説明

タッチ検出機能付き表示装置、および電子機器

【課題】静電気が印加された場合でも表示の乱れを低減することができるタッチ検出機能付き表示装置を得る。
【解決手段】表示動作を行う液晶表示素子と、一方向に延在するように並設され、外部近接物体に応じた静電容量の変化に基づく検出信号をそれぞれ出力する複数のタッチ検出電極TDLと、タッチ検出電極と絶縁または高抵抗で接続され、これらを覆うように配置された導電膜(導電層52)と、検出信号をサンプリングすることにより外部近接物体を検出するタッチ検出部とを備える。上記導電膜のシート抵抗は所定の値以下であり、かつその導電膜の時定数は、タッチ検出部のサンプリングタイミングにより定まる所定の最小時定数より大きいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ検出機能を有する表示装置に係り、特に外部近接物体による静電容量の変化に基づいてタッチを検出するタッチ検出機能付き表示装置、およびそのようなタッチ検出機能付き表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるタッチパネルと呼ばれる接触検出装置を液晶表示装置等の表示装置上に装着し、あるいはタッチパネルと表示装置とを一体化し、その表示装置に各種のボタン画像等を表示させることにより、通常の機械式ボタンの代わりとして情報入力を可能とした表示装置が注目されている。このようなタッチパネルを有する表示装置は、キーボードやマウス、キーパッドのような入力装置を必要としないため、コンピュータのほか、携帯電話のような携帯情報端末などでも、使用が拡大する傾向にある。
【0003】
タッチ検出装置の方式としては、光学式や抵抗式などいくつかの方式が存在するが、比較的単純な構造をもち、同時に複数の場所でのタッチを検出でき、また、特に携帯端末などで重要となる低消費電力を実現できる、静電容量式のタッチ検出装置が期待されている。例えば、特許文献1には、複数のX方向電極と、これらと対向配置された複数のY方向電極とを備え、それらの交差部に形成された静電容量が外部近接物体により変化することを利用してタッチを検出するタッチ検出装置が開示されている。また、例えば、特許文献2には、表示装置にもともと備えられている表示用の共通電極を、一対のタッチセンサ用電極のうちの一方として兼用し、他方の電極(タッチ検出電極)をこの共通電極と交差するように配置した、タッチ検出機能を内蔵した表示装置が提案されている。
【0004】
ところで、一般に電子機器では、静電気放電(ESD;Electro Static Discharge)に対する対策が重要である。静電気は、例えば、電子機器の製造工程や、ユーザによる電子機器の使用時などにおいて、電子機器に印加されるおそれがある。タッチ検出装置においても、ESD対策に関するいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献3には、液晶表示パネル上に抵抗膜式のタッチ検出装置を搭載した表示装置において、液晶表示パネルの製造工程で偏光板を張りつける際に生ずる静電気を除去するために、液晶表示パネル上に電気的にフローティング状態になるように透明導電膜を形成し、偏光板を張りつけた後にその透明導電膜に治具を接触させることにより静電気を除去するように構成された表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−129708号公報
【特許文献2】特開2009−244958号公報
【特許文献3】特開2009−86077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した様々な長所を有する静電容量式のタッチ検出装置に関する特許文献1,2には、ESD対策について一切記載がない。特許文献1,2に記載されたタッチ検出機能付き表示装置では、ESDによる静電気が印加されると表示が乱れるおそれがある。特に、タッチ検出のための電極から離れた領域では、静電気が逃げにくいため、長い時間にわたって表示が乱れるおそれがある。さらに、特許文献1に記載されたタッチ検出機能付き表示装置のように、この領域に光学特性を改善するためのダミー電極を配置した場合には、このダミー電極に静電気の電荷が帯電してしまうため、さらに長い時間にわたって表示が乱れるおそれがある。
【0007】
また、特許文献3に記載された表示装置では、透明電極膜は電気的にフローティング状態になっているため、例えば、使用時において、帯電した指がタッチパネルに触れた場合などでは、静電気が透明電極膜に帯電し、透明電極膜から逃げにくくなるおそれがある。また、抵抗膜式のタッチ検出装置を搭載した場合において透明電極膜を設ける旨の記載があるものの、静電容量式のタッチ検出装置の場合については一切記載がない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、静電気が印加された場合でも表示の乱れを低減することができるタッチ検出機能付き表示装置、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタッチ検出機能付き表示装置は、液晶表示素子と、複数のタッチ検出電極と、導電膜と、タッチ検出部とを備えている。液晶表示素子は、表示動作を行うものである。複数のタッチ検出電極は、一方向に延在するように並設され、外部近接物体に応じた静電容量の変化に基づく検出信号をそれぞれ出力するものである。導電膜は、タッチ検出電極と絶縁または高抵抗で接続され、これらを覆うように配置されたものである。タッチ検出部は、検出信号をサンプリングすることにより外部近接物体を検出するものである。上記導電膜のシート抵抗は所定の値以下であり、かつその導電膜の時定数は、タッチ検出部のサンプリングタイミングにより定まる所定の最小時定数より大きいものである。
【0010】
本発明の電子機器は、上記タッチ検出機能付き表示装置を備えたものであり、例えば、テレビジョン装置、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラあるいは携帯電話等の携帯端末装置などが該当する。
【0011】
本発明のタッチ検出機能付き表示装置、および電子機器では、静電気が印加された場合、その静電気を、導電膜を介してタッチ検出電極に逃がすために、導電膜のシート抵抗が所定の値以下に設定される。また、導電膜を設けたことによるタッチ検出感度の低下を抑えるために、導電膜の時定数は、所定の最小時定数より大きく設定される。
【0012】
本発明のタッチ検出機能付き表示装置では、例えば、所定の値は1012[Ω/□]であることが望ましい。また、例えば、タッチ検出部は、検出信号が遷移するタイミングをまたぐように設定された検出期間の開始および終了のタイミングにおけるサンプリング結果の差に基づいて外部近接物体を検出し、所定の最小時定数は、検出期間の時間にしてもよい。この場合、導電膜の時定数は、例えば、所定の最小時定数の10倍以上にしてもよいし、100倍以上にしてもよい。
