説明

ダイアフラムポンプ

【課題】 高圧の吐出圧を得ることと、差圧によるダイアフラムの負荷を軽減することができるダイアフラムポンプの提供にある。
【解決手段】 ハウジング12内に区画形成されるポンプ室17と、前記ポンプ室17を主に密閉する第1のダイアフラム16と、前記第1のダイアフラム16を隔てて前記ハウジング12内に区画形成される調圧室30と、前記調圧室30を主に密閉する第2のダイアフラム27と、前記第1のダイアフラム16及び前記第2のダイアフラム27を変形させる駆動機構と、前記ポンプ室17から吐出される吐出流体の一部を前記調圧室30を導入する導入通路31を備え、前記導入通路31の途中に調圧室30の圧力を吸入圧と吐出圧との中間圧力に調整する圧力調整弁32が備えられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング内に複数のダイアフラムを備えるダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ダイアフラムポンプは、ハウジング内にポンプ室を区画形成するダイアフラムと、ダイアフラムを変形させてポンプ室の容積を変更する駆動機構を有しており、ポンプ室の容積の変更により流体の吸入と吐出を行うポンプとして広く知られている。
駆動機構が機械式であるダイアフラムポンプ(メカニカル式ダイアフラムポンプ)は、通常、ポンプ室の圧力と大気圧との差圧が大きくなると、ダイアフラムが差圧により破損するおそれがあり、このため、メカニカル式ダイアフラムポンプにおける吐出圧の高圧化は困難とされていた。
【0003】
そこで、従来では、例えば、特許文献1に開示される技術により、メカニカル式ダイアフラムポンプにおける吐出圧の高圧化を図るようにしていた。
この技術では、複数のダイアフラムポンプを用意し、前段のダイアフラムポンプの吐出流体を別に設けた後段のダイアフラムポンプに吸入させるようにして、段階的に吐出流体の高圧化を図っており、最後段のダイアフラムポンプの吐出流体において所望の高圧を得るとしている。
また、この技術では、ダイアフラムに作用する差圧を抑制するため、各ダイアフラムポンプを収容する密封空室が設けられ、加圧の対象となる流体を密封空室に滞留させ、滞留されている流体を吸入するようにしている。
【0004】
また、別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示されるダイアフラムポンプが知られている。
このダイアフラムポンプは、複数のダイアフラムを備えたダイアフラムポンプであり、一方のダイアフラムによりハウジング内に圧力室(ポンプ室)が区画形成され、両ダイアフラム間に圧力調整室(調圧室)が形成されている。
また、圧力室と圧力調整室を連通する通路が設けられ、通路の途中に逆止弁が設けられている。
この技術によれば、圧力調整室の圧力を圧力室に対して負圧又は正圧のどちらかに常に調整することにより、ポンプ作動時におけるダイアフラムの反転の防止等を図るとしている。
【特許文献1】特開昭53−41803号公報
【特許文献2】特開2000−136775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、ダイアフラムの背圧は前段のダイアフラムポンプの吐出圧力であるため、夫々のダイアフラムポンプにおいて、吐出圧と吸入圧(前段のダイアフラムポンプの吐出圧)との差圧が大きい場合には、ダイアフラムが差圧により損傷するおそれが依然として残る。
従って、この種のダイヤフラムポンプでは、少なくとも、吸入圧(前段のダイアフラムポンプの吐出圧)に応じた吐出圧を設定するといった制約を受ける問題がある。
また、前段のダイアフラムポンプの吐出流体が後段のダイアフラムに吸入されることになるから、前段のダイアフラムポンプの作動のタイミングによっては、後段のダイアフラムポンプの吐出圧が不足する場合が生じる。
従って、ダイアフラムポンプとして必要な性能を十分発揮できないおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2のように、ハウジングに複数のダイアフラムを設け、圧力調整室の圧力を圧力室に対して正圧となるように調整する場合、圧力室における吐出圧の流体を圧力調整室へ導入することになるが、圧力調整室に導入された吐出圧の流体は逆止弁が設けられていることにより、圧力調整室から導出されることはない。
このため、圧力調整室内の圧力は常に吐出圧に保持されるので、ダイヤフラムの変形に対する抵抗となり、例えば、圧縮室へ流体を吸入する妨げとなるおそれがある。
