説明

ターンシグナルスイッチ装置

【課題】高温環境下でも傾倒操作後の操作レバーを中立位置へ確実に自動復帰させることができるターンシグナルスイッチ装置を提供すること。
【解決手段】操作レバー3に対する傾倒操作に伴ってホルダ9が中立位置からロック位置まで回転すると、弾性部材7に付勢された第1のレバー部材5がキャンセル突起30の回転軌跡内へ進出し、この状態で操作レバー3の傾倒方向と逆向きに回転するキャンセル突起30によって第1のレバー部材5が回転駆動されると、それに連動して回転する第2のレバー部材6がレバー係合部10cを駆動してホルダ9をロック位置から離脱させて、ホルダ9を操作レバー3と共に中立位置へ自動復帰させるターンシグナルスイッチ装置において、第2のレバー部材6のキャンセル突起30の回転軌跡側の端部にせり出し部6gを設け、さらにせり出し部6gに連結ピン6dを設けて、この連結ピン6dを介して第1のレバー部材5が第2のレバー部材6を回転させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングコラムなどに付設されて方向指示器として用いられるターンシグナルスイッチ装置に係り、特に、該ターンシグナルスイッチ装置に備えられる操作レバーを中立位置に自動復帰させるためのキャンセル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のターンシグナルスイッチ装置においては、操作レバーの基部がホルダに軸支されて第1の平面に沿って傾倒可能であると共に、ステアリングコラム等に固定されたハウジングにホルダが軸支されて、このホルダが操作レバーと一体的に第1の平面と略直交する第2の平面に沿って傾倒可能である。そして、操作レバーのレバー部を中立位置から第2の平面に沿って左右いずれかの方向指示位置へ傾倒操作すると、左折または右折用のランプが点滅動作するようになっている。また、操作レバーのレバー部を第1の平面に沿って傾倒操作すると、ビーム切換えやパッシング動作が行われるようになっている。このようなターンシグナルスイッチ装置では、操作レバーが左右の方向指示位置と中立位置との間で操作できるようにするため、ハウジング側に設けたカム面とホルダとの間にばね部材と駆動体を介在させて該駆動体をカム面に弾接させている。同様に、操作レバーがビーム切換え位置やパッシング位置と中立位置との間で操作できるようにするため、ホルダ側に設けたカム面と操作レバーの基部との間にもばね部材と駆動体を介在させて該駆動体をカム面に弾接させている。
【0003】
以下、従来のターンシグナルスイッチ装置(例えば、特許文献1参照)の構造を図5〜図7に基づいて説明する。ここで、図5は従来例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図、図6は図5のターンシグナルスイッチ装置に備えられるキャンセル機構の底面図、図7は図6のキャンセル機構の動作説明図である。
【0004】
これらの図において、ターンシグナルスイッチ装置は、ハウジングをなす合成樹脂製の第1および第2ケース101,102と、ホルダ108を介して両ケース101,102に支持された操作レバー103と、第2ケース102の内面に載置された第1および第2のレバー部材104,105と、第1のレバー部材104を第2ケース102の外方へ突出させる向きに弾性付勢する捩じりコイルばね106とによって主に構成されている。ただし、操作レバー103の基部には作動部材107が固設されており、ホルダ108には可動部材109が揺動可能に支持されている。また、第1および第2ケース101,102はスナップ結合等により一体化されて、図示せぬコラムカバーやコンビスイッチ等のステータ部材に固定されるようになっている。
【0005】
第1ケース101の内面には谷部やロック部を有する略V字状のカム面110が設けられており、このカム面110に、ホルダ108に保持されてスプリング125に付勢される第1の駆動体124が摺動可能に弾接している。また、第1ケース101の内底部には図示せぬプリント基板が取り付けられており、このプリント基板にランプ点燈用の接点部が配設されている。
【0006】
第2ケース102の内面にはガイド軸116および支軸117とボス119が立設されている。ガイド軸116は第1のレバー部材104を回動可能かつスライド可能に支持しており、支軸117は第2のレバー部材105を回動可能に支持している。また、ボス119は捩じりコイルばね106の巻回部を支持している。
【0007】
