説明

タンク

【課題】タンクにおけるシール部材のシール性を向上させること。
【解決手段】タンクであって、樹脂で形成され筒状の開口部と、開口部の外側面に形成される凸部とを備え、内部に所定の流体を貯留可能な樹脂製ライナと、開口部の外側面に当接するように配置され、開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材であって、凸部と勘合し、開口部との当接性を高める凹部を有する膨張抑制部材と、樹脂製ライナの開口部に挿入される口金と、口金と樹脂製ライナとの間に配置され、シールラインを形成すると共に、シールラインが、凸部の根元部分を通らないように配置されるシール部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素などの流体が貯蔵されるタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
タンクは、例えば、樹脂で形成される樹脂製ライナと、樹脂製ライナの開口部における外側面に当接するように配置され、開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材と、樹脂製ライナの開口部に挿入される口金と、口金と樹脂製ライナとの間に配置され、口金の挿入方向に対して略垂直方向にシールラインを形成するシール部材と、を備える(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−48919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タンクにおいて、シール部材によるシール性を高めたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、タンクにおけるシール部材のシール性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
タンクであって、樹脂で形成され筒状の開口部と、前記開口部の外側面に形成される凸部とを備え、内部に所定の流体を貯留可能な樹脂製ライナと、前記開口部の前記外側面に当接するように配置され、前記開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材であって、前記凸部と勘合し、前記開口部との当接性を高める凹部を有する膨張抑制部材と、前記樹脂製ライナの前記開口部に挿入される口金と、前記口金と前記樹脂製ライナとの間に配置され、シールラインを形成すると共に、前記シールラインが、前記凸部の根元部分を通らないように配置されるシール部材と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成のタンクによれば、シール部材のシール性を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載のタンクにおいて、前記口金と前記樹脂製ライナとの間において、前記シール部材に隣接して配置され、前記シール部材の変形を抑制すると共に、前記シールラインに略平行であって前記凸部の根元部分を通過する凸部通過ラインと重ならないように配置される変形抑制部材を備えることを特徴とするタンク。
【0010】
このようにすれば、口金を挿入する挿入方向において、シール部材が大きく変形することを抑制することができる。
【0011】
[適用例3]
タンクであって、樹脂で形成され筒状な開口部と、前記開口部の外側面に形成される凸部とを備え、内部に所定の流体を貯留可能な樹脂製ライナと、前記開口部の前記外側面に当接するように配置され、前記開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材であって、前記凸部と勘合し、前記開口部との当接性を高める凹部を有する膨張抑制部材と、前記樹脂製ライナの前記開口部に挿入される口金と、前記口金と前記樹脂製ライナとの間に配置され、シールラインを形成するシール部材と、前記口金と前記樹脂製ライナとの間において、前記シール部材に隣接して配置され、前記シール部材の変形を抑制すると共に、前記シールラインに略平行であって前記凸部の根元部分を通過する凸部通過ラインと重ならないように配置される変形抑制部材と、を備えることを特徴とするタンク。
【0012】
上記構成のタンクによれば、シール部材のシール性を向上させることができる。
【0013】
なお、本発明は、上記した装置発明の態様に限ることなく、方法発明としての態様で実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例としてのタンク100の概略断面構成を示す図である。
【図2】図1のX部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのタンク100の概略断面構成を示す図である。図2は、図1のX部分の拡大図である。本実施例のタンク100は、所定の流体(以下では、貯留流体とも呼ぶ)、例えば、水素等を貯留可能な貯留装置であり、図1または図2に示すように、樹脂製ライナ10と、外周壁20と、口金30と、金属製リング40と、シール部材50と、バックアップリング60と、遮断弁70と、を備える。以下では、後述する口金30が後述する樹脂製ライナ10の開口部10aに挿入される方向を挿入方向とも呼ぶ。挿入方向は、図1または図2において、右に向かう方向と一致する。また、挿入方向に平行な軸を基準とした回転方向を周方向とも呼ぶ。
