説明

タッチパネル制御装置

【課題】アナログ抵抗膜方式タッチパネルの操作面上に電極層を設けることなく、アナログ抵抗膜方式タッチパネルの状態を検知することができるタッチパネル制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】アナログ抵抗膜方式タッチパネル1が押下されて、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3が接触すると、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3の接触箇所を示すX座標とY座標を検出する押下座標検出部9のほかに、X座標抵抗板2を静電センサとして利用して、静電容量を検出する静電容量検出部10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチパネルの操作状態を検知して、タッチパネルの不良などを検知することが可能なタッチパネル制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、より直感的かつ簡便な入力インタフェースを実現するために、タッチパネルを搭載している機器が増加している。
タッチパネルにおいては、ユーザが、例えば自己の指でディスプレイの表面に触れるなどの簡単な操作で入力を行うことができる。
しかし、ユーザが手をついて操作すること(所謂手つき)による誤動作、複数点を同時に押下してしまうことによる誤動作、タッチパネルの上部電極と下部電極が経年変化等の要因で接触してしまうことによる誤動作などが発生することがある。
【0003】
そこで、従来のタッチパネル制御装置では、タッチパネルの操作面上に電極層を設け、その電極層を利用して、タッチパネルに対する操作状態を検知することにより、上記のような誤動作の発生を検知するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−112659号公報(段落番号[0016]から[0017]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタッチパネル制御装置は以上のように構成されているので、タッチパネルの操作面上に電極層を設ければ、タッチパネルの状態(例えば、経年変化による上部電極と下部電極の接触)を検知することができる。しかし、タッチパネルの操作面上に電極層を設けると、装置コストが上昇するほか、その電極層を保護する保護材を重ねる必要があるため、上部電極と下部電極の接触位置を検出するアナログ抵抗膜タッチパネルにおいては反応加重が高くなり、ユーザがアナログ抵抗膜タッチパネルを強く押下しなければ、接触位置を検出することができなくなるなどの課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、アナログ抵抗膜方式タッチパネルの操作面上に電極層を設けることなく、アナログ抵抗膜方式タッチパネルの状態を検知することができるタッチパネル制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るタッチパネル制御装置は、アナログ抵抗膜方式タッチパネルが押下されて、水平座標抵抗板と垂直座標抵抗板が接触すると、その水平座標抵抗板と垂直座標抵抗板の接触箇所を示す水平座標及び垂直座標を検出する座標検出手段のほかに、その水平座標抵抗板又は垂直座標抵抗板の少なくとも一方を静電センサとして利用して、静電容量を検出する静電容量検出手段を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、アナログ抵抗膜方式タッチパネルが押下されて、水平座標抵抗板と垂直座標抵抗板が接触すると、その水平座標抵抗板と垂直座標抵抗板の接触箇所を示す水平座標及び垂直座標を検出する座標検出手段のほかに、その水平座標抵抗板又は垂直座標抵抗板の少なくとも一方を静電センサとして利用して、静電容量を検出する静電容量検出手段を設けるように構成したので、アナログ抵抗膜方式タッチパネルの操作面上に電極層を設けることなく、アナログ抵抗膜方式タッチパネルの状態を検知することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置を示す構成図であり、図2はこの発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置のアナログ抵抗膜方式タッチパネルの構造を示す斜視図である。
また、図3はこの発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置を示す回路図である。
【0010】
図において、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1はX座標抵抗板2とY座標抵抗板3とが所定の絶縁空隙を介して重合されているタッチパネルである。
水平座標抵抗板であるX座標抵抗板2はX方向(水平方向)の一方の端部に、X方向と直交しているY方向(垂直方向)に延びている線状のプラス電極であるX+電極2aが形成され、他方の端部にY方向に延びている線状のマイナス電極であるX−電極2bが形成されている。
垂直座標抵抗板であるY座標抵抗板3はY方向の一方の端部にX方向に延びている線状のプラス電極であるY+電極3aが形成され、他方の端部にX方向に延びている線状のマイナス電極であるY−電極3bが形成されている。
