説明

タービン制御弁制御装置

【課題】タービン制御弁の応答スピードに弊害を与えずにタービン制御弁の制御信号変動に起因して高圧油ラインに発生する共振現象や過大な油圧脈動が回避できるタービン制御弁制御装置を提供することである。
【解決手段】出力切替手段42は、高周波成分判定手段41によりタービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上であると判定され、かつ、発電機出力判定手段27により発電機出力が所定値以上であると判定されたとき、バンドパスフィルタ22を通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときはバンドパスフィルタ22を通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し制御手段43に出力する。制御手段43は、出力切替手段42で選択されたタービン制御弁の開度要求信号に基づいて、タービン制御弁の開度を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンを駆動する作動流体の流量を調整するタービン制御弁を制御するタービン制御弁制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧の作動流体(主蒸気)を流入させて膨張仕事を得る蒸気タービンにおいては、蒸気タービンの加減弁制御に電気油圧式の制御装置が用いられている。電気油圧式制御装置では、タービン回転数、タービンにより駆動される発電機負荷、タービンに流入する主蒸気圧力などの入力信号を基に内部の演算回路で加減弁の流量指令信号を算出し、これを加減弁開度信号に変換して開度指令を決定するようにしている。
【0003】
一方、作動流体と共に燃料を流入させて燃焼させた後に膨張させて仕事を得るガスタービン設備のタービンにおいても同様に、排気温度や作動流体圧力などの入力信号を基にタービン制御弁制御装置の内部の演算回路で制御弁の流量指令信号を算出し、これを制御弁開度信号に変換して開度指令を決定するようにしている。
【0004】
以下、蒸気タービンの場合について説明する。蒸気タービンの場合は制御弁は加減弁であり、加減弁開度指令信号と現場の弁駆動用の油圧シリンダ(油筒)からの実開度フィードバック信号との偏差にゲインをかけた信号がサーボ弁の入力信号となる。これによって駆動されるサーボ弁内部のポートの切り替わりによって加減弁油圧シリンダへの高圧油の供給と排出が制御され加減弁開度が決定される。
【0005】
一般に、サーボ弁は油圧シリンダに付随して油圧シリンダへの高圧油供給入り口部に設置されるが、これは油圧シリンダすなわち加減弁の応答性を高める目的によるものである。サーボ弁の利点はゲインが高く精度と即応性に優れているところであるが、その一方で追従が良過ぎるために制御信号中に少なからず存在するノイズ成分にも応答可能であるという問題がある。
【0006】
近年、タービンの大容量化に伴う負荷遮断時の過速抑制制御に対する要求や、速度・負荷・圧力追従制御におけるより高速で高精度での制御要求などを満足するためには油圧シリンダ駆動部にサーボ弁を用いた電気油圧式制御装置を適用することは必要不可欠なものとなっている。仮に、制御信号が高周波で変動すると、これにサーボ弁が応答することにより高圧油ラインに共振現象や過大な油圧脈動現象が発生することが指摘されており、これによる高圧油系統の配管機器やサーボ弁の損傷の可能性が増大する。
【0007】
これを防止するためには、高圧油系統に機械式アキュムレータを設けることや電気制御装置側に信号フィルタを設けることが提案されている。また、タービン制御弁制御装置の蒸気加減弁開度要求信号ラインに高周波カットフィルタを介挿して出力信号を減衰させサーボ弁の動きを抑制して油圧脈動の抑制を図るようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図6は、蒸気タービンの加減弁油圧シリンダ直近に機械式アキュムレータを設けて油圧の緩衝減衰効果をもたせた従来の電気油圧式制御装置の構成図である。蒸気発生器1により発生した蒸気は、主蒸気止め弁5と加減弁6とを通過した後にタービン2に導かれる。そして、タービン2で膨張仕事をすることにより、発電機7を駆動すると共に復水器3で凝縮して復水となる。この復水は給水ポンプ4で蒸気発生器1に戻されて蒸気サイクルを構成するが、タービン2の回転数、タービン2により駆動される発電機7の負荷、主蒸気圧力は加減弁6の開度によって決定される。
【0009】
