説明

タイヤ成形用押えローラーおよびタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法

【課題】手動式ローラーによる再度の押圧作業が不要になって作業者の負担を軽減することができ、また、ジョイント部のエア残りやジョイント離れが発生することがなく、ゴム材料にシワが発生することもないタイヤ成形用押えローラーおよびタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法を提供する。
【解決手段】フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部を押圧して圧着させるためのタイヤ成形用押えローラーであって、ローラー軸方向の中央部の径が、両端部の径よりも小さな逆クラウン形状に形成されているタイヤ成形用押えローラー、および前記タイヤ成形用押えローラーを用いて、フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部に対して390〜590Nの押圧力で押圧することにより、ジョイント部を圧着させるタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タイヤ成形機の円筒状のフォーマーに巻き付けられたタイヤ成形用ゴム材料のジョイント部を押圧するタイヤ成形用押えローラーおよび押圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤの成形に際しては、ゴム材料をフォーマーに巻き付けた後、形成されたジョイント部を押圧することにより、ジョイント部のエア残りを排除しながら圧着することが必要であり、従来より、例えば図4に示す方法によりジョイント部の圧着が行われている。
【0003】
即ち、2ステージ成形機Aは、フォーマーA1(1stフォーマー)を備えており、図外のサービサーから供給されるシート状のゴム材料43を、フォーマーA1上に巻き付けることにより、ゴム材料43の周方向両端部43a、43bが重ね合わされてジョイント部44が形成される。
【0004】
そして、ジョイント部44は、フォーマーA1上を矢印の方向に移動する押圧装置A2により、フォーマーA1上に所定の押圧力で押し付けられて圧着される。
【0005】
具体的には、押圧装置A2は、ジョイント部44を押圧しながらジョイント部44に沿って転動するタイヤ成形用押えローラー1と、タイヤ成形用押えローラー1を軸支するホルダーA21と、ジョイント部44に沿ってフォーマー軸方向に往復移動する移動体A22と、この移動体A22に支持されると共にタイヤ成形用押えローラー1をジョイント部44に向かって押圧させるシリンダーA23と、タイヤ成形用押えローラー1の押圧力を所定の押圧力に制御すると共にタイヤ成形用押えローラー1の移動範囲をフォーマー幅から自動設定してフォーマーセグメント上に制限する図外の制御手段とを備えている。
【0006】
上記の押圧装置A2におけるタイヤ成形用押えローラー1として、当初は、スポンジロールのみで形成されたスポンジローラーが用いられていた。
【0007】
しかし、スポンジローラーは、スポンジが変形し易いため、ジョイント部を充分に押圧することができず、スポンジローラーで押圧した後、作業者が手動式ローラーを用いて再度押圧する必要があり、作業者の負担が大きくなるという問題があった。
【0008】
そこで、一度の押圧で充分な押圧力を確保することが可能なタイヤ成形用押えローラーとして、以下の図5〜図7に示されるようなローラーが提案された。
【0009】
即ち、図5に示されるローラー5は、鉄製基体部51と鉄製基体部51の外側を覆うスポンジロール部52とで構成されたスポンジ被覆ローラーである。
【0010】
そして、図6に示されるローラー6は、鉄製基体部61と、鉄製基体部61の外側を覆うスポンジロール部62と、スポンジロール部62の外側を覆うナイロン(登録商標)ロール部63とで構成されたMCナイロンローラーである(例えば特許文献1)。
【0011】
また、図7に示されるローラー7は、ローラーの外周面71にアヤメローレット加工が施された鉄製ローラーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−37113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらのローラーは、フォーマーの周方向に対して点接触しかしないため、フォーマーの軸方向に線の状態で押圧していた。このようにジョイント代の全てを押圧することができないため、ジョイント部のフォーマーが周方向には充分に押圧されず、エア残りやジョイント離れの発生を防止することができなかった。また、押圧力を大きくした場合には、ローラーの進行方向前方にたるみが発生して、ゴム材料にシワが発生するという問題があった。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、手動式ローラーによる再度の押圧作業が不要になって作業者の負担を軽減することができ、また、ジョイント部のエア残りやジョイント離れが発生することがなく、ゴム材料にシワが発生することもないタイヤ成形用押えローラーおよびタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、
フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部を押圧して圧着させるためのタイヤ成形用押えローラーであって、
ローラー軸方向の中央部の径が、両端部の径よりも小さな逆クラウン形状に形成されている
ことを特徴とするタイヤ成形用押えローラーである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、
外周面のローラー軸方向における曲率半径が、前記フォーマーの半径よりも20〜60mm大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形用押えローラーである。
【0017】
請求項3に記載の発明は、
外周面に、アヤメローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形用押えローラーである。
【0018】
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ成形用押えローラーを用いて、
フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部に対して390〜590Nの押圧力で押圧することにより、前記ジョイント部を圧着させることを特徴とするタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、手動式ローラーによる再度の押圧作業が不要になって作業者の負担を軽減することができ、また、ジョイント部のエア残りやジョイント離れが発生することがなく、ゴム材料にシワが発生することもないタイヤ成形用押えローラーおよびタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ成形用押えローラーの正面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ成形用押えローラーの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ成形用押えローラーの側面図である。
【図4】押圧装置を備えたタイヤ成形装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】従来のタイヤ成形用押えローラーの一例を示す断面図である。
【図6】従来のタイヤ成形用押えローラーの一例を示す断面図である。
【図7】従来のタイヤ成形用押えローラーの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0022】
1.タイヤ成形用押えローラー
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態のタイヤ成形用押えローラーの正面図である。図1において1はタイヤ成形用押えローラー、11はタイヤ成形用押えローラー1の外周面、rはタイヤ成形用押えローラー1の外周面11の曲率半径、Wはタイヤ成形用押えローラー1の幅、Dはタイヤ成形用押えローラー1の両端の直径である。
【0023】
タイヤ成形用押えローラー1は、ローラー軸方向の中央部の径が両端部の径Dよりも小さい逆クラウン形状に形成されており、外周面11のローラー軸方向における曲率半径rは、タイヤ成形用押えローラー1とゴム材料のジョイント部が充分な幅で接触するように、前記した図4のフォーマーA1(1stフォーマー)の外径に基づき、ジョイント部の厚さや幅などを考慮して、適宜適切な大きさに設定されるが、フォーマーA1の半径よりも20〜60mm大きな値にして、タイヤ成形用押えローラー1のR形状を設定することが好ましい。フォーマーA1の半径よりも40mm大きいと特に好ましい。
【0024】
また、タイヤ成形用押えローラー1の幅Wは、ジョイント部を充分にカバーできるようにジョイント部の幅寸法(周方向の幅)よりも大きくなるように設定されている。具体的にはジョイント部の幅よりも20〜70mm大きくなるように設定されている。
【0025】
タイヤ成形用押えローラー1の材質は特に限定されないが、鉄、アルミニウム、MCナイロンなどが好ましい。
【0026】
(第2の実施の形態)
図2は第2の実施の形態に係るタイヤ成形用押えローラーの断面図である。また、図3は図2に示されたタイヤ成形用押えローラーの側面図である。
【0027】
図2および図3に示すように、第2の実施の形態に係るタイヤ成形用押えローラー1Aは、第1の実施の形態のタイヤ成形用押えローラー1の外周面11にアヤメローレット加工が施されることにより構成されている。
【0028】
図2において、dはローラー周方向に設けられた溝12の溝深さ、Pは溝12の溝ピッチ、θは溝12の開き角度である。図2に示すように、タイヤ成形用押えローラー1Aの外周面11には、ローラー軸方向に所定のピッチPで複数の溝12が形成されている。
