説明

タービン保護装置

【課題】脱気器とタービンの間に配設される逆止弁が、脱気器とタービンの間を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であっても、脱気器からタービンへ逆流する蒸気を遮断できるタービン保護装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ボイラ13で発生する蒸気で駆動するタービン2と、復水器18で蒸気が凝縮された復水を加熱脱気して貯水する脱気器5が、逆止弁3aが配設される抽気蒸気導入管3で接続され、さらに、抽気蒸気導入管3に、タービン2と脱気器5の間を流れる蒸気を遮断する遮断弁装置12が備わるタービン保護装置20とする。遮断弁装置12を制御する制御装置11は、脱気器5内の圧力から、タービン2からの抽気蒸気の圧力を減算した差圧が、第1所定値以上のときに遮断弁装置12を閉弁して、脱気器5からタービン2に向って流れる蒸気を遮断弁装置12の止め弁12aで遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンシステムに備わるタービンを保護するためのタービン保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電用蒸気タービンプラントの蒸気タービンシステムには、復水器から排出される復水に含まれている酸素等のガスをタービンからの抽気蒸気で加熱脱気した後、その復水を貯水する脱気器が備わっている。
そして、蒸気タービンシステムの通常運転時において、脱気器の内部の圧力(脱気器内圧力)は、タービンからの抽気蒸気が脱気器まで流通する経路での圧力損失によって抽気蒸気の圧力(抽気圧力)より減圧し、脱気器内圧力が抽気圧力より低い状態でバランスしている。
【0003】
しかしながら、タービントリップの発生時や負荷遮断時など、タービンの負荷の急激な降下にともなって抽気圧力が急減すると、抽気圧力の減圧速度が脱気器内圧力の減圧速度を上回り、脱気器内圧力と抽気圧力のバランスが崩れる場合がある。すなわち、脱気器内圧力が抽気圧力以上になる場合がある。
【0004】
また、蒸気タービンシステムの通常運転時においても、タービンの負荷が降下すると、抽気圧力は負荷の降下に応じて低下し、このときの抽気圧力の減圧速度は、タービンの負荷降下率が大きいほど大きくなる。
一方、貯水容量の大きな脱気器は、内部に貯水される復水の量が多くなって熱容量が大きくなる。そして、脱気器内の温度が下がりにくくなり、その結果として、脱気器内圧力が減圧しにくくなる。
【0005】
したがって、脱気器の貯水容量が大きい場合、蒸気タービンシステムの負荷降下率が大きく抽気圧力の減圧速度が大きいときは、脱気器内圧力の減圧速度が抽気圧力の減圧速度より小さくなって脱気器内圧力と抽気圧力のバランスが崩れ、脱気器内圧力が抽気圧力以上になる場合がある。
【0006】
脱気器内圧力と抽気圧力のバランスが崩れ、脱気器内圧力が抽気圧力より大きい状態になると、脱気器からタービンに向って低温蒸気が流れてタービンにウォータインダクションが発生する。
以下、脱気器からタービンに向う蒸気の流れを逆流とする。
タービンにウォータインダクションが発生すると、高温状態にあるタービンのケーシングやロータを低温蒸気が急速に冷却することになってケーシングやロータが変形する。そして、ロータなどの回転体とケーシングなどの静止体の接触や異常振動が発生し、タービンが損傷する。つまり、ウォータインダクションの発生を抑える必要があり、そのために、脱気器からタービンへの蒸気の逆流を防止する必要がある。
【0007】
そこで、従来、タービンと脱気器の間に逆止弁を備え、脱気器からタービンへの蒸気の逆流を防止している。
さらに、タービンと脱気器の間を流れる蒸気を遮断するための遮断弁装置を備えている。
【0008】
例えば特許文献1には、蒸気タービンシステムに備わる給水加熱器とタービンの間を流れる蒸気を遮断する遮断弁(遮断弁装置)を備え、給水加熱器の水位が異常に上昇したときのウォータインダクションの発生を防止するウォータインダクション保護装置の技術が開示されている。
【0009】
特許文献1に開示される技術によると、例えば給水加熱器内部のチューブから漏水して給水加熱器の水位が上昇すると、遮断弁が、タービンと給水加熱器の間を流れる蒸気を遮断してウォータインダクションの発生を防止できる。
【0010】
例えば特許文献1に開示される技術を脱気器に適用すると、脱気器内部の水位の上昇によるウォータインダクションの発生を防止できる。
【0011】
このように、脱気器とタービンの間に逆止弁と遮断弁装置を備える構成によって、脱気器からタービンへの蒸気の逆流を防止できる。また、脱気器内部の水位の上昇によるウォータインダクションの発生を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−148310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、逆止弁は、脱気器内圧力が抽気圧力以上になったときに瞬時に閉弁して脱気器からタービンへの蒸気の逆流を防止するため、例えば、タービントリップの発生時など抽気圧力が急激に低下したときには急激に閉弁する。したがって、逆止弁が頻繁に開閉すると、閉弁時の衝撃で弁体などの構成部品が変形し、脱気器からタービンへの蒸気の逆流を完全に遮断できなくなる場合がある。
