説明

タグ通信装置

【課題】より確実に全ての用紙に付加されたICタグに対して通信する。
【解決手段】主搬送路18に沿って搬送された用紙50を一時的に、主搬送路18から退避させた後、再び、主搬送路18に戻す副搬送路24を設ける。この副搬送路24の用紙流入口は、リーダ/ライタ装置22による通信位置より下流側に、用紙流出口は通信位置より上流側に設定されている。リーダ/ライタ装置22による通信が失敗したと判断されたICタグが付加された用紙50は、当該副搬送路24に導かれた後、再び、通信位置へと搬送され、再度の通信が実行される。そして、通信成功したと判断されれば、副搬送路24に進むことなく、主搬送路18に沿って下流へと搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に付加されたICタグに電波を送受して非接触で通信するタグ通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷等に用いられる用紙にICタグと呼ばれる小型装置を付加し、この用紙を搬送するとともに当該用紙に付加されたICタグと通信するタグ通信装置が知られている。かかるタグ通信装置は、用紙を取り扱う各種機器、例えば、画像形成装置などに搭載されることが多い(例えば、特許文献1など)。タグ通信装置には通常、ICタグに対して、電波を送受するリーダ/ライタ装置が設けられている。リーダ/ライタ装置は、ICタグに対して電波を送信するとともに、ICタグから送信された電波を受信し、ICタグに対して情報の読み書きを行う装置である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−140548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このリーダ/ライタ装置で情報の読み書きを行う場合には、十分な電波送受時間が必要となる。特に、情報読み込みに比して処理が多い情報書き込みの場合は、より長い電波送受時間が必要となる。しかしながら、高速搬送されている用紙に付加されたICタグに対して充分な電波送受時間を確保することは困難であった。もちろん、用紙搬送速度を全体的に遅くすることで電波送受時間を増加させることはできる。しかしながら、この場合、全体の処理時間が増加するという問題がある。また、全体的ではなく部分的、特に電波送受位置付近のみにおいて用紙搬送速度を遅くすることにより電波送受時間を確保することも考えられる。しかしながら、通常、用紙の搬送経路である搬送路は連続した一本の経路であり、この連続した搬送路に沿って搬送される用紙の搬送速度を部分的に遅くすることは用紙の渋滞を招き、望ましくない。つまり、従来技術では、全ての用紙に付加されたICタグに対して確実に情報読み書きすることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明では、より確実に、全ての用紙に付加されたICタグに対して通信することができ得るタグ通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタグ通信装置は、用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、主搬送路上に設けられた第一通信位置において用紙に付加されたICタグに電波を送受することにより当該ICタグとの通信を実行する第一通信手段と、通信手段によるICタグとの通信の成否を判断する判断手段と、判断の結果、通信失敗と判断されたICタグが付加された用紙を主搬送路から分岐した副搬送路に一時的に退避させるとともに、副搬送路に沿って当該用紙を再度の通信実行位置に搬送する第二搬送手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
好適な態様では、副搬送路は、その用紙流入口が第一通信位置より下流位置に、用紙流出口が第一通信位置に、それぞれ設定された搬送路であって、通信失敗と判断された場合、第一通信位置において第一通信手段により再度の通信が実行される。さらに、副搬送路上に通信位置が設定され、通信失敗と判断されて副搬送路に沿って搬送されたICタグに対して電波を送受して再度の通信を実行する第二通信手段を1以上備えることも望ましい。また、判断手段は、第二通信手段による通信の成否も判断し、通信成功と判断されるまで、第一通信手段または第二通信手段による再通信が繰り返し実行されることも望ましい。さらに、副搬送路途中で用紙を副搬送路から離脱させて主搬送路に案内する離脱搬送路を複数備え、第二搬送手段は、通信成功と判断された用紙を随時、当該離脱搬送路を通じて主搬送路に戻すことも望ましい。
【0008】