【0016】
樹脂製ライナ10は、略円筒形をしており、タンク内部を密閉するための内殻である。樹脂製ライナ10は、樹脂製であり、例えば、ポリアミド、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレン等で構成される。樹脂製ライナ10は、略円筒形の開口部10a(図1、図2参照)と、開口部10aの外側面において周方向に亘って形成される複数の凸部10b(図2参照)とを備える。凸部10bは、後述する金属製リング40の凹部40aと勘合し、金属製リング40が脱落することを抑制する機能を有する。なお、図2に示すように、挿入方向に略垂直な方向に沿ったラインであって、凸部10bの根元部分10b1を通るラインを凸部通過ラインTLとも呼ぶ。また、タンク100において、樹脂製ライナ10に樹脂を含浸させた強化繊維を巻き付け、樹脂製ライナ10の耐久性を向上させるようにしている。
【0017】
外周壁20は、略円筒形状であり、樹脂製ライナ10の外側に形成され、タンク100の耐圧殻として機能する。外周壁20は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)から構成される。樹脂製ライナ10の端部と外周壁20の端部は、後述する口金30の鍔30aを挟むように密着し、口金30と樹脂製ライナ10との接合部から貯留流体のリークを抑制している。
【0018】
口金30は、略円筒形状であり、樹脂製ライナ10の開口部10aに挿入され、遮断弁70が配設される。口金30は、鍔30aと、周方向に亘って形成されるリング溝30bを備えている。このリング溝30bは、図2に示すように、凸部通過ラインTLが通過しない位置であって、各凸部10bとの距離Lが、1mm以上となる位置に設けられる。遮断弁70は、口金30に配設され、樹脂製ライナ10に貯留される貯留流体の遮断、若しくは、放出を行うための弁である。
【0019】
金属製リング40は、略円筒形状であり、例えば、ステンレス等の金属で構成される。金属製リング40は、樹脂製ライナ10の開口部10aの外側面と当接するように配置され、開口部10aが膨張することを抑制する機能を有する。金属製リング40は、周方向に亘って形成される複数の凹部40aを備えている。凹部40aは、樹脂製ライナ10の凸部10bと勘合し、金属製リング40と樹脂製ライナ10との当接性を高める。すなわち、金属製リング40は、樹脂製ライナ10の凸部10bと凹部40aとが勘合することで、脱落が抑制される。
【0020】
シール部材50は、略円筒形状(Oリング形状)であり、樹脂製ライナ10と口金30との間であって、口金30のリング溝30bに配置され、樹脂製ライナ10および口金30(リング溝30bの底部)と当接し、挿入方向に対して略垂直な方向にシールラインSLを形成する。上述したように、リング溝30bが凸部通過ラインTLを通過しない位置に設けられており、シール部材50は、形成するシールラインSLが、凸部通過ラインTLと重ならない位置に配置される。
【0021】
バックアップリング60は、樹脂製ライナ10と口金30との間であって、口金30のリング溝30bにおいてシール部材50に隣接して配置される。バックアップリング60は、樹脂製ライナ10および口金30(リング溝30bの底部)と当接し、挿入方向におけるシール部材50の変形を抑制する機能を有している。上述したように、リング溝30bが凸部通過ラインTLを通過しない位置に設けられており、バックアップリング60は、凸部通過ラインTLと重ならない位置に配置される。
【0022】
ところで、樹脂製ライナ10は、上述したように樹脂製であり、凸部10bを形成すると、樹脂製ライナ10の内側(口金30側)において、根元部分10b1に対応する部分に、図2に示すようなヒケ部(凹み部)が生じるおそれがあった。そして、シールラインSLが、このヒケ部を通過するようにシール部材50が配置された場合、シール部材50と樹脂製ライナ10のヒケ部とが当接することとなり、これら部材間の当接性が低下し、その結果、シール部材50によるシール性が低下するおそれがあった。
【0023】
一方、本実施例のタンク100において、シール部材50は、形成するシールラインSLが、凸部通過ラインTLと重ならないように配置されている。このようにすれば、シール部材50が、樹脂製ライナ10と当接する部分にヒケ部が位置することを回避することができるので、シール部材50と樹脂製ライナ10との当接性を高めることができ、その結果、シール部材50によるシール性を向上させることができる。
【0024】
