タザロテン誘導体
本発明で記載した対象は、レチノイド活性も示すタザロテンの新規誘導体、当該誘導体を含んでなる医薬組成物、皮膚疾患を当該医薬組成物で治療する方法、及び当該誘導体の作製法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タザロテンの誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
タザロテンは:6−[2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)−エチニルニコチン酸エチルという化学名を有する。タザロテンは、ほとんどの生体系において急速なエステル分解によりその活性形態であるタザロテン酸に変わる、レチノイドプロドラッグである。タザロテン酸は、レチノイン酸受容体(RAR)ファミリーの3つのメンバー;RARα、RARβ及びRARγ全てと結合するが、RARβ及びRARγに関しては相対的選択性を有し、遺伝子発現を修飾することができる。
【0003】
Allergan, Inc.は、ニキビ及び乾癬の治療用TAZORAC(登録商標)(タザロテン)クリーム及びTAZORAC(登録商標)(タザロテン)ゲルを市販している。
【0004】
レチノイド又は抗生物質を過酸化ベンゾイルと組み合わせて使用する皮膚疾患の治療は、皮膚科医にとっては非常に興味深いものである。しかし、レチノイド及び抗生物質は過酸化ベンゾイルの存在下で容易に分解することが多いので、この併用は薬剤師にとって課題となっている。したがって、活性成分を多くの場合、患者に投与する直前まで混合しないか、又は同じ日の異なる時間に投与する。別法として、レチノイド又は抗生物質は、過酸化ベンゾイルとの反応から(例えば、カプセル化により)保護することができるか、又は活性成分をデュアルチャンバーディスペンサーの別のチャンバー中に収容することができる。
【0005】
したがって、必要な便宜、有効性及び貯蔵寿命を提供する活性成分の組み合わせを含む改善された皮膚科用組成物が必要とされる。具体的には、医薬組成物中で過酸化ベンゾイルと組み合わせることができる安定なレチノイドの同定が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚に浸透し、レチノイド様活性を示す新規タザロテン誘導体に関する。
【0007】
一実施形態によれば、本発明は、一般式(I)
【化1】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0008】
別の実施形態によれば、本発明は、式(II):
【化2】
(式中、
R3は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0009】
別の実施形態によれば、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、対象における皮膚疾患を治療する方法であって、治療有効量の式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでなる組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療用医薬を調製するための使用に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、式(I)又は(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療のための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】DUAC(登録商標)ゲル及びTAZORAC(登録商標)クリームを混合する場合に、タザロテンが分解されて、その分解生成物になることを示す。DUACゲル及びTAZORACクリームの「新しい」試料を混合し、8時間にわたって分解を観察した。
【図2A】安定性試料中のタザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図2B】安定性試料中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図3A】塗布後2時間の表皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図3B】塗布後2時間の真皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図4A】塗布後6時間の表皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図4B】塗布後6時間の真皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図5A】塗布後2時間の表皮及び真皮中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図5B】塗布後6時間の表皮及び真皮中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図6】DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物からの皮膚浸透を示す。データポイントは、4人のドナーからの少なくとも4反復からのタザロテンスルホキシドの累積量を表す(n≧18)±SEM。
【図7】種々のレチノイドへの暴露後のSkinEthic RHE培養からの炎症誘発性サイトカイン(IL−1α及びIL−8)放出を示す。各バーは、3連の培養物の平均を表す(±Stdev)。
【図8】種々のレチノイドへの暴露後のA431培養からのPMAによって誘発されたIL−6放出を示す。各バーは、3連の培養物の平均を表す(±Stdev)。
【図9】ラット血漿における室温でのタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの安定性を示す。
【図10】ヒト血漿における室温でのタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの安定性を示す。
【図11】Shimadzu HPLC−Applied Biosystems 4000 QTRAPで測定した安息香酸タザロテンのピークを示す。
【図12】Shimadzu HPLC−Applied Biosystems 4000 QTRAPで測定したヒドロキシタザロテン酸のピークを示す。
【図13】ヒドロキシタザロテン酸の質量スペクトルフラグメンテーションを示す。
【図14】タザロテン酸スルホキシドの質量スペクトルフラグメンテーションを示す。
【図15】種々のレチノイドの存在下で放出されたIL−1αの量を示す。
【図16】種々のレチノイドの存在下で放出されたIL−8の量を示す。
【図17】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわちK4の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す(標識化合物1〜29)。
【図18】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K10の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図19】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K13の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図20】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K19の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図21】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、フィラグリンの遺伝子発現レベルを測定することにより示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図22】タザロテンの提案された代謝を示す。
【図23】安息香酸タザロテンの提案された代謝を示す。
【図24A】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【図24B】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【図24C】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、一般式(I):
【化3】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
好適には、nは、0又は1の値を有する整数である。一実施形態では、nは1である。別の実施形態では、nは0である。一実施形態では、nは0であり、R1は水素である。
【0016】
好適には、R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0017】
好適には、R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0018】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって、1個以上、好ましくは1〜4個、独立して、ハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、たとえばメトキシ若しくはエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ、ハロ置換C1〜6アルキル、たとえばCF2CF2H若しくはCF3;C1〜6アルキル、たとえば、メチル、エチル、イソプロピルなど;−C(O)OR6、又は−OC(O)R6で置換されている。一実施形態では、任意の置換基は、ヒドロキシ、NR4R5、又はヒドロキシ置換C1〜6アルキル、又は−C(O)OR6から選択される。
【0019】
好適には、R4及びR5は、独立して、水素又はC1〜6アルキルから選択される。一実施形態では、R4及びR5はどちらも水素である。
【0020】
好適には、R6は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R6はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。
【0021】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよいアリール基である場合、このアリールは、単環(例えば、フェニル)又は複数の縮合(融合)環、例えばナフチル、インデン又はアンスリルを有する5〜20個の炭素原子の芳香族環状炭化水素基である。一実施形態では、アリール基は、置換されていてもよいフェニル、ナフチル又はインデンである。別の実施形態では、R1アリール基は、置換されていてもよいフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、R1は置換されていてもよいフェニルである。別の実施形態では、R1はフェニル又はヒドロキシ置換フェニルである。
【0022】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール環は、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式5〜7員不飽和芳香族炭化水素環である。好適な環としては、これらに限定されないが、フリル、ピラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、又はウラシルが挙げられる。ヘテロアリール基は、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む縮合芳香族環も含み得る。縮合環のそれぞれは、5又は6個の環原子を含む。縮合芳香族環の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、アザインドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、プリニル又はナフタラジニルが挙げられる。
【0023】
一実施形態では、R1が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、ヘテロアリールは、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピリジル又はピラニル環である。別の実施形態では、ヘテロアリールは、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピリジルである。別の実施形態では、R1は、置換されていてもよいピリド−3−イルである。
【0024】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよい複素環基である場合、複素環は、窒素、酸素、硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子又は酸化硫黄部分、例えばS(O)mを含む単環式3〜7員飽和又は非芳香族、不飽和炭化水素環であり、mは0又は1若しくは2の値を有する整数である。複素環基は、縮合環、飽和又は部分不飽和も含み得、環の1つは芳香族又はヘテロ芳香族であり得る。縮合環のそれぞれは、4〜7個の環原子を有し得る。ヘテロシクリル基の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、前記定義のヘテロアリール部分の飽和又は部分飽和形、例えばテトラヒドロピロール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン(硫黄部分の酸化形を包含する)、アゼピン、ジアゼピン、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、2−オキソ−1−ピロリジニル、3−オキソ−1−ピロリジニル、1,3−ベンズジオキソール−5−イル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ及びチオモルホリノ(硫黄部分の酸化形を包含する)が挙げられる。
【0025】
好適には、R1が置換されていてもよい複素環基である場合、この複素環は、置換されていてもよいピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル又はテトラヒドロフラニル環である。一実施形態では、複素環は、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピペリジニルである。一実施形態では、2−、3−又は4−ピペリジニルはC1〜6アルキルにより置換されている。一実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。別の実施形態では、R1は、4−メチルピペリジン−4−イル基である。
【0026】
一実施形態では、R1は、置換されていてもよいC1〜18アルキルである。一実施形態では、R1は、場合によって独立して1個以上、ヒドロキシ、NR4R5、C1〜6アルコキシ、又は−C(O)OR6により置換されたC1〜18アルキルである。別の実施形態では、C1〜18アルキルは、置換されていない。別の実施形態では、R1は、C1〜3アルキル又はC15アルキルである。別の実施形態では、R1はC1〜3アルキルである。別の実施形態では、C1〜18アルキルは、−C(O)OR6により置換されている。別の実施形態では、R6はC1〜6アルキル、好ましくはメチルである。
【0027】
一実施形態では、R1は置換されていてもよいC2〜18アルケニルである。
【0028】
別の実施形態では、R1は置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環基である。
【0029】
別の実施形態では、R1は、置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニルから選択される。さらなる実施形態では、R1は、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニル基から選択される。
【0030】
R2が、置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって1個以上、好ましくは1〜4個、独立してハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、例えばメトキシ若しくはエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル、例えばCF2CF2H若しくはCF3;C1〜6アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピルなど;−C(O)OR6又は−OC(O)R6により置換されている。
【0031】
一実施形態では、R2は、水素又は置換されていてもよいC1〜18アルキルである。一実施形態では、R2は、水素又は置換されていてもよいC1〜6アルキルである。別の実施形態では、R2は水素である。別の実施形態では、R2はC1〜6アルキルである。さらなる実施形態によれば、R2はエチルである。
【0032】
一実施形態によれば、nは1であり、R1はフェニルであり、R2は水素又はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、nは1であり、R1はフェニルであり、R2は水素である。この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸として知られ、本明細書中では安息香酸タザロテン酸とも記載される。
【0033】
別の実施形態では、nは1であり、R1はフェニルであり、R2はC1〜6アルキルである。一実施形態では、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルとして知られ、そして本明細書中では安息香酸タザロテンと記載される。
【0034】
別の実施形態では、化合物は(S)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルである。別の実施形態では、化合物は(R)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルである。
【0035】
さらなる実施形態によれば、nは0であり、R1は水素であり、R2は水素又はC1〜6アルキルである。一実施形態では、R2は水素である。この化合物は、6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸であり、そして本明細書中ではヒドロキシタザロテン酸とも記載される。
【0036】
別の実施形態では、nは0であり、R1は水素であり、R2はC1〜6アルキルである。さらなる実施形態によれば、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチルであり、そして本明細書中ではヒドロキシタザロテンとも記載される。
【0037】
本発明の化合物は、医薬的に許容される塩の形態であってよく、及び/又は医薬的に許容される塩として投与することができる。好適な塩に関する説明については、Berge et al., J. Pharm. Sci.、1977, 66, 1−19を参照。
【0038】
典型的には、医薬的に許容される塩は、必要に応じて所望の酸又は塩基を用いることにより、容易に調製することができる。塩は溶液から沈殿する可能性があり、ろ過により集めることができるか、又は溶媒の蒸発により回収することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は:
(i)6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(ii)(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(iii)(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(iv)6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(v)6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、
(vi)6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(vii)6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(viii)6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(ix)6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(x)6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xi)6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xii)6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xiii)6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xiv)6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xv)6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xvi)6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xvii)6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xviii)6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、及び
(xix)6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステルである化合物;又はそれらの医薬的に許容される塩から選択される。
【0040】
好適には、式(I)の化合物は、6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0041】
好適には、式(I)の化合物は、(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0042】
好適には、式(I)の化合物は、(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0043】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0044】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0045】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0046】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0047】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0048】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0049】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0050】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0051】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0052】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0053】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0054】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0055】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0056】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0057】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0058】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物は:
6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸;
6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;
6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;及び
6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;又はその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0059】
別の態様では、式:
【化4】
(式中、
R3は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物;又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0060】
R3が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって1個以上、好ましくは1〜4個、独立してハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、例えばメトキシ又はエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル、例えばCF2CF2H又はCF3;C1〜6アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル等;−C(O)OR6又は−OC(O)R6により置換されている。
【0061】
好適には、R4及びR5は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R4及びR5はどちらも水素である。
【0062】
好適には、R6は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R6はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。
【0063】
R3が置換されていてもよいアリール基である場合、これは本明細書中で式(I)においてR1又はR2について前記定義の通りである。
【0064】
R3が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、これは本明細書中の式(I)においてR1又はR2について前記定義のとおりである。
【0065】
R3が置換されていてもよい複素環基である場合、これは本明細書中の式(I)においてR1又はR2について前記定義のとおりである。
【0066】
一実施形態では、R3は水素又は置換されていてもよいC1〜6アルキルである。
【0067】
一実施形態では、R3は水素である。この化合物は、6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸であり、本明細書中ではケトタザロテン酸としても記載されている。
【0068】
別の実施形態によれば、R3はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は、6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルであり、本明細書中ではケトタザロテンとしても記載されている。
【0069】
安息香酸タザロテン
特定の実施形態によると、この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル(すなわち安息香酸タザロテン)である。安息香酸タザロテンは、タザロテンと過酸化ベンゾイルとを組み合わせることにより形成される。この新規化合物は皮膚に浸透し、レチノイド様活性を有する。S及びRエナンチオマーを単離し、特性化し、本明細書中に記載した。さらに記載されているように、安息香酸タザロテンの様々な類似体及び代謝物も単離し、合成し、特性化した。
【0070】
タザロテンの活性代謝物
タザロテンの公知代謝物、すなわちタザロテンスルホキシド及びタザロテン酸は皮膚に浸透することが示されている。しかし、タザロテンの他の公知代謝物、すなわち6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル(タザロテンスルホン)、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(タザロテン酸スルホキシド)、及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(タザロテン酸スルホン)(これらは、以前はレチノイド活性が低いか又はないと考えられていた)は、レチノイド様活性を発揮することが判明した(図22及び実施例3)。
【0071】
したがって、本発明は、対象における皮膚疾患を治療する方法であって、治療有効量の、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる方法にも関する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療用医薬の調製における使用に関する。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸、又はその医薬的に許容される塩からなる群から選択される化合物の、皮膚疾患の治療のための使用に関する。
【0074】
さらに別の実施形態では、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる医薬組成物に関する。
【0075】
医薬組成物
本発明の一実施形態によれば、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0076】
一実施形態では、医薬組成物は第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる。
【0077】
一実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は、過酸化ベンゾイル、抗生物質、コルチコステロイド及びビタミンD類似体からなる群から選択される。
【0078】
一実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は過酸化ベンゾイルである。
【0079】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は、抗生物質、たとえばクリンダマイシン又はその医薬的に許容される塩(たとえば、リン酸クリンダマイシン)である。
【0080】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤はコルチコステロイドである。好適なコルチコステロイドとしては、これらに限定されるものではないが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルクロロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、フルランドレノリド、フルランドレノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、塩酸プラモキシン、酢酸プレドニゾン、吉草酸プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニカルベート、及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0081】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤はビタミンD類似体である。好適なビタミンD類似体としては、これらに限定されるものではないが、カルシジオール、カルシトリオール、カルシポトリエン、パリカルシトール、22−オキサコルシトリオール、ジヒドロタキステロール、カルシフェロール及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0082】
一実施形態では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩及び第2の活性剤を含んでなる医薬組成物を提供し、ここで、式(I)又は(II)の化合物の安定性は、タザロテン及び第2の活性剤を含んでなる医薬組成物中のタザロテンの安定性よりも優れている。一実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、安息香酸タザロテン又はニコチン酸タザロテンである。特定の実施形態によると、第2の活性剤は過酸化ベンゾイルである。好適には、組成物中に存在する量は、皮膚疾患の治療に関して治療上有効な量である。
【0083】
