説明

タンデム式木材処理装置

【課題】効率的な運転・運用を図り、加熱処理室内の吹き出し口からの熱風量を調節でき、火の粉等を消火しながら室内湿度の調整ができ、燃焼ガスを処理室内に放出せずに熱風誘導管を通して煙突から排気する間接加熱方式を提供する。
【解決手段】少なくとも単一の燃焼炉と被処理木材の加熱処理を行う二以上の木材加熱処理室Aとからなり、単一の燃焼炉Nは燃料投入口5、火格子(ロストル)3、空気吸入口を備え、可燃ガスの二次燃焼補助塊(溶岩等)6を内包する蓄熱室7と、木材加熱処理室に連なり、開閉自在の熱風遮断板(ダンパー)9を有する熱風誘導管8を備える。木材加熱処理室は、加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ用レール21と、トロッコ用レールの間から熱風誘導管に連なる適宜の間隔で設けられた複数の熱風吹き出し口11〜13と、開閉自在の複数の排気管17〜19と、室外に排気する煙突20とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
我が国の人口造林面積は、1,200万haに達し、人工造林率は52%を超え、これらの人工造林面積のピークは40〜45年生に達し、特に生長の早いスギは主伐期に達し、中目材から大径材へ移行しつつある。これまで80%以上を占めていた外材主導形から徐々に国産材時代への方向転換のきざしが見えてきた。しかし、国産材の代表的樹種であるスギ材は含水率が高く、辺材と心材の水分傾斜も大きく、そのうえ成長応力(残留応力)が大きく、木材乾燥において心材部の含水率低下が困難であったり、乾燥時に干割れ、内部割れ、反り、変色等が多発して乾燥歩止まりの低下とコスト上昇をまねくなど、難乾燥樹種にあげられている。そこで、最近、地球温暖化防止策の一環として地産地消の精神から国産材の活用がさけばれているが、とりもなおさずスギ材の高品質・低コスト乾燥材の供給ができれば外材に負けないスギ材の新用途開発は急展開することは間違いなく、本発明による高温熱処理炉と乾燥機との併用形の活用が大いに期待されるところである。
【背景技術】
【0002】
従来の木材乾燥においては、熱源に石油、ガス、電気、木質燃料を用いてボイラーにより蒸気を発生させて、加熱処理室(乾燥室)に配管されたパイプによって昇温する、いわゆる蒸気式インターナルファン式乾燥機が一般的であり、これらのものが大崇を占めている。
また、木材乾燥に必要な残留応力の除去には材内温度80℃以上で約40時間保持するという奥山理論に基づき、加熱処理室内に生蒸気を長時間、噴射し、加圧を行って室内温度を120〜140℃に上げる高温乾燥を行っているが、木材の内部割れや強度低下をまねいているので構造用材としては欠陥商品となるので問題である。また、熱源に木質燃料を用い、燃焼ガスを直接加熱処理室内に送給して、比較的低温(60〜80℃)処理をする燻製乾燥では火災や爆発の心配は少ないが残留応力の除去には不十分であり、長時間を要する欠点がある。また、材内温度80℃以上にするために加熱処理室内の高温加熱ガスの噴射口の温度が木材の発火温度以上になる燻煙熱処理炉においては火災や爆発が発生していた。
【0003】
そこで、本願発明者は、これらの問題について、かねてから鋭意研究を重ね、この種の木材乾燥ないしは木材処理として、既に、特許第3414809号公報および特許第3283129号公報に開示のものを提案している。
【0004】
これらの特許第3414809号公報および特許第3283129号公報に開示のものは、その基本的構成は、図8に示すものであって、そのうち、特許第3414809号公報に開示のものは、発明名称「木ガスによる木材生長応力除去装置」とし、「木材等を燃料として、この燃料から発生する木ガス内にスギ中目材等の加熱処理をしようとする木材を封入して、木材の生長応力を完全に除去し、干割れや加熱による材固有の色彩や光沢を失うことなく、化粧価値を重視する在来軸組構法の住宅部材としての利用価値を高め(特許第3414809号公報段落番号0006)」ることを目的とし、「空気吸入口を備え、木質燃料を投入し、燃焼させる燃焼用ロストルを有する燃焼室と、該燃焼室と風道によって連結され、内部の高密度溶岩等の木ガス処理促進材により、室内温度を保持せしめ、木材の生長応力を除去促進する生長応力除去促進室と、内部の木ガス濃度を調節する換気扇を備える一方、内部の間欠的温度上昇を保持するガラスウール断熱材およびセラミックスボードを壁面に備えた処理室とからなり、該処理室と前記生長応力除去促進室との間には、前記燃焼室より発生する木ガスを通す一方、燃焼の火のこが前記処理室内に入り込まないように設けられる白金網またはステンレス網で覆われた風穴を有し、前記換気扇の回転により、前記処理室の木ガスを外部に排出する風道管とを有することを特徴とする木ガスによる木材生長応力除去装置(特許第3414809号公報特許請求の範囲請求項1)」を使用し、また、特許第3283129号公報に開示のものは、発明の名称「遠赤外線増殖による木材乾燥前処理炉」とし、「木材を乾燥させる前の生長応力を除去するために、材色をそこなわない比較的低温(60℃〜80℃)の加熱室の温度でも、その熱源に熱効率の高い遠赤外線をできるだけ多く発生させることにより、2〜3日間で生長応力を除去し、コストを大幅に引き下げ(特許第3283129号公報段落番号0002)」を目的として、「空気吸入口を備え、高効率に遠赤外線を放射する木質燃料を投入し、燃焼させる燃焼用ロストルを有する燃焼室と、該燃焼室と風道によって連結され、内部に高密度溶岩からなる遠赤外線増殖用セラミック材が充填され、前記木質燃料の燃焼において発生する遠赤外線を高効率に増殖させる遠赤外線増殖室と、前記木質燃料を燃焼させて発生する木ガスで充満され、内部の温度を調節するための換気扇を備える一方、内部の熱を外に逃がさないようにするガラスウール断熱材および遠赤外線に効率よく変換するセラミックスボードを壁面に備え、前記木質燃料の燃焼によって発生する木ガスからなる熱風を充満させた加熱室とからなり、該加熱室と前記遠赤外線増殖室の間には、熱風を通す風穴を有する隔壁および燃焼の火のこが前記加熱室27内に入り込まないように設けられる白金網またはステンレス網とを有し、前記換気扇の回転により、前記加熱室の熱風を外部に排出する風道管とを有することを特徴とする遠赤外線増殖による木材乾燥前処理炉(特許第3283129号公報特許請求の範囲請求項1)」を使用して、上記目的を達成せしめんとするものである。
【特許文献1】特許第3414809号公報
【特許文献2】特許第3283129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの提案に係る「木ガスによる木材生長応力除去装置」や「遠赤外線増殖による木材乾燥前処理炉」は、実際上は、燃料を燃焼する炉内は1000℃の熱に耐えられる耐火レンガや耐火セメント等で構築されるため、所要の加熱処理が終了した後に、加熱処理室内を徐冷し、常温になってから木材を室外に取り出して、次の未乾燥材を搬入しなければならず、上述するように、耐火レンガや耐火セメント等で構築されている「装置(炉)」にあっては、加熱処理終了後に燃料の供給を止めたとしても常温までに冷却する時間が長くかかり、2〜3日間の作業待ち時間を要していて効率的でなかった。
【0006】
また、これらの提案に係る「木ガスによる木材生長応力除去装置」や「遠赤外線増殖による木材乾燥前処理炉」においては、燃焼ガスが直接加熱処理室内に放出するので、炉内の燃焼ガス吹き出し口の温度が木材の発火温度に達することがあり、それが加熱処理をしようとする木材に引火して火災や爆発の原因になっている。
さらに、これらの提案に係る「木ガスによる木材生長応力除去装置」や「遠赤外線増殖による木材乾燥前処理炉」においては、燃焼ガス中に多量の水分が常に含有しているため、低含水率(9〜10%)の木材乾燥機としては使用が困難である。
【0007】
本発明は、従来技術における問題点を解決することを目的とするものであって、具体的には、まず、第一には効率的な運転・運用を図れるようにすること、第二に、加熱処理室内の吹き出し口からの熱風量を調節でき、火の粉等を消火しながら室内湿度の調整ができるようにすること、第三には、燃焼ガスを加熱処理室内に放出せずに熱風誘導管10を通して煙突から排気する間接加熱方式をとるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、タンデム式木材処理装置において、少なくとも単一の燃焼炉と、被処理木材の加熱処理を行う一または二以上の木材加熱処理室とからなり、前記単一の燃焼炉Nは少なくとも燃料投入口、火格子(ロストル)、空気吸入口を備え、可燃ガスの二次燃焼補助塊(溶岩等)を内包する蓄熱室と前記木材加熱処理室に連なり、開閉自在の熱風遮断板(ダンパー)を有する熱風誘導管を備え、前記木材加熱処理室は、断熱材を介在した