他の本発明であるタグ通信装置は、用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、主搬送路の経路途中に設けられた環状の搬送路である副搬送路に沿って用紙を搬送する第二搬送手段と、副搬送路上において搬送されている用紙に付加されたICタグに対して電波を送受することにより当該ICタグとの通信を実行する通信手段であって、その電波送受領域が副搬送路に沿って移動する用紙に連動して実質的に移動する通信手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、通信手段は、ICタグに対して電波送受する電波送受手段を副搬送路上における用紙の移動に連動して移動させることでその電波送受領域を用紙に連動して移動させる。他の好適な態様では、通信手段は、副搬送路上の用紙に付加されたICタグに電波を送受する電波送受手段を複数備えており、ICタグに電波送受する電波送受手段を用紙移動に連動して切り替えることでその電波送受領域を用紙に連動して実質的に移動させる。さらに、通信手段による通信の成否を判断する判断手段を備え、第二搬送手段は、通信成功と判断されるまで、用紙を主搬送路に流出させることなく副搬送路に沿って搬送する。
【0010】
他の本発明であるタグ通信装置は、用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、用紙を主搬送路から一時的に副搬送路に退避させた後、少なくとも一時的に主搬送路に比して遅い搬送速度で用紙を搬送した後、再び、主搬送路に戻す第二搬送手段と、副搬送路において用紙に付加されたICタグに対して電波を送受することにより、当該ICタグとの通信を行う通信手段と、を備える。
【0011】
好適な態様では、第二搬送手段は、終端行き止まりの副搬送路に用紙を引き込んだ後、当該引き込み時とは逆方向に用紙を搬送して主搬送路に戻す。他の好適な態様では、副搬送路が複数設けられている。このとき、第一搬送手段および第二搬送手段は、一つ目の副搬送路に用紙が供給されてから複数の副搬送路全てに用紙が供給されるまでの時間より、一つの副搬送路における用紙滞留時間が短くなるべく用紙の搬送速度を調整することが望ましい。
【0012】
他の本発明である画像形成装置は、上記のタグ通信装置を備えた画像形成装置であって、副搬送路は、裏面印刷のために用紙を反転した後、主搬送路に戻す裏面搬送路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信の成否を判断し、通信失敗の場合は再度の通信位置へ用紙を搬送し再通信を実行する。また、他の本発明によれば、用紙の移動に連動して電波送受位置を実質的に移動させているため、用紙の搬送速度を低下させることなく充分な電波送受時間を確保できる。また、他の本発明によれば、用紙を主搬送路から一時的に副搬送路に退避させるとともに比較的遅い速度で用紙を搬送しているため、やはり、主搬送路における用紙搬送速度を低下させることなく、充分な電波送受時間を確保できる。これらの発明により全ての用紙に付加されたICタグに対して、より確実に通信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態であるプリンタ10の概略構成図である。以下で説明するプリンタ10は、比較的大型の高速プリンタを想定している。ただし、適宜、その構成の一部を変更することにより、複写機や小型プリンタなどの他の画像形成装置に応用してもよい。また、搬送される用紙に付加されたICタグに対して電波を送受して通信する機能を備えた装置であれば、プリンタに限らず、他の装置であってもよい。
【0015】
このプリンタ10は、図示しない画像印刷制御部により制御されており、画像印刷用制御部に記憶された原稿画像データと同じ画像を用紙に印刷する。また、このプリンタ10の用紙の搬送経路過程には、用紙の管理のために、当該用紙に付加されたICタグと非接触通信を行うタグ通信部11が設けられている。なお、図1では、このタグ通信部11を、印刷部17の下流、排紙部21の上流に設けているが、当然ながら、この位置に限られるものではなく、用紙の搬送経路過程であれば他の位置に設けられてもよい。以下、このプリンタ10について詳説する。
【0016】
このプリンタ10は、収容部14に収容されている用紙を、主搬送路に沿って搬送し、搬送路過程に設けられた印刷部17での印刷処理、通信部11での通信処理などを経て、排紙部21に流出する構成となっている。ここで、本実施形態において、用紙の搬送経路である搬送路は、主搬送路18、裏面搬送路20(図1において太線で図示)、副搬送路(図1において図示せず)の三つに大別される。主搬送路18は、収容部14から排紙部21までを接続する搬送路である。通常、用紙は、この主搬送路18に沿って搬送される。裏面搬送路20は、印刷処理や通信処理が施された用紙を表裏反転し、流出部に流出することなく、再び、主搬送路18に戻す搬送路である。裏面印刷が必要な用紙など、一部の用紙のみがこの裏面搬送路20に沿って搬送される。副搬送路は、後に詳説するが、通信部11による通信処理が失敗した用紙を、一時的に主搬送路から退避させるとともに、必要に応じて退避させた用紙を主搬送路18に戻す搬送路である。この副搬送路の具体的構成については後に詳説する。
