存在し、しかも十分な数で存在するようになり、かくして、本発明のコードは、コードに沿う腐食性流体、例えば水又は空気中の酸素の広がりに対して不透過性であるようになり、かくして、本明細書の導入部に記載されたウィッキング効果がなくなる。
【0051】
かくして、次の特徴、即ち、コードの任意の2cm長さ分に関し、コードが長手方向に気密であり又は事実上気密であるという特徴が実現される。換言すると、各毛管は、この2cm長さ分に関して充填ゴムの少なくとも1つの栓(又は内部仕切り)を有し、従ってかかるコード(いったん外部からポリマー、例えばゴムで被覆されると)がその長手方向に気密であり又は事実上気密であるようになる。
【0052】
段落I‐2で説明した通気度試験では、長手方向に「気密」であると言えるコードは、平均空気流量が0.2cm3/分未満であり又はせいぜいこれに等しいことを特徴とし、これに対し、長手方向に「事実上気密」であると言えるコードは、平均空気流量が2cm3/分未満、より好ましくは1cm3/分未満であるという特徴を有する。
【0053】
本発明のコードのコア(C1)は、好ましくは、単一のワイヤ又はせいぜい2本のワイヤで構成され、例えば、せいぜい2本のワイヤは、互いに平行であるか撚り合わされているかのいずれかであることが可能である。しかしながら、より好ましくは、本発明のコードのコア(C1)は、単一のワイヤから成る。
【0054】
コードの強度、実現可能性、剛性及び曲げ耐久性の相互間の最適化された妥協策を得るため、層C1,C2,C3中のワイヤの直径は、これらワイヤが1つの層と次の層とで同一の直径を有しているにせよそれでないにせよいずれにせよ、以下の関係式を満足させることが好ましい(なお、d1、d2、d3は、mmで表される)。
‐0.10<d1<0.35
‐0.10<d2≦0.30
‐0.10<d3≦0.30
【0055】
更により好ましくは、以下の関係式が満足される。
‐0.10<d1<0.28
‐0.10<d2<0.25
‐0.10<d3<0.20
【0056】
別の特定の実施形態では、次の特徴、即ち、
‐N=5の場合、0.6<(d1/d2)≦0.9
‐N=6の場合、0.9<(d1/d2)≦1.3
‐N=7の場合、1.3<(d1/d2)≦1.6
が満たされる。
【0057】
層C2,C3中のワイヤは、1つの層と次の層とで同一であり又は異なる直径を有することができ、好ましくは、1つの層と次の層で同一の直径を有するワイヤ(即ち、d2=d3)が用いられる。というのは、これにより、特に、コードの製造が単純化されると共にコードのコストが減少するからである。
【0058】
好ましくは、次の関係式が満足される。
〔数1〕
5π(d1+d2)<p2≦p3<5π(d1+2d2+d3
【0059】
公知のように、ここで思い起こされるように、ピッチ“p”は、コードの軸線に平行に測定した長さを表わし、その後、このピッチを有するワイヤは、コードの上記軸線回りに丸1回転する。
【0060】
ピッチp2,p3は、特に、d2=d3の場合、より好ましくは、5〜30mm、より好ましくは、5〜20mmの範囲で選択される。
【0061】
別の特定の実施形態によれば、ピッチp2,p3は、互いに等しい。これは、特に、例えば図1に概略的に記載されているようなコンパクト型の層状コードの場合であり、かかる場合、2つの層C2,C3は、同一のツイスティング方向(S/S又はZ/Z)に巻回されるという追加の特徴を備えている。かかるコンパクト型層状コードでは、コンパクトさは、ワイヤの別個独立の層が事実上見えないようなものであり、これが意味することは、かかるコードの断面が例えば図1(本発明のコンパクト型1+6+12コード)又は図2(コントロールとしての1+6+12コンパクト型コード、即ち現場でゴム引きされていないコード)に記載されているように多角形であって円筒形ではない輪郭を有するということである。
【0062】
第3の層、即ち外側層C3は、飽和層であるという有利な特徴を有し、即ち、定義上、この層中には、直径d3の少なくとも1本の(Pmax+1)番目のワイヤが追加されるのに十分な余地が存在せず、Pmaxは、第2の層C2の周りに層として巻回できるワイヤの最大本数を表わしている。この構造は、充填ゴムのその周囲のところでのオーバースピルの恐れを一段と制限し、コード直径が所与の場合、高い強度をもたらすという顕著な利点を有している。
【0063】
かくして、ワイヤの本数Pは、本発明の特定の実施形態に応じて、非常に広範にさまざまな場合があり、好ましくは外側層を飽和状態に保つために第2の層のワイヤの直径d2と比較してこれらの直径d3を減少させると増大させることができることは理解されよう。
【0064】
より好ましい実施形態によれば、層C3は、10〜14本のワイヤを含み、上述のコードのうちで特に選択されたコードは、層C2から層C3まで実質的に同一の直径(即ち、d2=d3)を有するワイヤから成るコードである。
【0065】
特に好ましい実施形態によれば、第1の層は、単一のワイヤを含み、第2の層(C2)は、6本のワイヤ(Nは、6に等しい)を含み、第3の層(C3)は、11又は12本のワイヤ(Pは、11又は12に等しい)を含む。換言すると、本発明のコードは、好ましい構造1+6+11又は1+6+12のものである。
【0066】
本発明のコードは、任意の層状コードの場合と同様、2タイプ、即ちコンパクトな層タイプ又は円筒形層タイプのものであるのが良い。
【0067】
好ましくは、2つの層C2,C3は、同一のツイスティング方向、即ちS方向(“S/S”構造)かZ方向(“Z/Z”構造)かのいずれかに巻かれている。これら層を同一方向に巻くことにより、有利には、これら2つの層相互間の摩擦が最小限に抑えられ、従ってこれらを構成しているワイヤに対する摩耗が最小限に抑えられる。より好ましくは、これら層は、例えば図1に示されているコードと同様、コンパクトなタイプのコードを得るために、同一撚り方向に且つ同一ピッチ(即ち、p2=p3)で巻かれる。
【0068】
本発明のコードの構成により、有利には、包装ゴムを省くことができる。というのは、ゴムがその構造体中に良好に侵入し、自動包装効果を与えるからである。
【0069】
「金属コード」という用語は、本願における定義上、主として(即ち、これらワイヤの本数の50%を超える)又は全体が(ワイヤの100%が)金属材料で作られたワイヤで形成されているコードを意味するものと理解されたい。