外壁・内壁を貫通して露出する処理室内の温度を計測する温度センサと、加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ台を引き込むトロッコ用レールと、該トロッコ用レールの間から前記熱風誘導管に連なる適宜の間隔で設けられた複数の熱風吹き出し口と、該熱風吹き出し口に対応して適宜の間隔で設けられる開閉自在の複数の排気管と、前記処理室後方に前記熱風を処理室内に放出させずに直接室外に排気する煙突とからなることを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に係るタンデム式木材処理装置において、前記木材加熱処理室内に設けられる適宜の間隔で設けられた複数の熱風吹き出し口のうち、前記燃焼炉Nに最も近い吹き出し口上に設けられ、処理室内に蒸気を供給する蒸気発生槽及び同蒸気発生槽に水を補給する水槽(タンク)が設けられたことを特徴とする。
さらに、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1に係るタンデム式木材処理装置において、前記加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ台には、被処理木材の材内温度を計測する温度センサが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成としたので、次のような効果を奏する。
(1)低含水率の木材乾燥機としても使用が可能になる。
(2)熱風遮断板9(ダンパー)を開けたまま加熱処理室内熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13を全部閉めて、排気用煙突20のダンパーを開き送風機を稼働させて排気を行い、木材乾燥機として機能させることができる。
(3)燃焼炉の耐用年数は炉体の温度変化が少ないほど長くなるので、加熱処理室を複数にすることにより、炉体温度差を少なくすることができ、耐用数をのばすことができる。また、複数個の加熱処理室に対して、一基の燃焼炉ですむことにより、コスト的には安価になる。
【0010】
(4)さらに、加熱処理室内に水蒸気発生槽を設けることにより、不定型な燃料を間欠投入して火力のむらが生じても安心して燃焼を続けることができ、水分の補給もできる。
(5)また、加熱処理室内の熱風誘導管10にある吹き出し口を自由に塞鎖。開放操作ができて、熱風を煙突から排出させることにより、低含水率用の木材乾燥機としての機能を持つことができた。
(6)熱源はその国で最も安価で安定供給できるものならばどのような燃料であっても使用が可能であり、また、直接燃焼ガスで木材を加熱するため、熱効率は非常に高く、大幅なコスト軽減ができる。
【0011】
(7)さらに急激な昇温スケジュールで過熱燃焼を行っても発火及び爆発の心配は皆無になった。
(8)本発明による熱風直接加熱方式の場合は常圧のまま木材を高温加熱することができるため、強度は、低下することはなく、加熱処理室の構造駆体も耐圧補強の必要もないため、設備費を大幅に低減できた。
(9)また、加熱処理室内に蒸気発生槽を設置したことにより木材等の発火や爆発は皆無になった。
(10)さらに、木材乾燥には必須条件である、加熱と徐冷だが、加熱処理室を複数にしたことにより、蓄熱効果の大きい燃焼炉を徐冷させることはなく、加熱処理室だけを徐冷させることができるようになった。
【0012】
(11)製品を乾燥させる場合には、燃焼ガスを加熱処理室内に吹き出さずに、排気用煙突で排気する、いわゆる間接加熱により一般的な木材乾燥機としても併用することができる。
(12)これらの効果によって、これまで難乾燥材として殆ど利用価値のなかった低質材においても、あらゆる木材乾燥スケジュールの設定が可能になり、高品質、高歩止まり、低コスト乾燥材の生産が可能になった。地球資源の有効活用と地球環境の保全等に大きく貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
【実施例1】
【0014】
