説明

タンタル粉体、その製造方法、及びそれから得ることができる焼結したアノード

【課題】 コンデンサー用アノードを製造するのに有用な、非常に高い静電容量を示すタンタル粉体を提供する。
【解決手段】 タンタル塩化物とアルカリ土類金属水素化物の混合物を不活性ガス雰囲気
下での点火によって反応させ、そして生成したタンタル粉体を鉱酸で洗浄して単離し乾燥
することにより、1100℃と1300℃の間の温度で10分間焼結して16ボルトでア
ノード化した後に、比電荷が120000〜180000μFV/gであり、漏れ電流が
2nA/μFV未満であるタンタル粉体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル粉体、タンタル粉体から得ることができるプレスし焼結したアノー
ド及びタンタル粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル金属粉末は、通常、KTaFをナトリウムを用いて還元して製造される。
タンタル粉末の、粒子サイズ即ち比表面積等の物性は、KCl、NaCl、KF又はNa
Fのような不活性塩を添加することによって調整される。不活性塩の割合が増加するにつ
れ、得られるタンタル粉末はより微細になる、即ち、得られる金属の表面積は増大する。
しかしながら、還元反応におけるタンタル金属の単位時間当たりの生産量は、不活性塩濃
度が増大すると減少する。
【0003】
塩を洗浄した後、タンタル粉末を乾燥しそして真空中又は不活性ガス雰囲気中での高温
処理によって更に精製する。この凝集段階において比表面積は大幅に減少しそして粉末の
酸素含量は相当に増大する。酸素含量は、還元作用を持つ金属特にマグネシウムを用いた
熱処理によって再び減少させる。この脱酸素段階のもう一つの結果として比表面積が少し
減少する。これらのタンタル粉末から製造されるコンデンサーの電気的特性を最適化する
ために、タンタル粉末を、リン及び/又はホウ素を含有する添加物(dopant)で処理する。
【0004】
比電荷又は漏れ電流のようなタンタル粉体の電気的特性は、プレスし、焼結し、次いで
陽極酸化(アノード化)した即ち電気化学的に形成した(formed)アノードについて試験し
た。μFV/gで表される比電荷は、コンデンサーの静電容量の尺度であり、そして金属
の表面積に直接比例する。nA/μFVで表される漏れ電流は、コンデンサーがその電荷
をいかによく保持するかについての指標である。
【0005】
通常工業的に行われる溶融塩中でのKTaFのナトリウム還元においては、比電荷
が18000〜70000μFV/gであるコンデンサー用粉体が経済的に製造される。
高い静電容量を有するコンデンサーに必要である、一次粒子サイズが小さいタンタル粉末
を得るためには、KTaFのナトリウム還元を非常に高い希釈率(希釈剤の塩:KC
l、KF、NaCl)で行うことが必要であるが、その結果生成する凝集体がより小さく
なる(一次粒子サイズが約0.3μmの場合で二次粒子サイズが1〜5μm)。凝集体が
小さいためこの凝集体を加熱して(予備焼結によって)凝集させることが必要となり、そ
の際、第一には望ましくない不純物が除去されそして第二には比表面積が再び小さくなる
。一方、電流漏れが少ないコンデンサーが電気化学的形成(forming)によって得られるよ
うな、コンデンサー製造用の凝集体の好ましい細孔構造は、予備焼結を、焼結操作の間に
凝集体を除去して凝集体を細粉化しながら繰り返して行うことによってのみ得ることがで
きる。静電容量が非常に高いタンタルコンデンサー粉末が特許文献1に記載されている。
91810μFV/g迄の比電荷が、通常は行わない加熱凝集工程を用いてそれから製造
された焼結したアノードにおいて得られている。しかし、このタンタル粉末は例えばフッ
化物のような厄介な不純物を100ppmを超える濃度で含有している。高い含量のフッ
化物はアノードが焼結されるときに分解する。それによって発生するフッ化物蒸気が焼結
炉に熱腐食を引き起こす。タンタルアノードに残留しているフッ化物は、多分電流漏れが
かなり増加していることの原因になっているであろう。特許文献1の実施例6に従って製
造されたタンタル粉体は、F含量が460ppmであり、Mg含量が200ppmである
。更に、この粉末には、粉体密度が非常に小さくそしてそれを原料にしてプレスしたアノ
ードの破壊強度が市販の粉末に比較して低すぎるという不利な点がある。それ故に、この
粉体は、まだ工業的には重要になっていない。更にその上、このタンタル粉体は、たとえ
僅かppm範囲であっても漏れ電流値をかなり悪くする残留アルカリを含有しているとい
う不利な点をかかえている。
【0006】