本発明の化合物は、医薬組成物として処方することができ、経口的、局所的、経皮的、非経口的、注射によるか、肺若しくは鼻送達によるか、舌下、直腸または膣投与することができる。特定の実施形態によると、医薬組成物は、局所投与に適応させる。「注射により投与される」という用語は、静脈内、関節内、筋肉内(たとえば、活性化合物がデポーから血液中にゆっくりと放出され、そこから標的器官へと運ばれる、デポー注射による)、腹腔内、皮内、皮下、及びくも膜下腔内注射、並びに注入技術を包含する。皮膚投与は、局所又は経皮投与を包含し得る。経皮投与は、当該技術分野で一般的に知られているような、特に活性剤の経皮送達用に設計された、好適なパッチ、溶液、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、粉末、フォーム、クリーム、ローション又はゲルにより、場合によって特定の浸透促進物質の存在下で達成することができる。同様に、局所投与は、溶液、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、粉末、フォーム、クリーム、ローション又はゲルにより達成することができる。特定の実施形態では、局所投与は、エアゾルフォームで達成される。
【0084】
医薬的に許容される賦形剤の例としては、研磨剤、酸性化剤、接着剤、吸着剤、アルカリ化剤、抗菌剤、固化防止剤(anticaking agent)、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、充填剤(bulking agent)、キレート剤、コーティング剤、着色剤、錯化剤、制御放出剤、冷却剤、洗剤、希釈剤、分散剤、溶解促進剤、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、フィルム形成剤、ゲル化剤、滑剤、保湿剤、潤滑剤、不透明化剤、浸透促進剤、pH調節剤、顔料、可塑剤、防腐剤、プロペラント、金属イオン封鎖剤、可溶化剤、溶媒、界面活性剤、懸濁化剤、増粘剤、粘度増加剤及び湿潤剤が挙げられる。
【0085】
医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法を用いて、たとえば即時放出、持続放出、遅延放出、拍動性放出又は二段階放出として処方することができる。
【0086】
医薬組成物中の活性剤の量は、これらに限定されるものではないが、活性剤の活性、治療される状態、医薬組成物の性質、投与様式並びに患者年齢、体重、全般的な健康状態及び性別をはじめとする種々の因子によって変わるであろう。
【0087】
使用方法
本発明の一実施形態によれば、本発明は、皮膚疾患を治療する方法に関する。当該方法は、治療有効量の式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる。
【0088】
一実施形態によると、皮膚疾患は、ニキビ、乾癬、脂漏症、魚鱗癬又は角化症である。特定の実施形態によると、皮膚疾患はニキビ又は乾癬である。
【0089】
定義
【0090】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、本明細書中で用いられる場合、ハロゲン、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0091】
「アルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、鎖中に約1〜約18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。好ましい実施形態は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基である。本明細書中で定義されるアルキルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0092】
「不飽和」という用語は、炭化水素鎖の炭素原子間に1以上の二重又は三重結合が存在することを指す。
【0093】
「アルケニル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、直鎖又は分岐鎖いずれかの構造で、鎖に沿って任意の位置に存在し得る少なくとも1つ炭素・炭素二重結合を有する指定された数の炭素原子の炭化水素鎖を意味し、たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ビニル、アルキル又は2−ブテニルである。本明細書中で定義されるアルケニルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0094】
「アルキニル」という用語は、本明細書で用いられる場合、直鎖又は分岐鎖いずれかの構造で、鎖に沿って任意の位置に存在し得る少なくとも1つ炭素・炭素三重結合を有する指定された数の炭素原子の炭化水素鎖を意味する。アルキニルの一例はアセチレンである。本明細書中で定義されるアルキニルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0095】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、指定された数の炭素原子を含む非芳香族炭化水素環などの環状ラジカルを指す。たとえば、C3〜7シクロアルキルとは、少なくとも3個で、最大7個までの環炭素原子を含む非芳香族環を意味する。本明細書中で用いられる「シクロアルキル」の代表例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0096】
「アリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、単環(たとえば、フェニル)又は複数の縮合(融合)環(たとえば、ナフチル又はアンスリル)を有する5〜20個の炭素原子の芳香族環状炭化水素基を意味する。好ましいアリール基としてはフェニル及びナフチルが挙げられる。
【0097】
「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール部分」、及び「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環式5〜7員不飽和芳香族炭化水素環を意味する。ヘテロアリール環の例としては、これらに限定されるものではないが、フリル、ピラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、及びウラシルが挙げられる。「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール部分」、及び「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでなる縮合芳香族環も指す。縮合環のそれぞれは、5又は6個の環原子を含み得る。縮合芳香族環の例としては、これらに限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、アザインドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、プリニル及びフタラジニルが挙げられる。
【0098】
「複素環」、「複素環部分」及び「ヘテロシクリル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、窒素、酸素、硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子又は酸化硫黄部分、たとえばS(O)mを含む単環式3〜7員飽和又は非芳香族、不飽和炭化水素環を意味し、mは0又は1若しくは2の値を有する整数である。「複素環」、「複素環部分」、及び「ヘテロシクリル」という用語は、縮合環(飽和又は部分不飽和)も指し、この場合、環のうちの1つは芳香族、又はヘテロ芳香族であってよい。縮合環のそれぞれは、4〜7個の環原子を有し得る。ヘテロシクリル基の例としては、これらに限定されるものではないが、前記定義のヘテロアリール部分の飽和又は部分飽和形、たとえば、テトラヒドロピロール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン(硫黄部分の酸化形を包含する)、アゼピン、ジアゼピン、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、2−オキソ−1−ピロリジニル、3−オキソ−1−ピロリジニル、1,3−ベンズジオキソール−5−イル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ及びチオモルホリノ(硫黄部分の酸化形を包含する)が挙げられる。
【0099】
「アリールアルキル」又は「ヘテロアリールアルキル」又は「複素環アルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、特に指定がない限り、アリール、ヘテロアリール又は複素環部分(前記定義のとおり)に結合したC1−4アルキル(これも前記定義のとおり)を意味する。
【0100】
「ヘテロ原子」とは、窒素、硫黄又は酸素原子を指し、この場合、窒素及び硫黄原子は場合によって酸化されていてもよい。
【0101】
「有効量」又は「〜に有効な量」又は医学的に活性な薬剤若しくは成分の「治療有効量」という表現は、本明細書中で用いられる場合、投与により治療効果を有するために十分な医学的に活性な薬剤の量を指す。医学的に活性な薬剤の有効量は、治療される特定の状態(複数可)、状態の重症度、治療期間、及び使用される組成物の具体的な成分によって変わるであろう。
【0102】
「投与する」及び「投与」という用語は、本明細書中で用いられる場合、適切な医療行為において、治療効果をもたらすような方法で医薬組成物を対象に送達する任意の方法を意味する。
【0103】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書中では、プロドラッグが対象に投与された場合、インビボで活性剤を放出する化合物を意味するために用いられる。活性剤中に存在する1以上の官能基がインビボで切断されて活性化合物を放出し得るような方法で官能基を修飾することにより、活性剤のプロドラッグを調製する。
【0104】
皮膚疾患の「治療」又は皮膚疾患を「治療する」という用語は、少なくとも1つのその症状の緩和、その重症度の軽減、又はその進行の遅延、予防若しくは阻害を包含する。治療とは、必ずしも障害が完全に治癒することを意味するわけではない。本明細書中で有用な組成物は、障害の重症度を軽減するか、それに関連する症状の重症度を軽減するか、患者のクオリティー・オブ・ライフを改善するか、又は障害の開始を遅延、防止若しくは阻害すれば十分である。
【0105】
「医薬的に許容される塩」という用語は、医薬的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を指す。そのような塩としては:(1)たとえば、酢酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリコール酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、リン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、天然及び合成由来のアミノ酸、並びにそれらの混合物などの酸と形成される酸付加塩;又は(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、(i)金属イオン、たとえばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンにより置換されているか;又は(ii)たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン及びN−メチルグルカミンなどの有機塩基をプロトン化するかのいずれかである場合に形成される塩が挙げられる。
【0106】
本明細書中で記載される任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲又は比の範囲は、特に記載しない限り、その範囲またはその部分内にある濃度、パーセンテージ、又は任意の整数の比、たとえば整数の1/10及び1/100を包含すると理解されるべきである。
【0107】
「a」及び「an」という用語は、本明細書中で用いられる場合、「1以上の」記載された成分を指すと理解すべきである。単数の使用は、特に別段の記載がない限り、複数を包含することは当業者には明かであろう。したがって、「a」、「an」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書中では交換可能に使用される。
【0108】
本明細書全体にわたって、種々の実施形態の記載は、「含んでなる」という語を使用するが、いくつかの具体例では、実施形態は別法として「基本的に〜からなる」または「〜からなる」という語を使用して記載することができる。
【0109】
量、パーセンテージ又は割合、及び本明細書及び特許請求の範囲で使用される他の数値を表す全ての数は、あらゆる場合において、[約]という語で修飾されると理解されるべきである。
【0110】
本明細書中で用いられる場合、「場合によって」という用語は、実質的に記載されている事象(複数可)が起こり得る又は起こり得ないことを意味し、起こる事象と起こらない事象との両方を含む。
【0111】
本明細書中で用いられる場合、「置換された」という用語は、指定された置換基(複数可)での置換を指し、複数の置換度が可能である。
【0112】
立体異性体に関して、本明細書中の式(I)及び(II)の化合物は1以上の不斉炭素原子を有し得、かつラセミ化合物、ラセミ混合物及び個々のエナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。そのような異性体形態はすべて(それらの混合物を包含する)本発明内に含まれる。
【0113】
シス(E)及びトランス(Z)異性も存在し得る。本発明は、本発明の化合物の個々の立体異性体及び必要に応じてそれらの個々の互変異性型をそれらの混合物とともに含む。
【0114】
ジアステレオ異性体又はシス及びトランス異性体の分離は、通常の技術により、たとえば分別結晶、クロマトグラフィー又はHPLCにより達成することができる。薬剤の立体異性体混合物は、必要に応じて、対応する光学的に純粋な中間体から、又は好適なキラル支持体を用いた対応するラセミ化合物のHPLC等の分割によるか、又は対応するラセミ化合物と好適な光学的に活性な酸若しくは塩基との反応により形成されるジアステレオ異性体塩の分別結晶により、調製することもできる。
【0115】
本明細書中で用いられる他の用語は、当該技術分野で周知のそれらの意味により定義されることが意図される。
【実施例】
【0116】
実施例1 過酸化ベンゾイルの存在下でのタザロテンの分解
DUAC(登録商標)ゲル(Stiefel Laboratories, Inc.により販売されている1%のクリンダマイシン及び5%の過酸化ベンゾイル)及びTAZORAC(登録商標)クリーム(Allergan, Inc.により販売されている0.1%タザロテン)は顔のニキビを治療するために有効に使用されている。しかし、これらの局所治療は併用に関しては承認されていない。タザロテンが過酸化ベンゾイルによる酸化的分解を受けやすいかどうかを調べるために、インビトロの実験室での調査を行い、この場合、DUACゲルとTAZORACクリームとの混合物を調製した。
【0117】
等量のDUACゲル及びTAZORACクリームをとり、スパチュラを用い、好適な容器中で室温にてこれらを十分に混合して均一な混合物を得ることによって、試料を調製した。最初の試料を直ちにHPLCにより分析した。他の試料を35℃のオーブン中に入れ、1、2、4、6及び8時間後に分析のために取り出した。調査の過程で生成物を蒸発させた。
【0118】
図1及び表1は、4時間後にタザロテンの約22%が失われたことを示す。主な分解生成物はタザロテンスルホキシド(4時間後に〜16%)であった。従来知られていない誘導体、すなわち安息香酸タザロテンも同定され、これはクロマトグラフィーによりタザロテンの後に溶出し、4時間後で〜6.3重量%に相当した。
【0119】
DUACゲル及びTAZORACクリームの「老化」試料を使用した場合、同様の結果が得られた(表2)。タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンは、DUACゲル中の過酸化ベンゾイルとTAZORACクリーム中のタザロテンとの反応から生じる酸化的反応生成物であると考えられる。
【0120】
表1 DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物のHPLC分析(「新しい」試料を使用)
【表1】
【0121】
表2 DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物のHPLC分析(「老化」試料を使用)
【表2】
【0122】
実施例2 タザロテン及び代謝物のさらなる研究
インビトロ研究を実施して、DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物をヒト皮膚に塗布した後のタザロテン分解生成物(degradant)の形成を評価した。
【0123】
等量のDUACゲル及びTAZORACクリームをガラスバイアル中に分配し、約3分間、金属製スパチュラを用いて混合して、確実に均一に混合した。European DUACゲル及びUS DUACゲルの試料を別個の実験で使用した。European DUACゲルはパラベン防腐剤を含まないので、生成物は異なる。試験混合物を次いで分層皮膚(〜0.25mm)の表面に15.6mg/cm2の用量で塗布し、ポジティブディスプレイスメントピペット(positive displacement pipette)を用いて均一に広げた。
【0124】
2及び6時間後、皮膚試料を洗浄し、テープを2回はがし、次いでヒートブロックを用いて表皮を真皮からはがした。皮膚試料を次いで一晩4℃にてアセトニトリルで抽出した。タザロテン及びその分解生成物の表皮、真皮及び表面洗浄液内の分布を50pg/mLのLOQでLC/MS/MSにより定量化した。実験は黄色光条件下で実施した。比較のために、DUACゲルとTAZORACクリームとの混合物も調製し、安定性試験のために0、2及び6時間の時点で保持した。
【0125】
図2Aに示すように、安定性試料中のDUACゲルとTAZORACクリームとの混合物は、タザロテンスルホキシドの形成をもたらした。タザロテンスルホキシド分解生成物の量は、2時間の時点から6時間の時点までに2倍になった。図2Bに示すように、安息香酸タザロテンも形成された。この場合でも、2時間の時点に比べて、6時間の時点で存在する安息香酸タザロテンの量が有意に増加した。
【0126】
研究により、DUAC/TAZORAC混合物を皮膚に塗布した2時間後に、タザロテンスルホキシドが表皮及び真皮で確認されたこともわかる(図3A及び3B)。塗布の6時間後、タザロテンが引き続き失われ、結果としてタザロテンスルホキシドが形成された(図4A及び4B)。
【0127】
安息香酸タザロテンは、プラセボを含むすべての試料で検出可能であった(図5A及び5B)。プラセボ試料中に安息香酸タザロテンが存在することは、内在性安息香酸が存在する可能性があることを示唆する。
【0128】
図6で示されるように、タザロテン及び安息香酸タザロテンはアッセイの受容培地(receiving medium)中で検出できなかった(すなわち、皮膚を通過しなかった)が、タザロテンスルホキシドは受容培地中で検出された。
【0129】
タザロテン酸は、これらの実験条件下では検出されなかった。
【0130】
実施例3 タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物のレチノイド活性
タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物(タザロテン酸、タザロテンスルホン、タザロテン酸スルホン及びタザロテン酸スルホキシド)のレチノイド活性を評価するための研究を実施した。
【0131】
SkinEthic RHE培養物を、1.0mL/ウェルの増殖培地を含む6ウェルプレート中に移した。培養物を37℃で平衡化し、培地を毎日替えた。培養物を次いで、3.5mLの増殖培地を含む60mmのペトリ皿中に入れた。表3に示す試験品の6μlアリコートを2連の培養物に加えた。培養物を37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、増殖培地を集め、−20℃で保存した。組織を半分に切断し、片方を組織学のために10%のNBF中に入れ、もう一方の半分はRNAlater(商標)溶液(Ambion)中に入れた。以下の分析を実施した:a)IL−1α及びIL−8活性アッセイ;b)HandE染色;c)K10、K19及びフィラグリンに関する免疫組織化学;並びにd)K10、K19及びフィラグリン発現を定量化するためのqRT−PCR。
【0132】
表3
【表3】
【0133】
本研究は、インターロイキン−1α(IL−1α)(炎症誘発性サイトカイン)活性が、タザロテン、安息香酸タザロテ又はタザロテン代謝物で処理した培養物においては、未処理及びビヒクル対照と比較して、わずかしか増大しないことを示した(図7及び15)。しかし、IL−1α活性は、TAZORACクリームで処理された培養物において有意に増大し、Retin−A Micro(登録商標)トレチノインゲルで処理されたものではそれほど増大せず、このことは、処方賦形剤がレチノイドの刺激可能性に寄与し得ることを示唆する。さらに、インターロイキン−8(IL−8)(レチノイドに対して特異的な炎症誘発性サイトカイン)は、未処理及びビヒクル処理対象と比較して、レチノイドで処理されたすべての培養物において有意に増大し、このことは、タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物がレチノイド活性を有することを示唆する(図7及び16)。
【0134】
TAZORACクリーム又はRetin−A Microゲルで処理された培養物の組織学的プロフィールは予想通りであった:すなわち、未処理対照と比較して、ケラトヒアリン顆粒(HandE)が減少し、基底上層におけるK10発現が減少し、かつすべての生細胞層においてK19発現が増大した。タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物で処理された培養物についての組織学的プロフィールは、TAZORACクリーム及びRetin−A Microゲルのものと類似し、それらがレチノイド活性を有するというさらなる証拠を提供した。
【0135】
組織学的プロフィール研究にしたがって、種々のレチノイドで処理されたRHE培養物におけるK10、K19及びフィラグリに関する遺伝子発現を調べた。遺伝子発現プロフィールは、組織学的観察と一致した。レチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較してK10が3倍〜100倍下方調節された。ただし、高い標準偏差のために説明できない安息香酸タザロテンは除外される可能性がある。加えて、全てのレチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較して、K19が15倍〜1500倍上方調節された。全てのレチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較して、フィラグリンも2倍〜15倍下方調節された。安息香酸タザロテンでの処理後のフィラグリン発現は、1つの培養物における高い変異性のために曖昧に見えた。しかし、免疫組織化学により、フィラグリンは安息香酸タザロテンによって下方調節されることが示される。
【0136】
これらの研究の結果は、タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物が、ヒト皮膚においてレチノイド活性を有するという強力な証拠を提供する。
【0137】
実施例4 安息香酸タザロテンのレチノイド活性
ヒトケラチノサイトモデル(A431)を使用して、安息香酸タザロテンのレチノイド活性を特に評価するための研究を実施した。
【0138】
A431細胞をATCC(CRL−1555)から購入した。細胞を12ウェルプレート上に250,000細胞/ウェルの密度で播種し、そして37℃/5%CO2で72時間インキュベートして、細胞をコンフルエンシーまで増殖させた。DMSO(10mg/mLストック)中で希釈したホルボール−12−ミリステート13−アセテート(PMA)を10ng/mLの濃度で添加し、レチノイドを、10mg/mLのDMSO中ストック溶液から0.01〜1μg/mLの濃度で添加した。培養物を48時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の最後に、増殖培地を集め、CellTiterGloアッセイキット(Promega)を用いて細胞生存度を測定した。IL−6の濃度をELISAにより測定し、細胞生存度に基づいて正規化した。
【0139】
PMAは、核転写因子AP−1のトランス活性化によりIL−6発現を上方調節することが知られている。トレチノインなどのレチノイドは、レチノイン酸受容体によりAP−1のトランス活性化を阻害することが知られている。
【0140】
本研究は、PMAによって誘発されたIL−6放出が、安息香酸タザロテンで処理された培養物では有意に減少し、トレチノイン、タザロテン及びタザロテン酸で処理された培養物について得られた結果と類似していたことを示す(図8)。
【0141】
このように、これらの結果は、安息香酸タザロテンがヒト皮膚においてレチノイド活性を有することのさらなる証拠を提供する。
【0142】
実施例5 血漿における安息香酸タザロテンの安定性
安息香酸タザロテンをさらに特性化するために、ヒト及びラット血漿における安息香酸タザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテンの安定性を研究した。
【0143】
タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンを室温でヒト及びラット血漿とともにインキュベートした。インキュベーションを2連で実施し、試料を安定性分析のために特定の時点で採取した(i)ラット試料(0時間、2時間及び4時間)並びに(ii)ヒト試料(0時間、2時間、4時間及び8時間)。試料をLC−MS/MSにより分析した。
【0144】
本研究から、ラット血漿において、タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンが、急速な分解を示し、2時間で75〜100%の損失であったことがわかる(表4及び図9)。ヒト血漿において、タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの分解速度は著しく遅く、2時間で<10%の損失、8時間で<15%の損失であった(表5及び図10)。分解生成物は、試験した各化合物の対応するエステル加水分解生成物であった。
【0145】
表4
【表4】
【0146】
表5
【表5】
【0147】
実施例6 ヒト肝臓ミクロソームの存在下でのタザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝
ヒト肝臓ミクロソームの存在下でのタザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝安定性を調査した。
肝臓ミクロソーム反応を微小遠心管中、以下の方法で実施した。ヒト肝臓ミクロソーム(0.5又は1.0mg/mlのタンパク質)、試験物(1又は10μM)、パラオキソン(0、10又は100μM)、NADPH再生系(10mMのグルコース−6−ホスフェート、1単位/mlのグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、1mMのNADP+)、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中塩化マグネシウム(5mM)を37℃で振とう水浴中でインキュベートした。0時インキュベーション以外は基質の添加により反応を開始した。合計反応体積は0.2mlであった。反応を15、30、45又は60分間インキュベートし、0.2mlの氷冷アセトニトリルを添加して停止させ、次いで氷上に置いた。0時インキュベーションについて、ミクロソームを含む混合物に、氷冷アセトニトリルを、NADPH再生系、リン酸塩緩衝液中塩化マグネシウム及び試験物とともに添加した。各時点を3連で実施した。
【0148】
インビトロ代謝後の試験物の消失及び代謝物の形成を、多重反応モニタリングを使用するLC−MS/MSによって測定した。LightSight(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して、質量分析法を行い、データマイニングを実施した。
【0149】
以下を除いては前述と同じインキュベーション手順を用いて対照インキュベーションを実施した。負の対照反応には、ミクロソームは含まれなかった。肝臓ミクロソームの正の対照インキュベーションは、実験動物及びヒトの肝臓ミクロソームインキュベーションにおいてCYPにより急速に代謝される7−エトキシクマリンのミクロソーム安定性の評価を含んでいた。10μMの初期濃度での2連反応物を0又は30分間インキュベートした。7−エトキシクマリンのミクロソーム代謝安定性をLC−MS/MSにより測定した。
【0150】
表6 タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝
【表6】
【0151】
15.4%〜19.8%のタザロテンが完全非0分インキュベーション(NADPHを含む)においてタザロテン酸に変わった(表7)。NADPHの非存在下で、インキュベーションはさらに高濃度のタザロテン酸を含んでいた(32.4%〜52.7%のタザロテンが変換された)。タザロテン酸は代謝の一部のみを構成し、このことは、タザロテンスルホキシドへのスルホキシド化又はタザロテン酸のタザロテン酸スルホキシド及びタザロテン酸スルホンへのさらなる代謝などの他の代謝経路の存在を示唆する。
【0152】
表7 タザロテンのタザロテン酸への代謝
【表7】
【0153】
タザロテンスルホキシドは、ヒト肝臓ミクロソーム中でも急速に代謝された(表8)。マスバランス計算で示されるように、タザロテン酸スルホキシドへの近定量的変換が1μM反応について観察された。NADPHを含まない1μM反応の場合、タザロテン酸スルホキシドへ変換されたタザロテンスルホキシドのパーセンテージ値は100%超であった。これは予想外の結果であり、標準及び試料注射間のイオン抑制効果に起因する可能性がある。10μM基質反応について、50%を超える試験物がタザロテン酸スルホキシドに代謝された。NADPHの存在下では、タザロテン酸スルホキシドが主な代謝物であったが、そのレベルは、NADPHなしでのインキュベーションで観察されるものよりも低かった。NADPH依存性代謝の一部だけがタザロテン酸スルホキシドとして検出された。このことは、タザロテンスルホキシドのそのスルホンへの酸化によるか、又はタザロテン酸スルホキシドのそのスルホンへのさらなる代謝によるかのいずれかの他の代謝経路を示唆する。
【0154】
表8 タザロテンスルホキシドのタザロテン酸スルホキシドへの代謝
【表8】
【0155】
NADPHの存在下で、タザロテン酸は、ヒト肝臓ミクロソームによりゆっくりと代謝されてタザロテン酸スルホキシドになった(表9)。タザロテン酸は、NADPHの非存在下では代謝されなかった。タザロテン酸スルホキシドの質量スペクトルを図14に示す。
【0156】
表9 タザロテン酸のタザロテン酸スルホキシドへの代謝
【表9】
【0157】
31.7%〜47.6%の安息香酸タザロテンがNADPHを含む1μM反応でヒドロキシタザロテン酸に変わった。同様に、50%を越える安息香酸タザロテンがNADPHを含まない1μM反応においてヒドロキシタザロテン酸に変わった(表10)。マスバランスが、特に1μM反応について、100%よりも有意に少ないので、他の代謝物も形成されるようである。ヒドロキシタザロテン酸に対応するHPLCクロマトグラム及び質量スペクトルを、それぞれ図12及び13に示す。
【0158】
表10 安息香酸タザロテンのヒドロキシタザロテン酸への代謝
【表10】
【0159】
本研究は、タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンがヒト肝臓ミクロソームにより代謝されることを示した。エステル加水分解が主な代謝経路であると考えられる。
【0160】
タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝におけるエステラーゼの役割を判定するために、カルボキシルエステラーゼをはじめとするすべてのセリンエステラーゼの強力な阻害剤であるパラオキソンを用いて阻害研究を実施した。パラオキソンは以下のものを阻害した:
(i)ヒト肝臓ミクロソームにおけるタザロテン酸へのタザロテン代謝
(ii)ヒト肝臓ミクロソームにおけるタザロテン酸スルホキシドへのタザロテンスルホキシド代謝、及び
(iii)ヒト肝臓及び皮膚ミクロソームにおけるヒドロキシタザロテン酸への安息香酸タザロテン代謝。
パラオキソンは、CYP及びFMOが介在する反応である、タザロテン酸のタザロテン酸スルホキシドへの代謝を阻害しなかった。
【0161】
合わせると、これらの結果は、エステラーゼがタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンのエステル加水分解の原因であるという結論を支持する。
【0162】
ヒト肝臓ミクロソームは予想どおり7−エトキシクマリンを代謝し、代謝安定性アッセイに関して十分なインキュベーション条件を確証する。
【0163】
