説明

ダイオードブリッジ欠損検出回路

【課題】従来の電源回路では、ダイオードブリッジの欠損を検出することができず、ダイオードブリッジの欠損が発生した場合に異常な直流電圧を機器に供給することになり、接続された機器に不具合が生じる可能性がある。
【解決手段】本発明によるダイオードブリッジ欠損検出回路には、ダイオードブリッジ20の出力端子24,25には、検出用ダイオードD1と、第1抵抗素子R1と、第1フォトカプラQ1とが設けられている。欠損判定部60は、前記フォトカプラQ1の受光素子51の開成及び閉成に応じた前記信号出力端子55からの状態検出信号55aに基づいて前記ダイオードブリッジ20の欠損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードブリッジ欠損検出回路に関し、特に、ダイオードブリッジの出力に、抵抗素子、ダイオード、フォトカプラにより構成される回路を付加することで、ダイオードブリッジの欠損を検出でき、電源回路に接続された機器をより確実に保護できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電圧を直流電圧に変換する電源回路として、例えば下記の特許文献1等に記載された回路が用いられている。図7は、従来のダイオードブリッジを用いた電源回路を示す回路図である。図において、交流電圧源10は、第1及び第2出力線11,12と、これら第1及び第2出力線11,12に設けられたヒューズ14とを有している。前記第1及び第2出力線11,12は、4つのダイオードからなるダイオードブリッジ20の入力端子21,22に接続されており、このダイオードブリッジ20の出力端子24,25には、複数の平滑コンデンサ30が設けられている。すなわち、交流電圧源10からの交流電圧がダイオードブリッジ20により全波整流されて、この全波整流された電圧が平滑コンデンサ30により平滑されることで、前記交流電圧が直流電圧に変換される。
【0003】
【特許文献1】特開平9−322540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のダイオードブリッジを用いた電源回路では、ダイオードブリッジ20の欠損、すなわちダイオードブリッジ20に含まれるダイオードの故障を検出することができず、ダイオードブリッジ20の欠損が発生した場合に異常な直流電圧を機器に供給することになり、機器に不具合が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ダイオードブリッジの欠損を検出でき、電源回路に接続された機器をより確実に保護できるダイオードブリッジ欠損検出回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイオードブリッジ欠損検出回路は、交流電圧源からの交流電圧をダイオードブリッジにより全波整流するとともに、全波整流された電圧を平滑コンデンサにより平滑する電源回路に設けられ、前記ダイオードブリッジの欠損を検出するダイオードブリッジ欠損検出回路であって、前記ダイオードブリッジのプラス側出力端子と前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記プラス側出力端子から前記平滑コンデンサに向かう方向が順方向の検出用ダイオードと、前記プラス側出力端子と前記検出用ダイオードとの間に設けられた第1接続点と、前記ダイオードブリッジのマイナス側出力端子と前記平滑コンデンサとの間に設けられた第2接続点と、前記第1及び第2接続点の間に接続されたフォトカプラの発光素子と、前記第1及び第2接続点の間で前記発光素子と直列に接続された第1抵抗素子と、定電圧源、第2抵抗素子、及び前記フォトカプラの受光素子が互いに直列に接続された欠損状態出力部と、前記欠損状態出力部の信号出力端子に接続された欠損判定部とを備え、前記受光素子は、前記第1抵抗素子の両端電圧が予め設定された閾値を超えた際に電気的に開成又は閉成され、前記欠損判定部は、前記受光素子の開成及び閉成に応じた前記信号出力端子からの状態検出信号に基づいて前記ダイオードブリッジの欠損を検出する。
また、前記欠損判定部は、前記状態検出信号に基づいて前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態の時間をカウントするとともに、前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態の時間が所定時間継続した回数をカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出する。
また、前記交流電圧源は三相交流電源であり、前記欠損判定部は、前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態になった回数を前記状態検出信号に基づいてカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のダイオードブリッジ欠損検出回路によれば、ダイオードブリッジの出力に、抵抗素子、ダイオード、フォトカプラにより構成される回路を付加することで、ダイオードブリッジの欠損を検出でき、電源回路に接続された機器をより確実に保護できる。
また、前記欠損判定部は、前記状態検出信号に基づいて前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態の時間をカウントするとともに、前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態の時間が所定時間継続した回数をカウントし、カウントした前記回数が所定回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出するので、前記ダイオードブリッジの欠損発生をより確実に検出でき、電源回路に接続された機器をより確実に保護できる。