非常に微細な粉末が、TaClの水素での気相還元によって製造される。この方法で
得られるのは、もはや自由に流動しない、本質的に別種の粉末である。これを工業的に加
工するのは困難であるために、この粉末は、コンデンサー技術においては今まで使用され
ていない。
【特許文献1】DE19536013A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の不利な点のないタンタル粉体を提供することである。本発明の
更なる目的は、非常に高い静電容量を示すタンタル粉体を製造する経済的な方法を提供す
ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに、既に予備焼結されている(凝集体)非常に微細なタンタル粉体が、五塩化タン
タルと水素化マグネシウムの混合物に点火する(igniting)ことによって得られること、及
びこのタンタル粉体は高い静電容量のコンデンサーを製造するのに非常に適していること
が見出された。僅か2、3分後には完了している、進行の速い反応であるために、希釈用
の塩を使用しない場合でさえも、代表的な大きさが50〜300nmの非常に小さい一次
粒子が製造され、それが反応混合物中の高いタンタル含量のために互いに接触し、そして
その高い焼結活性のために反応時間内に焼結する。この結果、泡状の、部分的に焼結した
、開放孔のケークが得られ、このケークを粉砕し篩にかけることにより、平均二次粒子径
が10〜50μm又はそれ以上である非常によく自由流動する凝集物が得られる。洗浄及
び乾燥後、この凝集物は、1.5〜10m/gという非常に大きいBET比表面積を有
する。
【0009】
従って本発明は、五塩化タンタルと水素化マグネシウムの混合物に不活性ガス雰囲気中
で点火し、次いで反応生成物を鉱酸で洗浄することによるタンタル粉末の製造方法に関す
る。
【0010】
五塩化タンタルと水素化マグネシウムの均質な混合物の反応は、タンタル還元容器中で
行うのが好ましい。細いタンタル線をこの均質混合物の最も上の層に点火材として埋め込
むのが好ましく、これを外部から入ってくるリード線によって特に明解に低圧電源に連結
することができ、点火の際は、明るい赤い加熱状態にすることができる。この点火装置は
、アルゴンでフラッシュした保護室中に収容される。強い発熱反応のために白熱状態に加
熱されていたそして部分的に焼結した多孔性のケークの形で存在するこの反応生成物が冷
却した後、それを粗く粉砕し、鉱酸で洗浄しそして乾燥する。硫酸/過酸化水素溶液を洗
浄液として用いるのが好ましい。洗浄は洗液に塩素が含まれなくなる迄続ける。
【0011】
マグネシウム及び水素はそれが水素化マグネシウムという形でなくなった後も両者とも
還元のために利用できるので、出発物質の量比は臨界的ではない。従って、1.25〜1
.3モルの水素化マグネシウムを、五塩化タンタル1モル当たりに使用することもできる
。しかし、五塩化タンタルの沸点が低いためにそして水素化マグネシウムの分解温度が低
いために、出発物質のモル比が低い場合は収率の低下が見られる。それ故に五塩化タンタ
ルの水素化マグネシウムに対するモル比が2〜3であるのが好ましい。その時、使用した
タンタルに関して80〜90%の収率が得られる。その収率は、反応を圧力下で例えばオ
ートクレーブ中で行えば更に上昇することが期待される。
【0012】
式MgHxを有し、xが1.2より大きい水素化マグネシウムを還元剤として使用する
ことが好ましく、xが1.6より大きいことが最も好ましい。
【0013】
焼結した一次粒子から成り、一次粒子の粒子サイズが30〜300nmであり、好まし
くは30〜150nmであり、最も好ましくは100nm未満であり、そして一次粒子の
焼結によって得られる二次粒子は、平均粒子サイズ即ちD50サイズ(D 50 size)が、1
0μmより大きく、好ましくは13μmより大きいタンタル粉体を、本発明によって初め
て製造することができる。
【0014】
D50値は、解凝集を起こすために超音波処理を15分間行った後、ASTMB822
によるMastersizer法によって測定される。
【0015】
本発明の粉体の二次粒子構造によって、これらの粒子はその先の加工にとって重要であ
る優れた流動特性を示す。本発明の粉体に対する、ASTM−B−213に記載のHal
l flow流動性試験によって測定した流動性値は、通常、0.1インチ漏斗で100
〜140秒であり、0.2インチ漏斗で15〜25秒である。
【0016】
更に、本発明の粉体は、アルカリ及び塩素を含まない。特にそれらのアルカリ含量は2
ppm未満であり、そしてそれらのフッ素含量は許容限界である20ppm未満、好まし