本発明に係るタンデム式木材処理装置の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施例であるタンデム式木材処理装置の側横断面図である。図2は、同装置の平横断面図であり、図1及び図2中、符号Nは、燃焼炉、Aは該燃焼炉Nに接続される二つの加熱処理室のうちの第一加熱処理室、Bは、同第二加熱処理室であり、本実施例に係るタンデム式木材処理装置は、燃焼炉Nを一基に対して、第一、第二の加熱処理室A、Bを二基以上複数基設置したことを特徴とする。そして、これらの第一、第二の加熱処理室A、Bに対して、一方を加熱中は、他方を加熱することなく、徐冷または木材を室外に取り出したり、次の未乾燥材を室内に搬入する作業を行うために、前記燃焼炉Nと第一、第二の加熱処理室A、B間に後述の熱風遮断板9を備えた熱風誘導管8で接続されていることを特徴とする。
また、図3は、図2のA部横断面図、図4は、図2のB部横断面図、図5は、図2のC部横断面図、図6は、図2のD部横断面図であり、これらの図1ないし図6において、その余の符号1は、空気吸入口、2は送風機、3は火格子(ロストル)、4は燃料、5は燃料投入口、6は可燃ガスの二次燃焼補助塊(溶岩等)、7は蓄熱室、8は熱風誘導管、9は前記第一第二加熱処理室A・Bへの加熱処理を交互に行う熱風遮断板(ダンパー)、10は前記第一第二加熱処理室A・B内熱風誘導管、11、12、13は、前記処理室内の下方から熱風を吹き出す吹き出し口であり、前記燃焼炉Nに近い順に第一吹き出し口11,第二吹き出し口12、第三吹き出し口13の如く配置される。また、符号14は前記第一第二加熱処理室A・Bの外壁、15は同断熱材、16は同内壁、17、18,19は前記第一第二加熱処理室A・Bの排気管であり、前記吹き出し口11、12、13に対応して開閉自在に設けられる。さらに、符号20は燃焼ガスを前記第一第二加熱処理室A・B内に放出させずに室外に直接排気する煙突、21はトロッコ用レール、22はトロッコ台、23はトロッコの方立、24は加熱処理をしようとする木材、25は前記第一第二加熱処理室A・B内蒸気発生槽、26は同蒸気発生槽25に水を補給する水槽(タンク)である。また、27は第一第二加熱処理室A・Bの後部扉、28は同扉固定金具、29は排気管用送風機、30は煙用送風機である。
【0015】
本実施例に係るタンデム式木材処理装置は、図2ないし図6に示すように、燃焼炉Nで発生させた熱風を複数基の処理室A・Bに分配できるようダンパー9を操作して燃焼炉Nの火を落としたり、冷却したりすることなく、一方が加熱中を他方の徐冷ないし処理材の出入作業を行うことができるように、第一加熱処理室A、第二加熱処理室Bを配置したものである。
【0016】
また、前記第一第二加熱処理室A・B内には、室内の温度を計測するセンサー34〜36を任意の位置に配置する。本実施例においては、前記第一第二加熱処理室A・Bの外側の外壁14から断熱材15を貫通して、前記内壁16に露出するように、その中段位置に前方センサー34、中央センサー35及び後方センサー36の三個のセンサーを配置した。
【0017】
さらに、前記加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ台22には、被処理木材24の材内温度を計測する温度センサ37、38が配置されている。
また、前記燃焼炉Nに最も近い第一吹き出し口11上には、前記処理室内に蒸気を供給する蒸気発生槽25及び同蒸気発生槽に水を補給する水槽(タンク)26が設けられる。
なお、本実施例では、二基の加熱処理室A・Bを配置したが、これは、一基以上であれば、二基、三基、四基等複数の加熱処理室を設けることを妨げず、木材の処理容量、処理時間を考慮に効率性の高まる処理室数を配置すればよいものである。
【0018】
本実施例に係るタンデム式木材処理装置を操作するには、まず、加熱処理をしようとする木材24をトロッコ台22に積み込んで、前記第一加熱処理室Aに搬入する。このとき、加熱処理をしようとする木材24を積載する際に、各ロット毎に前記トロッコ台22の中央部に積載する(最も加熱しにくい位置)の木材を選び、その木材の中央部までドリルで穴をあけ、温度センサー37、38の先端部を挿入し、さらに所定の高さまで木材を積み上げて積載し、第一加熱処理室内Aに収納して後部扉27を閉めて上記扉固定金具28で固定する。
【0019】
次に水槽26に水を満たし、蒸気発生槽25も、水を自動注入して、熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13を全開の状態にする。さらに、排気管用送風機29を稼働させた後に燃焼炉Nに燃料4を投入して着火させ、送風機2を稼働させて燃焼を開始する。燃料4を徐々に補給しながら、送風量及び排気量を増してゆき、加熱処理室及び各吹き出し口11、12、13にセットしてある温度センサーの昇温状況と加熱処理木材中にセットした温度センサー37、38の昇温状況を確認しながら、できるだけ急激な温度上昇ができるように操作する。
