説明

タンク用のオーバーフロー装置

【課題】洗浄作業中に一たん停止した時に、洗浄水が外へ無駄に排水されるのを防ぐ。
【解決手段】上下に長いフロート管31の上部に設けられたフロート室33内にフロート37を設け、そのフロート37を、オーバーフロー口45から流入する適正オーバーフロー位置Hの時、浮力によって浮上させ、そのフロート37の上昇で前記フロート室33とフロート管31とをつなぐ排水通路口35を開とする一方、液面がオーバーフロー口45を越えてフロート室33内のフロート全体が液面下に沈む過剰オーバーフロー位置H1の時、フロート上方と下方との圧力差V1>V2により下降させ、そのフロート37の下降で前記排水通路口35を閉とする開閉弁とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄機の洗浄タンク等に適するタンク用のオーバーフロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被洗浄物を洗浄する洗浄機にあっては洗浄工程、すすぎ工程を備え、大量の水を使用するところから節水を図るために、例えば、洗浄工程で使用する洗浄水は洗浄ノズルによって噴射された後、その使用済みの洗浄水を洗浄タンク内へ回収し、再び使用する循環タイプとなっている。
【0003】
また、洗浄タンクには液面を一定に保つオーバーフロー装置が設けられ、すすぎ工程で使用された比較的きれいなすすぎ水が送り込まれ、再利用される。この時、液面を越える余分な洗浄水は前記オーバーフロー装置によって外へ排出される。これにより、洗浄タンク内の液面が一定に保たれるのと同時に、水面に近い汚れた汚濁水を外へ排水することによって、洗浄水の清浄度を保つ機能を併せ持つようになっている。
【特許文献1】特開平8−276992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オーバーフロー装置は、液面を一定に保つために規定された液面を越える分については外へ排水するため、例えば、被洗浄物の入れ替え時やトラブル等の何等かの理由で洗浄作業を一時停止した時に、洗浄ノズルを始めとする配管内や回収受部内にある洗浄循環中の洗浄水が洗浄タンク内へ戻るようになるが、その時の循環中の洗浄水はオーバーフロー水として外へ排水される。洗浄ノズルは上から下から側方から噴射するため配管の距離が長くなる点に加えて、配管の径が太いこともあって洗浄作業中は何百リットル単位で大量の洗浄水が循環しており、それら洗浄水は作業停止時にまだ十分に使用できるにもかかわらず、そのまま排水することになり節水の面で望ましくない。また、オーバーフロー装置からの排水は洗浄水だけでなく洗浄効率を高めるために入れられている洗剤の洗剤濃度の低下を招き、再起動時には洗剤濃度の見直しをせまられると共に、循環用のポンプ及び洗浄ノズルを含めて循環経路配管内に洗浄水が満たされた時、洗浄タンク内の洗浄水を大量に汲上げる結果となるため液面が下がりその分の洗浄水の補給が必要となる等、立上りが遅くなる不具合いを有する。
【0005】
そこで、本発明にあっては簡単な構造で無駄な排水を抑えることのできるタンク用のオーバーフロー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、タンク本体の底部から立上がる上下に長いフロート管と、前記フロート管の上部に設けられフロート管より断面積の大きい部屋に作られたフロート室と、前記フロート室とフロート管とをつなぐ排水通路口と、前記フロート室内に配置され液面によって浮力が与えられるフロートとを備え、前記フロートは、オーバーフロー口から流入する適正オーバーフロー位置の時、浮力によってフロートが浮上し、そのフロートの上昇で前記排水通路口を開とする一方、液面がオーバーフロー口を越えてフロート室内のフロート全体が液面下に沈む過剰オーバーフロー位置の時、フロート上方と下方との圧力差によりフロートが下降しそのフロートの下降で前記排水通路口を閉とする開閉弁となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のオーバーフロー装置によれば、フロート室にフロートを配置した単純で故障の起きない簡単な構造にできる。また、作業停止時にはフロートによる排水通路口の閉塞によって、使用出来る水が必要以上に外へ流れ出るのを確実に防ぐことができる。この結果、洗剤濃度の見直しや水の補給が不用となり再起動時の立上りが早くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明にあっては、前記オーバーフロー装置を、タンク本体の底部に設けられた排水口に対してフロート管を挿脱自在に挿入することでタンク本体の排水栓を兼ねた構造とする。
【実施例】
【0009】
以下、図1乃至図7の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0010】
図1は本発明にかかるタンク用のオーバーフロー装置の概要説明図、図7は本発明を洗浄機に実施した状態の概要説明図をそれぞれ示している。
【0011】
洗浄機1は、矢印のように搬送する搬送装置3によって送られてくる被洗浄物5を洗浄する洗浄工程7と洗浄した後、きれいな水で洗い流すすすぎ工程9とを有し、すすぎ工程9には、すすぎタンク11とすすぎノズル16を備えている。