くは5ppm未満である。特にフッ素、ナトリウム及びカリウムは、一般的には、本発明
の粉末中に検出される可能性はない。酸素含量は4000〜20000ppmの範囲であ
る。
【0017】
BET比表面積は、1.5〜10m/gの範囲内であり、好ましくは2m/gより
高く、最も好ましくは3〜6m/gである。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、核の成長を抑制しそして焼結を抑制する物質を点火前
に反応混合物に添加し、得られる粉体がこれらの物質でドープされるようにする。リン及
び/又は窒素を含有する物質が添加物(dopant)として好ましい。
【0019】
従って、本発明の好ましいタンタル粉体は、リン含量が、30〜2000ppm、好ま
しくは300〜2000ppmである。本発明によるタンタル粉体の窒素含量は、100
〜15000ppm、好ましくは少なくとも500ppmである。
【0020】
リン添加物として元素状リンを使用することが好ましく、粉末状赤燐の形で使用するの
が最も好ましい。添加物は、点火用混合物に5000ppm迄の量で添加することができ
る。
【0021】
揮発性のアニオン成分を含有するアンモニウム塩、例えば塩化アンモニウムは窒素添加
物として好適である。窒素又はアンモニアも好適である。
【0022】
窒素とリンを同時に添加する場合にはリン酸アンモニウムが添加物として有利に使用で
きる。
【0023】
本発明は還元剤として水素化マグネシウムを用いて開発されたのではあるが、水素化カ
ルシウムも還元剤として使用できると考えることができる。水素化カルシウムは、それが
280℃〜300℃の低温で分解しないで1000℃より高い融点を持っているという点
で水素化マグネシウムとは本質的に異なっている。しかしながら、反応は点火後高速度で
進行するので、水素化マグネシウムの分解を特徴とする中間段階は反応に対して大きな影
響を持たないことが考えられる。特に反応生成物に対する影響は小さいと考えられる。従
って、本発明は、より一般的に表現すると、五塩化タンタルと水素化アルカリ土類の混合
物の点火によるタンタル粉体の製造方法であって、混合物が場合によってはリン及び/又
は窒素を含有する添加物を含有する方法に関する。
【0024】
反応が完結した後、この方法で製造されるタンタル粉体を、鉱酸例えば硫酸で、特に過
酸化水素を添加して、洗浄することによって単離する。この方法で塩素を含有しないよう
に洗浄されたタンタル粉体は、それに更に添加物を加える目的のためにリンを含有する添
加物を塗布することができる。乾燥後でそして予定の比表面積における酸素含量が所望の
濃度であった場合には、その材料を直接更に処理することなくタンタルコンデンサーの製
造のために使用することができる。タンタル粉体中の酸素濃度を減少したい場合には、単
離し乾燥したタンタル粉体を脱酸素工程にかけるのが好ましい。この工程は、マグネシウ
ムの削り片を加えて、650〜900℃、好ましくは750〜850℃の低温で、1/2
〜10時間、好ましくは2〜4時間に渉って行うのが好ましい。次いで、このようにして
得られるタンタル粉体を、場合によっては過酸化水素を添加して、鉱酸で洗浄することに
よって残留マグネシウムを除去し、そして乾燥する。硫酸が、酸として特に好適であるこ
とがわかった。残留マグネシウムを浸出させた後、再びリンを添加物として含ませること
ができる。これは添加物の溶液を含浸させることによって行うのが好ましい。タンタルコ
ンデンサーの製造に使用されるタンタル粉体の酸素含量は、比表面積に依存して4000
と20000ppmの間であるのが好ましい。更に窒素含量は、100〜15000pp
mの値に調整するのが好ましいが、それは特に脱酸素の間にアンモニアを添加することに
よって達成することができる。この「脱酸素」工程は、粉体の酸素含量が既に所望の範囲
内である場合であっても行うのが好ましい。その時「脱酸素」は、添加用反応混合物の反
応で生じるマグネシウム残分及び塩素残分を還元する働きをする。マグネシウム の存在
は、緩やかな熱処理の間追加の酸素が粉体の中へ拡散しないという効果を持っている。対
応するタンタル粉体から製造される焼結したアノードは、漏れ電流が、好ましくは2nA
/μFV未満、最も好ましくは1nA/μFV未満と低いことを特徴としている。
【0025】
本発明のタンタル粉体は、更に、1100〜1300℃の温度で10分間焼結し16V
で電気化学的に形成することにより、2nA/μFV未満の特定の漏れ電流において12
0000〜180000μFV/gという特定の電荷を持つ電解コンデンサーの製造に好
適であることを特徴とする。
【0026】