【0020】
しかる後、燃焼炉Nに燃料4を投入して、夏場・冬場で条件は異なるが、夏場において8〜10時間位の燃焼を続け、前記第一加熱処理室A内を加熱する。この8〜10時間位加熱しても、当初の加熱は、冷却した加熱炉に着火しても炉体が温まるまでの時間が2〜3時間を要し、さらに燃焼加熱を続けると、さらに、4〜5時間で加熱処理室内温度が100℃に達し、木材中心部の温度も徐々に昇温する。さらに、2〜3時間の燃焼加熱で、室内温度は140℃以上に昇温し、木材中心部の温度は急速に上昇し、燃焼開始から、着火から8〜10時間位で木材温度は80℃に到達する。
【0021】
前記第一加熱処理室Aが加熱中に、第二加熱処理室Bに対し、同様に、加熱処理をしようとする木材24をトロッコ台22に積み込んで、前記第二加熱処理室Bに搬入する。このときも、上述したと同様に、加熱処理をしようとする木材24の積載ロットの中央部に積載する(最も加熱しにくい位置)の木材の中央部までドリルで穴をあけ、温度センサー37、38の先端部を挿入し、トロッコ台22に積み上げて積載し、第二加熱処理室内Bに収納して後部扉27を閉めて上記扉固定金具28で固定しておく。
【0022】
奥山理論に基づけば、木材乾燥前処理は、第一加熱処理室Aの木材の材内温度が80℃以上で約40時間を経過した時点で、第二加熱処理室Bのダンパー9を全開し、さらに、前記第一加熱処理室Aのダンパー9を全閉して第一加熱処理室Aに対する放冷を始め、燃焼炉Nの燃焼を続けながら、前記第一加熱処理室Aに対して、処理後の木材24を常温に下げる一方、前記第二加熱処理室B内の木材加熱処理スケジュールに合わせて前記第二加熱処理室B内を加熱する。
【0023】
第二加熱処理室Bを加熱しながら、ダンパー9で閉鎖され徐冷された第一加熱処理室Aが常温にまで下がったら、前記扉固定金具28の固定を解除し、後部扉27を明けて、トロッコ台22を第一加熱処理室Aから運び出す。加熱処理の終えた木材24をトロッコ台22から積み降ろし、次の、処理のための作業に移る。すなわち、当該第一加熱処理室Aに対し、加熱処理をしようとする木材24のを各ロット毎に前記トロッコ台22の中央部に積載する(最も加熱しにくい位置)の木材の中央部までドリルで穴をあけ、温度センサー37、38の先端部を挿入し、トロッコ台22上に所定の高さまで積み上げて積載し、第一加熱処理室内Aに収納して後部扉27を閉めて上記扉固定金具28で固定しておく。
このようにしておいて、前記第二加熱処理室Bに対する加熱が経過したら、第一加熱処理室Aのダンパー9を全開し、さらに、前記第二加熱処理室Bのダンパー9を全閉して第二加熱処理室Bに対する放冷を行いつつ、第一加熱処理室Aの加熱に移行させる。
【0024】
なお、前記水槽26に水を満たし、蒸気発生槽25にも水が自動注入されるようにしつつ、前記熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13を全開にしてあるので、前記第一加熱処理室A及び第二加熱処理室Bは、加熱の間は蒸気が常時充満されることとなる。また、木材乾燥機として使用するときは、蒸気発生槽25への水の供給を止めることで加熱処理室ABの湿温度調整は自由にできる。
【0025】
本実施例においては、前記第一加熱処理室A内または第二加熱処理室B内に放出される燃焼ガス等の第一吹き出し口11は、木材の着火温度以上になるが、前記第一加熱処理室A内または第二加熱処理室B内の熱風誘導管10の第一吹き出し口11の上部に蒸気発生槽25を設けたことにより、加熱中は、常時、蒸気が前記第一加熱処理室A内または第二加熱処理室B内に充満することとなるため、加熱処理木材の着火や可燃ガスによる爆発はなくなり、併せて加熱処理室内の湿度調整が可能になった。
【0026】
すなわち、前記熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13を全開しても、第一吹き出し口11のみが250℃以上になるだけで、第二吹き出し口12は、200℃、第三吹き出し口13は、150℃と徐々に下がり、また、前記第一吹き出し口11を全閉すると、前記第二吹き出し口12は、200℃以上になるというように、前記第一加熱処理室A内または第二加熱処理室B内の温度・湿度に応じて、前記熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13を全閉したり、その一部を開いたり閉じたりすることによって適宜、前記吹き出し口11、12、13の各開閉量を調節し、あるいは、前記排気用煙突20へ抜ける燃焼ガス等を調節することにより、適切な温度・湿度条件での木材の加熱を可能とすることができた。