【0017】
収容部14には、用紙のサイズや種類等に応じた用紙トレイ14a,14b,14cが複数設けられている。そして、ユーザからの指示に応じて、所定の用紙トレイ14a,14b,14cから印刷前の用紙が主搬送路18に供給される。
【0018】
印刷部17は、原稿画像データに基づいて用紙に画像を印刷する。印刷部17は、図示しない帯電部および露光部で感光体上に静電潜像を形成し、静電力により感光体表面にトナーを付着させてトナー像を形成する。ここで形成されるトナー像は、原稿画像に基づいた像である。感光体または感光体からトナー像が転写された転写ローラ15は主搬送路18上に設けられ、ここに用紙が搬送されることにより用紙にトナーが転写される。転写ローラ15の下流には定着ローラ16が設けられている。トナーが付着した用紙は、定着ローラ16により加熱、加圧される。これによりトナーが用紙に定着する。
【0019】
画像の転写および定着により画像印刷が終了した用紙は、さらに、下流へと搬送され、排紙部21へと導かれ、排紙される。なお、排紙部21には、画像印刷の成否に応じて用紙の排紙先を切り替えるべく、複数の排紙トレイ21a,21b,21cが設けられている。また、裏面印刷が必要な用紙は、排紙部21ではなく、裏面搬送路20に導かれ、表裏反転された後、再び、主搬送路18へと送られ、裏面印刷が実行される。
【0020】
さらに、本実施形態のプリンタ10は、搬送されている用紙に付加されたICタグに対して非接触通信を行うタグ通信部11も設けられている。タグ通信部11には後述するリーダ/ライタ装置が設けられており、当該リーダ/ライタ装置によりICタグに対して各種情報の読み書きが実行される。そして、この情報の読み書き結果に基づいて用紙を管理する。この管理に利用されるICタグは、周知のとおり、微小なICチップと無線通信用のアンテナとを組み合わせた小型装置である。用紙にはこのICタグが付加されており、当該ICタグに対して電波を送受波することで、非接触での情報の読み書きが可能となる。なお、ここで、ICタグの付加とは、用紙の内部にICタグを内蔵すること、および、用紙の表面にICタグを貼着すること、の両方を含む。
【0021】
ここで、リーダ/ライタ装置はICタグに対して電波を送受することで情報の読み書きを実現している。そして、好適な情報の読み書きを実現するためには、充分な電波送受時間が必要となる。特に、情報書き込みの場合は、情報読み込みに比して、処理が多くなり、必要とされる電波送受時間が長くなる。しかしながら、搬送中のICタグに電波送受する本実施形態では、充分な電波送受時間が得られない場合がある。そこで、本実施形態では、情報読み書きの成否を判断し、情報読み書きが失敗したと判断された場合には、再度、情報読み書きを実行するようにしている。
【0022】
図2、図3は、タグ通信部11周辺の概略構成図である。リーダ/ライタ装置22は、ICタグ52に搭載されているアンテナとの間で電波の送受が可能なアンテナを内蔵している。このリーダ/ライタ装置12は、主搬送路上に設定された通信位置において、所定の間隙を介して搬送ベルト26に対向配置されている。電波の送受により、情報の読み込み、および、情報書き込みが正常終了した場合、用紙50に付加されたICタグ(図示せず)は、リーダ/ライタ装置22に対して正常終了を示す信号を送信する。リーダ/ライタ装置22で受信された各種信号は、通信用制御部(図示せず)に出力される。通信用制御部は、リーダ/ライタ装置22から入力された信号に基づいて、情報読み書きの成否を判断する。そして、情報読み書きが成功したと判断された場合、ICタグが付加された用紙50は、そのまま、主搬送路18に沿って下流へと搬送される。
【0023】
一方、情報読み書きが失敗したと判断された用紙50については、再度の情報読み書きが実行される。具体的には、情報読み書きが失敗したICタグが付加された用紙50は、主搬送路18から分岐した副搬送路24へと導かれる。副搬送路24は、通信位置の下流側に用紙流入口が、上流側に用紙流出口が設定された搬送路である。副搬送路24の流入口には、通信用制御部からの指示に応じて当該流入口を開閉する切替部材32が設けられている。通信用制御部は、通信成功と判断した場合は、流入口を閉鎖するべく切替部材32に指示を出力する。この場合、用紙50は、副搬送路24に進入することなく、そのまま、主搬送路18に沿って搬送される(図2参照)。一方、通信が失敗と判断された場合、通信用制御部は、流入口を開放するべく切替部材32に指示を出力し、切替部材32を駆動する。この場合、用紙50は、副搬送路24に導かれ、副搬送路24に沿って搬送される(図3参照)。副搬送路24に沿って搬送された用紙は、通信位置の上流側に設定された流出口から主搬送路18に戻される。主搬送路18に戻された用紙50は、再び、主搬送路18に沿って搬送され、通信位置へと到達する。そして、当該通信位置において、再度の情報読み書きが実行される。通信用制御部は、この再度の情報読み書きの成否も判断する。そして、情報読み書きが成功となるまで、副搬送路24を介して、用紙50を繰り返し循環させる。
