説明

タイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法

【課題】 タイヤ加硫用ブラダーの寿命を実験室的に簡単に評価できるようにした評価方法を提供する。
【解決手段】 凹状空間を有する一対の加熱された耐圧型1の間に加硫ゴムからなる試験シートSを挟持し、耐圧型1の一方から加熱気体を所定時間供給して試験シートSを膨張させて他方の耐圧型1の内面に圧着保持させる第1操作と、加熱気体を排出して試験シートSの膨張を所定時間解除する第2操作とを、試験シートSの劣化が所定基準に達するまで複数回繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法に関し、さらに詳しくは、タイヤ加硫成形機に使用されるタイヤ加硫用ブラダーの寿命を実験室的に簡単に評価できるようにした評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの加硫成形は、タイヤの成形機の金型内に未加硫タイヤをセットし、その未加硫タイヤの内側にゴム風船様のブラダーを内設し、そのブラダー内に加熱気体を圧入することにより未加硫タイヤを金型の内面に押圧し、その状態を所定時間継続することにより行なっている。 このような操作を新たなタイヤを加硫する毎に繰返し行うために、ブラダーはタイヤ加硫時の熱や圧力によって次第に劣化していく。ブラダーの劣化が一定の限度を過ぎてもそのまま使用し続けるとタイヤの品質や生産性等に悪い影響を及ぼすことから、一定の時期を決めてブラダーを定期的に交換するようにしている。
【0003】
ブラダーの交換時期はブラダーの寿命に依存することから、ブラダーの寿命を延命させるために新たなゴム組成物の開発が行なわれている。しかしながら、これまでは、新たなゴム組成物を開発した場合に、そのブラダーの寿命がどの程度であるかを評価する方法は、専らタイヤ工場内でのタイヤ加硫成形機の実機により行なってきたのが現状であり、その評価結果を得るために相当の時間と費用がかかっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述するような背景の下での問題点を解消するもので、タイヤ加硫用ブラダーの寿命を実験室的に簡単に評価できるようにした評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法は、凹状空間を有する一対の加熱された耐圧型の間に加硫ゴムからなる試験シートを挟持し、前記耐圧型の一方から加熱気体を所定時間供給して前記試験シートを膨張させて他方の耐圧型の内面に圧着保持させる第1操作と、前記加熱気体を排出して前記試験シートの膨張を所定時間解除する第2操作とを、前記試験シートの劣化が所定基準に達するまで複数回繰り返すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法は、加硫ゴムからなる試験シートを一対の加熱された耐圧型の間に挟持し、一方の耐圧型から加熱気体を所定時間供給して他方の耐圧型の内面に圧着保持させる第1操作と、加熱気体の供給を所定時間解除して試験シートを元の状態に復元する第2操作とを繰り返すことで、実機により加硫用ブラダーに与えられる操作と略同じ状態を耐圧型の中で再現するようにしたので、短時間に低コストで実験室的に加硫用ブラダーの寿命を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明の加硫用ブラダーの寿命評価方法を実施するための試験装置の一例を示す断面図で、1は上型2と下型3とからなる一対の耐圧型で、本実施形態では上型2が凹状空間を有するドーム状の形態をなしている。4、5は上型2と下型3とをそれぞれ加熱する加熱手段で、6は支持体、8は下型2に加熱気体を供給するための加圧手段、9はこの加熱気体を排出するための排気手段、10は試験シートSにかかる圧力を測定するための圧力計を示している。そして、上型2と下型3との間には試験シートSが挟み込まれるようになっている。なお、本実施形態では加圧手段8はスチームを供給するための蒸気供給手段8aと窒素ガスを供給するためのガス供給手段8bとにより構成している。
【0009】
本発明のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法は、凹状空間を有する一対の加熱された耐圧型1の間に加硫ゴムからなる試験シートSを挟持し、耐圧型1の一方(図では下型3)から加熱気体を所定時間供給して試験シートSを膨張させて、図中の鎖線で示すように、他方の耐圧型(図では上型2)の内面に圧着保持させる第1操作と、この加熱気体を排出して試験シートSの膨張を所定時間解除する第2操作とを、試験シートSの劣化が所定基準に達するまで複数回繰り返すことにより行われる。そして、試験シートSが劣化するまでに要した加熱気体の供給と排出との繰り返し回数又は劣化に至る所要時間により、実機における加硫用ブラダーの寿命を評価するものである。
【0010】
これにより、実機により加硫用ブラダーに与えられる操作と略同じ状態を耐圧型1の中で再現するようにしたので、短時間に低コストで実験室的に加硫用ブラダーの寿命を評価することができる。
【0011】
本発明において、耐圧型1の中に供給する加熱気体は、実機における加硫用ブラダーに供給する加熱気体と同様に、スチーム及び/又は窒素ガスとし、前述するように、スチームを蒸気供給手段8aから供給し、窒素ガスをガス供給手段8bから供給するようにするとよい。
【0012】
また、蒸気供給手段8aから供給するスチームの圧力は0.1〜2.0MPaとし、供給手段8bから供給する窒素ガスの圧力は0.1〜2.5MPaとし、それぞれの圧力を一定に保つように調整するとよい。これにより、実機における加硫用ブラダーに与えられる状態と略同じ状態を耐圧型1の中で再現することができる。
【0013】
本発明における試験シートSの劣化状況は、圧力計10によって測定される試験シートSにかかる圧力の低下状況により監視するようにする。すなわち、図2に例示するように、一定の圧力(図では1.7MPa)が繰り返し(図では1分間の間隔をおいて10分間の繰り返し)試験シートSに与えられ、試験シートSが劣化してくると、圧力計10によって測定される圧力(図の縦軸方向)が不規則になり、試験シートSが劣化していることを知ることができるようになっている。
【0014】
本発明の加硫用ブラダーの寿命評価方法を実施するための試験装置において、試験シートSを圧着させる側の耐圧型(図では上型2)は、タイヤ加硫成形機における金型と同様に、タイヤの種類やサイズに応じて種々の形態のものを用意し、試験の都度、上型2を交換しながら下型3と組み合わせて使用することができるように構成するとよい。
【0015】
上述するように、本発明の加硫用ブラダーの寿命評価方法は、加硫用ブラダーと同一のゴム組成物からなる試験シートを耐圧型の中で膨張と復元を繰り返すことにより試験シートの劣化状況を確認し、その結果に基づいて実機における加硫用ブラダーの寿命評価を行うものである。したがって、既に実機における加硫用ブラダーの寿命が判明している場合の寿命データと、その加硫用ブラダーと同一のゴム組成物からなる試験シートの劣化データとを照合させて、これらの相関関係を調べておき、これを基準として、新しく開発したゴム組成物からなる試験シートの劣化データから実機における加硫用ブラダーの寿命を予測する場合に好ましく利用される。
【0016】
このようにして、耐圧型内における試験シートの劣化データと実機における加硫用ブラダーの寿命データとの相関性を利用することにより、これまで実機により多くの時間と費用をかけて寿命の評価を行ってきたものを、実験室内で短時間に低コストで寿命評価することができる。
【実施例】
【0017】
タイヤサイズ165/70R13用の加硫金型に使用する加硫ブラダーを構成するゴム組成物に対応させて、表1に示すようにゴムの組成を異にして組成A〜Dの4通りにした試験シート(円形、直径200mm、厚さ5mm)をそれぞれ作製(加硫条件198℃、12分)し、図1の構造を有する試験装置を使用して以下の要領により各試験シートの劣化状況の確認試験を行ない、その結果を各組成毎に劣化データとして、組成Aを100とする指数により表1に記載した。
【0018】
さらに、各試験シートの劣化データと実機における各加硫ブラダーの寿命データとの相関関係を確認するために、各試験シートの劣化データに対応させて、実際に工場内で測定した実機における各加硫ブラダーの寿命データを各組成毎に組成Aを100とする指数により表1に併記した。
【0019】
〔試験シートの劣化状況の確認試験の要領〕
耐圧型の温度を175℃とし、加熱加圧蒸気(175℃、1.7MPa)の給排気の間隔をそれぞれ10分間の供給、1分間の排気として、これを試験シートが劣化するまで繰り返して行なった。
【0020】
【表1】

