説明

タイヤ加硫方法

【課題】タイヤ性能を維持しながら加硫時間を短縮する。
【解決手段】第1のジャケットを内蔵する上下のプラテンにより加熱される上下のサイドモールドと、第2のジャケットを内蔵するアクチェータにより加熱されるトレッドモールドとを具える加硫金型により生タイヤを外側から加熱する外側加熱を具える。加硫閉状態での加硫工程と、金型開状態でのタイヤ取出し投入工程とが連続的に繰り返される加硫成形サイクルを具える。加硫成形サイクル中、第1のジャケットの設定温度Tj1は一定。第2のジャケットの設定温度Tj2は、前の加硫工程における加硫後半部からタイヤ取出し投入工程をへて次の加硫工程における加硫前半部に至る間の高温側の設定温度Tj2A、及び次の加硫工程における加硫前半部と加硫後半部との間の加硫中間部における低温側の設定温度Tj2Bからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ性能を維持しながら加硫時間を短縮しうるタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫方法として、従来より、図6に示すように、加硫金型a内に装着された生タイヤbに、前記加硫金型aから加熱する外側加熱と、生タイヤbの内腔内にスチーム等の高温度の加熱媒体cを充填して加熱する内側加熱とを行うものが知られている。
【0003】
そして前記外側加熱では、例えば下記の特許文献1に記載されるように、タイヤの側部を成形する上下のサイドモールドa1を、第1のジャケットj1を内蔵する上下のプラテンdにより加熱し、又タイヤのトレッド部を成形するトレッドモールドa2を、第2のジャケットj2を内蔵するアクチェータeにより加熱している。又前記第1、第2のジャケットj1、j2では、加熱媒体として通常スチームが用いられるとともに、第1、第2のジャケットj1、j2の設定温度は、それぞれ、加硫成形サイクル中、常に一定に保たれている。
【0004】
ここで、図7に、加硫工程におけるトレッド部の外表面の温度Ttと加硫時間とからなる温度時間曲線Kを例示するように、温度Ttは、加硫開始から1.5分ぐらいまでの加硫初期に急上昇し、しかる後、滑らかに上昇する。そして、前記温度時間曲線Kと時間軸Xとがなす面積Sで定まる加硫量が、各タイヤメーカなどが定める所定の加硫量となった時に加硫工程が終了する。なお従来より、同図に破線で示すように、第2のジャケットj2の設定温度を高めることにより、温度時間曲線Kaを高温側に移行させることができ、面積Sを同じとしながら加硫終了時間を早める、即ち加硫時間を短縮しうることが知られている。
【0005】
しかし、第2のジャケットj2の設定温度を高めた場合には、加硫終了時の温度Ttbも必然的に高くなる。そして、この加硫終了時の温度Ttbが過度に高まると、トレッド部のゴム物性が低下し、転がり抵抗性、耐摩耗性、高速耐久性などのタイヤ性能の低下を招く。そのため従来においては、最適な加硫終了時の温度Ttと、必要な加硫量(面積S)とが得られるように、第2のジャケットj2の設定温度が設定されており、従って、前記タイヤ性能を維持しながら加硫時間を短縮することは、非常に難しい問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−18699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、第2のジャケットの設定温度を、前の加硫工程における加硫後半部からタイヤ取出し投入工程をへて次の加硫工程における加硫前半部に至る間のみ高温とすることを基本として、加硫終了時のトレッド部の外表面の温度Ttの上昇を抑えてタイヤ性能の維持を図りながら、加硫時間の短縮を可能とするタイヤ加硫方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、第1のジャケットを内蔵する上下のプラテンにより加熱される上下のサイドモールドと、第2のジャケットを内蔵するアクチェータにより加熱されるトレッドモールドとを具える加硫金型により生タイヤを外側から加熱する外側加熱、及び生タイヤのタイヤ内腔内に充填される加熱媒体により生タイヤを内側から加熱する内側加熱により生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、
