説明

ダイシングフィルム

【課題】
本発明の目的は、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適な強度および良好な外観を有するダイシングフィルムを提供する。
【解決手段】
基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、
基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、前記基材フィルムが、融点が110℃以下、分子量分布が5以下であるポリエチレン(A)と、スチレン系エラストマー(B)を含むダイシングフィルム。前記ポリエチレン(A)がメタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンであるダイシングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する工程において、半導体ウエハやパッケージ等の半導体部材を切断する際にダイシングフィルムが用いられている。ダイシングフィルムとは、半導体部材を貼り付け、ダイシング(切断、個片化)し、さらに当該ダイシングフィルムをエキスパンティング等することにより、前記半導体ウエハ等をピックアップするために用いられるものである。
【0003】
一般にダイシングフィルムは、基材フィルムと、粘着層とで構成されている。従来、基材フィルムとしてはポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルムが多く用いられていた。しかしながら、PVC樹脂フィルムに含有される可塑剤の付着による半導体部材の汚染防止や、環境問題に対する意識の高まりから、最近ではオレフィン系樹脂並びに、エチレンビニルアルコール系樹脂およびエチレンメタクリル酸アクリレート系樹脂等の非PVC樹脂系材料を用いた基材フィルムが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また近年、半導体部材の小型化・薄型化が進むことで、ダイシングフィルムの厚み精度にバラつきがある場合、ダイシング工程において、ダイシングブレードの接触の仕方に差が生じ半導体ウエハ割れが発生しやすくなるという問題を生じさせる。また、フィルム厚み精度にバラつきがあると半導体部材のカット残りやダイシング時の切り屑や基材ヒゲ(基材フィルムのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)が発生し半導体デバイスに付着するといった問題も発生する。特に半導体パッケージを切断する際は、厚みの大きいダイシングブレードを使用することが多く、半導体ウエハを切断する時よりも基材ヒゲ発生の問題が顕著に現れる。このような問題を解決する手段として、例えば特開平5−211234号広報には、基材フィルムに放射線を照射した粘着フィルムが提案されている。しかし、この粘着フィルムでは、放射線照射によるフィルムのダメージが大きく、外観的に良好なフィルムが得られ難く、品質面で好ましくない。加えて、フィルム製造において多大なコストがかかるために価格面でも好ましくない。
【0005】
また、半導体部材を貼り付けてダイシングした後、半導体部材の間隔を広げるために、ダイシングフィルムのエキスパンドを行うが、基材に十分な靭性がないとエキスパンド時にダイシングフィルムが破断するといった問題も発生する。そのため、ダイシング時に基材ヒゲを抑制することができ、かつ、エキスパンディング時に基材が破断しないダイシングフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−257893
【0007】
【特許文献2】特開平5−211234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、半導体製造時のダイシング工程において切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適なエキスパンド性を有するダイシングフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダイシングフィルムは、基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、前記基材フィルムが、融点が110℃以下、かつ、重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布(以下単に「分子量分布」ともいう。)が5以下であるポリエチレン(A)と、スチレン系エラストマー(B)を含むものである。
【0010】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記ポリエチレン(A)が直鎖状低密度ポリエチレンであるとすることができる。
【0011】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記ポリエチレン(A)がメタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンであるとすることができる。
【0012】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記スチレン系エラストマー(B)がスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体であるとすることができる。
【0013】
本発明に係るダイシングフィルムは、前記基材フィルム中のポリエチレン(A)と前記スチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)が30/70以上70/30以下であるとすることができる。
【0014】
本発明に係るダイシングフィルムは、以下の破断エネルギー評価試験における基材フィルムの破断エネルギーが15mJ以上であるとすることができる。
【0015】
<破断エネルギー評価試験>
フィルムの片面に下記切創作製条件にて十字の切創を作製する。
切創を作製した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、
