説明

ターポリン製容器の製造方法及びターポリン製容器

【課題】意匠性が高く簡単にターポリン製の容器を作ること。
【解決手段】ターポリン製の第一シート11を型押しすることにより第一シート11に収容部11bを形成する収容部形成段階と、収容部11bを覆うようにターポリン製の第二シート12を第一シート11に当接させる当接段階と、第一シート11と第二シート12とが当接する当接部11a、12aに対し高周波ウェルダー加工を施すことにより第一シート11及び第二シート12を溶着させる溶着段階と、を有することを特徴とするターポリン製容器10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターポリンを用いた容器の製造方法及びこれにより製造されたターポリン製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターポリンを用いた容器がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。ターポリンとは、ポリエステル系の繊維を合成樹脂フィルムで挟んで構成された素材であり、耐久性が高くガスバリア性に優れる性質をもつ。このため、ターポリンを容器の素材にすることで、耐候性、耐久性に優れるとともに、フレキシブルな容器を作ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−224384
【特許文献2】特開2005−247408
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ICタグ等の小型の電子機器を包装する小型の容器においては、耐候性、耐久性が要求されている。
【0005】
ここで、小型の電子機器を包装する空間を形成するために、ターポリンを型押しによって形成した場合、絞られた部分にシワが形成されてしまう。特に、型押しにより深く絞った場合、より多くシワが形成されてしまう。このようにシワが形成されると、容器の外観が悪くなり、意匠性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、意匠性が高く簡単にターポリン製の容器を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の構成は、次のとおりである。
【0008】
(1)
ターポリン製の第一シートを型押しすることにより前記第一シートに収容部を形成する収容部形成段階と、前記収容部を覆うようにターポリン製の第二シートを前記第一シートに当接させる当接段階と、前記第一シートと前記第二シートとが当接する当接部に対し高周波ウェルダー加工を施すことにより前記第一シート及び前記第二シートを溶着させる溶着段階と、を有することを特徴とするターポリン製容器の製造方法。
【0009】
(2)
ターポリン製のシートを型押しすることにより収容部が形成された第一シートと、前記収容部を覆うように前記第一シートに当接し且つ前記第一シートが当接した当接部に高周波ウェルダー加工を施すことで溶着がなされる第二シートと、を有することを特徴とするターポリン製容器。
【発明の効果】
【0010】
以上の方法又は構成のように、型押しにより第一シートにはシワが形成されるが、シワのある状態の第一シートを第二シートに当接させ、高周波ウェルダー加工を施すと、第一シートと第二シートの当接部において、シワがなくなる。これにより、型押しにより収容部を形成したターポリン製の容器の意匠性が向上する。また、高周波ウェルダー加工を用いることにより、溶着と同時にシワ消しをもすることができるので、手間数が減る。このため、簡単に容器を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図を用いて本発明の一実施形態を説明する。図1は本実施形態のターポリン製容器10の構成を示す説明図であり、(a)が斜視図、(b)が全体の断面図、(c)が断面の拡大図である。図2は本実施形態のターポリン製容器10の製造工程を示す説明図である。
【0012】
〔ターポリン製容器10の構成〕
図1に示すように、本実施形態のターポリン製容器10は、ターポリン製の2つのシートから構成される。具体的には、表面側の第一シート11と裏面側の第二シート12とから構成される。
【0013】
第一シート11、第二シート12に用いられる本実施形態のターポリンは、ポリエステル等の繊維を、塩化ビニル等の合成樹脂によってコーティングして構成されているが、ターポリンであれば、これに限るものではない。但し、本実施形態のようにコーティング剤として塩化ビニルのように、レーザー等で印刷Pが可能なものを用いれば、ターポリン製容器10の表面に文字や模様等の印刷Pを施すことができ、更に意匠性を向上させることができる。尚、印刷Pは印字のみに限るものではなく、別途、印刷層を転写印刷して形成してもよい。
【0014】
図1(b)に示すように、第一シート11は、内部の窪みが深い収容部となるように、後述する型押しによって深く絞って形成される。第二シート12は、断面が直線的なシート状であり、第一シート11に対して当接し、第一シート11の収容部を覆っている。
【0015】
尚、第一シート11が第二シート12に対して当接する部分を当接部11aとし、第二シート12が第一シート11に対して当接する部分を当接部12aとする。当接部11a、12aは、図1(a)に示すように、第一シート11と第二シート12の周囲全体にわたって形成されている。
【0016】
ターポリン製容器10は、表面側、裏面側ともにターポリン製のシートで構成されるため、優れた耐候性や耐久性を持つ。このため、ターポリン製容器10の収容部に、図1(b)に示すように、ICタグT等の電子機器のような保護すべき部材を入れれば、確実にICタグTを保護することができる。また、更に衝撃を和らげるためにスポンジ等の緩衝材Sを入れてもよいが、緩衝材Sとせずに、この部分にスペーサを入れてもよい。
【0017】
このように、収納部を型押しにより深く絞って形成し、収納部に緩衝材Sやスペーサを入れると、ICタグを裏面となる第二シートから遠ざけることができる。すると、例えばターポリン製容器10を金属上に載置した場合においても、金属との距離を保つことができ、ICタグに格納されている情報を読取りやすくなる。ICタグはICタグと金属との距離が近いと読取り性能が落ちるという性質を有するが、緩衝材Sやスペーサの存在により、ターポリン製容器裏面にある金属との距離を確実に保つことができるからである。尚、これはUHF帯でもHF帯でも効果がある。
