説明

ターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造

【課題】生産性を向上させるとともにヒートソークバック現象の発生を抑えながら、冷却性能を向上させることが可能なターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造を提供する。
【解決手段】ベアリングハウジング13に形成された環状冷却水路13fに流れる冷却水でベアリングハウジング13及びベアリング52を冷却するターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造において、環状冷却水路13fに連通するように、ベアリングハウジング13に、冷却水を供給する水路入口13hと冷却水を排出する水路出口13jとが設けられ、これらの水路入口13hと水路出口13j間の最短経路を形成する水路を部分的に仕切る部分仕切り14aを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャのタービンロータ及びコンプレッサロータを回転自在に支持するベアリングハウジングの冷却構造、特にベアリングハウジングに形成された冷却水路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャのベアリングハウジングには、タービンロータとコンプレッサロータとを一体的に連結するシャフトの支持部を排気ガスによる高温環境から護るために水冷式又は空冷式の冷却構造を備えたものがある。
【0003】
例えば、循環水通路の出入口と水ジャケットとを接続し、この接続部に入口側と出口側とを仕切るように仕切り板を設け、水ジャケット内の冷却水の流れを促す構造としたもの(特許文献1)、冷却水ジャケットの頂部に頂部仕切り壁を設け、この仕切り壁を挟んで両側に冷却水の入口と出口を設けたもの(特許文献2)が知られている。
【0004】
特許文献1の第1図、第4図によれば、センタハウジング6に水ジャケット7が形成され、この水ジャケット7に臨むようにセンタハウジング6に水通路フランジ1が取付けられ、この水通路フランジ1に、水ジャケット7内に冷却水を導入する入水通路2と、水ジャケット7内の冷却水を排出する排水通路3とが設けられ、これらの入水通路2と排水通路3との間を仕切るとともに水ジャケット7内に突出するように水通路フランジ1に仕切り板5が設けられている。
【0005】
特許文献2の図1、図2によれば、軸受ハウジング3にタービン軸5のほぼ全周を囲こむループ状の冷却水ジャケット31が形成され、この冷却水ジャケット31の上部に頂部仕切壁32が形成されて、冷却水ジャケット31の環状の一部が閉じられ、また、軸受ハウジング3に、頂部仕切壁32を挟む位置に冷却水ジャケット31に連通するように冷却水入口33と冷却水出口34とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−284922号公報
【特許文献2】特開平5−141259号公報(特許第2924363号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、仕切り板5を設けることで、入水通路2により導入された冷却水は、仕切り板5によって流れが規制されて、水ジャケット周壁16に沿って流れやすくなるが、センタハウジング6に水通路フランジ1を複数の止ネジ4で取付けることで冷却水路が形成されているため、部品数が多くなり、生産性が低下する。
【0008】
また、エンジン停止時に水ポンプが停止した時には、仕切り板5によって、入水通路2、水ジャケット7、排水通路3のそれぞれの間で自然対流が起こりにくいため、タービン側からセンタハウジング6、タービンシャフト13に伝わる熱によってエンジン運転中以上に厳しい温度環境になるヒートソークバック(Heat soak back)現象が起こり、ラジアルメタル12が高温となり、ラジアルメタル12周りの潤滑油が炭化するおそれがある。
【0009】
特許文献2では、冷却水ジャケット31は上部で頂部仕切壁32によって仕切られているため、冷却水ジャケット31における冷却水入口33、冷却水出口34から頂部仕切壁32までの部分では冷却水の流れが滞りやすく、冷却水に空気が混入した場合に、上記部分に空気が溜まりやすく、冷却性能は低下する。また、上記したヒートソークバック現象も起こりやすい。
【0010】