【0014】
そこで本発明は、脱気器とタービンの間に配設される逆止弁が、脱気器とタービンの間を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であっても、脱気器からタービンへ逆流する蒸気を遮断できるタービン保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は、脱気器内圧力が抽気圧力以上になったときに動作する遮断弁装置を備えて、脱気器からタービンへ逆流する蒸気を遮断できるタービン保護装置とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、脱気器とタービンの間に配設される逆止弁が、脱気器とタービンの間を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であっても、脱気器からタービンへ逆流する蒸気を遮断できるタービン保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蒸気タービンシステムの一構成例を示す図である。
【図2】抽気圧力と脱気器内圧力が減圧する状態を示す図である。
【図3】制御装置が遮断弁装置を制御する手順を示すフローチャートである。
【図4】内部タイマー機能を有する制御装置が遮断弁装置を制御する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービンシステム1は、ボイラ13で発生した蒸気が高圧タービン14を回転した後、ボイラ13の再熱器13aに導入される。再熱器13aで再度加熱された蒸気は、中圧タービン15、低圧タービン16を回転して、復水器18に導入されて復水に凝縮される。
なお、低圧タービン16には、例えば発電機17が負荷として接続されている。
【0019】
復水器18内で蒸気が凝縮して生成される復水は、復水ポンプ19によって昇圧され、低圧ヒータ4で、例えば低圧タービン16からの抽気蒸気で加熱された後、脱気器5まで送水され、中圧タービン15、または、低圧タービン16からの抽気蒸気で加熱脱気されて貯水される。
そして、脱気器5に貯水された復水は給水ポンプ6によって昇圧され、高圧ヒータ7で、例えば高圧タービン14や中圧タービン15からの抽気蒸気で加熱された後、ボイラ13に導入される。
以下、高圧タービン14、中圧タービン15、及び低圧タービン16をまとめてタービン2と称する。
【0020】
タービン2と脱気器5は抽気蒸気導入管3(導入管)で接続され、タービン2からの抽気蒸気が抽気蒸気導入管3を流通し、加熱脱気用の抽気蒸気として脱気器5に導入される。
抽気蒸気導入管3には、例えば2つの逆止弁3aが直列に配設され、抽気蒸気導入管3における蒸気の流れの方向が、タービン2から脱気器5に向かう方向に規制されている。
なお、抽気蒸気導入管3は、高圧タービン14、中圧タービン15、低圧タービン16のうちの一台、又は複数台に接続される。
【0021】
タービン2からの抽気蒸気は、抽気蒸気導入管3を流通して脱気器5に導入されることから、タービン2からの抽気蒸気の抽気圧力(以下、符号P1で示す)は、抽気蒸気導入管3を流通する際の圧力損失で減圧する。
したがって、蒸気タービンシステム1の通常運転時に、脱気器内圧力(以下、符号P2で示す)は抽気圧力P1より低くなる。
すなわち、蒸気タービンシステム1の通常運転時には、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1より低い状態でバランスして、脱気器5からタービン2へ蒸気が逆流することがない。
2つの逆止弁3aは、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1未満の状態のときは開弁してタービン2から脱気器5へ蒸気を流通させるが、例えばタービントリップの発生時など、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上になったときには瞬時に閉弁して、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気を遮断するように構成される。
【0022】
また、抽気蒸気導入管3には、2つの逆止弁3aと脱気器5の間に遮断弁装置12が備わっている。遮断弁装置12は、抽気蒸気導入管3を流れる蒸気を遮断する止め弁12aと、止め弁12aを急速開閉可能な弁駆動部12bを含んで構成される。
【0023】
弁駆動部12bは、図示しない水位計が計測する脱気器5内部の水位が所定値より高くなったときに、止め弁12aを駆動して抽気蒸気導入管3を閉じて、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気を遮断してウォータインダクションの発生を防止する。
【0024】
また、本実施形態に係る蒸気タービンシステム1には、タービン2からの抽気蒸気の抽気圧力P1を計測する圧力計測手段としてのタービン抽気圧力計9と、脱気器5の脱気器内圧力P2を計測する圧力計測手段としての脱気器内圧力計10と、弁駆動部12bに指令を与えて遮断弁装置12を制御する制御装置11が備わっている。
