説明

ターボチャージャおよびフローティングブッシュ製造方法

【課題】騒音の発生を抑制でき、回転速度を向上し得るターボチャージャおよびブッシュフローティングブッシュ製造方法を提供する。
【解決手段】タービンロータ3とコンプレッサロータ5とを接続する円形断面をした回転軸7が、軸受ハウジング9における回転軸7の周囲を覆うように配置された内周面17に、軸線方向で離隔した2箇所でそれぞれフローティングブッシュ15を介して回転自在に支持されているターボチャージャ1であって、各フローティングブッシュ15の内周面23は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャおよびこのターボチャージャに用いられるフローティングブッシュを製造するフローティングブッシュ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、エンジンの排ガスのエネルギーを利用して、エンジンに圧縮した空気を供給するものである。ターボチャージャは、エンジンの排ガスによって回転させられるタービンロータと、タービンロータの回転により回転させられ、外部から吸入した空気を圧縮してエンジンに供給するコンプレッサロータとが備えられている。
タービンロータとコンプレッサロータとを接続する回転軸は、一般に、フローティングブッシュ軸受によってハウジングに回転自在に支持されている(特許文献1参照)。
【0003】
フローティングブッシュ軸受は、回転軸とハウジングとの間にフローティングブッシュを回転可能に介在させ、ハウジングから供給する加圧された潤滑油をハウジング内周面とフローティングブッシュの外周面との間に供給するとともに、フローティングブッシュに設けた半径方向の給油路によって、フローティングブッシュ内周面と回転軸との間に形成された隙間に供給する。そして、これら隙間に形成した潤滑油の油膜によって回転軸を支持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−286050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のターボチャージャでは、回転軸、フローティングブッシュの内外周面およびハウジングの内周面は、横断面形状が円形とされている。このようなターボチャージャでは、回転軸の回転が速くなれば油膜ばねにおける連成項が大きくなるため、回転軸の振動が大きくなり、騒音が発生するという課題がある。
特に、小型のターボチャージャは、高速回転、軽荷重の軸系であるためこの振動が発生し易くなる。このため、回転速度を一層速くすることが抑制されるので、性能を向上させる制約条件となっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、騒音の発生を抑制でき、回転速度を向上し得るターボチャージャおよびフローティングブッシュ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第一態様は、タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸が、ハウジングにおける該回転軸の周囲を覆うように配置された支持部に、軸線方向で離隔した2箇所でそれぞれフローティングブッシュを介して回転自在に支持されているターボチャージャであって、前記各フローティングブッシュの内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされているターボチャージャである。
【0008】
本態様にかかるターボチャージャでは、円形断面をした回転軸を油膜を介して支持するフローティングブッシュの内周面が、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされているので、従来の円形同士の関係に比べて油膜ばねにおける連成項を小さくすることができる。このように油膜ばねにおける連成項を小さくできると、回転軸の不安定振動を抑制することができるので、騒音の発生を抑制することができる。したがって、回転軸の回転速度を向上させることができるので、ターボチャージャの性能を向上させることができる。
【0009】
前記態様では、前記各フローティングブッシュの外周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていてもよい。
【0010】
このようにすると、円形断面とされるハウジングの支持部とフローティングブッシュの外周面との間に形成される油膜による油膜ばねにおける連成項を小さくすることができるので、フローティングブッシュの不安定振動を抑制することができる。したがって、回転軸の不安定振動を一層抑制することができるので、騒音の発生を一層抑制することができる。
【0011】
前記態様では、前記支持部の内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていてもよい。
【0012】
このようにすると、ハウジングと、円形とされるフローティングブッシュの外周面との間に形成される油膜による油膜ばねにおける連成項を小さくすることができるので、フローティングブッシュの不安定振動を抑制することができる。したがって、回転軸の不安定振動を一層抑制することができるので、騒音の発生を一層抑制することができる。
【0013】
本発明の第二態様は、タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸が、ハウジングにおける該回転軸の周囲を覆うように配置された支持部に、軸線方向で離隔した2箇所でそれぞれフローティングブッシュを介して回転自在に支持されているターボチャージャであって、前記支持部の内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされているターボチャージャである。
【0014】
本態様にかかるターボチャージャでは、横断面形状が円形をしたフローティングブッシュの外周面を油膜を介して支持する支持部の内周面が、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされているので、従来の円形同士の関係に比べて油膜ばねにおける連成項を小さくすることができる。このように油膜ばねにおける連成項を小さくできると、フローティングブッシュの不安定振動を抑制することができるので、回転軸の不安定振動を抑制することができ、騒音の発生を抑制することができる。したがって、回転軸の回転速度を向上させることができる。
【0015】
前記第一態様および第二態様では、前記非円形状は、楕円とされている構成としてもよい。
【0016】
楕円は、横断面形状が周方向で連続的に曲率が変化するので、油膜ばねの急激な変動を抑制することができる。
たとえば、楕円は長軸を挟む一対の円弧の短軸と交差する部分を含む中央部分の曲率半径が、長軸と短軸との交点を中心とする円の曲率半径よりも大きい(曲率が小さい)ので、回転軸との間に形成される潤滑油が流動する隙間の入口部分が、内周面が円形のものに比べて大きくなる。したがって、油膜の反力は内周面が円形のものに比べてより回転軸の軸心に近い位置で作用するので、回転軸を振れ動かす方向に作用する力の成分、すなわち、連成項による成分がより小さくなる。
曲率半径が同一軸心の円の曲率半径よりも大きい部分が、全周の少なくとも半分以上、好ましくは70%以上を占めるような形状とすることが好ましい。
【0017】
前記構成では、一対の前記フローティングブッシュを連結して一体化させ、前記各フローティングブッシュの内周面に形成された前記楕円の位相が相互にずらされているようにしてもよい。
【0018】
このように一対のフローティングブッシュは連結されて一体化されているので、各フローティングブッシュは回転軸の回りに一体となって回転することになる。
このとき、各フローティングブッシュの内周面に形成された楕円の位相が相互にずらされているので、各フローティングブッシュで、回転軸を振れ動かす力が作用する方向がずれることになる。このため、相互に干渉して小さくすることができる。
【0019】
本発明の第三態様は、タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸を支持し、内周面の横断面形状が非円形状とされているフローティングブッシュを製造するフローティングブッシュ製造方法であって、円筒部材の側面に軸線中心を挟んで対向する2方向から押圧力を付与し、押しつぶすように変形させ、変形された円筒部材に、軸線中心回りに円形状をした孔を貫通するように形成し、前記押圧力を除去するフローティングブッシュ製造方法である。
【0020】
本態様にかかるフローティングブッシュ製造方法では、円筒部材の側面に軸線中心を挟んで対向する2方向から押圧力を付与し、押しつぶすように変形させる。次いで、変形された円筒部材に、軸線中心回りに円形状をした孔を貫通するように形成する。その後押圧力を除去すると、2方向からつぶされていた円筒部材が復元し、外周面の横断面形状が円形となるとともに孔は2方向に伸ばされて横断面形状が非円形状となる。
このように、内周面の横断面形状が非円形状とされているフローティングブッシュを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるターボチャージャによると、回転軸の不安定振動を抑制することができ、騒音の発生を抑制することができる。したがって、回転軸の回転速度を向上させることができるので、ターボチャージャの性能を向上させることができる。
また、本発明にかかるフローティングブッシュ製造方法では、内周面の横断面形状が非円形状とされているフローティングブッシュを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるターボチャージャの構成を説明するブロック図である。
【図2】図1のフローティングブッシュ軸受の構成を説明する縦断面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】従来のフローティングブッシュ軸受の図3と同じ部分を示す断面図である。
【図5】図1のフローティングブッシュを製造する一工程を示す横断面図である。
【図6】図1のフローティングブッシュを製造する一工程を示す横断面図である。
【図7】図1のフローティングブッシュの別の実施態様を示す横断面図である。
【図8】図1のフローティングブッシュのまた別の実施態様を示す横断面図である。
【図9】本発明の第一実施形態にかかるフローティングブッシュ軸受の別の形態を示す横断面図である。
【図10】本発明の第二実施形態にかかるフローティングブッシュ軸受を示す横断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態にかかるハウジングを製造する一工程を示す横断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態にかかるハウジングを製造する一工程を示す横断面図である。
【図13】本発明の第三実施形態にかかるフローティングブッシュ軸受を示す横断面図である。
【図14】図13のY−Y断面図である。
