説明

タイヤ金型

【課題】タイヤをより速く、均一に、そして効果的に加熱できる改善された金型を提供する。
【解決手段】タイヤを成形するために環状凹部を構成するように配置されている複数のセグメント12を有する分割された金型であって、各セグメント12はトレッドを成形するための内側表面14をさらに有している。各セグメントは、1つまたは2つ以上の溝と、それぞれの溝内に受け入れられた筒状部材88及び90と、を有する。筒状部材88又は90は、流体の媒体を循環させる流体マニフォールドを構成するように相互に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りラジアルタイヤの金型に関し、特に、分割されているタイヤ金型に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを成型するタイヤ金型は、鋼鉄またはアルミニウムで通常作られており、複数の蒸気プラテンによって、または金型をポットヒーター内に配置することによって加熱される。熱伝導性は、熱源から、複数の表面を構成しているトレッド及びサイドウォールへの熱の移動に通常依存している。複数の表面を構成しているトレッド及びサイドウォールに対して熱伝導性を最大にすることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱伝導性が最適な状態よりも低い場合、硬化時間とエネルギーコストとがさらに必要になり、金型の製造能力が低下し、運用コストが増加する。不十分な熱伝導性によって、金型内で温度の不均一が発生することもある。タイヤを硬化させる時間は、タイヤの最も硬化していない場所によって決まり、その場所はアンダートレッド上、つまりビード領域内に通常位置している。したがって、この領域をより速く硬化させることができれば、処理の時間全体を短縮することができる。したがって、タイヤをより速く、均一に、そして効果的に加熱できる改善された金型が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は第1の態様において、分割された金型であって、タイヤを成形するために環状凹部を構成するように配置されている複数のセグメントを有し、各セグメントは、トレッドを成形するための内側表面と、1つまたは2つ以上の溝と、1つまたは2つ以上の通路内に受け入れられた1つまたは2つ以上の部材と、をさらに有し、該部材は、流体媒体を循環させる流体マニフォールドを構成するように相互に結合されている金型を提供する。1つまたは2つ以上の溝は、各セグメントの外側円周表面に位置していることが好ましい。
【0005】
本発明は、第2の態様において、分割されている金型であって、タイヤを成形するために環状凹部を構成するように配置されている少なくとも第1及び第2のセグメントを有する金型を提供する。各セグメントは、トレッドを成形するための内側表面と、外側円周表面と、を有し、外側円周表面は2つ以上の溝を有し、各溝は溝の内部に受け入れられた筒状部材を有する。このような金型において、第1のセグメントは第1及び第2の筒状部材を有しており、第2のセグメントは第1及び第2の筒状部材を有しており、第1のセグメントの第1の筒状部材は、第2のセグメントの第2の筒状部材に第1の交差部材によって結合されており、第1のセグメントの第2の筒状部材は、第2のセグメントの第1の筒状部材に第2の交差部材によって結合されており、全ての筒状部材は、流体媒体を循環させる流体マニフォールドを構成するように相互に結合されている。
【0006】
定義
「軸線方向の」および「軸線方向に」は、タイヤまたはタイヤ金型の回転の軸線に平行なラインまたは方向を意味する。
【0007】
「周方向」は、軸線方向に垂直な環状トレッド金型の表面の周囲に沿って延びているラインまたは方向を意味する。
【0008】
「半径方向の(ラジアル)」および「半径方向に」は、タイヤまたはタイヤ金型の回転軸から半径方向に向かうかまたは半径方向に離れる方向を意味するのに使用される。
【0009】
「サイドウォール」は、タイヤの、トレッドとビードとの間の部分を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タイヤをより速く、均一に、そして効果的に加熱できる金型を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付図面を参照しつつ実例で本発明を説明する。
【0012】
図1は本発明の金型組み立て品10の第1の実施形態を示している。金型組み立て品10は、1つに組み立てられたときに環状の輪を構成するように配置されている複数のセグメント12を有している。タイヤの外側トレッド表面は、グリーンタイヤのトレッドパターンを成形するための複数のランドと溝とを有しているセグメント12の内側の成形表面14によって成形される。複数の金型セグメント12は、グリーンタイヤを中心として金型の組み立てと分解とができるように半径方向に移動可能である。
【0013】
金型組み立て品10は、タイヤの2つのサイドウォール(不図示)を成形する第1と第2のサイドウォールプレート20、22をさらに有している。各サイドウォールプレート20、22は、タイヤサイドウォールを成形する内側金型表面24、26を有しており、タイヤトレッドからサイドウォールまでの滑らかな連続している表面を構成するように複数のセグメント12に結合している。各サイドウォールプレート20、22は、セグメント12の第1と第2のフランジ状端部32、34内部に受け入れるL形状の凹部を構成している任意採用の半径方向外側リップ28、30をさらに有していてもよい。さらに各サイドウォールプレート20、22は、金型ビードリング40、42を内部に受け入れる第2のL形状凹部36、38を構成する半径方向内側延長部分つまりリップを有している。各ビードリング40、42は、グリーンタイヤのビード領域を上に受ける、アールの付けられている部分44、46を有している。上側と下側のサイドウォールプレート20、22は、複数のセグメント12と上部と下部のビードリング40、42と一体となって、グリーンタイヤを成形する金型キャビティを共に定めている。
