説明

タッチパネル装置、表示装置、タッチパネル装置のキャリブレーション方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】タッチパネル入力受付領域外の状態にかかわらず、正確に入力操作を検出できるタッチパネル装置を実現する。
【解決手段】本発明に係るタッチパネル装置50は、タッチパネル40の静電容量値の変化に基づいて、タッチパネル40に対する入力操作を検出する検出部51と、タッチパネル40の静電容量値のキャリブレーションを実行するキャリブレーション部53と、タッチパネル40の入力受付領域外における静電容量値の変化が所定以上であるか否かを判定する判定部54とを備える。キャリブレーション部53は、判定部54が、入力受付領域外における静電容量値の変化が所定以上であると判定した場合に、キャリブレーションを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに対する入力操作を検出するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末やPDAなどの電子機器は、ユーザが操作するための入力手段として、タッチパネルを用いる機器が主流となりつつある。タッチパネルは、ユーザの指が接触することにより、タッチ位置に応じた信号を出力する入力デバイスであり、タッチ位置を検出する方式として、抵抗膜方式や静電容量方式などがある。
【0003】
図6は、一般的な静電容量方式のタッチパネル100の概略構成を示している。タッチパネル100は、m行のセンスラインSL1〜SLm、n列のドライブラインDL1〜DLn、m×n個の静電容量C11〜Cmn、n個のアンプAMP1〜AMPn、n個の帰還容量Cf1〜Cfnを備えている。帰還容量Cf1〜Cfnはそれぞれ、アンプAMP1〜AMPnの負帰還回路に設けられている。ドライブラインDL1〜DLnとセンスラインSL1〜SLmとは、格子状に配置されており、静電容量C11〜Cmnはそれぞれ、センスラインSL1〜SLmとドライブラインDL1〜DLnとの各交点に形成されている。センスラインSL1〜SLmはそれぞれ、アンプAMP1〜AMPnの反転入力端子に接続されている。アンプAMP1〜AMPnの非反転入力端子は、接地されている。
【0004】
ドライブラインDL1〜DLnに、電圧hi1(V)〜him(V)が順次印加されると、静電容量C11〜Cmnに電荷が蓄えられる。タッチパネル100に指が接近すると、対応する静電容量の容量値が変化し、その静電容量が接続されているセンスラインの電流値が変化する。これにより、アンプAMP1〜AMPnの出力を読み取ることで、各静電容量C11〜Cmnの容量値の変化を検出することができる。
【0005】
図7は、タッチパネルの出力に基づいて検出された、静電容量の容量値(以下「静電容量値」とする)の分布を示している。指が接近すると、静電容量値の変化が生じるため、静電容量値の変化のピークを示す座標に基づいて、タッチ位置を検出することができる。
【0006】
図7では、タッチされていない領域において、静電容量値の分布が平坦になっている。しかしながら、実際のタッチパネルでは、パネル形状のバラツキ、静電容量のバラツキなどによって、図8に示すように、タッチパネルに何も接触していない非接触状態であっても、静電容量値の分布が不均一となる。この場合、タッチパネルの感度が不均一であるため、タッチパネルに指が接近しても、静電容量値の変化のピークを読み取ることが困難である。
【0007】
これに対し、タッチ位置を正確に検出するために、感度キャリブレーションを行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。具体的には、タッチパネルの出力値から、非接触状態における静電容量値の分布を差し引いた補正出力に基づいて、タッチ位置を検出する。
【0008】
例えば、図8の分布を示す出力から、同一の分布を示す値を差し引くと、図9(a)に示すように、非接触状態において、平坦な分布を示す補正出力を得ることができる。キャリブレーション実行後にタッチ操作を行うと、図9(b)に示すように、タッチ位置以外における静電容量値の分布が平坦であるので、タッチ位置を正確に検出することができる。
【0009】
タッチパネルの静電容量値の分布は、温度変化、環境変動などにより変化するため、上記の感度キャリブレーションは、製造時の他、電源投入時などに定期的に行う必要がある。また、指が近接すると静電容量値の分布が変化するため、特許文献1には、指が近接していない状態で感度キャリブレーションを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−257046号公報(2010年11月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の従来構成では、入力受付領域以外の領域に指などが接触した状態で、タッチ操作を行うことができないという問題が生ずる。
【0012】
例えば、図10に示す携帯端末の操作画面では、破線枠内の入力受付領域REにタッチ操作することにより、タッチ操作された入力受付領域RE内にアイコンで表示されているオブジェクトの選択を行うことができる。しかしながら、入力受付領域RE外の領域、例えば、操作画面左端の領域RNに指などが接触した状態では、入力受付領域REにタッチ操作しても、オブジェクトの選択を行うことができない場合がある。
【0013】
図11は、図10に示す操作画面の領域RNに指が接触した状態における、タッチパネルの各静電容量値の分布を示している。この状態では、静電容量値の分布が不均一であるため、図10に示す操作画面の入力受付領域REにタッチ操作をしても、静電容量値の変化のピークを検出することは難しい。
【0014】