【0027】
さらに、これらの熱風誘導管10の吹き出し口11、12、13開閉及び前記排気用煙突20からの燃焼ガス等の抜け出しを調節することにより、前記第一加熱処理室A内及び第二加熱処理室B内の温度、湿度が自由に調節することが可能になったので、燃焼ガス等を直接加熱処理室内に放出する従来の木材乾燥方法では、燃焼ガス中に水分が多く含まれているため、木材乾燥が困難であった低含水率の木材の乾燥を行うことができる。このことは、木材乾燥ばかりでなく、木材乾燥前処理を可能とすることを意味する。ここで、木材乾燥前処理とは、木材の成長応力の除去と水分傾斜の軽減や含水率の低下を目的とした処理をいい、例えば、山野から切り出した原木をそのまま処理して、乾燥後に発生する「ゆがみ」や「ひずみ」の発生を抑えるための加熱処理をいう。
【0028】
したがって、具体的には、本実施例に係るタンデム式木材処理装置を用いて、両処理室A・Bで同時に乾燥前処理を行う場合には、両処理室A及び処理室Bについて、両ダンパー9を全開すると共に、前記吹き出し口11、12、13を全開して加熱処理をすれば、処理室A・Bは、同時運転となり木材乾燥前処理が可能となる。また、両処理室A・Bで同時に木材乾燥処理を行う場合には、前記両処理室A及び処理室Bについて、両ダンパー9を全開すると共に、前記吹き出し口11、12、13を全閉し、さらに、前記煙突ダンパー33を全開し、煙突用送風機30を起動操作することにより、木材乾燥処理が可能となる。
【0029】
このようにして、両処理室A及び処理室Bについて、前記両ダンパー9を全開・全閉、前記吹き出し口11、12、13の全開・全閉と前記煙突ダンパー30の全開・全閉及び前記煙突用送風機30の起動操作を組み合わせることにより、木材乾燥前処理と木材乾燥の前処理の放冷、木材乾燥処理と放冷等様々な処理の組み合わせが可能となる。すなわち、後述する処理室内の温度及び被処理木材の材内温度を計測しつつ燃焼運転を行うことで、木質燃料等の燃焼ガスを直接加熱処理室A・B内の熱風誘導管10の第一吹き出し口11ないし第三吹き出し口13のすべてを通して放出する処理は、大量の水分が被処理木材に含まれているため、いわゆる木材乾燥前処理においては有効であるが、被処理木材が低含水率(9〜10%)の木材の乾燥を行うには不十分であるため、処理室内の高温燃焼ガスを加熱処理室内に放出しないよう、熱風誘導管10にある吹き出し口11、12,13を全部塞鎖できるようにし、燃焼ガス等排気用煙突20を通して放出できるようにすることにより、水分を含まない加熱処理、すなわち、木材乾燥機として使用することができる。
なお、上記の実施例においては、両処理室A及び処理室Bについて、前記両ダンパー9を全開・全閉、前記吹き出し口11、12、13の全開・全閉と前記煙突ダンパー30の全開・全閉及び前記煙突用送風機30の起動操作を組み合わせることにより、木材乾燥前処理と木材乾燥の前処理の放冷、木材乾燥処理と放冷等様々な処理の組み合わせが可能としたが、被処理材の処理量が少ない場合には、処理室A及び処理室Bの双方を用いることなく、いずれか一方の処理室を使用するだけでも良いことは当然である。
【0030】
前記木材乾燥前処理(木材の成長応力の除去と水分傾斜の軽減や含水率の低下を目的とした木材加熱処理)の温度スケジュールの一例を図7に示す。
図7に示した処理方法においては、木材中心温度が80℃以上に達するまでに8〜10時間は、処理室内温度は120〜140℃まで一挙に昇温させ、その後は木材中心温度が約80℃以下に下らないよう、蓄熱又は燃料4の補給を行って約40時間保ってから熱風遮断板9(ダンパー)を閉めて徐冷を行った場合の処理時間に対する処理室内温度及び木材中心温度を示すものである。
【0031】
