説明

タクシー配車システム

【課題】タクシー配車システムにおいて、配車指示を受けたタクシーからの応答が管理センタへ届かない場合に、管理センタが他のタクシーへ二重に配車指示を行ってしまうという問題、あるいは、配車指示を受けたタクシーの了解操作が遅いとタクシーが配車指示を無視するようになっている場合に、管理センタが配車手配済みと認識するために未手配状態になるという問題を解決する。
【解決手段】配車指示を受けたタクシーは、配車了解信号を管理センタへ返信するとともに、その後、管理センタからポーリング信号が送信されてくると、ポーリング応答信号に、配車中である旨の情報を含ませて返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば業務用無線によるタクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システムに関し、特に、タクシーの位置情報を自動的に検出し、効率的に配車することのできるタクシー配車システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人工衛星を利用したGPS(Global Positioning System)測位システムにより、全世界においてGPS受信機単体で誤差10m程度の精度で位置情報を得ることができるようになっている。このGPS測位システムは、主にカーナビゲーションや船舶、航空機の航法あるいは測量などに利用されている。また、近年の移動通信システムの発展により、手軽に広域エリアを対象とした移動体データ通信を行うことが可能となっている。このようなGPS測位システムと移動通信システムとが融合して、移動体の位置管理システムが実用化され、公衆用無線や業務用無線を通じて宅配車両やタクシーなどの配車の効率向上などの目的に利用されている。
【0003】
従来のGPSを利用したタクシー配車用AVMシステムは、GPS衛星と、移動局( タクシー)と、移動局と無線通信を行う基地局と、基地局と専用線で接続された管理センタとから構成されている。各移動局は、GPS衛星からの位置情報を受けて、自車の位置情報( 緯度、経度) を入手することができる。管理センタからの指示で、各基地局は、ポーリング信号を各移動局に送信し、各移動局は、このポーリング信号に応答してポーリング応答信号を基地局に送信する。このとき、ポーリング応答信号には、各移動局の車両動態情報(空車等の情報)や位置情報が含まれている。即ち、このシステムにおいては、管理センタは、各基地局を介して各移動局から車両動態情報や位置情報を収集する。
【0004】
なお、基地局は、少なくとも1つあって管理センタに接続されており、管理センタでは、顧客からの配車要求に従い、移動局の動態位置情報(空車等の情報や位置情報)から配車に最適な移動局、例えば、顧客に最も近い移動局の検索を行って配車指示情報を送信し、タクシー車両の配車を行う。配車を指示された移動局は、管理センタへ配車了解情報を送信するとともに、顧客の所まで移動する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-332291公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のタクシー配車用AVMシステムでは、管理センタからの配車指示を移動局が受信した後、移動局が無線不感エリア内に移動したなどの理由により、移動局からの配車了解情報を管理センタが受信できなかった場合、管理センタは、他の移動局(タクシー)に配車指示を行うようにしていた。そのため、同一顧客の場所へ複数台の移動局(タクシー)が向かってしまうという二重配車の問題があった。
【0007】
また、移動局は、操作員が了解情報を送信するための操作(了解送信操作)を行うことにより、配車了解情報を送信するようにしているが、所定の時間内に了解送信操作が行われないと、配車了解情報は送信するが、移動局の操作員は配車了解に失敗したと認識するため、配車指示を無視し配車指示に応じないようになっていた。そのため、移動局からの配車了解情報を管理センタが受信できた場合においても、移動局での了解操作が遅れると、管理センタは配車手配済みと認識しているが、移動局は配車指示を無視する結果、未配車状態になるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、同一顧客への配車指示情報を複数の移動局に対して重複して発信しても二重配車を防止することができ、また、未配車状態になることを防止することのできるタクシー配車システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本願の第1の発明は、
