説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】耐摩耗性の低下を抑制しながら氷上摩擦力を向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ブタジエンゴムを20〜80重量%含むジエン系ゴム100重量部に、フッ素樹脂からなる微粒子を0.5〜20重量部配合すると共に、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度が−70℃以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、更に詳しくは、耐摩耗性の低下を抑制しながら氷上摩擦力を向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤ(氷雪路用空気入りタイヤ)のトレッド部には、氷雪路走行時に優れたグリップ性能を確保するように、氷上摩擦力を高くするように設計されたゴム組成物が使用されている。トレッド部の氷上摩擦力を高くするためには、低温下でのゴム組成物の柔軟性を維持し氷雪路面に対する凝着力を大きくするようにしたり、トレッド表面に多数の気泡や凹凸を形成するようにしてエッジ効果や氷面上の水膜除去効果を得るようにしたりすることが知られている。しかし、このようにしてゴム組成物の氷上摩擦力を高くしようとすると、耐摩耗性能が低下するという問題があった。
【0003】
このため特許文献1は、ジエン系ゴム成分100重量部に平均粒径1〜10μmの無機充填剤を5〜30重量部配合することにより、耐摩耗性の低下と氷上性能とをバランスさせるようにしたタイヤ用ゴム組成物を提案している。しかし、このゴム組成物では、氷上性能を高くすることはできても、耐摩耗性の低下を十分に抑制することができず、スタッドレスタイヤ用のゴム組成物として改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−311245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性の低下を抑制しながら氷上摩擦力を向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムを20〜80重量%含むジエン系ゴム100重量部に、フッ素樹脂からなる微粒子を0.5〜20重量部配合すると共に、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度が−70℃以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ブタジエンゴムを20〜80重量%含みガラス転移温度が−70℃以下であるジエン系ゴム100重量部に、フッ素樹脂からなる微粒子を0.5〜20重量部配合するようにしたので、耐摩耗性の低下を抑制しながら氷上摩擦力を向上することができる。すなわち、トレッド部のゴム表面にフッ素樹脂からなる微粒子が突起状に現れることにより、引掻き効果が得られるので氷上摩擦力を高くする。また、トレッドゴムの摩滅により、フッ素樹脂からなる微粒子が脱離・欠落した空孔が形成されるため、この空孔によるエッジ効果と水膜除去効果が得られるので氷上摩擦力を一層高くする。
【0008】
フッ素樹脂からなる微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましく、確実に氷上摩擦力を高くすることができる。フッ素樹脂からなる微粒子の平均粒子径は、0.1〜40μmにするとよく、氷上摩擦力をより高くすることができる。
【0009】
また、熱膨張性マイクロカプセルを、ジエン系ゴム100重量部に対し0.5〜20重量部配合することにより、氷上摩擦力を一層高くすることができる。
【0010】
上述したタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤは、耐摩耗性を維持しながら、氷上性能が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムとする。ジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴムを必ず含むものとする。これによりゴム組成物の低温性能を優れたものにすることができる。ジエン系ゴム中のブタジエンゴムの含有量は20〜80重量%、好ましくは25〜60重量%である。ブタジエンゴムが20重量%未満であると、氷上摩擦力が不足する。また、ブタジエンゴムが80重量%を超えると、ゴム組成物の成形加工性が悪化する。
【0012】
ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等を例示することができる。なかでも、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。ジエン系ゴム中のブタジエンゴム以外のジエン系ゴムの含有量は、80〜20重量%、好ましくは40〜75重量%である。
【0013】