【図15】図13のZ−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態にかかるターボチャージャについて図1〜図6を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかるターボチャージャの構成を説明するブロック図である。図2は、図1のフローティングブッシュ軸受の構成を説明する縦断面図である。図3は、図2のX−X断面図である。
【0024】
ターボチャージャ1には、エンジンの排気ガスによって回転されるタービンロータ3と、外部から導入された空気を圧縮してエンジンに供給するコンプレッサロータ5と、タービンロータ3およびコンプレッサロータ5を接続する回転軸7と、回転軸7を回転可能に支持する軸受ハウジング(ハウジング)9と、回転軸7のタービンロータ3側部分に介装されたタービン側フローティングブッシュ軸受11と、回転軸7のコンプレッサロータ5側部分に介装されたコンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13と、が備えられている。
【0025】
タービン側フローティングブッシュ軸受11およびコンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13は、それぞれ回転軸7と軸受ハウジング9との間にフローティングブッシュ15を回転可能に介在させる構成とされている。また、各フローティングブッシュ15は軸方向への移動を制限されるように取り付けられている。したがって、回転軸7は、軸線方向で離隔したタービン側フローティングブッシュ軸受11およびコンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13の2箇所のフローティングブッシュ15を介して軸受ハウジング9に支持されている。
【0026】
軸受ハウジング9には、軸受ハウジング9の内周面(支持部)17とフローティングブッシュ15の外周面21との間に潤滑油を供給する油経路19が備えられている。
フローティングブッシュ15には、外周面21と内周面23とを連通するように形成された給油孔25が周方向に適宜間隔を空けて複数備えられている。
給油孔25は、軸受ハウジング9の内周面17とフローティングブッシュ15の外周面21との間に給油された潤滑油をフローティングブッシュ15の内周面23と回転軸7との間に供給する機能を有する。
【0027】
フローティングブッシュ15の内周面23は、横断面形状が、図3に示されるように楕円形状(非円形状)とされている。
この楕円形状は、同一の中心Obを持つ円形27をx方向に引き延ばされた形状である。したがって、フローティングブッシュ15の内周面23と回転軸7との関係は、非円形状と円形状との組み合わせである。
【0028】
このように構成されたターボチャージャ1の動作について説明する。
エンジンの排気ガスがタービンロータ3に導入され、タービンロータ3を回転させて外部に排出される。
タービンロータ3の回転は、回転軸7を介してコンプレッサロータ5に伝達され、コンプレッサロータ5を回転させる。回転するコンプレッサロータ5は、外部から導入される空気を圧縮し、エンジンへ圧縮された空気を供給する。
【0029】
このとき、タービン側フローティングブッシュ軸受11およびコンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13では、油経路19を通って、加圧された潤滑油が軸受ハウジング9の内周面17とフローティングブッシュ15の外周面21との間に供給されている。さらにこの潤滑油は、給油孔25を通って、フローティングブッシュ15の内周面23と回転軸7との間に形成された隙間に供給されている。
したがって、フローティングブッシュ15は、油膜を介して軸受ハウジング9に支持され、回転軸7は、油膜を介してフローティングブッシュ15に支持されている。
【0030】
回転軸7の回転に伴って、回転軸7は、内周面23と回転軸7と隙間に形成した潤滑油の油膜を掻き込むので、潤滑油が移動し、それに伴いフローティングブッシュ15も回転軸7と同じ方向に回転することになる。回転軸7とフローティングブッシュ15との回転数は異なるのが一般である。
回転軸7の荷重方向Wcに対応する位置で最も隙間が小さくなるが、回転軸7が潤滑油を掻き込むことによって油膜が増加して回転軸7を支持する十分な反力を発生する。
この反力は、油膜ばねとして作用し、x方向の力Fxおよびy方向の力Fyとすると、以下のように表わされる。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、xはx方向の変位量、yはy方向の変位量、Kxxは、x方向に移動したときx方向に作用するばね定数である。Kyyは、y方向に移動したときy方向に作用するばね乗数である。Kxyは、x方向に移動したときy方向に作用するばね定数である。Kyxは、y方向に移動したときx方向に作用するばね定数である。
このKxyおよびKyxが連成項である。
【0033】
図4に示される従来のフローティングブッシュ15のように、円形断面をした回転軸7と、横断面形状が円形とされたフローティングブッシュ15の内周面23との円形同士の組み合わせであると、油膜ばねの連成項が大きくなる。連成項が存在すると、x方向に移動したときy方向の力が発生し、y方向に移動したときx方向の力が発生するので、回転軸7は不安定な振動を生じることとなる。
連成項が大きくなると回転軸7の不安定な振動が大きくなる。
【0034】