検出された代謝物のうち、3つは安息香酸タザロテン(m/z444)、ヒドロキシタザロテン(m/z368)、及びヒドロキシタザロテン酸(m/z340)と同定された。ヒドロキシタザロテン酸が主な代謝物と同定された。m/z338及び366の代謝物も観察された。提案により拘束されないが、これらは、チオラクトール基のチオラクトンへの酵素的酸化(すなわちケトタザロテン及びケトタザロテン酸を形成する)後の生成物であると考えられる(図23)。合わせると、これらの知見は、エステラーゼによる両エステル結合の切断と一致する。
【0164】
(i)タザロテン及び(ii)安息香酸タザロテンの提案された代謝をそれぞれ図22及び23に示す。
【0165】
実施例7 ヒト皮膚ミクロソームの存在下での安息香酸タザロテンの代謝
いくつかの肝臓ミクロソーム酵素(エステラーゼを含む)がヒト皮膚において見出される限り、安息香酸タザロテンの代謝をヒト皮膚ミクロソームの存在下、インビトロで調査した。
【0166】
5つの時点を選択したが、ヒト皮膚ミクロソーム供給の制限のために、それぞれを2連で実施した。皮膚ミクロソーム反応は、次の2点を除いて、肝ミクロソーム反応について前述したとおりに実施した。第1に、全反応体積は0.1mLであった。第2に、インキュベーションは0.1mLのアセトニトリルで終結させた。
【0167】
ヒト皮膚ミクロソームはテルフェナジン(正の対照)からのフェキソフェナジン形成を触媒し、このことは、薬剤がヒト皮膚ミクロソームの活性を代謝することを確証する。
【0168】
安息香酸タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸代謝物濃度をLC−MS/MSにより定量化した。
【0169】
この結果は、安息香酸タザロテンがヒト皮膚ミクロソームにより代謝されるが、この化合物はヒト肝臓ミクロソームよりも遅い速度で、すなわち150分後に代謝され、20%の安息香酸タザロテンが2mg/mlのヒト皮膚ミクロソームの存在下で代謝されることを示した。ヒドロキシタザロテン酸の形成が再度観察され、このことは、安息香酸タザロテンのエステラーゼ代謝を示唆する。
【0170】
実施例8
以下の方法を使用して、タザロテン、安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸、ケトタザロテン酸、ケトタザロテン及び安息香酸タザロテンの多数の類似体のレチノイド活性を評価した。化合物を表11に記載する。
【0171】
再構成されたヒト表皮(RHE)組織をPoumayらにより以前に記載されているように自家培養した。手短に説明すると、ポリカーボネート培養インサート(直径12mm、ポアサイズ0.4μm、Millipore)を、約5×105の一次成人ヒトケラチノサイトを含む懸濁液150μLで満たした。インサートに別の500μLのケラチノサイト培地を加え、2.5mLのRHE増殖培地(Epilife培地+1.5mMのCaCl2)を含む6ウェルプレート(1インサート/ウェル)中に入れた。RHE培養物を37℃にて5%CO2を含む加湿雰囲気中で24時間インキュベートした。その後(0日に)、RHE増殖培地を培養の最上部から除去し、50μg/mLのビタミンCを含むRHE増殖培地(1.5mL/ウェル)と置換することによって、RHE培養を気液界面に暴露した。培養に試験品を加えるまで、培地を一日おきに替えた。0.1%のタザロテン(2.83mM、純度99.5%)のOD/10%DMSO中ストック溶液を調製した。安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸、ケトタザロテン酸、ケトタザロテン、及びニコチン酸タザロテンに関して、10mg/mLのストック溶液(DMSO中)をすでに調製した。このストック溶液から2.83mMの使用液(working solution)(オクチルドデカノール中)を調製した。すべての他の試験した化合物をDMSO及びOD中に再懸濁させて、OD/10%DMSO中2.83mMの最終濃度を得た。12日に、培養を3mLのRHE増殖培地(+VitC)を含む60mmのペトリ皿中に入れた。試験物(6μl)を3連の培養に加え、培養物を37℃で72時間インキュベートした。未処理及びOD単独は負の対照としての役目をはたした。インキュベーション期間の最後に増殖培地を集め、−20℃で保存した。組織を半分に切り:一方を組織学のために10%のNBF中に入れ、もう一方の半分をRT−qPCRのためにRNAlater(商標)溶液中に入れた。RNAを単離し、NanoDrop分光光度計を用いて濃度を測定した。各試料について同じ量のRNAを使用することに加えて、データを内部GAPDH mRNAレベルに対して正規化し、未処理対照に対する相対量(RQ)として表す。RT−qPCRを用いて各実施から得られたRNA抽出物を増幅した。5つのバイオマーカー:ケラチン10、ケラチン19、フィラグリン、ケラチン4、及びケラチン13の相対的遺伝子発現を測定した。
【0172】
分析結果を図17〜21に示す。図17〜21のX軸上に表示した化合物は、表11中に記載した化合物に対応する。化合物を、表12中に記載するように、各バイオマーカーに対するそれらの効果についてランク付けした。
【0173】
ケラチン4(K4)は、ヒト表皮においては通常発現されないが、レチノイドでの治療により上方調節されることが知られている。すべてのタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K4の有意な上方調節(11〜180倍)を引き起こした。タザロテン、ケトタザロテン、化合物17、化合物25及び化合物28は最高の増加(103倍から180倍)を示した。化合物21及び化合物19は最低の上方調節を示し、それぞれ11倍及び19倍であった。
【0174】
ケラチン10(K10)は、生きている表皮の基底上層で通常発現されるが、レチノイドでの治療により下方調節されることが知られている。安息香酸タザロテンのSエナンチオマー、化合物19及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K10の有意な下方調節(約7±4倍)を引き起こした。最高のK10下方調節がニコチン酸タザロテン、ケトタザロテン酸、及び化合物24で観察された(14〜17倍)。
【0175】
ケラチン13(K13)はヒト表皮で通常発現されないが、レチノイドでの治療により上方調節されることが知られている。化合物19及び化合物21を除くすべてのタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K13(約13±5倍)の有意な上方調節を引き起こした。最高のK13上方調節が、化合物24(23倍)、ケトタザロテン酸、及びヒドロキシタザロテン(20倍)、化合物23及び化合物27(19倍)、化合物28(18倍)、及び化合物25(17倍)で観察された。
【0176】
ケラチン19(K19)はヒト表皮で通常発現されないが、レチノイドで治療された表皮のすべての生きている層で上方調節されることが知られている。化合物19及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K19の有意な上方調節(約23±11倍)を引き起こした。タザロテン、化合物15、化合物23、化合物24及び化合物27は最高の増加を示した(33〜43倍)。
【0177】
フィラグリンは、顆粒層で通常発現され、レチノイドでの治療により下方調節されることが知られている後期分化マーカーである。安息香酸タザロテンのSエナンチオマー、ケトタザロテン、化合物13、化合物17、化合物19、及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、フィラグリンの有意な(3〜100倍)下方調節を引き起こした。最高レベルのフィラグリン下方調節がニコチン酸タザロテン(100倍)、化合物24(56倍)、ケトタザロテン酸(36倍)及び化合物27(23倍)で観察された。
【0178】
遺伝子発現プロフィールの定性的評価(表12)に基づいて、上位の5つのタザロテン誘導体は:化合物24、化合物23、化合物11、化合物29及び化合物15である。
【0179】
要約すると、種々のタザロテン代謝物及び誘導体のレチノイド活性を5つのバイオマーカー(ケラチン4、10、13、19及びフィラグリン)により評価した。各化合物は独自の発現プロフィールを有していた。試験した化合物のランク付けで、13の誘導体がタザロテンよりも活性であることが判明した。
【0180】
実施例9 過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの安定性
(i)タザロテン、安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸及びニコチン酸タザロテンと、(ii)30%水性溶液中過酸化ベンゾイル(BPO)との反応を35℃、室温及び5℃でモニタリングした。
【0181】
各化合物の個々の溶液をアセトニトリル:水(6:4(体積基準))中約0.25mg/mLで調製した。等しい体積の試験溶液と、過酸化ベンゾイル(BPO)のアセトニトリル:水(4:1(体積基準))中約12mg/mL溶液とを混合することによって反応を開始した。したがって、反応溶液は約0.125mg/mLの試験化合物を含み、BPOは重量基準で50倍過剰であった(すなわち、0.1%のタザロテン及び5%のBPOを含む生成物と同じ比)。反応溶液のアリコートを光から保護して種々の温度で保存した。
【0182】
30μLの反応溶液を希釈剤(1:1(体積基準)の比のアセトニトリル:水)で50mLに希釈し、試料を10℃でLC/MS試料トレイ中、又は保存のために5℃で保存することによって、反応をクエンチした。2連の試料を各時点で調製し(反応の開始時に3つ)、結果を平均して、1つの値を得た。
【0183】
試料を、MassLynx V4.1ソフトウェアにより制御されたポジティブモードのESIソースを使用して、Waters Xevo TQMSを含むWaters Acquity UPLCで分析した。Acquity BEH C8UPLCカラム(1.7μm粒子サイズ、2.1×50mm)を45℃で使用して、分離を実施した。移動相は、水及びアセトニトリルから構成され、それぞれは0.1%のギ酸を含んでいた。0.4mL/分の流速を使用した。
【0184】
結果を図24A、24B及び24Cに記載する。
【0185】
重大なことに、3つの温度すべてで、安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンは、タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸よりも(BPOとの)反応性が25倍程度低かった。試験化合物のそれぞれとBPOとの反応速度は、温度の関数であることが判明した。反応速度は5℃と比較しておよそ5倍増加し、反応温度が35℃まで上昇すると、さらに約3倍増加した。安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの反応速度は、全ての温度で同様であるように見える。
【0186】
実施例10 タザロテン誘導体の合成
本発明を、単に例示的であり、本発明の範囲を限定すると解釈されない以下の実施例を参照して記載する。すべての温度は摂氏度で記載し、すべての溶媒は入手可能な最高の純度であり、すべての反応は、必要ならばAr雰囲気中、無水条件下で実施する。
【0187】
略語のリスト
【表11】
【0188】
酸塩化物を調製するための一般的手順
塩化オキサリル(4.0当量)をカルボン酸(1.0当量)のジクロロメタン(DCM)中溶液に撹拌しながら触媒量の無水ジメチルホルムアミド(DMF)とともに添加した。結果として得られた溶液を40℃で2時間還流した。溶液を冷却し、溶媒を真空下で除去し、トルエンを用いて過剰の塩化オキサリルを除去し、結果として得られた酸塩化物をDCM中に溶解させ、その後、エステル形成のために使用した。
【0189】
酸塩化物からエステルを調製するための一般的手順
酸塩化物(1.6ミリモル)を化合物14(0.5ミリモル)のDCM(5mL)中溶液に撹拌しながら添加した。トリエチルアミン(TEA)(2.7ミリモル)を続いて添加し、反応混合物を一晩攪拌した。反応の進行をLC/MSによりモニタリングした。反応が完了したら、反応混合物を水中に注ぎ、DCM(2×5mLアリコート)で抽出した。有機抽出物を合し、水/食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。有機抽出物を濃縮し、そして粗エステルを、酢酸エチル/ヘプタン溶媒系(0〜40%)を用いたCompanionシステム中ISCOカートリッジで精製した。
【0190】
カルボン酸及びアルコール(EDC及びHOBtを使用)のカップリングからエステルを調製するための一般的手順
N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)(2.7ミリモル)及びHOBt(2.7ミリモル)をカルボン酸(2.7ミリモル)のDCM(10mL)中溶液に撹拌しながら添加した。TEA(5.4ミリモル)を添加し、続いて化合物14(アルコール)を添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌した。反応が完了したら(LC/MSにより判定)、混合物を水(20mL)中に注ぎ、有機相を除去し、水性相をDCM(10mL)で抽出した。有機(DCM)相を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥して、粗エステルを得た。
【0191】
質量分析法により測定される代謝物及び類似体の分子量を表11に記載する。
【0192】
重水素化クロロホルム又は重水素化DMSO中に溶解させた試料を用いて400MHz(Varian)で1H NMR分光法を用いて代謝物及び類似体の分析も実施した。
【0193】
化合物4 6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル(安息香酸タザロテン)
トリエチルアミン(0.75mL)を化合物14(0.551g、1.5ミリモル)のDCM(15mL)中冷却(0℃)溶液に窒素下で添加し、続いてDCM(3mL)中塩化ベンゾイル(0.281g、2.0ミリモル)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、次いでDCM(50mL)で希釈し、次い飽和NaHCO3溶液、続いて水(30mL)及び食塩水(30mL)で処理した。有機相を抽出し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘプタン)を用いて精製して、無色固体を得た。収量:0.700g(99%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)d 1.43(t, J=7.08 Hz, 3H), 1.49(s, 3 H), 1.56(s, 3H), 2.32(br. s., 1H), 2.33(d, J=1.66 Hz, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.49(t, J=5.52 Hz, 1H), 7.13(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.35(d, J=0.88 Hz, 1H), 7.46(t, J=7.71 Hz, 2H), 7.59(d, J=7.91 Hz, 2H), 7.69(s, 1H), 8.05(d, J=7.52 Hz, 2H), 8.29(dd, J=8.15, 1.81 Hz, 1H), 9.21(s, 1H)
【0194】
化合物5及び6 (S)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル及び(R)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸、エチルエステル(安息香酸タザロテンのエナンチオマー)
化合物4のS及びRエナンチオマー(100mg)を、イソプロピルアルコール/水の10〜50%勾配を用いたキラルADHカラムを用いたHPLCにより分離した。UV吸光度を340nmでモニタリングした。33mg及び27mgのエナンチオマーを>97%の純度で得た。
【0195】
アブイニシオ振動円二色性(VCD)分析を用いてエナンチオマーの立体化学を測定した。
【0196】
化合物7 6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル(ニコチン酸タザロテン)
化合物14(1.00g、2.72ミリモル)のDCM(100mL)中溶液を氷水浴中で0℃まで冷却し、次いでTEA(1.38g、1.90mL、13.6ミリモル)を添加し、次いで塩化ニコチノイル塩酸塩(605mg、3.40ミリモル)を添加した。反応を次いで室温まで温め、18時間撹拌した。反応をDCM(200mL)で希釈し、水で洗浄した(2×200mLアリコート)。水性洗浄液をプールし、DCMで逆抽出した(2×100mL)。有機フラクションを次いでプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いて粗生成物をシリカカラム上クロマトグラフにかけた。収量:968mg(75%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ ppm 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.49(s, 3 H), 1.56(s, 3 H), 2.33(d, J=5.6 Hz, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.51(t, J=5.6 Hz, 1 H), 7.13(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.37(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.41(ddd, J=8.0, 4.9, 0.8 Hz, 1 H), 7.59(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.69(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.22 −8.36(m, 2 H)8.81(dd, J=4.9, 1.7 Hz, 1 H), 9.22(ddd, J=9.3, 2.1, 0.8 Hz, 2 H)。
【0197】
化合物8及び9 6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル(ニコチン酸タザロテン−S及びRエナンチオマー)
化合物7のS及びRエナンチオマーを、15%のエタノールを修飾剤として用いてOJHカラム(10×250mm、10ml/分)を用いた超臨界流体クロマトグラフィーにより分離した。UV吸光度を254nmでモニタリングした。各エナンチオマーを約96%の純度で得た。
【0198】
アブイニシオ振動円二色性(VCD)分析を用いてエナンチオマーの立体化学を測定した。
【0199】
化合物10 6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(ヒドロキシタザロテン酸)
6−(4,4−ジメチル−1−オキソ−1λ4−チオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
タザロテン(10.0g、28.5ミリモル)のメタノール(300mL)中懸濁液を氷水浴中で<10℃まで冷却し、次いでNaIO4(9.13g、42.7ミリモル)の水(100mL)中溶液を30分にわたって滴加した。反応を撹拌しながら18時間室温まで温め、次いで減圧下で濃縮して、できるだけ多くのメタノールを除去した。反応を次いでDCM(500mL)及び水(150mL)で希釈した。2層を次いで分離し、水性層をDCM(2×100mLアリコート)で抽出した。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。粗スルホキシド生成物を次いで、DCM:EtOAc溶媒系を用いてクロマトグラフィーにかけた。収量:9.00g(86%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.34(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.47(s, 3 H), 1.91(ddd, J=15.1, 8.9, 2.3 Hz, 1 H), 2.45(ddd, J=15.1, 10.3, 2.4 Hz, 1 H), 3.04 −3.29(m, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.58(dd, J=8.1, 1.6 Hz, 1 H), 7.63(dd, J=8.2, 0.7 Hz, 1 H), 7.71(d, J=1.6 Hz, 1 H), 7.78(d, J=8.1 Hz, 1 H), 8.32(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.1, 0.7 Hz, 1 H). MS(ESI+)368.0。
【0200】
6−(2−アセトキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記スルホキシド(9.00g、24.5ミリモル)の無水酢酸(185mL)中溶液を130℃まで5時間加熱し、次いで、無水酢酸の蒸発を助けるためにトルエンを添加して、減圧下で濃縮した。粗酢酸エステルを次いで、ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いてシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:8.47g(84%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.40(s, 3 H), 1.43(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.46(s, 3 H), 2.10 −2.22(m, 2 H), 2.11(s, 3 H), 4.43(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.22(dd, J=6.9, 5.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.34(dd, J=8.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.64(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.29(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H). MS(ESI+)410.0。
【0201】
6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸
前記酢酸エステル(3.00g、7.33ミリモル)のエタノール(90mL)中懸濁液に、KOH(2.47g、44.0ミリモル)の水(15mL)中溶液を滴加した。30分以内に、反応は均一になり、室温で18時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、水(40mL)で希釈し、次いで、pH〜5に達するまで1.0NのHCl(33mL)を滴加して処理した。結果として得られる黄色沈殿をろ過し、フィルターケーキを次いで水(40mL)及びヘプタン(40mL)で洗浄し、次いで真空下、50℃で18時間乾燥した。収量:1.95g(78%)。
1H NMR(400 MHz, DMSO−d6)δ ppm 1.24(s, 3 H), 1.42(s, 3 H), 1.90(dd, J=13.5, 9.8 Hz, 1 H), 2.11(dd, J=13.5, 4.2 Hz, 1 H), 5.43(dd, J=9.8, 4.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.32(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.62(d, J=1.8 Hz, 1 H), 7.72(dd, J=8.1, 0.7 Hz, 1 H), 8.26(dd, J=8.1, 2.2 Hz, 1 H), 9.04(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。MS(ESI+)340.0。
【0202】
化合物11 6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(ケトタザロテン酸)
化合物12(1.28g、3.50ミリモル)のエタノール(30mL)中懸濁液にKOH(2.47g、44.0ミリモル)の水(15mL)中溶液を滴加し、反応を室温で18時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、水(20mL)で希釈し、次いでpH〜5に達するまで1.0NのHClを滴加して処理した。結果として得られる黄色沈殿をろ過し、フィルターケーキを次いで水(10mL)及びヘプタン(10mL)で洗浄し、次いで真空下、50℃で18時間乾燥した。粗生成物(1.12g)を次いでDMSO中に溶解させ、メタノール:水勾配(両溶媒中に0.1%のHCO2Hが存在する)を用いて逆相HPLCにより精製した。収量:26mg(2.2%)。
1H NMR(400 MHz, DMSO−D6)δ ppm 1.35(s, 6 H), 2.80(s, 2 H), 7.37(br. d, J=7.8 Hz, 1 H), 7.52(br. d, J=7.8 Hz, 1 H), 7.65−7.80(m, 2 H), 8.23(br. d, J=7.2 Hz, 1 H), 9.01(br. s, 1 H)。
【0203】
化合物12 6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル(ケトタザロテン)
6−(4,4−ジメチル−1−オキソ−1λ4−チオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
タザロテン(10.0g、28.5ミリモル)のメタノール(300mL)中懸濁液を氷水浴中で<10℃まで冷却し、次いでNaIO4(9.13g、42.7ミリモル)の水(100mL)中溶液を30分にわたって滴加した。反応を撹拌しながら18時間室温まで温め、次いで減圧下で濃縮して、できるだけ多くのメタノールを除去した。反応を次いでDCM(500mL)及び水(150mL)で希釈した。2層を次いで分離し、水性層をDCMで抽出した(2×100mLアリコート)。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。粗スルホキシド生成物を次いで、DCM:EtOAc溶媒系を用いてクロマトグラフィーにかけた。収量:9.00g(86%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.34(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.47(s, 3 H), 1.91(ddd, J=15.1, 8.9, 2.3 Hz, 1 H), 2.45(ddd, J=15.1, 10.3, 2.4 Hz, 1 H), 3.04 −3.29(m, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.58(dd, J=8.1, 1.6 Hz, 1 H), 7.63(dd, J=8.2, 0.7 Hz, 1 H), 7.71(d, J=1.6 Hz, 1 H), 7.78(d, J=8.1 Hz, 1 H), 8.32(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.1, 0.7 Hz, 1 H)。MS(ESI+)368.0。
【0204】
6−(2−アセトキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記スルホキシド(9.00g、24.5ミリモル)の無水酢酸(185mL)中溶液を130℃まで5時間加熱し、無水酢酸の蒸発を助けるためにトルエンを添加して、減圧下で濃縮した。粗酢酸エステルを次いで、ヘプタン:EtOAc溶媒系を使用してシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:8.47g(84%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.40(s, 3 H), 1.43(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.46(s, 3 H), 2.10 −2.22(m, 2 H), 2.11(s, 3 H), 4.43(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.22(dd, J=6.9, 5.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.34(dd, J=8.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.64(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.29(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。MS(ESI+)410.0。
【0205】
6−(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記酢酸エステル(3.29g、8.03ミリモル)のTHF(50mL)中溶液にNaOEt(2.18g、32.1ミリモル)を添加し、反応を75℃まで12時間加熱した。反応を次いでEtOAc(250mL)で希釈し、水(2×100mLアリコート)で洗浄した。水性洗浄液を次いでプールし、EtOAc(2×100mLアリコート)で逆抽出した。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、チオラクトールを得た。収量:2.31g(78%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.31(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.48(s, 3 H), 1.95 −2.07(m, 1 H), 2.26(dd, J=13.5, 4.5 Hz, 1 H), 2.54(d, J=8.5 Hz, 1 H), 4.43(q, J=7.2 Hz, 2 H), 5.50(td, J=8.8, 4.5 Hz, 1 H), 7.09(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.32(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.62(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.28(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。
【0206】
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル
前記チオラクトール(2.31g、6.29ミリモル)のDCM(500mL)中溶液に、Dess−Martinペルヨージナン(2.80g、6.60ミリモル)を添加し、反応を室温で1時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、次いでEtOAc(250mL)で希釈し、飽和水性NaHCO3溶液(2×100mLアリコート)で洗浄した。水性洗浄液を次いでプールし、EtOAcで逆抽出した(2×200mL)。有機フラクションを次いでプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いて、粗生成物を次いでシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:1.28g(56%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.44(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.44(s, 6 H), 2.71(s, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.23(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.48(dd, J=8.1, 1.7 Hz, 1 H), 7.62(dd, J=8.1, 0.8 Hz, 1 H), 7.73(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.31(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。
【0207】