第1のレバー部材104と第2のレバー部材105は、長孔104bに連結ピン105dを係合させることによって連結されている。第1のレバー部材104には長孔104a,104bとばね受け部104cが設けられており、長孔104aに前記ガイド軸116を挿通させることによって該レバー部材104が回動可能かつスライド可能に支持されるようになっている。また、第1のレバー部材104の長手方向の一端部には当接部104dが設けられ、長手方向の他端部にはカム係合部104eが立設されている。一方、第2のレバー部材105には第1および第2の開口121,122と取付孔105aが設けられており、この取付孔105aに前記支軸117を挿通させることによって該レバー部材105が回動可能に支持されるようになっている。また、第2のレバー部材105の長手方向の一端部には突部105cと連結ピン105dが設けられており、この連結ピン105dを前記長孔104bに挿通してリンクさせた状態で両レバー部材104,105は重なり合っている。
【0008】
捩じりコイルばね106は片持ち梁状に延びる腕部106cを有し、この腕部106cが第1のレバー部材104のばね受け部104cに係合させてあるため、第1のレバー部材104は長孔104a,104bに沿って当接部104dを外方へ押し出す向きに弾性付勢されている。
【0009】
作動部材107は操作レバー103の根元部分に固定されており、この作動部材107は操作レバー103の基部を構成している。作動部材107は合成樹脂製であり、その両側面に円形凹部107aが設けられている。また、ホルダ108には作動部材107を挟み込むように一対の突出片108aが突設されており、各突出片108aの内面に円柱状の突起108bが設けられている。このホルダ108も合成樹脂製であり、各突起108bを各円形凹部107aに嵌入させるというスナップ結合によって、操作レバー103の基部(作動部材107)がホルダ108に軸支されている。ホルダ108の突出片108a側とは逆側の端部にはカム面108cが形成されており、このカム面108cの頂部は第1のレバー部材104のカム係合部104eを係止可能である。なお、図示していないが、ホルダ108内には別のカム面も形成されており、このカム面に、作動部材107に保持されてスプリング126に付勢される第2の駆動体127が摺動可能に弾接している。ホルダ108には一対の支軸108d,108eが突設されており、これら支軸108d,108eを第1および第2ケース101,102の軸受部分に嵌入させることによって、ホルダ108が両ケース101,102に軸支されるようになっている。ただし、支軸108d,108eの軸線方向と突起108bの軸線方向は互いに略直交する向きに設定されている。これにより、操作レバー103および作動部材107がホルダ108と一体的に、支軸108d,108eを回動軸として両ケース101,102に対し第2の平面に沿って傾倒可能となる。また、操作レバー103および作動部材107がホルダ108や両ケース101,102に対し、突起108bを回動軸として第2の平面と略直交する第1の平面に沿って傾倒可能となる。
【0010】
可動部材109は、ホルダ108の開口108gに挿入されてスプリング125に付勢された状態で、若干の揺動を許容された状態で該ホルダ108に取り付けられている。可動部材109には第2のレバー部材105の第2の開口122内に配置される受け部109eが突設されており、この受け部109eが第2の開口122の湾曲縁122aと係脱するようになっている。
【0011】
このように構成されたターンシグナルスイッチ装置の動作について説明する。まず、操作レバー103が中立位置にあるとき、第1の駆動体124はカム面110の谷部に弾接しているため、操作レバー103は中立位置に保持されている。このとき、第1のレバー部材104のカム係合部104eはホルダ108のカム面108cの頂部に当接して位置規制されているため、図7(a)に示すように、第1のレバー部材104は捩じりコイルばね106の付勢力に抗して第2ケース102内に留まっており、それゆえ当接部104dは自動車のハンドル(ステアリングシャフト)に連動して回転するキャンセル突起128の回転軌跡外に位置している。
【0012】
中立位置にある操作レバー103が支軸108d,108eを回動軸として左右いずれかの方向指示位置へ傾倒操作されると、第1の駆動体124がカム面110を摺動してクリック感を生起してからロック部にて保持されると共に、ホルダ108および可動部材109が同方向へ所定角度回転してカム面108cの頂部がカム係合部104eから外れる。その後、ハンドルを操作レバー103の傾倒操作方向に回転させると、図7(b)に示すように、第1のレバー部材104が捩じりコイルばね106の付勢力により長手方向の一端側へ移動して、当接部104dがキャンセル突起128の回転軌跡内に進出した状態となる。