本実施形態では、フローティングブッシュ15の内周面23と回転軸7との関係は、非円形状と円形状との組み合わせであるので、従来の円形同士の関係に比べて油膜ばねにおける連成項Kxy、Kyxを小さくすることができる。
このように油膜ばねにおける連成項Kxy、Kyxを小さくできると、回転軸7の不安定振動を抑制することができるので、騒音の発生を抑制することができる。したがって、回転軸7の回転速度を向上させることができるので、ターボチャージャ1の性能を向上させることができる。
【0035】
また、フローティングブッシュ15の内周面23は横断面形状が楕円であり、周方向で連続的に曲率が変化するので、油膜ばねの急激な変動を抑制することができる。
楕円は長軸を挟む一対の円弧の短軸と交差する部分を含む中央部分の曲率半径が、長軸と短軸との交点を中心Obとする円23の曲率半径よりも大きい(曲率が小さい)ので、回転軸7との間に形成される潤滑油が流動する隙間の入口部分が、内周面23が円形のものに比べて大きくなる。したがって、油膜の反力は内周面23が円形のものに比べてより回転軸7の軸心Ocに近い位置で作用するので、回転軸7を振れ動かす方向に作用する力の成分、すなわち、連成項による成分がより小さくなる。
曲率半径が同一軸心の円の曲率半径よりも大きい部分が、全周の少なくとも半分以上、好ましくは70%以上を占めるような形状とすることが好ましい。
【0036】
次に、このフローティングブッシュ15を製造するフローティングブッシュ製造方法について、図5および図6により説明する。
図5に示されるように2点鎖線で示される円筒部材27の側面に軸線中心を挟んで対向する2方向(上下)から押圧力を付与し、押しつぶすように変形させる。
次いで、実線で示される変形された円筒部材27に、軸線中心回りに円形状をした孔29を貫通するように形成する。
【0037】
その後、図6に示されるように押圧力を除去すると、上下からつぶされていた円筒部材27が復元し、外周面21の横断面形状が円形となるとともに孔29は上下に伸ばされて横断面形状が非円形状となる。
このように、内周面23の横断面形状が楕円(非円形状)とされているフローティングブッシュ15を容易に製造することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、内周面23の横断面形状が非円形状として楕円を用いているが、これに限定されるものではない。
たとえば、図7に示されるように3円弧形状、図8に示されるように4円弧形状としてもよいし、5以上の多円弧形状としてもよい。このようにすると、曲率半径が同一軸心の円の曲率半径よりも大きい部分の割合を多くすることができる。
また、2円弧形状としてもよい。さらに、多円弧形状の円弧間の接続部を滑らかに接続されるようにしてもよい。
【0039】
本実施形態では、フローティングブッシュ15の内周面23を非円形状としているが、これに加えて、図9に示されるようにフローティングブッシュ15の外周面21も非円形状としてもよい。
このようにすると、円形断面とされる軸受ハウジング9の内周面17とフローティングブッシュ15の外周面21との間に形成される油膜による油膜ばねにおける連成項を小さくすることができるので、フローティングブッシュ15の不安定振動を抑制することができる。したがって、回転軸7の不安定振動を一層抑制することができるので、騒音の発生を一層抑制することができる。
【0040】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態にかかるターボチャージャ1について、図10を用いて説明する。
本実施形態は、軸受ハウジング9の内周面17およびフローティングブッシュ15の内周面23の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態と同じ部分については重複した説明を省略する。なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
図10は、本実施形態にかかるタービン側フローティングブッシュ軸受11(コンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13)を示す横断面図である。
【0041】
本実施形態では、フローティングブッシュ15の内周面23の横断面形状は円形状とされている。
一方、軸受ハウジング9の内周面17の横断面形状は楕円形状とされている。
【0042】
このように構成された本実施形態では、横断面形状が円形をしたフローティングブッシュ15の外周面21を油膜を介して支持する軸受ハウジング9の内周面17が、楕円形状とされているので、従来の円形同士の関係に比べて油膜ばねにおける連成項を小さくすることができる。
このように油膜ばねにおける連成項を小さくできると、フローティングブッシュ15の不安定振動を抑制することができるので、回転軸の不安定振動を抑制することができ、騒音の発生を抑制することができる。したがって、回転軸の回転速度を向上させることができる。
【0043】
次に、この軸受ハウジング9の内周面17を形成する一方法について、図11および図12により説明する。
ここでは、軸受ハウジング9が円筒形状をしているとして説明する。図11に示されるように、円筒部材31に、円筒部材31の軸線中心とずれた軸線中心を持つ孔33を貫通するように加工する。
加工された円筒部材31を円筒部材31および孔33の軸線中心を結ぶ線に沿って2分割し、半割部材35を形成する。
【0044】
2分割された一方の半割部材35を軸線中心に直交する方向の回りに回転させ、言い換えれば、左右反転させ、図12に示されるように重ね合せて接合する。