また、前記欠損判定部は、前記状態検出信号に基づいて前記両端電圧が前記閾値を超えていない状態になった回数をカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出するので、三相交流電源用の前記ダイオードブリッジにおいても欠損発生をより確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるダイオードブリッジ欠損検出回路を示す回路図である。なお、従来の回路(図7参照)と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。図において、交流電圧源10は、第1及び第2出力線11,12と、これら第1及び第2出力線11,12に設けられたヒューズ14とを有している。前記第1及び第2出力線11,12は、4つのダイオードからなるダイオードブリッジ20の入力端子21,22に接続されており、このダイオードブリッジ20のプラス側及びマイナス側出力端子24,25には、複数の平滑コンデンサ30が設けられている。すなわち、交流電圧源10からの交流電圧がダイオードブリッジ20により全波整流されて、この全波整流された電圧が平滑コンデンサ30により平滑されることで、前記交流電圧が直流電圧に変換される。
【0009】
前記ダイオードブリッジ20のプラス側出力端子24と前記平滑コンデンサ30との間には、前記プラス側出力端子24から前記平滑コンデンサ30に向かう方向が順方向の検出用ダイオードD1が設けられている。前記プラス側出力端子24と前記検出用ダイオードD1との間には第1接続点C1が設けられ、前記ダイオードブリッジ20のマイナス側出力端子25と前記平滑コンデンサ30との間には第2接続点C2が設けられている。
【0010】
前記第1及び第2接続点C1,C2の間にはフォトカプラQ1の発光素子41と第1抵抗素子R1とが互いに直列に接続されている。具体的には、前記第1接続点C1に前記第1抵抗素子R1の一端が接続され、前記第1抵抗素子R1の他端と前記第2接続点C2との間に前記発光素子41が接続されている。後述するが、これら発光素子41及び第1抵抗素子R1は、ダイオードブリッジ20のダイオードの開放故障を検出するための回路を素子である。
【0011】
前記フォトカプラQ1には、前記発光素子41の発光状態、すなわち前記発光素子41に順方向に電圧がかかるか否かに応じて電気的に開成及び閉成される受光素子51が設けられている。この受光素子51は、欠損状態出力部50の一部を構成している。すなわち、定電圧源53、第2抵抗素子R2、及び前記受光素子51が互いに直列に接続されることで欠損状態出力部50が構成されている。なお、受光素子51の出力端はグラウンド54に接続されている。
【0012】
前記第2抵抗素子R2と前記受光素子51との間には、信号出力端子55が設けられており、この信号出力端子55からは、前記受光素子51の開成及び閉成に応じた状態検出信号55aが出力される。前記信号出力端子55には、マイクロコンピュータ等によって構成される欠損判定部60が接続されており、この欠損判定部60は、前記状態検出信号55aに基づいて前記ダイオードブリッジ20の欠損を検出する。
【0013】
次に、図2は図1のダイオードブリッジ20が正常なときに回路に流れる電流を示す説明図であり、図3は図2の回路におけるタイミングチャートである。なお、図2は、電流A1,B1を図1に付加した図であり、複雑になることを回避するために図1に付した符号は一部省略している。図2において、電流A1は、前記第1出力線11の電位が前記第2出力線12の電位よりも高いときに流れる電流を示しており、電流B1は、前記第2出力線12の電位が前記第1出力線11の電位よりも高いときに流れる電流を示している。すなわち、図3における電源入力70の振幅がプラスのときに電流A1が流れ、電源入力70の振幅がマイナスであるときに電流B1が流れる。このとき、第1抵抗素子R1の両端電圧71は、図3に示すように電源入力70が全波整流された波形となる。
【0014】
前記受光素子51は、前記両端電圧71が予め設定された閾値以上となったときに閉成(ON)されて、前記両端電圧71が閾値未満のときに開成(OFF)される。状態検出信号55aは、前記受光素子51が開成された場合にHiレベル(定電圧源53の電圧、すなわち5V)となり、前記受光素子51が閉成された場合にLoレベル(0V)となる。
【0015】
図2のようにすべてのダイオードが正常な場合、前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態の時間(状態検出信号55aがHiレベルとなる時間)は、前記両端電圧71が前記閾値を超えている状態の時間(状態検出信号55aがLoレベルとなる時間)に比べて短い。
【0016】
次に、図4は、図3のダイオードブリッジ20に欠損が生じた際の電流を示す説明図であり、図5は、図4の回路におけるタイミングチャートである。図4では、電流B1が流れるダイオードブリッジ20のダイオードの一つが開放故障している。すなわち、図5に示すように、前記第1抵抗素子R1の前記両端電圧71は半端整流波形となる。このとき、前記第1受光素子51は、前記電流B1に相当する期間において開成(OFF)される。従って、前記電流B1に相当する期間においては、前記状態検出信号55aもHiレベルとなる。
【0017】
従って、図4のようにダイオードブリッジ20に欠損が生じた場合には、すべてのダイオードが正常な場合(図3の場合)に比べて、前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態の時間が長くなる。欠損判定部60は、周知のクロック信号と前記状態検出信号55aとを用いて、前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態の時間をカウントする。また、欠損判定部60は、前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態の時間が所定時間継続した回数をカウントし、カウントした前記回数が所定回数に達した場合に前記ダイオードブリッジ20に欠損が発生していることを検出する。
