説明

ダイス

【課題】 2重、3重のような多重螺旋状の立体的な押出製品を得ることができるダイスを提供する。
【解決手段】押出材料が通過する複数個の押出孔(2、2、…)から孔ユニット1、1’を構成する。押出孔(2)の平面形状は略勾玉状を呈する。このような形状の複数個の押出孔(2、2、…)を、孔ユニット1、1’の中心点(O)を中心とする円周上に所定の間隔をおいて、内側の円弧部分(4)が中心点(O)の方を向くようにして、配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機のシリンダバレルの先端部に取り付けられ、前記シリンダバレルから押し出される押出材料に形状を与えるダイスに関するもので、特に限定するものではないが、食品材料に立体的な形状を与えるダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出機のダイスには色々な形状のものが提案されているが、押出材料が通過する押出孔の断面形状が円形の丸状ダイスが最も多く提案されている。そして、この丸状ダイスにより、スナック、ペットフード、生分解性緩衝材など多くの、断面が円形を呈する製品が製造されている。このような丸状ダイスから押し出される製品も、押し出される押出材料をカッタなどで切断する時期すなわち切断する押出材料の長さを調整することにより、さらに様々な形状の製品を得ることができる。例えば、発泡押出材料の外径と、発泡押出材料の押し出し長さが略等しいように切断すると、略球状を呈する押出製品を得ることができ、押出材料の長さが若干長くなるように切断すると、繭状あるいはラクビーボール状の製品を得ることができる。また、ペットフードの製造分野では、押出孔の形状が四角、魚型、骨型等のダイスが使用され、これらのダイスにより得られる色々な形状のペットフードが市販されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−231751号公報
【特許文献2】特開平10−295308号公報 上記のように、色々な形状の押出孔を有するダイスを使用すると、様々な形状の押出製品を得ることができるが、特許文献1により、円筒中空状のスナック製造用のノズルすなわちダイスが提案されている。このダイスの中には長いピンが挿入されている。また、特許文献2には、押出機の先端部に取り付けられる複数個の押出孔を有する多孔板、この多孔板から押し出される複数本の押出材料を発泡させるための拡径されたチャンバ、複数本の発泡された棒状発泡体を一体化するための絞り部を有する管状部材等からなる連続発泡体の製造用ダイが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているダイスによると、その内部には長いピンが挿入されているので、押出機から押し出される棒状の食品材料の内部には、空洞が形成される。この空洞は長いピンにより成形されるので、得られるスナックの厚みは均一で真円に近いものとなる。したがって、空洞に詰め物例えばチョコレートを注入するとき、チョコレートの注入針がスナック生地を破損するようなことはなく、チョコレートが外部へ漏れることはない。しかしながら、特許文献1に記載のダイスでは、筒状スナックという単純な形状の製品を得ることはできるが、押出成形において永遠の課題である所望の形状の押出製品は得ることができない。すなわち、動物、果物、建造物等の世の中に存在する形状、あるいは通常目にする立体的な形状の押出製品を連続的に製造することはできない。
【0005】
また、特許文献2に記載のダイは、前記したように構成されているので、多孔板から押出される複数本の押出材料はチャンバ内で発泡し、そして、複数本の発泡された棒状発泡体は、押出し直後に発生する蒸気と押出物の有する熱とにより、絞られた管状部材を通過するときに一体化される。これにより、ブロック状の大型緩衝材を得ることができ、産業上あるいは工業分野においては有効に利用され得る。しかし、前記したような世に存在する立体的押出製品を連続的に成形することはできない。
【0006】