本発明において、ブタジエンゴムを20〜80重量%含むジエン系ゴムは、そのガラス転移温度(以下「Tg」という。)が−70℃以下、好ましくは−120℃〜−70℃になるようにする。ジエン系ゴムのTgを−70℃以下にすることにより、ゴム組成物の氷上摩擦力を高いレベルで確保することができる。ジエン系ゴムのTgは、示差走査熱量測定装置(DSC)を使用し10℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、その転移域の中点の温度とする。ジエン系ゴムが油展オイルを含む場合には、油展オイルを除いた状態のTgとする。なお、本発明で使用するジエン系ゴムは、ブタジエンゴムを含む複数のジエン系ゴムから構成されるため、ジエン系ゴムのTgとしては、構成ゴムのTgにそれぞれの構成ゴムの含有量(体積分率)を乗じたものの総和とする。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述したジエン系ゴムにフッ素樹脂からなる微粒子を配合することにより、氷上摩擦力を高くする。フッ素樹脂からなる微粒子を配合したゴム組成物によりトレッド部を形成すると、トレッドゴムの表面にフッ素樹脂からなる微粒子が突起状に現れるため、この突起が氷雪路面を引っ掻くことにより氷上摩擦力が大きくなる。また、タイヤ走行時の抵抗により、フッ素樹脂からなる微粒子が脱離すると、トレッド部の表面にその微粒子が欠落した空孔が多数形成される。この空孔によりミクロなエッジ効果が発揮されるので氷上摩擦力がより高くなる。また、この空孔は、タイヤ走行に伴い、氷面上の水膜の吸収除去と遠心力による水の離脱を繰り返す作用を行うので水膜除去効果がある。すなわち、トレッドが氷路面に踏み込むとき氷面上の水膜を吸収除去し、氷路面から離れると遠心力で水を離脱させ、再び氷路面に踏込むことを繰り返して、トレッドの氷上摩擦力を高くする。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を形成した空気入りタイヤは、使用開始時にトレッド表面にフッ素樹脂からなる微粒子が現れていなくても、タイヤ走行に伴うトレッド表面の摩滅により、フッ素樹脂からなる微粒子が突起状に現れて引っ掻き効果を発揮するようになる。トレッド表面がさらに摩滅すると、フッ素樹脂からなる微粒子が脱離し、トレッド表面に微粒子が欠落した空孔が形成され、ミクロなエッジ効果と水膜除去効果が得られるようになる。特に、フッ素樹脂からなる微粒子は、ジエン系ゴムに対する親和性(接着性)が無機充填剤等と比べ低いため、トレッド表面から脱離しやすく空孔を形成し易い。また、空気入りタイヤの加硫成形時においても、ジエン系ゴムとフッ素樹脂からなる微粒子との接着性が低いため、ゴム成分と微粒子との界面が剥離し、ゴム成分が成形時に動き易くなる。このため、後述する熱膨張性マイクロカプセルを配合したとき、加硫成形中に熱膨張性マイクロカプセルがゴム成分を押しのけて膨張し易くなり、樹脂被覆気泡の形成を確実にすることができる。このため、氷上摩擦力を一層高くすることができる。
【0016】
フッ素樹脂からなる微粒子の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し0.5〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部である。フッ素樹脂からなる微粒子の配合量が0.5重量部未満であると、氷上摩擦力が十分に得られない。また、フッ素樹脂からなる微粒子の配合量が20重量部を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0017】
フッ素樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロプレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)三元共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン交互共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン交互共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等を例示することができる。フッ素樹脂は、これらから選ばれる少なくとも1つを含むものであればよい。また、これらのフッ素樹脂を含むリサイクル品から構成されたものでもよい。なかでも、フッ素樹脂からなる微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0018】
本発明で使用するフッ素樹脂からなる微粒子は、平均粒子径が好ましくは0.1〜40μm、より好ましくは1〜30μmであるとよい。平均粒子径が0.1μm未満であると、氷上摩擦力を高くする効果が十分に得られない。また、平均粒子径が40μmを超えると、氷上摩擦力を高くする効果が十分に得られないと共に、耐摩耗性が低下する。また、後述する熱膨張性マイクロカプセルを配合するときは、平均粒子径が好ましくは10〜40μm、より好ましくは20〜40μmであるとよい。平均粒子径をこのような範囲にすることにより、熱膨張性マイクロカプセルの加硫成形時の膨張を容易にすることができる。なお、フッ素樹脂からなる微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により微粒子100個の粒子径を観察し、それらの算術平均とする。
【0019】
また、フッ素樹脂からなる微粒子は、その最大粒子径が好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下であるとよい。フッ素樹脂からなる微粒子の最大粒子径を300μm以下にすることにより、耐摩耗性の低下を抑制することができる。なお、フッ素樹脂からなる微粒子の最大粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した微粒子100個の粒子径うちの最大値とする。
【0020】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルを配合することが好ましく、氷上摩擦力をより高くすることができる。すなわち熱膨張性マイクロカプセルを配合したゴム組成物をトレッド部に用いて未加硫タイヤを成形し加硫工程で加熱することによって、熱膨張性マイクロカプセルが膨張して樹脂被覆気泡を形成する。このようにトレッドゴム中に多数の樹脂被覆気泡を形成することにより、ミクロなエッジ効果が得られるため、氷上摩擦力が増大する。また、トレッドが氷路面に踏み込むとき氷路面の水膜を吸収除去し、氷路面から離れると遠心力で水を離脱させて再び氷路面に踏込むことを繰り返して、トレッドの氷路面に対する氷上摩擦力を一層高くする。