【0013】
また、例えば、偏光板をさらに備え、導電膜は、偏光板と一体化して形成されるようにしてもよい。また、導電膜は、例えば、少なくとも、液晶表示素子が表示動作を行う有効表示領域を覆うように配置されるのが望ましい。
【0014】
また、例えば、複数のタッチ検出電極と交差する方向に延在するように並設された複数の駆動電極をさらに備え、静電容量は、複数のタッチ検出電極と複数の駆動電極との各交差部分に形成されるようにしてもよい。この場合、導電膜は、例えばタッチ検出電極を含む検出電極層の、駆動電極とは反対側に配置され、駆動電極と検出電極層との間の距離は、導電膜と検出電極層との間の距離よりも大きくすることが望ましい。
【0015】
例えば、複数のタッチ検出電極の検出電極間領域に配置され、電気的にフローティング状態であるダミー電極をさらに備えていてもよい。この場合、例えば、互いに隣接するタッチ検出電極およびダミー電極の間隔は50μm以下にすることが望ましい。また、例えば、タッチ検出電極およびダミー電極の配置面積は、有効表示領域内において、有効表示領域の面積の50%以上であることが望ましい。
【0016】
例えば、導電膜には、固定電位が印加されているのが望ましい。また、タッチ検出電極は、10mm以下のピッチで並設されるようにしてもよい。
【0017】
例えば、液晶表示素子は、液晶層と、液晶層を挟んで駆動電極と対向するように配置された画素電極とを含んで構成されていてもよい。また、例えば、液晶表示素子は、液晶層と、液晶層と駆動電極の間に形成され、もしくは駆動電極を挟んで液晶層の反対側に配置された画素電極とを含んで構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタッチ検出機能付き表示装置、および電子機器によれば、導電膜のシート抵抗を所定の値以下にするとともに、その時定数を所定の最小時定数以上にしたので、ESDが印加された場合でも表示の乱れを低減することができるタッチ検出機能付き表示装置、および電子機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のタッチ検出機能付き表示装置におけるタッチ検出方式の基本原理を説明するための図であり、指が接触または近接していない状態を表す図である。
【図2】本発明のタッチ検出機能付き表示装置におけるタッチ検出方式の基本原理を説明するための図であり、指が接触または近接した状態を表す図である。
【図3】本発明のタッチ検出機能付き表示装置におけるタッチ検出方式の基本原理を説明するための図であり、駆動信号およびタッチ検出信号の波形の一例を表す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るタッチ検出機能付き表示装置の一構成例を表すブロック図である。
【図5】図4に示したタッチ検出機能付き表示デバイスの概略断面構造を表す断面図である。
【図6】図4に示したタッチ検出機能付き表示デバイスの画素配列を表す回路図である。
【図7】図4に示したタッチ検出機能付き表示デバイスの駆動電極およびタッチ検出電極の一構成例を表す斜視図である。
【図8】図4に示したタッチ検出機能付き表示デバイスのタッチ検出電極の一構成例を表す平面図である。
【図9】図5に示した偏光板の一構成例を表す断面図である。
【図10】図4に示したタッチ検出機能付き表示装置のタッチ検出動作の一動作例を表すタイミング波形図である。
【図11】図9に示した偏光板における静電気の流れの一例を示す模式図である。
【図12】図9に示した導電膜の時定数を説明するための模式図である。
【図13】導電膜の時定数とタッチ検出信号のS/N比の関係を表すプロット図である。
【図14】変形例に係る偏光板の一構成例を表す断面図である。
【図15】他の変形例に係るタッチ検出機能付き表示装置の一構成例を表す平面図および断面図である。
【図16】実施の形態を適用したタッチ検出機能付き表示装置のうち、適用例1の外観構成を表す斜視図である。
【図17】適用例2の外観構成を表す斜視図である。
【図18】適用例3の外観構成を表す斜視図である。
【図19】適用例4の外観構成を表す斜視図である。
【図20】適用例5の外観構成を表す正面図、側面図、上面図および下面図である。
【図21】本発明の実施の形態の変形例に係るタッチ検出機能付き表示デバイスの概略断面構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.静電容量式タッチ検出の基本原理
2.実施の形態
3.適用例
【0021】
<1.静電容量式タッチ検出の基本原理>
まず最初に、図1〜図3を参照して、本発明のタッチ検出機能付き表示装置におけるタッチ検出の基本原理について説明する。このタッチ検出方式は、静電容量式のタッチセンサとして具現化されるものであり、例えば図1(A)に示したように、誘電体Dを挟んで互いに対向配置された一対の電極(駆動電極E1およびタッチ検出電極E2)を用い、容量素子を構成する。この構造は、図1(B)に示した等価回路として表される。駆動電極E1、タッチ検出電極E2および誘電体Dによって、容量素子C1が構成される。容量素子C1は、その一端が交流信号源(駆動信号源)Sに接続され、他端Pは抵抗器Rを介して接地されると共に、電圧検出器(タッチ検出部)DETに接続される。交流信号源Sから駆動電極E1(容量素子C1の一端)に所定の周波数(例えば数kHz〜数十kHz程度)の交流矩形波Sg(図3(B))を印加すると、タッチ検出電極E2(容量素子C1の他端P)に、図3(A)に示したような出力波形(タッチ検出信号Vdet)が現れる。なお、この交流矩形波Sgは、後述する駆動信号Vcomに相当するものである。
【0022】
指が接触(または近接)していない状態では、図1に示したように、容量素子C1に対する充放電に伴って、容量素子C1の容量値に応じた電流I0が流れる。このときの容量素子C1の他端Pの電位波形は、例えば図3(A)の波形V0のようになり、これが電圧検出器DETによって検出される。
【0023】
一方、指が接触(または近接)した状態では、図2に示したように、指によって形成される容量素子C2が容量素子C1に直列に追加された形となる。この状態では、容量素子C1、C2に対する充放電に伴って、それぞれ電流I1、I2が流れる。このときの容量素子C1の他端Pの電位波形は、例えば図3(A)の波形V1のようになり、これが電圧検出器DETによって検出される。このとき、点Pの電位は、容量素子C1、C2を流れる電流I1、I2の値によって定まる分圧電位となる。このため、波形V1は、非接触状態での波形V0よりも小さい値となる。電圧検出器DETは、検出した電圧を所定のしきい値電圧Vthと比較し、このしきい値電圧以上であれば非接触状態と判断する一方、しきい値電圧未満であれば接触状態と判断する。このようにして、タッチ検出が可能となる。