更に、軸受ハウジング3を鋳造する場合、冷却水ジャケット31が頂部仕切壁32で仕切られた構造なので、冷却水ジャケット31の中子砂の排出が難しくなり、生産性の点で課題が残る。
【0011】
本発明の目的は、生産性を向上させるとともにヒートソークバック現象の発生を抑えながら、冷却性能を向上させることが可能なターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するため、タービンロータを収納するタービンハウジングと、コンプレッサロータを収納するコンプレッサハウジングとがベアリングハウジングを介して取付けられ、前記タービンロータ、前記コンプレッサロータ間を連結するシャフトがベアリングを介して前記ベアリングハウジングで回転自在に支持され、これらのシャフト及びベアリングを囲むようにベアリングハウジングに形成された環状冷却水路に流れる冷却水でベアリングハウジング及びベアリングを冷却するターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造において、前記環状冷却水路に連通するように、前記ベアリングハウジングに、冷却水を供給する水路入口と前記冷却水を排出する水路出口とが設けられ、これらの水路入口、水路出口間に位置する水路を部分的に仕切る部分仕切りが設けられ、該部分仕切りは、前記水路入口、前記水路出口間の前記水路の最短経路に位置することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、水路入口からベアリングハウジング内に供給された冷却水は、部分仕切りによって直接に水路出口に流れず、環状冷却水路に流れる。この結果、環状冷却水路を循環する冷却水量が増加する。
部分仕切りは、水路入口、水路出口間の水路の最短経路に位置することで、水路入口から水路出口に直接に冷却水が流れず、部分仕切りを迂回して環状冷却水路側へ流れやすくなり、環状冷却水路に流れる冷却水量が増加する。
以上より、シャフトからベアリング、ベアリングハウジングそして環状冷却水路内の冷却水への熱伝達を促進させることができ、ベアリングを冷却する冷却性能を向上させることができる。
【0014】
また、環状冷却水路は、部分仕切りによって完全に塞がれることがないため、例えば、ベアリングハウジングを鋳造にて製造する場合、環状冷却水路を形成するための砂型中子をショットブラストで排出する際に中子砂の排出が容易になる。従って、ベアリングハウジングの生産性を向上させることができ、コストを低減することができる。
【0015】
更に、エンジン停止時に水ポンプが停止した場合、環状冷却水路内の冷却水の強制循環は行われなくなるが、部分仕切りとすることで、水路入口、水路出口間の水路及び環状冷却水路の仕切られていない部分を通じて冷却水に自然対流が発生する。この結果、冷却性能が確保され、ヒートソークバック現象が起こりにくくなり、ベアリングを循環する潤滑油の炭化を防止することができる。
また更に、水路入口、水路出口間の水路及び環状冷却水路などに混入した空気は、水路の仕切られていない部分を通じて排出される。従って、空気混入による冷却性低下を招くことがなく、冷却性能を確保することができる。
【0016】
また、本発明において、前記環状冷却水路に対して軸方向にオフセットされて配置されるとともに前記水路入口および水路出口が設けられて前記最短経路が形成されるサイド水路が設けられ、前記部分仕切りは、前記環状冷却水路及び前記サイド水路からなる水路における前記シャフトの軸方向に沿った軸方向高さに対して20〜80%の軸方向高さに設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、部分仕切りの軸方向高さを20〜80%に設定することで、環状冷却水路で流れる循環冷却水量を環状冷却水路の形状及び大きさ、水路入口及び水路出口の位置及び内径、水路入口及び水路出口の数などにより変更可能である。これにより、環状冷却水路の循環冷却水量をターボチャージャの使用条件に応じて調節することができる。
【0017】
また、本発明において、部分仕切りは、その軸方向高さで前記サイド水路をほぼ塞いでいるのが望ましい。
これによれば、水路入口からサイド水路に流入した冷却水は、部分仕切りに沿って軸方向に流れ、環状冷却水路に至った後は、部分仕切りに沿って水路出口に流れ、サイド水路外へ流出する。この結果、環状冷却水路の冷却水循環を促すことができ、冷却性能を向上させることができる。
【0018】