【0070】
コア(C1)の1本又は複数本のワイヤ、第2の層(C2)の複数本のワイヤ及び第3の層(C3)の複数本のワイヤは、互いに別個独立に又は1つの層から別の層まで、好ましくは、スチールで作られ、より好ましくは炭素鋼で作られる。しかしながら、当然のことながら、他のスチール、例えばステンレス鋼又は他の合金を用いることが可能である。
【0071】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量を基準とした%)は、好ましくは、0.4%〜1.2%、特に0.5%〜1.1%である。より好ましくは、炭素含有量は、0.5%〜1.1%であり、これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質とワイヤの実現可能性との間の良好な妥協点となっている。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量は、最終的に、かかるスチールを安価にする。というのは、これらは、引き抜き加工が容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、意図した用途に応じて、特にコストが低く且つ引き抜き加工性が良好なので、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量のスチールを用いることができる。
【0072】
用いられる金属又はスチールは、特に炭素鋼であれステンレス鋼であれいずれにせよ、それ自体例えば金属コード及び/又はその構成要素の加工特性又はコード及び/又はタイヤそれ自体の使用特性、例えば粘着性、耐腐食性又は耐老化性を向上させる金属層で被覆されるのが良い。好ましい実施形態によれば、用いられるスチールは、真鍮(Zn‐Cu合金)の層又は亜鉛の層で被覆される。思い起こされるように、ワイヤ製造プロセス中、真鍮又は亜鉛被覆は、ワイヤ引き抜き加工を容易にすると共にゴムへのワイヤの結合性を良好にする。しかしながら、ワイヤは、例えばこれらワイヤの耐腐食性及び/又はゴムへのこれらの付着性を向上させる機能を備えた真鍮又は亜鉛以外の薄い金属層、例えばCo、Ni、Al又はCu、Zn、Al、Ni、Co及びSnのうちの2つ又は3つ以上の合金の薄い層で被覆されても良い。
【0073】
本発明のコードは、好ましくは、炭素鋼で作られ、好ましくは2500MPa以上、より好ましくは3000MPa以上の引張強さ(Rm)を有する。構造的伸び、弾性伸び及び塑性伸びの合計であるコードの破断点全伸び率は、好ましくは、2.0%を超え、より好ましくは少なくとも2.5%を超える。
【0074】
充填ゴムのエラストマー(又は区別なく言えば「ゴム」、これら2つの用語は、同義語であると見なされる)は、好ましくは、ジエンエラストマー、即ち、定義上、少なくとも一部(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)がジエンモノマー(即ち、2つの共役又は違った仕方の炭素‐炭素二重結合を備えたモノマー)に由来するエラストマーである。ジエンエラストマーは、より好ましくは、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のブタジエンコポリマー、種々のイソプレンコポリマー、及びこれらエラストマーの混合物から成る群から選択される。かかるコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン‐スチレンコポリマー(SBR)(乳化重合(ESBR)によって調製されるにせよ溶液重合(SSBR)によって調製されるにせよ、いずれにせよ)、ブタジエン‐イソプレンコポリマー(BIR)、スチレン‐イソプレンコポリマー(SIR)及びスチレン‐ブタジエン‐イソプレンコポリマー(SBIR)から成る群から選択される。
【0075】
好ましい一実施形態は、「イソプレン」エラストマー、即ち、イソプレンのホモポリマー又はコポリマー、換言すると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー及びこれらエラストマーの混合物から成る群から選択されたジエンエラストマーを用いることから成る。イソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム又はシス−1,4系の合成ポリイソプレンである。これら合成ポリイソプレンのうち、好ましくは、シス−1,4結合の含有量(モル%)が90%以上、より好ましくは98%以上のポリイソプレンが用いられる。他の好ましい実施形態によれば、イソプレンエラストマーを別のジエンエラストマー、例えばSBR系及び/又はBR系のエラストマーと組み合わせても良い。
【0076】
充填ゴムは、特にジエンエラストマーのちょうど1種類のエラストマー又は数種類のエラストマーを含むのがよく、これ又はこれらは、エラストマー以外の任意の種類のポリマーと組み合わせて使用することが可能である。
【0077】
充填ゴムは、架橋可能なタイプのものであり、即ち、定義上、配合物の硬化プロセス(即ち、配合物を加熱すると、配合物が溶融するのではなく硬化するようになる)中に架橋することができるようにするのに適した架橋系を含み、かくしてかかる場合、このゴム配合物は、非溶融型としての性質を有する。というのは、温度がどのようなものであっても、加熱によってはかかるゴム配合物を溶融させることができないからである。好ましくは、ジエンゴム配合物の場合、ゴムシースに関する架橋系は、加硫系と呼ばれており、即ち、硫黄(又は硫黄ドナー作用剤)及び少なくとも1種類の加硫促進剤を利用したものである。種々の公知の加硫活性剤をこの加硫系に添加するのがよい。硫黄は、0.5〜10phr、より好ましくは1〜8phrの好ましい量で用いられる。加硫促進剤、例えば、スルフェンアミド(sulphenamide)は、0.5〜10phr、より好ましくは0.5〜5.0phrの好ましい量で用いられる。
【0078】