【0018】
〔ターポリン製容器10の製造方法〕
次に、図2を用いてターポリン製容器10の製造方法を説明する。
【0019】
まず、図2(a)に示すように、平らなシート状のターポリン製の第一シート11を金型21、22の間に挿通する。そして、図2(b)に示すように、金型21、22を閉じる。金型21、22のキャビティの凹凸を深くすることで、深絞りが行われ、収容部の深さを深くすることができる(収容部形成段階)。
【0020】
図2(c)に示すように、収容部11bが形成された第一シート11に、平らなシート状の第二シート12を当接させる。ここで、第二シート12は、第一シート11の収容部11bの開口部全てを覆うように当接させる(当接段階)。このときにはまだ、第一シート11の収容部11bの周辺には、型押しで深絞りをした際に形成されたシワWが存在する。尚、第二シート12を当接させる前に、ICタグTと、ICタグTを保護する緩衝材Sを第一シート11の収容部11bに挿入しておく。
【0021】
第一シート11の当接部11aと第二シート12の当接部12aとを当接させた状態で、それぞれの当接部に対し、高周波ウェルダー加工を施す。これにより、第一シート11及び第二シート12が溶着される(溶着段階)。ここで、高周波ウェルダー加工は、ターポリン製のシートの分子を振動させて熱溶着させるため、第一シート11の当接部11aにおいて、型押しによって形成されたシワWがなくなる。
【0022】
このように、当接部11aにおいてシワWがなくなるため、容器の外観が良くなり、意匠性が向上する。また、高周波ウェルダー加工を用いることにより、溶着と同時にシワ消しをもすることができる。この結果、溶着作業とシワ消し作業とを別々にする場合と比較し、手間数が減る。これにより、簡単にターポリン製容器10を製造することができる。
【0023】
〔他の実施形態〕
前述の実施形態においては、金型21、22を深絞りのできるものとし、収容部11bを深いものとしたが、必ずしも深絞りを必要とするものではない。前述の実施形態における深絞りは、収容部形成段階においてシワWがより多く形成される場合の例示として使用したものである。
【0024】
図3を用いて他の実施形態を説明する。図3はラベル形ターポリン製容器30の構成を示す説明図であり、(a)が斜視図、(b)が全体の断面図、(c)が断面の拡大図である。尚、製造方法は、型押しをする金型の形状以外は、前述の実施形態と同様の構成を用いて行い、同様の工程を有するものであるので、同符号を付して説明を省略する。
【0025】
図3に示すように、ターポリン製容器は、収容部の深さを浅くすることで、よりコンパクトに構成することもできる。このようにコンパクトに構成し、第二シート12に粘着剤を塗布するなどして粘着層31を形成することで、ラベルとして用いることもできる。
【0026】
即ち、ラベル形ターポリン製容器30は、表面にバーコード等の商品を識別する印刷Pと、内面に配設されるICタグTと、その裏面に配設される緩衝材Sと、ラベル裏面に商品に貼付するための粘着層31とを有する。
【0027】
このようなラベル形ターポリン製容器30によっても、ICタグTが耐候性、耐久性に優れるターポリンにより表裏を覆われるためにICタグTの性能を高く保つことができ、ICタグTの裏面に緩衝材Sが配設されるためにICタグTを衝撃から保護することができる。
【0028】
前述の実施形態においては、第一シート及び第二シートの双方全てをターポリン製としたが、必ずしもこれに限るものではない。一方のシート又は各シートの一部をターポリン製でなく、高周波ウェルダー適性を有する各種プラスチックシート、樹脂製シート、樹脂製帆布、樹脂繊維シート、等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ターポリンのような樹脂及び繊維からなるシートによって、保護するものを収容した容器全般に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態のターポリン製容器10の構成を示す説明図。
【図2】本実施形態のターポリン製容器10の製造工程を示す説明図。
【図3】他の実施形態のラベル形ターポリン製容器30の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
P…印刷、S…緩衝材、T…ICタグ、W…シワ、10…ターポリン製容器、11…第一シート、11a…当接部、11b…収容部、12…第二シート、12a…当接部、21…金型、22…金型、30…ラベル形ターポリン製容器、31…粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターポリン製の第一シートを型押しすることにより前記第一シートに収容部を形成する収容部形成段階と、
前記収容部を覆うようにターポリン製の第二シートを前記第一シートに当接させる当接段階と、
前記第一シートと前記第二シートとが当接する当接部に対し高周波ウェルダー加工を施すことにより前記第一シート及び前記第二シートを溶着させる溶着段階と、
を有することを特徴とするターポリン製容器の製造方法。
【請求項2】
ターポリン製のシートを型押しすることにより収容部が形成された第一シートと、
前記収容部を覆うように前記第一シートに当接し且つ前記第一シートが当接した当接部に高周波ウェルダー加工を施すことで溶着がなされる第二シートと、
を有することを特徴とするターポリン製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272940(P2008−272940A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115436(P2007−115436)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(592233347)シーレックス株式会社 (19)
【出願人】(503307523)三井物産プラスチックス株式会社 (2)
【出願人】(501293046)有限会社五英 (3)
【Fターム(参考)】