無線により基地局と通信可能な複数の移動局と、前記基地局と接続され、ポーリング方式により前記基地局を介して無線通信により前記複数の移動局の位置情報を収集する管理センタとを備えたタクシー配車システムであって、
前記管理センタは、管理センタ制御部と管理センタ記憶部とを備え、前記管理センタ制御部は、前記管理センタ記憶部に記憶した移動局の位置情報に基づき作成された配車指示情報を、基地局を介して移動局へ送信し、該配車指示情報への応答として基地局を介して移動局から配車了解情報を受信すると、該移動局が配車中である旨の配車手配済情報を管理センタ記憶部に記憶するものであり、
前記移動局は、移動局制御部と移動局記憶部とを備え、前記移動局制御部は、基地局を介して前記管理センタからの配車指示情報を受信した後、該配車指示が自局への配車指示であった場合は、配車中である旨の配車状態情報を移動局記憶部に記憶するとともに、基地局を介して配車了解情報を管理センタへ送信し、その後、基地局からポーリング信号を受信すると、前記配車中である旨の配車状態情報が含まれたポーリング応答信号を基地局へ送信するものであり、
前記管理センタ制御部が、前記移動局からのポーリング応答信号に含まれる配車状態情報と、前記管理センタ記憶部に記憶した配車手配済情報との比較結果に基づいて、配車指示情報又は配車中止情報を移動局に送信することを特徴とするタクシー配車システムとして構成される。
【発明の効果】
【0010】
本願の第1の発明によれば、同一顧客への配車指示情報を複数の移動局に対して重複して発信しても二重配車を防止することができるため、効率的な配車の対応ができる。また、未配車状態になることを防止することのできるため、顧客へのサービス性を向上させることができる。
【0011】
また、本願の第2の発明は、上記本願の第1の発明に対して、さらに、
前記管理センタ制御部は、移動局からのポーリング応答信号に含まれる配車状態情報が配車中であることを示し、前記管理センタ記憶部に記憶した配車手配済情報が配車中でないことを示している場合に、基地局を介して当該移動局に配車中止情報を送信するものであることを特徴とするタクシー配車システムとすることもできる。
このようにすることにより、同一顧客への配車指示情報を複数の移動局に対して重複して発信しても、速やかに取り消すことができるため、効率的な配車の対応ができる。
【0012】
また、本願の第3の発明は、上記本願の第1あるいは第2の発明に対して、さらに、
前記管理センタ制御部は、移動局からのポーリング応答信号に含まれる配車状態情報が配車中でないことを示し、前記管理センタ記憶部に記憶した配車手配済情報が配車中であることを示している場合に、基地局を介して当該移動局に配車指示情報を送信するものであることを特徴とするタクシー配車システムとすることもできる。
このようにすることにより、一時的に未配車状態になった場合も改めて配車指示ができるため、顧客へのサービス性を向上させることができる。
【0013】
なお、上記本願の第1ないし第3の発明においては、移動局の配車状態情報をポーリング応答信号に含ませて送信しているが、ポーリング応答信号以外のデータ送信用信号を用いて配車状態情報を送信することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で使用されるタクシー配車システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明で使用される管理センタの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明で使用される基地局の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明で使用される移動局の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施例の基地局からのポーリング信号と移動局からの応答信号の関係を示す図である。
【図6】本発明の一実施例のポーリング信号およびポーリング応答信号を説明するための図である。
【図7】本発明のタクシー配車システムのポーリング方式のシーケンスの一例を説明するための図である。
【図8】本発明のタクシー配車システムのポーリング方式のシーケンスの一例を説明するための図である。
【図9】本発明で使用される車両情報データベースの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。先ず、本発明の一実施形態に係る車両運行システムのシステム構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両運行システムのシステム構成図である。
【0016】