特に携帯端末を操作する場合、図10に示す領域RNは、携帯端末を保持する指が意図せずに接触することが多い領域である。このため、使用状態によっては、機器が故障していないにもかかわらず、入力受付領域REへのタッチ操作が検出されないという事態が頻繁に発生してしまう。
【0015】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、タッチパネル入力受付領域外の状態にかかわらず、正確に入力操作を検出できるタッチパネル装置およびタッチパネル装置のキャリブレーション方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチパネル装置は、タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション手段と、前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定手段とを備え、前記キャリブレーション手段は、前記判定手段が、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定した場合に、前記キャリブレーションを実行することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、タッチパネルの入力受付領域外への指の接触等により、入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定された場合に、キャリブレーション手段がタッチパネルの状態のキャリブレーションを実行する。これにより、検出手段は、入力受付領域に対する入力操作を正確に検出できるようになる。したがって、タッチパネルの入力受付領域外の状態にかかわらず、正確に入力操作を検出できるタッチパネル装置を実現することができる。
【0018】
本発明に係るタッチパネル装置では、前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0019】
本発明に係るタッチパネル装置では、前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0020】
本発明に係るタッチパネル装置では、前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、入力受付領域外において、タッチパネルの状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合、タッチパネルの状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合、および、タッチパネル状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合のいずれかの場合に、キャリブレーションが実行される。したがって、入力受付領域外に指が意図せずに接触した場合などに、入力操作が検出できなくなるといった不都合を回避することができる。
【0022】
本発明に係るタッチパネル装置では、前記判定手段が前記判定を行うための基準値を変更可能に設定する設定手段を備えることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、ユーザの指の大きさや、タッチパネル装置を備える携帯端末の形状に応じて、キャリブレーションを実行する条件を適宜設定することができる。
【0024】
本発明に係る表示装置は、画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイ上に設けられるタッチパネルと、前記タッチパネルに対する入力操作を検出するタッチパネル装置とを備える表示装置であって、前記タッチパネル装置として、上記いずれかのタッチパネル装置を備えることを特徴としている。
【0025】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチパネル装置のキャリブレーション方法は、タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定ステップと、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定された場合に、前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行ステップとを有することを特徴としている。
【0026】
上記の構成によれば、タッチパネルの入力受付領域外への指の接触等により、入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定された場合に、キャリブレーション実行ステップにおいて、タッチパネルの状態のキャリブレーションが実行される。これにより、検出ステップでは、入力受付領域に対する入力操作を正確に検出できるようになる。したがって、タッチパネルの入力受付領域外の状態にかかわらず、正確に入力操作を検出できるタッチパネル装置のキャリブレーション方法を実現することができる。
【0027】
本発明に係るタッチパネル装置のキャリブレーション方法では、前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0028】
本発明に係るタッチパネル装置のキャリブレーション方法では、前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0029】
本発明に係るタッチパネル装置のキャリブレーション方法では、前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、入力受付領域外において、タッチパネルの状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合、タッチパネルの状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合、および、タッチパネル状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合のいずれかの場合に、キャリブレーションが実行される。したがって、入力受付領域外に指が意図せずに接触した場合などに、入力操作が検出できなくなるといった不都合を回避することができる。