【0013】
この状態でハンドルを操作レバー103の傾倒方向と逆向きに回転させるリターン動作が行われると、図7(b)の矢印の向きにキャンセル突起128が当接部104dに当接するため、第1および第2のレバー部材104,105は図示時計回りに回転する。すなわち、第1のレバー部材104がガイド軸116を中心に図示時計回りに回転駆動されるため、第2のレバー部材105が連動して回転し、第2の開口122の湾曲縁122aが可動部材109の受け部109eを図示上方へ押し上げる。この押圧力は可動部材109からホルダ108へ伝達されるため、第1の駆動体124がカム面110のロック部から外れて谷部へ押し戻されることになり、よってホルダ108および操作レバー103が中立位置へ自動復帰すると共に、第1および第2のレバー部材104,105が図7(a)に示す位置まで押し戻される。
【0014】
また、図7(b)の状態で、操作レバー103に自動復帰を阻止する何らかの力が作用した場合、例えば操作レバー103を手で押えたまま、その傾倒方向と逆向きにハンドルが回転操作された場合には、可動部材109がスプリング125を押し撓めてホルダ108に対し若干揺動し、第2のレバー部材105の湾曲縁122aに押圧された受け部109eが図7(c)に示す位置まで移動する。それゆえ、第1および第2のレバー部材104,105を受け部109eに妨げられずに回転させることができる。
【0015】
一方、中立位置にある操作レバー103が突起108bを回動軸として傾倒操作されると、操作レバー103の基部を構成する作動部材107がホルダ108に対して同方向へ回転するため、第2の駆動体127がホルダ108内に形成された図示せぬカム面を摺動する。その結果、一方向へ傾倒操作されたときにはクリック感を生起してビーム切換え動作が行われ、逆方向へ傾倒操作されたときにはパッシング動作が行われるようになっている。
【特許文献1】特開2001−6495号公報(第4−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前述した従来のターンシグナルスイッチ装置では、高温環境下で合成樹脂製の部品が軟化したり膨張すると、ハンドルのリターン動作に連動してキャンセル突起128が第1のレバー部材104を回転させたときに、第1のレバー部材104の回転角度が所定の大きさにならないことがある。このため、その際に第2のレバー部材105の回転角度もまた本来回転する角度よりも小さくなり、第2のレバー部材105の回転によって駆動される受け部109eの移動量が不足してしまい、第1の駆動体124をカム面110のロック部から離脱させにくくなって、操作レバー103が中立位置へ自動復帰しないキャンセル不良が発生するという問題があった。
【0017】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、高温環境下でも傾倒操作後の操作レバーを中立位置へ確実に自動復帰させることができるターンシグナルスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明は、カム面が設けられたハウジングと、レバー係合部が設けられて前記ハウジングに回動可能に支持されたホルダと、該ホルダに設けられて前記カム面と協働して前記ホルダを中立位置およびロック位置に保持可能な弾性駆動手段と、前記ホルダに基部が保持されて前記ハウジングの外方で傾倒操作される操作レバーと、前記ハウジングに回動可能に支持されていると共に、ステアリングホイールに連動して回転するキャンセル突起の回転軌跡に対して進出後退するスライド移動が可能な第1のレバー部材と、この第1のレバー部材を前記回転軌跡内へ向けて付勢するように前記ハウジングに設けられた弾性部材と、前記ハウジングに回動可能に支持されて前記レバー係合部と係脱可能であると共に、相互の回転動作が連動するように前記第1のレバー部材に連結された第2のレバー部材とを備えたターンシグナルスイッチ装置において、前記第2のレバー部材の前記回転軌跡側の端部に該回転軌跡内へ向かって突出するせり出し部を設けると共に、このせり出し部に前記第1および第2のレバー部材の連結箇所を設けるという構成にした。
【0019】
このように構成されたターンシグナルスイッチ装置では、第1および第2のレバー部材がキャンセル突起の回転軌跡に近接して配置される第2のレバー部材のせり出し部において連結されているので、第2のレバー部材の回動中心に対する連結箇所の回転半径が大きくなっている。そのため、ハンドルのリターン動作に連動してキャンセル突起が第1のレバー部材を回転駆動したときに、前記連結箇所で第1のレバー部材に駆動される第2のレバー部材が大きく回転することになって、ホルダに設けられたレバー係合部を第2のレバー部材によって大きく移動させることができるので、ホルダをロック位置から確実に離脱させることができて、操作レバーをその中立位置へ自動復帰させるというキャンセル動作が正常に行える。