タービン抽気圧力計9は、例えばタービン2と抽気蒸気導入管3の接合部近傍に備わり、抽気蒸気導入管3による圧力損失が発生していない状態の抽気圧力P1を計測するように構成される。
【0025】
制御装置11は、タービン抽気圧力計9から入力される計測信号に基づいて抽気圧力P1を算出し、脱気器内圧力計10から入力される計測信号に基づいて脱気器内圧力P2を算出する。
【0026】
そして、制御装置11は、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上になると、弁駆動部12bに指令を与えて止め弁12aを駆動して抽気蒸気導入管3を閉じる。すなわち、遮断弁装置12を閉弁する。
したがって、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気が止め弁12aによって遮断される。
【0027】
その後、脱気器内圧力P2が減圧し、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1未満になると、制御装置11は、弁駆動部12bに指令を与えて止め弁12aを駆動して抽気蒸気導入管3を開く。すなわち、遮断弁装置12を開弁する。
タービン2からの抽気蒸気は、抽気蒸気導入管3を流通して脱気器5に導入される。
【0028】
そして、本実施形態においては、タービン抽気圧力計9、脱気器内圧力計10、制御装置11、及び遮断弁装置12を含んで、タービン保護装置20を構成する。
【0029】
図2に示すように、抽気圧力P1がP1Hであり、脱気器内圧力P2が、P1Hより少し低いP2Hである状態で、蒸気タービンシステム1(図1参照)が通常運転しているときに、例えば発電機17(図1参照)に要求される発電量が減少してタービン2の負荷が降下する場合、抽気圧力P1は負荷の降下にともなって時刻t1でP1Lまで減圧する。
そして、脱気器内圧力P2は、抽気圧力P1の減圧にともなって時刻t2でP2Lまで減圧する。
【0030】
しかしながら、例えば、脱気器5(図1参照)の貯水容量が大きく、且つ、タービン2(図1参照)の負荷降下率が大きい場合など、抽気圧力P1の減圧速度が脱気器内圧力P2の減圧速度より大きいときは、例えば時刻t3で、抽気圧力P1が脱気器内圧力P2と同じ圧力まで減圧し、その後、脱気器内圧力P2がP1Lまで減圧する時刻t4までは、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1より大きい状態が続く。
【0031】
前記したように、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上(脱気器内圧力P2≧抽気圧力P1)になると、2つの逆止弁3a(図1参照)が閉弁して、脱気器5(図1参照)からタービン2(図1参照)へ逆流する蒸気を遮断することができる。
しかしながら、例えば、2つの逆止弁3aの弁体等が変形していて、抽気蒸気導入管3(図1参照)を流れる蒸気を完全に遮断することができない場合は、蒸気が脱気器5からタービン2に向って逆流してタービン2が損傷する可能性がある。
【0032】
そこで、本実施形態に係る制御装置11(図1参照)は、蒸気タービンシステム1(図1参照)の通常運転時に脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが、予め設定される第1の所定値(第1所定値ΔPf1)以上になる時刻t5から、予め設定される第2の所定値(第2所定値ΔPf2)以下になる時刻t6まで、遮断弁装置12(図1参照)が閉弁するように遮断弁装置12を制御する。
そして、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になる時刻t6以降は、遮断弁装置12が開弁するように遮断弁装置12を制御する。
【0033】
制御装置11は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になったときに、止め弁12a(図1参照)が抽気蒸気導入管3を閉じるように弁駆動部12b(図1参照)に指令を与え、遮断弁装置12(図1参照)を閉弁する。
また、制御装置11は、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になったときに、止め弁12aが抽気蒸気導入管3を開くように弁駆動部12bに指令を与え、遮断弁装置12を開弁する。
このように制御装置11は、脱気器内圧力P2と抽気圧力P1の差圧ΔPに基づいた指令で遮断弁装置12を制御する。
【0034】
第1所定値ΔPf1、及び第2所定値ΔPf2は、例えば、タービン抽気圧力計9や脱気器内圧力計10の計測誤差、脱気器内圧力P2や抽気圧力P1の変動(脈動)等を考慮して、極力小さくなるように設定する。第1所定値ΔPf1と第2所定値ΔPf2は異なった値であってもよいし、同じ値であってもよい。
また、第1所定値ΔPf1や第2所定値ΔPf2を「0」としてもよい。
第1所定値ΔPf1が「0」の場合、制御装置11は、脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上になったときに遮断弁装置12(図1参照)を閉弁し、第2所定値ΔPf2が「0」の場合、制御装置11は、抽気圧力P1が脱気器内圧力P2以上になったときに遮断弁装置12(図1参照)を開弁する。