本実施形態に係る車両運行システムは、図1に示されるように、基地局10−1、10−2、10−3、…、移動局20−1、20−2、20−3…、GPS衛星6、管理センタ5を備える。
【0017】
移動局20−1、20−2、20−3…(単に、移動局20とも表記する)は、実際には、配車、運行の対象となっている車両である。基地局10−1、10−2、10−3…(単に、基地局10とも表記する)は、移動局と無線で通信する無線局であり、移動局と無線により通信できる一定のカバーエリアを有する。なお、本実施の形態では、基地局と移動局間の業務用無線の方式として、デジタルSCPC(Single Channel Per Carrier)方式を使用している。
【0018】
管理センタ5は、この車両運行システムの全体を管理する装置であり、一つ以上の基地局10とネットワークにより結ばれ、制御と情報のやりとりをおこなえるようになっている。管理センタ5の管理領域は、接続されている基地局10−1、10−2、10−3…の基地局カバーエリアの和集合の領域である。なお、管理センタ5は、基地局10と一体に構成することもできる。
【0019】
GPS衛星6は、位置情報を移動局20に伝えるための人工衛星であり、移動局20は、複数のGPS衛星6から時刻のデータを含む電波信号D6をGPS受信機で受け取り、受信した電波の時間差によりそれぞれのGPS衛星6との相対的な距離差を算出し、それにより自車の位置情報(経度、緯度)を得ることができる。
【0020】
基地局10は、管理センタ5の指示により移動局20にポーリング信号を送信し、移動局20は、そのポーリング信号に応答して、車両番号と共に自車の情報を送信する。そして、最終的に管理領域内の車両の情報は、全て管理センタ5に伝送される。管理センタ5では、その車両の情報を記憶部110にデータベースとして保存する。
【0021】
次に、本発明の実施例の動作概要について説明する。
移動局20には、GPSシステムにより現時点での位置情報が収集され、保存されている。この状態で、まず、管理センタ5は、基地局10を介してポーリング方式で複数の移動局20の現時点での位置情報および動態情報( 実車、空車、待機、迎車、休憩、移動方向、事故情報、配車状態等) を収集するためにポーリング信号PO1を各移動局20に送信する。各移動局20は、このポーリング信号PO1を受信することにより、車両番号、現時点での位置情報および動態情報をポーリング応答信号SRで、基地局10に送信する。なお、基地局10、移動局20およびポーリング方式の詳細については後述する。
【0022】
上記のようにして複数の移動局20から収集された現時点での位置情報および動態情報は、基地局10から管理センタ5に送信され、管理センタ記憶部110の車両情報データベース112に記憶される。従って、このシステムでは、管理センタ5は、基地局10から送られる各移動局20の位置情報および動態情報を収集し、車両情報データベース112に基づいて種々の車両情報管理を行うように構成されている。車両情報データベース112については、後で図9を用いて説明する。なお、図1では、基地局10は、管理センタ5と独立した形態で説明しているが、システムの規模に応じて一体に構成することもできることは勿論である。
【0023】
次に、顧客からタクシーの配車要求を受け取った管理センタ5は、車両情報データベース112を用いて、最適な車両検索のために、例えば、顧客に最も近い位置に位置する第1の移動局20−1を検索し、配車指示情報を送信する。配車指示情報を受けた第1の移動局20−1は、自局の記憶部に配車中である旨の配車状態情報を記憶するとともに、配車了解情報を管理センタ5 に送信する。配車了解情報を受信した場合、管理センタ5は、車両情報データベース112に、第1の移動局20−1に対して配車中である旨の配車手配済情報を設定、記憶し、配車手配が完了する。
【0024】
第1の移動局20−1からの配車了解情報を受信できなかった場合、管理センタ5は、第1の移動局20−1への配車指示が失敗したものと認識する。そこで、管理センタ5は、例えば、次に近い位置に位置する第2の移動局20−2を検索し配車指示情報を送信する。配車指示情報を受けた第2の移動局20−2は、自局の記憶部に配車中である旨の配車状態情報を記憶するとともに、配車了解情報を管理センタ5 に送信する。そして、第2の移動局20−2からの配車了解情報を受信すると、管理センタ5は、車両情報データベース112に第2の移動局20−2に対して配車中である旨の配車手配済情報を設定、記憶し、配車手配を完了する。
【0025】
その後、基地局10からポーリング信号が送信されると、第1の移動局20−1、第2の移動局20−2は、自局が配車中である旨の配車状態情報を含んだポーリング応答信号を基地局10へ返信する。