【0020】
上記の構成において、第2のレバー部材の回転平面に対して略直交して延びる連結ピンをせり出し部に突設し、第1のレバー部材に設けた長孔に該連結ピンを挿通させることによって、これら第1および第2のレバー部材が連結されていると、第1および第2のレバー部材の回転動作を確実に連動させることができる簡素な構造が実現できるため好ましい。
【0021】
また、上記の構成において、ホルダが回転されるときレバー係合部と係合して回動される作動部を第2のレバー部材に設け、第1のレバー部材にカム係合部を設け、ホルダにはカム係合部に当接するカム部を設けると共に、該カム部をレバー係合部に対してキャンセル突起の回転軌跡側に配置させると、操作レバーのキャンセル動作を確実に行うことができて好ましい。この場合において、前記作動部を一対の作動腕部とし、これら一対の作動腕部間にレバー係合部を配置させると共に、該レバー係合部と一対の作動腕部のそれぞれとの間隔を同じ距離に設定すると、操作レバーのキャンセル動作に要する回転角度が傾倒方向に関わらなく同じ角度になるので、操作レバーのキャンセル動作を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のターンシグナルスイッチ装置は、第1のレバー部材と第2のレバー部材が、第2のレバー部材のキャンセル突起の回転軌跡側の端部に回転軌跡内に向かって突出するせり出し部において連結されており、第2のレバー部材の回動中心に対する連結箇所の回転半径が大きくなっているため、ハンドルのリターン動作に連動してキャンセル突起が第1のレバー部材を回転駆動したときに、該連結箇所で駆動される第2のレバー部材が大きく回転することになって、ホルダに設けられたレバー係合部を該第2のレバー部材によって大きく移動させることができる。したがって、高温環境下で合成樹脂製の部品が軟化したり膨張した場合でも、レバー係合部の移動量が不所望に小さくなる虞はなく、よってホルダをロック位置から確実に離脱させることができる。それゆえ、このターンシグナルスイッチ装置は、高温環境下でも傾倒操作後の操作レバーを中立位置へ確実に自動復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図、図2は図1のターンシグナルスイッチ装置の操作レバーが中立位置にあるときのキャンセル機構を示す説明図、図3は図2のキャンセル機構のレバー部材がキャンセル突起に駆動される直前の状態を示す説明図、図4は図2の操作レバーの自動復帰が阻害されているときに該レバー部材がキャンセル突起に駆動された場合の動作を示す説明図である。
【0024】
これらの図に示すターンシグナルスイッチ装置は、ハウジングの外殻部をなす第1および第2のケース1,2と、ホルダ9を介して両ケース1,2に支持された操作レバー3と、ハウジングの仕切り部として両ケース1,2間に固設された中間支持部材4と、中間支持部材4に回動可能に支持された第1および第2のレバー部材5,6と、第1のレバー部材5を第2のケース2の外方へ突出させる向き、すなわち後述するキャンセル突起30の回転軌跡内に向かう方向へ弾性付勢する第1の弾性部材7と、第2のレバー部材6を中立位置へ復帰させるための第2の弾性部材8とによって主に構成されており、ホルダ9には可動部材10が揺動可能に支持されている。
【0025】
第1および第2のケース1,2は合成樹脂製であり、これら両ケース1,2はスナップ結合等により一体化されて図示せぬコラムカバーやコンビスイッチ等のステータ部材に固定されるようになっている。第1のケース1の内部にはカム面を有するカム部1bが設けられており、ホルダ9に保持された弾性駆動手段11の先端部がこのカム部1bに摺動可能に弾接している。また、第1ケース1の内底部には図示せぬプリント基板が取り付けられており、このプリント基板にランプ点燈用の接点部が配設されている。第1のケース1と第2のケース2には相対向する位置に軸受部1a,2aが設けられており、これら軸受部1a,2aにホルダ9の一対の支軸9bを挿入することによって、ホルダ9が両ケース1,2に軸支されるようになっている。
【0026】