落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作製条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を十字に作成する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体製造時のダイシング工程において切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、また好適なエキスパンド性を有するダイシングフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るダイシングフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る破断エネルギー評価試験に用いる十字切創作製後の試験用フィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るダイシングフィルムは、主に半導体を製造する工程において、半導体ウエハや半導体パッケージ等の半導体部材をダイシング(切断)する際に用いられるものである。例えば、半導体ウエハや半導体パッケージ等に貼り付けられ、半導体ウエハ等をダイシングし、その後エキスパンティングすることにより、半導体ウエハを切断して得られた半導体素子をピックアップするために用いられる。
【0019】
本発明のダイシングフィルムは、基材フィルムの構成成分に、融点が110℃以下かつ分子量分布が5以下であるポリエチレン(A)と、スチレン系エラストマー(B)とを用いることにより、樹脂に起因する基材ヒゲの発生を低減し、また、ダイシングフィルムのエキスパンド性を重視した設計が可能となる。以下本発明の構成要件について図面を用いて説明する。
【0020】
<基材フィルム>
本発明に係るダイシングフィルム10は、図1に例示するように基材フィルム1と粘着層2とを少なくとも有するものである。そして前記基材フィルム1には、融点が110℃以下かつ分子量分布が5以下であるポリエチレン(A)と、スチレン系エラストマー(B)とが含まれる。前記ポリエチレン(A)は、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましく、メタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンであることがさらに好ましい。メタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンを使用することにより、ダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生をより少なくすることができる。
【0021】
前記スチレン系エラストマー(B)としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体、スチレン‐ブタジエン‐ブチレン‐スチレン共重合体、スチレン‐イソプレン共重合体、スチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体、スチレン‐エチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体、水添ビニル(スチレン‐エチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体、水添ビニル(スチレン‐イソプレン‐スチレン)共重合体、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体を挙げることができる。この中でも基材層の破断強度を高めるという観点並びにダイシング時の切り屑およびヒゲの低減という観点からは、特にスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体であることが好ましい。
【0022】
前記基材フィルム1中のポリエチレン(A)と前記スチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)が30/70以上70/30以下であることが好ましく、ポリエチレン(A)の重量比率を前記範囲下限値以上であることにより基材フィルムの基材ヒゲ抑制の効果が優れたものとなり、前記範囲上限値以下とすることにより基材フィルムの破断強度が好適なものとなる。
【0023】
上記のように、融点が110℃以下、分子量分布が5以下であるポリエチレン(A)とスチレン系エラストマー(B)とを併用することにより、基材ヒゲ抑制に優れ、半導体部材加工工程において好適に用いられるダイシングフィルムとなる。
【0024】
また本発明に係るダイシングフィルムの基材フィルムには本発明の効果を損なわない範囲で、目的に合わせて、各種樹脂や添加剤等を添加することができる。例えば、帯電防止性を付与するために、ポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマーやポリエーテルエステルアミドブロックポリマー等の高分子型帯電防止剤やカーボンブラック等が添加可能な材料として挙げられる。なお、帯電防止効果を付与する場合においては、オレフィン系樹脂との相溶性という観点からは、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体を用いたイオン伝導型帯電防止剤が好ましい。また、エラストマーを付与する事で破断伸度を大きくすることができる。
【0025】
ダイシングフィルムの基材フィルムの厚みは半導体ウエハダイシング用では50μm以上150μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、70μm以上100μm以下である。また、半導体パッケージ等の特殊部材ダイシング用では、100μm以上300μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、150μm以上200μm以下である。前記範囲下限値以上とすることによりエキスパンド時の基材フィルムが破断しにくいものとなり、前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の基材ヒゲの発生を抑制することができる。
【0026】