【0012】
すすぎタンク11には水道栓15によって常にきれいな水が送り込まれると共にすすぎタンク11内のすすぎ水はすすぎポンプ17によってすすぎノズル16へ供給され、すすぎノズル16によりすすぎが行なわれる。すすぎノズル16から噴射されたすすぎ水は処分することなく回収トレー19を介して洗浄工程7の洗浄タンク21内へ送り込まれ、再利用するようになっている。
【0013】
洗浄工程7は、前記した洗浄タンク21と洗浄ノズル23とを備え、洗浄タンク21内の洗浄水は洗浄ポンプ25によって洗浄ノズル23へ供給される。洗浄ノズル23から噴射された洗浄水は回収トレー27を介して前記洗浄タンク21内へ回収され、再び洗浄ポンプ25によって洗浄ノズル23へ供給される循環タイプとなっている。
【0014】
洗浄タンク21のタンク本体21aにはオーバーフロー装置29が設けられている。オーバーフロー装置29は、図1に示すようにタンク本体21aの底部に設けられた上下に長いフロート管31と、前記フロート管31の上部に設けられフロート管31より断面積の大きい部屋に作られたフロート室33と、そのフロート室33とフロート管31とをつなぐ排水通路口35と、前記フロート室33内に配置されフロート室33内へ送り込まれる洗浄水によって浮力が与えられるフロート37とからなっている。
【0015】
フロート管31は、上下に長い筒状に形成され、下部はタンク本体21aの排水口39に対して挿脱できるシール機能を備えた挿入部41となっていて、そのフランジ部41aに突当るまで挿入可能となっている。
【0016】
フロート室33は、前記フロート管31の上部に設けられている。断面積はフロート管31の断面積より大きい円筒状の部屋に作られていて、排水通路口35を介して前記フロート管31と接続連通している。フロート室33の上部周壁には周方向に洗浄水が出入りするためのオーバーフロー口45が設けられている。フロート室33の天板47には取手49が設けられ、取手49を持って図6に示すように排水口39からオーバーフロー装置29のフロート管31を引き抜くことで、排水口39と接続の排水管51を介して外へ洗浄水を流すための排水栓としても作用する機能を備えている。
【0017】
なお、取手49は使用しない時、仮想線で示すように天板47の上面まで落下し、突起感がなく、しかも、邪魔にならないようになっている。
【0018】
フロート37は、高温の洗浄水を使用することから耐熱性と耐久性とを併せ持つステンレス製の球体に作られている。
【0019】
フロート37は、オーバーフロー口45から流入する適正オーバーフロー位置Hの時、浮力によって浮上し、そのフロート37の上昇で前記排水通路口35を開とする一方、液面がオーバーフロー口45を越えてフロート室33内のフロート全体が液面下に沈む過剰オーバーフロー位置H1の時、フロート上方と下方との圧力差により下降し、そのフロート37の下降で前記排水通路口35を閉とする開閉弁となっている。
【0020】
図1から図4は、適正オーバーフロー位置H及び過剰オーバーフロー位置H1の時とフロート37との関係を示したものである。
【0021】
図1と図2は適正オーバーフロー位置Hの時の動作説明図を示している。
【0022】
即ち、運転時においてタンク本体21a内の液面が上昇しオーバーフロー口45に到達した後、フロート室33内に流れ込む洗浄水によって液面が一定のレベルに達するとフロート37に浮力が与えられて上昇する。この時、排水通路口35が開となることで、フロート室33内の洗浄水は排水されるため液面が下がって下降し排水通路口35を閉塞する。また、再び液面が一定レベルに達すると上昇に転じる動作を繰返す作用が得られるようになっている。
【0023】
図2と図3は過剰オーバーフロー位置H1の時の動作説明図を示している。即ち、運転中の洗浄作業を一時停止すると洗浄ポンプ25が停止するため、洗浄水の汲上げがなくなると同時に循環中の洗浄水が洗浄タンク21内へ流れ込む条件が加わるために、図3に示すようにフロート室33内においてフロート37全体が沈んだ過剰オーバーフロー位置(H1)となる。この時、フロート37は天板47に突当った最上昇位置(図3実線)で、排水通路口35の開口が最大となるためフロート37の下方において流速の速い流れが作られる。流速の速い流れはフロート上方V1と下方V2とに圧力差V1>V2を発生させ、この圧力差V1>V2はフロート37を下降させる吸引作用として働く。
【0024】
圧力差V1>V2の関係は、フロート37が天板47に突当った最上昇位置(図3実線)の時、排水通路口35からフロート37までの開口寸法dが重要な条件となり、必要以上に開口寸法dが大きくなり過ぎると条件は成立しない。この実施形態では、
例えば、フロート37の径Rが100mm、排水通路口35から天板47までの寸法Dが110mm、オーバフロー口45までの寸法d1が80mmとした時、前記開口寸法dが約10mmとなるよう設定されている。これにより、圧力差V1>V2の関係によって、フロート37を下降させる最適な吸引作用が働らき、排水通路口35を閉とする。
【0025】
なお、開口寸法dはフロート37の大きさや形状によっても変化するためフロート径や形状によって最適値を求めることが望ましい。
【0026】