また、本発明において、前記部分仕切りは、前記水路入口から前記環状冷却水路へ、あるいは環状冷却水路から前記水路出口への冷却水流れを促すために、前記シャフトの軸方向に対して傾斜する斜面を備えることを特徴とする。
このように部分仕切りに斜面を設けることで、冷却水が水路入口から環状冷却水路へ、あるいは環状冷却水路から水路出口へ流れやすくなる。従って、循環冷却水路内の循環水量を増やすことができるため、冷却性能を向上させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記水路入口及び前記水路出口が複数組設けられる場合には、前記部分仕切りは、各組毎に設けられることを特徴とする。
このようにすることで、複数組の水路入口及び水路出口の中からターボチャージャ搭載エンジンに応じた位置の水路入口及び水路出口の組が選択しやすくなる。従って、各エンジン機種の水路入口、出口の組み合わせによらず、ターボチャージャの冷却性能の安定性を高めることができる。
【0020】
また更に、本発明において、部分仕切りは、複数に分割されていることを特徴とする。
このように部分仕切りを分割することで、水路入口から流入した冷却水を環状冷却水路へより誘導しやすくなり、環状冷却水路を流れる冷却水量をより一層増やすことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のごとく本発明によれば、水路入口からタービンハウジング内に供給された冷却水を、部分仕切りによって環状冷却水路に循環させることができ、環状冷却水路の循環を促進させ、循環水量を増加させることができる。従って、シャフトからベアリング、ベアリングハウジングそして環状冷却水路内の冷却水への熱伝達を促進させることができ、ベアリングを冷却する冷却性能を向上させることができる。
また、部分仕切りによって水路入口から水路出口に直接に冷却水を流さずに、環状冷却水路に流れる冷却水量を増やすことができるため、冷却性能を向上させることができる。
【0022】
また、環状冷却水路は、部分仕切りによって塞がれることがないため、例えば、ベアリングハウジングを鋳造にて製造し、環状冷却水路を砂型中子で形成する際に中子砂をショットブラストで容易に排出することができる。従って、ベアリングハウジングの生産性を向上させることができ、コストを低減することができる。
【0023】
更に、エンジン停止時に水ポンプが停止した場合でも、水路入口、水路出口間の水路及び環状冷却水路に発生する冷却水の自然対流によって、ヒートソークバック現象を回避でき、冷却性能を確保することができるため、ベアリングを潤滑する潤滑油の炭化を防止することができる。
【0024】
また更に、水路入口、水路出口間の水路及び環状冷却水路などに混入した空気を容易に排出することができ、空気混入による冷却性低下を招くことがなく、冷却性能を確保することができる。
さらに複数組の水路入口及び水路出口を有することで各エンジン機種の水路入口、出口の組み合わせによらず、ターボチャージャの冷却性能の安定性を高めることができる。かつ複数組の水路入口及び水路出口を有する鋳物とすることで様々な給排水のレイアウトに一つの鋳物で柔軟に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るターボチャージャを示す断面図である。
【図2】本発明に係るターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係るベアリングハウジングの冷却水路を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るベアリングハウジングの冷却水路を示す説明図であり、図4(a)は図3のa矢視図、図4(b)は図3のb−b線断面図、図4(c)は図3のc−c線断面図である。
【図5】本発明に係るベアリングハウジングの冷却構造(実施形態1)の冷却水強制循環による冷却作用を示す説明図である。
【図6】ベアリングハウジングの冷却構造(比較例1)の冷却水強制循環による冷却作用を示す説明図である。
【図7】ベアリングハウジングの冷却構造(比較例2)の冷却水強制循環による冷却作用を示す説明図である。
【図8】本発明に係るベアリングハウジングの冷却構造(実施形態1)の自然対流による冷却作用を示す説明図である。
【図9】ベアリングハウジングの冷却構造(比較例1)の自然対流による冷却作用を示す説明図である。