本発明は、上記したような従来の実状に鑑みてなされたものであって、2重螺旋、3重螺旋のような多重螺旋状の立体的な押出製品を安定して、連続的に得ることのできるダイスを提供することを目的とし、具体的には、限定するものではないが、製品の構造からくる視覚的美観による食欲に加えて、食したと時に、製品の構造を壊す食感と、その後に続く食品原料自体が持つ食感の二つの食感を楽しめる多重螺旋状の押出製品を得ることができるダイスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、押出材料が通過する押出孔は、比較的大きい第1の半円部分と、この第1の半円部分よりも小さい第2の半円部分とから平面的に見て、勾玉状を呈するように形成される。このように、勾玉状になっている押出孔から押出材料を押し出すと、押出機から押し出される押出材料は粘度の大きい塑性物であるので、第1の半円部分を通過する速度が、第2の半円部分を通過する速度よりも大きい。このような速度差により、第1の半円部分を通過する押出材料は、第2の半円部分を中心として、弧を描くように押し出される。したがって、勾玉状の例えば2個の押出孔を、その弧が内側を向くように、同心円上に180度の間隔をおいて配置された孔ユニットを使用すると、2重螺旋状の押出製品が押し出されることになる。また、3個の押出孔が所定の間隔すなわち120度の間隔で配置された孔ユニットを使用すると、3重螺旋状の押出製品が押し出される。以下同様に複数個の押出孔が同心上に所定の間隔で配置された孔ユニットによると、多重螺旋状の押出製品が得られることになる。
【0008】
かくして、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、押出機のシリンダバレルの先端部に取り付けられ、前記シリンダバレルから押し出される押出材料が通過する複数個の押出孔からなる孔ユニットを備えたダイスであって、前記押出孔は、前記孔ユニットの中心点から所定距離の第1の点を中心として平面形状が略半円を呈する比較的大径の第1の半円部分と、前記孔ユニットの中心点からの距離が前記第1の点よりも短く、前記第1の点から所定角度隔た第2の点を中心として平面形状が略半円を呈する、前記第1の半円部分より小径の第2の半円部分と、これらの第1、2の半円部分を結んでいる内外側の円弧部分とからなり、前記押出孔は、前記中心点を中心とする円周上に所定の間隔をおいて、前記内側の円弧部分が前記中心点の方を向くようにして複数個配置され、それによって前記孔ユニットが構成されている。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダイスにおいて、複数個の押出孔からなる孔ユニットが複数個配置されている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によるダイスは、押出材料が通過する複数個の押出孔からなる孔ユニットを備え、その押出孔は、前記孔ユニットの中心点から所定距離の第1の点を中心として平面形状が略半円を呈する比較的大径の第1の半円部分と、前記孔ユニットの中心点からの距離が前記第1の点よりも短く、前記第1の点から所定角度隔た第2の点を中心として平面形状が略半円を呈する、前記第1の半円部分より小径の第2の半円部分と、これらの第1、2の半円部分を結んでいる内外側の円弧部分とから、略勾玉状に形成され、そして前記押出孔が前記中心点を中心とする円周上に所定の間隔をおいて、前記内側の円弧部分が前記中心点の方を向くようにして複数個配置され、それによって孔ユニットが構成されているので、孔ユニットの押出孔から押出される紐状の複数個の押出物は互いに巻き合って、多重螺旋状の立体構造の押出製品が得られるという、本発明に特有の効果が得られる。このように、多重螺旋状の押出製品が得られるが、押出孔の第1、2の半円部分の断面積の比の変更、押出孔の形状の変更等により、さらには押出条件、押出材料等を変更することにより、所定の巻きピッチの様々な押出製品を得ることもできる。また、押出製品が食品原料から成形される発泡体であると、一見して視覚による食欲がわき、その後食して製品構造の持つ食感と発泡体自体がもつ食感の二つが得られる押出食品を得ることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1の(イ)は、本発明の第1の実施の形態に係わる孔ユニットの平面図で、その(ロ)は第2の実施の形態に係わる孔ユニットの平面図であるが、これらの図に示されているように、本実施の形態による押出材料が通過する押出孔2、2、…は、平面形は概略勾玉状を呈している。そして、勾玉状を呈する複数個の押出孔2、2、…から孔ユニット1、1’が構成されている。
【0011】