【0024】
<2.実施の形態>
[構成例]
(全体構成例)
図4は、本発明の実施の形態に係るタッチ検出機能付き表示装置の一構成例を表すものである。このタッチ検出機能付き表示装置は、表示素子として液晶表示素子を用いており、その液晶表示素子により構成される液晶表示デバイスと静電容量式のタッチ検出デバイスとを一体化した、いわゆるインセルタイプの装置である。
【0025】
このタッチ検出機能付き表示装置1は、制御部11と、ゲートドライバ12と、ソースドライバ13と、駆動電極ドライバ14と、タッチ検出機能付き表示デバイス10と、タッチ検出部40とを備えている。
【0026】
制御部11は、外部より供給された映像信号Vdispに基づいて、ゲートドライバ12、ソースドライバ13、駆動電極ドライバ14、およびタッチ検出部40に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する回路である。
【0027】
ゲートドライバ12は、制御部11から供給される制御信号に基づいて、タッチ検出機能付き表示デバイス10の表示駆動の対象となる1水平ラインを順次選択する機能を有している。具体的には、ゲートドライバ12は、後述するように、走査信号Vscanを、走査信号線GCLを介して、画素PixのTFT素子Trのゲートに印加することにより、タッチ検出機能付き表示デバイス10の液晶表示デバイス20にマトリックス状に形成されている画素Pixのうちの1行(1水平ライン)を表示駆動の対象として順次選択するようになっている。
【0028】
ソースドライバ13は、制御部11から供給される制御信号に基づいて、タッチ検出機能付き表示デバイス10の各画素Pix(後述)に画素信号Vpixを供給する回路である。具体的には、ソースドライバ13は、後述するように、画素信号Vpixを、画素信号線SGLを介して、ゲートドライバ12により順次選択される1水平ラインを構成する各画素Pixにそれぞれ供給するものである。そして、これらの画素Pixでは、供給される画素信号Vpixに応じて、1水平ラインの表示が行われるようになっている。
【0029】
駆動電極ドライバ14は、制御部11から供給される制御信号に基づいて、タッチ検出機能付き表示デバイス10の駆動電極COML(後述)に駆動信号Vcomを供給する回路である。具体的には、駆動電極ドライバ14は、駆動電極COMLに対して、駆動信号Vcomを時分割的に順次印加する。そして、タッチ検出デバイス30は、複数のタッチ検出電極TDL(後述)から、その駆動信号Vcomに基づくタッチ検出信号Vdetを出力し、タッチ検出部40に供給するようになっている。
【0030】
タッチ検出機能付き表示デバイス10は、タッチ検出機能を内蔵した表示デバイスである。タッチ検出機能付き表示デバイス10は、液晶表示デバイス20と、タッチ検出デバイス30とを有する。液晶表示デバイス20は、後述するように、ゲートドライバ12から供給される走査信号Vscanに従って、1水平ラインずつ順次走査して表示を行うデバイスである。タッチ検出デバイス30は、上述した静電容量式タッチ検出の基本原理に基づいて動作し、タッチ検出信号Vdetを出力するものである。このタッチ検出デバイス30は、後述するように、駆動電極ドライバ14から供給される駆動信号Vcomに従って順次走査を行い、タッチ検出を行うようになっている。
【0031】
タッチ検出部40は、制御部11から供給される制御信号と、タッチ検出機能付き表示デバイス10のタッチ検出デバイス30から供給されたタッチ検出信号Vdetに基づいて、タッチ検出デバイス30に対するタッチの有無を検出し、タッチがある場合においてタッチ検出領域におけるその座標などを求める回路である。このタッチ検出部40はアナログLPF(Low Pass Filter)部42と、A/D変換部43と、信号処理部44と、座標抽出部45と、検出タイミング制御部46とを有している。アナログLPF部42は、タッチ検出デバイス3から供給されるタッチ検出信号Vdetに含まれる高い周波数成分(ノイズ成分)を除去し、タッチ成分を取り出してそれぞれ出力する低域通過アナログフィルタである。アナログLPF部42の入力端子のそれぞれと接地との間には、直流電位(0V)を与えるための抵抗Rが接続されている。なお、この抵抗Rに代えて、例えばスイッチを設け、所定の時間にこのスイッチをオン状態にすることにより直流電位(0V)を与えるようにしてもよい。A/D変換部43は、駆動信号Vcomに同期したタイミングで、アナログLPF部42から出力されるアナログ信号をそれぞれサンプリングしてデジタル信号に変換する回路である。信号処理部44は、A/D変換部43の出力信号に基づいて、タッチ検出デバイス30に対するタッチの有無を検出する論理回路である。座標抽出部45は、信号処理部44においてタッチ検出がなされたときに、そのタッチパネル座標を求める論理回路である。検出タイミング制御部46は、これらの回路が同期して動作するように制御するようになっている。
【0032】
(タッチ検出機能付き表示デバイス10)
次に、タッチ検出機能付き表示デバイス10の構成例を詳細に説明する。
【0033】
図5は、タッチ検出機能付き表示デバイス10の要部断面構造の例を表すものである。このタッチ検出機能付き表示デバイス10は、画素基板2と、この画素基板2に対向して配置された対向基板3と、画素基板2と対向基板3との間に挿設された液晶層6とを備えている。
【0034】
画素基板2は、回路基板としてのTFT基板21と、このTFT基板21上にマトリックス状に配設された複数の画素電極22とを有する。TFT基板21には、図示していないものの、各画素の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)や、各画素電極22に画像信号Vpixを供給する画素信号線SGL、各TFTを駆動する走査信号線GCL等の配線が形成されている。
【0035】