このデータは、桟積棚に末口径16センチの丸太を資料木材とし、これを48段にして積み上げ、燃焼炉に木質燃料(材木の切れ端等)を適量投入し、着火後処理室内温度が約4時間で最高140℃となる昇温速度で加熱した。処理室内温度は、床面から1.0mの高さに温度センサー(クロメルーアルメル熱電対、CHINO・K型)を取り付け、木材内部温度は桟積棚の上部1.0mで測定した。木材の内部温度は、材長2.0mの中央位置に、電動ドリルで深さ8cmまで穴をあけ、熱電対を差し込んで測定した。温度センターを見ながら炉内温度を120〜130℃に保つように燃料の補給と空気吸引口の調節を行い、7時間燃焼させた。夜間は燃料補給を中断し、最初の着火から24時間後再び燃料に着火し、同様に処理した。2日間熱処理を行った後、2日間放冷して供試木を取り出し、実験に供した際の処理時間に対する処理室内温度及び木材中心温度である。
【0032】
本実施例は、このような処理室内温度及び被処理木材の材内温度に基づき加熱を行うもので、上述した燃焼炉運転と相まって、上述するように、本実施例に係る木材処理装置を直接加熱または間接加熱を実施できうるものとなった。
また、可燃物燃料4を前記火格子(ロストル)3の上に燃料投入口5から送給し、下方より空気を送って高温燃焼ガス等を発生させ、隔壁32の上に可燃ガスの二次燃焼補助塊(溶岩等)6を並べて赤熱化させ、そこを不燃性木ガス(煙)が通過することにより再燃焼させ、高温になった熱風を直接木材加熱処理室A・Bに送ることにより、木材処理を行うが、この種の燃焼炉Nは高温に耐えられるように炉内は内壁16を耐火レンガ31で覆われるので、炉体が温まる迄に長時間を要する半面、木材加熱処理終了後の冷却には、2〜3日間の徐冷時間を必要としていた。
【0033】
そこで、本実施例においては、木材処理室A・Bをタンデム式とすることにより、一方の処理室Aを加熱する際には、他方の処理室Bを被処理木材の搬入ないしは徐冷の時間とすることができ、燃焼炉Nを処理室Bの冷却のために燃焼を停止させることなく、複数の処理室を交互に放冷させることによって処理効率を大幅に高めることができるようになった。
また、本実施例においては、前記第一吹き出し口11の上部に前記蒸気発生槽25を設け、急激な昇温に伴う大量の熱風に比例して、大量の水蒸気が発生するようにして、木材加熱処理室内の温度の急激な上昇(約70〜150℃)にも耐えうるようにした。
【0034】
すなわち、木材処理のうち、木材の成長応力(残留応力)を丸大又は大断面製材品の生材のうちに除去したり、針葉樹の仮導管にある塞鎖壁孔壁を開放するためには、木材加熱処理室内の温度をできるだけ急激に上昇させて材内温度を所定の温度(80℃以上)に上昇させる必要があるが、このような急激な昇温を行うと、加熱処理室内にある熱風誘導管10の第一吹き出し口11の熱風の温度が木材発火点(約250℃)以上にも達することがあり、そのため、処理室内に火の粉が飛び回り、被処理木材に着火し、火災や爆発の危険を回避できることとなる。
このことは耐火レンガ等の耐用年数の延長にもなる。また、燃焼ガスを直接木材等を加熱する乾燥方法の唯一の欠点としては、燃焼時に発生するススが木材の表面に付着して黒くなることであるが、これを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
我が国の木材需要量の80%以上が外材で占められており、そのうちの建築部材の大部分が乾燥材で輸入されている。しかし、国産材の40%を占めるスギの乾燥技術及び人工乾燥機の開発が遅れているため、スギ乾燥材の市場出荷率は30%と遅れており、国産材の需要拡大をさまだけている。しかし、スギ材は他の樹種に比べて人工乾燥が難しいうえに次のような乾燥コストの上昇要因があるため普及しにくい。
(1)石油の高騰
(2)代替エネルギとしての木質ボイラー設備の高騰
(3)ステンレスの高騰等による乾燥設備の高騰
(4)人件費の節減に伴う自動化設備の高騰
(5)品確法等による性能保証の要求が高まる(歩止まりの低下)
(6)木材価格(約5万円)に占める乾燥コスト(約1万円)の比率が高い(20%)
これらの要件を満たして乾燥コストを1m3当たり3000〜5000円に納めるためにはダンテム式木材処理装置が最適であり、更に本装置を用いることにより、木材乾燥材の生産のみではなく、スギ材を用いた「不燃木材」や「結合梁」等の高付加価値製品の実用化も行われている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、タンデム式木材処理装置の即断面図。
【図2】図2は、同平断面図。
【図3】図3は、図1の側断面中のA−A線縦断面図。
【図4】図4は、図1の側断面中のB−B線縦断面図。