以下、図1の(イ)により1個の押出孔2の形状について、さらに詳しく説明する。本実施の形態に係わる押出孔2は、第1の中心点O1を中心とする比較的大径の第1の半円部分3と、第1の中心点O1から所定角度α離れた第2の中心点O2を中心とする、第1の半円部分3よりも小さい第2の半円部分6と、第1、2の半円部分3、6の端点をそれぞれ結んでいる内外側の円弧部分4、5とから、平面形状が略勾玉状を呈するように形成されている。この押出孔2の断面形状は、押出機側の上流側は大きく、下流側に向かってテーパ状に絞られ、そして押出端部近傍では平行孔になっている。平行孔の部分が孔ユニットの実質的な厚みになっている。また、本実施の形態によると、押出孔の上流側はテーパ状になり、上流端すなわち押出材料の入口は拡径されているので、デッドスペースが狭くなっている。
【0012】
このような形状に構成されている押出孔2は、図1の(イ)に示されている実施の形態では、2個設けられているので、180度の間隔をおいて、孔ユニット1の中心点Oを中心とする同心円上に、内側の円弧部分4が内側を向くようにして、且つ孔ユニット1の中心点Oから第1の中心点O1までの距離が、第2の中心点O2間までのそれよりも大きくなる位置に配置されている。したがって、詳しくは後述するように、2重螺旋状の押出製品が得られることになる。図1の(ロ)に示されている第2の実施の形態では、前述したような形状の押出孔2、2、…が孔ユニット1’の中心点Oを中心とする同心円上に、120度の間隔をおいて3個設けられている。したがって、3重螺旋状の押出製品が得られることになる。以下、押出孔2、2、…の数を増やして、多重螺旋状の押出製品を得ることができることは明らかである。
【0013】
上記のような形状の押出孔2を押出材料が通過すると、押出材料は理想的な流体とはかけ離れた、粘度の大きい塑性物であるので、押出孔2の内周面との間には大きな摩擦力が働くため、内周面に近いほど通過速度は小さく、離れるほど通過速度は大きくなる。これにより、断面積の大きい第1の半円部分3を通過する押出材料の通過速度は、断面積の小さい第2の半円部分6を通過する速度よりも大きい。この速度差により、所定ピッチの螺旋状の押出製品が得られる。したがって、速度差を大きくして巻きピッチの小さい押出製品を得るためには、第1の半円部分3と第2の半円部分6の大きさの比を大きくすればよい。換言すると、第1の半円部分3と第2の半円部分6の大きさの比を変えることにより、所望ピッチの螺旋状の押出製品を得ることができる。
【0014】
図2に本実地の形態に係わる孔ユニット1’が4個装着された押出機の実施の形態が示されている。本実施の形態においてはスクリュ式二軸押出機が適用されている。このスクリュ式二軸押出機のスクリュには、押出材料を下流方向に送るリードスクリュ、混練、混合作用をするニーデイングスクリュ、逆方向の送り作用を奏するリバーススクリュ、送り作用も奏するリードニーデイングスクリュ、リバースニーデイングスクリュ等が適宜組み合わされている。このようなスクリュを備えたスクリュ式二軸押出機により押出材料を処理する。
【0015】
このように構成されている押出機のシリンダバレル10の先端部に、次のようにして4個の孔ユニット1’、1’,…が設けられたダイス7がボルト12、12によりダイホルダ11に取付けられている。ダイス7は、図1の(ロ)に示されている3個の押出孔2、2、2を有する4個の孔ユニット1’、1’、…が同一面をなしている。そして、ダイホルダ11は、シリンダバレル10の先端部の先端フランジ14にボルト13、13により取り付けられている。ダイホルダ11とダイス7により流路15が形成されている。
【0016】
ダイス7の出口側には、ダイス7に近接して2枚の刃からなる回転刃20、20が設けられている。この回転刃20、20は、架台21に載置されているモータ22、ベルト等の伝導機構23を介して回転駆動される回転軸24に取り付けられている。このモータ22は、回転速度が制御される。したがって、回転刃20、20の速度が調整され、押出製品の押し出し長さが調整されることになる。
【0017】
次に、上記押出機を使用した押出製品の製造方法を説明する。シリンダバレル10の温度を設定し、スクリュ式二軸押出機のスクリュを起動する。また、モータ22により回転刃20、20を回転駆動する。シリンダバレル10の供給口に押出原料例えば食品原料を所定量当て供給する。供給される食品原料は。送りスクリュ、ニーデイングスクリュ等により下流側へと搬送される途中でクッキングされる。そして、流路15を通り押し出される食品押出材料は、4個の孔ユニット1’、1’、…に均等に分配され、これらの孔ユニット1’、1’、…の3個の押出孔2、2、2から紐状の発泡体として押し出される。