【図10】ベアリングハウジングの冷却構造(比較例2)の自然対流による冷却作用を示す説明図である。
【図11】本発明に係るベアリングハウジングの冷却構造(実施形態2)を示す説明図であり、図11(a)は冷却水路全体を示す断面図、図11(b)は部分仕切りを示す要部断面図である。
【図12】本発明に係る部分仕切り(実施形態3)を示す要部断面図である。
【図13】本発明に係るベアリングハウジングの冷却構造(実施形態4,5)を示す説明図であり、図13(a)は実施形態4を示す断面図、図13(b)は実施形態5を示す断面図である。
【図14】本発明に係るベアリングハウジングの冷却構造(実施形態6〜8)を示す説明図であり、図14(a)は実施形態6を示す断面図、図14(b)は実施形態7を示す断面図、図14(c)は実施形態8を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
(実施形態1)
図1に示すように、ターボチャージャ10は、エンジンから排出される排気ガスが持つエネルギーにより駆動されるタービン11と、このタービン11の回転力を駆動源として圧縮空気を発生させてエンジン吸気系へ供給するコンプレッサ12と、これらのタービン11、コンプレッサ12間に設けられたベアリングハウジング13と、このベアリングハウジング13の内側に設けられた複数のジャーナルベアリング52,53と、タービン11、コンプレッサ12間を連結するとともにジャーナルベアリング52,53で回転自在に支持されるシャフト41とから主に構成されている。
【0028】
タービン11は、ベアリングハウジング13の一端に連結部材15で連結されたタービンハウジング16と、このタービンハウジング16内に回転自在に収納されたタービンロータ17とを備える。
【0029】
タービンハウジング16は、排気ガス導入口21と、この排気ガス導入口21から渦巻き状に形成されるとともに通路断面積がタービンロータ17側へいくにつれて次第に減少する排気ガス通路としてのスクロール部22と、排気ガス排出口23とが形成されている。
なお、符号25は排気ガスの一部を分流させることでタービンロータ17に供給する排気ガス量を調節するウェイストゲートバルブ、26はウェイストゲートバルブ25を開閉させるアクチュエータである。
【0030】
コンプレッサ12は、ベアリングハウジング13の他端に連結されたコンプレッサハウジング32と、このコンプレッサハウジング32内に回転自在に収納されたコンプレッサロータ33とを備える。
コンプレッサハウジング32は、空気を導入するコンプレッサ導入口35と、このコンプレッサ導入口35に連通するとともに渦巻き状に形成されたスクロール部36と、エンジン側に接続されて空気を排出する図示せぬコンプレッサ排出口とが形成されている。
【0031】
上記タービンロータ17にはシャフト41の一端部が取付けられ、このシャフト41の他端部におねじ41aが形成され、このおねじ41aとナット42とによって、シャフト41の他端部にコンプレッサロータ33が取付けられている。
上記シャフト41は、ベアリングハウジング13にジャーナルベアリング52,53を介して回転自在に支持されている。
【0032】
図2に示すように、ベアリングハウジング13は、シャフト41のタービンロータ17側の端部に設けられた大径部41bを回転自在に支持するシャフト支持部13aと、ベアリング52,53が嵌合されるベアリング嵌合穴13b,13cと、スラストリング54、スラストスリーブ55が配置されるベアリング収納部13dと、ベアリング52の周囲に環状に形成された環状冷却水路13fと、この環状冷却水路13fに冷却水を供給する水路入口13hと、環状冷却水路13fから冷却水を排出する水路出口13jと、ジャーナルベアリング52,53へ潤滑油を供給する潤滑油供給路13kと、供給された潤滑油を排出する通路となる空間13mと、潤滑油を外部に排出するために空間13mの下方に形成された潤滑油排出口13nとが形成されている。
【0033】
環状冷却水路13fは、ベアリングハウジング13及びベアリング52,53のタービン11により近い部分を冷却するために、シャフト41の軸線41cの延びる方向(シャフト41の軸方向)で連結部材15の内側に一部重なるように配置され、水路入口13h及び水路出口13jは、環状冷却水路13fに対してシャフト41の軸方向に且つタービン11から離れる方向にオフセット量δだけオフセットして配置されている。
【0034】