【0024】
なお、用紙搬送機構としては、種々の形態が考えられるが、図2,3では、吸引ファン30を用いて用紙50を搬送ベルト26に吸引した状態で搬送ベルト26を移動させることで用紙を搬送させる吸引搬送方式の搬送機構を例示している。ただし、当然ながら、用紙50を主搬送路18および副搬送路24に沿って搬送できるのであれば、一対のローラで用紙50を挟持搬送するローラ式搬送機構などであってもよい。
【0025】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、通信の成否を判断し、通信成功と判断するまで、繰り返し、再通信実行を行う。したがって、最終的に、全てのICタグに対して好適な情報読み書きが実現できることになる。
【0026】
なお、本実施形態では、リーダ/ライタ装置22を単一、換言すれば、通信位置を単一とし、通信失敗した用紙50(ICタグ)を当該単一の通信位置に還流することで再度の情報読み書きを実現している。しかしながら、副搬送路24に1以上のリーダ/ライタ装置、換言すれば、副搬送路24に1以上の通信位置を設けてもよい。例えば、図4に図示するように、副搬送路24に沿って搬送される用紙50に対して電波送受を行う複数のリーダ/ライタ装置22b〜22fを設ける。通信用制御部は、各リーダ/ライタ装置22a〜22fでの情報読み書きの成否を判断する。判断の結果、通信成功と判断された場合は、当該用紙50を主搬送路18に戻し、通信失敗の場合は、通信成功するまで、繰り返し、副搬送路24に沿って搬送する。
【0027】
このように、副搬送路24に複数のリーダ/ライタ装置22b〜22fを設けることにより、通信失敗してから次の通信までの用紙搬送距離を短くすることができ、結果として、短時間での再通信が可能となる。そして、全体としての処理時間を短縮することができる。
【0028】
なお、この場合、副搬送路24に沿って搬送されている用紙50を、副搬送路24の途中位置において副搬送路24から離脱させて、主搬送路18に導く離脱搬送路34を設けておくことが望ましい。かかる離脱搬送路34を設けることにより、通信が正常終了した用紙50を迅速に主搬送路18に戻すことができ、全体の処理時間をより短縮できる。なお、この場合、各離脱搬送路34と副搬送路24との分岐位置には、切替部材32b,32cを設けておき、適宜、用紙進行方向を切り替えられるようにしておく。
【0029】
また、上記説明では、いずれも、通信失敗した用紙を再通信位置まで搬送する副搬送路24として専用の搬送路を設けている。しかしながら、通常、プリンタ10には、印刷処理等が施された用紙を表裏反転し、流出部に流出することなく、再び、主搬送路18に戻す裏面搬送路20が設けられている(図1参照)。この裏面搬送路20を、通信失敗した用紙を再通信位置まで搬送する副搬送路24として用いてもよい。すなわち、裏面搬送路20の上流側にリーダ/ライタ装置22を設け、当該リーダ/ライタ装置22による通信が失敗した用紙50は、裏面印刷の有無に関わらず、裏面搬送路20に案内する。これにより、通信失敗した用紙50は、主搬送路18に戻されるとともに、主搬送路18に沿ってリーダ/ライタ装置22の通信位置まで搬送される。そして、再度の通信実行が可能となる。この構成によれば、通信失敗した用紙を再通信位置まで搬送する専用の搬送路を設ける必要がなく、より簡易に実現することができる。
【0030】
次に、第二実施形態について図面を参照して説明する。第二実施形態において、通信部11周辺以外の構成は、第一実施形態とほぼ同じであるため、ここではその説明は省略する。図5は、第二実施形態における通信部11周辺の概略側面図である。
【0031】
この第二実施形態では、搬送速度を低下させることなく、充分な電波送受時間を確保できる構成となっている。すなわち、既述したとおり、好適な情報読み書きを実現するためには、十分な電波送受時間が必要となる。しかし、順次搬送されているICタグに対して充分な電波送受時間を確保することは困難であった。もちろん、主搬送路18全体または一部における用紙搬送速度を遅くすることで電波送受時間を長くすることは可能であるが、この場合、全体の処理時間がかかったり、用紙の渋滞が生じたりするといった問題がある。そこで、本実施形態では、電波送受領域を実質的に用紙と連動して移動させることにより、電波送受時間の増加を図っている。
