説明

タービンロータ

【課題】
本発明の目的は、700℃級の蒸気条件であっても、クリープ強度に関し信頼性の高いタービンロータが提供することにある。
【解決手段】
タービン段落ロータ部1と軸端ロータ部2とに分割してタービンロータを構成し、タービン段落ロータ部1をNi基合金で、軸端ロータ部2を鋼材でそれぞれ構成し、タービン段落ロータ部1と軸端ロータ部2とをフランジ3とボルト4により接合し、この接合部の両端にグランドシール(高温部グランドシール5,低温部グランドシール6)を設け、それらシール部を冷却管7を介して蒸気や空気により積極的に冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンロータに係り、特に、25MPa以上の高圧,650℃以上高温の雰囲気にさらされる蒸気タービンロータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に蒸気タービンは高圧タービン,中圧タービン,低圧タービンと3種に大別される。そのうち、超々臨界圧の高圧タービンでは、ボイラから流入する最も高温高圧である25MPa,600℃程度の蒸気が流入し、その出口はほぼ圧力は半減し、温度は400℃程度に降下する。よって、タービンロータの素材は400℃から600℃の高温クリープに耐えることのできる材料が採用されている。
【0003】
一方、ガスタービンと蒸気タービンでコンバインドサイクルを形成する場合、蒸気タービンは、例えば、特許文献1に記載されたように高中低圧一体のロータを構成し、各温度構成によって、タービン段落間のロータ部が溶接される構造が採用される。この溶接ロータ構造は、クリープ強度を考慮しなければいけないタービン段落部には高温用のロータ素材、例えば高強度Cr鋼を用い、クリープ強度を考慮しなくても良い400℃より低温領域では、比較的安価であるCrMoV鋼などを用いる。このように温度に対応して異種材料を溶接すれば、クリープ強度を考慮しなければならない部分のみ高価な材料を用いればよいので、ロータ全体では安価に構成することが可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−64805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来用いてきた超々臨界圧蒸気条件では、400℃を超えて620℃程度まではフェライト鋼により充分クリープ強度が耐えられるものであったが、700℃の蒸気条件を利用する先進超々臨界圧蒸気条件で高圧タービンを構成する場合、Ni基合金を適用しなければならない。Ni基合金は、フェライト鋼に比べて大型鋼塊製造性に乏しく、高々10トン程度のロータしか製造することができない。この場合、従来のような溶接ロータの適用も考えられるが、Ni基合金とフェライト鋼の異種材溶接を施しても、Ni基合金素材やフェライト鋼素材は、ロータの基本機械特性を維持するため、ハンマーやプレスで鍛造され靭性が高められているのに対し、溶接部は高温熱処理された無垢の状態であるので、靭性に乏しく、著しく強度が低下する恐れがある。そのため、700℃級先進超々臨界圧蒸気条件のロータを構成するにあたり、異種材溶接ロータでは、信頼性向上に何等かの対策を施す必要がある。
【0006】
本発明の目的は、700℃級の蒸気条件であっても、クリープ強度に関し信頼性の高いタービンロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、タービン段落部にのみNi基合金を施し、その両端は鋼材で構成し、それらをフランジ・ボルトにより接合し、かつフランジ・ボルト接合部の両端にグランドシール(シャフトパッキンによるシール構造)を設け、それらシール部を蒸気や空気により積極的に冷却するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、フランジとボルトにより接合された部分の外周にシール構造を備えることが望ましい。
【0009】
また、タービン段落部の両端の素材は、CrMoV鋼を用いるのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、グランドシールによる冷却機構を応用して、タービンロータの異種材カップリングを実現化するという着想に基づき考案されたものである。この本発明によれば、700℃級の蒸気条件であっても、クリープ強度に関し信頼性の高いタービンロータを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の構成を、図1を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例であるタービンロータを用いたタービンの構成図を示す。図1において、1はタービン段落ロータ部、2は軸端ロータ部、3はフランジ、4はボルト、5は高温部グランドシール、6は低温部グランドシール、7は冷却管、8は冷却蒸気挿入部、9は軸受、10は内ケーシング、11は外ケーシング、12は静翼、13は動翼、14は主蒸気管、15は排気口を示す。
【0013】
タービン動翼や静翼で構成されるタービン段落のタービン段落ロータ部1は、700℃の先進超々臨界圧蒸気条件で用いられる場合には、タービン段落間は600℃から700℃の高温で使用されるので、Ni基合金により製造される。一方、タービン段落ロータ部1の両端は、グランドシール(シャフトパッキン)が設けられており、蒸気漏洩を防ぐとともに、タービン内の高圧・高温蒸気と外気間に位置することから、フィルム冷却効果が作用され、タービン段落間より低温になる。そこで、軸端ロータ部2を鋼材で構成することが可能になり、タービン段落ロータ部1と軸端ロータ部2をフランジ・ボルト結合により連結し、かつ低温部グランドシール6にはさらに冷却蒸気挿入部8から導かれた冷却管7により強制的に冷気が通風されるので、軸端ロータ部2はクリープを確実に回避することが可能になる。尚、冷却管7には冷却蒸気の他に冷却空気を導入しても良い。
【0014】
また、タービン段落ロータ部1と軸端ロータ部2を連結するフランジ部外周には、グランドシールと同様のシール構造を備えるのが望ましい。また、軸端ロータ部の素材としてCrMoV鋼を用いた場合、9Cr鋼や12Cr鋼に較べて、Ni基と線膨張係数が近いのでフランジ・ボルト連結構造にガタを生じることは少なくなるともに、軸受の磨耗問題が回避できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例であるタービンロータを適用したタービンの構成図(断面図)。
【符号の説明】
【0016】
1 タービン段落ロータ部
2 軸端ロータ部
3 フランジ
4 ボルト
5 高温部グランドシール
6 低温部グランドシール
7 冷却管
8 冷却蒸気挿入部
9 軸受
10 内ケーシング
11 外ケーシング
12 静翼
13 動翼
14 主蒸気管
15 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン段落ロータ部と、該タービン段落ロータ部の両端の軸端ロータ部とに分割して構成されたタービンロータであって、
前記タービン段落ロータ部はNi基合金で製造され、
前記軸端ロータ部は鋼材にて製造され、
前記タービン段落ロータ部と前記軸端ロータ部は、フランジとボルトにより接合され、
前記フランジとボルトにより接合された部分の両側には、シール構造が施され、該シール構造には、ロータ部よりも低温な蒸気や空気を挿入する冷却機構が設けられたことを特徴とするタービンロータ。
【請求項2】
請求項1において、
前記フランジとボルトにより接合された部分の外周にはシール構造を備えたことを特徴とするタービンロータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記軸端ロータ部の素材として、CrMoV鋼を用いたことを特徴とするタービンロータ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−112275(P2010−112275A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286033(P2008−286033)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】