なお、第1所定値ΔPf1、及び第2所定値ΔPf2は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧として設定する。したがって、抽気圧力P1が脱気器内圧力P2より高い場合は負の値になる。
【0035】
図3を参照して、制御装置11が遮断弁装置12を制御する手順を説明する(適宜図1、図2参照)。
この手順は、例えば、制御装置11が実行するプログラムにサブルーチンとして組み込まれ、100msecなどの時間間隔で制御装置11が実行するように構成すればよい。
【0036】
遮断弁装置12を制御する手順がスタートすると、制御装置11は、抽気圧力P1を算出し(ステップS1)、さらに脱気器内圧力P2を算出する(ステップS2)。
前記したように、制御装置11は、タービン抽気圧力計9から入力される計測信号に基づいて抽気圧力P1を算出することができ、脱気器内圧力計10から入力される計測信号に基づいて脱気器内圧力P2を算出できる。
このように、制御装置11は、遮断弁装置12を制御する手順を実行するたびに抽気圧力P1と脱気器内圧力P2を算出する。したがって、制御装置11は、抽気圧力P1と脱気器内圧力P2を常に監視することになる。
【0037】
制御装置11は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算して差圧ΔPを算出する(ステップS3)。
そして、制御装置11は、算出した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上のとき(ステップS4→Yes)、遮断弁装置12が開弁していれば(ステップS5→Yes)、弁駆動部12bに指令を与えて止め弁12aを駆動して遮断弁装置12を閉弁し(ステップS6)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。遮断弁装置12が開弁していなければ(ステップS5→No)、すなわち、遮断弁装置12が閉弁していれば、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0038】
一方、算出した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1未満のとき(ステップS4→No)、制御装置11は、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2より大きければ(ステップS7→No)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
また、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下のとき(ステップS7→Yes)、制御装置11は、遮断弁装置12が閉弁していれば(ステップS8→Yes)、弁駆動部12bに指令を与えて止め弁12aを駆動して遮断弁装置12を開弁し(ステップS9)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。遮断弁装置12が閉弁していなければ(ステップS8→No)、すなわち、遮断弁装置12が開弁していれば、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0039】
制御装置11が、遮断弁装置12が開弁しているか閉弁しているかを判定する方法は限定するものではない。
例えば、遮断弁装置12が開弁しているか閉弁しているかを示すフラグOPを制御装置11が備える構成とし、制御装置11は、ステップS6で遮断弁装置12を閉弁したときフラグOPに「0」を設定し、ステップS9で遮断弁装置12を開弁したときフラグOPに「1」を設定する。
制御装置11は、フラグOPが「1」であれば遮断弁装置12が開弁していると判定し、フラグOPが「0」であれば遮断弁装置12が閉弁していると判定できる。
【0040】
また、止め弁12aが抽気蒸気導入管3を閉じているか開いているかを検出する図示しないセンサを遮断弁装置12に備える構成であってもよい。例えば、図示しないセンサは、止め弁12aが抽気蒸気導入管3を閉じているか開いているかを示す検出信号を制御装置11に入力する構成とすれば、制御装置11は、図示しないセンサから入力される検出信号に基づいて、止め弁12aが抽気蒸気導入管3を閉じているか開いているかを検出することができる。そして、遮断弁装置12が開弁しているか閉弁しているかを判定できる。
【0041】
《変形例》
以上のように、図1に示す、本実施形態に係る蒸気タービンシステム1に備わる制御装置11は、抽気圧力P1と脱気器内圧力P2を常に監視し、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になったときに遮断弁装置12を閉弁し、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になったときに遮断弁装置12を開弁する構成である。
しかしながら、タービン抽気圧力計9が抽気圧力P1を計測するとき、その計測値が小さく変動する場合がある。同様に、脱気器内圧力計10の計測値も小さく変動する場合がある。