【0032】
具体的には、本実施形態では、主搬送路18の経路途中に環状の副搬送路24を設け、当該副搬送路24に通信位置をもつリーダ/ライタ装置22を設けている。副搬送路24は、上流側に用紙流入口が、下流側に用紙流出口がそれぞれ設けられている。また、副搬送路24は、始点と終点が一致した環状の搬送路であり、当該副搬送路を形成する搬送ベルト26は搬送ベルト幅方向(図5における紙面垂直方向)に延びる回転軸を中心に回転する。搬送ベルトには、多数の貫通孔が形成されている。副搬送路24の内部に設けられた吸引ファン(図示せず)は、この貫通孔を介して用紙50を搬送ベルト26の表面に吸引する。搬送ベルト26の表面に吸引された用紙50は、当該搬送ベルト26の移動に伴い、移動する。
【0033】
リーダ/ライタ装置22は、この副搬送路24の内部に設けられており、搬送ベルト26の移動に連動して移動する。換言すれば、リーダ/ライタ装置22は、搬送ベルト26の表面に吸引された用紙50とともに移動することになる。その結果、用紙50が副搬送路内にいる間、用紙50とリーダ/ライタ装置22、換言すれば、ICタグとリーダ/ライタ装置22とは相対的に停止した状態となる。その結果、長時間の電波送受時間を確保することができ、安定した情報の読み書きが可能となる。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態では、リーダ/ライタ装置22を用紙50とともに移動させることにより、電波送受時間の増加が可能となっている。これにより安定した情報の読み書きが可能となる。
【0035】
なお、リーダ/ライタ装置22による情報読み書きの成否に応じて、用紙50の経路を切り替えてもよい。例えば、図6に図示するように、副搬送路24の用紙流出口と主搬送路18との分岐位置に切替部材32を設けておく。通信制御部は、リーダ/ライタ装置22による通信の成否を判断し、通信成功と判断した場合は副搬送路24と主搬送路18とを接続するべく当該切替部材32を駆動する(図6(A)参照)。逆に、通信失敗と判断した場合は、副搬送路24と主搬送路18との接続を遮断するべく切替部材32を駆動する(図6(B)参照)。この場合、用紙50は、主搬送路18には進まず、リーダ/ライタ装置22とともに、副搬送路24に沿って移動することになる。その結果、より長い電波送受時間を確保することができ、より確実に情報の読み書きが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、リーダ/ライタ装置22を用紙50とともに移動させているが、電波送受領域が実質的に用紙50と連動して移動すれば、必ずしも、リーダ/ライタ装置22そのものを移動させる必要はない。例えば、図7に図示するように、副搬送路24の内部に、複数のリーダ/ライタ装置22を固定配置し、用紙50、ひいては、ICタグの移動に連動して、当該ICタグへの電波送受に関与するリーダ/ライタ装置22を切り替えてもよい。この場合も、実質的に電波送受時間を増加させることができるので、より確実な情報読み書きが可能となる。
【0037】
次に、第三実施形態について図8を用いて説明する。この第三実施形態では、搬送されている用紙50を一時的に主搬送路18から退避させ、情報の読み書きを実行している。これにより、より確実な情報の読み書きが可能となる。すなわち、既述したとおり、確実な情報読み書きには十分な電波送受時間が必要となる。しかしながら、高速で用紙50を搬送している場合、充分な電波送受時間を確保することは困難であった。もちろん、通信位置において、一時的に用紙を停止、または、搬送速度を低下させれば、電波送受時間を増加させることができる。しかしながら、一時的な用紙搬送速度の低下や停止は、後続の用紙50の搬送に影響を与えることになり、その制御等が極めて複雑になる。
【0038】
そこで、本実施形態では、用紙50を一時的に主搬送路18から退避させ、当該退避した位置で電波送受を実行している。具体的には、本実施形態では、主搬送路から用紙を一時退避させる副搬送路24を設けている。副搬送路24は、主搬送路18から分岐した搬送路であり、その終端は行き止まりとなっている。この副搬送路24に引き込まれた用紙50は、その終端位置まで搬送された後、当該引き込みとは逆方向に搬送されて、主搬送路18に戻される。したがって、用紙50は、いわゆるスイッチバック動作をすることになり、主搬送路18に戻された用紙50は表裏反転された状態となっている。
【0039】