一方、排水通路口35がフロート37により閉塞された閉状態の時、フロート37の浮力Fに対して、重量W及び水圧PがW+P>Fの関係となることで閉状態が保持される。閉状態となるWTP>Fの関係は、図4に示すように、過剰オーバーフロー位置H1から液面が下降していきH1−1の液面となるまで継続する。そして、さらに液面が下がりフロート37の一部分が露出するH1−2の液面、即ち、適正オーバーフロー位置Hの時、W+P<Fの関係となって浮力Fが勝り排水通路口35からの排水が始まるようになっている。
【0027】
この場合、V1>V2の圧力差の時、その圧力差によってフロート37が確実に下降するようフロート37にバランサウェイト53を設け、設計に基づく最適なフロート値にすることが望ましい。
【0028】
バランサウェイト53は上下に長く形成され、フロート37が最上位に上昇した時に前記バランサウェイト53がフロート管31内に残る長さに設定され、フロート37の挙動を抑え正しく上下動するガイド部材としての機能を備えるようになっている。
【0029】
なお、フロート37は、球体に特定されず、円錐形、円筒形等の形状であってもよい。
【0030】
このように構成されたオーバーフロー装置29によれば、フロート室33内に設けられたフロート37によって故障のない簡単な構造にできる。
【0031】
一方、例えば、タンク本体21a内を掃除する時には、取手49を持ってフロート管31の挿入部41を排水口39から引き抜くことで排水栓として機能し、タンク本体21a内の洗浄水を外へ容易に排水することができると共に、専用の排水栓が不用となる。
【0032】
次に、運転中にあっては、洗浄タンク21内の洗浄水は洗浄ポンプ25によって洗浄ノズル23へ送り上げられた後、再び、洗浄タンク21内へ戻る循環を繰返すことで被洗浄物5の洗浄が行なえる。
【0033】
次に、例えば、被洗浄物5の入れ換えやトラブル発生時において洗浄作業を一たん停止すると、洗浄ポンプ25が停止することで図3に示すようにフロート37全体か液面下に沈む過剰オーバーフロー位置H1となる。この時、フロート上方と下方の圧力差V1>V2によってフロート37は図4に示すように下降し、排水通路口35を閉塞する。この結果、洗浄水の無駄な排水を抑えることができると共に、洗浄濃度の見直しが不用となる。また、洗浄水の補給が不用となり再起動時の立上りが早くなる。
【0034】
次に、再起動時、洗浄ポンプ25の作動によって洗浄ノズル23を始めとして循環経路配管内に洗浄水が汲上げられると液面が下がって適正オーバーフロー位置Hとなるため、再びフロート37によるオーバーフロー装置として作用するようになる。
【0035】
なお、この実施形態にあってはオーバーフロー装置を洗浄装置に用いた説明になっているが、洗浄装置以外の分野で使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明にかかるオーバーフロー装置を示した概要説明図。
【図2】適正オーバーフロー位置の時のオーバーフロー装置の動作説明図。
【図3】過剰オーバーフロー位置の時のオーバーフロー装置の動作説明図。
【図4】過剰オーバーフロー位置の時のフロートが排水通路口を閉塞した状態の動作説明図。
【図5】オーバーフロー装置の概要斜視図。
【図6】タンク本体の排出口からオーバーフロー装置のフロート管を抜いた状態の説明図。
【図7】洗浄工程とすすぎ工程を備えた洗浄機の概要説明図。
【符号の説明】
【0037】
29 オーバーフロー装置
31 フロート管
33 フロート室
35 排水通路口
37 フロート
45 オーバーフロー口
V1>V2 圧力差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体の底部から立上がる上下に長いフロート管と、前記フロート管の上部に設けられフロート管より断面積の大きい部屋に作られたフロート室と、前記フロート室とフロート管とをつなぐ排水通路口と、前記フロート室内に配置され液面によって浮力が与えられるフロートとを備え、前記フロートは、オーバーフロー口から流入する適正オーバーフロー位置の時、浮力によって浮上し、そのフロートの上昇で前記排水通路口を開とする一方、液面がオーバーフロー口を越えてフロート室内のフロート全体が液面下に沈む過剰オーバーフロー位置の時、フロート上方と下方との圧力差により下降しそのフロートの下降で前記排水通路口を閉とする開閉弁となっていることを特徴とするタンク用のオーバーフロー装置。
【請求項2】
前記オーバーフロー装置は、タンク本体の底部に設けられた排水口に対してフロート管が挿脱自在に挿入され、タンク本体の排水栓を兼ねていることを特徴とする請求項1記載のタンク用のオーバーフロー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−289266(P2006−289266A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113905(P2005−113905)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(396013329)株式会社クレオ (12)
【出願人】(392008415)クレヴァ電機工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】