潤滑油供給路13kは、潤滑油を導入する潤滑油導入口13pと、この潤滑油導入口13pから分岐した複数の油路13q,13r,13s,13tとからなり、これらの油路13q,13r,13s,13tを通じてジャーナルベアリング52,53、スラストベアリング56の摺動部に潤滑油が供給される。
潤滑油は、各ベアリング52〜55の摺動部を潤滑した後は、摺動部から空間13m内に漏れ出し、潤滑油排出口13nから排出され、エンジンのオイルパンに戻される。
【0035】
図3では、環状冷却水路13fと、この環状冷却水路13fの側方に連通するサイド水路13vと、このサイド水路13vに連通する入口側水路13w及び出口側水路13xの形状を示している。これらの環状冷却水路13f、サイド水路13v、入口側水路13w及び出口側水路13xは、ハウジング冷却水路60を構成している。
【0036】
図4(a)は図3のa矢視図であり、二点鎖線はベアリングハウジング13の輪郭を表している。
水路入口13hに入口側水路13wが形成され、水路出口13jに出口側水路13xが形成されている。
【0037】
図4(b)は図3のb−b線断面図であり、ハウジング冷却水路60と共にハウジング冷却水路60を覆う周壁を模式的に描き、その周壁の断面にハッチングを施している。
サイド水路13vが形成されたポート部13zは、環状冷却水路13fの側方に設けられ、このポート部13zに水路入口13h及び水路出口13jが設けられている。
サイド水路13vによって、水路入口13h及び水路出口13jと環状冷却水路13fとが連通されている。
【0038】
また、ポート部13zには、入口側水路13wより上方で且つ出口側水路13xより下方に位置する、サイド水路13vと環状冷却水路13fとを合わせた部分を部分的に仕切る部分仕切り14aがベアリングハウジング13に一体に形成されている。
【0039】
即ち、部分仕切り14aは、水路入口13hと水路出口13jとを結ぶ最短経路を遮るように且つシャフト14(図1参照)の軸方向に延びるように形成され、水路入口13h、水路出口13j間に位置する、サイド水路13vと環状冷却水路13fとを合わせた水路を部分的に仕切っている。部分仕切り14aは、上記位置に形成されるとともに、入口側水路13w及び出口側水路13xを塞がない位置に有ればよい。なお、符号14bは部分仕切り14aの延長上に出来た環状冷却水路13f側の非仕切り部であり、冷却水の通路となる。
【0040】
部分仕切り14aの軸方向高さをHS、環状冷却水路13f及びサイド水路13vの軸方向高さ(ハウジング冷却水路60の軸方向高さ)をHTとすると、HS/HT=0.2〜0.8となる。HS/HT=0.2とは、入口側水路13wと出口側水路13xとを直線的に繋ぐ水路を仮に設けたときに、この水路の一部に部分仕切り13fが重なる値であり、また、HS/HT=0.2〜0.8は、生産のばらつきを考慮した値である。
【0041】
サイド水路13vの幅をWとすると、好ましくは、HS=Wがよい。HS=Wとすることで、部分仕切り14aが環状冷却水路13fに突出することがなく、環状冷却水路13f内の冷却水循環を妨げない。
【0042】
図4(c)は図3のc−c線断面図であり、部分仕切り14aは、環状冷却水路13fの内壁14d、ポート部13zの内壁14e、ポート部13zの側壁14f、ポート部13zの外壁14g、環状冷却水路13fの外壁14hからそれぞれ延びてベアリングハウジング13に一体成形されるとともにハウジング冷却水路60を部分的に仕切っている。
即ち、部分仕切り14aは、ポート部13zの側壁14fから環状冷却水路13f側へ向かって延びている。
【0043】
以上に述べたベアリングハウジングの冷却構造の作用を図5〜図10で説明する。
図5〜図7は、エンジン運転中で水ポンプが作動し、水ポンプによって冷却水がベアリングハウジングの水路入口に強制的に供給される状態を示し、図8〜図10は、エンジン停止時に水ポンプが停止してベアリングの水路入口に冷却水が供給されない状態を示している。なお、図5〜図10の各(a)は図4(b)に相当する図、図5〜図10の各(b)は図4(a)に相当する図である。
【0044】
図5(a),(b)の実施形態1では、水路入口13hからサイド水路13v内に流入した冷却水は、矢印Aで示すように、部分仕切り14aに遮られて水路出口13jに直線的には進めず、矢印Bで示すように、部分仕切り14aに当たって方向を変え、環状冷却水路13fを下方に進んで循環し、また、冷却水の一部は、破線の矢印Cで示すように、部分仕切り14aの先端側の非仕切り部14bに進む。