充填ゴムは、上述の架橋系に加えて、タイヤの製造向きのゴムマトリックス中に通常用いられる添加剤、例えば、補強充填剤、例えばカーボンブラック又は無機充填剤、例えばシリカ、結合剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑化剤、又はエキステンダ油(後者は、性質上芳香性であるにせよ非芳香性であるにせよ、いずれにせよ)、特に、ほんの僅かに芳香性であり或いは全く芳香性ではない油、例えば、粘度の高い又は好ましくは低いナフテン系の油又はパラフィン系の油、MES又はTDAE油、30℃よりも高いTgの可塑化樹脂、非硬化状態の組成物の処理(処理性)を容易にする作用剤、粘着性樹脂、加硫戻り防止剤、メチレン受容体及び供与体、例えばHMT(ヘキサメチレンテトラミン)又はH3M(ヘキサメトキシメチルメラミン)、補強樹脂(例えばレソルチノール又はビスマレイミド)、金属塩、例えばコバルト若しくはニッケル塩又はランタニド塩の公知の密着性促進(定着)系のうち全て又は幾つかを更に含むのがよい。
【0079】
補強充填材、例えば、カーボンブラック又は補強無機充填材、例えばシリカの含有量は、好ましくは、50phr以上、例えば、50〜120phrである。カーボンブラックとして、例えば、あらゆるカーボンブラック、特に、タイヤに従来用いられていたタイプHAF、ISAF及びSAF型のカーボンブラック(タイヤ等級ブラックと呼ばれている)が適している。これらのうちで、ASTM300、600又は700等級のカーボンブラック(例えば、N326、N330、N347、N375、N683、N772)を特に挙げることができる。適当な補強無機充填剤は、特に、シリカ系(SiO2)の鉱物充填剤であり、特に、BET表面積が450m2/g以下、好ましくは30〜400m2/gの沈降又は高熱分解法シリカである。
【0080】
当業者であれば、本明細書の説明に照らして、所望レベルの特性(特に、弾性モジュラス)を達成すると共に処方を特定の意図した用途に適合させるために充填ゴムの処方を調整することができる。
【0081】
本発明の第1の実施形態によれば、充填ゴムゴムの処方は、本発明のコードが補強しようとしているゴムマトリックスの処方と同一であるように選択されるので、充填ゴムの材料と上記ゴムマトリックスの材料との間には適合性に関する問題は生じないであろう。
【0082】
本発明の第2の実施形態によれば、充填ゴムの配合は、本発明のコードが補強しようとするゴムマトリックスの配合とは異なるよう選択されるのが良い。特に、充填ゴムの処方は、比較的多量の密着性促進剤、典型的には例えば5phrから15phrの金属塩、例えばコバルト塩又はニッケル塩を用いると共に有利には周りのゴムマトリックス中のこれら密着性定着剤の量を減少させることにより(又はそれどころか、これを完全になくすことにより)調節可能である。また、当然のことながら、充填ゴムの粘度及びかくしてそのコードの製造中におけるコード中へのその能力を最適化する目的で充填ゴムの処方を調節できる。
【0083】
好ましくは、充填ゴムは、架橋状態では、2〜25MPa、より好ましくは3〜20MPa、特に3〜15MPaの伸び率E10(10%伸び率における)割線モジュラスを有する。
【0084】
本発明は、当然のことながら、未硬化状態(充填ゴムが加硫されていない)と硬化状態(充填ゴムが加硫されている)の両方における上述のコードに関する。しかしながら、本発明のコードを充填ゴムが未硬化状態で用い、その後、このコードが用いられるようになった半完成品又は完成品、例えばタイヤ中にコードが導入されて充填ゴムと周りのゴムマトリックス(例えば、圧延ゴム)との間の結合を最終架橋又は加硫中に促進することが好ましい。
【0085】
図1は、本発明の好ましい1+6+12コードの一例をコード(真っ直ぐであると共に休止状態にあると仮定されている)の軸線に垂直な断面で概略的に示している。
【0086】
このコード(C‐1で示されている)は、コンパクト型のものであり、即ち、その第2の層及び第3の層(それぞれC2及びC3)が同一方向に(公認の命名法を用いるとS/S又はZ/Z)に巻かれると共にこれに加えて同一ピッチ(p2=p3)を有している。この種の構造は、これら第2の層及び第3の層(C2,C3)のワイヤ(11,12)が、コア(10)又は第1の層(C1)の周りに、各々がいわゆる円筒形層タイプのコードの場合のように円筒形ではなく、実質的に多角形(具体的に言えば六角形)である輪郭(E)を有する2つの実質的に同心の層を形成するという結果をもたらす。
【0087】
充填ゴム(13)は、非常に僅かに離れたコードの種々の層(C1,C2,C3)の隣り合うワイヤ(3本ずつの状態であると考えられる)によって形成された各毛管(14)(三角形によって表されている)を充填している。理解できるように、これら毛管又は隙間は、当然のことながら、コアワイヤ(10)及びこの周りの第2の層(C2)のワイヤ(11)か、第2の層(C2)の2本のワイヤ(11)及びこれらのすぐ隣りに位置する第3の層(C3)の1本のワイヤ(13)かのいずれかによって形成され、変形例として、更に、第2の層(C2)の各ワイヤ(11)及びこのすぐ隣りに位置する第3の層(C3)の2本のワイヤ(12)によって形成され、かくして、全体として、この1+6+12コードには24個の毛管又は隙間(14)が存在する。
【0088】
好ましい実施形態によれば、本発明のコードでは、充填ゴムは、これが覆う第2の層(C2)周りに連続的に延びる。
【0089】
比較すると、図2は、これ又コンパクト型の従来型1+6+12コード(C‐2で示されている)、即ち、コンパクト型の場合と同様、現場でゴム引きされていないコードの残部を断面で示している。充填ゴムが設けられていないことは、事実上全てのワイヤ(20,21,22)が互いに接触状態にあり、その結果、特にコンパクトであるが、他方において、ゴムが外部から侵入するのを更に極めて困難にする(不浸透性であるというわけではない)構造体が生じる。この種のコードの特徴は、3本ずつの形態の種々のワイヤがチャネル又は毛管(24)を形成し、これらチャネル又は毛管は、これらが多数である場合、閉鎖されると共に空のままであり、従って「ウィッキング」効果により腐食性媒体、例えば水の伝搬に都合が良い。
【0090】
本発明のコードは、例えば外側層(C3)のピックよりも小さいピッチで且つ外側層(C3)の巻回方向とは逆の又はこれと同一の巻回方向においてコードの周りに螺旋として巻かれた単一の金属又は非金属製の外側包装体を備えるのが良い。しかしながら、本発明の既に自己包装されたコードは、一般的には、その特定の構造により、外部包装細線の使用を必要とせず、これにより、有利には、包装体とコードの最も外側の層のワイヤとの間の摩擦の問題が解決される。