したがって、制御装置11が算出する抽気圧力P1及び脱気器内圧力P2も小さく変動し、さらに、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPも小さく変動する。
【0042】
差圧ΔPが第1所定値ΔPf1及び第2所定値ΔPf2をまたいで変動すると、制御装置11は、差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になるたびに遮断弁装置12を閉弁する指令を弁駆動部12bに与え、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になるたびに遮断弁装置12を開弁する指令を弁駆動部12bに与えることから、制御装置11は、遮断弁装置12を制御するための指令を弁駆動部12bに頻繁に与えることになり、遮断弁装置12は開弁と閉弁を頻繁に繰り返すように動作する。そして、止め弁12aと遮断弁装置12が劣化するという問題が発生する。
【0043】
そこで、本発明の変形例として、例えば、制御装置11が内部タイマー機能を備える構成とし、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上の状態が所定時間継続したときに、遮断弁装置12を閉弁する構成としてもよい。
同様に、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下の状態が所定時間継続したときに、制御装置11が遮断弁装置12を開弁する構成としてもよい。
【0044】
図4を参照して、内部タイマー機能を備える制御装置11が遮断弁装置12を制御する手順を説明する(適宜図1、図2参照)。
この手順は、図3に示す手順と同様に、制御装置11が実行するプログラムにサブルーチンとして組み込まれ、100msecなどの時間間隔で制御装置11が実行するように構成すればよい。
なお、図3に示す手順と同じ手順には同じ符号を付して、詳細な説明は適宜省略する。
【0045】
遮断弁装置12を制御する手順がスタートすると、制御装置11は、抽気圧力P1を算出し(ステップS1)、脱気器内圧力P2を算出し(ステップS2)、さらに、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算して差圧ΔPを算出する(ステップS3)。
そして、制御装置11は、算出した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上のとき(ステップS4→Yes)、開弁待機時間計測を停止し(ステップS10)、遮断弁装置12が開弁していれば(ステップS5→Yes)、閉弁待機時間計測中か否かを判定する(ステップS11)。
【0046】
開弁待機時間は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になってから、制御装置11が遮断弁装置12を開弁するまでの待機時間である。
また、閉弁待機時間は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になってから、制御装置11が遮断弁装置12を閉弁するまでの待機時間である。
【0047】
そして、閉弁待機時間計測中でなければ(ステップS11→No)、制御装置11は、内部タイマ機能による閉弁待機時間計測を開始して(ステップS12)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
また、閉弁待機時間計測中のとき(ステップS11→Yes)、閉弁待機時間計測を開始してから所定時間Tm1(第1所定時間)が経過していれば(ステップS13→Yes)、制御装置11は、遮断弁装置12を閉弁して(ステップS6)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)し、所定時間Tm1が経過していなければ(ステップS13→No)、制御装置11は遮断弁装置12を閉弁することなく、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0048】
ステップS5に戻って、遮断弁装置12が開弁していなければ(ステップS5→No)、すなわち、遮断弁装置12が閉弁していれば、制御装置11は、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0049】
ステップS13で、遮断弁装置12を閉弁するか否かを判定するための所定時間Tm1は、例えば、制御装置11が遮断弁装置12を好適なタイミングで閉弁できる時間として、実験等に基づいて決定すればよい。
【0050】
ステップS4に戻って、算出した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1未満のとき(ステップS4→No)、制御装置11は、差圧ΔPと第2所定値ΔPf2を比較する(ステップS7)。そして、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2より大きいとき(ステップS7→No)、制御装置11は、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