環状冷却水路13fを循環した冷却水は、矢印Dで示すように一部は循環を継続し、一部は矢印Eで示すように、部分仕切り14aで方向を変えて上方に進み、水路出口13jから流出する。
【0045】
図6(a),(b)の比較例1では、水路入口100と水路出口101との間に部分仕切りが無いため、水路入口100から流入した冷却水は、矢印Gで示すように、水路出口101に直接に最短経路で流れ、水路出口101から流出する。従って、環状冷却水路102内の冷却水は循環しない。
【0046】
図7(a),(b)の比較例2では、水路入口100と水路出口101との間に、水路入口100側及び水路出口101側の水路と環状冷却水路102とからなるハウジング冷却水路103を完全に仕切る仕切り104が設けられているため、水路入口100から流入した冷却水は、矢印Hで示すように、仕切り104に当たって方向を変え、環状冷却水路102を下方に進んで循環し、矢印Jで示すように、仕切り104に当たって方向を変え上方に進み、水路出口101から流出する。
【0047】
図8(a),(b)の実施形態1では、冷却水が、自然対流により矢印L,Mで示すように水路入口13h側から部分仕切り14aを迂回して上方の水路出口13j側に流れ、また、環状冷却水路13f内では、その自然対流の影響を受けるとともに環状冷却水路13fの下部から上部への自然対流が加わり、矢印N,Nで示すように比較的流量の大きな冷却水循環が生じ、冷却性能が確保される。
【0048】
図9(a),(b)の比較例1では、水路入口100と水路出口101との間に仕切りが無いため、冷却水は、自然対流により矢印Qで示すように水路入口100側から最短経路で上方の水路出口101側に流れる。
また、環状冷却水路102内では、環状冷却水路102の下部から上部への冷却水の自然対流によって、矢印R,Rで示すように冷却水の循環が生じるが、環状冷却水路102のみの自然対流であるため、図8(a),(b)の実施形態1に比べて冷却水は循環しにくい。
【0049】
図10(a),(b)の比較例2では、ハウジング冷却水路103が仕切り104で完全に仕切られているため、仕切り104の下方及び上方のそれぞれの水路で局部的に矢印T,T及び矢印U,Uで示す自然対流が発生するだけなので、図8(a),(b)の実施形態1に比べて冷却水は循環しにくい。
【0050】
以上の図5(a),(b)及び図8(a),(b)で説明したように、実施形態1では、部分仕切り14aを設けることで、図6(a),(b)及び図9(a),(b)に示した比較例1及び図7(a),(b)及び図10(a),(b)に示した比較例2に比べて、水ポンプ作動時における環状冷却水路13fでの強制的な冷却水循環量を確保可能であるとともに、水ポンプ停止時における環状冷却水路13fでの自然対流による十分な冷却水循環も行わせることができる。従って、ベアリングハウジング13(図2参照)及びジャーナルベアリング52,53(図2参照)の摺動部を冷却する冷却性能を高めることができ、更に、ヒートソークバック現象を回避することができる。
【0051】
また、部分仕切り14aによって環状冷却水路13f及びサイド水路13vを部分的に仕切ることで、例えば、ベアリングハウジング13を鋳造にて製造し、環状冷却水路13fを砂型中子で形成する際に中子砂をショットブラストで容易に排出することができる。
従って、ベアリングハウジング13の生産性を高めることができ、コストを低減することができる。
【0052】
更に、水路入口13h、水路出口13j間のサイド水路13v及び環状冷却水路13fなどに混入した空気を非仕切り部14b(図4(b)参照)から容易に排出することができ、空気混入による冷却性低下を招くことがなく、冷却性能を確保することができる。
【0053】
(実施形態2)
図11(a)に示すように、部分仕切り71は、両面に平面からなる斜面71a,71bが形成されている。これらの斜面71a,71bによって矢印で示すように、冷却水を、水路入口13hから環状冷却水路13fへ、あるいは、環状冷却水路13fから水路出口13jへより効果的に導くことができ、環状冷却水路13fでの冷却水循環を促すことができる。
【0054】
図11(b)に示すように、部分仕切り71の斜面71a,71bは、それぞれシャフト41(図1参照)の軸線41cに対して角度θ1,θ2に傾斜している。角度θ1と角度θ2とは、環状冷却水路13fの冷却水循環水量を考慮して適宜設定される。