【0091】
しかしながら、包装細線が用いられる場合、外側層のワイヤが炭素鋼で作られている一般的な場合、有利には、例えば国際公開第98/41682号パンフレットによって教示されているようにステンレス鋼包装体と接触状態にあるこれら炭素鋼ワイヤのフレッチング摩耗を減少させるためにステンレス鋼で作られた包装細線を選択すると有利であり、潜在的には、ステンレス鋼ワイヤに代えて、均等例として、欧州特許出願公開第976541(A)号明細書に記載されているように外層又はスキンだけがステンレス鋼で作られ、コアが炭素鋼で作られている複合細線を用いることが可能である。また、国際公開第03/048447号パンフレットに記載されているようにポリエステル又はサーモトロピック芳香族ポリエステルアミドで作られた包装体を用いることが可能である。
【0092】
当業者であれば理解されるように、上述した本発明のコードは、ジエンエラストマー以外のエラストマーを主成分とする充填ゴム、公知のように、架橋又は加硫を必要とせず、使用温度において、加硫ジエンエラストマーの特性とほぼ同じ特性を示す特に熱可塑性エラストマー(TPE)、例えばポリウレタンエラストマー(TPU)で潜在的に現場でゴム引き可能である。
【0093】
しかしながら、特に好適な例として、本発明は、上述したジエンエラストマーを主成分とする充填ゴムを用いて、特に、かかるエラストマーに特に好適である特定の製造プロセスの使用により具体化される。この製造プロセスについて以下に詳細に説明する。
【0094】
II‐2.本発明のコードの製造
【0095】
好ましくはジエンエラストマーを用いて現場ゴム引きされた上述の本発明のコードは、インラインで且つ連続して実施される次の4つのステップ、即ち、
‐まず最初に、「コアストランド」と呼ばれる中間コード(C1+C2)(特に、コアが単一のワイヤで形成される場合、1+N構造のコード)を「組み立て箇所」と呼ばれる箇所で形成するためにコア(C1)周りにN本のワイヤをツイスティングすることによる組み立てステップ、
‐次に、組み立て箇所の下流側において、M+N本のコアストランドを未硬化状態(即ち、未架橋状態)の充填ゴムで外装する外装ステップ、
‐次いで、P本のワイヤをこのように外装されたコアストランドの周りにツイスティングする組み立てステップ、及び
‐次に撚りのバランスを取る最終ステップを有する方法によって製造できる。
【0096】
ここで思い起こされるように、金属ワイヤを組み立てるための2つの考えられる技術、即ち、
‐ケーブリング(cabling)(かかる場合、ワイヤは、組み立て箇所の前後における同期回転に鑑みてこれら自身の軸線回りの撚りを示さない)、
‐又は、ツイスティング(twisting)(かかる場合、ワイヤは、一括的な撚りとこれら自身の軸線回りの個々の撚りの両方を示し、それによりワイヤの各々にはアンツイスティング(撚りをほどく)トルクが生じる)が存在する。
【0097】
上述の方法の本質的な一特徴は、第2の層(C2)をコア(C1)の周りに組み立てると共に第3の層又は外側層(C3)を第2の層(C2)の周りに組み立てるツイスティングステップの使用にある。
【0098】
最初のステップ中、第2の層(C2)のN本のコアワイヤをコア(C1)の周りに互いにツイスティングして(S又はZ方向)それ自体周知の仕方でコアストランド(C1+C2)を形成し、N本のワイヤを共通のツイスティング箇所(又は組み立て箇所)に収斂させるようになった供給手段、例えばスプール、分離格子(組み立てガイドに結合されているにせよそうでないにせよいずれにせよ)によってワイヤを送り出す。
【0099】
次に、このようにして形成されたコアストランド(C1+C2)を押出スクリュにより適当な温度で供給された未硬化充填ゴムで外装する。かくして、単一押出ヘッドによって少量の充填ゴムを単一の固定箇所に送り出すことができる。
【0100】
このプロセスは、初期ツイスティング、ゴム引き及び最終ツイスティングからなる作業全体を製造されるコードの形式がどのようなものであれ(コンパクト型コード又は円筒形層付きコード)インラインで且つ単一ステップで実施することができ、しかもこれを全て高速で実施することができるという利点をもたらす。上述のプロセスを50m/分を超え、好ましくは70m/分を超え、特に100m/分を超える速度(ツイスティング‐ゴム引きラインに沿うコードの走行速度)で実施することができる。
【0101】
組み立て箇所の下流側(従って、押出ヘッドの上流側)において、コアストランドに加えられる引張応力は、好ましくは、ワイヤの破断強度の10〜25%である。
【0102】
押出ヘッドは、1つ又は2つ以上のダイ、例えば、上流側案内ダイ及び下流側サイジングダイを有するのが良い。コードの直径を連続的に測定すると共に制御する手段を追加するのが良く、これらは、押出機に連結される。好ましくは、充填ゴムの押出温度は、50℃〜120℃、より好ましくは50℃〜100℃である。
【0103】
押出ヘッドは、かくして、回転筒体の形状を備えた外装ゾーンを構成し、その直径は、好ましくは、0.15mm〜1.2mm、より好ましくは0.2〜1.0mmであり、その長さは、好ましくは、4〜10mmである。
【0104】
かくして、押出ヘッドによって送り出される充填ゴムの量は、最終のコードでは、この量がコード1g当たり5〜30mg、好ましくは5〜25mg、より好ましくは5〜20mg、特に10〜20mgであるように容易に調節できる。
【0105】
代表的には、押出ヘッドを出る際、コードのコア(C1+C2)(又はM+Nコアストランド)は、その周囲のあらゆる箇所のところで好ましくは5μmを超え、より好ましくは10μmを超える、特に10〜50μmの最小厚さの充填ゴムで被覆される。
【0106】
先行する外装ステップの終わりにおいて、プロセスでは、第3のステップの際、この場合も又このようにして外装されたコアストランド(C1+C2)の周りに第3の層又は外側層(C3)のP本のワイヤをツイスティングする(S又はZ方向)ことによって最終組み立てを行う。ツイスティング作業中、P本のワイヤは、充填ゴムに当たり、これで覆われた状態になる。すると、これらP本の外側ワイヤにより及ぼされる圧力によって変位した充填ゴムは、当然のことながら、コアストランド(C1+C2)と外側層(C3)との間にワイヤによって空の状態のままになっている隙間又はキャビティの各々を少なくとも部分的に充填する傾向を持つ。