驚くほど高いアノード破壊強度を示すプレスしたアノードを、本発明のタンタル粉体か
ら得ることができる。本発明はこのプレスしたアノードにも関する。5g/cmのプレ
スした密度でChatillonに従って測定した、本発明のこのプレスしたアノードの
破壊強度は、3〜8kg、好ましくは4〜7kgである。この試験は、タンタル粉体から
プレスした、重量が0.521g、直径が5.1mm、長さが5.1mm、そしてプレス
した密度が5.0g/cmの円筒状の試験用アノードを用いて行う。これに対して、D
E19536013A1 に従って得ることができるプレスしたアノードの破壊強度は、
4kg未満である。
【0027】
本発明のタンタル粉体から製造される、粉体を1150〜1300℃で10分間焼結し
そして16〜30ボルトで電気化学的に形成することによって得られる焼結されたアノー
ドは、比電荷が80000〜170000μFV/g、好ましくは90000〜1600
00μFV/gである。本発明の焼結されたアノードの漏れ電流は、2nA/μFV以下
であることが最も好ましい。
【実施例1】
【0028】
第1工程 還元
TaCl200gとMgH22g(MgH含量90%)の混合物を3等分し、こ
れらを別々にアルゴン雰囲気下で電気点火によって反応させた。反応中に塩化水素が発生
した。反応は2、3分以内に行われた。
【0029】
第2工程 洗浄及び乾燥
冷却した反応生成物を、網目400μmの篩いを通過させた後、硫酸/過酸化水素溶液
で、洗浄水が実質的に塩素を含有しなくなるまで洗浄した。デカンテーションを繰り返し
て大部分の酸を除去し、吸引濾過器上で酸を含有しなくなるまで水で洗浄した。それを4
5℃で注意深く乾燥し、220μm篩下に迄篩い分けした。
【0030】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0031】
酸素 3.3%
マグネシウム 1770ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 361ppm

Fisher sub-sieve sizerを用いた粒子サイズ 0.37μm
Scott 粉体密度 9.5g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 3-point) 9.12m/g
Mastersizer (ASTM-B-822) D-10 1.03μm
15分超音波前処理 D-50 10.50μm
D-90 32.33μm
生成したタンタル金属:74gで収率73.7%に相当
【0032】
第3工程 脱酸素及び酸による浸出
一次粉体40gを、マグネシウム削片7.8g(酸素含量基準で計算した化学量論的な
量の2倍)と混合し、管型炉の中で保護用ガス(アルゴン)雰囲気下で、カバーをつけた
タンタル製のボート中で900℃で2時間保持した。冷却後、空気中で安全に取り扱うこ
とができるように、約18時間にわたって徐々に空気を入れることによって不活性化処理
を行った。残留マグネシウムを、硫酸8%と過酸化水素1.8%を含有する溶液でタンタ
ル粉末から溶出した。続いて、酸が無くなるまで水で洗浄し、乾燥し、そして220μm
篩下に迄篩い分けした。
【0033】
分析値: 酸素 7700ppm
窒素 2600ppm
BET 比表面積 2.35m/g
(Quantasorb 3-point)
【0034】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成(form)した。アノード製造の条件とそれについて測定した電
気的性質は表2に示してある(試料1参照)。
【実施例2】
【0035】
第1工程 還元
TaCl434gとMgH48g(MgH含量90%)の混合物をアルゴン雰囲
気下で電気点火によって反応させた。
【0036】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0037】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0038】
酸素 2.2%
マグネシウム 730ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 409ppm

Fisher sub-sieve sizer を用いた粒子サイズ 0.33μm
Scott 粉体密度 12.8g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 3-point) 4.73m/g
Mastersizer D-10 0.94μm
15分超音波前処理 D-50 9.84μm
D-90 31.88μm