前記加硫金型が閉じた閉状態にて加硫金型内の生タイヤを加硫する加硫工程と、この加硫工程後に開放される加硫金型の開状態にて加硫金型から加硫済みのタイヤを取り出しかつ次の加硫用の生タイヤを投入するタイヤ取出し投入工程とが連続的に繰り返される加硫成形サイクルを具え、
しかも前記加硫成形サイクル中、
前記第1のジャケットの設定温度Tj1は、一定に設定されるとともに、
前記第2のジャケットの設定温度Tj2は、前の加硫工程における加硫終了を含む加硫後半部から前記タイヤ取出し投入工程をへて次の加硫工程における加硫開始を含む加硫前半部に至る間の高温側の設定温度Tj2A、及び次の加硫工程における加硫前半部と加硫後半部との間の加硫中間部における低温側の設定温度Tj2Bからなることを特徴としている。
【0009】
又請求項2の発明では、前記加硫終了時におけるトレッド部の外表面の温度Ttaは、前記第2のジャケットの設定温度Tj2を、前記低温側の設定温度Tj2Bと同温度で一定に設定した場合の加硫終了時におけるトレッド部の外表面の温度Ttbとの差|Tta−Ttb|を1℃以下としたことを特徴としている。
【0010】
又請求項3の発明では、前記加硫工程におけるトレッド部の外表面の温度Ttと加硫時間とからなる温度時間曲線K1は、前記第2のジャケットの設定温度Tj2を前記低温側の設定温度Tj2Bと同温度で一定に設定した場合の基準の温度時間曲線K0に対して、少なくとも前記加硫前半部においては高温度側を通りしかもその温度差ΔTfの最大を2℃以上とするとともに、前記加硫後半部においては温度差ΔTrの最大を1℃以下とすることを特徴としている。
【0011】
又請求項4の発明では、前記加硫後半部の時間teは、前記加硫工程の時間t0の0.3倍以下、かつ前記加硫前半部の時間tsは、前記加硫工程の時間t0の0.2倍以下であることを特徴としている。
【0012】
又請求項5の発明では、前記設定温度Tj2Aと、前記設定温度Tj2Bとの差(Tj2A−Tj2B)は、1〜10℃の範囲であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は叙上の如く、上下のプラテンにより加熱される上下のサイドモールドと、アクチェータにより加熱されるトレッドモールドとを具える加硫金型により外側加熱が行われるタイヤ加硫方法において、前記上下のプラテンに内蔵される第1のジャケットの設定温度Tj1は、従来と同様、加硫成形サイクル中、常に一定に設定される。これに対して、前記アクチェータに内蔵させる第2のジャケットの設定温度Tj2は、一定ではなく、高温側の設定温度Tj2Aと、低温側の設定温度Tj2Bとの2段階で設定されている。
【0014】
具体的には、前の加硫工程における加硫後半部からタイヤ取出し投入工程をへて次の加硫工程における加硫前半部に至る間を、高温側の設定温度Tj2Aとし、次の加硫工程における加硫前半部と加硫後半部との間の加硫中間部においては前記設定温度Tj2Aよりも低温の設定温度Tj2Bとしている。
【0015】
これにより、後述する「発明を実施するための形態」の欄に記載する理由により、加硫終了時のトレッド部の外表面の温度Ttの上昇を抑えてタイヤ性能の維持を図りながら、加硫時間の短縮を達成することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)、(B)は、本発明のタイヤ加硫方法に用いられる加硫金型の閉状態、及び開状態を示す断面図である。
【図2】アクチェータをトレッドモールドと共に示す斜視図である。
【図3】第1、第2のジャケットの設定温度と、加硫成形サイクルとの関係を示すグラフである。
【図4】基準の温度時間曲線を示すグラフである。