【0031】
本発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネル装置のキャリブレーション方法では、前記タッチパネルは、静電容量を備えた静電容量方式のタッチパネルであり、前記状態は、各静電容量の容量値であってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、各静電容量の容量値の変化に基づいて、タッチパネルに対する入力操作が検出され、入力受付領域外において、前記容量値の変化が所定以上である場合に、キャリブレーションが実行される。
【0033】
本発明に係るプログラムは、上記タッチパネル装置を動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させる。
【0034】
上記プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明に係るタッチパネル装置は、タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション手段と、前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定手段とを備え、前記キャリブレーション手段は、前記判定手段が、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定した場合に、前記キャリブレーションを実行する。また、本発明に係るタッチパネル装置のキャリブレーション方法は、タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定ステップと、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定された場合に、前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行ステップとを有する。したがって、タッチパネル入力受付領域外の状態にかかわらず、正確に入力操作を検出できるタッチパネル装置およびタッチパネル装置のキャリブレーション方法を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯端末の概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記携帯端末のタッチパネル装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるキャリブレーションの実行手順を示すフローチャートである。
【図4】タッチパネル装置の検出部によって検出された、タッチパネルの各静電容量値の分布を示す図であり、(a)は、電源投入時の状態を示しており、(b)は、キャリブレーション実行後の状態を示している。
【図5】タッチパネル装置の検出部によって検出された、タッチパネルの各静電容量値の分布を示す図であり、(a)は、入力受付領域外に指などが接触した状態を示しており、(b)は、キャリブレーション実行後の状態を示している。
【図6】一般的な静電容量方式のタッチパネルの概略構成を示す図である。
【図7】タッチ操作が行われた状態における、タッチパネルの静電容量値の分布を示す図である。
【図8】キャリブレーション実行前における、タッチパネルの静電容量値の分布を示す図である。
【図9】(a)は、キャリブレーション実行後における、タッチパネルの静電容量値の分布を示す図であり、(b)は、図9(a)に示す状態からタッチ操作が行われた場合の、タッチパネルの静電容量値の分布を示す図である。
【図10】携帯端末の操作画面の一例を示す図である。
【図11】入力受付領域外になどが接触した状態における、タッチパネルの静電容量値の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の一形態について図1〜図5に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0038】
(携帯端末の構成)
図1は、本実施形態に係る携帯端末1の概略構成を示すブロック図である。携帯端末1は、制御部10、無線通信部20、ディスプレイ30、タッチパネル40およびタッチパネル装置50を備えている。
【0039】
制御部10は、携帯端末1の各種機能を制御するものである。例えば、制御部10は、アプリケーションの実行制御、無線通信部20によるデータの送受信制御、ディスプレイ30における画像の表示制御などを行う。
【0040】
無線通信部20は、無線によって外部機器とのデータを送受信する機能を有している。
【0041】
ディスプレイ30は、携帯端末1を薄型に構成するために、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイのような平板型ディスプレイが好適に用いられる。
【0042】
タッチパネル40は、ディスプレイ30の表示画面上でタッチ操作を行うために設けられる入力機器である。タッチパネル40に対してタッチ操作が行われると、タッチパネル40は、タッチ位置に応じた信号をタッチパネル装置50に出力する。本実施形態では、タッチパネル40として、静電容量方式のタッチパネルを用いており、タッチパネル40の構成は、図6に示すタッチパネル100と略同一であってもよい。
【0043】