生成したタンタル金属:151gで収率69%に相当
【0039】
第3工程 添加物の添加(doping)と低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体110gを、マグネシウム削片7.26g(酸素含量基準で計算し
た化学量論的な量の2倍)と混合し、レトルトの中で保護用ガス(アルゴン)雰囲気下で
、カバーをつけたタンタル製のボート中で850℃で2時間保持した。冷却後、空気中で
安全に取り扱うことができるように、約18時間にわたって徐々に空気を入れることによ
って不動態化した。残留マグネシウムを、硫酸8%と過酸化水素1.8%を含有する溶液
でタンタル粉末から溶出した。続いて、酸が含まれなくなるまで水で洗浄し、そして吸引
濾過器から取りだした含水物質に、溶液1ml当たりリン1mgを含有するリン酸二水素
アンモニウム溶液11mlを含浸させることによって100ppmのリンを添加し(dope)
そして乾燥し、そして220μm篩下に迄篩い分けした。
【0040】
分析値: 酸素 7550ppm Mg 80ppm
窒素 2820ppm Cl 59ppm
BET 比表面積 2.2m/g
(Quantasorb 3-point)
【0041】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料2A参照)。
【0042】
第4工程: 再度の脱酸素及び酸による浸出、再度の添加物添加
上記のようにして得られた物質70gを、再度、マグネシウム削片1.6gで850℃
で2時間第3工程で述べたようにして脱酸素し、硫酸8%と過酸化水素1.8%を含有す
る溶液で処理し、酸が無くなるまで水で洗浄し、そして再びリン50ppmを添加し全リ
ン含量を150ppmとした。
【0043】
分析値: 酸素 6170ppm Mg 60ppm
窒素 3210ppm
BET 比表面積 1.75m/g
(Quantasorb 3-point)
【0044】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料2B参照)。
【実施例3】
【0045】
第1工程 還元
TaCl1000gとMgH115.5g(MgH含量90%)の混合物に赤燐
71mgを添加し(dope) 、続いて実施例2と同様にして反応させた。
【0046】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0047】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0048】
酸素 2.6%
窒素 2820ppm
リン 150ppm
マグネシウム 14ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 784ppm

Fisher sub-sieve sizer を用いた粒子サイズ 0.34μm
Scott 粉体密度 13.4g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 3-point) 5.74m/g
Mastersizer D-10 0.87μm
15分超音波前処理 D-50 10.12μm
D-90 30.19μm
生成したタンタル金属:329gで収率65%に相当。
【0049】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料3A参照)。
【0050】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体100gを、マグネシウム削片7.8g(酸素含量基準で計算した
化学量論的な量の2倍)と混合し、実施例2に記載したようにして750℃で4時間脱酸
素にかけた。残留マグネシウムを、硫酸26%と過酸化水素6%を含有する溶液でタンタ
ル粉末から溶出した。生成物を、酸が含まれなくなるまで水で洗浄し、45℃で乾燥し、
220μm篩下に迄篩い分けし、そして均質化した。
【0051】
分析値: 酸素 9770ppm
窒素 6090ppm
BET 比表面積 3.12m/g
(Quantasorb 3-point)
【0052】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料3B参照)。
【0053】
第4工程: 添加物の添加
上記の脱酸素した粉体の一部にリン酸二水素アンモニウム溶液を含浸させることによっ
て150ppmのリンを添加して乾燥し、そして220μm篩下に迄篩い分けした。
【0054】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料3C参照)。