【図5】本発明による温度時間曲線、及び第2のジャケットの設定温度を加硫前半部のみ上げた場合の温度時間曲線を、それぞれ示すグラフである。
【図6】従来のタイヤ加硫方法を説明するための加硫金型の断面図である。
【図7】従来のタイヤ加硫方法における温度時間曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のタイヤ加硫方法は、加硫金型1内に装着される生タイヤ2に、前記加硫金型1から加熱する外側加熱と、前記生タイヤ2のタイヤ内腔2H内に加熱媒体を充填して加熱する内側加熱とを行うことにより、前記生タイヤ2を加硫する。
【0018】
前記加硫金型1としては、タイヤの側部成形用の上下のサイドモールド4U、4Lと、タイヤのトレッド部成形用の環状のトレッドモールド5とを有する周知構造のものが採用しうる。なお前記トレッドモールド5は、タイヤ周方向に分割される複数の分割セグメント5Aからなり、トレッドモールド5は、隣り合う分割セグメント5A同士が互いに接合して環状に合体する縮径状態Y1(図1(A)に示す)から、半径方向外側に移動して互いに離間する拡径状態Y2(図1(B)に示す)まで拡縮径しうる。
【0019】
前記上のサイドモールド4Uは、本例では、加硫機の昇降台6に支持される上のプラテン7Uに、上部プレート8Uを介して取り付くとともに、下のサイドモールド4Lは、例えばテーブル台(図示しない)に固定の下のプラテン7Lに、下部プレート8Lを介して取り付けられる。なお前記上部プレート8U、下部プレート8Lを介することなく、上下のプラテン7U、7Lに上下のサイドモールド4U、4Lを直接取り付けることもできる。
【0020】
又前記トレッドモールド5は、アクチェータ10により支持される。前記アクチェータ10は、図2に示すように、トレッドモールド5を囲んでタイヤ軸と同心に配される環状体であって、その半径方向内周面10sは、前記トレッドモールド5の半径方向外周面5sと同傾斜のコーン面として形成される。また前記アクチェータ10は、本例では前記昇降台6に取り付くことにより、昇降自在に支持される。従って、アクチェータ10の下降により、各分割セグメント5Aを前記縮径状態Y1まで半径方向内方に移動させうる。なおアクチェータ10の内周面10sには、各分割セグメント5Aの半径方向外周面5sに設けた案内溝5Aaと係合する例えば断面T字状のガイドキー(図示しない)が設けられ、例えば図1(B)に示すように、アクチェータ10の上昇により、各分割セグメント5Aを前記縮径状態Y1から拡径状態Y2まで半径方向外方に移動させるとともに、その後、拡径状態Y2のまま分割セグメント5Aを上方に釣り下げて保持しうる。
【0021】
従って、本例の加硫金型1は、上のサイドモールド4Uが下降し、かつトレッドモールド5が前記縮径状態Y1となることにより、加硫金型1が閉じる閉状態Z1(図1(A)に示す。)をなし、又前記上のサイドモールド4Uが上昇し、かつトレッドモールド5が前記拡径状態Y2となることにより、加硫金型1が開放する開状態Z2(図1(B)に示す。)をなす。
【0022】
そしてタイヤ加硫方法では、図3に示すように、前記閉状態Z1にて加硫金型1内の生タイヤ2を加硫する加硫工程20と、この加硫工程20後の開状態Z2の加硫金型1から加硫済みのタイヤを取り出しかつ次の加硫用の生タイヤ2を投入するタイヤ取出し投入工程21とを連続的に繰り返す加硫成形サイクル23が行われる。
【0023】
次に、前記上下のプラテン7U、7Lには、それぞれ加熱用の第1のジャケットJ1が内蔵され、本例では、前記上部プレート8U、下部プレート8Lを介して上下のサイドモールド4U、4Lが加熱される。又前記アクチェータ10には、加熱用の第2のジャケットJ2が内蔵され、トレッドモールド5が加熱される。
【0024】