また、本実施例のタンク100において、バックアップリング60は、凸部通過ラインTLと重ならないように配置されている。このようにすれば、バックアップリング60が、樹脂製ライナ10と当接する部分にヒケ部が位置することを回避することができるので、バックアップリング60と樹脂製ライナ10との間に大きな隙間が生じることを抑制することができる。その結果、バックアップリング60によって、シール部材50が上記隙間を越えてリング溝30bからはみ出したりする等、挿入方向において、シール部材50が大きく変形することを抑制することができる。
【0025】
本実施例において、樹脂製ライナ10は、特許請求の範囲における樹脂製ライナに該当し、金属製リング40は、特許請求の範囲における膨張抑制部材に該当し、口金30は、特許請求の範囲における口金に該当し、シール部材50は、特許請求の範囲におけるシール部材に該当し、開口部10aは、特許請求の範囲における開口部に該当し、凸部10bは、特許請求の範囲における凸部に該当し、凹部40aは、特許請求の範囲における凹部に該当し、シールラインSLは、特許請求の範囲におけるシールラインに該当し、凸部通過ラインTLは、特許請求の範囲における凸部通過ラインに該当する。
【0026】
B.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような変形も可能である。
【0027】
B1.変形例1:
上記実施例のタンク100では、口金30にリング溝30bが設けられ、シール部材50やバックアップリング60は、そのリング溝30bに配置されるようにしていたが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、口金30にリング溝30bが設けられていなくてよい。この場合、シール部材50は、上記実施例と同様に、シールラインSLと凸部通過ラインTLとが重ならないように配置されていればよい。このようにしても上記実施例の効果を奏することができる。
【0028】
B2.変形例2:
上記実施例のタンク100では、バックアップリング60を口金30のリング溝30bに一つだけ設けるようにしているが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、バックアップリング60を口金30のリング溝30bに、シール部材50を挟むように2つ設けるようにしてもよい。このようにしても上記実施例の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…樹脂製ライナ
10a…開口部
10b…凸部
10b1…根元部分
20…外周壁
30…口金
30a…鍔
30b…リング溝
40…金属製リング
40a…凹部
50…シール部材
60…バックアップリング
70…遮断弁
100…タンク
TL…凸部通過ライン
SL…シールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクであって、
樹脂で形成され筒状の開口部と、前記開口部の外側面に形成される凸部とを備え、内部に所定の流体を貯留可能な樹脂製ライナと、
前記開口部の前記外側面に当接するように配置され、前記開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材であって、前記凸部と勘合し、前記開口部との当接性を高める凹部を有する膨張抑制部材と、
前記樹脂製ライナの前記開口部に挿入される口金と、
前記口金と前記樹脂製ライナとの間に配置され、シールラインを形成すると共に、前記シールラインが、前記凸部の根元部分を通らないように配置されるシール部材と、
を備えることを特徴とするタンク。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクにおいて、
前記口金と前記樹脂製ライナとの間において、前記シール部材に隣接して配置され、前記シール部材の変形を抑制すると共に、前記シールラインに略平行であって前記凸部の根元部分を通過する凸部通過ラインと重ならないように配置される変形抑制部材を備えることを特徴とするタンク。
【請求項3】
タンクであって、
樹脂で形成され筒状な開口部と、前記開口部の外側面に形成される凸部とを備え、内部に所定の流体を貯留可能な樹脂製ライナと、
前記開口部の前記外側面に当接するように配置され、前記開口部が膨張することを抑制する膨張抑制部材であって、前記凸部と勘合し、前記開口部との当接性を高める凹部を有する膨張抑制部材と、
前記樹脂製ライナの前記開口部に挿入される口金と、
前記口金と前記樹脂製ライナとの間に配置され、シールラインを形成するシール部材と、
前記口金と前記樹脂製ライナとの間において、前記シール部材に隣接して配置され、前記シール部材の変形を抑制すると共に、前記シールラインに略平行であって前記凸部の根元部分を通過する凸部通過ラインと重ならないように配置される変形抑制部材と、
を備えることを特徴とするタンク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−249239(P2010−249239A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99663(P2009−99663)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】