管理センタ5は、受信した配車状態情報と、車両情報データベース112に記憶していた配車手配済情報を比較し、第1の移動局20−1からの配車状態情報が配車中となっているにもかかわらず、管理センタ5の配車手配済情報が配車中となっていない場合は、第1の移動局20−1に対して配車中止情報を送信する。配車中止情報を受信した第1の移動局20−1は、配車を中止する。第2の移動局20−2については、配車状態情報が配車中となっており、配車手配済情報が配車中となっているので、管理センタ5は、配車中止情報を送信することなく、配車指示状態を継続する。
【0026】
次に、図2ないし図4を用いて本発明の一実施形態に係る車両運行システムの各部の構成を説明する。
図2は、管理センタ5の構成を示すブロック図である。
図3は、基地局10の構成を示すブロック図である。
図4は、移動局20である車両の構成を示すブロック図である。
【0027】
先ず、図2を用いて管理センタ5の構成を説明する。
管理センタ5は、図2に示されるように、制御部100と記憶部110と操作表示部106が接続された構成である。本例では、記憶部110に外部記憶装置を用いている。
制御部100は、中央処理装置101、通信インタフェース102、入出力インタフェース103、メモリ104、記憶装置インタフェース105を備え、各部はバスにより接続されている。
通信インタフェース102は、各基地局10−1、10−2、10−3、…と接続されている伝送路により通信をおこなうインタフェースである。マウス、キーボードなどの入出力装置と、LCDモニタやCRTディスプレイなど表示装置を備えた操作表示部106は、入出力インタフェース103により接続され、データの入出力と各種の表示がおこなえるようになっている。
【0028】
メモリ104は、主記憶装置であり、通常は、半導体装置で構成される。
外部記憶装置110は、記憶装置インタフェース105により接続され、ハードディスクドライブなどの大容量の記憶装置である。外部記憶装置110には、車両の運行を管理する運行管理プログラム111と、車両情報データベース112が格納されている。
運行管理プログラム111は、メモリ104にロードされて、中央処理装置101により実行される。車両情報データベース112は、車両から送られてくる動態位置情報を含む車両情報のデータベースであり、図9を用いて後で説明する。
【0029】
次に、図3を用いて基地局10の構成を説明する。
基地局10は、図3に示されるように、基地局処理装置200と無線機204が接続された構成である。基地局処理装置200は、記憶部201、通信インタフェース203、ポーリング信号生成部202、データ送信要求信号発生部205を備える。
【0030】
通信インタフェース203は、管理センタ5と接続されているネットワークにより通信をおこなうインタフェースである。
ポーリング信号生成部202では、移動局20に対するポーリング信号を生成し、無線機204からアンテナ206を介して、移動局20に送信する。また、データ送信要求信号発生部205では、移動局20に対してデータ送信要求の信号を発生させて無線機204からアンテナ206を介して移動局20に送信する。
記憶部201は、一時的にデータを蓄えるバッファである。
【0031】
次に、図4を用いて移動局20の構成について説明する。
移動局20は、図4に示されるように、無線機301、対基地局通信用アンテナ302、データ送信要求信号受信部303、ポーリング信号受信部304、スロット設定部305、記憶部306、データ生成部307、位置検出部308、料金メータ309、操作表示部310、GPS用アンテナ311を備える。
【0032】
位置検出部308は、GPS衛星6から送られてくる情報をGPSアンテナ311を介して受信して、自車位置を検出する。例えば、経度および緯度を検出する。
料金メータ309は、顧客を乗せたときに課金するためのメータであり、データ生成部307に、空車、迎車、又は実車の状態を表す信号を送信する。
データ送信要求信号受信部303は、基地局10からのデータ送信要求信号を検出する。ポーリング信号受信部304は、基地局10からのポーリング信号を検出する。
スロット設定部305は、自局のデータ送信スロットのタイミングを設定する。
記憶部306は、一時的にデータを蓄えるバッファである。
操作表示部310は、より詳細には、モニタなどの情報を表示する部分と、タッチパネル、ボタンなどの入力をおこなう部分を有する。例えば、配車完了ボタンを有し、配車状態情報を獲得する部分となる。
【0033】
次に、基地局10と移動局20の動作概要を説明する。
まず、基地局10では、移動局20からの各種情報を得るための動作を実行する。そのため、基地局10の記憶部201では、移動局番号を記憶し、ポーリング信号生成部202で生成された、先頭スロットで応答送信させる移動局番号の指定情報を含むポーリング信号と、データ送信要求信号発生部205で生成された移動局へのデータ送信要求信号とを無線機204からアンテナ206を経由して各移動局20へ送信する。