【0011】
制御部4はトランジスタ5〜8を制御して、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1に対する押下座標検出部9の接続を制御するとともに、押下座標検出部9及び静電容量検出部10の処理を制御する。
押下座標検出部9は制御部4によりアナログ抵抗膜方式タッチパネル1と接続されている状態で、ユーザによりアナログ抵抗膜方式タッチパネル1が押下されて、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3が接触すると、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3の接触箇所を示すX座標とY座標を検出する処理を実施する。なお、押下座標検出部9は座標検出手段を構成している。
【0012】
静電容量検出部10は制御部4により押下座標検出部9がアナログ抵抗膜方式タッチパネル1から切り離されている状態で、制御部4の指示の下、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1を構成しているX座標抵抗板2又はY座標抵抗板3、あるいは、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3の両方を静電センサとして利用して静電容量を検出する処理を実施する。なお、静電容量検出部10は静電容量検出手段を構成している。
図4はこの発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置の制御部4の処理内容を示すフローチャートである。
【0013】
次に動作について説明する。
制御部4は、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を押下している座標を検出する場合、制御モードを座標検出モードに設定する(ステップST1)。
即ち、制御部4は、トランジスタ5〜8を制御して、押下座標検出部9をアナログ抵抗膜方式タッチパネル1と接続する。
【0014】
制御部4は、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1が押下されている位置のX座標を検出する場合、トランジスタ5をOFF、トランジスタ6をOFF、トランジスタ7をON、トランジスタ8をONに設定する。
この状態で、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を押下して、上部電極であるX座標抵抗板2の任意の位置(ユーザの指が触れている位置)がY座標抵抗板3と接触すると、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3のX方向の接触位置に応じた電圧がY座標抵抗板3を通して、押下座標検出部9のAD1端子に入力される。
押下座標検出部9は、AD1端子からX方向の接触位置に応じた電圧を受けると、その電圧をX座標に換算する。
【0015】
制御部4は、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1が押下されている位置のY座標を検出する場合、トランジスタ5をON、トランジスタ6をON、トランジスタ7をOFF、トランジスタ8をOFFに設定する。
この状態で、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を押下して、上部電極であるX座標抵抗板2の任意の位置(ユーザの指が触れている位置)がY座標抵抗板3と接触すると、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3のY方向の接触位置に応じた電圧がX座標抵抗板2を通して、押下座標検出部9のAD2端子に入力される。
押下座標検出部9は、AD2端子からY方向の接触位置に応じた電圧を受けると、その電圧をY座標に換算する。
【0016】
制御部4は、押下座標検出部9が押下座標の検出処理を完了すると(ステップST2)、制御モードを静電容量検出モードに設定する(ステップST3)。
即ち、制御部4は、トランジスタ5〜8をオフに設定して、押下座標検出部9をアナログ抵抗膜方式タッチパネル1から切り離すようにする。
【0017】
制御部4は、押下座標検出部9をアナログ抵抗膜方式タッチパネル1から切り離すと、静電容量の検出指令を静電容量検出部10に出力する。
静電容量検出部10は、制御部4から静電容量の検出指令を受けると、例えば、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1のX座標抵抗板2を静電センサとして利用して静電容量を検出する(ステップST4)。
静電容量の検出方法には、チャージトランスファー方式、差動電流チャージ方式、リラクゼーションオシレータ方式などが存在するが、この実施の形態1では、外部抵抗が不要であり、静電センサを構成する電極を接続することで、静電容量の検出が可能なリラクゼーションオシレータ方式を用いるものとする。
【0018】
以下、静電容量検出部10における静電容量の検出処理を具体的に説明する。
まず、静電容量検出部10は、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を操作していない未操作時の静電容量(ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネル1に近づけていない時の静電容量)を検出する。