タッチパネル装置50は、タッチパネル40の出力信号に基づいて、タッチパネル40に対する入力操作を検出し、検出した操作内容を制御部10に出力するものである。また、使用環境の変動によって、タッチパネル40の状態が変化しタッチパネル40の出力にばらつきが生じるため、タッチパネル装置50は、タッチ位置を正確に検出するために、タッチパネル40の状態のキャリブレーション(感度キャリブレーション)を行う機能を有している。
【0044】
(タッチパネル装置の構成)
図2は、タッチパネル装置50の構成を示すブロック図である。タッチパネル装置50は、検出部51、校正値記憶部52、キャリブレーション部53、判定部54、パラメータ記憶部55およびパラメータ設定部56を備えている。
【0045】
検出部51は、タッチパネル40からの出力に基づいて、タッチパネル40に対する入力操作を検出する機能を有している。より具体的には、検出部51は、タッチパネル40の静電容量値の変化がピークを示す位置をタッチ位置として検出し、当該タッチ位置を示す値を制御部10および判定部54に出力する。
【0046】
校正値記憶部52は、タッチパネル40の状態(静電容量値のばらつき)にかかわらず、検出部51が正確なタッチ位置を検出するための校正値を記憶するメモリである。検出部51は、タッチパネル40の出力から校正値記憶部52に記憶された校正値を差し引いた値を出力する。
【0047】
キャリブレーション部53は、タッチパネル40の状態のキャリブレーションを実行する機能を有している。具体的には、キャリブレーション部53は、キャリブレーション実行時における各静電容量値を新たな校正値として校正値記憶部52に記憶させる。例えば、タッチパネル40に何も接触していない状態でキャリブレーションを実行することにより、校正値記憶部52には、非接触状態における各静電容量値が校正値として記憶される。これにより、タッチパネル40の出力から校正値を差し引いた値が、非接触状態からの各静電容量値の変化を示す値となるため、検出部51は、正確にタッチ位置を検出することができる。
【0048】
判定部54は、キャリブレーション部53によるキャリブレーションの実行要否を判定するものである。具体的には、判定部54は、パラメータ記憶部55に記憶された各種基準値(パラメータ)を参照して、タッチパネル40の入力受付領域外における状態の変化すなわち、静電容量値の変化が所定以上であるか否かに基づいて、キャリブレーションの実行要否を判定している。本明細書において、入力受付領域とは、タッチパネル40を備える機器に対する入力操作を有効に受け付けることができる領域を意味しており、例えば、アイコンの選択、画面の拡大・縮小、画面のスクロールなどの操作を受け付ける領域が挙げられる。
【0049】
パラメータ記憶部55は、判定部54がキャリブレーションの実行要否の判定を行うためのパラメータを格納するメモリである。前記パラメータとして、パラメータ記憶部55は、入力受付領域情報、タッチ範囲情報およびタッチ継続時間情報を記憶している。
【0050】
後述するように、判定部54は、タッチパネル40の入力受付領域外において、静電容量値が変化したタッチ範囲がタッチ範囲情報の示す値以上であり、かつ、タッチ継続時間がタッチ継続時間情報の示す値以上である場合に、キャリブレーション部53にキャリブレーションの実行を指示する。
【0051】
パラメータ設定部56は、パラメータ記憶部55に記憶された各パラメータを変更可能に設定する機能を有している。例えば、ディスプレイ30にパラメータの設定画面を表示させ、当該設定画面においてパラメータの変更を受け付けた場合に、パラメータ設定部56は、タッチ範囲情報およびタッチ継続時間情報の各パラメータを変更する。また、入力受付領域は画面毎に異なるため、パラメータ設定部56は、ディスプレイ30に表示される画面が切り替わる毎に、制御部10から入力される情報に基づき、切り替え後の画面の入力受付領域を示す入力受付領域情報を設定し、パラメータ記憶部55に記憶させる。これにより、パラメータ記憶部55が記憶する入力受付領域情報は、ディスプレイ30に表示される画面に応じた入力受付領域を示す値に自動的に更新される。
【0052】
本実施形態では、タッチ範囲情報が1cm、タッチ継続時間情報が2秒に設定されている。これにより、判定部54は、タッチパネル40の入力受付領域外においてタッチ操作が検出され、タッチ範囲が所定範囲(1cm)以上、かつ、タッチ継続時間が所定時間(2秒)以上である場合に、キャリブレーション部53にキャリブレーションの実行を指示する。
【0053】
なお、パラメータ記憶部55に記憶された各パラメータは、携帯端末1のユーザによって書き換え可能であってもよく、あるいは、携帯端末1の製造時に設定され、その後、書き換え不可としてもよい。
【0054】
例えば図10に示すように、入力受付領域RE外の領域RNに指などが接触し、その状態が所定時間継続した場合、キャリブレーションが実行され、当該状態における各静電容量値が校正値として校正値記憶部52に記憶される。検出部51の出力は、タッチパネル40の出力から前記校正値を差し引いた値であるので、領域RNに指などが接触した状態であっても、検出部51からは、均一な静電容量値の分布を示す信号が出力される。したがって、領域RNに指などが接触した状態のまま入力受付領域REに対してタッチ操作を行った場合、検出部51は、ユーザのタッチ操作を正確に検出することができる。
【0055】
(キャリブレーションの実行手順)
続いて、図3〜図5に基づいて、キャリブレーション部53によるキャリブレーションの実行手順について説明する。
【0056】
図3は、本実施形態におけるキャリブレーションの実行手順を示すフローチャートである。また、図4および図5は、検出部51によって検出された、タッチパネル40の各静電容量値の分布を示す図である。
【0057】
図3において、まず携帯端末1に電源が投入されると(ステップS1)、キャリブレーション部53は、キャリブレーションを実行する(ステップS2)。これにより、検出部51が検出する各静電容量値の分布は、例えば、図4(a)に示す分布から図4(b)に示す分布に校正される。