対向基板3は、ガラス基板31と、このガラス基板31の一方の面に形成されたカラーフィルタ32と、このカラーフィルタ32の上に形成された複数の駆動電極COMLとを有する。カラーフィルタ32は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を周期的に配列して構成したもので、各表示画素にR、G、Bの3色が1組として対応付けられている。駆動電極COMLは、液晶表示デバイス20の共通駆動電極として機能するとともに、タッチ検出デバイス30の駆動電極としても機能するものである。なお、この例では駆動電極COMLを表示とタッチ検出とで共用するようにしたが、別体としてそれぞれ設けるようにしてもよい。また、例えば、駆動電極COMLの代わりに、走査信号線GCLや画素信号線SGLをタッチ検出デバイス30の駆動電極として共用するようにしてもよい。これらの場合において、走査信号線GCLや画素信号線SGLをMoやAlなどの低抵抗物質で構成した場合には、低抵抗な駆動電極を実現できる。駆動電極COMLは、図示しないコンタクト導電柱によってTFT基板21と連結され、このコンタクト導電柱を介して、TFT基板21から駆動電極COMLに交流矩形波形の駆動信号Vcomが印加されるようになっている。ガラス基板31の他方の面には、タッチ検出デバイス30の検出電極であるタッチ検出電極TDLが形成されている。タッチ検出電極TDLは、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO、SnO、有機導電膜などにより構成されるものであり、透光性のある電極である。なお、タッチ検出電極TDLは、例えば、この電極における透過率が低い色光の画素(ITOの場合には青色(B)の画素)に対応する部分に開口部を有していても良い。さらに、このタッチ検出電極TDLの上には、偏光板35が配設されている。なお、偏光板35の上には、ガラス、フィルム、プラスチックなどにより構成されるカバーウィンドウが配置されていてもよい。
【0036】
液晶層6は、電界の状態に応じてそこを通過する光を変調するものであり、例えば、TN(ツイステッドネマティック)、VA(垂直配向)、ECB(電界制御複屈折)等の各種モードの液晶が用いられる。
【0037】
なお、液晶層6と画素基板2との間、および液晶層6と対向基板3との間には、それぞれ配向膜が配設され、また、画素基板2の下面側には入射側偏光板が配置されるが、ここでは図示を省略している。
【0038】
図6は、液晶表示デバイス20における画素構造の構成例を表すものである。液晶表示デバイス20は、マトリックス状に配列した複数の画素Pixを有している。画素Pixは、TFT素子Trおよび液晶素子LCを有している。TFT素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFTで構成されている。TFT素子Trのソースは画素信号線SGLに接続され、ゲートは走査信号線GCLに接続され、ドレインは液晶素子LCの一端に接続されている。液晶素子LCは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端が駆動電極COMLに接続されている。
【0039】
画素Pixは、走査信号線GCLにより、液晶表示デバイス20の同じ行に属する他の画素Pixと互いに接続されている。走査信号線GCLは、ゲートドライバ12と接続され、ゲートドライバ12より走査信号Vscanが供給される。また、画素Pixは、画素信号線SGLにより、液晶表示デバイス20の同じ列に属する他の画素Pixと互いに接続されている。画素信号線SGLは、ソースドライバ13と接続され、ソースドライバ13より画素信号Vpixが供給される。
【0040】
さらに、画素Pixは、駆動電極COMLにより、液晶表示デバイス20の同じ行に属する他の画素Pixと互いに接続されている。駆動電極COMLは、駆動電極ドライバ14と接続され、駆動電極ドライバ14より駆動信号Vcomが供給される。
【0041】
この構成により、液晶表示デバイス20では、ゲートドライバ12が走査信号線GCLを時分割的に線順次走査するように駆動することにより、1水平ラインが順次選択され、その1水平ラインに属する画素Pixに対して、ソースドライバ13が画素信号Vpixを供給することにより、1水平ラインずつ表示が行われるようになっている。
【0042】
図7は、タッチ検出デバイス30の一構成例を斜視的に表すものである。タッチ検出デバイス30は、対向基板3に設けられた、駆動電極COMLおよびタッチ検出電極TDLにより構成されている。駆動電極COMLは、図の左右方向に延在する複数のストライプ状の電極パターンに分割されている。タッチ検出動作を行う際は、各電極パターンには、駆動電極ドライバ14によって駆動信号Vcomが順次供給され、時分割的に順次走査駆動が行われるようになっている。駆動信号Vcomは画素Pixを書き込み保持されるタイミングと同一でも良いし、異なっていても良い。タイミングが同一の場合は、書き込みに使用する駆動電極COMLの電位と同一である必要があり、タイミングが異なる場合は、駆動電極COMLの電位と異なるレベルの電位を使用することができる。タッチ検出電極TDLは、駆動電極COMLの電極パターンの延在方向と直交する方向に延びる電極パターンから構成されている。タッチ検出電極TDL間には、後述するように、ダミー電極37(図示せず)が配置されている。タッチ検出電極TDLの各電極パターンは、タッチ検出部40にそれぞれ接続されている。駆動電極COMLとタッチ検出電極TDLにより互いに交差した電極パターンは、その交差部分に静電容量を形成している。
【0043】
この構成により、タッチ検出デバイス30では、駆動電極ドライバ14が駆動電極COMLに対して駆動信号Vcomを印加することにより、タッチ検出電極TDLからタッチ検出信号Vdetを出力し、タッチ検出が行われるようになっている。つまり、駆動電極COMLは、図1〜図3に示したタッチ検出の基本原理における駆動電極E1に対応し、タッチ検出電極TDLは、タッチ検出電極E2に対応するものであり、タッチ検出デバイス30はこの基本原理に従ってタッチを検出するようになっている。図7に示したように、互いに交差した電極パターンは、静電容量式タッチセンサをマトリックス状に構成している。よって、タッチ検出デバイス30のタッチ検出面全体にわたって走査することにより、外部近接物体の接触または近接が生じた位置の検出も可能となっている。
【0044】
図8は、タッチ検出電極TDLの一構成例を表すものである。タッチ検出電極TDLは、有効表示領域Sにおいて、例えば5mmピッチで並んで配置されている。タッチ検出電極TDL間には、ダミー電極37が配置され、また、両側のタッチ検出電極TDLの外側には、ダミー電極38が配置されている。ダミー電極37,38は、外部からタッチ検出電極TDLを見えにくくするためのものであり、電気的にフローティング状態になっている。偏光板35は、有効表示領域Sより広い範囲に配置されている。すなわち、後述する、偏光板35内に形成される導電層52は、この有効表示領域Sを覆うように配置される。なお、図8には8本のタッチ検出電極TDLが示されているが、これに限定されるものではなく、例えば9本以上でもよいし、7本以下でもよい。また、図8では、タッチ検出電極TDLおよびダミー電極37は、導電層52(偏光板35)が配置された領域内に形成されているが、これに限定されるものではなく、導電層52が配置された領域の外側にも形成されるようにしてもよい。
【0045】