【0021】
本発明に使用する熱膨張性マイクロカプセルは、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。このため、熱膨張性マイクロカプセルが加熱されると、殻材に内包された熱膨張性物質が膨張して殻材の粒径を大きくし、トレッドゴム中に多数の樹脂被覆気泡を形成する。このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU−80」又は「EXPANCEL 092DU−120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マイクロスフェアー F−85」又は「マイクロスフェアー F−100」等を使用することができる。
【0022】
本発明において、熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは0.5〜20重量部であり、より好ましくは1〜15重量部である。熱膨張性マイクロカプセルの配合量が0.5重量部未満であると、トレッドゴム中に形成される樹脂被覆気泡の容積が不足し氷上摩擦力を十分に得ることができない。また、熱膨張性マイクロカプセルの配合量が20重量部を超えると、耐摩耗性が悪化する。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、シリカ、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等の充填剤を配合することができる。これらの充填剤は、本発明の目的に反しない限り、一般的な量及び方法で配合することができる。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカを配合することが好ましく、低温時のゴムの柔軟性(低温でのしなやかさ)を確保して、トレッドの氷路面に対する凝着性を高め、氷上摩擦力を向上することができる。更に、シリカを配合することにより氷雪に覆われていない湿潤路面(ウェット路面)におけるウェットグリップ性能(0℃のtanδ)を高くすると共に、ゴム組成物の発熱性(60℃のtanδ)を小さくしタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0025】
シリカとしては、BET比表面積が好ましくは70〜300m2/g、より好ましくは70〜280m2/gのものを使用するとよい。シリカのBET比表面積が70m2/g未満であると、ゴム組成物に対する補強性が不十分となる。また、シリカのBET比表面積が300m2/gを超えると、シリカの分散性が悪化しゴムの加工性が悪化するため好ましくない。シリカのBET比表面積は、ASTM−D−4820−93に準拠して測定するものとする。シリカの種類としては、通常タイヤ用ゴム組成物に配合されるシリカであればよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
【0026】
シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは10〜120重量部、より好ましくは10〜90重量部にするとよい。シリカの配合量が、10重量部未満であると氷上摩擦力やウェットグリップ性能を高くすることができない。また、シリカの配合量が、120重量部を超えるとゴムの加工性が著しく悪化する。
【0027】
本発明において、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し好ましくは1〜12重量%、より好ましくは3〜10重量%にする。シランカップリング剤の配合量が1重量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が12重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0028】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0029】
本発明では、カーボンブラックを配合することが好ましく、タイヤ用ゴム組成物の強度を高くし、耐摩耗性を向上する。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは10〜100重量部、より好ましくは20〜90重量部にするとよい。カーボンブラックの配合量が10重量部未満の場合、ゴム組成物の補強硬化が十分に得られず耐摩耗性が不足する。また、カーボンブラックの配合量が100重量部を超えると、ゴム組成物の粘度が高くなり成形加工性が悪化する。
【0030】
カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)が好ましくは70〜160m2/gのものを使用するとよい。窒素吸着比表面積をこのような範囲内にすることにより、タイヤ用ゴム組成物の強度、耐摩耗性を高くすると共に、良好な成形加工性を確保することができる。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積はJIS K6217−2に準拠して測定するものとする。
【0031】
タイヤ用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、加工助剤、老化防止剤、オイル、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してタイヤ用ゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0032】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によりトレッド部を構成した空気入りタイヤは、耐摩耗性を維持しながら、氷上性能が優れたものにすることができる。特にこのゴム組成物はスタッドレスタイヤのトレッド部を構成するのに好適である。