前記第1、第2のジャケットJ1、J2は、本例では、加熱媒体としてスチーム(飽和水蒸気)を用いたスチームジャケットであって、第1、第2のジャケットJ1、J2に供給される加熱媒体の温度コントロールにより、この加熱媒体の温度に相当する第1、第2のジャケットJ1、J2の設定温度Tj1、Tj2が制御される。本例では、例えばボイラなどの加熱媒体供給源から各ジャケットJ1、J2に供給されるスチームの圧力を、それぞれ圧力制御することにより、その圧力(飽和水蒸気圧)によって定まる温度(飽和水蒸気温度)に、スチーム温度をコントロールしている。
【0025】
具体的には、前記図3に示すように、前記第1のジャケットJ1の設定温度Tj1は、従来と同様、前記加硫成形サイクル23中、一定に設定されている。この設定温度Tj1としては、従来の設定温度(例えば142℃)が好適に採用しうる。
【0026】
これに対して、前記第2のジャケットJ2の設定温度Tj2は、加硫成形サイクル23中一定ではなく、前の加硫工程20における加硫終了Peを含む加硫後半部20eから前記タイヤ取出し投入工程21をへて次の加硫工程20における加硫開始Psを含む加硫前半部20sに至る間の高温側の設定温度Tj2A、及び次の加硫工程20における加硫前半部20sと加硫後半部20eとの間の加硫中間部20mにおける低温側の設定温度Tj2Bから構成される。
【0027】
そして、このように第2のジャケットJ2の設定温度Tj2を、2段階の設定温度Tj2A、Tj2Bとすることで、タイヤ性能を維持しながら、加硫時間の短縮を図りうるのである。
【0028】
その理由を、図4に示す基準の温度時間曲線K0(一点鎖線)に基づき説明する。この基準の温度時間曲線K0は、前記第2のジャケットJ2の設定温度Tj2を、前記低温側の設定温度Tj2Bと同温度で一定に設定した場合のトレッド部の外表面の温度時間曲線である。そして、この条件で加硫されたタイヤと、同じタイヤ性能を有するタイヤを、最も短い加硫時間で形成する究極の温度時間曲線KKは、現実には不可能ではあるが、同図に破線で示すように、温度Ttが加硫開始Psから温度Ttbまで一気に上昇し、しかる後、この温度Ttbを一定に保ちながら加硫するL字状の曲線をなす場合である。この場合、基準の温度時間曲線K0から高温側にはみ出す面積ΔS分だけ、加硫時間の短縮Δtを図ることができる。なお前記温度Ttbは、前記基準の温度時間曲線K0における加硫終了Pe時におけるトレッド部の外表面の温度である。
【0029】
従って、加硫時間を短縮するためには、温度時間曲線を、前記究極の温度時間曲線KKに近づけることであり、そのためには、温度時間曲線における加硫開始初期の温度(トレッド部の外表面の温度)を上げることが必要である。
【0030】
そこで、本発明者は、前記加硫開始初期のトレッド部の外表面の温度を上げるために、第2のジャケットJ2の設定温度Tj2を、加硫前半部20sにおいてのみ上げることを提案した。その場合の温度時間曲線Kbを図5に示すように、前記温度時間曲線Kbでは、基準の温度時間曲線K0に対して、トレッド部の外表面の温度Ttは、加硫中間部20mにおいてのみ上がるにとどまり、従って、基準の温度時間曲線K0からの増加面積ΔSが極めて小であり、加硫時間の短縮はほとんど達成されないことが判明した。
【0031】
その理由として、第2のジャケットJ2のスチーム(加熱媒体)からの熱が、第2のジャケットJ2及びアクチェータ10をへてトレッド部の外表面に伝わるまでのタイムラグRが考えられる。従って、前記加硫開始初期のトレッド部の外表面の温度Ttを上げるためには、本発明の如く、前の加硫工程20における加硫後半部20eからタイヤ取出し投入工程21をへて次の加硫工程における加硫前半部20sに至る間において、前記設定温度Tj2を設定温度Tj2Aに上げることが必要であり、これにより同図5に示すような温度時間曲線K1が得られ、増加面積ΔSを増やすことができる。そしてこの増加面積ΔSの分だけ、加硫時間の短縮が達成できる。
【0032】