副搬送路24の流入口には切替部材32が設けられている。流入口が開放されている場合、用紙50は、当該副搬送路24へと進入する。一方、流入口が閉鎖されている場合、用紙50は、当該副搬送路24に進入することなく、そのまま、主搬送路18に沿って搬送される。通信用制御部は、一つの副搬送路24内に複数の用紙が進入しないように、当該切替部材32の開閉を制御する。したがって、副搬送路24に用紙50を引き込みたい場合には、当該退避路に対応する切替部材32を開放する。また、当該副搬送路24に用紙50が完全に引き込まれれば対応する切替部材32を閉鎖して、他の用紙50の進入を防止する。
【0040】
副搬送路24の終端近傍には、リーダ/ライタ装置22が副搬送路24の搬送ベルト26に対して対向配置されている。このリーダ/ライタ装置22は、副搬送路24内に引き込まれた用紙50に付加されたICタグに対して電波を送受し、情報の読み書きを実行する。
【0041】
ここで、この副搬送路24において用紙の進行方向を反転させる際には、用紙の搬送速度が一時的ではあるものの停止することになる。また、この副搬送路24は、主搬送路18から分岐した搬送路であり、当該副搬送路24内において、一時的に用紙50の搬送速度を低下、または、用紙50の搬送を停止させたとしても、後続の用紙50の搬送に与える影響は少ない。換言すれば副搬送路24では、用紙搬送速度の自由度が比較的高いと言える。その結果、副搬送路24上に設定された通信位置における用紙搬送速度を、十分な電波送受時間を確保でき得る程度の速度に制御することが可能であり、より確実な情報読み書きが可能となる。
【0042】
なお、副搬送路24は、単一ではなく、当然、複数であってもよい。複数の副搬送路24を設けることにより、所定時間内で通信でき得る用紙枚数が増加し、全体の処理時間をより短縮できる。ここで副搬送路24の数Nは、主搬送路18における用紙搬送速度や、一つの副搬送路24における用紙滞留時間等に応じて決めることが望ましい。すなわち、当然ながら、全ての副搬送路に用紙が1枚ずつ搬送されるまでの時間は、主搬送路18における用紙搬送速度に依存する。この全て(N個)の副搬送路24に用紙が1枚ずつ搬送されるまでの時間に比して、一つの副搬送路24内における用紙滞留時間が大きい場合、の用紙(副搬送路の数Nとした場合N+1番目の用紙)がいずれの副搬送路24にも進めず、主搬送路18上で渋滞することになる。かかる問題を防止するべく、副搬送路の数N、主搬送路18における用紙搬送速度、副搬送路24における用紙滞留時間等を決定することが望ましい。
【0043】
具体的に、副搬送路24が二つであった場合における用紙の搬送の流れについて図8から図11を用いて説明する。
【0044】
いずれの副搬送路にも用紙が進入していない場合、各副搬送路の用紙流入口は開放された状態となっている。この状態で、一枚目の用紙50_1が上流側から搬送されたとする。この一枚目の用紙50_1は、複数の副搬送路のうち最上流に位置する第一副搬送路24_1に引き込まれる(図8参照)。
【0045】
一枚目の用紙50_1が第一副搬送路24_1に完全に引きこまれれば、第一副搬送路24_1の切替部材32はその流入口を閉鎖する(図9参照)。これにより、後続の用紙である二枚目の用紙50_2は、第一副搬送路24_1に進入することなく、その下流へと進むことができる。また、第一副搬送路24_1に引き込まれた一枚目の用紙50_1は、当該第一副搬送路24_1の終端近傍まで搬送され、リーダ/ライタ装置22により情報の読み書きが実行される。
【0046】
続いて、図10に図示するように、二枚目の用紙50_2が第二副搬送路24_2の流入口まで搬送されると、二枚目の用紙50_2は第二副搬送路24_2に引き込まれる。このとき、全ての副搬送路24_1,24_2に用紙の全部または一部が進入した状態となる。この状態で、さらに、後続の三枚目の用紙50_3が搬送されると、いずれの副搬送路にも進めず、三枚目の用紙50_3が主搬送路18上で渋滞することになる。そこで、二枚目の用紙50_2が第二副搬送路24_2に進入し始めた時点で、一枚目の用紙50_1は、第一副搬送路24_1から流出されることが望ましい。そして、三枚目の用紙50_3が第一副搬送路24_1の流入口に到達した時点で、第一副搬送路24_1から一枚目の用紙50_1は完全流出されていることが望ましい(図11参照)。これにより、主搬送路18における用紙を渋滞させることなく、全ての用紙50に対して情報の読み書きが可能となる。
【0047】
なお、この副搬送路24のように、用紙50をスイッチバック動作させる搬送路は、裏面印刷のために用紙を表裏反転させて主搬送路18に戻す裏面搬送路20で多用されている(図1参照)。この裏面搬送路20を副搬送路24として利用してもよい。裏面搬送路20を副搬送路24として利用することにより、装置構成を大幅に変更することなく、充分な電波送受時間を確保できる。