図9は、偏光板35の一構成例を表すものである。偏光板35は、偏光層54と、導電層42とを有している。偏光層54は偏光機能を有する層である。偏光層54の一方の面には、カバー層55が形成され、その上にハードコート層56が形成されている。偏光層54の、カバー層55が形成された面とは反対の面には、カバー層53が形成され、その上に導電層52が形成されている。導電層52は、透光性および導電性を有する層であり、例えばITO、IZO、SnO、有機導電膜などにより構成される。この導電層52は、後述するように、ESD対策を目的として設けられたものであり、外部から印加された静電気が液晶層に伝わり表示が乱れるのを抑えるとともに、タッチ検出感度の劣化を最小限に抑えるようになっている。導電層52上には、タッチ検出電極TDLおよびダミー電極37,38が形成されたガラス基板31と接着するための接着層51が設けられている。図9に示したように、導電層52とタッチ検出電極TDLとの間の距離d1は、タッチ検出電極TDLと駆動電極COMLとの間の距離d2に比べて小さくなるように配置されている。
【0046】
ここで、液晶素子LCは、本発明における「液晶表示素子」の一具体例に対応する。導電層52は、本発明における「導電膜」の一具体例に対応する。タッチ検出期間Pdetは、本発明における「検出期間」の一具体例に対応する。
【0047】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態のタッチ検出機能付き表示装置1の動作および作用について説明する。
【0048】
(全体動作概要)
制御部11は、外部より供給された映像信号Vdispに基づいて、ゲートドライバ12、ソースドライバ13、駆動電極ドライバ14、およびタッチ検出部40に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する。ゲートドライバ12は、液晶表示デバイス20に走査信号Vscanを供給し、表示駆動の対象となる1水平ラインを順次選択する。ソースドライバ13は、ゲートドライバ12により選択された1水平ラインを構成する各画素Pixに、画素信号Vpixを供給する。駆動電極ドライバ14は、駆動電極COMLに対して駆動信号Vcomを順次印加する。タッチ検出機能付き表示デバイス10は、表示動作を行うとともに、駆動信号Vcomに基づいてタッチ検出動作を行い、タッチ検出電極TDLからタッチ検出信号Vdetを出力する。アナログLPF部42は、タッチ検出信号Vdetの高い周波数成分を除去して出力する。A/D変換部43は、駆動信号Vcomに同期したタイミングで、アナログLPF部42から出力されるアナログ信号をデジダル信号に変換する。信号処理部44は、A/D変換部43の出力信号に基づいて、タッチ検出デバイス30に対するタッチの有無を検出する。座標抽出部45は、信号処理部44においてタッチ検出がなされたときに、そのタッチパネル座標を求める。検出タイミング制御部46は、アナログLPF部42、A/D変換部43、信号処理部44、座標抽出部45が同期して動作するように制御する。
【0049】
図10は、タッチ検出動作の一動作例を表すものであり、(A)は駆動信号Vcomの波形を示し、(B)はタッチ検出信号Vdetの波形を示す。駆動電極ドライバ14は、図10(A)に示した交流矩形波形の駆動信号Vcomを、駆動電極COMLに対して順次印加する。この駆動信号Vcomは、静電容量を介してタッチ検出電極TDLに伝わり誘起電流が流れ、タッチ検出信号Vdetが変化する(図10(B))。A/D変換部43は、タッチ検出期間Pdetおいて、駆動信号Vcomに同期したサンプリングタイミングts1,ts2で、タッチ検出信号Vdetが入力されたアナログLPF部42の出力信号をサンプリングしてA/D変換する(図10(B))。サンプリングタイミングts1は、タッチ検出期間Pdetの開始タイミングに対応するものであり、駆動信号Vcomの遷移タイミングの直前に設けられている。一方、サンプリングタイミングts2は、タッチ検出期間Pdetの終了タイミングに対応するものであり、この駆動信号Vcomの遷移タイミングの直後に設けられている。タッチ検出部40の信号処理部44では、サンプリングタイミングts1におけるA/D変換結果と、サンプリングタイミングts2におけるA/D変換結果の差に基づいて、タッチ検出を行う。
【0050】
次に、導電層52について説明する。導電層52は、タッチ検出機能付き表示装置1の製造時および使用時におけるESD対策を目的として設けられたものである。製造時では、一般に、例えば、偏光板を張り付ける前に偏光板からカバーフィルムを剥がす際や、パネルにカバーガラス(カバーフィルム、カバープラスチック)を透明な接着剤などで接着する際、また検査の際に人の指がタッチ検出面(ハードコート層56の表面)に接触した際などにおいて偏光板が帯電するおそれがある。また、使用時には、帯電したユーザの指がタッチ検出面に接触した場合に偏光板が帯電するおそれがある。導電層52は、この静電気を逃がすように機能する。以下に、静電層52の作用、およびそのような作用を実現するための電気特性について説明する。
【0051】
図11は、静電気が印加された場合の、その静電気の流れを模式的に表すものである。 タッチ検出機能付き表示装置1では、例えば偏光板35の表面(ハードコート層56)に印加された静電気SEは、まず、カバー層55、偏光層54、カバー層53を介して導電層52に伝わる。そしてその静電気SEは、導電層52やダミー電極37を介して、近くに配置されたタッチ検出電極TDLに伝わる。そして、タッチ検出電極TDLに伝わった静電気SEは、タッチ検出部40の入力に設けられた抵抗R(図4)や、その入力部に設けられたESD保護回路(図示せず)を介してタッチ検出機能付き表示装置の電源やGNDに逃げることができる。すなわち、導電層52が無い場合には、静電気は例えば偏光板自体に帯電し、その静電気に起因する電界により、液晶層6の液晶分子の配向を乱し、表示を乱すおそれがあるが、この導電層52を設けることにより、静電気を逃がしやすくすることができ、表示を乱すおそれを低減することができる。導電層52は、図8に示したように、有効表示領域Sを覆うように配置されているので、有効表示領域S全面において、静電気を逃がしやすくすることができ、表示の乱れを低減することができる。
【0052】
なお、導電層52は、有効表示領域Sを含む広い領域を覆うように配置しても良い。例えば、導電層52を、画素基板2に配置された回路の領域を覆うように配置することにより、製造時に静電気が印加された場合においては、これらの回路の破壊を防ぐことができ、また使用時に静電気が印加された場合においては、これらの回路の誤動作を低減することができる。
【0053】
互いに隣接するタッチ検出電極TDLおよびダミー電極37,38の間隔は、静電気を逃がしやすくするために、なるべく狭くすることが望ましく、例えば、50μm以下にするのが望ましい。また、タッチ検出電極TDLおよびダミー電極37,38の配置面積は、有効表示領域S内において、静電気を逃がしやすくするために、なるべく広く配置されていることが望ましく、例えば、有効表示領域Sの面積の50%以上であることが望ましい。