また、この場合、吐出時においては圧力調整室と圧力室との差圧がなく、ダイアフラムに対する差圧は生じないが、流体の吸入の際には、圧力調整室の圧力と吸入圧となる圧力室との間に著しい差圧が生じる
さらに、圧力調整室の圧力と吸入圧との著しい差圧は、吸入時において圧縮室側のダイアフラムに対する負荷を大きくするおそれがある。
なお、特許文献2には、圧力調整室内の圧力を圧力室に対して常に負圧とする例も記載されているが、この場合は逆止弁により圧力室から圧力調整室への流体導入が行われず、圧力調整室内の圧力は結局吸入圧程度になるものであるから、特許文献1と同じく、吐出圧と吸入圧との差圧が大きい場合には、ダイアフラムが差圧により損傷するおそれが依然として残る。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、高圧の吐出圧を得ることと、差圧によるダイアフラムの負荷を軽減することができるダイアフラムポンプの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジング内に区画形成されるポンプ室と、前記ポンプ室を主に密閉する第1のダイアフラムと、前記第1のダイアフラムを隔てて前記ハウジング内に区画形成される調圧室と、前記調圧室を主に密閉する第2のダイアフラムと、前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムを変形させる駆動機構と、前記ポンプ室から吐出される吐出流体の一部を前記調圧室に導入する導入通路を備え、前記導入通路の途中に前記調圧室の圧力を吸入圧と吐出圧との中間圧力に調整する圧力調整弁が備えられたことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ダイアフラムがポンプ室の容積を減少するように変形すると、ポンプ室における吐出流体の一部が導入通路及び圧力調整弁を通じて調圧室へ導入される。
圧力調整弁は、調圧室の圧力を吸入圧と吐出圧との中間圧力となるように吐出流体の圧力を調整する。
これにより、ポンプ室と調圧室と圧力との関係から、第1のダイアフラム及び第2のダイヤフラムにおける差圧は抑制される。
このように、単独のダイアフラムポンプを以って、高圧の吐出圧を得ることができるとともに、各ダイアフラムに対する負荷を軽減することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のダイアフラムポンプにおいて、前記ポンプ室の吸入口に連通路が接続され、前記連通路の上流端は別設した第2のダイアフラムポンプの吐出口と接続され、前記連通路から分岐される分岐通路が前記圧力調整弁に接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ダイアフラムポンプは、連通路を通じて第2のダイアフラムポンプの吐出流体を吸引することにより、最終的に得られる吐出流体の圧力をさらに高圧化する。
そして、圧力調整弁による圧力調整の際、導入通路における吐出流体の一部が圧力調整弁から分岐通路へ逃がされる。
従って、圧力調整に係る流体を閉系の通路に留めておくことができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のダイアフラムポンプにおいて、前記中間圧力は、前記圧力調整弁によりポンプの吸入行程及び吐出行程において一定の圧力に設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、調圧室の圧力は、吸入又は吐出を通じて圧力調整弁により一定の中間圧力に設定され、各ダイアフラムに対する差圧は一定の範囲内で抑制される。
従って、各ダイアフラムに対する差圧が一定の範囲内で抑制されることにより、各ダイアフラムに対する負荷は差圧に対応して軽減される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、高圧の吐出圧を得ることと、差圧によるダイアフラムの負荷を軽減又は防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るダイアフラムポンプを図1に基づいて説明する。
図1は第1の実施形態に係るダイアフラムポンプの縦断面を示す図である。
ダイアフラムポンプ(以下、単に「ポンプ」と表記する)11は、図1に示すように、複数のハウジング体13〜15から構成されるハウジング12と、ハウジング12に支持された第1のダイアフラム16及び第2のダイアフラム27と、両ダイアフラム16、27を変動させる駆動機構と、圧力調整弁32を伴う導入通路31を主な要素として備えている。