この加減弁6の開度は、制御弁制御装置14の内部で演算処理された開度要求信号により制御される。制御弁制御装置14には、回転数測定器15によって測定された回転数信号、発電機出力測定器16によって測定された負荷信号、主蒸気圧力測定器17によって測定された蒸気圧力信号が入力され、また、加減弁開度検出器9によって測定された実開度フィードバック信号が入力される。制御弁制御装置14は、これら信号に基づいて演算処理を行い作成された制御信号をサーボ弁10に導き、これによってサーボ弁10を動作させて加減弁油圧シリンダ8への高圧油の流入/流出を制御する。これにより加減弁油圧シリンダ8の位置として加減弁6の開度は決定される。
【0010】
この高圧油は離れた位置にある油圧発生装置11から高圧油ポンプ12により高圧油配管13を介してサーボ弁10と加減弁油圧シリンダ8とに供給されるが、油圧シリンダの近傍にアキュムレータ35が設置されている。
【0011】
一般に、制御弁制御装置14への入力信号である回転数信号、負荷信号、圧力信号などは、それらの測定器の影響も含めて微小外乱変動成分を持つため、加減弁開度要求信号にも変動成分が加算されることになり、これにサーボ弁10が応答すると高圧油の給排油量が変動し、さらに、この変動周波数が高圧油配管系統の固有振動数と共振した場合には、過大な圧力脈動となる可能性があるが、アキュムレータ35の設置により、その圧力緩衝作用によってこの圧力脈動成長に対する抑制効果を持たせている。
【0012】
図7は従来の制御弁制御装置14の構成図である。制御弁制御装置14には、入力信号として、発電機出力測定器16、回転数測定器15、主蒸気圧力測定器17から、それぞれ発電機出力信号、回転数信号、主蒸気圧力信号が入力される。制御弁制御装置14の制御信号演算発生器19は、これら信号に基づいて、制御量を所定の設定値に制御するのに必要な蒸気流量信号を作成する。
【0013】
この必要流量信号は開度変換関数発生器20によって、加減弁6の必要開度信号に変換されるが、この加減弁開度要求信号aに対して、例えば、カットオフ周波数f0を5Hz程度に設定したバンドパスフィルタ22を通過させて高周波成分を除去するようにしている。
【0014】
図8は従来の制御弁制御装置14のバンドパスフィルタ22の通過前後における加減弁開度要求信号の波形図である。バンドパスフィルタ22の通過前の加減弁開度要求信号aに対して、バンドパスフィルタ22の通過後の加減弁開度要求信号a1は、高周波成分が除去されている。このフィルタ通過後の加減弁開度要求信号a1を差分演算器30に導き、弁開度検出器9から復調器32によって復調されたフィードバック信号a2との偏差Δaを算出した後に、この偏差Δaを演算増幅器31で演算増幅した信号でサーボ弁10を駆動する。
【0015】
このような処理を実施することによって、サーボ弁10は制御弁制御装置14の入力信号検出系に含まれる高周波変動成分をノイズとみなして除去した後の制御信号によって駆動される。このため、高圧油系統の圧力脈動の元となる高周波動作が抑制された動作をすることになり、機械式アキュムレータと同様な効果が期待できることになる。
【0016】
一般に、タービン1が大型化すると油圧発生装置11から加減弁6までの距離が遠くなり、間をとりもつ高圧油配管系の圧力脈動に対する固有振動数が低下する。また制御信号の基となる回転数信号や圧力信号には数Hz〜数十Hzの避け得ないノイズが加わっていることが一般的であるから、高圧油配管系の固有振動数が低下した状態にあると、このようなノイズの変動周波数に接近することになる。このため、ノイズの変動レベルが小さくても、その変動周波数と共振しやすくなって、大きな圧力脈動が発生することになる。よって前述したような回避技術の重要性はより高まることになる。
【特許文献1】特開平6−248904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、従来ものでは、機械式のアキュムレータ35を設置するためには、その容量や個数、設置位置の最適化などについて、油圧シリンダ構造・サイズや配管ルートの異なる各機種ごとに個別にエンジニアリングを実施して検討する必要があり、設置後の効果評価を含めた検討作業は容易ではない。また、ハードウエアの設置であることからコストがかさみ、設置スペースも考慮する必要がある。さらに、定期的な充填圧力管理や油漏れ管理などに対するメンテナンスも考慮する必要がある。
【0018】
また、特許文献1に示されるように、制御回路中に常時バンドパスフィルタを介挿する場合では、その効果によって過渡的な加減弁の制御応答スピードが抑制されることになるため、通常のノイズ信号に対しては効果的であるが、例えば負荷遮断時などのように過速を抑制するために加減弁の動作に高速即応性が求められる場合や、BWR原子力プラントの様に、通常運転は加減弁により蒸気タービンの負荷制御運転に優先して主蒸気圧力制御が行われるプラントでは、微小な圧力変動に基づき原子炉側からの要求に基づく圧力制御が必要な場合にも拘らず微小な圧力変化に応じて開度制御が行われなくなってしまう、