即ち、静電容量検出部10は、CHA端子からアナログ抵抗膜方式タッチパネル1のX座標抵抗板2に電流を流すことにより、X座標抵抗板2の電極2a,2bと図示せぬグランド間に形成される寄生容量C1に電荷の充電を行う。
【0019】
静電容量検出部10は、電荷の充電により寄生容量C1の電圧が基準電圧(例えば、4V)まで上昇すると、CHA端子を図示せぬグランドに接続することにより、寄生容量C1に充電されている電荷を放電する。
静電容量検出部10は、電荷の放電により寄生容量C1の電圧が0Vになると、電荷の充電の開始から放電が完了するまでの経過時間t1を測定する。
静電容量検出部10は、経過時間t1を測定すると、上記の充放電を所定回数A(例えば、100回)だけ繰り返し、下記に示すように、充放電の経過時間t1を累積する。
T1=Σt1
ただし、ΣはA個のt1の総和を求める数学記号である。
【0020】
次に、静電容量検出部10は、ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネル1に近づける操作時の静電容量を検出する。
即ち、静電容量検出部10は、CHA端子からアナログ抵抗膜方式タッチパネル1のX座標抵抗板2に電流を流すことにより、X座標抵抗板2の電極2a,2bと図示せぬグランド間に形成される寄生容量C1に電荷の充電を行う。
この場合、X座標抵抗板2の電極2a,2bとユーザの指との間にも容量C2が発生するので、全体の容量C3は、寄生容量C1と容量C2の合計量になる。
【0021】
静電容量検出部10は、電荷の充電により寄生容量C1の電圧が基準電圧(例えば、4V)まで上昇すると、CHA端子を図示せぬグランドに接続することにより、寄生容量C1に充電されている電荷を放電する。
静電容量検出部10は、電荷の放電により寄生容量C1の電圧が0Vになると、電荷の充電の開始から放電が完了するまでの経過時間t2を測定する。
操作時の場合、全体の容量C3が容量C2の分だけ、未操作時より増加しているので、経過時間t2は、経過時間t1より長い時間になる。
静電容量検出部10は、経過時間t2を測定すると、上記の充放電を所定回数A(例えば、100回)だけ繰り返し、下記に示すように、充放電の経過時間t2を累積する。
T2=Σt2
ただし、ΣはA個のt2の総和を求める数学記号である。
【0022】
静電容量検出部10は、未操作時の経過時間T1と、操作時の経過時間T2とを測定すると、その経過時間T1とT2の差分、あるいは、その経過時間T1とT2の比を容量値の変化として捉え、その容量値の変化が所定の閾値TH1以下であれば、未操作時においても、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1のX座標抵抗板2とY座標抵抗板3の一部が既に接触している可能性、あるいは、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3の一部がもう少しで接触してしまう可能性が高いので、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1の不良を認定する。
また、静電容量検出部10は、上記の容量値の変化が所定の閾値TH2(ただし、TH1<TH2)以上であれば、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1に対するユーザの手つきを認定する。
【0023】
ここでは、制御部4が制御モードを静電容量検出モードに設定すると、静電容量検出部10が未操作時の経過時間T1と、操作時の経過時間T2とを測定するものについて示したが、未操作時の経過時間T1については、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1が経年劣化を起こしていない正常状態のとき、静電容量検出部10が事前に測定して記憶しておき、制御部4が制御モードを静電容量検出モードに設定すると、操作時の経過時間T2のみを測定するようにしてもよい。
【0024】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1が押下されて、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3が接触すると、X座標抵抗板2とY座標抵抗板3の接触箇所を示すX座標とY座標を検出する押下座標検出部9のほかに、X座標抵抗板2を静電センサとして利用して、静電容量を検出する静電容量検出部10を設けるように構成したので、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1の操作面上に電極層を設けることなく、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1の状態を検知することができる効果を奏する。
【0025】
また、この実施の形態1によれば、静電容量検出部10が、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値TH1以下であれば、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1の不良を認定するように構成したので、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1の不良を確実に検知することができる効果を奏する。