【0018】
押し出されるときに、前述もしたように、食品押出材料は粘度の大きい塑性物であるので、第1の半円部分3を通過する速度が、第2の半円部分6を通過する速度よりも大きい。この速度差により、第1の半円部分3を通過する食品押出材料は、第2の半円部分6を回転の中心として、弧を描くように押し出される。これにより、3個の押出孔2、2、2からそれぞれ押し出される食品押出材料は螺旋を描き、3重螺旋状の食品押出製品が押し出される。本実施の形態によると、4個の孔ユニット1’、1’、…が取り付けられているので、4個の食品押出製品が同時に得られる。このようにして押し出されるとき、所定の回転速度で回転している回転刃20、20により所定長さに切断される。
【0019】
「実施例1」
押出機:図1の(ハ)に示されている株式会社日本製鋼所製の二軸押出機(TEX47F)を使用した。この二軸押出機のスクリュ外径は47mmで、シリンダバレルの長さ(L)と径(D)の比(L/D)は21である。
食品原料:菓子用小麦粉にカルホープ1%添加したものを使用した。
運転条件:原料供給量は70kg/h、シリンダバレルの温度は130〜155℃、スクリュの回転速度は250r・p・m、回転刃の回転速度は1200r・p・mにセットした。このとき、先端フランジの通路中の食品押出材料の圧力は、4〜4.9MPaであった。
結果:長さが20mmで、3本の紐状の押出材料が1回巻き合った形の3重螺旋状の食品押出製品が4個当て得られた。
【0020】
実施例1より、勾玉状の3個の押出孔が設けられている孔ユニットからなるダイスを使用すれば、3重螺旋状の食品押出製品が簡単に得られることが判明した。また、実施例は上記1のみであるが、ダイスの押出孔の形状、押出条件、押出材料等適宜変更することにより、色々な螺旋の巻きピッチの押出製品が簡単に得られると推量される。
なお、押出製品が長いときには、すなわち回転刃の回転速度が小さきときは、押出製品が切断される前に重力により曲がる可能性があるので、押出機あるいはダイスを縦方向に設置すると、このような曲がりが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、その(イ)は第1の実施の形態に係わる孔ユニットを、そしてその(ロ)は第2の実施の形態に係わる孔ユニットをそれぞれ示す平面図である。
【図2】第2の実施の形態に係わる孔ユニットを備えたダイスを装着した押出機の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1、1’ 孔ユニット 2 押出孔
3 第1の半円部分 4 内側の円弧部分
6 第2の半円部分 10 シリンダバレル
20 回転刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のシリンダバレルの先端部に取り付けられ、前記シリンダバレルから押し出される押出材料が通過する複数個の押出孔からなる孔ユニットを備えたダイスであって、
前記押出孔は、前記孔ユニットの中心点から所定距離の第1の点を中心として平面形状が略半円を呈する比較的大径の第1の半円部分と、前記孔ユニットの中心点からの距離が前記第1の点よりも短く、前記第1の点から所定角度隔た第2の点を中心として平面形状が略半円を呈する、前記第1の半円部分より小径の第2の半円部分と、これらの第1、2の半円部分を結んでいる内外側の円弧部分とからなり、
前記押出孔は、前記中心点を中心とする円周上に所定の間隔をおいて、前記内側の円弧部分が前記中心点の方を向くようにして複数個配置され、それによって前記孔ユニットが構成されていることを特徴とするダイス。
【請求項2】
請求項1に記載のダイスにおいて、複数個の押出孔からなる孔ユニットが複数個配置されているダイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−296217(P2006−296217A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118693(P2005−118693)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】