【実施例4】
【0055】
第1工程 還元
TaCl300gとMgH63g(MgH含量90%)の混合物に赤燐151m
g(=151mgP)を添加し(dope) 、続いて実施例2と同様にして反応させた。アル
ゴンの流れを減少させたときに燃焼が起こった。この結果として大気中の窒素による部分
的な窒化が起こった。
【0056】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0057】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0058】
酸素 1.2%
窒素 1.2%
リン 680ppm
マグネシウム 1200ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 71ppm

Fisher sub-sieve sizer を用いた粒子サイズ 0.57μm
Scott 粉体密度 17.3g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 3-point) 3.99m/g
Mastersizer D-10 1.09μm
15分超音波前処理 D-50 13.63μm
D-90 40.18μm
生成したタンタル金属:129gで収率85%に相当。
【0059】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体75gを、マグネシウム削片2.7g(酸素含量基準で計算した化
学量論的な量の2倍)と混合し、実施例2に記載したようにして750℃で4時間脱酸素
にかけ、そして実施例1と同様に酸処理にかけた。
【0060】
分析値: 酸素 12000ppm Mg 85ppm
窒素 12000ppm Cl 23ppm
BET 比表面積 3.92m/g
(Quantasorb 3-point)
【0061】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料4参照)。
【実施例5】
【0062】
第1工程 還元
TaCl300g、MgH63g(MgH含量90%)及び赤燐76mgの混合
物を実施例4と同様にして反応させた。
【0063】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0064】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0065】
酸素 12000ppm
窒素 14000ppm
リン 360ppm
マグネシウム 460ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 71ppm

Scott 粉体密度 19.4g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 3-point) 3.35m/g
Mastersizer D-10 1.73μm
15分超音波前処理 D-50 19.08μm
D-90 56.31μm
生成したタンタル金属:131gで収率86.4%に相当。
【0066】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
実施例3を参照。
分析値: 酸素 10000ppm Mg 75ppm
窒素 14000ppm Cl 30ppm
BET 比表面積 3.18m/g
(Quantasorb 3-point)
【0067】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料5参照)。
【実施例6】
【0068】
第1工程 還元
TaCl300g、MgH63g(MgH含量90%)及び赤燐76mgの混合
物を、アルゴンでフラッシュしながら、実施例1と同様にして反応させた。
【0069】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0070】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0071】
酸素 1.1%
窒素 4360ppm
リン <1ppm
マグネシウム 980ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 258ppm

一次粒子(SEMから) 300nm
Scott 粉体密度 24.3g/インチ
BET 比表面積(Quantasorb 1-point) 2.45m/g
Mastersizer D-10 3.30μm
15分超音波前処理 D-50 33.14μm