【0018】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2によるダイオードブリッジ欠損検出回路を示す回路図である。実施の形態1では単相交流電源に使用する回路を示したが、本発明は、図6に示すように三相交流電源に適用することもできる。なお、実施の形態1の構成と同一又は同等部分については同一の符号を用いて説明する。
交流電圧源10は、ダイオードブリッジ20に接続された第3出力線13を有する三相交流電源である。前記第1抵抗素子R1には、全波整流された三相交流電圧が印加される。すなわち、実施の形態1では、前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態が存在していたが(図3参照)、三相交流電源の場合は、ダイオードブリッジ20に欠損が生じていなければ、前記両端電圧71は前記閾値を常に超えた状態となる。欠損判定部60は、前記状態検出信号55aに基づいて前記両端電圧71が前記閾値を超えていない状態になった回数をカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジ20に欠損が発生していることを検出する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1によるダイオードブリッジ欠損検出回路を示す回路図である。
【図2】図1のダイオードブリッジが正常なときに回路に流れる電流を示す説明図である。
【図3】図2の回路におけるタイミングチャートである。
【図4】図3のダイオードブリッジに欠損が生じた際の電流を示す説明図である。
【図5】図4の回路におけるタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2によるダイオードブリッジ欠損検出回路を示す回路図である。
【図7】従来のダイオードブリッジを用いた電源回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0020】
10 交流電圧源
11,12 第1及び第2出力線
20 ダイオードブリッジ
21,22 入力端子
24 プラス側出力端子
25 マイナス側出力端子
30 平滑コンデンサ
41 発光素子
50 欠損状態出力部
51 受光素子
53 定電圧源
54 グラウンド
55 信号出力端子
55a 状態検出信号
60 欠損判定部
70 電源入力
71 両端電圧
C1,C2 第1及び第2接続点
D1 検出用ダイオード
Q1 フォトカプラ
R1,R2 第1及び第2抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧源(10)からの交流電圧をダイオードブリッジ(20)により全波整流するとともに、全波整流された電圧を平滑コンデンサ(30)により平滑する電源回路に設けられ、前記ダイオードブリッジ(20)の欠損を検出するダイオードブリッジ欠損検出回路であって、
前記ダイオードブリッジ(20)のプラス側出力端子(24)と前記平滑コンデンサ(30)との間に設けられ、前記プラス側出力端子(24)から前記平滑コンデンサ(30)に向かう方向が順方向の検出用ダイオード(D1)と、
前記プラス側出力端子(24)と前記検出用ダイオード(D1)との間に設けられた第1接続点(C1)と、
前記ダイオードブリッジ(20)のマイナス側出力端子(25)と前記平滑コンデンサ(30)との間に設けられた第2接続点(C2)と、
前記第1及び第2接続点(C1,C2)の間に接続されたフォトカプラ(Q1)の発光素子(41)と、
前記第1及び第2接続点(C1,C2)の間で前記発光素子(41)と直列に接続された第1抵抗素子(R1)と、
定電圧源(53)、第2抵抗素子(R2)、及び前記フォトカプラ(Q1)の受光素子(51)が互いに直列に接続された欠損状態出力部(50)と、
前記欠損状態出力部(50)の信号出力端子(55)に接続された欠損判定部(60)と
を備え、
前記受光素子(51)は、前記第1抵抗素子(R1)の両端電圧(71)が予め設定された閾値を超えた際に電気的に開成又は閉成され、
前記欠損判定部(60)は、前記受光素子(51)の開成及び閉成に応じた前記信号出力端子(55)からの状態検出信号(55a)に基づいて前記ダイオードブリッジ(20)の欠損を検出することを特徴とするダイオードブリッジ欠損検出回路。
【請求項2】
前記欠損判定部(60)は、前記状態検出信号(55a)に基づいて前記両端電圧(71)が前記閾値を超えていない状態の時間をカウントするとともに、前記両端電圧(71)が前記閾値を超えていない状態の時間が所定時間継続した回数をカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出することを特徴とする請求項1記載のダイオードブリッジ欠損検出回路。
【請求項3】
前記交流電圧源(10)は三相交流電源であり、
前記欠損判定部(60)は、前記両端電圧(71)が前記閾値を超えていない状態になった回数を前記状態検出信号(55a)に基づいてカウントし、カウントした前記回数が予め設定された回数に達した場合に前記ダイオードブリッジに欠損が発生していることを検出することを特徴とする請求項3記載のダイオードブリッジ欠損検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−219276(P2009−219276A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61366(P2008−61366)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】