本発明に係るダイシングフィルムは、半導体部材をダイシングした後、半導体部材を容易にピックアップできるように半導体部材を貼り付けた状態でダイシングフィルムをエキスパンドする(引き伸ばす)ことにより半導体部材の間隔を広げる。好適なエキスパンド性を得るためには、以下の破断エネルギー評価試験における基材フィルムの破断エネルギーが15mJ以上であることが好ましい。上記下限値以上とすることによりエキスパンド時の破断を抑制することができる。破断エネルギーは基材フィルム中のエラストマーの配合比率を変更することにより適宜調整可能となる。例えばエラストマーを配合することにより破断エネルギーを大きくすることができる。
【0027】
<破断エネルギー評価試験>
図2に示すようにフィルム1の片面に下記切創作製条件にて十字切創3を作製する。
切創を作製した面を下側にし、十字の切創3の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、
落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作製条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を十字に作製する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0028】
(粘着層)
図1に例示するように本発明に係るダイシングフィルム10の基材フィルム1の少なくとも片面には、粘着層2が設けられる。粘着層2に用いられる樹脂組成物としては、アクリル系粘着剤、UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂、イソシアネート系架橋剤等があげられる。これらの中でも半導体部材マウント、端材飛び及びチッピングを抑制するためには極性基を含有したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。アクリル系粘着剤としては、例えば、カルボキシル基含有のアクリル酸ブチル等が好ましい。カルボキシル基含有のアクリル酸ブチルを用いることにより、半導体部材のマウント、端材飛び及びチッピングの抑制に特に好適なものとなる。
【0029】
粘着層2の厚みは、3μm以上100μm以下であることが好ましく、ダイシングフィルムの半導体ウエハダイシング用では3μm以上10μm以下であることが好ましい。また、パッケージ等の特殊部材ダイシング用としては10μm以上30μm以下であることが好ましい。前記範囲下限値以上とすることにより被着体の保持力に優れ、前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の加工性に優れる。
【0030】
<ダイシングフィルムの製造方法の一例>
本発明に係るダイシングフィルム10の粘着層2は基材フィルム1、または基材フィルム1を含む樹脂フィルムに対して粘着層2として用いられる樹脂を適宜溶剤に溶解または分散させて塗工液とし、ロールコーティングやグラビアコーティングなどの公知のコーティング法により塗布し、乾燥することにより形成される。
【0031】
本発明に係るダイシングフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で目的に応じて他の樹脂層を設けることができる。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれにより限定されるものではない。
<基材フィルムの作製>
下記原料を表1に示す重量配合比でドライブレンドにより混合した後、Φ50mm押出機(L/D=25 ユニメルトピンスクリュー スクリュー圧縮比=2.9)、300mm幅のコートハンガーダイ(リップ間隙=0.5mm)、押出温度=220℃(スクリュー先端)の条件で押出製膜し、厚み150μmのフィルムを得た。
【0033】
<実施例/比較例の基材フィルムに使用した原料>
・直鎖状低密度ポリエチレン1
製品名:エボリューSP0540、株式会社プライムポリマー製
融点98℃ 分子量分布≦5 メタロセン触媒重合ポリエチレン
・低密度ポリエチレン1
製品名:スミカセンL211、住友化学株式会社製
融点113℃ 分子量分布>5
・直鎖状低密度ポリエチレン2
製品名:エボリューSP1540、株式会社プライムポリマー製
融点113℃ 分子量分布≦5 メタロセン触媒重合ポリエチレン
・低密度ポリエチレン2
製品名:スミカセンL705、住友化学株式会社製
融点107℃ 分子量分布>5
・スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体
製品名:セプトン8007、株式会社クラレ製
【0034】
<3>破断エネルギー
基材フィルムに下記ダイシング条件1で十字にダイシングを実施後、カットラインを下にして基材裏面からカットライン十字の交差部に下記落錘試験条件1で落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを測定し、破断エネルギーとした。
【0035】
<ダイシング条件1>
ダイシングブレード:NBC−ZH2050−SE 27HEDD(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :100mm/sec
ブレードハイト :80μm
サンプルカットサイズ:70mm×60mm角
6インチリング使用
【0036】
<落錘試験条件1>
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0037】
<粘着層の作製>
2−エチルヘキシルアクリレート30重量%、酢酸ビニル70重量%および2−ヒドロキシエチルメタクリレート1重量%をトルエン溶媒中にて溶液重合させ重量平均分子量150,000のベース樹脂を得た。このベース樹脂100重量部に対して、エネルギー線硬化型樹脂として2官能ウレタンアクリレート100重量部(三菱レイヨン社製、重量平均分子量が11,000)と、架橋剤としてトリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体(コロネートL、日本ポリウレタン社製)15重量部と、エネルギー線重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン5重量部とを酢酸エチルに溶解した後、剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ38μm)に乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、80℃で5分間乾燥して粘着層を得た。