【0048】
また、近年では、用紙50の表面に関する情報と、用紙50の裏面に関する情報を別々に管理する目的で、一つの用紙50に表面用ICタグと、裏面用ICタグを設ける場合がある。かかる表裏面それぞれに専用のICタグが設けられている用紙50の場合、表面または裏面への印刷等の処理が施された後に、処理が施された面に対応するICタグにのみに情報読み書きなされることが望ましい。例えば、表面への印刷処理が終了した時点では、表面用ICタグにのみ情報読み書きを実行し、裏面用ICタグへの情報読み書きはなされないことが望ましい。逆に、裏面への印刷処理が終了した時点では、裏面用ICタグにのみ情報読み書きを行い、表面用ICタグには情報読み書きはしないことが望ましい。
【0049】
そこで、本実施形態の通信部11は、このような表裏面それぞれに専用のICタグが付加された用紙50についても好適な情報読み書きが実現するべく、リーダ/ライタ装置の配置等を考慮する。例えば、図12に図示するように、表面用ICタグ52aと裏面用ICタグ52bとで、用紙内における付加位置が異なる場合を考える。この場合、リーダ/ライタ装置22を、表面を上側にして搬送された場合には表面用ICタグに対して好適な電波送受が可能な位置、かつ、裏面を上側にして搬送された場合には裏面用ICタグに対して好適な電波送受が可能な位置に配置する。すなわち、用紙が表裏反転された場合、副搬送路24内における表面用ICタグ52aと裏面用ICタグ52bとの位置関係は、180度反転することになる。この副搬送路24におけるICタグ位置の反転により、リーダ/ライタ装置の位置は固定したままでも、電波送受するICタグを切り替えることができる。その結果、用紙50の表面に関する情報と裏面に関する情報とを別々に読み書きすることができ、より柔軟な用紙管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【図2】第一実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図3】第一実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図4】他の例における通信部周辺の概略側面図である。
【図5】第二実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図6】第二実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図7】他の例における通信部周辺の概略側面図である。
【図8】第三実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図9】第三実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図10】第三実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図11】第三実施形態における通信部周辺の概略側面図である。
【図12】用紙の表裏面それぞれに専用のICタグが設けられた場合におけるリーダ/ライタ装置の設置位置を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
10 プリンタ、11 通信部、12 リーダ/ライタ装置、14 収容部、17 印刷部、18 主搬送路、20 裏面搬送路、21 排紙部、22 リーダ/ライタ装置、24 副搬送路、26 搬送ベルト、30 吸引ファン、32 切替部材、34 離脱搬送路、50 用紙、52 ICタグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、
主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、
主搬送路上に設けられた第一通信位置において用紙に付加されたICタグに電波を送受することにより当該ICタグとの通信を実行する第一通信手段と、
通信手段によるICタグとの通信の成否を判断する判断手段と、
判断の結果、通信失敗と判断されたICタグが付加された用紙を主搬送路から分岐した副搬送路に一時的に退避させるとともに、副搬送路に沿って当該用紙を再度の通信実行位置に搬送する第二搬送手段と、
を備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタグ通信装置であって、
副搬送路は、その用紙流入口が第一通信位置より下流位置に、用紙流出口が第一通信位置に、それぞれ設定された搬送路であって、
通信失敗と判断された場合、第一通信位置において第一通信手段により再度の通信が実行されることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタグ通信装置であって、さらに、