【0054】
導電層52は、印加された静電気SEを近くに配置されたタッチ検出電極TDLへ逃がしやすくするため、その抵抗が十分に低いことが望ましい。すなわち、導電層52の抵抗には、ESD対策の観点から、上限値がある。一般に、静電気を効果的に逃がすためには、導電層52のシート抵抗値は、一般に1×1012[Ω/□]以下が望ましく、1×1011[Ω/□]以下が好ましいことが知られている。
【0055】
一方、導電層52の抵抗が低すぎると、タッチ検出感度が低下するおそれがある。タッチ検出機能付き表示装置1は、図7に示したように、駆動電極COMLとタッチ検出電極TDLとの間の静電容量が外部近接物体により変化することを利用してタッチを検出するものである。よって、タッチ検出電極TDLと外部近接物体との間に配置される導電層52の抵抗が低すぎる場合には、その導電層52がシールドとして機能してしまい、上述した静電容量が外部近接物体によって変化しにくくなってしまう。言い換えれば、タッチ検出信号Vdetにおいて、タッチの有無を示すタッチ成分がシールドにより減衰し、S/N比が低下し、タッチ検出感度が低下してしまう。このように、導電層52の抵抗には、タッチ検出感度の観点から、下限値がある。
【0056】
すなわち、導電層52の抵抗は、ESD対策の観点から定められる上限値と、タッチ検出感度の観点から定められる下限値に挟まれた範囲内の値に設定する必要がある。
【0057】
次に、導電層52の抵抗の下限について詳細に説明する。
【0058】
図12は、導電層52の抵抗と、導電層52と駆動電極COMLとの間の容量を模式的に表したものである。タッチ検出信号Vdetのタッチ成分が導電層52により減衰しないようにする(S/N比を高くする)ためには、例えば、図10に示したように、タッチ検出期間Pdetにおいて、駆動信号Vcomの遷移に応じてタッチ検出信号Vdetが変化したときに、導電層52の電圧の変化が十分に小さくなるようにする必要がある。導電層52の電圧の変化は、導電層52の時定数τ(=R52・C52)に依存する。よって、S/N比を高くするためには、導電層52の時定数τが、タッチ検出期間Pdetに対応する時間tdetに比べて大きい必要がある。
【0059】
図13は、S/N比と、導電層52の時定数τとの関係を表すものである。横軸は、時間tdetを単位とした導電層52の時定数τを示し、縦軸は、時定数τが無限大(導電層52が配置されていない場合に相当)のときのS/N比を100とした場合のS/N比(相対値)を示している。なお、この検討では、ノイズは導電層52の影響を受けず、一定なものとしている。
【0060】
図13に示したように、時定数τが小さいとき、S/N比は小さくなる。これは、上述したように、時定数τが小さいため導電層52がシールドのように機能し、タッチ成分が減衰してしまうことに起因している。一方、時定数τが大きくなると、導電層52の影響が減少し、S/N比が向上する。
【0061】
必要なS/N比は、タッチ検出機能付き表示装置1の用途によって異なるが、図13に示したように、例えば、時定数τは少なくとも時間tdetより大きいことが望ましい。このとき、S/N比(相対値)は37以上となる。また、時定数τは時間tdetの10倍以上であることが好ましく、そのときのS/N比は90以上となる。さらに、時定数τは時間tdetの100倍以上であることがより好ましい。このときは、S/N比(相対値)は99以上となり、殆ど導電層52の影響を受けずにタッチ検出を行うことができる。
【0062】
このように、導電層52の時定数τを、上述したような値以上に設定することにより、それぞれに対応したS/N比を得ることができ、タッチ検出感度を確保することができる。
【0063】
また、導電層52は、図8に示したように、有効表示領域Sを覆うように配置されているので、有効表示領域S内のどの部分にタッチが行われても、導電層52のS/N比への影響は同じになり、タッチ位置によるタッチ検出感度のばらつきを最低限に抑えることができる。
【0064】
[効果]
以上のように本実施の形態では、導電層を設けるようにしたので、静電気が印加された場合でも表示の乱れを低減することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、導電層の時定数をタッチ検出期間の時間に比べて大きくしたので、タッチ検出感度の低下を最小限に抑えることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、導電層を偏光板内に形成するようにしたので、一体化が可能となり、製造を容易にすることができる。また、この一体化により、導電層と駆動電極との間の距離を短くすることができ、容量C52が大きくなるため時定数τが大きくなるため、S/N比を改善することができる。また、容量C52が大きくなった分、抵抗R52を小さくした場合には、静電気を除去しやすくすることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、有効表示領域を覆うように導電層を配置したので、有効表示領域全域において表示の乱れを低減することができるとともに、タッチ位置によるタッチ検出感度のばらつきを低減することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、導電層とタッチ検出電極との間の距離d1を、タッチ検出電極と駆動電極との間の距離d2に比べて小さくなるように配置したので、静電気を逃がしやすくすることができる。また、例えば、このように静電気を逃がしやすくした分だけ、導電層52の抵抗を大きくした場合には、導電層の透過率の低下や濁りを抑えることができる。
【0069】
[変形例1]
上記実施の形態では、導電層52を、接着層51とカバー層53の間に設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、図14(A)に示したように、カバー層55とハードコート層56の間に設けても良いし、図14(B)に示したように、接着層51Cを、導電粒子57を含む接着剤を用いて構成することにより、導電層を形成してもよい。この場合でも、接着剤に含まれる導電粒子57の大きさや量、導電粒子の伝導率などの特性を調整することにより、静電気を効果的に逃がすことができるとともに、タッチ検出感度の低下を最小限に抑えることができる。
【0070】
[変形例2]