【0026】
この実施の形態1によれば、静電容量検出部10が、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネル1を操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値TH2以上であれば、アナログ抵抗膜方式タッチパネル1に対するユーザの手つきを認定するように構成したので、ユーザの手つきによる誤動作を検出することができる効果を奏する。
【0027】
なお、この実施の形態1では、静電容量検出部10がCHA端子からアナログ抵抗膜方式タッチパネル1のX座標抵抗板2に電流を流すことにより、X座標抵抗板2を静電センサとして利用するものについて示したが、静電容量検出部10がCHA端子からアナログ抵抗膜方式タッチパネル1のY座標抵抗板3に電流を流すことにより、Y座標抵抗板3を静電センサとして利用するようにしてもよい。
あるいは、静電容量検出部10がCHA端子からX座標抵抗板2及びY座標抵抗板3の両方に電流を流すことにより、X座標抵抗板2及びY座標抵抗板3の両方を静電センサとして利用するようにしてもよい。
【0028】
また、この実施の形態1では、押下座標検出部9が押下座標を検出してから、静電容量検出部10が静電容量を検出するものについて示したが、図5に示すように、静電容量検出部10が静電容量を検出してから、押下座標検出部9が押下座標を検出するようにしてもよい。
【0029】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置を示す構成図であり、図7はこの発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置のマトリックス抵抗膜方式タッチパネルの構造を示す斜視図である。
また、図8はこの発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置を示す回路図である。
【0030】
図において、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11はX座標抵抗板12とY座標抵抗板13とが所定の絶縁空隙を介して重合されているタッチパネルである。
水平座標抵抗板であるX座標抵抗板12はY方向に延びている線状の電極Xn(n=1,2,・・・,N)がX方向に複数本配置されている。
垂直座標抵抗板であるY座標抵抗板13はX方向に延びている線状の電極Ym(m=1,2,・・・,M)がY方向に複数本配置されている。
【0031】
制御部14はトランジスタアレイ17を制御して、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のX座標抵抗板12に対するX座標検出部19aの接続を制御するとともに、マトリックス押下座標検出部19及び静電容量検出部20の処理を制御する。
トランジスタ15は制御部14によりONの状態にされると、X座標抵抗板12における電極X1,X2,・・・,XNをグランドに落とすスイッチング素子である。
トランジスタ16は制御部14によりONの状態にされると、Y座標抵抗板13における電極Y1,Y2,・・・,YMをグランドに落とすスイッチング素子である。
トランジスタ17は制御部14によりOFFの状態にされると、マトリックス押下座標検出部19のX座標検出部19aをX座標抵抗板12から切り離すスイッチング素子である。
アナログスイッチ18はX座標抵抗板12における電極X1,X2,・・・,XNを1つに結合するスイッチング素子である。
【0032】
マトリックス押下座標検出部19はX座標検出部19aとY座標検出部19bから構成されている。
X座標検出部19aは制御部14によりマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11と接続されている状態で、ユーザによりマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が押下されて、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13が接触すると、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13の接触箇所を示すX座標を検出する処理を実施する。
Y座標検出部19bはユーザによりマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が押下されて、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13が接触すると、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13の接触箇所を示すY座標を検出する処理を実施する。
なお、マトリックス押下座標検出部19は座標検出手段を構成している。
【0033】
静電容量検出部20は制御部14の指示の下、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11を構成しているX座標抵抗板12又はY座標抵抗板13、あるいは、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13の両方を静電センサとして利用して静電容量を検出する処理を実施する。なお、静電容量検出部20は静電容量検出手段を構成している。