D-90 114.95μm
生成したタンタル金属:133gで収率87.7%に相当。
【0072】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体75gを、マグネシウム削片2.47g(酸素含量基準で計算した
化学量論的な量の2倍)と混合して脱酸素反応を行った。更に実施例3と同様な処理にか
けた。
【0073】
分析値: 酸素 7100ppm
窒素 4460ppm
BET 比表面積 1.99m/g
(Quantasorb 3-point)
【0074】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料6参照)。
【実施例7】
【0075】
第1工程 還元
TaCl300g、MgH63g(MgH含量90%)及び赤燐152mgの混
合物を、空気の侵入を排除するようにアルゴンでより激しくフラッシュしながら反応させ
た。
【0076】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0077】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0078】
酸素 1.4%
窒素 144ppm
リン 780ppm
マグネシウム 45ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 100ppm

一次粒子(SEM) 150nm
Scott 粉体密度 18.1g/インチ
Fisher sub-sieve sizerを用いた粒子サイズ 0.76μm
BET 比表面積(Quantasorb 1-point) 4.02m/g
Mastersizer D-10 2.25μm
15分超音波前処理 D-50 23.51μm
D-90 58.43μm
生成したタンタル金属:128gで収率84.3%に相当。
【0079】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体94gを、マグネシウム削片4.00g(酸素含量基準で計算した
化学量論的な量の2倍)と混合して脱酸素反応を行った。更に実施例3と同様な処理にか
けた。
【0080】
分析値: 酸素 11000ppm
窒素 752ppm
BET 比表面積 3.52m/g
(Quantasorb 3-point)
【0081】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある。
【実施例8】
【0082】
第1工程 還元
TaCl300g、MgH63g(MgH含量90%)及び赤燐304mgの混
合物を、空気の侵入を排除するようにアルゴンでより激しくフラッシュしながら反応させ
た。
【0083】
第2工程 洗浄及び乾燥
実施例1を参照。
【0084】
このようにして製造したタンタル粉体について以下の分析データを得た。
【0085】
酸素 1.5%
窒素 240ppm
リン 1700ppm
マグネシウム 65ppm
ナトリウム <1ppm
カリウム <1ppm
フッ化物 <2ppm
塩化物 79ppm

一次粒子(SEM) 100nm
Scott 粉体密度 17.2g/インチ
Fisher Sub Sieve sizerを用いた粒子サイズ 0.55μm
BET 比表面積(Quantasorb 1-point) 4.82m/g
Mastersizer D-10 1.33μm
15分超音波前処理 D-50 15.89μm
D-90 49.19μm
粒子サイズは、図1にSEM写真によって具体的に示されている。
生成したタンタル金属:126gで収率83.0%に相当。
【0086】
第3工程: 低温脱酸素、及び酸による浸出
上記のタンタル粉体99gを、マグネシウム削片4.47g(酸素含量基準で計算した
化学量論的な量の2倍)と混合し、750℃で4時間脱酸素反応を行った。残留マグネシ
ウムを、硫酸8%と過酸化水素1.8%を含有する溶液で溶解した。
【0087】
分析値: 酸素 12000ppm
窒素 1440ppm
BET 比表面積 3.66m/g
(Quantasorb 3-point)
【0088】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した。アノード製造の条件とそれについて測定した電気的性
質は表2に示してある(試料8参照)。
【0089】
【表1】

【0090】
[実施例9〜16]
【0091】
第1工程 還元
TaCl300g、MgH63g、赤燐xmg及びNHClygの混合物をアル
ゴン雰囲気下で電気的に点火することによって反応させた(表2参照)。
【0092】