さらに、高速追従制御が必要にも拘わらずバンドパスフィルタが機能することにより追従ができなくなる点が不利となる。すなわち、バンドパスフィルタは本来必要な時のみ作動することが望ましく常時作動している必要はない。
【0019】
本発明の目的は、タービン制御弁の応答スピードに弊害を与えずにタービン制御弁の制御信号変動に起因して高圧油ラインに発生する共振現象や過大な油圧脈動が回避できるタービン制御弁制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係わるタービン制御弁制御装置は、タービンを駆動する作動流体の流量を調整するタービン制御弁の開度要求信号を演算する開度要求信号演算手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分を除去するバンドパスフィルタと、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上であるかどうかを判定する高周波成分判定手段と、前記タービンにより駆動される発電機の出力が所定値以上であるかどうかを判定する発電機出力判定手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上で前記発電機出力が所定値以上であるときは前記バンドパスフィルタを通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときは前記バンドパスフィルタを通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力する出力切替手段と、前記出力切替手段で選択されたタービン制御弁の開度要求信号に基づいてタービン制御弁の開度を駆動する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タービン制御弁の応答スピードに弊害を与えずにタービン制御弁の制御信号変動に起因して高圧油ラインに発生する共振現象や過大な油圧脈動が回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図である。タービン制御弁制御装置14は、開度要求信号演算手段40と、バンドパスフィルタ22と、高周波成分判定手段41と、発電機出力判定手段27と、出力切替手段42と、制御手段43とから構成されている。
【0023】
開度要求信号演算手段40は、タービンを駆動する作動流体の流量を調整するタービン制御弁の開度要求信号を演算するものであり、開度要求信号演算手段40の制御信号発生器19には、入力信号として、発電機出力測定器16から発電機出力信号、回転数測定器15から回転数信号、主蒸気圧力測定器17から主蒸気圧力信号がそれぞれ入力される。制御信号発生器19は、これらの信号を基に、これらの制御量を所定の設定値に制御するのに必要な蒸気流量信号を作成し開度変換関数発生器20に出力する。開度変換関数発生器20は、制御信号発生器19で得られた必要な蒸気流量信号を加減弁6の必要開度信号に変換する。これらの必要流量信号や必要開度信号には、タービン制御弁制御装置14の入力信号である発電機出力信号、回転数信号、主蒸気圧力信号が脈動(ノイズ)成分を持つ場合には、演算を経た後も脈動分が加算された形で引き継がれる。
【0024】
そこで、開度変換関数発生器20で得られた開度要求信号をバンドパスフィルタ22に導きノイズとして問題となる周波数f0以上の成分をカットする。このカットオフ周波数f0としては、例えば5Hzに予め設定する。以下の説明においては、予め設定された値は、例えば5Hz或いは5%であるとして説明する。
【0025】
ここで、開度変換関数発生器20とバンドパスフィルタ22との間に出力切替手段42が設けられている。出力制御手段42は、接点28及び接点29を有し、この接点29の切り替わりによって開度要求信号のバンドパスフィルタ22の通過有無を選択する。
【0026】
開度変換関数発生器20で得られた開度要求信号は、高周波成分判定手段41にも入力される。高周波成分判定手段41は、タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上であるかどうかを判定するものである。
【0027】
開度変換関数発生器20で得られた開度要求信号は、高周波成分判定手段41のバンドパスフィルタ21及び差分演算手段23に入力される。