【0107】
この段階においては、本発明のコードは、完成されておらず、中心内に存在し、コア(C1)及び第2の層(C2)のN本のワイヤによって画定された毛管は、まだ充填ゴムで一杯にはなっておらず、或いは、どの場合であっても、最適通気度のコードを得るのに十分な充填状態にはない。
【0108】
必要不可欠な次のステップは、コードを撚りバランス取り手段に通すことである。「撚りバランス取り」という用語は、この場合、公知のように、第3の層又は外側層(C3)の場合と同様、第2の層又は中間層(C2)中のコードの各ワイヤに及ぼされる残留ツイスティングトルク(又はアンツイスティングスプリングバック)の打ち消しを意味しているものと理解されたい。
【0109】
撚りバランス取りツールは、ツイスティング技術における当業者には周知であり、これら撚りバランス取りツールは、例えば、「ストレートナ」及び/又は「ツイスタ」及び/又は「ツイスタ‐ストレートナ」から成る場合があり、これらは、ツイスタの場合のプーリかストレートナの場合の小径ローラかのいずれかを有し、コードは、プーリ又はローラを通って走行する。
【0110】
経験上、これらバランス取りツールの通過中、第2の層(C2)のN本のワイヤに加えられるツイスティングは、依然として高温であり且つ比較的流動的な充填ゴムを生の状態(即ち、未架橋又は未硬化充填ゴム)で外部からコードのコアに向かってコア(C1)及び第2の層(C2)のN本のワイヤによって形成された毛管中に真っ直ぐに押し込み又は駆動するのに十分であると見なされ、最後に、本発明のコードにこれを特徴付ける優れた通気度特性を与える。また、矯正ツールを用いることによって提供される矯正機能は、ストレートナのローラと第3の層(C3)のワイヤとの間の接触により、充填ゴムに追加の圧力が及ぼされ、かくして本発明のコードの第2の層(C2)と第3の層(C3)との間に存在する毛管への侵入が一段と促進されるという利点を有すると考えられる。
【0111】
換言すると、上述のプロセスは、充填ゴムをコードの内部に自然に且つ一様に分布すると同時に供給される充填ゴムの量を完全に制御するようコードの最終製造段階においてワイヤの撚りを用いる。
【0112】
かくして、予期せぬこととして、コア(C1)周りのN本のワイヤの組み立て箇所の下流側でゴムを被着させると同時に単一押出ヘッドの使用により送り出される充填ゴムの量を制御すると共に最適化することにより充填ゴムを本発明のコードのまさに心臓部中に侵入させることが可能であることが判明した。
【0113】
この最終撚りバランス取りステップ後においては、本発明のコードの製造は完了している。好ましくは、この完成後のコードでは、コードの2本の隣り合うワイヤ(これらワイヤがどれであれ)相互間の充填ゴムの厚さは、1〜10μmである。このコードを貯蔵のために受け入れスプールに巻き付けるのが良く、その後、例えば、例えばタイヤカーカス補強材として使用可能な金属/ゴム複合ファブリックを調製するために圧延設備に通してこれを処理する。
【0114】
上述の方法により、周囲に充填ゴムが存在せず(又は事実上存在しない)コードを製造することが可能である。かかる表現は、コードの周囲上には裸眼で見える充填ゴムが存在していないということを意味しており、即ち、当業者であっても、製造後、裸眼では且つ3メートル以上の距離を置いたところでは本発明のコードのスプールと現場でゴム引きされなかった従来型コードのスプールの差を識別することができない。
【0115】
当然のことながら、この方法は、4ンパクト型コード(思い起こされるように、定義上、層C2及び層C3を同一ピッチで同一方向に巻いたコード)と円筒形層状コード(思い起こされるように、定義上、層C2及び層C3を互いに異なるピッチ(これらのツイスティング方向が同一であってもそうでなくても)で若しくは互いに逆方向(これらのピッチが同一であっても異なっていても)に巻いたコード)の両方の製造に利用できる。
【0116】
この方法を実施するために好ましくは使用できるゴム引き/組み立て装置は、形成中のコードの移動方向で見て上流側から下流側に、次の順序で、
‐一方においてコア(C1)を供給し、他方において第2の層(C2)のN本のワイヤを供給する供給手段、
‐N本のワイヤをツイスティングして組み立て箇所と呼ばれる箇所で第2の層(C2)を第1の層(C1)の周りに被着させて「コアストランド」と呼ばれる中間コードを形成する第1の組み立て手段、
‐この組み立て箇所の下流側でコアストランドを外装する手段、
‐外装手段の出口のところに設けられていて、P本のワイヤをこのようにして外装されたコアの周りにツイスティングして第3の層(C3)を形成する第2の組み立て手段、及び最後に、
‐第2の組み立て手段の出口のところに設けられた撚りバランス取り手段を有する。
【0117】
図3は、静止供給装置及び回転受け取り装置を備えた形式のツイスティング組み立て装置(30)の一例を示しており、かかる装置は、コンパクト型コード(p1=p2且つ層C2及び層C3の同一ツイスティング方向)の製造に利用できる。この装置では、供給手段(310)は、分配格子(32)(非対称分配装置)を通ってN本のワイヤ(31)を単一のコアワイヤ(C1)の周りに送り出し、かかる格子は、組み立てガイド(33)に結合されていても良くそうでなくても良く、N本のワイヤは、1+N(例えば1+6)構造のコアストランド(C1+C2)を形成するために、組み立てガイドを越えて組み立て箇所(34)に収斂する。
【0118】
コアストランド(C1+C2)は、いったん形成されると、次に、外装ゾーンを通過し、この外装ゾーンは、例えば、単一押出ヘッド(35)から成る。収斂箇所(34)と外装箇所(35)との間の距離は、例えば、50cm〜1mである。供給手段(370)によって送り出された外側層(C3)のP本、例えば12本のワイヤ(37)は、次に、矢印の方向に沿って進んでいる上述のようにゴム引きされたコアストランド(36)の周りにツイスティングされることにより組み立てられる。このようにして形成された最終コード(C1+C2+C3)は、例えばストレートナ又はツイスタ‐ストレートナから成る撚りバランス取り手段(38)を通過した後、回転受け取り装置(19)上に最終的に集められる。
【0119】