なお前記加硫中間部20mでは、低温側の設定温度Tj2Bであることも必要であり、もし加硫中間部20mにおいて設定温度Tj2を設定温度Tj2Aに高めた場合には、前記タイムラグによって加硫終了Pe時のトレッド部の外表面の温度が高まり、トレッド部のゴム物性が低下して、転がり抵抗性、耐摩耗性、高速耐久性などのタイヤ性能の低下を招く。従って、タイヤ性能の低下抑制のためには、前記温度時間曲線K1における加硫終了Pe時でのトレッド部の外表面の温度Ttaは、前記基準の温度時間曲線K0における加硫終了Pe時でのトレッド部の外表面の温度Ttbとの差|Tta−Ttb|が、1℃以下であるのが好ましい。
【0033】
又同理由で、前記温度時間曲線K1は、基準の温度時間曲線K0に対し、少なくとも加硫前半部20sにおいては高温度側を通りしかもその温度差ΔTfの最大を2℃以上とするとともに、加硫後半部20eにおいては温度差ΔTrの最大を1℃以下とするのも好ましい。
【0034】
そして前記条件を満たすように、前記加硫後半部20eの工程時間te、前記加硫前半部20sの工程時間ts、及び設定温度の差(Tj2A−Tj2B)が設定される。
【0035】
この工程時間te、ts、及び設定温度の差(Tj2A−Tj2B)は、加硫金型1の形状やサイズなどに影響されるが、例えば、第2のジャケットJ2の設定温度Tj2を、加硫開始Psと同時に上げて、トレッド部の外表面の温度に影響が現れるまでのタイムラグRを予め測定した時、前記工程時間teは、次式(1)を満たす任意の値に設定できる。なお式中の、「t0」は加硫工程20の時間t0、「tD」はタイヤ取出し投入工程21の時間であって、加硫成形サイクル23に基づいて予め設定されている。又工程時間tsは、次式(2)を満たす任意の値に設定できるが、加硫時間の短縮のためには、工程時間tsは、例えば1分以上、3分以上と大きい方が好ましい。
0<te<R<(te+tD) −−−−(1)
t0−(te+R)≧ts>0 −−−−(2)
【0036】
又前記設定温度の差(Tj2A−Tj2B)は、前記工程時間te、tsが設定されたのち、前記加硫終了時の温度差|Tta−Ttb|が1℃以下となる範囲で設定される。
【0037】
なお断定的ではないが、通常、前記加硫後半部20eの工程時間teは、前記加硫工程20の時間t0の0.3倍以下、前記加硫前半部20sの時間tsは、前記加硫工程20の時間t0の0.2倍以下であり、又前記設定温度の差(Tj2A−Tj2B)は1〜10℃、好ましくは2〜8℃の範囲である。なお前記設定温度Tj2Bとしては、従来の第2のジャケットJ2の設定温度(例えば142℃)が好適に採用できる。
【0038】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0039】
本発明の効果を確認するため、外側加熱において、第2のジャケットJ2の設定温度Tj2を2段階とした表1の仕様の加硫方法にて、タイヤサイズ12R22.5の重荷重用タイヤを加硫成形するとともに、その時の加硫時間、及び加硫後のタイヤ性能を、従来の加硫方法にて加硫成形した重荷重用タイヤと比較した。表1の仕様以外は実質的に同仕様である。
【0040】
なお加硫成形サイクルでは、
・加硫工程の時間t0(44.5分)、
・タイヤ取出し投入工程の時間tD(5.0分)、
<外側加熱>
・第1のジャケットJ1の設定温度Tj1は、一定(140℃)
<内側加熱>
・加熱媒体(スチーム):温度一定(198.3℃)、圧力一定(1.5MPa)、充填時間(5.0分)
・加圧媒体(窒素ガス):圧力一定(2.5Mpa)、充填時間(38.9分)、排気(0.6分)とした。
【0041】
実施例及び比較例では、加硫工程の時間t0(44.5分)のうちで、加硫前半部の工程時間ts(10分)、加硫後半部の工程時間te(5分)とし、
(ア)実施例1では、加硫後半部とタイヤ取出し投入工程と加硫前半部とを設定温度Tj2Aで加熱し、
(イ)比較例1では、加硫前半部のみを設定温度Tj2Aで加熱し、
(ウ)比較例2では、タイヤ取出し投入工程と加硫前半部のみを設定温度Tj2Aで加熱している。
【0042】
(1)タイヤ性能