ポンプ11は、駆動機構の作動に基づく第1のダイアフラム16及び第2のダイアフラム27の変形により、ポンプ作用を奏する機能を有している。
【0016】
この実施形態におけるハウジング12は、第1ハウジング体13と、第1ハウジング体13と接合された第2ハウジング体14と、第1ハウジング体13及び第2ハウジング体14を覆う第3ハウジング体15から構成されている。
第3ハウジング体15は、側壁部15aと面壁部15bを含む断面略コ字状の形態を呈しており、面壁部15bは第1ハウジング体13に接合されている。
従って、第1ハウジング体13は、第2ハウジング体14と第3ハウジング体15の面壁部15bの間に位置することになる。
第1ハウジング体13と第2ハウジング体14の間には、第1のダイアフラム16が介装されてている。
第1のダイアフラム16は、金属材料により形成された円形の薄板であり、適度な弾性と可撓性を有している。
第1のダイアフラム16の中央には通孔16aが設けられ、通孔16aには駆動機構の一部を構成するピストン28が装着される。
【0017】
第1ハウジング体13には、緩勾配の傾斜面を有する凹部13aが形成されており、凹部13aの開口側を第1のダイアフラム16が覆うことにより、皿を伏せたような空間部が形成され、この空間部がポンプ室17を実質的に構成する。
換言すると、第1のダイアフラム16は、ハウジング内に区画形成されたポンプ室17を主に密閉する要素である。
また、第1ハウジング体13は、ポンプ室17に通じる吸入ポート18及び吐出ポート19を備えている。
【0018】
第3ハウジング体15の面壁部15bには、吸入ポート18と連通する吸入通路20が形成されており、吸入ポート18と吸入通路20の間には、リード式の吸入弁21が備えられている。
吸入弁21の固定端は、第1ハウジング体13及び第3ハウジング体15の挟持により支持され、流体が吸入通路20から吸入ポート18へ流れる吸入時にのみ開弁する逆止弁となっている。
また、面壁部15bには、吐出ポート19と連通する吐出通路22が形成されており、吐出ポート19と吐出通路22の間には、リード式の吐出弁23が備えられている。
吐出弁23の固定端は、第1ハウジング体13及び第3ハウジング体15の挟持により支持され、流体が吐出ポート19から吐出通路22へ流れる吐出時にのみ開弁する逆止弁である。
なお、この実施形態では、吸入通路20の吸入口20aは図示しない低圧の外部配管と接続されており、吐出通路22の吐出口22aは図示しない高圧の外部配管と接続されている。
【0019】
第2ハウジング体14には、第2ハウジング体14における第1ハウジング体14側の端面から所定の深さを有する凹部25が形成されている。
凹部25の横断面は円形であり、凹部25の径は第1ハウジング体14の凹部13aの第1のダイアフラム16側の径にほぼ対応する。
また、第2ハウジング体14の中央には、シリンダ孔26が形成されている。
シリンダ孔26は凹部25と連通し、第1のダイアフラム16に対して直角となる方向であり、さらに、シリンダ孔26と凹部25の軸芯は互いに一致している。
凹部25のシリンダ孔26側には、凹部25の径とほぼ対応する径を有する第2のダイアフラム27が備えられている。
【0020】
第2のダイアフラム27は、第1のダイアフラム16と同様に金属材料により形成された円形の薄板であり、適度な弾性と可撓性を有している。
また、第2のダイアフラム27には中央付近に通孔27aが形成されており、この通孔27aには駆動機構の一部を構成するピストン28が装着されている。
そして、環状の押え板29が第2のダイアフラム27の外周付近を第2ハウジング体14へ押し付けており、押え板29は第2のダイアフラム14の浮き上がりを防止している。
第2ハウジング体14には、ピストン28を含む第2のダイアフラム27が凹部25におけるシリンダ孔26側を覆うことにより、密閉された空間部が形成され、この空間部が調圧室30を構成する。
つまり、第2のダイアフラム27は、第1のダイアフラム16を隔ててハウジング内12に区画形成される調圧室30を主に密閉する要素である。
【0021】
調圧室30は、圧力調整弁32を途中に備える導入通路31の一端と接続されており、導入通路31の他端は第3ハウジング体15における吐出通路22に接続されている。
圧力調整弁32は、吐出通路22から導入される吐出流体の圧力を調整する弁であり、具体的には、吐出流体の圧力を所定の圧力に減圧することができる減圧弁となっている。