上記実施の形態では、印加された静電気を、タッチ検出電極TDLを介して逃がすようにしたが、これに限定されるものではなく、静電気を逃がす他の経路を設けるようにしてもよい。図15は、本変形例に係るタッチ検出機能付き表示装置1Bの一構成例を表すものであり、(A)は平面図を示し、(B)は図15(A)のXV−XV矢視方向の概略断面図を示す。タッチ検出機能付き表示装置1Bは、GND線58を有している。GND線58は、偏光板35の周囲に配置され、偏光板35の導電層52と電気的に接続されるとともに、タッチ検出機能付き表示装置1BのGNDとも接続されている。これにより、タッチ検出機能付き表示装置1Bでは、印加された静電気を、導電層52を介してGNDに逃がしやすくすることができる。
【0071】
上記実施の形態に係るタッチ検出機能付き表示装置1において、例えば、タッチ検出電極TDLが接続されるタッチ検出部40の入力部にスイッチが設けられ、そのスイッチが検出タイミングでのみオン状態になる場合には、そのスイッチがオン状態のときには静電気を逃がす経路が確保されるものの、オフ状態のときにはその経路も遮断されてしまうため、十分に静電気を逃がすことができないおそれがある。この場合でも、本変形例に係るタッチ検出機能付き表示装置1Bでは、GND線58が常時導電層52と接続されているため、静電気を逃がす経路が常時確保され、静電気を逃がしやすくすることができる。
【0072】
[その他の変形例]
上記実施の形態では、タッチ検出電極TDLを5mmピッチで並んで配置したが、これに限定されるものではない。タッチ検出電極TDLのピッチが広い場合、ESD対策の観点からは、図11に示したように、導電層52を介して静電気SEをタッチ検出電極TDLに逃がすための経路が長くなることにより、静電気SEを逃がしにくくなるおそれがある。また、タッチ検出機能の観点からは、タッチ検出の位置分解能が低下する。よって、タッチ検出電極TDLのピッチは10mm以下が望ましい。
【0073】
上記実施の形態では、導電層52は偏光板35内に設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、導電層を偏光板と別体として構成してもよい。
【0074】
上記実施の形態では、タッチ検出電極TDL間にダミー電極37を設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、ダミー電極を設けなくてもよい。
【0075】
<3.適用例>
次に、図16〜図20を参照して、上記実施の形態および変形例で説明したタッチ検出機能付き表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0076】
(適用例1)
図16は、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表すものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル511およびフィルターガラス512を含む映像表示画面部510を有しており、この映像表示画面部510は、上記実施の形態等に係るタッチ検出機能付き表示装置により構成されている。
【0077】
(適用例2)
図17は、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表すものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部521、表示部522、メニュースイッチ523およびシャッターボタン524を有しており、その表示部522は、上記実施の形態等に係るタッチ検出機能付き表示装置により構成されている。
【0078】
(適用例3)
図18は、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表すものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体531、文字等の入力操作のためのキーボード532および画像を表示する表示部533を有しており、その表示部533は、上記実施の形態等に係るタッチ検出機能付き表示装置により構成されている。
【0079】
(適用例4)
図19は、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表すものである。このビデオカメラは、例えば、本体部541、この本体部541の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ542、撮影時のスタート/ストップスイッチ543および表示部544を有している。そして、その表示部544は、上記実施の形態等に係るタッチ検出機能付き表示装置により構成されている。
【0080】
(適用例5)
図20は、上記実施の形態等のタッチ検出機能付き表示装置が適用される携帯電話機の外観を表すものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740、サブディスプレイ750、ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態等に係るタッチ検出機能付き表示装置により構成されている。
【0081】
以上、実施の形態、変形例、ならびに電子機器への適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記の実施の形態等では、液晶表示デバイスとタッチ検出デバイスとを一体化したいわゆるインセルタイプとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、液晶表示デバイスの表面にタッチ検出デバイスを形成した、いわゆるオンセルタイプであってもよいし、液晶表示デバイスの表面にタッチ検出デバイスを外付けしたものであってもよい。
【0083】
例えば、上記の実施の形態等では、TNやVA、ECB等の各種モードの液晶を用いた液晶表示デバイス20とタッチ検出デバイス30とを一体化してタッチ検出機能付き表示デバイス10を構成したが、これに代えて、FFS(フリンジフィールドスイッチング)やIPS(インプレーンスイッチング)等の横電界モードの液晶を用いた液晶表示デバイスとタッチ検出デバイスとを一体化しても良い。例えば、横電界モードの液晶を用いた場合には、タッチ検出機能付き表示デバイス90を、図21に示したように構成可能である。この図は、タッチ検出機能付き表示デバイス90の要部断面構造の一例を表すものであり、画素基板2Bと対向基板3Bとの間に液晶層6Bを挟持された状態を示している。その他の各部の名称や機能等は図5の場合と同様なので、説明を省略する。この例では、図5の場合とは異なり、表示用とタッチ検出用の双方に兼用される駆動電極COMLは、TFT基板21の直ぐ上に形成され、画素基板2Bの一部を構成する。駆動電極COMLの上方には、絶縁層23を介して画素電極22が配置される。なお、この例に限定されるものではなく、これに代えて、例えば、TFT基板21の上に画素電極22を形成し、その上に絶縁膜23を介して共通電極COMLを形成してもよい。これらの場合では、駆動電極COMLとタッチ検出電極TDLとの間の、液晶層6Bをも含むすべての誘電体が容量C1の形成に寄与する。