【0029】
また、図3において、dはローラー軸方向に設けられた溝13の溝深さ、θは溝13の開き角度、Wは溝13の上面(山の上端部)の幅である。図3に示すように、タイヤ成形用押えローラー1の外周面11には、ローラー周方向に所定の角度θで複数の溝13が形成されている。
【0030】
溝ピッチPとしては、1〜3mmが好ましく、2mmが特に好ましい。そして、溝の開き角度θとしては、45〜60°が好ましく、60°が特に好ましい。また、溝深さdとしては、1〜3mmが好ましく、2mmが特に好ましい。
【0031】
溝13の本数、即ち、外周の分割数としては、15〜50が好ましく、30分割(角度θ=12°)が特に好ましい。そして、溝の開き角度θとしては、45〜90°が好ましく、60°が特に好ましい。また、溝の上面の幅Wとしては、1〜2mmが好ましく、1.16mmが特に好ましい。さらに、溝深さdとしては、1〜8mmが好ましく、4mmが特に好ましい。
【0032】
前記のように、タイヤ成形用押えローラーの外周面に所定ピッチ、特に好ましくは1.5mmピッチのアヤメローレットが形成されていることにより、押圧時におけるゴム材料との密着が防止される。
【0033】
2.タイヤ成形用押えローラーの押圧力
本実施の形態の2ステージ成形機および押圧装置は、タイヤ成形用押えローラーとして上記の各タイヤ成形用押えローラーが用いられている他は、前記した図4と同様である。
【0034】
タイヤ成形用押えローラー1を用いて適切な押圧力でジョイント部を押圧した場合、ジョイント部44が変形して、タイヤ成形用押えローラー1の外周面をジョイント部44の幅方向に線接触させることができ、ジョイント代の全体を押圧することができる。そして、この状態でタイヤ成形用押えローラー1をジョイント部44の長さ方向に移動させることにより、ジョイント部44の全面にわたって押圧することができる。
【0035】
この結果、ジョイント部44を過度な力で押圧しなくても、ジョイント部を充分に押圧して、エア残りやジョイント離れの発生を防止することができる。具体的な好ましい押圧力は390〜590Nであり、この場合には、ゴム材料にシワが発生するということもない。
【0036】
そして、アヤメローレット加工が施されている場合には、アヤメローレットの山部分がジョイント部に食い込むため、より効率的にエア残りを排除することができる。
【0037】
また、手動式ローラーによる再度の押圧作業が不要になるため、作業者の負担を軽減することができる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、1A タイヤ成形用押えローラー
5 ローラー(スポンジ被覆ローラー)
6 ローラー(MCナイロンローラー)
7 ローラー(鉄製ローラー)
11、71 ローラーの外周面
12、13 溝
43 ゴム材料
43a、43b ゴム材料の周方向両端部
44 ジョイント部
51、61 鉄製基体部
52、62 スポンジロール部
63 ナイロンロール部
A 2ステージ成形機
A1 フォーマー
A2 押圧装置
A21 ホルダー
A22 移動体
A23 シリンダー
D タイヤ成形用押えローラーの両端の直径
タイヤ成形用押えローラーの幅
溝の上面の幅
、d 溝深さ
P 溝ピッチ
r タイヤ成形用押えローラーの外周面の曲率半径
θ、θ 溝の開き角度
θ 外周の分割角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部を押圧して圧着させるためのタイヤ成形用押えローラーであって、
ローラー軸方向の中央部の径が、両端部の径よりも小さな逆クラウン形状に形成されている
ことを特徴とするタイヤ成形用押えローラー。
【請求項2】
外周面のローラー軸方向における曲率半径が、前記フォーマーの半径よりも20〜60mm大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形用押えローラー。
【請求項3】
外周面に、アヤメローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形用押えローラー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ成形用押えローラーを用いて、
フォーマーに巻き付けられたゴム材料の両端部が重ね合わされることにより形成されたジョイント部に対して390〜590Nの押圧力で押圧することにより、前記ジョイント部を圧着させることを特徴とするタイヤ成形用ゴム材料の押圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91194(P2013−91194A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233548(P2011−233548)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】