従って、ポンプ室17から吐出された吐出流体の一部を導入通路31を通じて調圧室30へ導入することができ、圧力調整弁32により減圧された流体を調圧室30へ導入することができる。
調圧室30は、調圧室30内の圧力を調整することにより、各ダイアフラム16、27に作用する差圧を抑制するために設けられている。
つまり、各ダイアフラム16、27に対する差圧を調整するための調圧室30である。
特に、第1のダイアフラム16に対する差圧を小さくしたり、無くしたりすることにより、差圧による第1のダイアフラム16に対する負荷を軽減又は防止する意図がある。
【0022】
次に、駆動機構について説明する。
駆動機構は、シリンダ孔26内を摺動するピストン28と、ピストン28に備えられるロッド33と、ロッド33を介してピストン28を往復動させる駆動源34を含む。
この実施形態におけるピストン28は、シリンダ孔26に収容されるシリンダ部28aと、凹部25に収容されるフランジ部28bを含む構成である。
この実施形態では、ピストン部28aはシリンダ孔26に案内されて摺動し、ピストン28の軸線方向へ往復動し、ピストン28は第1ハウジング体13へ接近又は離間することができる。
また、ピストン部28aの外周面には切込溝28dが形成されており、第2のダイアフラム27が切込溝28dに装着されている。
【0023】
一方、フランジ部28bは調圧室30の径にほぼ対応する径を有しており、第1のダイアフラム16を臨む面は、凹部13aにおける緩勾配の傾斜面に対応する傾斜面となっている。
さらに、ピストン部28aには別の切込溝28cが形成されており、第1のダイアフラム16が切込溝28cに装着されており、このため、ピストン部28aの端部(図1におけるピストン28の上端)はポンプ室17を臨んでいる。
ピストン28を往復動させる駆動源34は具体的には電動モータとしており、ピストン28のロッド33は、電動モータの回転運動をピストン28の直線運動に変換する変換機構を介して電動モータに接続されている。
【0024】
次に、この実施形態に係るポンプ11の動作について説明する。
駆動源34の駆動によりピストン28が往復動すると、ピストン28に固定されている第1のダイアフラム16と第2のダイアフラム27は変形する。
第1のダイアフラム16が変形することにより、ポンプ室17の容積が変更される。
具体的には、例えば、ピストン28が第1ハウジング体13に接近した状態から離間する場合、図2(a)に示すように、第1のダイアフラム13は、ポンプ室17の容積を増大させる。
ポンプ室17の容積の増大により吸入弁21が開弁し、低圧の流体が吸入通路20及び吸入ポート18を通じて吸入される。
このとき、第2のダイアフラム27の下面の大部分は、ピストン28の変位に伴い第2ハウジング体14に当接する。
ここでは、第2のダイアフラム27の変形後の調圧室30の容積は、第1のダイアフラム16の変形と相俟って変形前の容積と比べほぼ変動しないとする。
【0025】
一方、ピストン28が第1ハウジング体13に離間した状態から接近する場合、図2(b)に示すように、第1のダイアフラム16はポンプ室17の容積を減少させる。
ポンプ室17の容積の減少によりポンプ室17が所定の圧力に達すると、吐出弁23が開弁して高圧の流体が吐出ポート19及び吐出通路22を通じて吐出される。
このとき、第2のダイアフラム27はピストン28の変位に伴い、大部分が第1ハウジング体13から離れる。
【0026】
ところで、ポンプ室17から吐出された高圧の吐出流体の一部は導入通路31を通じて調圧室30へ向かう。
導入通路31を通る高圧の吐出流体は圧力調整弁32により減圧される。
ここでは、調圧室30の圧力が、吸入圧Psと吐出圧Pdのほぼ中間の圧力Pm(以下、単に「中間圧Pm」と表記する)となるように、吐出流体の圧力を減圧する。
このため、ポンプ11の吸入行程においては、第1のダイアフラム16に働く差圧は、中間圧Pmと吸入圧Psとの差に相当する。
一方、吐出行程においては、第1のダイアフラム16に働く差圧は、吐出圧Pdと中間圧Pmとの差に相当する。
【0027】
従って、吐出圧と大気圧との差圧が働く従来のダイアフラムと比較して、調圧室30が中間圧Pmに保たれることにより、第1のダイアフラム16に対する差圧が抑制され、差圧による第1のダイアフラム16の負荷は軽減される。
なお、中間圧Pmはポンプ11の吸入行程及び吐出行程において一定に保たれることから、第2のダイアフラム27に働く差圧は、常に中間圧Pmと大気圧Paとの差に相当する。