化合物13 6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をDCM及びTEA中塩化パルミトイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.85(d, J=13.57 Hz, 2H), 0.85(s, 2H), 1.22(s, 26H), 1.29(br. s, 6H), 1.35 −1.50(m, 11H), 1.56(s, 2H), 1.63(br. s, 1H), 1.60(d, J=7.42 Hz, 2H), 2.03 −2.20(m, 2H), 2.31(d, J=15.03 Hz, 1H), 2.31(s, 1H), 4.40(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.19(dd, J=6.49, 5.32 Hz, 1H)7.07(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.31(dd, J=8.15, 1.61 Hz, 1H), 7.55(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.61(d, J=1.56 Hz, 1H), 8.25(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.17(d, J=1.56 Hz, 1H)。
【0208】
化合物14 6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)
還流THF中での化合物17のナトリウムエトキシドでの加水分解により、標記化合物と、化合物10との混合物を得た。カラムクロマトグラフィー精製して、非極性不純物及び化合物10(ヒドロキシ酸)を除去することにより標記化合物を得た(51%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.25(s, 3H), 1.38(t, J=7.13 Hz, 3H), 1.42(s, 3H), 1.98(dd, J=13.42, 9.32 Hz, 1H), 2.21(dd, J=13.47, 4.49 Hz, 1H), 3.21(d, J=8.10 Hz, 1H), 4.39(q, J=7.13 Hz, 2H), 5.48(dt, J=13.03, 4.47 Hz, 1H), 7.02(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.26(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.53(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.57(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.24(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.15(d, J=1.56 Hz, 1H)。
【0209】
化合物15 6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル
グリコール酸(4.2g、0.05モル)及びtert−ブチルジメチルクロロシラン(17.7g、0.012モル)を40mLの乾燥DMF中で撹拌した。イミダゾール(15.62g、0.23モル)を混合物に添加し、窒素下で18時間撹拌した。混合物を脱イオン水(約250mL)中に注ぎ、ジエチルエーテル(3×100mLアリコート)で抽出した。有機フラクションを合し、飽和NaHCO3で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して、油状物を得た。真空下でさらに乾燥して、10.7g(91%)のビスシリル化グリコール酸を白色固体として得た。
【0210】
ビスシリル化グリコール酸を、数滴のDMFを含む125mLの乾燥DCM中に溶解させた。13.4mLの塩化オキサリルの溶液(148ミリモル、4.5当量)を窒素下で20分間滴加した。混合物を周囲温度で4時間撹拌し、次いで真空下で濃縮して、揮発性物質(未反応塩化オキサリル)を除去して、粗酸塩化物(tert−ブチルジメチル−シリルオキシグリコール酸塩化物)を黄色油状物として得た。
【0211】
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)(400mg、1ミリモル))のDCM/TEA中溶液を室温で調製した。混合物を窒素雰囲気下におき、前記酸塩化物(340mg、1.5ミリモル、1.5当量)を室温でゆっくりと添加した。混合物を周囲温度で17時間撹拌し、その後、LCMS分析により完全に変換されたことが示された。混合物をDCM(50mL)で希釈し、H2O(15mL)で洗浄し、続いて飽和NaHCO3(15mL)及び食塩水溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、油状物−シリル化中間体を得た。シリカゲル上クロマトグラフィーで、酢酸エチル−ヘプタン勾配で溶出して、300mgの精製された生成物を得た。
【0212】
シリル化中間体をTHF(4mL)及び酢酸(0.5mL)中に溶解させた。撹拌混合物を1MのTBAF(1mL、1ミリモル)で処理し、1時間、周囲温度で撹拌した。粗反応混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をヘプタン(5mL)で処理し、一晩、冷たい状態(〜4℃)に保持した。結果として得られた固体をろ過し、ヘプタンで洗浄して、130mg(29%)の化合物15を白色半透明固体として得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.36 −1.51(m, 11H), 2.10 −2.29(m, 2H), 2.35(t, J=5.66 Hz, 1H), 4.21(d, J=5.66 Hz, 2H), 4.37 −4.50(m, 2H), 6.36(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.36(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.65(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0213】
化合物16 6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をDCM/TEA中塩化メトキシアセチルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.43(d, J=14.45 Hz, 7H), 1.43(s, 2H), 2.09 −2.34(m, 2H), 3.46(s, 3H), 4.07(s, 2H), 4.43(q, J=7.19 Hz, 2H), 6.33(dd, J=6.64, 5.27 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.35(dd, J=8.15, 1.61 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.20(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0214】
化合物17 6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
タザロテンをメタノール/水中過ヨウ素酸ナトリウムで酸化して、対応するスルホキシドを得た。カラム精製後、47g(90%)のスルホキシドを得、これを溶媒及びアシル化剤としての無水酢酸でのプメラー転位に付して、所望の生成物(42g)を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.39(s, 4H), 1.41(s, 2H)1.43 −1.49(m, 4H), 2.10(s, 3H), 2.11 −2.18(m, 2H), 4.42(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.20(dd, J=6.69, 5.42 Hz, 1H), 7.09(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.33(dd, J=8.10, 1.37 Hz, 1H), 7.57(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.63(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.27(dd, J=8.15, 2.00 Hz, 1H), 9.19(d, J=1.37 Hz, 1 H)
【0215】
化合物18 6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化ブチリルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.97(t, J=7.42 Hz, 4H), 1.38 −1.50(m, 11H), 1.63 −1.74(m, 3H), 2.15(d, J=6.83 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.33(d, J=15.13 Hz, 1H), 2.34(s, 1H), 4.43(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.23(dd, J=6.49, 5.42 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0216】
化合物19 6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化ラウロイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.88(d, J=13.71 Hz, 2H), 0.88(s, 2H), 1.20 −1.38(m, 4H), 1.26(s, 18H), 1.41(s, 4H), 1.43(s, 2H), 1.44 −1.49(m, 4H), 1.57 −1.73(m, 4H), 2.14(d, J=6.74 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.22 Hz, 1H), 2.31 −2.39(m, 2H), 4.43(q, J=7.11 Hz, 2H), 6.22(dd, J=6.64, 5.22 Hz, 1H), 7.10(d, J=8.15 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.13, 1.73 Hz, 1H), 7.58(dd, J=8.15, 0.83 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.71 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.15, 2.15 Hz, 1H), 9.20(dd, J=2.15, 0.78 Hz, 1H)
【0217】
化合物20 6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化イソブチリルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.74 −0.98(m, 4H), 1.20(d, J=7.03 Hz, 7 H), 1.44(d, J=14.15 Hz, 6H), 1.43(t, J=7.13 Hz, 5H), 2.17(d, J=4.39 Hz, 2H), 2.15(s, 1 H)2.49 −2.66(m, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H)6.16 −6.26(m, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.46 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.65(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0218】
化合物21 6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化リノエオイル(linoeoyll)と室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.76 −0.97(m, 9H), 1.19 −1.39(m, 26H), 1.40 −1.50(m, 15H), 1.67(br. s, 1H), 1.64(d, J=7.32 Hz, 2H), 2.03(br. s, 1H), 2.05(d, J=6.74 Hz, 5H), 2.15(d, J=6.83 Hz, 2H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.35(d, J=14.93 Hz, 2H), 2.35(s, 1H), 2.78(d, J=12.49 Hz, 1H), 2.78(s, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 3H), 5.27 −5.45(m, 6H), 6.23(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H)7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H)
【0219】
化合物22 6−[(2−リンレオリル(linleolyl)4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化リノレノイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.98(t, J=7.52 Hz, 4H), 1.22 −1.38(m, 14H), 1.38 −1.50(m, 13H), 1.66(br. s, 1H), 1.64(d, J=7.22 Hz, 2H), 2.01 −2.22(m, 9H), 2.35(t, J=7.52 Hz, 3H), 2.69 −2.93(m, 6H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 3H), 5.28 −5.45(m, 9H), 6.23(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.56 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H)
【0220】
化合物23 6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中1−メチルピペリジンカルボニルクロリドと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.35 −1.50(m, 11H), 1.70 −1.85(m, 1H), 1.78(dd, J=11.23, 1.46 Hz, 2H), 1.85 −2.06(m, 5H), 2.14(d, J=11.81 Hz, 1H), 2.14(s, 1H), 2.21 −2.36(m, 1H), 2.25(s, 4H), 2.79(d, J=11.23 Hz, 2H), 4.42(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.15 −6.26(m, 1H), 7.09(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.33(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.57(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.63(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.27(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.19(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0221】
化合物24 6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、塩基としてTEAを含むDCM中、塩化プロピオニルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.17(t, J=7.56 Hz, 4H), 1.34 −1.51(m, 11H), 2.15(d, J=6.74 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.38(q, J=7.58 Hz, 2H), 4.43(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.23(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.20, 2.15 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0222】
化合物25 6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテンを、EDC及びHOBtを用いてサリチル酸と反応させた。反応により、所望の化合物を、それ自体と結合した不純物とともに得た。カラムクロマトグラフィーにより所望の生成物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.40(t, J=7.13 Hz, 7H), 1.47(s, 7H), 1.52(s, 8H), 2.29(d, J=1.56 Hz, 2H), 2.31(d, J=2.44 Hz, 2H), 4.41(q, J=7.06 Hz, 4H), 6.47(t, J=5.51 Hz, 2H), 6.79 −6.92(m, 2H), 6.98(d, J=8.30 Hz, 2H), 7.10(d, J=8.10 Hz, 2H), 7.34(dd, J=8.10, 1.37 Hz, 2H), 7.46(s, 2H), 7.57(d, J=8.10 Hz, 2H), 7.66(d, J=1.17 Hz, 2H), 7.76(dd, J=7.96, 1.32 Hz, 2H), 8.26(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 2H), 9.18(d, J=1.37 Hz, 2H), 10.53(s, 1 H)
【0223】
化合物26 6−[(2−(4−テトラヒドロピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をテトラヒドロピラン−4−カルボニルクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.31 −1.50(m, 11H), 1.69 −1.92(m, 5H), 2.04 −2.26(m, 2H), 2.55(t, J=10.54 Hz, 1H), 3.32 −3.48(m, 2H), 3.94(dd, J=11.47, 2.88 Hz, 2H), 4.41(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.14 −6.28(m, 1H), 7.08(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.32(dd, J=8.10, 1.46 Hz, 1H), 7.56(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.62(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.26(dd, J=8.20, 2.05 Hz, 1H), 9.18(d, J=1.37 Hz, 1H)
【0224】
化合物27 6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をモノメチルアジポイルクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.40(d, J=16.40 Hz, 8H), 1.40(s, 3H), 1.66(d, J=14.06 Hz, 1H), 1.66(t, J=3.42 Hz, 3H), 2.05 −2.21(m, 2H), 2.25 −2.42(m, 4H), 3.64(s, 3H), 4.40(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.19(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.07(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.31(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.55(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.61(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.26(dd, J=8.10, 2.15 Hz, 1H), 9.17(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0225】
化合物28 6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をモノメチルアゼレートクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.32(br. s., 11H), 1.39 −1.50(m, 11H), 1.53 −1.73(m, 7H), 2.15(d, J=6.74 Hz, 2H), 2.17(d, J=5.17 Hz, 1H), 2.26 −2.46(m, 7H), 3.58 −3.77(m, 5H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.22(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0226】
化合物29 6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をFmoc保護されたアミノ酸塩化物(バリンから)と反応させて、Fmoc保護されたアミノエステルを得た。THF中希ピペリジンを用いて室温で以下のようにしてFmoc脱保護を促進した:
【0227】
THF中20%ピペリジン(5当量)を、Fmoc保護されたアミノエステルのTHF中溶液に撹拌しながら添加した。反応混合物を5時間攪拌し、LC/MSにより反応の進行を定期的にモニタリングした。反応完了時に、反応混合物を水中に注ぎ、EtOAcで抽出した(2×20mLアリコート)。有機層を合し、食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮し、そして12.0gのカートリッジを用いたCompanion精製システムで精製した。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.92(t, J=6.78 Hz, 3H), 0.99(d, J=6.74 Hz, 3H), 1.35 −1.59(m, 12H), 1.97 −2.09(m, 1H), 2.09 −2.26(m, 2H), 3.31(d, J=5.17 Hz, 1H), 4.43(q, J=7.06 Hz, 2H), 6.20 −6.34(m, 1H), 7.10(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 1H), 9.20(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0228】
表11
【表12】
【0229】
表12 タザロテン誘導体で処理されたRHE培養から得られた遺伝子発現データの定性的まとめ
【表13】
【0230】
本明細書中で記載される特許及び特許出願を包含するが、これらに限定されない全ての刊行物は、本明細書中で、それぞれの刊行物が具体的かつ個別に記載されて、完全に記載されているかのように、参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0231】
本発明をこのように記載したが、本発明は多くの方法で修飾または改変できることは明らかであろう。そのような修飾及び改変は、本発明の精神及び範囲から逸脱しないとされ、そのような修飾及び改変は全て以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、タザロテンの誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
タザロテンは:6−[2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)−エチニルニコチン酸エチルという化学名を有する。タザロテンは、ほとんどの生体系において急速なエステル分解によりその活性形態であるタザロテン酸に変わる、レチノイドプロドラッグである。タザロテン酸は、レチノイン酸受容体(RAR)ファミリーの3つのメンバー;RARα、RARβ及びRARγ全てと結合するが、RARβ及びRARγに関しては相対的選択性を有し、遺伝子発現を修飾することができる。
【0003】
Allergan, Inc.は、ニキビ及び乾癬の治療用TAZORAC(登録商標)(タザロテン)クリーム及びTAZORAC(登録商標)(タザロテン)ゲルを市販している。
【0004】
レチノイド又は抗生物質を過酸化ベンゾイルと組み合わせて使用する皮膚疾患の治療は、皮膚科医にとっては非常に興味深いものである。しかし、レチノイド及び抗生物質は過酸化ベンゾイルの存在下で容易に分解することが多いので、この併用は薬剤師にとって課題となっている。したがって、活性成分を多くの場合、患者に投与する直前まで混合しないか、又は同じ日の異なる時間に投与する。別法として、レチノイド又は抗生物質は、過酸化ベンゾイルとの反応から(例えば、カプセル化により)保護することができるか、又は活性成分をデュアルチャンバーディスペンサーの別のチャンバー中に収容することができる。
【0005】
したがって、必要な便宜、有効性及び貯蔵寿命を提供する活性成分の組み合わせを含む改善された皮膚科用組成物が必要とされる。具体的には、医薬組成物中で過酸化ベンゾイルと組み合わせることができる安定なレチノイドの同定が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚に浸透し、レチノイド様活性を示す新規タザロテン誘導体に関する。
【0007】
一実施形態によれば、本発明は、一般式(I)
【化1】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0008】
別の実施形態によれば、本発明は、式(II):
【化2】
(式中、
R3は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0009】
別の実施形態によれば、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、対象における皮膚疾患を治療する方法であって、治療有効量の式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでなる組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療用医薬を調製するための使用に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、式(I)又は(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療のための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】DUAC(登録商標)ゲル及びTAZORAC(登録商標)クリームを混合する場合に、タザロテンが分解されて、その分解生成物になることを示す。DUACゲル及びTAZORACクリームの「新しい」試料を混合し、8時間にわたって分解を観察した。
【図2A】安定性試料中のタザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図2B】安定性試料中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図3A】塗布後2時間の表皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図3B】塗布後2時間の真皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図4A】塗布後6時間の表皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図4B】塗布後6時間の真皮中のタザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテン酸の量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図5A】塗布後2時間の表皮及び真皮中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図5B】塗布後6時間の表皮及び真皮中の安息香酸タザロテンの量を示す(少なくとも4回反復及び4ドナー(n≧17)±SEM)。
【図6】DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物からの皮膚浸透を示す。データポイントは、4人のドナーからの少なくとも4反復からのタザロテンスルホキシドの累積量を表す(n≧18)±SEM。
【図7】種々のレチノイドへの暴露後のSkinEthic RHE培養からの炎症誘発性サイトカイン(IL−1α及びIL−8)放出を示す。各バーは、3連の培養物の平均を表す(±Stdev)。
【図8】種々のレチノイドへの暴露後のA431培養からのPMAによって誘発されたIL−6放出を示す。各バーは、3連の培養物の平均を表す(±Stdev)。
【図9】ラット血漿における室温でのタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの安定性を示す。
【図10】ヒト血漿における室温でのタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの安定性を示す。
【図11】Shimadzu HPLC−Applied Biosystems 4000 QTRAPで測定した安息香酸タザロテンのピークを示す。
【図12】Shimadzu HPLC−Applied Biosystems 4000 QTRAPで測定したヒドロキシタザロテン酸のピークを示す。
【図13】ヒドロキシタザロテン酸の質量スペクトルフラグメンテーションを示す。
【図14】タザロテン酸スルホキシドの質量スペクトルフラグメンテーションを示す。
【図15】種々のレチノイドの存在下で放出されたIL−1αの量を示す。
【図16】種々のレチノイドの存在下で放出されたIL−8の量を示す。
【図17】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわちK4の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す(標識化合物1〜29)。
【図18】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K10の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図19】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K13の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図20】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、K19の遺伝子発現レベルを測定することによって示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図21】安息香酸タザロテンの種々の代謝物及び類似体の生物学的(レチノイド)活性を、すなわち、フィラグリンの遺伝子発現レベルを測定することにより示す。各代謝物及び類似体を表11に示す。
【図22】タザロテンの提案された代謝を示す。
【図23】安息香酸タザロテンの提案された代謝を示す。
【図24A】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【図24B】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【図24C】タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸に対して、過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの増強された安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、一般式(I):
【化3】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
好適には、nは、0又は1の値を有する整数である。一実施形態では、nは1である。別の実施形態では、nは0である。一実施形態では、nは0であり、R1は水素である。