中間支持部材4は合成樹脂製であり、第1および第2のケース1,2を一体化して形成される内部空間を仕切るように両ケース1,2間に配置されている。この中間支持部材4には円柱状の第1および第2の軸部4a,4bが立設されており、これら軸部4a,4bと前記支軸9bとが平面的に見て同一直線上に配列されるようになっている(図2〜図4参照)。第1の軸部4aと支軸9bとの間に第2の軸部4bが位置する配列となるため、自動車のハンドルに連動して回転するキャンセル突起30の回転軌跡までの距離は、第1の軸部4aの方が第2の軸部4bよりも短くなる。第1の軸部4aは第1のレバー部材5を回動可能かつスライド可能に支持するためのものであり、第2の軸部4bは第2のレバー部材6を回動可能に支持するためのものである。また、中間支持部材4の四隅近傍には一対のばね受け部4cと一対のばね受け部4dが設けられており、対をなすばね受け部4cに第1の弾性部材7の両端部が係止され、対をなすばね受け部4dに第2の弾性部材8の両端部が係止されている。この中間支持部材4には、第1のレバー部材5のカム係合部5cが挿通される開口4eと、可動部材10のレバー係合部10cが挿通される切欠き部4fとが設けられている。なお、第1および第2の弾性部材7,8はいずれも金属薄板からなる板ばねである。
【0027】
第1のレバー部材5と第2のレバー部材6は合成樹脂製であり、両レバー部材5,6は、第1のレバー部材5に形成された長孔5aに第2のレバー部材6の連結ピン6dを係合させることによって連結されている。第2のレバー部材6の連結ピン6dは、第1の軸部4aに対してキャンセル突起30の回転軌跡側で長孔5aに係合されている。第1のレバー部材5は、その長孔5aに前記第1の軸部4aを挿通させることによって中間支持部材4に回動可能かつスライド可能に支持されている。また、第1のレバー部材5の長手方向の一端部にはキャンセル突起30に当接する当接部5bが設けられ、長手方向の他端部には第1のレバー部材5の回転平面に対して略直角に延びるカム係合部5cが、中間支持部材4の開口4eを挿通するように突設されている。そして、操作レバー3が中立位置にある状態において、第1のレバー部材5の長手方向の他端側の平坦面5dに弾性部材としての第1の弾性部材7を変形した状態で圧接させることによって、第1のレバー部材5は当接部5bを中間支持部材4の外方へ突出させる向き、すなわちキャンセル突起30の回転軌跡内への方向に弾性付勢されるようになっている。第1のレバー部材5のカム係合部5cはキャンセル突起30の回転軌跡側とは反対側を頂部とする山形状のカム面を有しており、このカム係合部5cは後述する可動部材10のカム部10bに摺動可能であり、可動部材10が中立位置にあるときには、第1の弾性部材7の付勢力に抗してカム係合部5cの頂部がカム部10bの頂部に係止されるようになっている。なお、カム係合部5cはカム部10bに対してキャンセル突起30の回転軌跡内に向けて当接するように配置されている。
【0028】
一方、第2のレバー部材6には取付孔6aと開口6bおよび切欠き6cが設けられており、開口6bと切欠き6cは取付孔6aを介して形成されていると共に、取付孔6aに対して開口6bはキャンセル突起30の回転軌跡側に形成されている。そして、取付孔6aに前記第2の軸部4bを挿通させることによって、第2のレバー部材6は中間支持部材4に回動可能に支持されている。第2のレバー部材6の長手方向において回転軌跡側の一端部には、中間支持部材4の外方、すなわち回転軌跡内へ向けて突出するせり出し部6gが形成されており、このせり出し部6gに第2のレバー部材6の回転平面に対して略直交して延びる連結ピン6dが突設されている。そして、連結ピン6dを第1のレバー部材5の長孔5aにスライド可能に挿通してリンクさせた状態で、第1および第2のレバー部材5,6は重なり合っている。そのため、第1のレバー部材5が回転すると、その回転力が連結ピン6dに伝達されて、第2のレバー部材6が連動して回転するようになっている。したがって、第2のレバー部材6の回動中心である第2の軸部4bに対する回転半径が第2の軸部4bと連結ピン6d間の寸法となり、従来構成の半径よりも連結ピン6dの位置まで増大した寸法の分だけ大きくなるため、ハンドルのリターン動作に連動してキャンセル突起30が第1のレバー部材5を回転駆動すると、第2のレバー部材6が大きく回転することになるので、後述する作動腕部6eの回転量も増大して、ホルダ9と一体的に設けられたレバー係合部10cを大きく移動させることができる。また、第2のレバー部材6の長手方向の他端部で切欠き6cの両側には作動部として一対の作動腕部6eが設けられており、これら作動腕部6eの他端部側の側面をなす平坦面6fに第2の弾性部材8を当接させた状態で第2のレバー部材6は組み込まれる。そのため、第2のレバー部材6が中立位置から回転すると、図4に示すように第2の弾性部材8が変形することによって第2の弾性部材8に生じる復帰力が、第2のレバー部材6を回転中立位置にもどす力として第2のレバー部材6に付与されるようになっている。