【0014】
金型組み立て品10は、図3に示しているように任意採用の容器ハウジングに通常収容されている。容器は、任意採用の複数の耐摩耗プレート52を有している上部と下部の容器プレート49、50を通常有している。下部容器プレート50は、図3に示しているように、サイドウォールプレート22とビードリング42とを上に支持する内側環54を有している。複数のセグメント12が、サイドウォールプレート22を中心に配置されている。複数の摺動ブロック60が複数のセグメント12を囲んでいる。複数の摺動ブロック60は、複数のセグメント12を内部に受け入れて支持するフランジ状端部62、64を有している。複数の摺動ブロック60は、容器プレート49、50と耐摩耗プレート52へ接触するための上部と下部の表面63、65を有している。複数の摺動ブロック60は、半径方向に摺動可能である。容器ハウジングは、環状作動リング70をさらに有している。作動リング70の半径方向内側表面72は、複数の摺動ブロック60の傾斜している外側表面74と係合するように傾斜している。作動リング70が下降すると、作動リング70の半径方向内側表面72は複数の摺動ブロック60の外側表面74に係合し、複数の摺動ブロック60を半径方向内向きに摺動させる。作動リング70のカム動作によって、複数の摺動ブロック60が半径方向内向きに移動する。複数の摺動ブロック60が半径方向内向きに移動すると、摺動ブロック60の半径方向内側表面76が、隣接しているセグメント12の半径方向外側表面78に係合し、作動リング70が定位置に下降するにつれてセグメント12を半径方向内向きに移動させる。
【0015】
図2は、本発明の2つのトレッド金型セグメント12の背面図を示している。2つのトレッド金型セグメント12は、第1の部分つまり上側部分80と第2の部分つまり下側部分82とを有している外側表面78を有している。第1と第2の部分80、82は筒状部材88、90をそれぞれ内部に受け入れる、開口している溝84、86をさらに有している。筒状部材88、90は柔軟であってもよい。図2に示しているように、筒状部材は、たとえば、金型の周囲方向に沿うように向けられていてもよいが、他の方向を使用することもできる。溝84、86は、筒状部材88、90が溝84、86内に取り付けられたときに溝と同じ高さか奥まった所に位置するように、十分に深いことが好ましい。図示されていないが、開口している溝84、86は、セグメント12の厚みまたはその他の制限しだいで、複数のトレッドセグメント12の上部表面80と下部表面82とに任意で位置していてもよい。
【0016】
図7は完成したマニフォールド組み立て品100を示しており、金型10はわかりやすいように取り除かれている。図7に示しているように、マニフォールド組み立て品100は、1つまたは2つ以上の入口ポート102と、1つまたは2つ以上の出口ポート104と、を有している。蒸気などの流体が入口ポート102に進入し、複数の筒状部材88、90を経由する。筒状部材88、90は、セグメント12の2つの溝84、86内に受け入れられており、複数の筒状部材88、90内を移動する流体からの熱の伝導によって複数のセグメント12を加熱する役割がある。交差部材92が、第1のセグメント12上の筒状部材88を、隣接しているセグメント12′の下側の筒状部材90に接続している。第2の交差部材94が、筒状部材88を、隣接しているセグメント12上の下側の筒状部材90に接続している。複数の交差部材92、94は、2つのセグメント12が結合されている箇所で、互いを越えて交差している。交差部材92、94は、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)強化ステンレス鋼編み上げ材料などの強力で、柔軟な材料で作られていることが好ましい。この接続パターンが各セグメント12について繰り返されている。最後のセグメント12では、上側と下側の筒状部材88、90が相互に連結されて出口ポートを構成している。複数のセグメント12は半径方向に内向きと外向きに移動するため、この移動に対応するように各筒状部材88、90、92、94は柔軟でなければならない。図7に示しているように、上側の複数の筒状部材88は円を構成しているが、上側の他の筒状部材88に直接結合されていない。下側の複数の筒状部材90も円を構成しているが、直接つまり連続して1つには接続されてはいない。
【0017】
図4は、組み立てられている金型10を、作動リング70を取り外した状態で示している。摺動ブロック60は、金型10が組み立てられたときに、個々に少しずつずらして並んだ状態であって、側面96、98がいずれも他とは接触していない状態となるように、図示のように円周方向の幅が減少している。
【0018】
図8〜10は本発明の第2の実施形態を示している。図8はセグメント12の半径方向外側表面78を示している。図10に示しているように、セグメント12の半径方向外側表面78はX形状の溝101を有している。X形状の溝101内にはX形状の連結具103が受け入れられている。X形状の連結具103は2つのポート105、106を一方の側に、2つのポート108、110をもう一方の側に有している。X形状の連結具103は各セグメント12の溝101内に受け入れられている。複数の連結具103が交差部材112、114によって相互に接続されている。交差部材112は、上側の連結ポート108を、隣接している連結具103の下側の連結ポート106に結合している。交差部材114は、上側の連結ポート105を、隣接している連結具103の下側の連結ポート110に結合している。したがって、各セグメント12のX形状の連結具103は流体媒体を内部に導くマニフォールドを構成するように複数の交差部材112、114によって相互に接続されている。その流体媒体は、蒸気または必要に応じて他の流体であってもよい。本発明は、X形状の連結具には限定されておらず、他の形状も本発明に利用できるであろう。