【0034】
基地局10から送信された電波は、移動局20側のアンテナ302を介して無線機301で受信され、このうちポーリング信号は、ポーリング信号受信部304で受信され、送信スロットの先頭の車両番号から各移動局20の車両番号が検出される。
【0035】
一方、データ送信要求信号受信部303で基地局10からのデータ送信要求信号を検出する。ポーリング信号受信部304及びデータ送信要求受信部303で検出された信号は、スロット設定部305へ送られる。スロット設定部305は、自局のデータ送信スロットのタイミングを設定する。また、スロット設定部305は、データ送信要求信号受信部303からの信号を継続して監視しており、自局のデータ送信スロットのタイミングに達した時点でデータ送信要求信号が検出されている場合、データ生成部307を起動して送信すべきデータを無線機301、アンテナ302を経由して基地局10に送信する。また、データ生成部307は、料金メータ309からの信号によって、空車/迎車/実車を検出してデータを生成する。また、スロット設定部305は、データ送信要求信号受信部303の検出信号がなくなるとリセットされる。
【0036】
位置検出部308 は、例えば、GPSシステムにより自局の位置、例えば、緯度および経度を検出し、データ生成部307で送信用データを生成する。操作表示部310は、移動局の動作や、必要なデータ入力あるいは基地局からの情報の表示を行う機能を有する。また、移動局20は、別途、地図データベース(図示せず)を有しており、例えば、位置検出部308で検出された自車の位置、すなわち、経度および緯度の情報から操作表示部310の表示画面上の地図上に自車の現在地を表示することができる。また、移動局20の行き先を地図データベースから検索し、同様に地図上に表示することもできる。
【0037】
次に、基地局10から移動局20との間のポーリング信号とポーリング応答信号のやりとりについて、図5、図6を用いて説明する。
図5は、基地局と移動局間でやりとりされるポーリング信号とポーリング応答信号のシーケンス図である。
図6は、ポーリング信号とポーリング応答信号を説明する図である。
【0038】
基地局10は、エリア内の全ての移動局に対して移動局車両番号1からnを指定したポーリング信号PO1を送信する。なお、図5では、移動局車両番号iの移動局を単に、移動局iと表記している。
ここでは、例えば、図1の移動局20−1が移動局車両番号1、移動局20−2が移動局車両番号2、移動局20−3が移動局車両番号3、・・・、移動局20−nが移動局車両番号n、というように移動局各々には車両番号が固有に設定されている。
【0039】
移動局車両番号iの移動局20−iは、スロット生成部305により予め指定してある車両番号から送信するタイミングを計算し、該当送信スロットで基地局にポーリング応答信号SRiを送信する。ここで、ポーリング信号は、図6(a)に示されるように、信号種別401、ポーリング車番指定402および予備403からなる。信号種別401には、この信号がポーリング信号であることを示す識別子が入る。ポーリング車番指定402は、このポーリング信号に応答すべき車両番号を指定する。
【0040】
ポーリング応答信号は、図6(b)に示されるように、信号種別404、動態情報405および位置情報406からなる。
信号種別404には、この信号がポーリング応答信号であることを示す識別子が入る。動態情報405は、この車両の現在の状態を示す情報であり、顧客を乗せていない状態である「空車」、顧客を乗せて課金中である「実車」、顧客に対して料金の精算中である「支払い」、顧客を迎えるために走行中であって送迎料金を課金する場合である「迎車」などの状態を表す。なお、顧客を迎えるために走行中であっても、送迎料金を課金しない場合は、「迎車」として扱わない。本実施例では、送迎料金を課金する、しないに関わらず、顧客を迎えるために走行中等である状態を、移動局が「配車中」であると表現する。
【0041】
また、位置情報406は、時刻情報を含み、時刻情報と共に移動している移動局の現在位置(X,Y)が送信される。これらの情報は、基地局10の無線機204で受信され、管理センタ5の制御部100に送られ、外部記憶装置110に記憶される。
【0042】
基地局10は、休止期間の時間経過後に次の移動局車両番号n+1からmを指定したポーリング信号PO1を送信し、同じ動作を繰り返すことでエリア内の全移動局の動態位置情報を定期的に収集することができる。
【0043】