【符号の説明】
【0084】
1,1B…タッチ検出機能付き表示装置、2,2B…画素基板、6,6B…液晶層、3,3B…対向基板、10,60…タッチ検出機能付き表示デバイス、11…制御部、12…ゲートドライバ、13…ソースドライバ、14…駆動電極ドライバ、20…液晶表示デバイス、21…TFT基板、22…画素電極、30…タッチ検出デバイス、31…ガラス基板、32…カラーフィルタ、35,35B,35C…偏光板、37、38…ダミー電極、40…タッチ検出部、42…アナログLPF部、43…A/D変換部、44…信号処理部、45…座標抽出部、46…検出タイミング制御部、51,51C…接着層、52…導電層、53,55…カバー層、54…偏光層、56…ハードコート層、57…導電粒子、58…GND線、COML…駆動電極、C52…抵抗、GCL…走査信号線、LC…液晶素子、Out…出力信号、Pix…画素、Pdet…タッチ検出期間、R52…抵抗、S…有効表示領域、SGL…画素信号線、TDL…タッチ検出電極、Tr…TFT素子、ts1,ts2…サンプリングタイミング、Vcom…駆動信号、Vdet…タッチ検出信号、Vdisp…映像信号、Vpix…画素信号、Vscan…走査信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示動作を行う液晶表示素子と、
一方向に延在するように並設され、外部近接物体に応じた静電容量の変化に基づく検出信号をそれぞれ出力する複数のタッチ検出電極と、
前記タッチ検出電極と絶縁されまたは高抵抗で接続され、これらを覆うように配置された導電膜と、
前記検出信号をサンプリングすることにより外部近接物体を検出するタッチ検出部と
を備え、
前記導電膜のシート抵抗は所定の値以下であり、かつその導電膜の時定数は、前記タッチ検出部のサンプリングタイミングにより定まる所定の最小時定数より大きい
タッチ検出機能付き表示装置。
【請求項2】
前記所定の値は1012[Ω/□]である
請求項1に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項3】
前記タッチ検出部は、前記検出信号が遷移するタイミングをまたぐように設定された検出期間の開始および終了のタイミングにおけるサンプリング結果の差に基づいて外部近接物体を検出し、
前記所定の最小時定数は、前記検出期間の時間である
請求項2に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項4】
前記導電膜の時定数は、前記所定の最小時定数の10倍以上である
請求項3に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項5】
前記導電膜の時定数は、前記所定の最小時定数の100倍以上である
請求項3に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項6】
偏光板をさらに備え、
前記導電膜は、前記偏光板と一体化して形成されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項7】
前記導電膜は、少なくとも、前記液晶表示素子が表示動作を行う有効表示領域を覆うように配置されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項8】
前記複数のタッチ検出電極と交差する方向に延在するように並設された複数の駆動電極をさらに備え、
前記静電容量は、前記複数のタッチ検出電極と前記複数の駆動電極との各交差部分に形成されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項9】
前記導電膜は、前記タッチ検出電極を含む検出電極層の、前記駆動電極とは反対側に配置され、
前記駆動電極と前記検出電極層との間の距離は、前記導電膜と前記検出電極層との間の距離よりも大きい
請求項8に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項10】
前記複数のタッチ検出電極の検出電極間領域に配置され、電気的にフローティング状態であるダミー電極をさらに備えた
請求項7に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項11】
互いに隣接する前記タッチ検出電極および前記ダミー電極の間隔は50μm以下である
請求項10に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項12】
前記タッチ検出電極および前記ダミー電極の配置面積は、有効表示領域内において、有効表示領域の面積の50%以上である
請求項10に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項13】
前記導電膜には、固定電圧が印加されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項14】
前記タッチ検出電極は10mm以下のピッチで並設されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項15】
前記液晶表示素子は、
液晶層と、
前記液晶層を挟んで前記駆動電極と対向するように配置された画素電極と
を含んで構成される
請求項8に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項16】
前記液晶表示素子は、
液晶層と、
前記液晶層と前記駆動電極の間に形成され、もしくは前記駆動電極を挟んで前記液晶層の反対側に配置された画素電極と
を含んで構成される
請求項8に記載のタッチ検出機能付き表示装置。
【請求項17】
タッチ検出機能付き表示装置と、
前記タッチ検出機能付き表示装置を利用した動作制御を行う制御部と
を備え、
表示動作を行う液晶表示素子と、
一方向に延在するように並設され、外部近接物体に応じた静電容量の変化に基づく検出信号をそれぞれ出力する複数のタッチ検出電極と、
前記タッチ検出電極と絶縁または高抵抗で接続され、これらを覆うように配置された導電膜と、
前記検出信号をサンプリングすることにより外部近接物体を検出するタッチ検出部と
を備え、
前記導電膜のシート抵抗は所定の値以下であり、かつその導電膜の時定数は、前記タッチ検出部のサンプリングタイミングにより定まる所定の最小時定数以上である
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−63839(P2012−63839A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205573(P2010−205573)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】