ここで思い起こされるように、当業者には周知であるように、円筒形層状型のコード(層C2及び層C3に関してピッチp1,p2が互いに異なると共に/或いはツイスティング方向が互いに異なる)を製造するためには、例えば上述の(図3に記載されている)装置(図5)とは異なる2つの回転(供給又は受け取り)部材を有する装置が用いられる。
【0120】
II‐3.タイヤカーカス補強材中へのコードの使用
【0121】
本明細書の導入部において説明したように、本発明のコードは、特に産業車両用タイヤのカーカス補強材向きである。
【0122】
一例として、図4は、この全体的な略図では本発明のものであっても良くそうでなくても良い金属カーカス補強材を備えたタイヤの半径方向断面を概略的に示している。このタイヤ1は、クラウン補強材又はベルト6によって補強されたクラウン2、2つのサイドウォール3及び2つのビード4を有し、これらビード4の各々は、ビードワイヤ5によって補強されている。クラウン2の上には、トレッド(この略図には示されていない)が載っている。カーカス補強材7が各ビード4内で2つのビードワイヤ5の周りに巻かれており、この補強材7の上曲がり部又は巻き上げ部8は、例えば、タイヤ1の外側に向かって位置決めされており、このタイヤは、そのリム9に取り付けられた状態で示されている。それ自体公知のように、カーカス補強材7は、「ラジアル」コードと呼ばれている金属コードによって補強された少なくとも1枚のプライによって構成され、このことは、これらコードが事実上互いに平行に延び且つ子午線周方向平面(タイヤの回転軸線に垂直な平面であり、この平面は、2つのビード4相互間の中間に位置し、クラウン補強材6の中央を通過している)と80°〜90°の角度をなすよう一方のビードから他方のビードまで延びている。
【0123】
本発明のタイヤは、そのカーカス補強材7が少なくとも、少なくとも1枚のカーカスプライの補強材として、本発明の金属コードを有しているということを特徴としている。当然のことながら、このタイヤ1は、公知のように、タイヤの半径方向内側フェースを備えると共にタイヤ内部の空間から来た空気の拡散からカーカスプライを保護するようになったゴムコンパウンド又はエラストマーの内側層(通常、「内側ライナ」と呼ばれる)を更に有する。
【0124】
このカーカス補強プライでは、本発明のコードの密度は、好ましくは、カーカスプライの1dm(デシメートル)当たり好ましくは30〜160本、より好ましくは50〜100本のコードであり、軸線から軸線までの2本の隣り合うコード相互間の距離は、好ましくは、0.6〜3.5mm、より好ましくは1.25〜2.2mmである。
【0125】
本発明のコードは、好ましくは、2本の隣り合うコード相互間のゴムブリッジの幅(Lcで示されている)が0.25〜1.5mmであるように配置されている。公知のように、この幅Lcは、圧延ピッチ(ゴムファブリック中のコードの布設ピッチ)とコードの直径の差を表わしている。指定した最小値を下回る場合、ゴムブリッジは、幅が狭すぎる場合があり、プライの稼働中、特に伸び又は剪断によってそれ自体の平面内で受ける変形中、機械的に劣化する恐れがある。指定した最大値を上回る場合、タイヤのサイドウォール上に見える欠陥が生じる恐れがあり又は物体が穿孔によりコード相互間に入り込む恐れがある。より好ましくは、同じ理由で、幅Lcは、0.35〜1.25mmであるように選択される。
【0126】
好ましくは、カーカス補強プライのファブリックに用いられるゴムコンパウンドは、加硫状態(即ち、硬化後の状態)では、このファブリックがカーカス補強プライを形成するようになっている場合、2〜25MPa、より好ましくは3〜20MPa、特に3〜15MPaの伸びの際の割線モジュラスE10を有する。
【0127】
III.本発明の実施形態
【0128】
以下の試験は、本発明が3層コードを提供できることを実証しており、かかる3層コードは、先行技術の現場ゴム引き3層コードとの比較により、含有する充填ゴムが少量であり、コートの良好なコンパクトさを保証する顕著な利点を有し、このゴムは又、コードの毛管の各々の中でコード内に一様に分布され、かくしてコードに最適長手方向通気度を与えている。
【0129】
III‐1.試験1‐コードの製造
【0130】
以下の試験において、真鍮で被覆された炭素鋼ワイヤで作られた1+6+12構造の層状コードを製造した。
【0131】
炭素鋼ワイヤを公知の仕方で、例えば、機械ワイヤ(直径5〜6mm)を先ず最初に圧延及び/又は引き抜きによりほぼ1mmの中間直径まで加工硬化させることによって調製した。用いたスチールは、炭素含有量が0.70%の公知の炭素鋼(米国規格AISI 1069)であった。中間直径のワイヤは、脱脂及び/又は酸洗い処理を受け、その後、これらを変換する。真鍮の被膜をこれら中間ワイヤに被着させた後、「最終」加工硬化と呼ばれる作業を、例えば水性乳濁液又は分散液の形態をした絞り成形用潤滑剤を含む湿式媒体中で冷間絞り成形することにより各ワイヤに対して行った(即ち、最終パテンティング熱処理後)。ワイヤを包囲している真鍮の被膜は、非常に小さい厚さのものであり、1ミクロンよりも著しく小さく、例えば、約0.15〜0.30μmであり、これは、スチールワイヤの直径と比べて無視できるほどのものであった。
【0132】
このようにして引き抜いたスチールワイヤは、以下の直径及び機械的性質を有していた。
【0133】
〔表1〕

【0134】
次に、これらワイヤを1+6+12構造の層状コードの形態に組み立て、これらの構成は、図1に示されており、その機械的性質は、表2に記載されている。
【0135】
〔表2〕

【0136】
図1に概略的に示されているような本発明の1+6+12コード(C‐1)を直径が0.20mmの全部で19本のワイヤ及びその周りの全て直径が0.18mmの18本のワイヤで構成し、これらワイヤを同一ピッチ(p1=p2=10.0mm)で且つ同一撚り方向(S)で巻いてコンパクト型のコードを得た。段落I‐3において上述した方法に従って測定した充填ゴムの含有量は、コード1g当たり約17mgであった。この充填ゴムは、3本ずつと考えられる種々のワイヤによって形成された24個の毛管の各々の中に存在し、即ち、充填ゴムは、これら毛管の各々を完全に又は少なくとも部分的に充填し、コードの任意の2cm長さ分に関し、各毛管内にゴムの少なくとも1つの栓が存在するようにした。
【0137】