【0033】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
表1,2に示す配合からなる13種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜8、比較例1〜5)を、それぞれ加硫促進剤、硫黄及び熱膨張性マイクロカプセルを除く配合成分を秤量し、1.7L密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後このマスターバッチを1.7L密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤、硫黄及び熱膨張性マイクロカプセルを加え2分間混合し、タイヤ用ゴム組成物を調製した。なお、各ゴム組成物について、ジエン系ゴムのTgを、各構成ゴムのTgとそれぞれの配合量(ジエン系ゴム中の重量分率)から計算し、得られた結果を表1,2に示した。
【0035】
得られた13種類のタイヤ用ゴム組成物を用いて、下記に示す方法により、氷上摩擦力及び耐摩耗性を測定した。
【0036】
氷上摩擦力
得られたタイヤ用ゴム組成物を用いて、所定の金型中、170℃で10分間プレス加硫して試験片(厚さ4mm)を作成した。得られた試験片をほぼ半分の厚さになるように切断し、その切断面が試験面となるように偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用いて氷上摩擦係数を測定した。測定条件は、温度を−1.5℃、荷重を0.54MPa、ドラム回転速度を25km/hにした。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数にし「氷上摩擦力」として表1,2に示した。この指数が大きいほど氷上摩擦力が大きく優れることを意味する。
【0037】
耐摩耗性
得られたタイヤ用ゴム組成物を用いて、所定の金型中、170℃で10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作成した。得られた加硫ゴム試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重39N、スリップ率30%、時間4分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数にし「耐摩耗性」として表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、RSS#3、Tg=−65℃
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、Tg=−105℃
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS116R、Tg=−25℃
・カーボンブラック:東海カーボン社製シースト6、窒素吸着比表面積119m2/g
・シリカ:東ソー・シリカ社製Nipsil AQ、BET比表面積200m2/g
・シランカップリング剤:ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、デクサ社製Si69
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
・ワックス:大内新興化学工業社製パラフィンワックス
・PTFE粉末−1:ポリテトラフルオロエチレン粉末、セイシン企業社製リサイクルPTFEパウダーTFW−500、平均粒子径25μm、最大粒子径120μm
・PTFE粉末−2:ポリテトラフルオロエチレン粉末、セイシン企業社製リサイクルPTFEパウダーTFW−1000、平均粒子径10μm、最大粒子径32μm
・PTFE粉末−3:ポリテトラフルオロエチレン粉末、セイシン企業社製リサイクルPTFEパウダーTFW−3000F、平均粒子径3μm、最大粒子径10μm
・ウォラストナイト:NYCO Minerals社製NYAD 1250、平均繊維長9μm、平均繊維径3μm、アスペクト比3
・マイクロカプセル:熱膨張性マイクロカプセル、松本油脂製薬社製マイクロスフェアーF100
・プロセスオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンゴムを20〜80重量%含むジエン系ゴム100重量部に、フッ素樹脂からなる微粒子を0.5〜20重量部配合すると共に、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度が−70℃以下であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂からなる微粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粉末であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100重量部に、熱膨張性マイクロカプセルを0.5〜20重量部配合することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記フッ素樹脂からなる微粒子の平均粒子径が、0.1〜40μmであることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−201968(P2011−201968A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68735(P2010−68735)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】