【0028】
バンドパスフィルタ21のカットオフ周波数f0もバンドパスフィルタ22と同じく5Hzに設定され、ノイズとして問題となる周波数f0以上の成分がカットされる。差分演算手段23は、開度変換関数発生器20を出た開度要求信号と、バンドパスフィルタ21を通った開度要求信号との差分を演算し、変動成分のみを算出する。この変動信号を直流変換器24で直流に整流した信号をラッチ付き接点操作用比較器25に導くと共に、しきい値設定器26からの信号と比較し、これを上回った場合に出力切替手段42の接点29を動作させる。しきい値設定器26に設定される変動成分振幅レベルのしきい値は5%とする。
【0029】
また、出力切替手段42は、接点29に加えてその動作用信号ラインの途中に接点28を有している。この接点28は発電機出力測定器16からの負荷信号が一定値以上となり発電機出力判定手段27が動作したときのみ閉じる接点である。発電機出力判定手段27は、タービンにより駆動される発電機の出力が所定値以上であるかどうかを判定ものであり、発電機の出力が所定値以上のときに接点28を閉じるものである。
【0030】
このように、出力切替手段42は、タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上で、発電機出力が所定値以上であるときは、バンドパスフィルタ22を通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときはバンドパスフィルタ22を通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択して制御手段43に出力する。
【0031】
制御手段43は、出力切替手段41で選択されたタービン制御弁の開度要求信号に基づいてタービン制御弁の開度を駆動するものであり、出力切替手段41で選択されたタービン制御弁の開度要求信号を差分演算器30に導き、弁開度検出器9から復調器32によって復調されたフィードバック信号との偏差を算出した後に、この偏差を演算増幅器31で演算増幅した信号でサーボ弁10を駆動する。これにより、開度要求信号は信号そのものに5Hz以上かつ5%以上の変動成分が存在する場合のみ、その変動成分が取り除かれて加減弁6は制御されることになる。
【0032】
本発明の第1の実施の形態によれば、開度要求信号に5Hz以上かつ5%以上の変動成分を含む場合に、これをバンドパスフィルタ22で取り除いた信号でサーボ弁10を制御するので、サーボ弁10の高周波制御信号に対する応答動作に起因する高圧油の流量変動によって発生する高圧油配管系統の過大な圧力脈動を防止できる。また、5%以内の微小変動制御域や負荷遮断時などのように速い応答が要求される状態では、フィルタ効果を外してこれに追従できる。
【0033】
図2は本発明の第2の実施の形態における電気油圧式制御装置の構成図である。図6に示した従来例に対し、油圧シリンダ内部油圧を検出する油圧測定器18が追加して設けられ、油圧測定器18で検出された油圧シリンダ内部油圧は、制御弁制御装置14に入力されている。
【0034】
図3は本発明の第2の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図である。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、発電機出力測定器16から発電機出力信号、回転数測定器15から回転数信号、主蒸気圧力測定器17から主蒸気圧力信号に加え、油圧測定器18で検出された油圧シリンダ内部油圧も入力し、高周波判定手段41は、タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分に代えて、油圧シリンダ内部油圧の脈動成分を用い、油圧シリンダ内部油圧の脈動成分が所定値以上であるかどうかを判定し、出力切替手段42は、油圧シリンダ内部油圧の脈動成分が所定値以上で発電機出力が所定値以上であるときは、バンドパスフィルタ22を通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときはバンドパスフィルタ22を通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0035】
加減弁油圧シリンダ下部の圧力測定器18で測定された油圧信号は、高周波判定手段41のバンドパスフィルタに入力されるとともに差分演算器23に入力される。差分演算器23では、圧力測定器18で測定された油圧信号とバンドパスフィルタ21の通過後の信号との差を求め油圧変動成分を算出する。
【0036】