図9はこの発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置の制御部14の処理内容を示すフローチャートである。
【0034】
次に動作について説明する。
制御部14は、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11を押下している座標を検出する場合、制御モードを座標検出モードに設定する(ステップST11)。
即ち、制御部14は、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が押下されている位置のX座標を検出する場合、トランジスタアレイ15をOFF、トランジスタアレイ16をON、トランジスタアレイ17をONに設定する。
この状態で、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11を押下すると、上部電極であるX座標抵抗板12の何れかの電極Xn(ユーザの指が触れている位置にある電極)が、Y座標抵抗板13の何れかの電極Ymと接触する。
このとき、トランジスタアレイ16がONであるため、Y座標抵抗板13における全ての電極Y1,Y2,・・・,YMがグランド電位であり、ユーザの指が触れている位置にある電極Xnの電位もグランドに落ちる。
【0035】
押下座標検出部9のX座標検出部19aは、電位入力端子IX1,IX2,・・・,IXNからトランジスタアレイ17を通じて、X座標抵抗板12における全ての電極X1,X2,・・・,XNの電位を入力し、電位がグランドに落ちている電極Xnを検出する。
押下座標検出部9のX座標検出部19aは、電位がグランドに落ちている電極Xnを検出すると、その電極Xnが配置されている位置をX座標に換算する。
【0036】
制御部14は、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が押下されている位置のY座標を検出する場合、トランジスタアレイ15をON、トランジスタアレイ16をOFF、トランジスタアレイ17をOFFに設定する。
この状態で、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11を押下すると、上部電極であるX座標抵抗板12の何れかの電極Xn(ユーザの指が触れている位置にある電極)が、Y座標抵抗板13の何れかの電極Ymと接触する。
このとき、トランジスタアレイ15がONであるため、X座標抵抗板12における全ての電極X1,X2,・・・,XNがグランド電位であり、ユーザの指が触れている位置にある電極Ymの電位もグランドに落ちる。
【0037】
押下座標検出部9のY座標検出部19bは、電位入力端子IY1,IY2,・・・,IYMからY座標抵抗板13における全ての電極Y1,Y2,・・・,YMの電位を入力し、電位がグランドに落ちている電極Ymを検出する。
押下座標検出部9のY座標検出部19bは、電位がグランドに落ちている電極Ymを検出すると、その電極Ymが配置されている位置をY座標に換算する。
【0038】
制御部14は、マトリックス押下座標検出部19が押下座標の検出処理を完了すると(ステップST12)、制御モードを静電容量検出モードに設定する(ステップST13)。
即ち、制御部14は、トランジスタアレイ15〜17をオフに設定して、マトリックス押下座標検出部19のX座標検出部19aをX座標抵抗板12から切り離すようにする。
【0039】
制御部14は、マトリックス押下座標検出部19のX座標検出部19aをX座標抵抗板12から切り離すと、静電容量の検出指令を静電容量検出部20に出力する。
静電容量検出部20は、制御部14から静電容量の検出指令を受けると、例えば、マトリックス押下座標検出部19のX座標検出部19aを静電センサとして利用して静電容量を検出する(ステップST14)。
【0040】
以下、静電容量検出部20における静電容量の検出処理を具体的に説明する。
まず、静電容量検出部20は、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11を操作していない未操作時の静電容量(ユーザが指をマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11に近づけていない時の静電容量)を検出する。
即ち、静電容量検出部20は、CHA端子からマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のX座標抵抗板12に電流を流すことにより、X座標抵抗板12の電極Xnと図示せぬグランド間に形成される寄生容量C1に電荷の充電を行う。
【0041】
静電容量検出部20は、電荷の充電により寄生容量C4の電圧が基準電圧(例えば、4V)まで上昇すると、CHA端子を図示せぬグランドに接続することにより、寄生容量Cに充電されている電荷を放電する。
静電容量検出部20は、電荷の放電により寄生容量C4の電圧が0Vになると、電荷の充電の開始から放電が完了するまでの経過時間t3を測定する。
静電容量検出部20は、経過時間t3を測定すると、上記の充放電を所定回数B(例えば、100回)だけ繰り返し、下記に示すように、充放電の経過時間t3を累積する。
T3=Σt3
ただし、ΣはB個のt3の総和を求める数学記号である。
【0042】
次に、静電容量検出部20は、ユーザが指をマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11に近づける操作時の静電容量を検出する。