【0016】
好適には、R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0017】
好適には、R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0018】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって、1個以上、好ましくは1〜4個、独立して、ハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、たとえばメトキシ若しくはエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ、ハロ置換C1〜6アルキル、たとえばCF2CF2H若しくはCF3;C1〜6アルキル、たとえば、メチル、エチル、イソプロピルなど;−C(O)OR6、又は−OC(O)R6で置換されている。一実施形態では、任意の置換基は、ヒドロキシ、NR4R5、又はヒドロキシ置換C1〜6アルキル、又は−C(O)OR6から選択される。
【0019】
好適には、R4及びR5は、独立して、水素又はC1〜6アルキルから選択される。一実施形態では、R4及びR5はどちらも水素である。
【0020】
好適には、R6は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R6はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。
【0021】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよいアリール基である場合、このアリールは、単環(例えば、フェニル)又は複数の縮合(融合)環、例えばナフチル、インデン又はアンスリルを有する5〜20個の炭素原子の芳香族環状炭化水素基である。一実施形態では、アリール基は、置換されていてもよいフェニル、ナフチル又はインデンである。別の実施形態では、R1アリール基は、置換されていてもよいフェニル又はナフチルである。別の実施形態では、R1は置換されていてもよいフェニルである。別の実施形態では、R1はフェニル又はヒドロキシ置換フェニルである。
【0022】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール環は、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式5〜7員不飽和芳香族炭化水素環である。好適な環としては、これらに限定されないが、フリル、ピラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、又はウラシルが挙げられる。ヘテロアリール基は、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む縮合芳香族環も含み得る。縮合環のそれぞれは、5又は6個の環原子を含む。縮合芳香族環の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、アザインドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、プリニル又はナフタラジニルが挙げられる。
【0023】
一実施形態では、R1が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、ヘテロアリールは、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピリジル又はピラニル環である。別の実施形態では、ヘテロアリールは、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピリジルである。別の実施形態では、R1は、置換されていてもよいピリド−3−イルである。
【0024】
好適には、R1又はR2が置換されていてもよい複素環基である場合、複素環は、窒素、酸素、硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子又は酸化硫黄部分、例えばS(O)mを含む単環式3〜7員飽和又は非芳香族、不飽和炭化水素環であり、mは0又は1若しくは2の値を有する整数である。複素環基は、縮合環、飽和又は部分不飽和も含み得、環の1つは芳香族又はヘテロ芳香族であり得る。縮合環のそれぞれは、4〜7個の環原子を有し得る。ヘテロシクリル基の好適な例としては、これらに限定されるものではないが、前記定義のヘテロアリール部分の飽和又は部分飽和形、例えばテトラヒドロピロール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン(硫黄部分の酸化形を包含する)、アゼピン、ジアゼピン、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、2−オキソ−1−ピロリジニル、3−オキソ−1−ピロリジニル、1,3−ベンズジオキソール−5−イル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ及びチオモルホリノ(硫黄部分の酸化形を包含する)が挙げられる。
【0025】
好適には、R1が置換されていてもよい複素環基である場合、この複素環は、置換されていてもよいピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル又はテトラヒドロフラニル環である。一実施形態では、複素環は、置換されていてもよい2−、3−又は4−ピペリジニルである。一実施形態では、2−、3−又は4−ピペリジニルはC1〜6アルキルにより置換されている。一実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。別の実施形態では、R1は、4−メチルピペリジン−4−イル基である。
【0026】
一実施形態では、R1は、置換されていてもよいC1〜18アルキルである。一実施形態では、R1は、場合によって独立して1個以上、ヒドロキシ、NR4R5、C1〜6アルコキシ、又は−C(O)OR6により置換されたC1〜18アルキルである。別の実施形態では、C1〜18アルキルは、置換されていない。別の実施形態では、R1は、C1〜3アルキル又はC15アルキルである。別の実施形態では、R1はC1〜3アルキルである。別の実施形態では、C1〜18アルキルは、−C(O)OR6により置換されている。別の実施形態では、R6はC1〜6アルキル、好ましくはメチルである。
【0027】
一実施形態では、R1は置換されていてもよいC2〜18アルケニルである。
【0028】
別の実施形態では、R1は置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環基である。
【0029】
別の実施形態では、R1は、置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニルから選択される。さらなる実施形態では、R1は、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニル基から選択される。
【0030】
R2が、置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって1個以上、好ましくは1〜4個、独立してハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、例えばメトキシ若しくはエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル、例えばCF2CF2H若しくはCF3;C1〜6アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピルなど;−C(O)OR6又は−OC(O)R6により置換されている。
【0031】
一実施形態では、R2は、水素又は置換されていてもよいC1〜18アルキルである。一実施形態では、R2は、水素又は置換されていてもよいC1〜6アルキルである。別の実施形態では、R2は水素である。別の実施形態では、R2はC1〜6アルキルである。さらなる実施形態によれば、R2はエチルである。
【0032】
一実施形態によれば、nは1であり、R1はフェニルであり、R2は水素又はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、nは1であり、R1はフェニルであり、R2は水素である。この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸として知られ、本明細書中では安息香酸タザロテン酸とも記載される。
【0033】
別の実施形態では、nは1であり、R1はフェニルであり、R2はC1〜6アルキルである。一実施形態では、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルとして知られ、そして本明細書中では安息香酸タザロテンと記載される。
【0034】
別の実施形態では、化合物は(S)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルである。別の実施形態では、化合物は(R)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステルである。
【0035】
さらなる実施形態によれば、nは0であり、R1は水素であり、R2は水素又はC1〜6アルキルである。一実施形態では、R2は水素である。この化合物は、6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸であり、そして本明細書中ではヒドロキシタザロテン酸とも記載される。
【0036】
別の実施形態では、nは0であり、R1は水素であり、R2はC1〜6アルキルである。さらなる実施形態によれば、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチルであり、そして本明細書中ではヒドロキシタザロテンとも記載される。
【0037】
本発明の化合物は、医薬的に許容される塩の形態であってよく、及び/又は医薬的に許容される塩として投与することができる。好適な塩に関する説明については、Berge et al., J. Pharm. Sci.、1977, 66, 1−19を参照。
【0038】
典型的には、医薬的に許容される塩は、必要に応じて所望の酸又は塩基を用いることにより、容易に調製することができる。塩は溶液から沈殿する可能性があり、ろ過により集めることができるか、又は溶媒の蒸発により回収することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、式(I)の化合物は:
(i)6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(ii)(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(iii)(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、
(iv)6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(v)6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、
(vi)6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(vii)6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(viii)6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、
(ix)6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(x)6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xi)6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xii)6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xiii)6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xiv)6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xv)6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xvi)6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xvii)6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、
(xviii)6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン3−カルボン酸エチル、及び
(xix)6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステルである化合物;又はそれらの医薬的に許容される塩から選択される。
【0040】
好適には、式(I)の化合物は、6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0041】
好適には、式(I)の化合物は、(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0042】
好適には、式(I)の化合物は、(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0043】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0044】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0045】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0046】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0047】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0048】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0049】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0050】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0051】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0052】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0053】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0054】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0055】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0056】
好適には、式(I)の化合物は、6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0057】
好適には、式(I)の化合物は、6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル、又はその医薬的に許容される塩である。
【0058】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物は:
6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸;
6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;
6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;及び
6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;又はその医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0059】
別の態様では、式:
【化4】
(式中、
R3は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)の化合物;又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0060】
R3が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合、この基は、場合によって1個以上、好ましくは1〜4個、独立してハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ、例えばメトキシ又はエトキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル、例えばCF2CF2H又はCF3;C1〜6アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル等;−C(O)OR6又は−OC(O)R6により置換されている。
【0061】
好適には、R4及びR5は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R4及びR5はどちらも水素である。
【0062】
好適には、R6は、水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される。一実施形態では、R6はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはメチルである。
【0063】
R3が置換されていてもよいアリール基である場合、これは本明細書中で式(I)においてR1又はR2について前記定義の通りである。
【0064】
R3が置換されていてもよいヘテロアリール基である場合、これは本明細書中の式(I)においてR1又はR2について前記定義のとおりである。
【0065】
R3が置換されていてもよい複素環基である場合、これは本明細書中の式(I)においてR1又はR2について前記定義のとおりである。
【0066】
一実施形態では、R3は水素又は置換されていてもよいC1〜6アルキルである。
【0067】
一実施形態では、R3は水素である。この化合物は、6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸であり、本明細書中ではケトタザロテン酸としても記載されている。
【0068】
別の実施形態によれば、R3はC1〜6アルキルである。別の実施形態では、C1〜6アルキルはエチルである。この化合物は、6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルであり、本明細書中ではケトタザロテンとしても記載されている。
【0069】
安息香酸タザロテン
特定の実施形態によると、この化合物は、6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル(すなわち安息香酸タザロテン)である。安息香酸タザロテンは、タザロテンと過酸化ベンゾイルとを組み合わせることにより形成される。この新規化合物は皮膚に浸透し、レチノイド様活性を有する。S及びRエナンチオマーを単離し、特性化し、本明細書中に記載した。さらに記載されているように、安息香酸タザロテンの様々な類似体及び代謝物も単離し、合成し、特性化した。
【0070】
タザロテンの活性代謝物
タザロテンの公知代謝物、すなわちタザロテンスルホキシド及びタザロテン酸は皮膚に浸透することが示されている。しかし、タザロテンの他の公知代謝物、すなわち6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル(タザロテンスルホン)、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(タザロテン酸スルホキシド)、及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(タザロテン酸スルホン)(これらは、以前はレチノイド活性が低いか又はないと考えられていた)は、レチノイド様活性を発揮することが判明した(図22及び実施例3)。
【0071】
したがって、本発明は、対象における皮膚疾患を治療する方法であって、治療有効量の、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる方法にも関する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩の、皮膚疾患の治療用医薬の調製における使用に関する。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸、又はその医薬的に許容される塩からなる群から選択される化合物の、皮膚疾患の治療のための使用に関する。
【0074】
さらに別の実施形態では、6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル、6−((4,4−ジメチル−1−オキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸及び6−((4,4−ジメチル−1,1−ジオキシドチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸からなる群から選択される化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる医薬組成物に関する。
【0075】
医薬組成物
本発明の一実施形態によれば、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、及び1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0076】
一実施形態では、医薬組成物は第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる。
【0077】
一実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は、過酸化ベンゾイル、抗生物質、コルチコステロイド及びビタミンD類似体からなる群から選択される。
【0078】
一実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は過酸化ベンゾイルである。
【0079】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤は、抗生物質、たとえばクリンダマイシン又はその医薬的に許容される塩(たとえば、リン酸クリンダマイシン)である。
【0080】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤はコルチコステロイドである。好適なコルチコステロイドとしては、これらに限定されるものではないが、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルクロロロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、フルランドレノリド、フルランドレノロン、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、塩酸プラモキシン、酢酸プレドニゾン、吉草酸プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニカルベート、及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0081】
別の実施形態では、第2の医学的に活性な薬剤はビタミンD類似体である。好適なビタミンD類似体としては、これらに限定されるものではないが、カルシジオール、カルシトリオール、カルシポトリエン、パリカルシトール、22−オキサコルシトリオール、ジヒドロタキステロール、カルシフェロール及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。
【0082】
一実施形態では、本発明は、式(I)若しくは(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩及び第2の活性剤を含んでなる医薬組成物を提供し、ここで、式(I)又は(II)の化合物の安定性は、タザロテン及び第2の活性剤を含んでなる医薬組成物中のタザロテンの安定性よりも優れている。一実施形態では、式(I)又は(II)の化合物は、安息香酸タザロテン又はニコチン酸タザロテンである。特定の実施形態によると、第2の活性剤は過酸化ベンゾイルである。好適には、組成物中に存在する量は、皮膚疾患の治療に関して治療上有効な量である。
【0083】
本発明の化合物は、医薬組成物として処方することができ、経口的、局所的、経皮的、非経口的、注射によるか、肺若しくは鼻送達によるか、舌下、直腸または膣投与することができる。特定の実施形態によると、医薬組成物は、局所投与に適応させる。「注射により投与される」という用語は、静脈内、関節内、筋肉内(たとえば、活性化合物がデポーから血液中にゆっくりと放出され、そこから標的器官へと運ばれる、デポー注射による)、腹腔内、皮内、皮下、及びくも膜下腔内注射、並びに注入技術を包含する。皮膚投与は、局所又は経皮投与を包含し得る。経皮投与は、当該技術分野で一般的に知られているような、特に活性剤の経皮送達用に設計された、好適なパッチ、溶液、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、粉末、フォーム、クリーム、ローション又はゲルにより、場合によって特定の浸透促進物質の存在下で達成することができる。同様に、局所投与は、溶液、エマルジョン、懸濁液、軟膏、ペースト、粉末、フォーム、クリーム、ローション又はゲルにより達成することができる。特定の実施形態では、局所投与は、エアゾルフォームで達成される。
【0084】
医薬的に許容される賦形剤の例としては、研磨剤、酸性化剤、接着剤、吸着剤、アルカリ化剤、抗菌剤、固化防止剤(anticaking agent)、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、充填剤(bulking agent)、キレート剤、コーティング剤、着色剤、錯化剤、制御放出剤、冷却剤、洗剤、希釈剤、分散剤、溶解促進剤、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、フィルム形成剤、ゲル化剤、滑剤、保湿剤、潤滑剤、不透明化剤、浸透促進剤、pH調節剤、顔料、可塑剤、防腐剤、プロペラント、金属イオン封鎖剤、可溶化剤、溶媒、界面活性剤、懸濁化剤、増粘剤、粘度増加剤及び湿潤剤が挙げられる。
【0085】
医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法を用いて、たとえば即時放出、持続放出、遅延放出、拍動性放出又は二段階放出として処方することができる。
【0086】
医薬組成物中の活性剤の量は、これらに限定されるものではないが、活性剤の活性、治療される状態、医薬組成物の性質、投与様式並びに患者年齢、体重、全般的な健康状態及び性別をはじめとする種々の因子によって変わるであろう。
【0087】
使用方法
本発明の一実施形態によれば、本発明は、皮膚疾患を治療する方法に関する。当該方法は、治療有効量の式(I)若しくは(II)の化合物、又はその医薬的に許容される塩を、1以上の医薬的に許容される賦形剤とともに含んでなる医薬組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含んでなる。
【0088】
一実施形態によると、皮膚疾患は、ニキビ、乾癬、脂漏症、魚鱗癬又は角化症である。特定の実施形態によると、皮膚疾患はニキビ又は乾癬である。
【0089】
定義
【0090】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、本明細書中で用いられる場合、ハロゲン、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0091】
「アルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、鎖中に約1〜約18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。好ましい実施形態は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基である。本明細書中で定義されるアルキルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0092】
「不飽和」という用語は、炭化水素鎖の炭素原子間に1以上の二重又は三重結合が存在することを指す。
【0093】
「アルケニル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、直鎖又は分岐鎖いずれかの構造で、鎖に沿って任意の位置に存在し得る少なくとも1つ炭素・炭素二重結合を有する指定された数の炭素原子の炭化水素鎖を意味し、たとえばエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ビニル、アルキル又は2−ブテニルである。本明細書中で定義されるアルケニルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0094】
「アルキニル」という用語は、本明細書で用いられる場合、直鎖又は分岐鎖いずれかの構造で、鎖に沿って任意の位置に存在し得る少なくとも1つ炭素・炭素三重結合を有する指定された数の炭素原子の炭化水素鎖を意味する。アルキニルの一例はアセチレンである。本明細書中で定義されるアルキニルは、指定された数の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0095】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、指定された数の炭素原子を含む非芳香族炭化水素環などの環状ラジカルを指す。たとえば、C3〜7シクロアルキルとは、少なくとも3個で、最大7個までの環炭素原子を含む非芳香族環を意味する。本明細書中で用いられる「シクロアルキル」の代表例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0096】
「アリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、単環(たとえば、フェニル)又は複数の縮合(融合)環(たとえば、ナフチル又はアンスリル)を有する5〜20個の炭素原子の芳香族環状炭化水素基を意味する。好ましいアリール基としてはフェニル及びナフチルが挙げられる。
【0097】
「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール部分」、及び「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環式5〜7員不飽和芳香族炭化水素環を意味する。ヘテロアリール環の例としては、これらに限定されるものではないが、フリル、ピラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、オキサチアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、及びウラシルが挙げられる。「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール部分」、及び「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでなる縮合芳香族環も指す。縮合環のそれぞれは、5又は6個の環原子を含み得る。縮合芳香族環の例としては、これらに限定されるものではないが、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、アザインドリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、プリニル及びフタラジニルが挙げられる。
【0098】
「複素環」、「複素環部分」及び「ヘテロシクリル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、窒素、酸素、硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子又は酸化硫黄部分、たとえばS(O)mを含む単環式3〜7員飽和又は非芳香族、不飽和炭化水素環を意味し、mは0又は1若しくは2の値を有する整数である。「複素環」、「複素環部分」、及び「ヘテロシクリル」という用語は、縮合環(飽和又は部分不飽和)も指し、この場合、環のうちの1つは芳香族、又はヘテロ芳香族であってよい。縮合環のそれぞれは、4〜7個の環原子を有し得る。ヘテロシクリル基の例としては、これらに限定されるものではないが、前記定義のヘテロアリール部分の飽和又は部分飽和形、たとえば、テトラヒドロピロール、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン(硫黄部分の酸化形を包含する)、アゼピン、ジアゼピン、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、2−オキソ−1−ピロリジニル、3−オキソ−1−ピロリジニル、1,3−ベンズジオキソール−5−イル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、インドリニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリノ及びチオモルホリノ(硫黄部分の酸化形を包含する)が挙げられる。