ここで、基地局10は、図5のようにポーリング信号を送信したあとは、休止期間まで信号を送信することはない。このポーリング信号を送信したあとから休止期間の先頭までの期間を「下り送信利用期間」と呼び、通常はこの期間を利用して、配車情報や連絡情報などの文字データを移動局20へ送信している。
【0044】
なお、図5に示すポーリング方式は、多数台、例えば、m台の移動局で構成されるタクシー配車用AVMシステム等の無線通信システムにおいて、移動局をグループ化し、効率良く移動局の動態情報を収集する場合を示している。即ち、1 回のポーリング周期でm台の移動局全ての動態情報を短時間に収集するには、ポーリングに時間がかかりすぎるし、また、ポーリング応答信号の送信にも無理が生じる。従って、図5では、例えば、n(n<m)台の移動局を1 回のポーリング信号PO1で動態情報を収集し、次のポーリング信号PO2で次の(m−n)台の移動局の動態情報を収集するという方式を採用している。なお、このようなグループ分けは、適宜システムの構成に応じてさまざまな構成が可能であり、上述のような2 グループのみに限定されるものではない。
【0045】
また、図5に示す方式では、ポーリングのためのチャネルと基地局10から移動局20に配車データ等を送信するチャネルをそれぞれ別のチャネルで送信する2 チャネル方式の場合が示されているが、これに限定されるものではない。
【0046】
次に、図7、図8のタイミングチャートと図9の具体的なデータに基づいて本発明の一実施形態に係る車両運行システムの動作について説明する。まず、管理センタ5が配車指示を行って、移動局20からの配車了解情報を受信できた場合の動作を説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る車両運行システムの動作を示すタイミングチャートであり、管理センタ5が配車指示を行って、移動局20からの配車了解情報を受信できた場合の動作を示す。
図9は、車両情報データベース112を示す図である。
【0047】
先ず、管理センタ5の制御部100は、伝送路を介し基地局10に対して、動態位置情報を含む車両情報の収集を指示する(S1)。基地局10では、ポーリング信号生成部202とデータ送信要求信号発生部205により無線機204を介して、移動局20に対して図6(a)に示したポーリング信号およびデータ送信要求信号を送信する(S2)。
【0048】
移動局20では、ポーリング信号およびデータ送信要求信号を、ポーリング信号受信部304とデータ送信要求信号受信部303により受信し、基地局10に対して所定のスロットで図6(b)に示したポーリング応答信号を送信する(S3)。
【0049】
基地局10では、受信したポーリング応答信号より、動態情報と位置情報を含む車両情報を編集して、管理センタ5の制御部100に送信する(S4)。管理センタ5の制御部100は、送信されてくる車両情報を、図9に示されるような車両情報データベース112に格納する(S5)。
車両情報データベース112は、図9に示されるように、車両番号、位置情報、位置情報と対応する時刻、車両番号ごとの動態情報、配車手配済情報を格納する。図9の例では、動態情報は配車状態情報に相当し、車両から送られてくるポーリング応答信号の動態情報405に基づき、「空車」、「実車」、「支払い」、「迎車」、「配車中」などの状態が入る。位置情報と、位置情報と対応する時刻も、車両から送られてくるポーリング応答信号の位置情報406に基づくものである。配車手配済情報は、移動局20から配車了解情報を受信すると、「配車中」が設定されるものである。
【0050】
図9では、各移動局20−1、20−2、・・・20−nの現在位置( 緯度Xn 、経度Yn)、現在位置と対応する時刻、動態情報(実車、空車、待機、迎車、配車中)、配車手配済情報をテーブル化したものが示されている。管理センタ5は、この車両情報データベース112に基づいて各移動局20の車両情報(位置情報、動態情報等)管理を行っている。
【0051】
この状態で、顧客が管理センタ5に配車要求を行うと、管理センタ5の制御部100 は、図9に示す車両情報データベース112の車両情報と、例えば操作表示部106から入力された顧客位置情報とに基づいて、例えば、移動局20−1を抽出する。移動局20−1の抽出は、例えば、管理センタ5が、現時点で空車である移動局を車両情報データベース112の配車状態情報から検索し、さらに、顧客位置から所定の範囲に位置する移動局を車両情報データベース112の位置情報から検索することにより、例えば、空車であり、且つ、最も顧客に近い移動局20−1を選定することで実現できる。
なお、顧客位置情報は、操作表示部106以外の手段により入力してもよく、また、移動局の選定は、操作員が行ってもよいことは勿論である。
【0052】