【0029】
操作レバー3は合成樹脂製であり、基部3aとレバー部3bとを有する。基部3aはホルダ9の開口部9aに挿入され、この基部3aに保持された弾性付勢手段15の先端部がホルダ9内の図示せぬカム部に弾接している。また、基部3aの相対向する側壁には軸孔3cが形成されており、これら軸孔3cには金属製のシャフト21が挿通されている。このシャフト21は各軸孔3cの外側でホルダ9の軸受孔9cに挿通されて、ワッシャ22を嵌着させることによりホルダ9に抜け止め状態で保持されているため、シャフト21を回動軸として操作レバー3はホルダ9に回動可能に支持されている。また、操作レバー3の基部3aには前記プリント基板側へ向けて延びる駆動突起20が取着されており、この駆動突起20が該プリント基板上の図示せぬスイッチ部と係合しているため、シャフト21を回動軸として操作レバー3を傾倒操作することにより、該スイッチ部を駆動突起20にて駆動できるようになっている。
【0030】
弾性付勢手段15は駆動体16とコイルばね17および回転部材18からなり、コイルばね17に付勢される駆動体16の先端に回転部材18が取り付けられて、この回転部材18がホルダ9内の図示せぬカム部に弾接している。そして、シャフト21を回動軸として操作レバー3が傾倒操作されると、この弾性付勢手段15が連動するため、回転部材18がホルダ9の前記カム部に沿って移動するようになっている。
【0031】
ホルダ9は合成樹脂製であって、操作レバー3の基部3aが挿入される開口部9aを有し、この開口部9aの奥に回転部材18が摺接する前記カム部が設けられている。開口部9aを介して対向しているホルダ9の一対の側板には、シャフト21が挿通される軸受孔9cが形成されている。ホルダ9には一対の支軸9bが突設されており、これら支軸9bを第1および第2のケース1,2の軸受部1a,2aに嵌入させることによって、ホルダ9が両ケース1,2に軸支されるようになっている。ただし、支軸9bの軸線方向とシャフト21の軸線方向は互いに略直交する向きに設定されている。これにより、操作レバー3が両ケース1,2に対し、支軸9bを回動軸としてホルダ9と一体的に第1の平面に沿って傾倒可能となり、かつ操作レバー3が両ケース1,2およびホルダ9に対し、シャフト21を回動軸として第1の平面と略直交する第2の平面に沿って傾倒可能となる。
【0032】
ホルダ9の開口部9a側と逆側の端部には弾性駆動手段11が保持されている。この弾性駆動手段11は駆動体12とコイルばね13と回転部材14とからなり、コイルばね13に付勢される駆動体12の先端に回転部材14が取り付けられて、この回転部材14が第1のケース1内のカム部1bに弾接している。そして、一対の支軸9bを回動軸として操作レバー3が傾倒操作されると、ホルダ9および弾性駆動手段11が連動するため、回転部材14がカム部1bに沿って移動するようになっている。
【0033】
また、ホルダ9には可動部材10が若干の揺動を許容された状態で取り付けられている。この可動部材10は合成樹脂製であり、その一側部にばね係止部10aが設けられている。ばね係止部10aには捩じりコイルばね19の一端部が係止され、捩じりコイルばね19の他端部はホルダ9に係止されているため、この捩じりコイルばね19の弾性によって可動部材10はホルダ9に揺動可能に支持された状態となっている。また、可動部材10には、キャンセル突起30の回転軌跡側を頂部とする山形状のカム面を有するカム部10bが形成されており、このカム部10bに中間支持部材4の開口4eを貫通する第1のレバー部材5のカム係合部5cが摺接するようになっている。また、可動部材10には、第2のレバー部材6の切欠き6c内に配置されるレバー係合部10cが立設されている。このレバー係合部10cは、操作レバー3が一対の支軸9bを回動軸としてロック位置まで傾倒操作されたときに、図3に示すように第2のレバー部材6の作動腕部6eと当接する位置まで移動し、キャンセル動作時には作動腕部6eによって復帰方向へ押し戻されるようになっている。なお、それら一対の作動腕部6eとレバー係合部10cとの間隔を同じ距離に設定すると、キャンセル動作に要する操作レバー3の回転角度は傾倒方向に関わりなく同じ角度になるので、操作レバー3のキャンセル動作を安定して行うことができる。
【0034】