【0099】
「アリールアルキル」又は「ヘテロアリールアルキル」又は「複素環アルキル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、特に指定がない限り、アリール、ヘテロアリール又は複素環部分(前記定義のとおり)に結合したC1−4アルキル(これも前記定義のとおり)を意味する。
【0100】
「ヘテロ原子」とは、窒素、硫黄又は酸素原子を指し、この場合、窒素及び硫黄原子は場合によって酸化されていてもよい。
【0101】
「有効量」又は「〜に有効な量」又は医学的に活性な薬剤若しくは成分の「治療有効量」という表現は、本明細書中で用いられる場合、投与により治療効果を有するために十分な医学的に活性な薬剤の量を指す。医学的に活性な薬剤の有効量は、治療される特定の状態(複数可)、状態の重症度、治療期間、及び使用される組成物の具体的な成分によって変わるであろう。
【0102】
「投与する」及び「投与」という用語は、本明細書中で用いられる場合、適切な医療行為において、治療効果をもたらすような方法で医薬組成物を対象に送達する任意の方法を意味する。
【0103】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書中では、プロドラッグが対象に投与された場合、インビボで活性剤を放出する化合物を意味するために用いられる。活性剤中に存在する1以上の官能基がインビボで切断されて活性化合物を放出し得るような方法で官能基を修飾することにより、活性剤のプロドラッグを調製する。
【0104】
皮膚疾患の「治療」又は皮膚疾患を「治療する」という用語は、少なくとも1つのその症状の緩和、その重症度の軽減、又はその進行の遅延、予防若しくは阻害を包含する。治療とは、必ずしも障害が完全に治癒することを意味するわけではない。本明細書中で有用な組成物は、障害の重症度を軽減するか、それに関連する症状の重症度を軽減するか、患者のクオリティー・オブ・ライフを改善するか、又は障害の開始を遅延、防止若しくは阻害すれば十分である。
【0105】
「医薬的に許容される塩」という用語は、医薬的に許容され、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を指す。そのような塩としては:(1)たとえば、酢酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリコール酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、リン酸、プロピオン酸、ソルビン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、天然及び合成由来のアミノ酸、並びにそれらの混合物などの酸と形成される酸付加塩;又は(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、(i)金属イオン、たとえばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンにより置換されているか;又は(ii)たとえば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン及びN−メチルグルカミンなどの有機塩基をプロトン化するかのいずれかである場合に形成される塩が挙げられる。
【0106】
本明細書中で記載される任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲又は比の範囲は、特に記載しない限り、その範囲またはその部分内にある濃度、パーセンテージ、又は任意の整数の比、たとえば整数の1/10及び1/100を包含すると理解されるべきである。
【0107】
「a」及び「an」という用語は、本明細書中で用いられる場合、「1以上の」記載された成分を指すと理解すべきである。単数の使用は、特に別段の記載がない限り、複数を包含することは当業者には明かであろう。したがって、「a」、「an」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書中では交換可能に使用される。
【0108】
本明細書全体にわたって、種々の実施形態の記載は、「含んでなる」という語を使用するが、いくつかの具体例では、実施形態は別法として「基本的に〜からなる」または「〜からなる」という語を使用して記載することができる。
【0109】
量、パーセンテージ又は割合、及び本明細書及び特許請求の範囲で使用される他の数値を表す全ての数は、あらゆる場合において、[約]という語で修飾されると理解されるべきである。
【0110】
本明細書中で用いられる場合、「場合によって」という用語は、実質的に記載されている事象(複数可)が起こり得る又は起こり得ないことを意味し、起こる事象と起こらない事象との両方を含む。
【0111】
本明細書中で用いられる場合、「置換された」という用語は、指定された置換基(複数可)での置換を指し、複数の置換度が可能である。
【0112】
立体異性体に関して、本明細書中の式(I)及び(II)の化合物は1以上の不斉炭素原子を有し得、かつラセミ化合物、ラセミ混合物及び個々のエナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。そのような異性体形態はすべて(それらの混合物を包含する)本発明内に含まれる。
【0113】
シス(E)及びトランス(Z)異性も存在し得る。本発明は、本発明の化合物の個々の立体異性体及び必要に応じてそれらの個々の互変異性型をそれらの混合物とともに含む。
【0114】
ジアステレオ異性体又はシス及びトランス異性体の分離は、通常の技術により、たとえば分別結晶、クロマトグラフィー又はHPLCにより達成することができる。薬剤の立体異性体混合物は、必要に応じて、対応する光学的に純粋な中間体から、又は好適なキラル支持体を用いた対応するラセミ化合物のHPLC等の分割によるか、又は対応するラセミ化合物と好適な光学的に活性な酸若しくは塩基との反応により形成されるジアステレオ異性体塩の分別結晶により、調製することもできる。
【0115】
本明細書中で用いられる他の用語は、当該技術分野で周知のそれらの意味により定義されることが意図される。
【実施例】
【0116】
実施例1 過酸化ベンゾイルの存在下でのタザロテンの分解
DUAC(登録商標)ゲル(Stiefel Laboratories, Inc.により販売されている1%のクリンダマイシン及び5%の過酸化ベンゾイル)及びTAZORAC(登録商標)クリーム(Allergan, Inc.により販売されている0.1%タザロテン)は顔のニキビを治療するために有効に使用されている。しかし、これらの局所治療は併用に関しては承認されていない。タザロテンが過酸化ベンゾイルによる酸化的分解を受けやすいかどうかを調べるために、インビトロの実験室での調査を行い、この場合、DUACゲルとTAZORACクリームとの混合物を調製した。
【0117】
等量のDUACゲル及びTAZORACクリームをとり、スパチュラを用い、好適な容器中で室温にてこれらを十分に混合して均一な混合物を得ることによって、試料を調製した。最初の試料を直ちにHPLCにより分析した。他の試料を35℃のオーブン中に入れ、1、2、4、6及び8時間後に分析のために取り出した。調査の過程で生成物を蒸発させた。
【0118】
図1及び表1は、4時間後にタザロテンの約22%が失われたことを示す。主な分解生成物はタザロテンスルホキシド(4時間後に〜16%)であった。従来知られていない誘導体、すなわち安息香酸タザロテンも同定され、これはクロマトグラフィーによりタザロテンの後に溶出し、4時間後で〜6.3重量%に相当した。
【0119】
DUACゲル及びTAZORACクリームの「老化」試料を使用した場合、同様の結果が得られた(表2)。タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンは、DUACゲル中の過酸化ベンゾイルとTAZORACクリーム中のタザロテンとの反応から生じる酸化的反応生成物であると考えられる。
【0120】
表1 DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物のHPLC分析(「新しい」試料を使用)
【表1】
【0121】
表2 DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物のHPLC分析(「老化」試料を使用)
【表2】
【0122】
実施例2 タザロテン及び代謝物のさらなる研究
インビトロ研究を実施して、DUACゲル及びTAZORACクリームの混合物をヒト皮膚に塗布した後のタザロテン分解生成物(degradant)の形成を評価した。
【0123】
等量のDUACゲル及びTAZORACクリームをガラスバイアル中に分配し、約3分間、金属製スパチュラを用いて混合して、確実に均一に混合した。European DUACゲル及びUS DUACゲルの試料を別個の実験で使用した。European DUACゲルはパラベン防腐剤を含まないので、生成物は異なる。試験混合物を次いで分層皮膚(〜0.25mm)の表面に15.6mg/cm2の用量で塗布し、ポジティブディスプレイスメントピペット(positive displacement pipette)を用いて均一に広げた。
【0124】
2及び6時間後、皮膚試料を洗浄し、テープを2回はがし、次いでヒートブロックを用いて表皮を真皮からはがした。皮膚試料を次いで一晩4℃にてアセトニトリルで抽出した。タザロテン及びその分解生成物の表皮、真皮及び表面洗浄液内の分布を50pg/mLのLOQでLC/MS/MSにより定量化した。実験は黄色光条件下で実施した。比較のために、DUACゲルとTAZORACクリームとの混合物も調製し、安定性試験のために0、2及び6時間の時点で保持した。
【0125】
図2Aに示すように、安定性試料中のDUACゲルとTAZORACクリームとの混合物は、タザロテンスルホキシドの形成をもたらした。タザロテンスルホキシド分解生成物の量は、2時間の時点から6時間の時点までに2倍になった。図2Bに示すように、安息香酸タザロテンも形成された。この場合でも、2時間の時点に比べて、6時間の時点で存在する安息香酸タザロテンの量が有意に増加した。
【0126】
研究により、DUAC/TAZORAC混合物を皮膚に塗布した2時間後に、タザロテンスルホキシドが表皮及び真皮で確認されたこともわかる(図3A及び3B)。塗布の6時間後、タザロテンが引き続き失われ、結果としてタザロテンスルホキシドが形成された(図4A及び4B)。
【0127】
安息香酸タザロテンは、プラセボを含むすべての試料で検出可能であった(図5A及び5B)。プラセボ試料中に安息香酸タザロテンが存在することは、内在性安息香酸が存在する可能性があることを示唆する。
【0128】
図6で示されるように、タザロテン及び安息香酸タザロテンはアッセイの受容培地(receiving medium)中で検出できなかった(すなわち、皮膚を通過しなかった)が、タザロテンスルホキシドは受容培地中で検出された。
【0129】
タザロテン酸は、これらの実験条件下では検出されなかった。
【0130】
実施例3 タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物のレチノイド活性
タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物(タザロテン酸、タザロテンスルホン、タザロテン酸スルホン及びタザロテン酸スルホキシド)のレチノイド活性を評価するための研究を実施した。
【0131】
SkinEthic RHE培養物を、1.0mL/ウェルの増殖培地を含む6ウェルプレート中に移した。培養物を37℃で平衡化し、培地を毎日替えた。培養物を次いで、3.5mLの増殖培地を含む60mmのペトリ皿中に入れた。表3に示す試験品の6μlアリコートを2連の培養物に加えた。培養物を37℃で72時間インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、増殖培地を集め、−20℃で保存した。組織を半分に切断し、片方を組織学のために10%のNBF中に入れ、もう一方の半分はRNAlater(商標)溶液(Ambion)中に入れた。以下の分析を実施した:a)IL−1α及びIL−8活性アッセイ;b)HandE染色;c)K10、K19及びフィラグリンに関する免疫組織化学;並びにd)K10、K19及びフィラグリン発現を定量化するためのqRT−PCR。
【0132】
表3
【表3】
【0133】
本研究は、インターロイキン−1α(IL−1α)(炎症誘発性サイトカイン)活性が、タザロテン、安息香酸タザロテ又はタザロテン代謝物で処理した培養物においては、未処理及びビヒクル対照と比較して、わずかしか増大しないことを示した(図7及び15)。しかし、IL−1α活性は、TAZORACクリームで処理された培養物において有意に増大し、Retin−A Micro(登録商標)トレチノインゲルで処理されたものではそれほど増大せず、このことは、処方賦形剤がレチノイドの刺激可能性に寄与し得ることを示唆する。さらに、インターロイキン−8(IL−8)(レチノイドに対して特異的な炎症誘発性サイトカイン)は、未処理及びビヒクル処理対象と比較して、レチノイドで処理されたすべての培養物において有意に増大し、このことは、タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物がレチノイド活性を有することを示唆する(図7及び16)。
【0134】
TAZORACクリーム又はRetin−A Microゲルで処理された培養物の組織学的プロフィールは予想通りであった:すなわち、未処理対照と比較して、ケラトヒアリン顆粒(HandE)が減少し、基底上層におけるK10発現が減少し、かつすべての生細胞層においてK19発現が増大した。タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物で処理された培養物についての組織学的プロフィールは、TAZORACクリーム及びRetin−A Microゲルのものと類似し、それらがレチノイド活性を有するというさらなる証拠を提供した。
【0135】
組織学的プロフィール研究にしたがって、種々のレチノイドで処理されたRHE培養物におけるK10、K19及びフィラグリに関する遺伝子発現を調べた。遺伝子発現プロフィールは、組織学的観察と一致した。レチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較してK10が3倍〜100倍下方調節された。ただし、高い標準偏差のために説明できない安息香酸タザロテンは除外される可能性がある。加えて、全てのレチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較して、K19が15倍〜1500倍上方調節された。全てのレチノイド処理された培養物において、未処理及びビヒクル対照と比較して、フィラグリンも2倍〜15倍下方調節された。安息香酸タザロテンでの処理後のフィラグリン発現は、1つの培養物における高い変異性のために曖昧に見えた。しかし、免疫組織化学により、フィラグリンは安息香酸タザロテンによって下方調節されることが示される。
【0136】
これらの研究の結果は、タザロテン、安息香酸タザロテン及びタザロテン代謝物が、ヒト皮膚においてレチノイド活性を有するという強力な証拠を提供する。
【0137】
実施例4 安息香酸タザロテンのレチノイド活性
ヒトケラチノサイトモデル(A431)を使用して、安息香酸タザロテンのレチノイド活性を特に評価するための研究を実施した。
【0138】
A431細胞をATCC(CRL−1555)から購入した。細胞を12ウェルプレート上に250,000細胞/ウェルの密度で播種し、そして37℃/5%CO2で72時間インキュベートして、細胞をコンフルエンシーまで増殖させた。DMSO(10mg/mLストック)中で希釈したホルボール−12−ミリステート13−アセテート(PMA)を10ng/mLの濃度で添加し、レチノイドを、10mg/mLのDMSO中ストック溶液から0.01〜1μg/mLの濃度で添加した。培養物を48時間37℃でインキュベートした。インキュベーション期間の最後に、増殖培地を集め、CellTiterGloアッセイキット(Promega)を用いて細胞生存度を測定した。IL−6の濃度をELISAにより測定し、細胞生存度に基づいて正規化した。
【0139】
PMAは、核転写因子AP−1のトランス活性化によりIL−6発現を上方調節することが知られている。トレチノインなどのレチノイドは、レチノイン酸受容体によりAP−1のトランス活性化を阻害することが知られている。
【0140】
本研究は、PMAによって誘発されたIL−6放出が、安息香酸タザロテンで処理された培養物では有意に減少し、トレチノイン、タザロテン及びタザロテン酸で処理された培養物について得られた結果と類似していたことを示す(図8)。
【0141】
このように、これらの結果は、安息香酸タザロテンがヒト皮膚においてレチノイド活性を有することのさらなる証拠を提供する。
【0142】
実施例5 血漿における安息香酸タザロテンの安定性
安息香酸タザロテンをさらに特性化するために、ヒト及びラット血漿における安息香酸タザロテン、タザロテンスルホキシド及びタザロテンの安定性を研究した。
【0143】
タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンを室温でヒト及びラット血漿とともにインキュベートした。インキュベーションを2連で実施し、試料を安定性分析のために特定の時点で採取した(i)ラット試料(0時間、2時間及び4時間)並びに(ii)ヒト試料(0時間、2時間、4時間及び8時間)。試料をLC−MS/MSにより分析した。
【0144】
本研究から、ラット血漿において、タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンが、急速な分解を示し、2時間で75〜100%の損失であったことがわかる(表4及び図9)。ヒト血漿において、タザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンの分解速度は著しく遅く、2時間で<10%の損失、8時間で<15%の損失であった(表5及び図10)。分解生成物は、試験した各化合物の対応するエステル加水分解生成物であった。
【0145】
表4
【表4】
【0146】
表5
【表5】
【0147】
実施例6 ヒト肝臓ミクロソームの存在下でのタザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝
ヒト肝臓ミクロソームの存在下でのタザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝安定性を調査した。
肝臓ミクロソーム反応を微小遠心管中、以下の方法で実施した。ヒト肝臓ミクロソーム(0.5又は1.0mg/mlのタンパク質)、試験物(1又は10μM)、パラオキソン(0、10又は100μM)、NADPH再生系(10mMのグルコース−6−ホスフェート、1単位/mlのグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、1mMのNADP+)、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中塩化マグネシウム(5mM)を37℃で振とう水浴中でインキュベートした。0時インキュベーション以外は基質の添加により反応を開始した。合計反応体積は0.2mlであった。反応を15、30、45又は60分間インキュベートし、0.2mlの氷冷アセトニトリルを添加して停止させ、次いで氷上に置いた。0時インキュベーションについて、ミクロソームを含む混合物に、氷冷アセトニトリルを、NADPH再生系、リン酸塩緩衝液中塩化マグネシウム及び試験物とともに添加した。各時点を3連で実施した。
【0148】
インビトロ代謝後の試験物の消失及び代謝物の形成を、多重反応モニタリングを使用するLC−MS/MSによって測定した。LightSight(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して、質量分析法を行い、データマイニングを実施した。
【0149】
以下を除いては前述と同じインキュベーション手順を用いて対照インキュベーションを実施した。負の対照反応には、ミクロソームは含まれなかった。肝臓ミクロソームの正の対照インキュベーションは、実験動物及びヒトの肝臓ミクロソームインキュベーションにおいてCYPにより急速に代謝される7−エトキシクマリンのミクロソーム安定性の評価を含んでいた。10μMの初期濃度での2連反応物を0又は30分間インキュベートした。7−エトキシクマリンのミクロソーム代謝安定性をLC−MS/MSにより測定した。
【0150】
表6 タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝
【表6】
【0151】
15.4%〜19.8%のタザロテンが完全非0分インキュベーション(NADPHを含む)においてタザロテン酸に変わった(表7)。NADPHの非存在下で、インキュベーションはさらに高濃度のタザロテン酸を含んでいた(32.4%〜52.7%のタザロテンが変換された)。タザロテン酸は代謝の一部のみを構成し、このことは、タザロテンスルホキシドへのスルホキシド化又はタザロテン酸のタザロテン酸スルホキシド及びタザロテン酸スルホンへのさらなる代謝などの他の代謝経路の存在を示唆する。
【0152】
表7 タザロテンのタザロテン酸への代謝
【表7】
【0153】
タザロテンスルホキシドは、ヒト肝臓ミクロソーム中でも急速に代謝された(表8)。マスバランス計算で示されるように、タザロテン酸スルホキシドへの近定量的変換が1μM反応について観察された。NADPHを含まない1μM反応の場合、タザロテン酸スルホキシドへ変換されたタザロテンスルホキシドのパーセンテージ値は100%超であった。これは予想外の結果であり、標準及び試料注射間のイオン抑制効果に起因する可能性がある。10μM基質反応について、50%を超える試験物がタザロテン酸スルホキシドに代謝された。NADPHの存在下では、タザロテン酸スルホキシドが主な代謝物であったが、そのレベルは、NADPHなしでのインキュベーションで観察されるものよりも低かった。NADPH依存性代謝の一部だけがタザロテン酸スルホキシドとして検出された。このことは、タザロテンスルホキシドのそのスルホンへの酸化によるか、又はタザロテン酸スルホキシドのそのスルホンへのさらなる代謝によるかのいずれかの他の代謝経路を示唆する。
【0154】
表8 タザロテンスルホキシドのタザロテン酸スルホキシドへの代謝
【表8】
【0155】
NADPHの存在下で、タザロテン酸は、ヒト肝臓ミクロソームによりゆっくりと代謝されてタザロテン酸スルホキシドになった(表9)。タザロテン酸は、NADPHの非存在下では代謝されなかった。タザロテン酸スルホキシドの質量スペクトルを図14に示す。
【0156】
表9 タザロテン酸のタザロテン酸スルホキシドへの代謝
【表9】
【0157】
31.7%〜47.6%の安息香酸タザロテンがNADPHを含む1μM反応でヒドロキシタザロテン酸に変わった。同様に、50%を越える安息香酸タザロテンがNADPHを含まない1μM反応においてヒドロキシタザロテン酸に変わった(表10)。マスバランスが、特に1μM反応について、100%よりも有意に少ないので、他の代謝物も形成されるようである。ヒドロキシタザロテン酸に対応するHPLCクロマトグラム及び質量スペクトルを、それぞれ図12及び13に示す。
【0158】
表10 安息香酸タザロテンのヒドロキシタザロテン酸への代謝
【表10】
【0159】
本研究は、タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンがヒト肝臓ミクロソームにより代謝されることを示した。エステル加水分解が主な代謝経路であると考えられる。
【0160】
タザロテン、タザロテンスルホキシド、タザロテン酸及び安息香酸タザロテンの代謝におけるエステラーゼの役割を判定するために、カルボキシルエステラーゼをはじめとするすべてのセリンエステラーゼの強力な阻害剤であるパラオキソンを用いて阻害研究を実施した。パラオキソンは以下のものを阻害した:
(i)ヒト肝臓ミクロソームにおけるタザロテン酸へのタザロテン代謝
(ii)ヒト肝臓ミクロソームにおけるタザロテン酸スルホキシドへのタザロテンスルホキシド代謝、及び
(iii)ヒト肝臓及び皮膚ミクロソームにおけるヒドロキシタザロテン酸への安息香酸タザロテン代謝。
パラオキソンは、CYP及びFMOが介在する反応である、タザロテン酸のタザロテン酸スルホキシドへの代謝を阻害しなかった。
【0161】
合わせると、これらの結果は、エステラーゼがタザロテン、タザロテンスルホキシド及び安息香酸タザロテンのエステル加水分解の原因であるという結論を支持する。
【0162】
ヒト肝臓ミクロソームは予想どおり7−エトキシクマリンを代謝し、代謝安定性アッセイに関して十分なインキュベーション条件を確証する。
【0163】
検出された代謝物のうち、3つは安息香酸タザロテン(m/z444)、ヒドロキシタザロテン(m/z368)、及びヒドロキシタザロテン酸(m/z340)と同定された。ヒドロキシタザロテン酸が主な代謝物と同定された。m/z338及び366の代謝物も観察された。提案により拘束されないが、これらは、チオラクトール基のチオラクトンへの酵素的酸化(すなわちケトタザロテン及びケトタザロテン酸を形成する)後の生成物であると考えられる(図23)。合わせると、これらの知見は、エステラーゼによる両エステル結合の切断と一致する。
【0164】
(i)タザロテン及び(ii)安息香酸タザロテンの提案された代謝をそれぞれ図22及び23に示す。
【0165】
実施例7 ヒト皮膚ミクロソームの存在下での安息香酸タザロテンの代謝
いくつかの肝臓ミクロソーム酵素(エステラーゼを含む)がヒト皮膚において見出される限り、安息香酸タザロテンの代謝をヒト皮膚ミクロソームの存在下、インビトロで調査した。
【0166】
5つの時点を選択したが、ヒト皮膚ミクロソーム供給の制限のために、それぞれを2連で実施した。皮膚ミクロソーム反応は、次の2点を除いて、肝ミクロソーム反応について前述したとおりに実施した。第1に、全反応体積は0.1mLであった。第2に、インキュベーションは0.1mLのアセトニトリルで終結させた。
【0167】
ヒト皮膚ミクロソームはテルフェナジン(正の対照)からのフェキソフェナジン形成を触媒し、このことは、薬剤がヒト皮膚ミクロソームの活性を代謝することを確証する。
【0168】
安息香酸タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸代謝物濃度をLC−MS/MSにより定量化した。
【0169】
この結果は、安息香酸タザロテンがヒト皮膚ミクロソームにより代謝されるが、この化合物はヒト肝臓ミクロソームよりも遅い速度で、すなわち150分後に代謝され、20%の安息香酸タザロテンが2mg/mlのヒト皮膚ミクロソームの存在下で代謝されることを示した。ヒドロキシタザロテン酸の形成が再度観察され、このことは、安息香酸タザロテンのエステラーゼ代謝を示唆する。
【0170】
実施例8
以下の方法を使用して、タザロテン、安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸、ケトタザロテン酸、ケトタザロテン及び安息香酸タザロテンの多数の類似体のレチノイド活性を評価した。化合物を表11に記載する。
【0171】
再構成されたヒト表皮(RHE)組織をPoumayらにより以前に記載されているように自家培養した。手短に説明すると、ポリカーボネート培養インサート(直径12mm、ポアサイズ0.4μm、Millipore)を、約5×105の一次成人ヒトケラチノサイトを含む懸濁液150μLで満たした。インサートに別の500μLのケラチノサイト培地を加え、2.5mLのRHE増殖培地(Epilife培地+1.5mMのCaCl2)を含む6ウェルプレート(1インサート/ウェル)中に入れた。RHE培養物を37℃にて5%CO2を含む加湿雰囲気中で24時間インキュベートした。その後(0日に)、RHE増殖培地を培養の最上部から除去し、50μg/mLのビタミンCを含むRHE増殖培地(1.5mL/ウェル)と置換することによって、RHE培養を気液界面に暴露した。培養に試験品を加えるまで、培地を一日おきに替えた。0.1%のタザロテン(2.83mM、純度99.5%)のOD/10%DMSO中ストック溶液を調製した。安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸、ケトタザロテン酸、ケトタザロテン、及びニコチン酸タザロテンに関して、10mg/mLのストック溶液(DMSO中)をすでに調製した。このストック溶液から2.83mMの使用液(working solution)(オクチルドデカノール中)を調製した。すべての他の試験した化合物をDMSO及びOD中に再懸濁させて、OD/10%DMSO中2.83mMの最終濃度を得た。12日に、培養を3mLのRHE増殖培地(+VitC)を含む60mmのペトリ皿中に入れた。試験物(6μl)を3連の培養に加え、培養物を37℃で72時間インキュベートした。未処理及びOD単独は負の対照としての役目をはたした。インキュベーション期間の最後に増殖培地を集め、−20℃で保存した。組織を半分に切り:一方を組織学のために10%のNBF中に入れ、もう一方の半分をRT−qPCRのためにRNAlater(商標)溶液中に入れた。RNAを単離し、NanoDrop分光光度計を用いて濃度を測定した。各試料について同じ量のRNAを使用することに加えて、データを内部GAPDH mRNAレベルに対して正規化し、未処理対照に対する相対量(RQ)として表す。RT−qPCRを用いて各実施から得られたRNA抽出物を増幅した。5つのバイオマーカー:ケラチン10、ケラチン19、フィラグリン、ケラチン4、及びケラチン13の相対的遺伝子発現を測定した。
【0172】
分析結果を図17〜21に示す。図17〜21のX軸上に表示した化合物は、表11中に記載した化合物に対応する。化合物を、表12中に記載するように、各バイオマーカーに対するそれらの効果についてランク付けした。
【0173】
ケラチン4(K4)は、ヒト表皮においては通常発現されないが、レチノイドでの治療により上方調節されることが知られている。すべてのタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K4の有意な上方調節(11〜180倍)を引き起こした。タザロテン、ケトタザロテン、化合物17、化合物25及び化合物28は最高の増加(103倍から180倍)を示した。化合物21及び化合物19は最低の上方調節を示し、それぞれ11倍及び19倍であった。
【0174】
ケラチン10(K10)は、生きている表皮の基底上層で通常発現されるが、レチノイドでの治療により下方調節されることが知られている。安息香酸タザロテンのSエナンチオマー、化合物19及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K10の有意な下方調節(約7±4倍)を引き起こした。最高のK10下方調節がニコチン酸タザロテン、ケトタザロテン酸、及び化合物24で観察された(14〜17倍)。
【0175】
ケラチン13(K13)はヒト表皮で通常発現されないが、レチノイドでの治療により上方調節されることが知られている。化合物19及び化合物21を除くすべてのタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K13(約13±5倍)の有意な上方調節を引き起こした。最高のK13上方調節が、化合物24(23倍)、ケトタザロテン酸、及びヒドロキシタザロテン(20倍)、化合物23及び化合物27(19倍)、化合物28(18倍)、及び化合物25(17倍)で観察された。
【0176】
ケラチン19(K19)はヒト表皮で通常発現されないが、レチノイドで治療された表皮のすべての生きている層で上方調節されることが知られている。化合物19及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、未処理及びビヒクル対照と比較して、K19の有意な上方調節(約23±11倍)を引き起こした。タザロテン、化合物15、化合物23、化合物24及び化合物27は最高の増加を示した(33〜43倍)。
【0177】
フィラグリンは、顆粒層で通常発現され、レチノイドでの治療により下方調節されることが知られている後期分化マーカーである。安息香酸タザロテンのSエナンチオマー、ケトタザロテン、化合物13、化合物17、化合物19、及び化合物21を除くすべての他のタザロテン誘導体は、フィラグリンの有意な(3〜100倍)下方調節を引き起こした。最高レベルのフィラグリン下方調節がニコチン酸タザロテン(100倍)、化合物24(56倍)、ケトタザロテン酸(36倍)及び化合物27(23倍)で観察された。
【0178】
遺伝子発現プロフィールの定性的評価(表12)に基づいて、上位の5つのタザロテン誘導体は:化合物24、化合物23、化合物11、化合物29及び化合物15である。
【0179】
要約すると、種々のタザロテン代謝物及び誘導体のレチノイド活性を5つのバイオマーカー(ケラチン4、10、13、19及びフィラグリン)により評価した。各化合物は独自の発現プロフィールを有していた。試験した化合物のランク付けで、13の誘導体がタザロテンよりも活性であることが判明した。
【0180】