【0055】
(実施形態3)
図12に示すように、部分仕切り73は、両面に、単一又は複数の曲率半径を有する曲面で構成される斜面73a,73bが形成されている。これらの斜面73a,73bによって矢印で示すように、冷却水を、水路入口13hから環状冷却水路13fへ、あるいは、環状冷却水路13fから水路出口13jへ剥離を抑えた状態でより効果的に導くことができ、環状冷却水路13fでの冷却水循環を促すことができる。
【0056】
(実施形態4)
図13(a)に示すように、部分仕切り75は、ポート部13zから環状冷却水路13f側へ突出する第1仕切り75aと、環状冷却水路13f側からポート部13z側へ突出する第2仕切り75bとに分割され、第1仕切り75a及び第2仕切り75bは、共に軸線41cに沿って延び、第1仕切り75aと第2仕切り75bとの間に非仕切り部75cが設けられている。
【0057】
第1仕切り75aと第2仕切り75bとは、同一直線状に配置されていないので、これらの第1仕切り75aと第2仕切り75bとに当たって変わる冷却水の流れる方向を矢印で示すように、ほぼ同一にすることができ、環状冷却水路13fでの冷却水循環を促すことができる。
【0058】
(実施形態5)
図13(b)に示すように、部分仕切り77は、ポート部13zから環状冷却水路13f側へ突出する第1仕切り77aと、環状冷却水路13f側からポート部13z側へ突出する第2仕切り77bとに分割されている。第1仕切り77aと第2仕切り77bとの間に非仕切り部77gが設けられている。
【0059】
第1仕切り77aは、両面に平面からなる斜面77c,77dが形成され、第2仕切り77bは、両面に平面からなる斜面77e,77fが形成されている。第1仕切り77aの斜面77cと第2仕切り77bの斜面77eとは同一平面上に有り、第1仕切り77aの斜面77dと第2斜面77bの斜面77fとは同一平面上に有る。
上記構成により、水路入口13hから環状冷却水路13fへの冷却水流れ及び環状冷却水路13fから水路出口13jへの冷却水流れを一層促すことができる。
【0060】
(実施形態6)
図14(a)に示すように、ベアリングハウジング81に複数のポート部として第1ポート部81aと第2ポート部81bとが形成され、第1ポート部81aに水路入口81c、水路出口81d及び部分仕切り81eが設けられ、第2ポート部81bに水路入口81f、水路出口81g及び部分仕切り81hが設けられている。
【0061】
第1ポート部81a、第2ポート部81bというようにポート部を複数設けることで、第1ポート部81a及び第2ポート部81bのうちから部分仕切り81e又は部分仕切り81hの効果(環状冷却水路13fにおける冷却水循環の促進効果であり、生産のばらつきによりポート部毎にその効果は異なる。)の高い方を選択することができる。
【0062】
(実施形態7)
図14(b)では、ベアリングハウジング83に形成された複数のポート部としての第1ポート部83a及び第2ポート部83bの各水路入口83c、水路出口83d、水路入口83f、水路出口83gのレイアウトを、図14(a)に示した水路入口81c、水路出口81d、水路入口81f、水路出口81gに対して変更している。
第1ポート部83aには部分仕切り83eを設け、第2ポート部83bには部分仕切り83hを設けている。
【0063】
図示したように、水路入口83c,83fを部分仕切り83e,83h側に向けることで、冷却水を部分仕切り83e,83hに当たりやすくすることができ、この結果、部分仕切り83e,83hによって冷却水の流れが環状冷却水路13fに向かいやすくなり、環状冷却水路13fの冷却水循環を促進させることができ、冷却性能を更に向上させることができる。
【0064】
(実施形態8)
図14(c)に示すように、ベアリングハウジング85は、環状冷却水路13fの上部側方及び下部側方に位置するように第1ポート部85aと第2ポート部85bとが形成されている。
第1ポート部85aには、水路入口85c、水路出口85d及び部分仕切り85eが設けられ、第2ポート部85bには、水路入口85f、水路出口85g及び部分仕切り85hが設けられている。
【0065】
このように、第1ポート部85a及び第2ポート部85bをベアリングハウジング85の上部及び下部に設けることで、ターボチャージャが搭載されるエンジンに応じて冷却水配管接続位置を選択することができ、冷却水配管の接続を容易に行うことができる。