次に、このように構成されたターンシグナルスイッチ装置の動作について説明する。まず、操作レバー3が中立位置にあるとき、弾性駆動手段11の先端の回転部材14は第1のケース1内のカム部1bの谷部に弾接しているため、操作レバー3およびホルダ9はそれぞれ中立位置に保持されている。このとき、第1のレバー部材5のカム係合部5cの頂部は可動部材10のカム部10bの頂部に当接して位置規制されているため、図2に示すように、第1のレバー部材5は第1の弾性部材7の付勢力に抗して外方への突出量が抑えられており、それゆえ当接部5bは自動車のハンドルに連動して回転するキャンセル突起30の回転軌跡外に位置している。
【0035】
中立位置にある操作レバー3およびホルダ9が一対の支軸9bを回動軸として左右いずれかの方向指示位置へ傾倒操作されると、弾性駆動手段11の先端の回転部材14が第1のケース1内のカム部1bのカム面上を摺動してクリック感を生起してからロック部にて保持されるため、操作レバー3およびホルダ9がそれぞれロック位置に保持された状態となる。また、ホルダ9に連動して可動部材10が所定角度回転するため、カム部10bの頂部が第1のレバー部材5のカム係合部5cから外れてキャンセル突起30側に進出し、カム部10bの頂部がキャンセル突起30側に当接する状態となる。この状態から、操作レバー3の傾倒方向にハンドルを回転すると、図3に示すように、第1のレバー部材5が第1の弾性部材7の付勢力により長孔5aに沿って外方へ移動して、当接部5bがキャンセル突起30の回転軌跡内へ進出するようになる。
【0036】
この状態でハンドルが操作レバー3の傾倒方向と逆向きに回転操作されると、図3の矢印の向き(時計回り方向)にキャンセル突起30が当接部5bに当接して回動するため、第1および第2のレバー部材5,6は図示時計回りに回転する。すなわち、第1のレバー部材5がキャンセル突起30に駆動されて第1の軸部4aを中心に図示時計回りに回転するため、第1のレバー部材5が連結ピン6dを駆動して第2のレバー部材6が第2の軸部4bを中心に図示時計回りに回転して、作動腕部6eが可動部材10のレバー係合部10cを図示上方へ押し上げる。この押圧力は可動部材10からホルダ9へ伝達されるため、弾性駆動手段11の先端の回転部材14がカム部1bのロック部から外れて谷部へ押し戻される。その結果、操作レバー3およびホルダ9がそれぞれ中立位置へ自動復帰すると共に、第1および第2のレバー部材5,6がそれぞれ図2に示す位置まで押し戻される。
【0037】
また、図3の状態で、操作レバー5に自動復帰を阻止する何らかの力が作用した場合、例えば操作レバー5を手で押えたまま、その傾倒方向と逆向きにハンドルが回転操作された場合には、第2のレバー部材6の作動腕部6eがコイルばね19を押し撓めながらレバー係合部10cを移動させて、可動部材10がホルダ9に対し若干揺動する(図4参照)。それゆえ、第1および第2のレバー部材5,6をレバー係合部10cに妨げられずに回転させることができる。
【0038】
一方、中立位置にある操作レバー3がシャフト21を回動軸として傾倒操作されると、操作レバー3の基部3aがホルダ9に対して同方向へ回転するため、弾性付勢手段15の先端の回転部材18がホルダ9内の図示せぬカム部を摺動する。その結果、一方向へ傾倒操作されたときにはクリック感を生起してビーム切換え動作が行われ、逆方向へ傾倒操作されたときにはパッシング動作が行われるようになっている。
【0039】
以上説明したように本実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置は、第1のレバー部材5と第2のレバー部材6とが、第2のレバー部材6のキャンセル突起30の回転軌跡側の端部に回転軌跡内に向かって突出するせり出し部6gに連結ピン6dで連結されており、第2のレバー部材6の回動中心(第2の軸部4b)に対するこの連結ピン6dの回転半径が大きくなっているため、ハンドルのリターン動作に連動してキャンセル突起30が第1のレバー部材5を回転駆動したときに、連結ピン6dを介して第1のレバー部材5に駆動される第2のレバー部材6が大きく回転するようになっている。それゆえ、キャンセル動作時に可動部材10のレバー係合部10cを第2のレバー部材6によって大きく移動させることができ、高温環境下で合成樹脂製の部品が軟化したり膨張した場合でも、キャンセル動作時にホルダ9をロック位置から確実に離脱させることができるため、傾倒操作後の操作レバー3を中立位置へ確実に自動復帰させることができる。
【0040】