ここでは、孔33の心ずれを大きくして図示しているので、内周面23がふれんぞうとなっているように見えるが、実際は数十μm程度の段差であり、ほとんど連続しているようなものである。また、段差が気になるようであれば、接合した後で研削して滑らかになるようにしてもよい。
【0045】
なお、軸受ハウジング9の内周面17を形成する方法はこれに限定されるものではなく、楕円形状となるように切削加工してもよいし、非円形部材を圧入して加工するようにしてもよい。
また、この方法を第一実施形態のフローティングブッシュ15の製造に用いてもよい。
【0046】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態にかかるターボチャージャ1について、図13〜図15を用いて説明する。
本実施形態は、フローティングブッシュ軸受の構成が第一実施形態とは異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態と同じ部分については重複した説明を省略する。なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
図13は、本実施形態にかかるフローティングブッシュ軸受を示す横断面図である。図14は、図13のY−Y断面図である。図15は、図13のZ−Z断面図である。
【0047】
本実施形態では、タービン側フローティングブッシュ軸受11とタービン側フローティングブッシュ軸受11とは、フローティングブッシュ15同士が接続部材37によって連結されて一体化されている。このように一体化されたものは、いわゆる、セミフローティングブッシュ軸受と呼ばれている。
各フローティングブッシュ15の内周面23に形成された楕円の回転位相は、図14および図15に示されるように、90°ずらされている。
【0048】
このように一対のフローティングブッシュ15は連結されて一体化されているので、各フローティングブッシュ15は回転軸7の回りに一体となって回転することになる。
このとき、各フローティングブッシュ15の内周面23に形成された楕円の回転位相が相互に90°ずらされているので、各フローティングブッシュ15で、回転軸7を振れ動かす力が作用する方向がずれることになる。このため、相互に干渉して回転軸7の不安定振動を小さくすることができる。
【0049】
すなわち、コンプレッサ側フローティングブッシュ軸受13側では、図14のように不安定振動が発生し易い位置にあったとしても、タービン側フローティングブッシュ軸受11側では、図15に示されるように不安定振動を抑えることができる位置にあるので、回転軸7の不安定振動を抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ターボチャージャ
3 タービンロータ
5 コンプレッサロータ
7 回転軸
9 軸受ハウジング
15 フローティングブッシュ
21 外周面
23 内周面
27 円筒部材
29 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸が、ハウジングにおける該回転軸の周囲を覆うように配置された支持部に、軸線方向で離隔した2箇所でそれぞれフローティングブッシュを介して回転自在に支持されているターボチャージャであって、
前記各フローティングブッシュの内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記各フローティングブッシュの外周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記支持部の内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸が、ハウジングにおける該回転軸の周囲を覆うように配置された支持部に、軸線方向で離隔した2箇所でそれぞれフローティングブッシュを介して回転自在に支持されているターボチャージャであって、
前記支持部の内周面は、横断面形状が周方向で曲率が変化する非円形状とされていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項5】
前記非円形状は、楕円とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
一対の前記フローティングブッシュを連結して一体化させ、前記各フローティングブッシュの内周面に形成された前記楕円の位相が相互にずらされていることを特徴とする請求項5に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
タービンロータとコンプレッサロータとを接続する円形断面をした回転軸を支持し、内周面の横断面形状が非円形状とされているフローティングブッシュを製造するフローティングブッシュ製造方法であって、
円筒部材の側面に軸線中心を挟んで対向する2方向から押圧力を付与し、押しつぶすように変形させ、
変形された円筒部材に、軸線中心回りに円形状をした孔を貫通するように形成し、
前記押圧力を除去することを特徴とするフローティングブッシュ製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−207584(P2012−207584A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73599(P2011−73599)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】