また、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下のとき(ステップS7→Yes)、制御装置11は、閉弁待機時間計測を停止し(ステップS14)、遮断弁装置12が閉弁していれば(ステップS8→Yes)、開弁待機時間計測中か否かを判定する(ステップS15)。
なお、遮断弁装置12が閉弁していないとき(ステップS8→No)、すなわち、遮断弁装置12が開弁しているとき、制御装置11は、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0051】
そして、開弁待機時間計測中でなければ(ステップS15→No)、制御装置11は、内部タイマ機能による開弁待機時間計測を開始して(ステップS16)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。また、開弁待機時間計測中のとき(ステップS15→Yes)、開弁待機時間計測を開始してから所定時間Tm2(第2所定時間)が経過していれば(ステップS17→Yes)、制御装置11は、遮断弁装置12を開弁して(ステップS9)、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)し、所定時間Tm2が経過していなければ(ステップS17→No)、制御装置11は遮断弁装置12を開弁することなく、遮断弁装置12を制御する手順を終了(リターン)する。
【0052】
ステップS17で、遮断弁装置12を開弁するか否かを判定するための所定時間Tm2は、例えば、制御装置11が遮断弁装置12を好適なタイミングで開弁できる時間として、実験等に基づいて決定すればよく、ステップS13における所定時間Tm1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
図4に示すように、変形例は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上の時に、制御装置11(図1参照)がステップS12で内部タイマ機能による閉弁待機時間計測を開始し、ステップS13で、差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上の状態で所定時間Tm1が経過したときに制御装置11が遮断弁装置12(図1参照)を閉弁する構成とした。この構成によって、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になった後、差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上の状態で所定時間Tm1(第1所定時間)が経過したときに、制御装置11が遮断弁装置12を閉弁する構成とすることができる。
【0054】
また、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下の時に、制御装置11(図1参照)がステップS16で内部タイマ機能による開弁待機時間計測を開始し、ステップS17で、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下の状態で所定時間Tm2が経過したときに制御装置11が遮断弁装置12(図1参照)を開弁する構成とした。この構成によって、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になった後、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下の状態で所定時間Tm2(第2所定時間)が経過したときに、制御装置11が遮断弁装置12を開弁する構成とすることができる。
【0055】
そして、タービン抽気圧力計9及び脱気器内圧力計10の計測値の変動にともなって、制御装置11が算出する差圧ΔPが所定時間Tm1より短い間隔で第1所定値ΔPf1をまたいで変動する場合、制御装置11は、差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上であっても遮断弁装置12を閉弁しない。
同様に、制御装置11が算出する差圧ΔPが所定時間Tm2より短い間隔で第2所定値ΔPf2をまたいで変動する場合、制御装置11は、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下であっても遮断弁装置12を開弁しない。
したがって、遮断弁装置12が頻繁に動作することが防止され、遮断弁装置12が劣化するという問題の発生を抑えることができる。
【0056】
以上のように、図1に示す、本実施形態に係る蒸気タービンシステム1のタービン保護装置20は、制御装置11が抽気圧力P1と脱気器内圧力P2を常に監視し、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上のときは遮断弁装置12を閉弁して、脱気器5からタービン2への蒸気の逆流を止め弁12aで遮断することができる。
【0057】
脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上になると2つの逆止弁3aが閉弁して、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気を遮断する。
