説明

タイヤ加硫機

【課題】熟練の技術が要求されることなく、経験の浅い作業者であっても、短時間にコンテナモールドの位置決めを行うことができ、コンテナオフセンターの問題を解消することができるタイヤ加硫機を提供する。
【解決手段】コンテナモールド30を下側プラテン23の中心に位置決め可能なコンテナモールド位置決め手段を備えたタイヤ加硫機であって、コンテナモールド位置決め手段は、下側プラテン23の中心から放射され、かつ中心の回りにほぼ等間隔に位置する複数の放射線上に、それぞれ配置される位置決め用の複数のチャックと、チャックを放射線に沿って往復動させるチャック機構40とを備えており、チャックを待機位置(初期位置)から中心に向けて移動させてコンテナモールド30を外側から把持することにより、コンテナモールド30の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナモールドを交換する際に、コンテナモールドの位置決めが容易になるタイヤ加硫機に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫機は、コンテナモールドを備えており、コンテナモールドは、所定場所に位置決めされた状態で固定される(例えば、特許文献1)。
【0003】
コンテナモールドを位置決めするためのコンテナモールド位置決め手段を備えたタイヤ加硫機については、種々の装置が提案されている。
【0004】
図4は、従来のタイヤ加硫機を模式的に示す断面図である。図4に示すタイヤ加硫機は、上側プラテン13と、断熱板22を有する下側プラテン23と、コンテナモールド30とを備えている。
【0005】
コンテナモールド30は、周方向に分割されたセクターシュー32と、セクターシュー32に固定される金型33と、セクターシュー32をモールド中心に移動させるアクチュエータ31と、上側プレート37と、下側プレート36とを備えている。なお、21は底部支持板であり、35はアクチュエータリングであり、50は下側の加熱用部材であり、90はグリーンタイヤである。
【0006】
下側プラテン23の中心には、レジスターリング24を取り付けることにより、コンテナモールド位置決め手段が形成されている。
【0007】
そして、コンテナモールド30を下側プラテン23にセットする場合には、コンテナモールド30をリフト等により運搬して下側プラテン23まで降下させ、コンテナモールド30の下側プレート36に設けられる中央孔36aをレジスターリング24に嵌合させることにより、コンテナモールド30の位置決めを行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−216228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、コンテナモールド30を降下させる際に、コンテナモールド30の降下位置をレジスターリング24との嵌合位置に合わせる場合、僅かでも位置がずれた場合には、レジスターリング24が損傷し、タイヤの真円度が悪化する。また、レジスターリング24が湾曲してコンテナモールド30との嵌合が不可能になり、その役割を果たさない場合も生じる。
【0010】
このように従来のタイヤ加硫機は、コンテナモールドの位置決めを慎重に行うことが要求されるため、作業者に熟練の技術が要求されていた。このため、作業経験が浅い作業者の場合には、タイヤ加硫機へのコンテナモールドの取り付けのために作業時間が長くなり、生産性を悪化させる要因となっていた。また、レジスターリングの損傷によるコンテナオフセンターの問題も発生していた。
【0011】
そこで本発明は、熟練の技術が要求されることなく、経験の浅い作業者であっても、短時間にコンテナモールドの位置決めを行うことができ、コンテナオフセンターの問題を解消することができるタイヤ加硫機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、各請求項の発明を説明する。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
コンテナモールドを下側プラテンの中心に位置決め可能なコンテナモールド位置決め手段を備えたタイヤ加硫機であって、
コンテナモールド位置決め手段は、
前記下側プラテンの中心から放射され、かつ前記中心の回りにほぼ等間隔に位置する複数の放射線上に、それぞれ配置される位置決め用の複数のチャックと、
前記チャックを前記放射線に沿って往復動させるチャック機構と
を備えており、
前記チャックを待機位置から前記中心に向けて移動させて前記コンテナモールドを外側から把持することにより、前記コンテナモールドの位置決めを行うことを特徴とするタイヤ加硫機である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、
複数の前記チャックは、同一円上に待機し、同じ長さの距離を移動して前記コンテナモールドを位置決めするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、
前記チャックは、下側プラテンの中心から中心回りに120°の間隔の3本の放射線上に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫機である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、
前記チャック機構は、前記チャックと嵌合するネジ軸を備えており、前記ネジ軸を正転、逆転させることにより、前記チャックを前記放射線に沿って往復動されるように
構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載にタイヤ加硫機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては熟練の技術が要求されることなく、経験の浅い作業者であっても、短時間にコンテナモールドの位置決めを行うことができ、コンテナオフセンターの問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態のタイヤ加硫機を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のタイヤ加硫機のコンテナモールド位置決め手段を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態のタイヤ加硫機のコンテナモールド位置決め手段のチャック機構を模式的に示す斜視図である。
【図4】従来のタイヤ加硫機を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき、具体的に説明する。
【0020】
1.タイヤ加硫機
図1は、本発明の実施の形態のタイヤ加硫機を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の実施の形態のタイヤ加硫機のコンテナモールド位置決め手段を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態のタイヤ加硫機のコンテナモールド位置決め手段のチャック機構を模式的に示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、タイヤ加硫機は、上側プラテン13と、断熱板22を有する下側プラテン23と、コンテナモールド30と、コンテナモールド位置決め手段Aとを備えている。なお、上記の従来のタイヤ加硫機に設けられていたレジスターリングは、本実施の形態のタイヤ加硫機には設けられていない。