【表2】

【0093】
第2工程 洗浄及び乾燥
冷却した反応生成物を、塩化マグネシウムを除去するために、硫酸/過酸化水素溶液で
洗浄した。1度又は2度デカンテーションすることによって大部分の酸を除去し、吸引濾
過器上で酸が含まれなくなるまで水で洗浄した。それを45℃で乾燥しそして400μm
篩下に迄篩い分けした。表3は、添加物の含量と比表面積の間の関係を示す。
【0094】
【表3】

【0095】
第3工程: 低温脱酸素及び酸による浸出
上記のタンタル粉体を、化学量論的な量の2倍のマグネシウム削片(酸素含量基準で計
算)と混合し、レトルトの中で保護用ガス(アルゴン)雰囲気下で、カバーをつけたタン
タル製のボート中で750℃で4時間保持した。冷却後、空気中で安全に取り扱うことが
できるように、約18時間にわたって徐々に空気を入れることによって不動態化を行った
。残留マグネシウムを、硫酸8%と過酸化水素1.8%を含有する溶液でタンタル粉末か
ら溶出した。続いて、酸が含まれなくなるまで水で洗浄し、45℃で乾燥し、そして40
0μm篩下に篩い分けした。
【0096】
得られた粉体をプレスしてアノードを製造し、続いて比電荷及び漏れ電流を測定するた
めに焼結し電気化学的に形成した(表4参照)。
【0097】
アノード重量 0.0466g
プレス後の密度 5.0g/cm
形成電圧 16V
【0098】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施例8の粒子サイズを示すSEM写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が1.5〜10m/gであり、一次粒子径が30〜300nmであり、平均二次粒子径が10μmより大きいタンタル粉体であって、1100℃と1300℃の間の温度で10分間焼結し16Vにおいてアノード化することにより2nA/μFVより小さい濡れ電流における比電荷が120000〜180000μFV/gであるコンデンサー用アノードを製造するのに使用されるものであることを特徴とするタンタル粉体。
【請求項2】
30〜3000ppmの燐を含有する請求項1に記載のタンタル粉体。
【請求項3】
4000〜20000ppmの酸素及び100〜15000ppmの窒素を含有する請求項1又は2に記載のタンタル粉体。
【請求項4】
2ppm未満のアルカリを含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のタンタル粉体。
【請求項5】
20ppm未満のフッ素を含有する請求項1〜4のいずれか1つに記載のタンタル粉体。
【請求項6】
プレスした密度が5g/cmで重量が0.521gのアノードについてチャチロン測
定器で測定したアノードの破壊強度が、3kgと8kgの間であることを特徴とする、請
求項1〜5のいずれか1つに記載のタンタル粉体から製造されたプレスしたアノード。
【請求項7】
タンタル塩化物とアルカリ土類金属水素化物の混合物を不活性ガス雰囲気下での点火に
よって反応させ、そして生成したタンタル粉体を鉱酸を用いて洗浄することによって単離
し乾燥することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のタンタル粉体の製造方法。
【請求項8】
単離され、乾燥されたタンタル粉体を脱酸素反応にかける請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のタンタル粉体を1100℃と1300℃の間の温度で10分間焼結し16Vにおいてアノード化することによって製造された、2nA/μFVより小さい漏れ電流における比電荷が120000〜180000μFV/gであることを特徴とするコンデンサー用アノード。
【請求項10】
請求項9に記載のアノードを有するコンデンサー。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−335885(P2007−335885A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190615(P2007−190615)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願2006−3789(P2006−3789)の分割
【原出願日】平成10年2月9日(1998.2.9)
【出願人】(591007228)エイチ・シー・スタルク・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (20)
【氏名又は名称原語表記】H.C.Starck Gmbh
【Fターム(参考)】