【0058】
その後、タッチ操作が検出されると(ステップS3において「YES」)、判定部54は、パラメータ記憶部55に記憶された入力受付領域情報を参照して、タッチ位置が、タッチパネル40の入力受付領域内であるか判定する(ステップS4)。ステップS4において、タッチ位置が、タッチパネル40の入力受付領域外である場合(ステップS4において「NO」)、判定部54は、パラメータ記憶部55に記憶されたタッチ範囲情報を参照して、タッチ範囲が所定範囲以上であるかを判定する(ステップS5)。ステップS5において、タッチ範囲が所定範囲以上である場合(ステップS5において「YES」)、判定部54は、パラメータ記憶部55に記憶されたタッチ継続時間情報を参照して、タッチされた状態のまま所定時間が経過したかを判定する(ステップS6)。ステップS6において、タッチされた状態のまま所定時間が経過した場合(ステップS6において「YES」)、判定部54は、キャリブレーション部53にキャリブレーションの実行を指示し、キャリブレーション部53は、キャリブレーションを実行する(ステップS7)。
【0059】
これにより、検出部51が検出する各静電容量値の分布は、例えば、図5(a)に示す分布から図5(b)に示す分布に校正される。したがって、入力受付領域外に指などが接触した状態であっても、入力受付領域に対する入力操作を支障なく行なうことができる。
【0060】
なお、上記のステップS3は、特許請求の範囲に記載の検出ステップに対応する。また、ステップS4〜S6は、特許請求の範囲に記載の判定ステップの対応し、ステップS7は、特許請求の範囲に記載のキャリブレーション実行ステップに対応する。
【0061】
その後、入力受付領域外において、接触していた指などが離れて、検出部51がタッチを検出しなくなった場合、(ステップS8において「YES」)、検出部51が検出する各静電容量値の分布は、図5(a)に示す分布を反転した分布となる。この状態では、入力受付領域に対するタッチ操作が行われても、静電容量値の変化のピークを読み取ることが困難となる。
【0062】
この場合も、判定部54は、入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定し、キャリブレーション部53にキャリブレーションの実行を指示する。これにより、キャリブレーション部53は、キャリブレーションを実行し(ステップS2)、検出部51が検出する各静電容量値の分布は、再び図5(b)に示すように均一な分布となる。
【0063】
(パラメータの具体例)
上記において、判定部54がキャリブレーションの実行可否を判定するためのパラメータについて、タッチ範囲が1cm、タッチ継続時間が2秒に設定されていたが、パラメータの値はこれらに限定されない。上記のタッチ範囲は、指などが意図せずに入力受付領域外に触れた場合に想定される接触範囲の最小値に設定することが望ましい。同様に、上記のタッチ継続時間は、指などが意図せずに入力受付領域外に触れた場合に想定されるタッチ継続時間の最小値に設定することが望ましい。これらのパラメータは、例えば、ユーザの指の大きさや、携帯端末1の形状に応じて、適宜設定してもよい。
【0064】
これにより、入力受付領域外において静電容量値の変化が検出されても、例えば、入力受付領域におけるタッチ操作の検出に影響のない程度の小さな物体(埃など)が接触した場合や、指などが瞬間的に触れた場合には、キャリブレーションは実行されない。したがって、不要なキャリブレーションの実行を防止することができる。
【0065】
また、キャリブレーションの実行可否を判定するためのパラメータとして、入力受付領域外において状態の変化が検出された箇所の個数を示すタッチ数情報を含めてもよく、タッチ数が所定数以上である場合に、キャリブレーションを実行してもよい。当該所定数としては、通常の入力操作では検出されることのないタッチ数(例えば3)が設定される。
【0066】
(ソフトウェアによる本発明の実施)
本実施形態に係るタッチパネル装置50は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、タッチパネル装置50の少なくとも一部の機能を、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0067】
すなわち、タッチパネル装置50は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるタッチパネル装置50のプログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、タッチパネル装置50に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出して実行することによっても、達成可能である。
【0068】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/CD−R/MO/MD/BD/DVD等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0069】
また、タッチパネル装置50を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0070】
(実施形態の総括)