【図5】図5は、図1の側断面中のC−C線縦断面図。
【図6】図6は、図1の側断面中のD−D線縦断面図。
【図7】図7は、間欠運転による加熱処理室内及び加熱処理丸太中心部の温度変化を示す図。
【図8】図8は、本願発明者が既に提案し、特許された装置ないし炉の概略を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1・・・空気吸入口
2・・・送風機
3・・・火格子(ロストル)
4・・・燃料
5・・・燃料投入口
6・・・二次燃焼補助塊
7・・・蓄熱室
8・・・熱風誘導管
9・・・熱風遮断板(ダンパー)
10・・・加熱処理室内熱風誘導管
11・・・第一吹き出し口
12・・・第二吹き出し口
13・・・第三吹き出し口
14・・・加熱処理室外壁
15・・・同上断熱材
16・・・同上内壁
17〜19・・・排気管
20・・・燃焼ガス等排気用煙突
21・・・トロッコ用レール
22・・・トロッコ台
23・・・方立
24・・・木材
25・・・加熱処理室内蒸気発生槽
26・・・同上用水槽(タンク)
27・・・後部扉
28・・・扉固定金具
29・・・排気管用送風機
30・・・煙突用送風機
31・・・耐火レンガ
32・・・隔壁
33・・・煙突用ダンパー
34〜36・・・加熱処理室内温度センサ
101・・・空気吸入口
102・・・木質燃料
103・・・燃料投入口
104・・・ロストル
105・・・遠赤外線増殖用セラミック等
106・・・風道
107・・・屋根
108・・・加熱室の壁面
109・・・ボックスカルバート
110・・・ガラスウール断熱材
111・・・セラミックスボード
112・・・棧
113・・・換気扇
114・・・風導管
115・・・後部扉
116・・・木材
117・・・方立て
118・・・トロッコ用レール
119・・・トロッコ台
120・・・風穴
121・・・白金網(又はステンレス網)
122・・・遠赤外線増殖室
123・・・遠赤外線増殖用セラミックス(又は高密度溶岩等)
124・・・燃焼用ロストル
125・・・耐火レンガ
126・・・扉
127・・・加熱室
128・・・燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも単一の燃焼炉と、被処理木材の加熱処理を行う一または二以上の木材加熱処理室とからなり、
前記単一の燃焼炉Nは少なくとも燃料投入口、火格子(ロストル)、空気吸入口を備え、可燃ガスの二次燃焼補助塊(溶岩等)を内包する蓄熱室と前記木材加熱処理室に連なり、開閉自在の熱風遮断板(ダンパー)を有する熱風誘導管を備え、
前記木材加熱処理室は、断熱材を介在した外壁・内壁を貫通して露出する処理室内の温度を計測する温度センサと、加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ台を引き込むトロッコ用レールと、該トロッコ用レールの間から前記熱風誘導管に連なる適宜の間隔で設けられた複数の熱風吹き出し口と、該熱風吹き出し口に対応して適宜の間隔で設けられる開閉自在の複数の排気管と、前記処理室後方に前記熱風を処理室内に放出させずに直接室外に排気する煙突とからなることを特徴とするタンデム式木材処理装置。
【請求項2】
前記木材加熱処理室内に設けられる適宜の間隔で設けられた複数の熱風吹き出し口のうち、前記燃焼炉Nに最も近い吹き出し口上に設けられ、処理室内に蒸気を供給する蒸気発生槽及び同蒸気発生槽に水を補給する水槽(タンク)が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のタンデム式木材処理装置。
【請求項3】
前記加熱処理をしようとする木材を載貨するトロッコ台には、被処理木材の材内温度を計測する温度センサが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタンデム式木材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−262476(P2009−262476A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116780(P2008−116780)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(599011610)株式会社カネキチ (3)
【出願人】(506141236)ドライウッド上越協同組合 (1)
【Fターム(参考)】