しかしながら、仮に、2つの逆止弁3aの弁体等が変形していて、2つの逆止弁3aが抽気蒸気導入管3を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であると、脱気器5からタービン2に蒸気が逆流してタービン2が損傷する場合がある。
【0058】
本実施形態に係る蒸気タービンシステム1は、2つの逆止弁3aが抽気蒸気導入管3を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であっても、遮断弁装置12の止め弁12aで抽気蒸気導入管3を流れる蒸気を遮断することができ、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気を効果的に遮断できる。
【0059】
また、制御装置11は、脱気器内圧力P2から抽気圧力P1を減算した差圧ΔPが第1所定値ΔPf1以上になった後、所定時間Tm1が経過してから遮断弁装置12を閉弁し、差圧ΔPが第2所定値ΔPf2以下になった後、所定時間Tm2が経過してから遮断弁装置12を開弁する。
この構成によって、遮断弁装置12が開弁と閉弁を頻繁に繰り返すことを防止でき、遮断弁装置12が劣化するという問題の発生を抑えることができる。
【0060】
なお、制御装置11は、蒸気タービンシステム1の通常運転時に限らず、タービントリップの発生時や負荷遮断時など、蒸気タービンシステム1の負荷の急激な降下にともなって脱気器内圧力P2が抽気圧力P1以上になった場合であっても遮断弁装置12を閉弁することができる。したがって、2つの逆止弁3aが抽気蒸気導入管3を流れる蒸気を完全に遮断できない状態であっても、脱気器5からタービン2へ逆流する蒸気を完全に遮断でき、タービン2の損傷を防止することができる。
【0061】
本実施形態は、図1に示すように、タービン保護装置20を脱気器5とタービン2の間に備える構成としたが、本実施形態に係るタービン保護装置20を、例えば、図示しない給水加熱器とタービン2の間に備えることも可能である。
この場合、給水加熱器内の圧力が抽気圧力P1より高くなっても、給水加熱器からタービン2への蒸気の逆流を止め弁12aで遮断することができ、タービン2の損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 蒸気タービンシステム
2 タービン
3 抽気蒸気導入管(導入管)
3a 逆止弁
5 脱気器
9 タービン抽気圧力計(圧力計測手段)
10 脱気器内圧力計(圧力計測手段)
11 制御装置
12 遮断弁装置
12a 止め弁
12b 弁駆動部
13 ボイラ
14 高圧タービン
15 中圧タービン
16 低圧タービン
18 復水器
20 タービン保護装置
P1 抽気圧力(抽気蒸気の圧力)
P2 脱気器内圧力(脱気器内の圧力)
ΔP 差圧
ΔPf1 第1所定値
ΔPf2 第2所定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラで発生する蒸気で駆動するタービンと、
前記タービンから排出される蒸気を凝縮して復水にする復水器と、
前記復水を加熱脱気して貯水する脱気器と、
加熱脱気用の抽気蒸気を前記脱気器に導入する導入管と、
前記導入管に配設される逆止弁と、を有する蒸気タービンシステムに備わり、
前記抽気蒸気の圧力及び前記脱気器内の圧力を計測する圧力計測手段と、
前記導入管に備わる遮断弁装置と、
前記抽気蒸気の圧力及び前記脱気器内の圧力の差圧に基づいた指令で前記遮断弁装置を制御する制御装置と、を含んで構成されるタービン保護装置であって、
前記遮断弁装置は、前記制御装置からの指令によって開弁または閉弁し、閉弁したときには、前記脱気器から前記タービンに向って流れる蒸気を遮断することを特徴とするタービン保護装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記脱気器内の圧力から前記抽気蒸気の圧力を減算した差圧が、予め設定される第1所定値以上になったときに前記遮断弁装置に指令を与えて当該遮断弁装置を閉弁し、
前記差圧が、予め設定される第2所定値以下になったときに前記遮断弁装置に指令を与えて当該遮断弁装置を開弁することを特徴とする請求項1に記載のタービン保護装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記脱気器内の圧力から前記抽気蒸気の圧力を減算した差圧が、予め設定される第1所定値以上になった後、前記差圧が前記第1所定値以上の状態で第1所定時間が経過したときに前記遮断弁装置に指令を与えて当該遮断弁装置を閉弁し、
前記差圧が、予め設定される第2所定値以下になった後、前記差圧が前記第2所定値以下の状態で第2所定時間が経過したときに前記遮断弁装置に指令を与えて当該遮断弁装置を開弁することを特徴とする請求項1に記載のタービン保護装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−38500(P2011−38500A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189423(P2009−189423)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】