【0038】
<ダイシングフィルムの作製>
上述の粘着層を30℃でラミネートロールを用いて、各実施例および比較例の基材フィルム(厚み150μm)にラミネートしてダイシングフィルムを得た。
【0039】
得られたダイシングフィルムを以下の項目で評価を実施した。
<1>基材ヒゲの発生量
上記により得られたダイシングフィルムをシリコンミラーウエハに貼り付けた(ミラー面へ貼付け)。貼付け後20分間放置し、下記ダイシング条件2でダイシングを実施した。ダイシング後のダイシングフィルムを下記UV照射条件1にてUV照射し、シリコンミラーウエハを剥離後、ダイシングラインを顕微鏡で観察した。任意の隣接する10チップ(5個×2列)のダイシングラインの各辺の切り屑(基材ヒゲ)を顕微鏡(25倍)で観察した。基材ヒゲの合計数が2個以下のものは◎、5個以下のものは○、10個以下のものは△、11個以上のものは×とし、5個以下のものを合格とした。
【0040】
<ダイシング条件2>
ダイシングブレード:NBC−ZH2050−SE 27HEDD(株式会社ディスコ製)、
ブレード回転数:30000rpm
カット速度:50mm/sec
サンプルカットサイズ:5mm×5mm角
ブレードハイト:75μm
6インチリング/半導体ウエハ(厚み:400μ)使用
【0041】
<UV照射条件1>
照度 :65mW/cm2
積算光量 :200mJ/cm2
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0042】
<2>エキスパンド性
前記条件で作製したダイシングフィルムを用い、下記ダイシング条件3でダイシングした。その後、下記UV照射条件2にてUV照射後に下記エキスパンド条件にてエキスパンドを実施し、テープが破断しないものを○、テープが破断するものを×とした。
【0043】
<ダイシング条件3>
ダイシングブレード :NBC−ZH2050−SE 27HEDD(株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :30000rpm
カット速度 :50mm/sec
サンプルカットサイズ:5mm×5mm角
ブレードハイト :75μm
6インチリング/半導体ウエハ(厚み:400μ)使用
【0044】
<UV照射条件2>
照度 :65mW/cm2
積算光量 :200mJ/cm2
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0045】
<エキスパンド条件>
エキスパンド量 :5mm
8インチリング使用
【0046】
上記実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。本発明に規定する構成要件を有する実施例1および2は基材ヒゲの発生が抑制されるとともに基材フィルムのエキスパンド性についても良好な結果となった。一方、比較例1、5は基材ヒゲの発生が抑制できない上にエキスパンド性に劣るものとなった。また、比較例2、3、4、6は基材ヒゲの発生が抑制できない結果となった。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のダイシングフィルムはダイシング時の切り屑や基材ヒゲの発生が少なく、ダイシングフィルムとして好適な強度と良好な外観を有するため半導体装置製造のダイシング工程において半導体部材固定用のフィルムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・基材フィルム
2・・・粘着層
3・・・切創
10・・・ダイシングフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一の面に粘着層を有するダイシングフィルムであって、前記基材フィルムが、融点が110℃以下、かつ、重量平均分子量/数平均分子量で表される分子量分布が5以下であるポリエチレン(A)と、スチレン系エラストマー(B)とを含むダイシングフィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン(A)が直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1記載のダイシングフィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン(A)がメタロセン触媒で重合された直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1または2記載のダイシングフィルム。
【請求項4】
前記スチレン系エラストマー(B)がスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン共重合体である請求項1〜3のいずれか1項記載のダイシングフィルム。
【請求項5】
前記基材フィルム中のポリエチレン(A)とスチレン系エラストマー(B)との重量比率(A/B)が30/70以上70/30以下である請求項1〜4のいずれか1項記載のダイシングフィルム。
【請求項6】
以下の破断エネルギー評価試験における基材の破断エネルギーが15mJ以上で請求項1〜5のいずれか1項記載のダイシングフィルム。
<破断エネルギー評価試験>
フィルムの片面に下記切創作製条件にて十字の切創を作製する。
切創を作製した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、
落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
<切創作製条件>
ブレードを用いて深さ80μm、長さ40mm以上の切創を十字に作製する。
<落錘試験条件>
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−209363(P2012−209363A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72754(P2011−72754)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】