実施例9 過酸化ベンゾイルの存在下での安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの安定性
(i)タザロテン、安息香酸タザロテン、ヒドロキシタザロテン酸及びニコチン酸タザロテンと、(ii)30%水性溶液中過酸化ベンゾイル(BPO)との反応を35℃、室温及び5℃でモニタリングした。
【0181】
各化合物の個々の溶液をアセトニトリル:水(6:4(体積基準))中約0.25mg/mLで調製した。等しい体積の試験溶液と、過酸化ベンゾイル(BPO)のアセトニトリル:水(4:1(体積基準))中約12mg/mL溶液とを混合することによって反応を開始した。したがって、反応溶液は約0.125mg/mLの試験化合物を含み、BPOは重量基準で50倍過剰であった(すなわち、0.1%のタザロテン及び5%のBPOを含む生成物と同じ比)。反応溶液のアリコートを光から保護して種々の温度で保存した。
【0182】
30μLの反応溶液を希釈剤(1:1(体積基準)の比のアセトニトリル:水)で50mLに希釈し、試料を10℃でLC/MS試料トレイ中、又は保存のために5℃で保存することによって、反応をクエンチした。2連の試料を各時点で調製し(反応の開始時に3つ)、結果を平均して、1つの値を得た。
【0183】
試料を、MassLynx V4.1ソフトウェアにより制御されたポジティブモードのESIソースを使用して、Waters Xevo TQMSを含むWaters Acquity UPLCで分析した。Acquity BEH C8UPLCカラム(1.7μm粒子サイズ、2.1×50mm)を45℃で使用して、分離を実施した。移動相は、水及びアセトニトリルから構成され、それぞれは0.1%のギ酸を含んでいた。0.4mL/分の流速を使用した。
【0184】
結果を図24A、24B及び24Cに記載する。
【0185】
重大なことに、3つの温度すべてで、安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンは、タザロテン及びヒドロキシタザロテン酸よりも(BPOとの)反応性が25倍程度低かった。試験化合物のそれぞれとBPOとの反応速度は、温度の関数であることが判明した。反応速度は5℃と比較しておよそ5倍増加し、反応温度が35℃まで上昇すると、さらに約3倍増加した。安息香酸タザロテン及びニコチン酸タザロテンの反応速度は、全ての温度で同様であるように見える。
【0186】
実施例10 タザロテン誘導体の合成
本発明を、単に例示的であり、本発明の範囲を限定すると解釈されない以下の実施例を参照して記載する。すべての温度は摂氏度で記載し、すべての溶媒は入手可能な最高の純度であり、すべての反応は、必要ならばAr雰囲気中、無水条件下で実施する。
【0187】
略語のリスト
【表11】
【0188】
酸塩化物を調製するための一般的手順
塩化オキサリル(4.0当量)をカルボン酸(1.0当量)のジクロロメタン(DCM)中溶液に撹拌しながら触媒量の無水ジメチルホルムアミド(DMF)とともに添加した。結果として得られた溶液を40℃で2時間還流した。溶液を冷却し、溶媒を真空下で除去し、トルエンを用いて過剰の塩化オキサリルを除去し、結果として得られた酸塩化物をDCM中に溶解させ、その後、エステル形成のために使用した。
【0189】
酸塩化物からエステルを調製するための一般的手順
酸塩化物(1.6ミリモル)を化合物14(0.5ミリモル)のDCM(5mL)中溶液に撹拌しながら添加した。トリエチルアミン(TEA)(2.7ミリモル)を続いて添加し、反応混合物を一晩攪拌した。反応の進行をLC/MSによりモニタリングした。反応が完了したら、反応混合物を水中に注ぎ、DCM(2×5mLアリコート)で抽出した。有機抽出物を合し、水/食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥した。有機抽出物を濃縮し、そして粗エステルを、酢酸エチル/ヘプタン溶媒系(0〜40%)を用いたCompanionシステム中ISCOカートリッジで精製した。
【0190】
カルボン酸及びアルコール(EDC及びHOBtを使用)のカップリングからエステルを調製するための一般的手順
N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)(2.7ミリモル)及びHOBt(2.7ミリモル)をカルボン酸(2.7ミリモル)のDCM(10mL)中溶液に撹拌しながら添加した。TEA(5.4ミリモル)を添加し、続いて化合物14(アルコール)を添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌した。反応が完了したら(LC/MSにより判定)、混合物を水(20mL)中に注ぎ、有機相を除去し、水性相をDCM(10mL)で抽出した。有機(DCM)相を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥して、粗エステルを得た。
【0191】
質量分析法により測定される代謝物及び類似体の分子量を表11に記載する。
【0192】
重水素化クロロホルム又は重水素化DMSO中に溶解させた試料を用いて400MHz(Varian)で1H NMR分光法を用いて代謝物及び類似体の分析も実施した。
【0193】
化合物4 6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル(安息香酸タザロテン)
トリエチルアミン(0.75mL)を化合物14(0.551g、1.5ミリモル)のDCM(15mL)中冷却(0℃)溶液に窒素下で添加し、続いてDCM(3mL)中塩化ベンゾイル(0.281g、2.0ミリモル)を添加した。混合物を室温で1時間攪拌し、次いでDCM(50mL)で希釈し、次い飽和NaHCO3溶液、続いて水(30mL)及び食塩水(30mL)で処理した。有機相を抽出し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘプタン)を用いて精製して、無色固体を得た。収量:0.700g(99%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)d 1.43(t, J=7.08 Hz, 3H), 1.49(s, 3 H), 1.56(s, 3H), 2.32(br. s., 1H), 2.33(d, J=1.66 Hz, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.49(t, J=5.52 Hz, 1H), 7.13(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.35(d, J=0.88 Hz, 1H), 7.46(t, J=7.71 Hz, 2H), 7.59(d, J=7.91 Hz, 2H), 7.69(s, 1H), 8.05(d, J=7.52 Hz, 2H), 8.29(dd, J=8.15, 1.81 Hz, 1H), 9.21(s, 1H)
【0194】
化合物5及び6 (S)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルエステル及び(R)−6−(2−(2−ベンゾイルオキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸、エチルエステル(安息香酸タザロテンのエナンチオマー)
化合物4のS及びRエナンチオマー(100mg)を、イソプロピルアルコール/水の10〜50%勾配を用いたキラルADHカラムを用いたHPLCにより分離した。UV吸光度を340nmでモニタリングした。33mg及び27mgのエナンチオマーを>97%の純度で得た。
【0195】
アブイニシオ振動円二色性(VCD)分析を用いてエナンチオマーの立体化学を測定した。
【0196】
化合物7 6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル(ニコチン酸タザロテン)
化合物14(1.00g、2.72ミリモル)のDCM(100mL)中溶液を氷水浴中で0℃まで冷却し、次いでTEA(1.38g、1.90mL、13.6ミリモル)を添加し、次いで塩化ニコチノイル塩酸塩(605mg、3.40ミリモル)を添加した。反応を次いで室温まで温め、18時間撹拌した。反応をDCM(200mL)で希釈し、水で洗浄した(2×200mLアリコート)。水性洗浄液をプールし、DCMで逆抽出した(2×100mL)。有機フラクションを次いでプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いて粗生成物をシリカカラム上クロマトグラフにかけた。収量:968mg(75%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ ppm 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.49(s, 3 H), 1.56(s, 3 H), 2.33(d, J=5.6 Hz, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.51(t, J=5.6 Hz, 1 H), 7.13(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.37(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.41(ddd, J=8.0, 4.9, 0.8 Hz, 1 H), 7.59(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.69(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.22 −8.36(m, 2 H)8.81(dd, J=4.9, 1.7 Hz, 1 H), 9.22(ddd, J=9.3, 2.1, 0.8 Hz, 2 H)。
【0197】
化合物8及び9 6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル(ニコチン酸タザロテン−S及びRエナンチオマー)
化合物7のS及びRエナンチオマーを、15%のエタノールを修飾剤として用いてOJHカラム(10×250mm、10ml/分)を用いた超臨界流体クロマトグラフィーにより分離した。UV吸光度を254nmでモニタリングした。各エナンチオマーを約96%の純度で得た。
【0198】
アブイニシオ振動円二色性(VCD)分析を用いてエナンチオマーの立体化学を測定した。
【0199】
化合物10 6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(ヒドロキシタザロテン酸)
6−(4,4−ジメチル−1−オキソ−1λ4−チオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
タザロテン(10.0g、28.5ミリモル)のメタノール(300mL)中懸濁液を氷水浴中で<10℃まで冷却し、次いでNaIO4(9.13g、42.7ミリモル)の水(100mL)中溶液を30分にわたって滴加した。反応を撹拌しながら18時間室温まで温め、次いで減圧下で濃縮して、できるだけ多くのメタノールを除去した。反応を次いでDCM(500mL)及び水(150mL)で希釈した。2層を次いで分離し、水性層をDCM(2×100mLアリコート)で抽出した。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。粗スルホキシド生成物を次いで、DCM:EtOAc溶媒系を用いてクロマトグラフィーにかけた。収量:9.00g(86%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.34(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.47(s, 3 H), 1.91(ddd, J=15.1, 8.9, 2.3 Hz, 1 H), 2.45(ddd, J=15.1, 10.3, 2.4 Hz, 1 H), 3.04 −3.29(m, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.58(dd, J=8.1, 1.6 Hz, 1 H), 7.63(dd, J=8.2, 0.7 Hz, 1 H), 7.71(d, J=1.6 Hz, 1 H), 7.78(d, J=8.1 Hz, 1 H), 8.32(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.1, 0.7 Hz, 1 H). MS(ESI+)368.0。
【0200】
6−(2−アセトキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記スルホキシド(9.00g、24.5ミリモル)の無水酢酸(185mL)中溶液を130℃まで5時間加熱し、次いで、無水酢酸の蒸発を助けるためにトルエンを添加して、減圧下で濃縮した。粗酢酸エステルを次いで、ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いてシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:8.47g(84%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.40(s, 3 H), 1.43(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.46(s, 3 H), 2.10 −2.22(m, 2 H), 2.11(s, 3 H), 4.43(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.22(dd, J=6.9, 5.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.34(dd, J=8.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.64(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.29(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H). MS(ESI+)410.0。
【0201】
6−((2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸
前記酢酸エステル(3.00g、7.33ミリモル)のエタノール(90mL)中懸濁液に、KOH(2.47g、44.0ミリモル)の水(15mL)中溶液を滴加した。30分以内に、反応は均一になり、室温で18時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、水(40mL)で希釈し、次いで、pH〜5に達するまで1.0NのHCl(33mL)を滴加して処理した。結果として得られる黄色沈殿をろ過し、フィルターケーキを次いで水(40mL)及びヘプタン(40mL)で洗浄し、次いで真空下、50℃で18時間乾燥した。収量:1.95g(78%)。
1H NMR(400 MHz, DMSO−d6)δ ppm 1.24(s, 3 H), 1.42(s, 3 H), 1.90(dd, J=13.5, 9.8 Hz, 1 H), 2.11(dd, J=13.5, 4.2 Hz, 1 H), 5.43(dd, J=9.8, 4.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.32(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.62(d, J=1.8 Hz, 1 H), 7.72(dd, J=8.1, 0.7 Hz, 1 H), 8.26(dd, J=8.1, 2.2 Hz, 1 H), 9.04(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。MS(ESI+)340.0。
【0202】
化合物11 6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸(ケトタザロテン酸)
化合物12(1.28g、3.50ミリモル)のエタノール(30mL)中懸濁液にKOH(2.47g、44.0ミリモル)の水(15mL)中溶液を滴加し、反応を室温で18時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、水(20mL)で希釈し、次いでpH〜5に達するまで1.0NのHClを滴加して処理した。結果として得られる黄色沈殿をろ過し、フィルターケーキを次いで水(10mL)及びヘプタン(10mL)で洗浄し、次いで真空下、50℃で18時間乾燥した。粗生成物(1.12g)を次いでDMSO中に溶解させ、メタノール:水勾配(両溶媒中に0.1%のHCO2Hが存在する)を用いて逆相HPLCにより精製した。収量:26mg(2.2%)。
1H NMR(400 MHz, DMSO−D6)δ ppm 1.35(s, 6 H), 2.80(s, 2 H), 7.37(br. d, J=7.8 Hz, 1 H), 7.52(br. d, J=7.8 Hz, 1 H), 7.65−7.80(m, 2 H), 8.23(br. d, J=7.2 Hz, 1 H), 9.01(br. s, 1 H)。
【0203】
化合物12 6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル(ケトタザロテン)
6−(4,4−ジメチル−1−オキソ−1λ4−チオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
タザロテン(10.0g、28.5ミリモル)のメタノール(300mL)中懸濁液を氷水浴中で<10℃まで冷却し、次いでNaIO4(9.13g、42.7ミリモル)の水(100mL)中溶液を30分にわたって滴加した。反応を撹拌しながら18時間室温まで温め、次いで減圧下で濃縮して、できるだけ多くのメタノールを除去した。反応を次いでDCM(500mL)及び水(150mL)で希釈した。2層を次いで分離し、水性層をDCMで抽出した(2×100mLアリコート)。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。粗スルホキシド生成物を次いで、DCM:EtOAc溶媒系を用いてクロマトグラフィーにかけた。収量:9.00g(86%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.34(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.47(s, 3 H), 1.91(ddd, J=15.1, 8.9, 2.3 Hz, 1 H), 2.45(ddd, J=15.1, 10.3, 2.4 Hz, 1 H), 3.04 −3.29(m, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.58(dd, J=8.1, 1.6 Hz, 1 H), 7.63(dd, J=8.2, 0.7 Hz, 1 H), 7.71(d, J=1.6 Hz, 1 H), 7.78(d, J=8.1 Hz, 1 H), 8.32(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.1, 0.7 Hz, 1 H)。MS(ESI+)368.0。
【0204】
6−(2−アセトキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記スルホキシド(9.00g、24.5ミリモル)の無水酢酸(185mL)中溶液を130℃まで5時間加熱し、無水酢酸の蒸発を助けるためにトルエンを添加して、減圧下で濃縮した。粗酢酸エステルを次いで、ヘプタン:EtOAc溶媒系を使用してシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:8.47g(84%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.40(s, 3 H), 1.43(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.46(s, 3 H), 2.10 −2.22(m, 2 H), 2.11(s, 3 H), 4.43(q, J=7.1 Hz, 2 H), 6.22(dd, J=6.9, 5.2 Hz, 1 H), 7.11(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.34(dd, J=8.2, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.64(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.29(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。MS(ESI+)410.0。
【0205】
6−(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチルチオクロマン−6−イルエチニル)ニコチン酸エチルエステル
前記酢酸エステル(3.29g、8.03ミリモル)のTHF(50mL)中溶液にNaOEt(2.18g、32.1ミリモル)を添加し、反応を75℃まで12時間加熱した。反応を次いでEtOAc(250mL)で希釈し、水(2×100mLアリコート)で洗浄した。水性洗浄液を次いでプールし、EtOAc(2×100mLアリコート)で逆抽出した。有機フラクションをプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、チオラクトールを得た。収量:2.31g(78%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ ppm 1.31(s, 3 H), 1.43(t, J=7.1 Hz, 3 H), 1.48(s, 3 H), 1.95 −2.07(m, 1 H), 2.26(dd, J=13.5, 4.5 Hz, 1 H), 2.54(d, J=8.5 Hz, 1 H), 4.43(q, J=7.2 Hz, 2 H), 5.50(td, J=8.8, 4.5 Hz, 1 H), 7.09(d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.32(dd, J=8.1, 1.8 Hz, 1 H), 7.58(dd, J=8.2, 0.8 Hz, 1 H), 7.62(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.28(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.20(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。
【0206】
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチル
前記チオラクトール(2.31g、6.29ミリモル)のDCM(500mL)中溶液に、Dess−Martinペルヨージナン(2.80g、6.60ミリモル)を添加し、反応を室温で1時間撹拌した。反応を次いで減圧下で濃縮し、次いでEtOAc(250mL)で希釈し、飽和水性NaHCO3溶液(2×100mLアリコート)で洗浄した。水性洗浄液を次いでプールし、EtOAcで逆抽出した(2×200mL)。有機フラクションを次いでプールし、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして減圧下で濃縮した。ヘプタン:EtOAc溶媒系を用いて、粗生成物を次いでシリカプラグ上クロマトグラフィーにかけた。収量:1.28g(56%)。
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.44(t, J=7.2 Hz, 3 H), 1.44(s, 6 H), 2.71(s, 2 H), 4.44(q, J=7.1 Hz, 2 H), 7.23(d, J=8.1 Hz, 1 H), 7.48(dd, J=8.1, 1.7 Hz, 1 H), 7.62(dd, J=8.1, 0.8 Hz, 1 H), 7.73(d, J=1.7 Hz, 1 H), 8.31(dd, J=8.2, 2.2 Hz, 1 H), 9.22(dd, J=2.2, 0.8 Hz, 1 H)。
【0207】
化合物13 6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をDCM及びTEA中塩化パルミトイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.85(d, J=13.57 Hz, 2H), 0.85(s, 2H), 1.22(s, 26H), 1.29(br. s, 6H), 1.35 −1.50(m, 11H), 1.56(s, 2H), 1.63(br. s, 1H), 1.60(d, J=7.42 Hz, 2H), 2.03 −2.20(m, 2H), 2.31(d, J=15.03 Hz, 1H), 2.31(s, 1H), 4.40(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.19(dd, J=6.49, 5.32 Hz, 1H)7.07(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.31(dd, J=8.15, 1.61 Hz, 1H), 7.55(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.61(d, J=1.56 Hz, 1H), 8.25(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.17(d, J=1.56 Hz, 1H)。
【0208】
化合物14 6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)
還流THF中での化合物17のナトリウムエトキシドでの加水分解により、標記化合物と、化合物10との混合物を得た。カラムクロマトグラフィー精製して、非極性不純物及び化合物10(ヒドロキシ酸)を除去することにより標記化合物を得た(51%)。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.25(s, 3H), 1.38(t, J=7.13 Hz, 3H), 1.42(s, 3H), 1.98(dd, J=13.42, 9.32 Hz, 1H), 2.21(dd, J=13.47, 4.49 Hz, 1H), 3.21(d, J=8.10 Hz, 1H), 4.39(q, J=7.13 Hz, 2H), 5.48(dt, J=13.03, 4.47 Hz, 1H), 7.02(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.26(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.53(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.57(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.24(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.15(d, J=1.56 Hz, 1H)。
【0209】
化合物15 6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル
グリコール酸(4.2g、0.05モル)及びtert−ブチルジメチルクロロシラン(17.7g、0.012モル)を40mLの乾燥DMF中で撹拌した。イミダゾール(15.62g、0.23モル)を混合物に添加し、窒素下で18時間撹拌した。混合物を脱イオン水(約250mL)中に注ぎ、ジエチルエーテル(3×100mLアリコート)で抽出した。有機フラクションを合し、飽和NaHCO3で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、真空中で濃縮して、油状物を得た。真空下でさらに乾燥して、10.7g(91%)のビスシリル化グリコール酸を白色固体として得た。
【0210】
ビスシリル化グリコール酸を、数滴のDMFを含む125mLの乾燥DCM中に溶解させた。13.4mLの塩化オキサリルの溶液(148ミリモル、4.5当量)を窒素下で20分間滴加した。混合物を周囲温度で4時間撹拌し、次いで真空下で濃縮して、揮発性物質(未反応塩化オキサリル)を除去して、粗酸塩化物(tert−ブチルジメチル−シリルオキシグリコール酸塩化物)を黄色油状物として得た。
【0211】
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)(400mg、1ミリモル))のDCM/TEA中溶液を室温で調製した。混合物を窒素雰囲気下におき、前記酸塩化物(340mg、1.5ミリモル、1.5当量)を室温でゆっくりと添加した。混合物を周囲温度で17時間撹拌し、その後、LCMS分析により完全に変換されたことが示された。混合物をDCM(50mL)で希釈し、H2O(15mL)で洗浄し、続いて飽和NaHCO3(15mL)及び食塩水溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、油状物−シリル化中間体を得た。シリカゲル上クロマトグラフィーで、酢酸エチル−ヘプタン勾配で溶出して、300mgの精製された生成物を得た。
【0212】
シリル化中間体をTHF(4mL)及び酢酸(0.5mL)中に溶解させた。撹拌混合物を1MのTBAF(1mL、1ミリモル)で処理し、1時間、周囲温度で撹拌した。粗反応混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をヘプタン(5mL)で処理し、一晩、冷たい状態(〜4℃)に保持した。結果として得られた固体をろ過し、ヘプタンで洗浄して、130mg(29%)の化合物15を白色半透明固体として得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.36 −1.51(m, 11H), 2.10 −2.29(m, 2H), 2.35(t, J=5.66 Hz, 1H), 4.21(d, J=5.66 Hz, 2H), 4.37 −4.50(m, 2H), 6.36(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.36(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.65(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0213】
化合物16 6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をDCM/TEA中塩化メトキシアセチルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.43(d, J=14.45 Hz, 7H), 1.43(s, 2H), 2.09 −2.34(m, 2H), 3.46(s, 3H), 4.07(s, 2H), 4.43(q, J=7.19 Hz, 2H), 6.33(dd, J=6.64, 5.27 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.35(dd, J=8.15, 1.61 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.20(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0214】
化合物17 6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
タザロテンをメタノール/水中過ヨウ素酸ナトリウムで酸化して、対応するスルホキシドを得た。カラム精製後、47g(90%)のスルホキシドを得、これを溶媒及びアシル化剤としての無水酢酸でのプメラー転位に付して、所望の生成物(42g)を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.39(s, 4H), 1.41(s, 2H)1.43 −1.49(m, 4H), 2.10(s, 3H), 2.11 −2.18(m, 2H), 4.42(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.20(dd, J=6.69, 5.42 Hz, 1H), 7.09(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.33(dd, J=8.10, 1.37 Hz, 1H), 7.57(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.63(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.27(dd, J=8.15, 2.00 Hz, 1H), 9.19(d, J=1.37 Hz, 1 H)
【0215】