この変動信号は直流変換器24で直流に整流され、ラッチ付き接点操作用比較器25に導かれる。そして、ラッチ付き接点操作用比較器25により、しきい値設定器26からの信号と比較され、油圧変動成分がしきい値を上回った場合に出力切替手段42の接点29を動作させる。
【0037】
高周波判定手段41のバンドパスフィルタ21及びバンドパスフィルタ22のカットオフ周波数の設定は、第1の実施の形態と同じく5Hzである。また、しきい値設定器26のしきい値(油圧変動成分の振幅)は、定格油圧相当信号の約50%程度とする。
【0038】
第2の実施の形態によれば、開度要求信号に5Hz以上かつ一定振幅以上の変動成分を含む場合には、サーボ弁10がこれに応答することによって油圧シリンダ8への給排油流量が変動することによって油圧シリンダ下部圧力が変動するため、これを油圧シリンダ下部の圧力検出器18で検出して制御弁制御装置14に導き、この油圧変動成分にしきい値を設けると共に、これを越えた場合に開度要求信号がバンドパスフィルタ22を通過させるので、第1の実施の形態と同等の効果が得られる。
【0039】
図4は本発明の第3の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図である。この第3の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、高周波判定手段41は、タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分に代えて、油圧シリンダ8の開度と油圧シリンダ駆動用サーボ弁10の駆動指令信号との変動偏差が所定値以上の場合に、バンドパスフィルタ22を通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときはバンドパスフィルタ22を通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力するようにしたものである。図1と同一要素には、同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、高周波判定手段41は、第1の実施の形態における高周波カット用のバンドパスフイルタ21の代わりに、低周波カット用のバンドパスフィルタ33を設け、またその入力信号としては差分演算器30を通過した後の偏差信号をブランチして導く。なおバンドパスフィルタ33のカットオフ周波数f0はバンドパスフィルタ22と同じく5Hzに設定する。
【0041】
バンドパスフィルタ33に導かれた制御偏差信号の中に5Hz以上の変動成分がある場合は、これが後段の直流変換器24で直流に整流され、さらにラッチ付き接点操作用比較器25に導かれる。そして、しきい値設定器26からのしきい値と比較して、これを上回った場合に、出力切替手段42の接点29を動作させる。なお、しきい値設定器26の設定値は演算増幅器31の入力フルスケール基準値の5%程度とする。
【0042】
本発明の第3の実施の形態によれば、開度要求信号に5Hz以上かつ一定振幅以上の変動成分を含む場合には、サーボ弁10まではこれに応答するものの油圧シリンダ8は時定数が大きいことから、これに追従応答できない。そのために、弁開度検出器9から復調器32を通ったフィードバック信号は変動せず、結果として差分演算器30を通過した偏差信号に変動成分が加算されることになることから、これを検出してバンドパスフィルタ22の通過有無を切り替える。これにより、第1の実施の形態と同等の効果が得られる。
【0043】
図5は本発明の第4の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図である。この第4の実施の形態は、第1の実施の形態に対し、バンドパスフィルタ22に代えて出力制限リミッタ39を設け、出力切替手段42は接点29に代えて接点34を有するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0044】
図5に示すように、差分演算器30の後段側を二手に分けてONとOFFが対になる切替接点34を持つと共に、そのうちの通常OFF側の接点の手前のラインに出力制限リミッタ39を持ち、接点34の後で合流させる。出力制限リミッタ39の制限幅は、演算増幅器31の入力フルスケール基準値の±5%程度とする。
【0045】
開度変換関数発生器20の開度要求信号は、差分演算器23とバンドパスフィルタ21とに入力される。差分演算器23は、開度変換関数発生器20からの開度要求信号とバンドパスフィルタ21を通った開度要求信号との偏差を演算し、その偏差は直流変換器24で整流されてラッチ付き比較設定器25に導かれる。そして、ラッチ付き比較設定器25により、しきい値設定器26に設定されたしきい値と比較され、開度変換関数発生器20からの開度要求信号とバンドパスフィルタ21を通った開度要求信号との偏差がしきい値を上回った場合に、出力切替手段42の接点34を動作させる。