このため、調圧室30に吐出圧の吐出流体が直接導入され、吐出圧Pdと大気圧Paとの差圧が第2のダイアフラム27に働く場合と比較して、調圧室30が中間圧Pmに保たれることにより、第2のダイアフラム27に対する差圧が抑制される。
【0028】
この実施形態に係るポンプ11によれば以下の効果を奏する。
(1)圧力調整弁32により調圧室30へ導入される吐出流体の圧力は、中間圧力Pmに調整されるから、調圧室30の圧力が各ダイアフラム16、27に対する差圧を抑制する。従って、単独のポンプ11を以って、高圧の吐出圧を得ることができるとともに、各ダイアフラム16、27に対する負荷を軽減することができる。
(2)導入通路31に備えた圧力調整弁32の設定により、調圧室30の圧力を任意の圧力に変更することが可能となり、例えば、ポンプ11の運転条件等の変更に対応して調圧室30内の圧力を変更することができる。
(3)ポンプ室17と調圧室30と圧力との関係から、少なくとも、第1のダイアフラム16における差圧を抑制したり、無くしたりすることができる。また、圧力調整弁32による調圧室30の圧力の設定の仕方によっては、ダイアフラム17による流体圧縮量を増大させることにより、単独のダイアフラムポンプを以って、高圧の吐出圧を得ることができるとともに、各ダイアフラム16、27に対する負荷を軽減又は防止することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図3に基づき説明する。
第2の実施形態は、図3に示すように、第1の実施形態のポンプ11が別のポンプ41と接続された例であり、この実施形態では2つのポンプ11、41を接続して用いることにより、最終的に高圧の吐出流体を得ようとする意図がある。
従って、第1の実施形態と共通又は類似する要素については符号を共通して用い、第1の実施形態におけるポンプ11の説明を援用する。
【0030】
図3に示すように、ポンプ11と別のポンプ41が設けられており、ポンプ41はポンプ11と同様に第1〜第3ハウジング体43〜45から構成されるハウジング42を備えている。
第1ハウジング体43と第2ハウジング体44の間には、ダイアフラム46が介装されている。
ここでは、説明の便宜上、このポンプ41を「低圧側ポンプ41」と表記し、ポンプ11を「高圧側ポンプ11」と表記する。
低圧側ポンプ41には、高圧側ポンプ11と同様に、圧力室47、吸入ポート48、吸入弁49、吸入通路50、吐出ポート51、吐出弁52、吐出通路53を備えている。
また、ダイアフラム46を変動させるピストン54と、ロッド55を介して接続される駆動源56を有している。
低圧側ポンプ41は、調圧室30を備えない点で高圧側ポンプ11と異なることから、ダイアフラム46は吐出圧とピストン28側の大気圧との差圧を受け、従来のポンプと機能上の差異は殆どない。
【0031】
低圧側ポンプ41の吸入通路50の吸入口50aは低圧の外部配管57と接続されている。
一方、低圧側ポンプ41の吐出通路53の吐出口53aは、連通路58を介して高圧側ポンプ11の吸入口20aと接続されている。
連通路58は低圧側ポンプ41からの吐出流体を高圧側ポンプ11への吸入流体として供給する流路である。
そして、連通路58と圧力調整弁32を接続する分岐通路59が備えられている。
分岐通路59は、圧力調整弁32が導入通路31からの吐出流体の圧力調整する際の余分な圧力を逃がす機能を有する。
【0032】
この実施形態によれば、低圧側ポンプ41と高圧側ポンプ11が接続され、低圧側ポンプ41の吐出流体が高圧側ポンプ11の吸入流体として吸入される。
低圧側ポンプ41の吐出流体は高圧側ポンプ11に吸入され、高圧側ポンプ11のポンプ作用によりさらに高圧の吐出流体が吐出される。
一方、導入通路31を通る一部の吐出流体は、圧力調整弁32により吸入圧と吐出圧の中間の圧力Pm(以後「中間圧Pm」と表記する)に圧力調整されて、調圧室30へ導入される。
圧力調整の際に生じる余分な圧力は、導入通路31の吐出流体を分岐通路59へ逃がすことにより解消される。
従って、媒体としての流体は、閉系の通路内に留まることになり、外部へ漏洩することはない。
そして、調圧室30が中間圧Pmに保たれることにより、第1の実施形態と同様に、第1のダイアフラム16及び第2のダイアフラム27に対する差圧を抑制する。
【0033】
この実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)高圧側ポンプ11に低圧側ポンプ41が接続され、低圧側ポンプ41の吐出流体を高圧側ポンプ11が吸入して吐出するから、より高圧の吐出流体を得ることができる。また、調圧室30が中間圧Pmに保たれることにより、高圧側ポンプにおける各ダイアフラム16、27に対する差圧を抑制することができる。