【0021】
表1より、試験シートの劣化データと加硫ブラダーの寿命データとの間には、相関係数を0.96とする相関関係が認められることがわかる。これにより、耐圧型内における試験シートの劣化状況の確認試験の結果を利用することにより、実機における加硫用ブラダーの寿命を評価することができることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による加硫用ブラダーの寿命を評価するために使用する試験装置の一例を示す断面図である。
【図2】加硫用ブラダーの劣化状況を確認するための、試験シートにかかる圧力の変化の状況を説明するグラフである。
【符号の説明】
【0023】
1 耐圧型
2 上型
3 下型
4、5 加熱手段
6 支持体
8 加圧手段
8a 蒸気供給手段
8b ガス供給手段
9 排気手段
10 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状空間を有する一対の加熱された耐圧型の間に加硫ゴムからなる試験シートを挟持し、前記耐圧型の一方から加熱気体を所定時間供給して前記試験シートを膨張させて他方の耐圧型の内面に圧着保持させる第1操作と、前記加熱気体を排出して前記試験シートの膨張を所定時間解除する第2操作とを、前記試験シートの劣化が所定基準に達するまで複数回繰り返すタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法。
【請求項2】
前記加熱気体がスチーム及び/又は窒素ガスである請求項1に記載のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法。
【請求項3】
前記スチームの供給圧力が0.1〜2.0MPaで、前記窒素ガスの供給圧力が0.1〜2.5MPaである請求項2に記載のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法。
【請求項4】
前記試験シートの劣化を前記加熱気体の供給圧力の低下により監視する請求項1、2又は3に記載のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法。
【請求項5】
前記試験シートを圧着させる側の耐圧型を交換可能にする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ加硫用ブラダーの寿命評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−145476(P2006−145476A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339021(P2004−339021)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】