また、本実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置は、第2のレバー部材6の回転平面に対して略直交して延びる連結ピン6dをせり出し部6gに突設し、第1のレバー部材5に設けた長孔5aに連結ピン6dを挿通することによって、第1および第2のレバー部材5,6が連結されている構成となっているため、第1および第2のレバー部材5,6の回転動作を確実に連動させることが可能な簡素な構造を実現できる。また、ホルダ9が回転されるときレバー係合部10cと係合して回動される作動部(一対の作動腕部6e)を第2のレバー部材6に設け、第1のレバー部材5にカム係合部5cを設け、ホルダ9にはカム係合部5cに当接するカム部10bを設けると共に、カム部10bがカム係合部5cに対してキャンセル突起30の回転軌跡側に配置させる構成となっているため、操作レバー3のキャンセル動作を確実に行うことができる。さらに、作動部を一対の作動腕部6eとし、これら一対の作動腕部6e間にレバー係合部10cを配置させると共に、レバー係合部10cと各作動腕部6eのそれぞれとの間隔を同じ距離に設定したので、操作レバー3のキャンセル動作に要する回転角度が傾倒方向に関わらなく同じ角度になり、よって操作レバー3のキャンセル動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】図1のターンシグナルスイッチ装置の操作レバーが中立位置にあるときのキャンセル機構を示す説明図である。
【図3】図2のキャンセル機構のレバー部材がキャンセル突起に駆動される直前の状態を示す説明図である。
【図4】図2の操作レバーの自動復帰が阻害されているときに該レバー部材がキャンセル突起に駆動された場合の動作を示す説明図である。
【図5】従来例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図である。
【図6】図5のターンシグナルスイッチ装置に備えられるキャンセル機構の底面図である。
【図7】図6のキャンセル機構の動作説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 第1のケース(ハウジング)
1b カム部
2 第2のケース(ハウジング)
3 操作レバー
3a 基部
4 中間支持部材(ハウジング)
4a 第1の軸部
4b 第2の軸部
5 第1のレバー部材
5a 長孔
5b 当接部
5c カム係合部
6 第2のレバー部材
6a 取付孔
6d 連結ピン
6e 作動腕部
6g せり出し部
7 第1の弾性部材
8 第2の弾性部材
9 ホルダ
9b 支軸
10 可動部材
10b カム部
10c レバー係合部
11 弾性駆動手段
30 キャンセル突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム面が設けられたハウジングと、レバー係合部が設けられて前記ハウジングに回動可能に支持されたホルダと、該ホルダに設けられて前記カム面と協働して前記ホルダを中立位置およびロック位置に保持可能な弾性駆動手段と、前記ホルダに基部が保持されて前記ハウジングの外方で傾倒操作される操作レバーと、前記ハウジングに回動可能に支持されていると共に、ステアリングホイールに連動して回転するキャンセル突起の回転軌跡に対して進出後退するスライド移動が可能な第1のレバー部材と、この第1のレバー部材を前記回転軌跡内へ向けて付勢するように前記ハウジングに設けられた弾性部材と、前記ハウジングに回動可能に支持されて前記レバー係合部と係脱可能であると共に、相互の回転動作が連動するように前記第1のレバー部材に連結された第2のレバー部材とを備えたターンシグナルスイッチ装置であって、
前記第2のレバー部材の前記回転軌跡側の端部に該回転軌跡内へ向かって突出するせり出し部を設けると共に、このせり出し部に前記第1および第2のレバー部材の連結箇所を設けたことを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第2のレバー部材の回転平面に対して略直交して延びる連結ピンを前記せり出し部に突設し、前記第1のレバー部材に設けた長孔に前記連結ピンを挿通させることによって、これら第1および第2のレバー部材が連結されていることを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ホルダが回転されるとき前記レバー係合部と係合して回動される作動部を前記第2のレバー部材に設け、前記第1のレバー部材にカム係合部を設け、前記ホルダには前記カム係合部に当接するカム部を設けると共に、該カム部を前記レバー係合部に対して前記キャンセル突起の回転軌跡側に配置させたことを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−143376(P2009−143376A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322349(P2007−322349)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】