その結果、管理センタ5の制御部100は、基地局10を介して下り送信利用期間( 図5に示す。) の間に、移動局20−1に対して配車指示情報を送信する(S6、S7)。移動局20−1は、この配車指示情報を受信すると、所定の了解操作実行期間内に移動局20−1の操作表示部310を操作して、基地局を介して管理センタ5に配車了解情報を送信する(S9、S10)とともに、自局の記憶部306に配車中である旨の配車状態情報を記憶する(S8)。移動局20−1からの配車了解情報を受信すると、管理センタ5は、車両情報データベース112に、移動局20−1に対して配車中である旨の配車手配済情報を設定、記憶し(S11)、配車手配が完了する。
【0053】
その後、基地局10からポーリング信号が送信される(S13)と、各移動局20は、ポーリング応答信号を基地局10へ返信する(S14)。このとき、各移動局20は、それぞれ自局の記憶部306に記憶している配車状態情報を参照し、配車中の有無、つまり、自局が配車中であるか否かの配車状態情報をポーリング応答信号中の動態情報に含ませる。
【0054】
移動局20−1は、自局の記憶部306に配車中である旨を記憶しているので、自局が配車中である旨の配車状態情報をポーリング応答信号中の動態情報に含ませて、ポーリング応答信号を送信する。
ポーリング応答信号を受信した基地局10は、配車状態情報を含む車両情報を管理センタ5に送信する(S15)。管理センタ5は、受信した車両情報を車両情報データベース112に格納するとともに、該車両情報中の配車状態情報と、車両情報データベース112に記憶していた配車手配済情報を比較する(S16)。移動局20−1からの配車状態情報が配車中であることを意味し、配車手配済情報が配車中であることを意味しているので、管理センタ5は、移動局20−1に対して配車中止情報を送信せず、配車を続行する。以上のようにして、管理センタ5は、常時、配車状態を移動局20から取得できるようになっている。
【0055】
次に、管理センタ5が配車指示を行ったが、移動局20からの配車了解情報を受信できなかった場合の動作を説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る車両運行システムの動作を示すタイミングチャートであり、管理センタ5が配車指示を行ったが、移動局20からの配車了解情報を受信できなかった場合の動作を示す。
【0056】
まず、管理センタ5が移動局20−2に対して配車指示情報を送信する(S21、S22)。移動局20−2は、この配車指示情報を受信すると、所定の了解操作実行期間内に移動局20−2の操作表示部310を操作して、基地局へ配車了解情報を送信する(S24)とともに、自局の記憶部306に配車中である旨の配車状態情報を記憶する(S23)。しかし、基地局は、電波状態が悪い等の理由により、配車了解情報を受信できない。
【0057】
管理センタ5は、例えば、移動局20−2が無線不感エリアを走行中で、移動局20−2からの配車了解情報を受信できなかった(S24)ので配車不可と認識し、例えば、次に近い位置に位置する他の移動局20−3を検索し、基地局を介して移動局20−3へ配車指示情報を送信する(S25、S26)。移動局20−3は、この配車指示情報を受信すると、所定の了解操作実行期間内に移動局20−3の操作表示部310を操作して、管理センタ5へ基地局を介して配車了解情報を送信する(S28、S29)とともに、自局の記憶部306に配車中である旨の配車状態情報を記憶する(S27)。管理センタ5は、基地局10を介して移動局20−3からの配車了解情報を受信する(S29)と、車両情報データベース112に移動局20−3に対して配車中である旨の配車手配済情報を設定、記憶し(S30)、配車手配を完了する。
【0058】
その後、基地局10からポーリング信号が送信される(S32)と、各移動局20は、ポーリング応答信号を基地局10へ返信する(S33)。このとき、各移動局20は、それぞれ自局の記憶部306に記憶している配車状態情報を参照し、配車中の有無、つまり、自局が配車中であるか否かの配車状態情報をポーリング応答信号中の動態情報に含ませる。
移動局20−2、20−3は、それぞれ自局の記憶部306に配車中である旨を記憶しているので、各々の自局が配車中である旨の配車状態情報をポーリング応答信号中の動態情報に含ませて、ポーリング応答信号を送信することとなる。
【0059】
ポーリング応答信号を受信した基地局10は、配車状態情報を含む車両情報を管理センタ5に送信する(S34)。管理センタ5は、基地局を介して各々の移動局から受信した車両情報を車両情報データベース112に格納するとともに、該車両情報中の配車状態情報と、車両情報データベース112に記憶していた配車手配済情報を比較する(S35)。