このコードを製造するため、上述すると共に図3に概略的に示された装置を用いた。充填ゴムは、産業車両用のタイヤのカーカス補強材用の従来型ゴムコンパウンドであり、かかるゴムコンパウンドは、コードC‐1が補強するようになったゴムカーカスプライと同じ配合を有し、このコンパウンドは、天然(解凝固)ゴム及びN330カーボンブラック(55phr)を主成分としており、このコンパウンドは、次の通常の添加物、即ち、硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(9phr)、ステアリン酸(0.7phr)、酸化防止剤(1.5phr)及びコバルトナフテネート(1phr)を更に含んでおり、コンパウンドの弾性率E10は、約6MPaであった。このコンパウンドを0.580mmサイジングダイにより約65℃の温度で押し出した。
【0138】
III‐2.通気度試験
【0139】
本発明のコードC‐1にも1分でコードを通る空気の体積(単位:cm3)を測定することにより段落I‐2において説明した通気度試験を実施した(試験された各コードについて10回の測定値の平均値を取った)。
【0140】
試験した各コードC‐1に関し且つ測定値の100%に関し(即ち、10個のうちで10個の試験片)、流量の測定値は、ゼロ又は0.2cm3/分未満であり、換言すると、本発明のコードは、これらの軸線に沿って気密であると見なされ、従って、これらは、ゴムによる最適の侵入レベルを有している。
【0141】
さらに、現場ゴム引きされると共に本発明のコンパクトコードC‐1と同一構造のコントロールコードを上述の国際公開第2005/071557号パンフレットに記載されている方法に従って数個の不連続ステップで調製し、即ち、押出ヘッドを用いて中間1+6コアストランドを外装し、次に第2段階において、残りの12本のワイヤをこのようにして外装されたコアの周りにケーブリングして外側層を形成した。次に、これらコントロールコードに段落I‐2の通気度試験を行った。
【0142】
まず最初に、これらコントロールコードの中で、ゼロ又は0.2cm3/分未満の100%(即ち、10個のうちで10個の試験片)の流量測定値をもたらしたものはなく、換言すると、これらコントロールコードの中で、その軸線に沿って気密(完全に気密)であると見なされたものはなかった。
【0143】
また、これらコントロールコードの中で、最善の通気度結果(即ち、約2cm3/分の平均流量)を示したコントロールコードは全て、これらの周囲からの比較的多量の望ましくない充填ゴムのオーバースピルを示し、これらコードが工業条件下における満足のゆく圧延作業には不適当であったことが判明した。
【0144】
当然のことながら、本発明は、上述の実施形態には限定されない。
【0145】
かくして、例えば、本発明のコードのコア(C1)は、非円形断面のワイヤ、例えば塑性変形されたワイヤ、特に実質的に長円形又は多角形断面、例えば三角形、正方形又は長方形の断面のワイヤから成るのが良く、コアは又、円形断面の予備成形ワイヤで作られても良く、又は例えば波形であり、撚られ又は螺旋若しくはジグザグの形状に曲げられたワイヤから成る。かかる場合、当然のことながら、コア(C1)の直径d1は、中央ワイヤそれ自体の直径(又は、断面が非円形の場合、任意他の横方向寸法)ではなく、中央ワイヤを包囲した想像上の回転筒体の直径(エンベロープ直径)を表していることは、理解されなければならない。
【0146】
しかしながら、産業上の実施容易性、コスト及び全体的性能に関する理由で、本発明を従来型であり、直線状であり、且つ円形断面の単一の中央ワイヤ(層C1)を備えた状態で具体化されることが好ましい。
【0147】
さらに、コードの製造中、中央ワイヤの受ける応力の方が他のワイヤの場合よりも小さいので、コード中のその位置が所与の場合、このワイヤを例えば高い捩り延性をもたらすスチール配合物を用いて作る必要がなく、有利には、任意種類のスチール、例えばステンレス鋼の使用が可能である。
【0148】
さらに、同様に、例えば、ゴム又は任意他の材料によるコードの侵入度を一段と向上させるために、他の2つの層(C2及び/又はC3)のうちの1つの1本の(少なくとも1本の)直線状ワイヤに代えて、予備成形又は変形ワイヤ又はより一般的に、直径d2及び/又はd3の他のワイヤの断面とは異なる断面のワイヤを用いても良く、この交換ワイヤのエンベロープ直径は、関連の層(C2及び/又はC3)を構成する他のワイヤの直径(d2及び/又はd3)よりも小さくても、これに等しくても又はこれよりも大きくても良い。
【0149】
本発明の精神を変更しないで、本発明のコードを構成するワイヤのうちの何割かは、スチールワイヤ、金属ワイヤ等以外のワイヤで置き換えても良く、特に、高い機械的強度の無機又は有機材料、例えば液晶有機ポリマーで作られたモノフィラメントで作られたワイヤ又は細線であっても良い。
【0150】
特に、本発明は又、構造が少なくとも、要素ストランドとして、本発明の層状コードを含む任意のマルチストランドスチールコード(又は「マルチストランドロープ」)に関する。
【0151】
例えば土木作業型の産業車両用のタイヤ、特にタイヤのカーカス又はクラウン補強材に用いることができる本発明のマルチストランドロープの一例として、以下の一般的な構成、即ち、
‐全部で6本の要素ストランドで形成された(1+5)(1+N+P)(1本が中心に位置し、残りの5本のストランドが中心回りにケーブリングされている)、
‐全部で7本の要素ストランドで作られた(1+6)(1+N+P)(1本が中心に位置し、残りの6本が中心回りにケーブリングされている)、
‐全部で9本の要素ストランドで形成された(2+7)(1+N+P)(2本が中心に位置し、残りの7本のストランドが中心回りにケーブリングされている)、
‐全部で11本の要素ストランドで作られた(3+8)(1+N+P)(3本が中心に位置し、残りの8本が中心回りにケーブリングされている)、
‐全部で12本の要素ストランドで形成された(3+9)(1+N+P)(3本が中心に位置し、残りの9本のストランドが中心回りにケーブリングされている)、
‐全部で13本の要素ストランドで作られた(4+9)(1+N+P)(4本が中心に位置し、残りの9本が中心回りにケーブリングされている)のそれ自体公知のマルチストランドロープを挙げることができるが、この場合、3層コートがコンパクト型又は円筒形層状型の1+N+P、特に1+6+11又は1+6+12構造の3層コードを構成する各要素ストランド(又は少なくともこれらのうちの一部)は、本発明のコードである。