転がり抵抗試験機を用い、規定リム(8.25×22.5)、内圧(800kPa)、荷重(31.87kN)、速度(60km/h)の条件での転がり抵抗を測定し、従来例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、実施例は、タイヤ性能の維持を図りながら、加硫時間の短縮を達成しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0045】
1 加硫金型
2 生タイヤ
2H タイヤ内腔
5 トレッドモールド
7U、7L 上下のプラテン
8U、8L 上下のサイドモールド
10 アクチェータ
20 加硫工程
20s 加硫前半部
20e 加硫後半部
20m 加硫中間部
21 タイヤ取出し投入工程
23 加硫成形サイクル
J1 第1のジャケット
J2 第2のジャケット
Ps 加硫開始
Pe 加硫終了
Z1 閉状態
Z2 開状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のジャケットを内蔵する上下のプラテンにより加熱される上下のサイドモールドと、第2のジャケットを内蔵するアクチェータにより加熱されるトレッドモールドとを具える加硫金型により生タイヤを外側から加熱する外側加熱、及び生タイヤのタイヤ内腔内に充填される加熱媒体により生タイヤを内側から加熱する内側加熱により生タイヤを加硫するタイヤ加硫方法であって、
前記加硫金型が閉じた閉状態にて加硫金型内の生タイヤを加硫する加硫工程と、この加硫工程後に開放される加硫金型の開状態にて加硫金型から加硫済みのタイヤを取り出しかつ次の加硫用の生タイヤを投入するタイヤ取出し投入工程とが連続的に繰り返される加硫成形サイクルを具え、
しかも前記加硫成形サイクル中、
前記第1のジャケットの設定温度Tj1は、一定に設定されるとともに、
前記第2のジャケットの設定温度Tj2は、前の加硫工程における加硫終了を含む加硫後半部から前記タイヤ取出し投入工程をへて次の加硫工程における加硫開始を含む加硫前半部に至る間の高温側の設定温度Tj2A、及び次の加硫工程における加硫前半部と加硫後半部との間の加硫中間部における低温側の設定温度Tj2Bからなることを特徴とするタイヤ加硫方法。
【請求項2】
前記加硫終了時におけるトレッド部の外表面の温度Ttaは、前記第2のジャケットの設定温度Tj2を、前記低温側の設定温度Tj2Bと同温度で一定に設定した場合の加硫終了時におけるトレッド部の外表面の温度Ttbとの差|Tta−Ttb|を1℃以下としたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ加硫方法。
【請求項3】
前記加硫工程におけるトレッド部の外表面の温度Ttと加硫時間とからなる温度時間曲線K1は、前記第2のジャケットの設定温度Tj2を前記低温側の設定温度Tj2Bと同温度で一定に設定した場合の基準の温度時間曲線K0に対して、少なくとも前記加硫前半部においては高温度側を通りしかもその温度差ΔTfの最大を2℃以上とするとともに、前記加硫後半部においては温度差ΔTrの最大を1℃以下とすることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ加硫方法。
【請求項4】
前記加硫後半部の時間teは、前記加硫工程の時間t0の0.3倍以下、かつ前記加硫前半部の時間tsは、前記加硫工程の時間t0の0.2倍以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のタイヤ加硫方法。
【請求項5】
前記設定温度Tj2Aと、前記設定温度Tj2Bとの差(Tj2A−Tj2B)は、1〜10℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−143903(P2012−143903A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2314(P2011−2314)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】