【0022】
コンテナモールド30は、上記のように、セクターシュー32と、セクターシュー32に固定される金型33と、セクターシュー32をモールド中心に移動させるアクチュエータ31と、上側プレート37と、下側プレート36とを備えている。なお、セクターシュー32は周方向に9分割されている。また、図中35はアクチュエータリングであり、90はグリーンタイヤである。
【0023】
2.コンテナモールド位置決め手段
図2に示すように、コンテナモールド位置決め手段Aは、下側プラテン23の中心から中心回りに120°の間隔で放射される3本の放射線上にそれぞれ配置される3個のチャック41と、各チャック41を前記放射線に沿って往復動させるチャック機構40とを備えている。
【0024】
図3に示すように、チャック機構40は、チャック41に設けられるネジ孔41cと、このネジ孔41cに嵌合されるネジ軸42とを備えている。
【0025】
図1、図2において、43はチャック側の歯車であり、44はモーターであり、各ネジ軸42は歯車43、45を介してモーター44に連結されている。また、41aはチャック41の押し込み部であって、この押し込み部41aがコンテナモールド30に直に接触してコンテナモールド30の位置決めを行う。25はネジ軸42の軸受部であり、20は下側プラテン23および断熱板22に形成されたガイド用切込みであって、前記放物線に沿って設けられている。なお、モーター44は、図外の支持体に固定されている。
【0026】
3.タイヤ成形機のコンテナモールド位置決め手段の動作説明
3個のチャック41は、3個のモーター44により3本のネジ軸42を同期回転(正転、逆転)させることにより、3個のチャック41を前記放射線に沿って往復動させることができる。
【0027】
各チャック41を待機位置から下側プラテン23の中心に向けて同距離だけ往動させることにより、コンテナモールド30の下側プレート36をチャック41の押し込み部41aによって外側から締めることができる。したがって、コンテナモールド30の外締めが完了したときには、コンテナモールド30の中心と下側プラテン23の中心が一致し、コンテナモールド30の位置決めが行われる。なお、コンテナモールド30の位置決め後は、ボルトにより下側プレート36を下側プラテン23に固定する。
【0028】
なお、チャック41による締め付け前には、チャック41を待機位置(初期位置)まで戻してゼロ点調整を行う。また、チャック41の位置の把握は、下側プラテン23のガイド用切込み20の切り込み縁部に基準線を設けることにより行う。また、コンテナモールド30の大きさに応じてチャック41の待機位置および移動距離を管理する。
【0029】
4.本実施の形態の効果
(1)上記のように、下側プラテン23の中心からの放射線上に配置される3個のチャック41を有するコンテナモールド位置決め手段Aを備えているため、各チャック41を放射方向に十分に拡げることにより形成される広いスペースの中にコンテナモールド30を載置し、次に、各チャック41を求心方向に移動させることにより、コンテナモールド30が下側プラテン23の中心に移動してコンテナモールド30の位置決めが可能になる。
【0030】
このため、コンテナモールド30を下側プラテン23に載置する際に、コンテナモールド30の厳格な位置合せが不要になり、経験の浅い作業者であっても、短時間にコンテナモールド30の位置決めを行うことができる。
【0031】
(2)また、レジスターリングが採用されておらず、さらにコンテナモールド30を載置する際に、各チャック41を十分に拡げるため、コンテナモールド30がチャック41に衝突してチャック41が損傷することがなくなる。このため、コンテナオフセンターの発生も防止することができる。
【実施例】
【0032】
上記の実施の形態のタイヤ加硫機を用いてコンテナモールドを下側プラテンに載せて位置決めした後、コンテナモールドをタイヤ加硫機にボルトで固定した(実施例)。一方、上記のレジスターリングを備えた従来のタイヤ加硫機により同様の作業を行った(比較例)。
【0033】
そして、職務従事3年以上の熟練者と、職務従事6月未満の新任者の各3人で、上記の作業を行い、それぞれ所要時間の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より、新任者の場合、作業時間が120秒→100秒に大幅に短縮できることが確認できた。また、熟練者であっても、作業時間が短縮できることが分かった。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
13 上側プラテン
20 ガイド用切込み
21 底部支持板
22 断熱板
23 下側プラテン
24 レジスターリング
25 軸受部
30 コンテナモールド
31 アクチュエータ
32 セクターシュー
33 金型
35 アクチュエータリング
36 下側プレート
37 上側プレート
36a 中央孔
40 チャック機構
41 チャック
41a チャックの押し込み部
41c ネジ孔
42 ネジ軸
43 歯車
44 モーター
45 歯車
50 下側の加熱用部材
90 グリーンタイヤ
A コンテナモールド位置決め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナモールドを下側プラテンの中心に位置決め可能なコンテナモールド位置決め手段を備えたタイヤ加硫機であって、
コンテナモールド位置決め手段は、
前記下側プラテンの中心から放射され、かつ前記中心の回りにほぼ等間隔に位置する複数の放射線上に、それぞれ配置される位置決め用の複数のチャックと、
前記チャックを前記放射線に沿って往復動させるチャック機構と
を備えており、
前記チャックを待機位置から前記中心に向けて移動させて前記コンテナモールドを外側から把持することにより、前記コンテナモールドの位置決めを行うことを特徴とするタイヤ加硫機。
【請求項2】
複数の前記チャックは、同一円上に待機し、同じ長さの距離を移動して前記コンテナモールドを位置決めするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機。
【請求項3】
前記チャックは、下側プラテンの中心から中心回りに120°の間隔の3本の放射線上に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫機。
【請求項4】
前記チャック機構は、前記チャックと嵌合するネジ軸を備えており、前記ネジ軸を正転、逆転させることにより、前記チャックを前記放射線に沿って往復動されるように
構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載にタイヤ加硫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179834(P2012−179834A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45046(P2011−45046)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】