【0046】
第4の実施の形態では、サーボ弁10の入力信号ラインに出力制限リミッタ39を設けて、開度要求信号に5Hz以上かつ一定振幅以上の変動成分を含む場合に、サーボ弁10の動作変動幅を制限することによって高圧油の流量変動を抑制する。従って、結果的に高圧油系統の圧力脈動を抑制するという同等の効果が得られる。
【0047】
以上の説明では、バンドパスフィルタ22の介挿位置は、開度変換関数発生器20の後段としたが、この部位に特定する必要はなく、制御信号演算発生器19の後段、またはサーボ弁10への入力信号部となる差分演算器30の後段に介挿してもよい。
【0048】
すなわち、タービン制御弁が複数個存在し、各タービン制御弁の開度指令信号が全体の流量要求信号を分割した開度要求信号に対応している場合には、バンドパスフィルタ22は、流量要求信号ライン、または各タービン制御弁の開度要求信号ライン、または各タービン制御弁の駆動信号入力信号ラインに設ける。同様に、出力制限リミッタ39についても、タービン制御弁が複数個存在し、各タービン制御弁の開度指令信号が全体の流量要求信号を分割した開度要求信号に対応している場合には、各タービン制御弁の駆動信号入力信号ラインに設ける。
【0049】
また、発電機出力判定手段27は、発電機出力が所定値以上であるときに、出力切替手段42の接点28を閉じるようにしたが、発電機の遮断器が投入されているときに、出力切替手段42の接点28を閉じ、発電機の遮断器が開放したときには出力切替手段42の接点28を開くようにしてもよい。これにより、負荷遮断の場合には、速やかに加減弁を制御できる。
【0050】
また、以上の説明では、タービン制御弁として蒸気タービンの加減弁の場合について説明したが、ガスタービン設備のタービンの制御弁である燃料流量弁に適用することも可能である。
【0051】
本発明の実施の形態によれば、タービンの制御弁が高圧油を用いた電気油圧式制御装置で制御される場合、必要なときのみ制御信号中に含まれる高周波変動成分を取り除くことが可能となる。このため、通常制御時と共に負荷遮断時や微小圧力変動抑制時などは制御弁の高速追従性を維持すると共に、高周波・大振幅での制御変動を抑制することが可能になる。また、これによって高圧油配管系の共振現象や過大な圧力脈動現象を回避し、配管機器やサーボ弁の損傷を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態における電気油圧式制御装置の構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係わるタービン制御弁制御装置の構成図。
【図6】蒸気タービンの加減弁油圧シリンダ直近に機械式アキュムレータを設けて油圧の緩衝減衰効果をもたせた従来の電気油圧式制御装置の構成図。
【図7】従来の制御弁制御装置の構成図
【図8】従来の制御弁制御装置のバンドパスフィルタの通過前後における加減弁開度要求信号の波形図。
【符号の説明】
【0053】
1…蒸気発生器、2…タービン、3…復水器、4…給水ポンプ、5…主蒸気止め弁、6…加減弁、7…発電機、8…加減弁油圧シリンダ、9…弁開度検出器、10…サーボ弁、11…油圧発生装置、12…高圧油ポンプ、13…高圧油配管、14…制御弁制御装置、15…回転数測定器、16…発電機出力測定器、17…蒸気圧力測定器、18…油圧シリンダ下部圧力測定器、19…制御信号演算発生器、20…開度変換関数発生器、21…バンドパスフィルタ、22…バンドパスフィルタ、23…差分演算器、24…直流変換器、25…ラッチ付き接点操作用比較器、26…しきい値設定器、27…発電機出力判定手段、28…接点、29…接点、30…差分演算器、31…演算増幅器、32…復調器、33…バンドパスフィルタ、34…接点、35…アキュムレータ、39…出力制限リミッタ、40…開度要求信号演算手段、41…高周波成分判定手段、42…出力切替手段、43…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンを駆動する作動流体の流量を調整するタービン制御弁の開度要求信号を演算する開度要求信号演算手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分を除去するバンドパスフィルタと、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