(2)圧力調整弁32による圧力調整の際、導入通路31における吐出流体の一部が圧力調整弁32から分岐通路59へ逃がされることから、圧力調整に係る流体を閉系の通路に留めておくことができ、流体が外部へ漏洩することがない。
【0034】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 上記の第1、第2の実施形態では、第1のダイアフラムと第2のダイアフラムを備えたダイアフラムポンプを例示としたが、ダイアフラムの数は複数であればよい。例えば、ダイアフラムを3つとしてもよく、この場合、複数の調圧室が備えられることになり、調圧室を複数設けることの有利性が生じる。
○ 第1、第2の実施形態では、導入通路を吐出通路から分岐するように設けたが、例えば、導入通路をポンプ室と接続するようにしてもよい。
○ 第2の実施形態では、ダイアフラムを1つ備えたダイアフラムポンプを低圧側ダイアフラムポンプとしたが、例えば、高圧側ダイアフラムポンプと同じ構造のダイアフラムポンプを低圧側ダイアフラムポンプに適用してもよく、低圧側ダイアフラムポンプはその種類は特に限定されない。
○ 第2の実施形態では、圧力調整弁に対して分岐通路を接続するとしたが、例えば、連通路からの分岐通路を調圧室に接続し、分岐通路に別の圧力調整弁を設けてもよい。
○ 第2の実施形態では、低圧側ダイアフラムポンプと高圧側ダイアフラムポンプが互いに接続される2連装の構成としたが、例えば、高圧側ダイアフラムにさらに別のダイアフラムポンプを接続するなど、ダイアフラムポンプを3連装としてさらに高圧の吐出圧を得るようにしてもよい。
○ 上記の実施形態における流体は気体又は液体であればよく、流体の種類は特に問われない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施形態に係るポンプの概要を示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るポンプの動作を説明する概略断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る圧縮機の概要を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11 ダイアフラムポンプ
12 ハウジング
16 第1のダイアフラム
17 ポンプ室
18 吸入ポート
19 吐出ポート
20 吸入通路
21 吸入弁
22 吐出通路
27 第2のダイアフラム
28 ピストン
30 調圧室
31 導入通路
32 圧力調整弁
41 ダイアフラムポンプ(低圧側)
58 連通路
59 分岐通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に区画形成されるポンプ室と、
前記ポンプ室を主に密閉する第1のダイアフラムと、
前記第1のダイアフラムを隔てて前記ハウジング内に区画形成される調圧室と、
前記調圧室を主に密閉する第2のダイアフラムと、
前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムを変形させる駆動機構と、
前記ポンプ室から吐出される吐出流体の一部を前記調圧室に導入する導入通路を備え、
前記導入通路の途中に前記調圧室の圧力を吸入圧と吐出圧との中間圧力に調整する圧力調整弁が備えられたことを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ室の吸入口に連通路が接続され、
前記連通路の上流端は別設した第2のダイアフラムポンプの吐出口と接続され、
前記連通路から分岐される分岐通路が前記圧力調整弁に接続されていることを特徴とする請求項1記載のダイアフラムポンプ。
【請求項3】
前記中間圧力は、前記圧力調整弁によりポンプの吸入行程及び吐出行程において一定の圧力に設定されることを特徴とする請求項1又は2記載のダイアフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−242007(P2006−242007A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55239(P2005−55239)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】