即ち、静電容量検出部20は、CHA端子からマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のX座標抵抗板12に電流を流すことにより、X座標抵抗板12の電極Xnと図示せぬグランド間に形成される寄生容量C4に電荷の充電を行う。
この場合、X座標抵抗板12の電極Xnとユーザの指との間にも容量C5が発生するので、全体の容量C6は、寄生容量C4と容量C5の合計量になる。
【0043】
静電容量検出部20は、電荷の充電により寄生容量C4の電圧が基準電圧(例えば、4V)まで上昇すると、CHA端子を図示せぬグランドに接続することにより、寄生容量C4に充電されている電荷を放電する。
静電容量検出部20は、電荷の放電により寄生容量C4の電圧が0Vになると、電荷の充電の開始から放電が完了するまでの経過時間t4を測定する。
操作時の場合、全体の容量C6が容量C5の分だけ、未操作時より増加しているので、経過時間t4は、経過時間t3より長い時間になる。
静電容量検出部20は、経過時間t4を測定すると、上記の充放電を所定回数B(例えば、100回)だけ繰り返し、下記に示すように、充放電の経過時間t4を累積する。
T4=Σt4
ただし、ΣはB個のt4の総和を求める数学記号である。
【0044】
静電容量検出部20は、未操作時の経過時間T3と、操作時の経過時間T4とを測定すると、その経過時間T3とT4の差分、あるいは、その経過時間T3とT4の比を容量値の変化として捉え、その容量値の変化が所定の閾値TH1以下であれば、未操作時においても、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のX座標抵抗板12とY座標抵抗板13の一部が既に接触している可能性、あるいは、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13の一部がもう少しで接触してしまう可能性が高いので、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11の不良を認定する。
また、静電容量検出部20は、上記の容量値の変化が所定の閾値TH2(ただし、TH1<TH2)以上であれば、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11に対するユーザの手つきを認定する。
【0045】
ここでは、制御部14が制御モードを静電容量検出モードに設定すると、静電容量検出部20が未操作時の経過時間T3と、操作時の経過時間T4とを測定するものについて示したが、未操作時の経過時間T3については、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が経年劣化を起こしていない正常状態のとき、静電容量検出部20が事前に測定して記憶しておき、制御部14が制御モードを静電容量検出モードに設定すると、操作時の経過時間T4のみを測定するようにしてもよい。
【0046】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11が押下されて、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13が接触すると、X座標抵抗板12とY座標抵抗板13の接触箇所を示すX座標とY座標を検出するマトリックス押下座標検出部19のほかに、X座標抵抗板12を静電センサとして利用して、静電容量を検出する静電容量検出部20を設けるように構成したので、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11の操作面上に電極層を設けることなく、マトリックス抵抗膜方式タッチパネル11の状態を検知することができる効果を奏する。
【0047】
なお、この実施の形態2では、静電容量検出部20がCHA端子からマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のX座標抵抗板12に電流を流すことにより、X座標抵抗板12を静電センサとして利用するものについて示したが、静電容量検出部20がCHA端子からマトリックス抵抗膜方式タッチパネル11のY座標抵抗板13に電流を流すことにより、Y座標抵抗板13を静電センサとして利用するようにしてもよい。
あるいは、静電容量検出部20がCHA端子からX座標抵抗板12及びY座標抵抗板13の両方に電流を流すことにより、X座標抵抗板12及びY座標抵抗板13の両方を静電センサとして利用するようにしてもよい。
【0048】
また、この実施の形態2では、マトリックス押下座標検出部19が押下座標を検出してから、静電容量検出部20が静電容量を検出するものについて示したが、静電容量検出部20が静電容量を検出してから、マトリックス押下座標検出部19が押下座標を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置のアナログ抵抗膜方式タッチパネルの構造を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置の制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1によるタッチパネル制御装置の制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置のマトリックス抵抗膜方式タッチパネルの構造を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置を示す回路図である。