移動局20−2については、移動局20−2からの配車状態情報が配車中であることを意味し、配車手配済情報が配車中でないを意味しているので、管理センタ5は、移動局20−2に対して配車中止情報を送信する(S36、S37)。配車中止情報は、前記下り送信利用期間の間に送信する。配車中止情報を受信した移動局20−2は、配車を中止する。
また、移動局20−3については、移動局20−3からの配車状態情報が配車中であることを意味し、配車手配済情報が配車中を意味しているので、配車中止情報を送信せず、移動局20−3の配車を続行する。
【0060】
なお、移動局の記憶部306に記憶された配車中である旨の配車状態情報は、配車中止情報を受信すると消去され(S38)、また、実車状態に移り配車状態が解消されると消去される。実車状態に移ったことは、例えば、料金メータのカウント開始を検知することで検出することができる。
また、管理センタ5の車両情報データベース112に記憶された配車手配済情報は、移動局20から実車状態である動態情報を受信することにより、配車中状態が消去される。
本発明は、各移動局と管理センタ各々で配車状態を記憶・管理していることで、配車決定時間のタイムラグによる誤認識が生じることを防止するという効果もある。
【0061】
本実施形態においては、基地局が一つの場合について説明したが、複数の基地局に渡ってポーリング配信エリアの設定をおこなうことにより、複数の基地局にまたがる地区に対してポーリング配信をおこない、各移動局からの返信による移動局データの収集及び移動局との通話を適切におこなうことができる。
【0062】
また、図1に示した本実施形態の車両運行システムのシステムイメージでは、複数の基地局が各々の地域をカバーエリアとした場合を示しているが、複数の基地局のカバーエリアを同一の地域を含んで周波数を異ならせるようにする場合等もありうる。
【0063】
なお、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、本発明に係る処理を実行する装置、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
【符号の説明】
【0064】
5:管理センタ、100:管理センタ制御部、106: 操作表示部、110:管理センタ記憶部、112:車両情報データベース、201: 基地局記憶部、202: ポーリング信号生成部、203:通信インタフェース、204: 無線機、205: データ送信要求信号発生部、206: アンテナ、304: ポーリング信号受信部、303: データ送信要求信号受信部、305: スロット設定部、306: 移動局記憶部、309: 料金メータ、307: データ生成部、308: 位置検出部、311:G P S アンテナ、310: 操作表示部、401、404:信号種別領域、402: ポーリング車番指定領域、403: 予備領域、405:動態情報、406: 位置情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線により基地局と通信可能な複数の移動局と、前記基地局と接続され、ポーリング方式により前記基地局を介して無線通信により前記複数の移動局の位置情報を収集する管理センタとを備えたタクシー配車システムであって、
前記管理センタは、管理センタ制御部と管理センタ記憶部とを備え、前記管理センタ制御部は、前記管理センタ記憶部に記憶した移動局の位置情報に基づき作成された配車指示情報を、基地局を介して移動局へ送信し、該配車指示情報への応答として基地局を介して移動局から配車了解情報を受信すると、該移動局が配車中である旨の配車手配済情報を管理センタ記憶部に記憶するものであり、
前記移動局は、移動局制御部と移動局記憶部とを備え、前記移動局制御部は、基地局を介して前記管理センタからの配車指示情報を受信した後、該配車指示が自局への配車指示であった場合は、配車中である旨の配車状態情報を移動局記憶部に記憶するとともに、基地局を介して配車了解情報を管理センタへ送信し、その後、基地局からポーリング信号を受信すると、前記配車中である旨の配車状態情報が含まれたポーリング応答信号を基地局へ送信するものであり、
前記管理センタ制御部が、前記移動局からのポーリング応答信号に含まれる配車状態情報と、前記管理センタ記憶部に記憶した配車手配済情報との比較結果に基づいて、配車指示情報又は配車中止情報を移動局に送信することを特徴とするタクシー配車システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−198563(P2010−198563A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45843(P2009−45843)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】