【0019】
対象とする発明を説明する目的で、特定の代表的な実施形態と詳細とを示しているが、当業者には対象とする発明の精神や範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な変更と修正が可能であることが明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】複数のセグメント、複数のサイドウォールプレート、および複数の金型リングだけを示している、内側の分割されている金型組み立て品の部分切開図である。
【図2】2つのセグメントの背面図である。
【図3】複数の外側容器部分を示している完全なタイヤ金型組み立て品の部分切開図である。
【図4】作動リングを取り除いた状態での図1の金型組み立て品の部分切開図である。
【図5】わかりやすいように複数の摺動ブロックの一部を取り除いた状態での、図4に示した金型の透視図である。
【図6】金型の複数の内側部品を仮想線で示している組み立て品全体の透視図である。
【図7】本発明の、柔軟性がある、蒸気の環状路の透視図である。
【図8】2つのセグメントの第2の実施形態の背面図である。
【図9】連結組み立て品、つまり2つの連結具を相互接続している2つの交差部材の前面図である。
【図10】連結組み立て品を挿入するための2つの溝を示している2つのセグメントの背面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 金型組み立て品
12、12′ 金型セグメント
14 セグメントの内側成形表面
20、22 サイドウォールプレート
24、26 サイドウォールプレートの内側金型表面
28、30 サイドウォールプレートの半径方向外側リップ
32、34 セグメントのフランジ状端部
36、38 サイドウォールプレートの半径方向内側リップ
40、42 金型ビードリング
44、46 ビードリングの、アールの付けられている部分
49、50 容器プレート
52 耐摩耗プレート
54 内側環
60 摺動ブロック
62、64 摺動ブロックのフランジ状端部
63、65 摺動ブロックの表面
70 作動リング
72 作動リングの半径方向内側表面
74 摺動ブロックの半径方向外側表面
76 摺動ブロックの半径方向内側表面
78 セグメントの半径方向外側表面
80 セグメントの第1の部分
82 セグメントの第2の部分
84、86 溝
88、90 筒状部材
92、94 交差部材
96、98 摺動ブロックの側面
100 マニフォールド組み立て品
101 溝
103 連結具
102 入口ポート
104 出口ポート
105、106、108、110 ポート
112、114 交差部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割されている金型であって、タイヤを成形するために環状凹部を構成するように配置されている複数のセグメントを有し、前記セグメントは、トレッドを成形するための内側表面と、1つまたは2つ以上の溝と、前記1つまたは2つ以上の溝内に受け入れられた1つまたは2つ以上の部材と、を有しており、前記部材が、流体媒体を循環させる流体マニフォールドを構成するように相互に結合されている、金型。
【請求項2】
前記部材は筒状である、請求項1に記載の金型。
【請求項3】
各前記セグメントは、第1と第2の溝を有し、各前記溝は溝の内部に取り付けられた筒状部材を有する、請求項1に記載の金型。
【請求項4】
前記溝は、前記セグメントの外側円周表面に位置している、請求項1に記載の金型。
【請求項5】
分割されている金型であって、タイヤを成形するために環状凹部を構成するように配置されている少なくとも第1及び第2のセグメントを有し、前記セグメントは、トレッドを成形するための内側表面と、外側円周表面と、を有し、前記外側円周表面は2つ以上の溝を有し、各前記溝は溝の内部に受け入れられた筒状部材を有する、金型であって、
前記第1のセグメントは第1及び第2の筒状部材を有しており、前記第2のセグメントは第1及び第2の筒状部材を有しており、前記第1のセグメントの前記第1の筒状部材は、前記第2のセグメントの前記第2の筒状部材に第1の交差部材によって結合されており、前記第1のセグメントの前記第2の筒状部材は、前記第2のセグメントの前記第1の筒状部材に第2の交差部材によって結合されており、全ての前記筒状部材は、流体媒体を循環させる流体マニフォールドを構成するように相互に結合されている、金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−149079(P2009−149079A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321962(P2008−321962)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(590002976)ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー (256)
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
【住所又は居所原語表記】1144 East Market Street,Akron,Ohio 44316−0001,U.S.A.
【Fターム(参考)】