【0066】
尚、図13(a),(b)に示した実施形態4及び実施形態5では、部分仕切り75,77をそれぞれ二分割したが、これに限らず三分割、四分割というように分割数を増やしてもよい。
また、図4(b),(c)において、サイド水路13vを、環状冷却水路13fに対して軸線41cの延びる方向(軸方向)のみにオフセットさせて配置したが、これに限らず、サイド水路13vを、環状冷却水路13fに対して軸線41cの延びる方向と環状冷却水路13fの半径方向との両方にオフセットさせて配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10 ターボチャージャ
13,81,83,85 ベアリングハウジング
13f 環状冷却水路
13h,81c,81f,83c,83f,85c,85f 水路入口
13j,81d,81g,83d,83g,85d,85g 水路出口
14a,71,73,77,81e,81h,83e,83h,85e,85h 部分仕切り
16 タービンハウジング
17 タービンロータ
32 コンプレッサハウジング
33 コンプレッサロータ
41 シャフト
52,53 ジャーナルベアリング
54 スラストリング
55 スラストスリーブ
56 スラストベアリング
71a,71b,73a,73b,77c,77d,77e,77f 斜面
HS 部分仕切りの軸方向高さ
HT 水路の軸方向高さ(ハウジング冷却水路の軸方向高さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータを収納するタービンハウジングと、コンプレッサロータを収納するコンプレッサハウジングとがベアリングハウジングを介して取付けられ、前記タービンロータ、前記コンプレッサロータ間を連結するシャフトがベアリングを介して前記ベアリングハウジングで回転自在に支持され、これらのシャフト及びベアリングを囲むようにベアリングハウジングに形成された環状冷却水路に流れる冷却水でベアリングハウジング及びベアリングを冷却するターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造において、
前記環状冷却水路に連通するように、前記ベアリングハウジングに、冷却水を供給する水路入口と前記冷却水を排出する水路出口とが設けられ、これらの水路入口、水路出口間に位置する水路を部分的に仕切る部分仕切りが設けられ、
該部分仕切りは、前記水路入口、前記水路出口間の前記水路の最短経路に位置することを特徴とするターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。
【請求項2】
前記環状冷却水路に対して軸方向にオフセットされて配置されるとともに前記水路入口および水路出口が設けられて前記最短経路が形成されるサイド水路が設けられ、前記部分仕切りは、前記環状冷却水路及び前記サイド水路からなる水路における前記シャフトの軸方向に沿った軸方向高さに対して20〜80%の軸方向高さに設定されていることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。
【請求項3】
前記部分仕切りは、その軸方向高さで前記サイド水路をほぼ塞いでいることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。
【請求項4】
前記部分仕切りは、前記水路入口から前記環状冷却水路へ、あるいは環状冷却水路から前記水路出口への冷却水流れを促すために、前記シャフトの軸方向に対して傾斜する斜面を備えることを特徴とする請求項2又は3記載のターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。
【請求項5】
前記水路入口及び前記水路出口が複数組設けられる場合には、前記部分仕切りは、各組毎に設けられることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。
【請求項6】
前記部分仕切りは、複数に分割されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のターボチャージャ用ベアリングハウジングの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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