上であるかどうかを判定する高周波成分判定手段と、前記タービンにより駆動される発電機の出力が所定値以上であるかどうかを判定する発電機出力判定手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上で前記発電機出力が所定値以上であるときは前記バンドパスフィルタを通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときは前記バンドパスフィルタを通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力する出力切替手段と、前記出力切替手段で選択されたタービン制御弁の開度要求信号に基づいてタービン制御弁の開度を駆動する制御手段とを備えたことを特徴とするタービン制御弁制御装置。
【請求項2】
前記タービン制御弁が油圧シリンダで駆動される場合に、この油圧シリンダ内部油圧を検出する油圧測定器を設け、前記高周波判定手段は、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分に代えて前記油圧シリンダ内部油圧の脈動成分を用い、前記油圧シリンダ内部油圧の脈動成分が所定値以上であるかどうかを判定し、前記出力切替手段は、前記油圧シリンダ内部油圧の脈動成分が所定値以上で前記発電機出力が所定値以上であるときは前記バンドパスフィルタを通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときは前記バンドパスフィルタを通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力することを特徴とする請求項1に記載のタービン制御弁制御装置。
【請求項3】
前記タービン制御弁が油圧シリンダで駆動される場合に、前記高周波判定手段は、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分に代えて、前記油圧シリンダの開度と前記油圧シリンダ駆動用サーボ弁の駆動指令信号との変動偏差が所定値以上の場合に、前記バンドパスフィルタを通したタービン制御弁の開度要求信号を選択し、それ以外のときは前記バンドパスフィルタを通さないタービン制御弁の開度要求信号を選択し出力することを特徴とする請求項1に記載のタービン制御弁制御装置。
【請求項4】
タービン制御弁の開度要求信号を演算する開度要求信号演算手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上であるかどうかを判定する高周波成分判定手段と、前記タービンにより駆動される発電機の出力が所定値以上であるかどうかを判定する発電機出力判定手段と、前記タービン制御弁の開度要求信号と開度信号との差分が予め設定された所定値を超えるときは超えた分をカットする出力制限リミッタと、前記タービン制御弁の開度要求信号に含まれる高周波成分が所定値以上で前記発電機出力が所定値以上であるときは出力制限リミッタの出力信号を選択し、それ以外のときは前記タービン制御弁の開度要求信号と開度信号との差分を選択する出力切替手段と、前記出力切替手段で選択された信号に基づいて制御弁の開度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするタービン制御弁制御装置。
【請求項5】
前記タービン制御弁が複数個存在し、各タービン制御弁の開度指令信号が全体の流量要求信号を分割した開度要求信号に対応している場合には、前記バンドパスフィルタは、流量要求信号ライン、または各タービン制御弁の開度要求信号ライン、または各タービン制御弁の駆動信号入力信号ラインに設けたことを特徴とする特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタービン制御弁制御装置。
【請求項6】
前記タービン制御弁が複数個存在し、各タービン制御弁の開度指令信号が全体の流量要求信号を分割した開度要求信号に対応している場合には、前記出力制限リミッタは、各タービン制御弁の駆動信号入力信号ラインに設けたことを特徴とする請求項4に記載のタービン制御弁制御装置。
【請求項7】
前記発電機出力が所定値以上であることに代えて、前記発電機の遮断器が投入されていることとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のタービン制御弁制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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