化合物18 6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化ブチリルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.97(t, J=7.42 Hz, 4H), 1.38 −1.50(m, 11H), 1.63 −1.74(m, 3H), 2.15(d, J=6.83 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.33(d, J=15.13 Hz, 1H), 2.34(s, 1H), 4.43(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.23(dd, J=6.49, 5.42 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0216】
化合物19 6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化ラウロイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.88(d, J=13.71 Hz, 2H), 0.88(s, 2H), 1.20 −1.38(m, 4H), 1.26(s, 18H), 1.41(s, 4H), 1.43(s, 2H), 1.44 −1.49(m, 4H), 1.57 −1.73(m, 4H), 2.14(d, J=6.74 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.22 Hz, 1H), 2.31 −2.39(m, 2H), 4.43(q, J=7.11 Hz, 2H), 6.22(dd, J=6.64, 5.22 Hz, 1H), 7.10(d, J=8.15 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.13, 1.73 Hz, 1H), 7.58(dd, J=8.15, 0.83 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.71 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.15, 2.15 Hz, 1H), 9.20(dd, J=2.15, 0.78 Hz, 1H)
【0217】
化合物20 6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化イソブチリルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.74 −0.98(m, 4H), 1.20(d, J=7.03 Hz, 7 H), 1.44(d, J=14.15 Hz, 6H), 1.43(t, J=7.13 Hz, 5H), 2.17(d, J=4.39 Hz, 2H), 2.15(s, 1 H)2.49 −2.66(m, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H)6.16 −6.26(m, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.46 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.65(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0218】
化合物21 6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化リノエオイル(linoeoyll)と室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.76 −0.97(m, 9H), 1.19 −1.39(m, 26H), 1.40 −1.50(m, 15H), 1.67(br. s, 1H), 1.64(d, J=7.32 Hz, 2H), 2.03(br. s, 1H), 2.05(d, J=6.74 Hz, 5H), 2.15(d, J=6.83 Hz, 2H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.35(d, J=14.93 Hz, 2H), 2.35(s, 1H), 2.78(d, J=12.49 Hz, 1H), 2.78(s, 1H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 3H), 5.27 −5.45(m, 6H), 6.23(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H)7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H)
【0219】
化合物22 6−[(2−リンレオリル(linleolyl)4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中塩化リノレノイルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.98(t, J=7.52 Hz, 4H), 1.22 −1.38(m, 14H), 1.38 −1.50(m, 13H), 1.66(br. s, 1H), 1.64(d, J=7.22 Hz, 2H), 2.01 −2.22(m, 9H), 2.35(t, J=7.52 Hz, 3H), 2.69 −2.93(m, 6H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 3H), 5.28 −5.45(m, 9H), 6.23(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.56 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H)
【0220】
化合物23 6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、DCM/TEA中1−メチルピペリジンカルボニルクロリドと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.35 −1.50(m, 11H), 1.70 −1.85(m, 1H), 1.78(dd, J=11.23, 1.46 Hz, 2H), 1.85 −2.06(m, 5H), 2.14(d, J=11.81 Hz, 1H), 2.14(s, 1H), 2.21 −2.36(m, 1H), 2.25(s, 4H), 2.79(d, J=11.23 Hz, 2H), 4.42(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.15 −6.26(m, 1H), 7.09(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.33(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.57(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.63(d, J=1.37 Hz, 1H), 8.27(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.19(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0221】
化合物24 6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)を、塩基としてTEAを含むDCM中、塩化プロピオニルと室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.17(t, J=7.56 Hz, 4H), 1.34 −1.51(m, 11H), 2.15(d, J=6.74 Hz, 1H), 2.17(d, J=5.27 Hz, 1H), 2.38(q, J=7.58 Hz, 2H), 4.43(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.23(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.20, 2.15 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0222】
化合物25 6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテンを、EDC及びHOBtを用いてサリチル酸と反応させた。反応により、所望の化合物を、それ自体と結合した不純物とともに得た。カラムクロマトグラフィーにより所望の生成物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.40(t, J=7.13 Hz, 7H), 1.47(s, 7H), 1.52(s, 8H), 2.29(d, J=1.56 Hz, 2H), 2.31(d, J=2.44 Hz, 2H), 4.41(q, J=7.06 Hz, 4H), 6.47(t, J=5.51 Hz, 2H), 6.79 −6.92(m, 2H), 6.98(d, J=8.30 Hz, 2H), 7.10(d, J=8.10 Hz, 2H), 7.34(dd, J=8.10, 1.37 Hz, 2H), 7.46(s, 2H), 7.57(d, J=8.10 Hz, 2H), 7.66(d, J=1.17 Hz, 2H), 7.76(dd, J=7.96, 1.32 Hz, 2H), 8.26(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 2H), 9.18(d, J=1.37 Hz, 2H), 10.53(s, 1 H)
【0223】
化合物26 6−[(2−(4−テトラヒドロピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をテトラヒドロピラン−4−カルボニルクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.31 −1.50(m, 11H), 1.69 −1.92(m, 5H), 2.04 −2.26(m, 2H), 2.55(t, J=10.54 Hz, 1H), 3.32 −3.48(m, 2H), 3.94(dd, J=11.47, 2.88 Hz, 2H), 4.41(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.14 −6.28(m, 1H), 7.08(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.32(dd, J=8.10, 1.46 Hz, 1H), 7.56(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.62(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.26(dd, J=8.20, 2.05 Hz, 1H), 9.18(d, J=1.37 Hz, 1H)
【0224】
化合物27 6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をモノメチルアジポイルクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.40(d, J=16.40 Hz, 8H), 1.40(s, 3H), 1.66(d, J=14.06 Hz, 1H), 1.66(t, J=3.42 Hz, 3H), 2.05 −2.21(m, 2H), 2.25 −2.42(m, 4H), 3.64(s, 3H), 4.40(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.19(dd, J=6.59, 5.32 Hz, 1H), 7.07(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.31(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.55(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.61(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.26(dd, J=8.10, 2.15 Hz, 1H), 9.17(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0225】
化合物28 6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をモノメチルアゼレートクロリドとDCM/TEA中室温で反応させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の化合物を得た。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 1.32(br. s., 11H), 1.39 −1.50(m, 11H), 1.53 −1.73(m, 7H), 2.15(d, J=6.74 Hz, 2H), 2.17(d, J=5.17 Hz, 1H), 2.26 −2.46(m, 7H), 3.58 −3.77(m, 5H), 4.44(q, J=7.13 Hz, 2H), 6.22(dd, J=6.54, 5.37 Hz, 1H), 7.11(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.34(dd, J=8.10, 1.56 Hz, 1H), 7.59(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.46 Hz, 1H), 8.29(dd, J=8.15, 2.10 Hz, 1H), 9.21(d, J=1.46 Hz, 1H)
【0226】
化合物29 6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル
6−[(2−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル(ヒドロキシタザロテン)をFmoc保護されたアミノ酸塩化物(バリンから)と反応させて、Fmoc保護されたアミノエステルを得た。THF中希ピペリジンを用いて室温で以下のようにしてFmoc脱保護を促進した:
【0227】
THF中20%ピペリジン(5当量)を、Fmoc保護されたアミノエステルのTHF中溶液に撹拌しながら添加した。反応混合物を5時間攪拌し、LC/MSにより反応の進行を定期的にモニタリングした。反応完了時に、反応混合物を水中に注ぎ、EtOAcで抽出した(2×20mLアリコート)。有機層を合し、食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥し、濃縮し、そして12.0gのカートリッジを用いたCompanion精製システムで精製した。
1H NMR(400 MHz, クロロホルム−d)δ 0.92(t, J=6.78 Hz, 3H), 0.99(d, J=6.74 Hz, 3H), 1.35 −1.59(m, 12H), 1.97 −2.09(m, 1H), 2.09 −2.26(m, 2H), 3.31(d, J=5.17 Hz, 1H), 4.43(q, J=7.06 Hz, 2H), 6.20 −6.34(m, 1H), 7.10(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.34(d, J=8.10 Hz, 1H), 7.58(d, J=8.20 Hz, 1H), 7.64(d, J=1.27 Hz, 1H), 8.28(dd, J=8.10, 2.05 Hz, 1H), 9.20(d, J=1.56 Hz, 1H)
【0228】
表11
【表12】
【0229】
表12 タザロテン誘導体で処理されたRHE培養から得られた遺伝子発現データの定性的まとめ
【表13】
【0230】
本明細書中で記載される特許及び特許出願を包含するが、これらに限定されない全ての刊行物は、本明細書中で、それぞれの刊行物が具体的かつ個別に記載されて、完全に記載されているかのように、参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0231】
本発明をこのように記載したが、本発明は多くの方法で修飾または改変できることは明らかであろう。そのような修飾及び改変は、本発明の精神及び範囲から逸脱しないとされ、そのような修飾及び改変は全て以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩:
【化1】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)。
【請求項2】
nが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキルである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R1が置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環基である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項5】
R1が置換されていてもよいC2〜18アルケニルである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項6】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、C3〜7シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合に、前記基は、ハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルキル;−C(O)OR6、又は−OC(O)R6により独立して1個以上置換されていてもよく;
R4及びR5が水素又はC1〜6アルキルから独立して選択され;かつ
R6が水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R1が、C1〜18アルキル又は、ヒドロキシ、NR4R5、C1〜6アルコキシ若しくは−C(O)OR6により1個以上置換されたC1〜18アルキルである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R1が、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニルである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
R2が水素又はC1〜6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R1がフェニルである、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
R2がC1〜6アルキルである、請求項1、3、4、5又は10記載の化合物。
【請求項12】
R2がエチルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
nが0である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
R1がHであり、R2がHである、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;
6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;若しくは
6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イル−エチニル]−ニコチン酸エチルエステルである、請求項1記載の化合物;又はその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物と、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項17】
第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の医学的に活性な薬剤が過酸化ベンゾイルである、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
皮膚疾患の治療のための請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
治療を必要とするヒトの皮膚疾患を治療する方法であって、前記ヒトに、有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項21】
一般式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩:
【化2】
(式中、
R3が、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)。
【請求項22】
R3が水素又C1〜6アルキルである、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
R3が水素である、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
R3がC1〜6アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
C1〜6アルキルがエチルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸若しくは
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルである、請求項21記載の化合物;又はその医薬的に許容される塩。
【請求項27】
請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物と、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記第2の医学的に活性な薬剤が、過酸化ベンゾイル、抗生物質、コルチコステロイド及びビタミンD類似体からなる群から選択される、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
皮膚疾患の治療のための請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
治療を必要とするヒトの皮膚疾患を治療する方法であって、前記ヒトに有効量の請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項1】
一般式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩:
【化1】
(式中、nは0又は1であり;
R1は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基であり;かつ
R2は、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいシクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)。
【請求項2】
nが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキルである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R1が置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環基である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項5】
R1が置換されていてもよいC2〜18アルケニルである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項6】
R1が置換されていてもよいC1〜18アルキル、C2〜18アルケニル、C2〜18アルキニル、アリール、複素環、C3〜7シクロアルキル又はヘテロアリール基である場合に、前記基は、ハロゲン;ヒドロキシ;NR4R5;ヒドロキシ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルコキシ;ハロ置換C1〜6アルキル;C1〜6アルキル;−C(O)OR6、又は−OC(O)R6により独立して1個以上置換されていてもよく;
R4及びR5が水素又はC1〜6アルキルから独立して選択され;かつ
R6が水素又はC1〜6アルキルから独立して選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R1が、C1〜18アルキル又は、ヒドロキシ、NR4R5、C1〜6アルコキシ若しくは−C(O)OR6により1個以上置換されたC1〜18アルキルである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R1が、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいピリジニル、置換されていてもよいテトラヒドロピラニル、又は置換されていてもよいピペリジニルである、請求項4記載の化合物。
【請求項9】
R2が水素又はC1〜6アルキルである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R1がフェニルである、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
R2がC1〜6アルキルである、請求項1、3、4、5又は10記載の化合物。
【請求項12】
R2がエチルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
nが0である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
R1がHであり、R2がHである、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
(S)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
(R)−6−[4,4−ジメチル−2−(ピリジン−3−カルボニルオキシ)チオクロマン−6−イルエチニル]ニコチン酸エチルエステル;
6−[2−パルミトイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[2−(2−ヒドロキシ−アセトキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イルエチニル]−ニコチン酸エチルエステル;
6−[(2−(2−メトキシアセチル)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−アセチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−n−ブチリルオキシル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロメン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−ラウロイル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−イソブチリルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−リノエオイル(linoeoyll)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−リンレオリル(linleolyl)−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(N−メチル−4−ピペリジニルカルボキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−プロピオニル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−サリチリチル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(4−ピラニルオキシ−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−モノメチルアドピル−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;
6−[(2−(3−モノメチルアゼラウエート−4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−チオクロルネン−6−イル)エチニル]ピリジン−3−カルボン酸エチル;若しくは
6−[2−((S)−2−アミノ−3−メチル−ブチリルオキシ)−4,4−ジメチル−チオクロマン−6−イル−エチニル]−ニコチン酸エチルエステルである、請求項1記載の化合物;又はその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物と、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項17】
第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記第2の医学的に活性な薬剤が過酸化ベンゾイルである、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
皮膚疾患の治療のための請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
治療を必要とするヒトの皮膚疾患を治療する方法であって、前記ヒトに、有効量の請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩を投与することを含んでなる、方法。
【請求項21】
一般式(II)の化合物又はその医薬的に許容される塩:
【化2】
(式中、
R3が、水素、置換されていてもよいC1〜18アルキル、置換されていてもよいC2〜18アルケニル、置換されていてもよいC2〜18アルキニル、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいC3〜7シクロアルキル基、又は置換されていてもよいヘテロアリール基である)。
【請求項22】
R3が水素又C1〜6アルキルである、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
R3が水素である、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
R3がC1〜6アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
C1〜6アルキルがエチルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸若しくは
6−((4,4−ジメチル−2−オキソチオクロマン−6−イル)エチニル)ニコチン酸エチルである、請求項21記載の化合物;又はその医薬的に許容される塩。
【請求項27】
請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物と、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
第2の医学的に活性な薬剤を含んでなる、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記第2の医学的に活性な薬剤が、過酸化ベンゾイル、抗生物質、コルチコステロイド及びビタミンD類似体からなる群から選択される、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
皮膚疾患の治療のための請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
治療を必要とするヒトの皮膚疾患を治療する方法であって、前記ヒトに有効量の請求項21〜26のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩を投与することを含んでなる、方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【公表番号】特表2012−533564(P2012−533564A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520808(P2012−520808)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042225
【国際公開番号】WO2011/009023
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505437103)スティーフェル ラボラトリーズ インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042225
【国際公開番号】WO2011/009023
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(505437103)スティーフェル ラボラトリーズ インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]