【0152】
特に(1+5)(1+6+11)、(1+6)(1+6+11)、(2+7)(1+6+11)、(3+8)(1+6+11)、(3+9)(1+6+11)、(4+9)(1+6+11)、(1+5)(1+6+12)、(1+6)(1+6+12)、(2+7)(1+6+12)、(3+8)(1+6+12)、(3+9)(1+6+12)又は(4+9)(1+6+12)構造のかかるマルチストランドスチールロープは、これら自体、これらの製造時に現場でゴム引きされるのが良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場でゴム引きされた3つの層(C1,C2,C3)を備える金属コードであって、直径d1のコア又は第1の層(C1)を有し、直径d2のN本のワイヤが第2の層(C2)をなしてピッチp2で螺旋の状態に前記第1の層に一緒に巻き付けられており(Nは、5〜7)、直径d3のP本のワイヤが第3の層(C3)をなしてピッチp3で螺旋の状態に前記第2の層に一緒に巻き付けられている、コードにおいて、前記コードは、次の特徴(d1、d2、P1、及びP2は、mmで表される)を有し、即ち、
‐0.08<d1<0.40
‐0.08<d2<0.35
‐0.08<d3<0.35
‐5π(d1+d2)<p2≦p3<10π(d1+2d2+d3
‐コードの任意の2cm長さ分にわたり、「充填ゴム」と呼ばれるゴムコンパウンドが一方において前記コア(C1)と前記第2の層(C2)の前記N本のワイヤとの間に且つ他方において前記第2の層(C2)の前記N本のワイヤと前記第3の層(C3)の前記P本のワイヤとの間に位置した毛管の各々の中に存在し、
‐前記コード中の前記充填ゴムの含有量は、コード1g当たり5〜30mgである、コード。
【請求項2】
前記充填ゴムの前記ゴムは、ジエンエラストマーである、請求項1記載のコード。
【請求項3】
前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンのコポリマー、イソプレンのコポリマー、及びこれらエラストマーの配合物から成る群から選択される、請求項2記載のコード。
【請求項4】
前記ジエンエラストマーは、イソプレンエラストマー、好ましくは天然ゴムである、請求項3記載のコード。
【請求項5】
前記次の特徴条件(d1,d2,d3の単位は、mmである)、
‐0.10≦d1≦0.35
‐0.10≦d2≦0.30
‐0.10≦d3≦0.30
が満たされる、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項6】
次の特徴条件、即ち、
‐forN=5の場合、0.6<(d1/d2)<0.9
‐forN=6の場合、0.9<(d1/d2)<1.3
‐forN=7の場合、1.3<(d1/d2)<1.6
が満たされる、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項7】
前記第2の層(C2)の前記N本のワイヤ及び前記第3の層(C3)の前記P本のワイヤは、同一の撚り方向に巻かれている、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項8】
2及びp3は、5〜30mm、好ましくは5〜20mmである、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項9】
2=d3である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項10】
2=p3である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項11】
前記第3の層(C3)は、10〜14本のワイヤを含む、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項12】
前記第3の層(C3)は、飽和層である、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項13】
前記コアは、単一のワイヤから成る、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項14】
1+6+11又は1+6+12構造のものである、請求項13記載のコード。
【請求項15】
前記充填ゴムの含有量は、コード1グラム当たり5〜25mg、好ましくは5〜20mgである、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項16】
通気度試験において、平均空気流量が2cm3/分未満である、請求項1〜15のうちいずれか一に記載のコード。
【請求項17】
通気度試験において、平均空気流量が0.2cm3/分未満であり又はせいぜい0.2cm3/分に等しい、請求項16記載のコード。
【請求項18】
ストランドのうちの少なくとも1本が請求項1〜17のうちいずれか一に記載のコードである、マルチストランドロープ。
【請求項19】
ゴムで作られた半完成状態の製品又は物品を補強する請求項1〜18のうちいずれか一に記載のコードの使用。
【請求項20】
前記ゴム製物品は、タイヤである、請求項19記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜18のうちいずれか一に記載のコードを有するタイヤ。
【請求項22】
前記タイヤは、産業車両のタイヤである、請求項21記載のタイヤ。
【請求項23】
前記コードは、前記タイヤのカーカス補強材中に存在している、請求項21又は22記載のタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−508829(P2012−508829A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535907(P2011−535907)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008007
【国際公開番号】WO2010/054790
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】