【図9】この発明の実施の形態2によるタッチパネル制御装置の制御部の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 アナログ抵抗膜方式タッチパネル、2 X座標抵抗板(水平座標抵抗板)、2a X+電極(プラス電極)、2b X−電極(マイナス電極)、3 Y座標抵抗板(垂直座標抵抗板)、3a Y+電極(プラス電極)、3b Y−電極(マイナス電極)、4 制御部、5〜8 トランジスタ、9 押下座標検出部(座標検出手段)、10 静電容量検出部(静電容量検出手段)、11 マトリックス抵抗膜方式タッチパネル、12 X座標抵抗板(水平座標抵抗板)、13 Y座標抵抗板(垂直座標抵抗板)、14 制御部、15〜17 トランジスタアレイ、18 アナログスイッチ、19 マトリックス押下座標検出部(座標検出手段)、19a X座標検出部、19b Y座標検出部、20 静電容量検出部(静電容量検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の一方の端部に垂直方向に延びている線状のプラス電極が形成され、他方の端部に垂直方向に延びている線状のマイナス電極が形成されている水平座標抵抗板と、垂直方向の一方の端部に水平方向に延びている線状のプラス電極が形成され、他方の端部に水平方向に延びている線状のマイナス電極が形成されている垂直座標抵抗板とが所定の絶縁空隙を介して重合されているアナログ抵抗膜方式タッチパネルと、上記アナログ抵抗膜方式タッチパネルが押下されて、上記水平座標抵抗板と上記垂直座標抵抗板が接触すると、上記水平座標抵抗板と上記垂直座標抵抗板の接触箇所を示す水平座標及び垂直座標を検出する座標検出手段と、上記水平座標抵抗板又は上記垂直座標抵抗板の少なくとも一方を静電センサとして利用して静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えたタッチパネル制御装置。
【請求項2】
静電容量検出手段は、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネルを操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値以下であれば、上記アナログ抵抗膜方式タッチパネルの不良を認定することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル制御装置。
【請求項3】
静電容量検出手段は、ユーザがアナログ抵抗膜方式タッチパネルを操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をアナログ抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値以上であれば、上記アナログ抵抗膜方式タッチパネルに対するユーザの手つきを認定することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル制御装置。
【請求項4】
垂直方向に延びている線状の電極が水平方向に複数本配置されている水平座標抵抗板と、水平方向に延びている線状の電極が垂直方向に複数本配置されている垂直座標抵抗板とが所定の絶縁空隙を介して重合されているマトリックス抵抗膜方式タッチパネルと、上記マトリックス抵抗膜方式タッチパネルが押下されて、上記水平座標抵抗板と上記垂直座標抵抗板が接触すると、上記水平座標抵抗板と上記垂直座標抵抗板の接触箇所を示す水平座標及び垂直座標を検出する座標検出手段と、上記水平座標抵抗板又は上記垂直座標抵抗板の少なくとも一方を静電センサとして利用して静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えたタッチパネル制御装置。
【請求項5】
静電容量検出手段は、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネルを操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をマトリックス抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値以下であれば、上記マトリックス抵抗膜方式タッチパネルの不良を認定することを特徴とする請求項4記載のタッチパネル制御装置。
【請求項6】
静電容量検出手段は、ユーザがマトリックス抵抗膜方式タッチパネルを操作していない未操作時の静電容量を検出するとともに、ユーザが指をマトリックス抵抗膜方式タッチパネルに近づける操作時の静電容量を検出し、未操作時の静電容量と操作時の静電容量の差分又は比が閾値以上であれば、上記マトリックス抵抗膜方式タッチパネルに対するユーザの手つきを認定することを特徴とする請求項4記載のタッチパネル制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−152468(P2008−152468A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338826(P2006−338826)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】