上述した実施形態では、タッチパネルの入力受付領域外において、タッチ操作が検出され、タッチ範囲およびタッチ継続時間が所定以上である場合、および電源投入時に、キャリブレーションを実行する構成であったが、キャリブレーションが実行される条件はこれに限定されない。例えば、入力受付領域外におけるタッチ範囲が所定範囲以上である場合、入力受付領域外におけるタッチ継続時間が所定時間以上である場合、入力受付領域外におけるタッチ数が所定数以上である場合の少なくともいずれかの場合に、キャリブレーションを実行してもよい。さらに、タッチパネルが非接触状態であるときに、所定の周期でキャリブレーションを実行してもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、タッチパネルに対する入力操作として、指などをタッチパネルに接触させるタッチ操作を想定したが、これに限定されない。タッチパネルに対する操作は、例えば、指などをタッチパネルに接近させることにより入力操作するホバー操作も含む。
【0072】
また、上述した実施形態では、タッチパネルが静電容量方式のタッチパネルである場合について説明したが、これに限定されない。タッチパネルとして、抵抗膜方式、超音波方式、赤外線方式、電磁誘導方式のタッチパネルなど、他の方式のタッチパネルを用いることができる。
【0073】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、携帯端末だけでなく、タッチパネルを備えるあらゆる表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 携帯端末(表示装置)
10 制御部
20 無線通信部
30 ディスプレイ
40 タッチパネル
50 タッチパネル装置
51 検出部(検出手段)
52 校正値記憶部
53 キャリブレーション部(キャリブレーション手段)
54 判定部(判定手段)
55 パラメータ記憶部
56 パラメータ設定部(設定手段)
100 タッチパネル
AMP1〜AMPn アンプ
C11〜Cmn 静電容量
Cf1〜Cfn 帰還容量
DL1〜DLn ドライブライン
SL1〜SLm センスライン
RE 入力受付領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、
前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション手段と、
前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定手段とを備え、
前記キャリブレーション手段は、前記判定手段が、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定した場合に、前記キャリブレーションを実行することを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記判定手段が前記判定を行うための基準値を変更可能に設定する設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記タッチパネルは、静電容量を備えた静電容量方式のタッチパネルであり、
前記状態は、各静電容量の容量値であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
画像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイ上に設けられるタッチパネルと、前記タッチパネルに対する入力操作を検出するタッチパネル装置とを備える表示装置であって、
前記タッチパネル装置として、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネル装置を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
タッチパネルの状態の変化に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、
前記タッチパネルの入力受付領域外における状態の変化が所定以上であるか否かを判定する判定ステップと、
前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定された場合に、前記タッチパネルの状態のキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行ステップとを有することを特徴とするタッチパネル装置のキャリブレーション方法。
【請求項9】
前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された範囲が所定範囲以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項8に記載のキャリブレーション方法。
【請求項10】
前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出され変化した状態が所定時間継続した場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項8に記載のキャリブレーション方法。
【請求項11】
前記判定ステップでは、前記入力受付領域外において、前記状態の変化が検出された箇所が所定数以上である場合に、前記入力受付領域外における状態の変化が所定以上であると判定することを特徴とする請求項8に記載のキャリブレーション方法。
【請求項12】
前記タッチパネルは、静電容量を備えた静電容量方式のタッチパネルであり、
前記状態は、各静電容量の容量値であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のキャリブレーション方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネル装置を動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242860(P2012−242860A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108787(P2011−108787)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】