副搬送路上に通信位置が設定され、通信失敗と判断されて副搬送路に沿って搬送されたICタグに対して電波を送受して再度の通信を実行する第二通信手段を1以上備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタグ通信装置であって、
判断手段は、第二通信手段による通信の成否も判断し、
通信成功と判断されるまで、第一通信手段または第二通信手段による再通信が繰り返し実行されることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のタグ通信装置であって、さらに、
副搬送路途中で用紙を副搬送路から離脱させて主搬送路に案内する離脱搬送路を複数備え、
第二搬送手段は、通信成功と判断された用紙を随時、当該離脱搬送路を通じて主搬送路に戻すことを特徴とするタグ通信装置。
【請求項6】
用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、
主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、
主搬送路の経路途中に設けられた環状の搬送路である副搬送路に沿って用紙を搬送する第二搬送手段と、
副搬送路上において搬送されている用紙に付加されたICタグに対して電波を送受することにより当該ICタグとの通信を実行する通信手段であって、その電波送受領域が副搬送路に沿って移動する用紙に連動して実質的に移動する通信手段と、
を備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載のタグ通信装置であって、
通信手段は、ICタグに対して電波送受する電波送受手段を副搬送路上における用紙の移動に連動して移動させることでその電波送受領域を用紙に連動して移動させることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のタグ通信装置であって、
通信手段は、副搬送路上の用紙に付加されたICタグに電波を送受する電波送受手段を複数備えており、ICタグに電波送受する電波送受手段を用紙移動に連動して切り替えることでその電波送受領域を用紙に連動して実質的に移動させることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載のタグ通信装置であって、さらに、
通信手段による通信の成否を判断する判断手段を備え、
第二搬送手段は、通信成功と判断されるまで、用紙を主搬送路に流出させることなく副搬送路に沿って搬送することを特徴とするタグ通信装置。
【請求項10】
用紙に付加されたICタグに電波を送受して、非接触で通信するタグ通信装置であって、
主搬送路に沿ってICタグが付加された用紙を上流側から下流側に搬送する第一搬送手段と、
用紙を主搬送路から一時的に副搬送路に退避させた後、少なくとも一時的に主搬送路に比して遅い搬送速度で用紙を搬送した後、再び、主搬送路に戻す第二搬送手段と、
副搬送路において用紙に付加されたICタグに対して電波を送受することにより、当該ICタグとの通信を行う通信手段と、
を備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項11】
請求項10に記載のタグ通信装置であって、
第二搬送手段は、終端行き止まりの副搬送路に用紙を引き込んだ後、当該引き込み時とは逆方向に用紙を搬送して主搬送路に戻すことを特徴とするタグ通信装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載のタグ通信装置であって、
副搬送路が複数設けられていることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項13】
請求項12に記載のタグ通信装置であって、
第一搬送手段および第二搬送手段は、一つ目の副搬送路に用紙が供給されてから複数の副搬送路全てに用紙が供給されるまでの時間より、一つの副搬送路における用紙滞留時間が短くなるべく用紙の搬送速度を調整することを特徴とするタグ通信装置。
【請求項14】
請求項1または10に記載のタグ通信装置を備えた画像形成装置であって、
副搬送路は、裏面印刷のために用紙を反転した後、主搬送路に戻す裏面搬送路であることを特徴とするタグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−137784(P2008−137784A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326635(P2006−326635)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】