説明

ダイプレートおよびそれを用いた熱可塑性樹脂発泡体の製造方法

【課題】得られる樹脂発泡体の各ストランドが微細かつ均一なものでありながら、メンテナンスが容易で、稼働中の通過孔が詰まることがなく、樹脂発泡体の生産性を向上できる押出発泡用のダイプレートを提供すること。
【解決手段】発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、上記通過孔は、孔径が均一な平行部と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部とを有し、かつ、上記平行部が上流側に配置されるとともに、上記逆テーパー部が下流側に配置されており、上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であるダイプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡体を製造するためのダイプレート及び該ダイプレートを使用する熱可塑性樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、軽量で防音性および断熱性能に優れることから、自動車の内装や建材などに広く使用されている。緩衝性に優れ、かつ、施工性にも優れた熱可塑性樹脂発泡体を得るための方法としては、溶融状態の熱可塑性樹脂をダイプレートに設けられた複数の通過孔を経由して吐出口から押出発泡させる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
さらに、各通過孔を経由して得られる樹脂発泡体の単位(ストランド)を微細かつ均一なものとし、高発泡倍率で発泡させた樹脂発泡体を得るために、ダイプレートにおける通過孔の断面積を、上流側から下流側に向かって次第に小さくした後、ほぼ同一である中央通過部を経て、下流側に向かって断面積を次第に大きくなるように形成するという工夫もなされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平1−502252号公報
【特許文献2】特開2006−102959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2に記載された発明によれば、樹脂発泡体の各ストランドを微細かつ均一なものとし、高発泡倍率で発泡させた樹脂発泡体を得ることができる。しかし、該樹脂発泡体の製造終了後、ダイプレートの通過孔内に硬化した樹脂が残り、これを除去するのに手間がかかり、その結果、樹脂発泡体の生産性向上の妨げとなっているという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、得られる樹脂発泡体の各ストランドが微細かつ均一なものでありながら、メンテナンスが容易で、樹脂発泡体の生産性を向上できる押出発泡用のダイプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明のダイプレートは、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、上記通過孔は、孔径が均一な平行部と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部とを有し、かつ、上記平行部が上流側に配置されるとともに、上記逆テーパー部が下流側に配置されており、上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であることを特徴とする。
前記平行部と前記逆テーパー部の境目で分割可能であること;前記ダイプレートの上流側の面に、前記熱可塑性樹脂が導入される凹部が形成されており、該凹部の底面から下流側に向かって前記複数の通過孔が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記の目的は、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、上記通過孔は、孔径が下流側に向かって次第に縮小するテーパー部と、孔径が均一な平行部と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部とをこの順に有し、上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であるダイプレートによっても達成される。
該ダイプレートは、同一形状の2枚のプレートを合わせてなり、分割位置が前記平行部の中央であること;上記テーパー部と平行部の境目および上記平行部と逆テーパー部との境目で、上流側プレート、中央プレートおよび下流側プレートの3枚に分割可能であること;該上流側プレートと下流側プレートが同一形状であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上記のいずれかのダイプレートに導入し、該樹脂を、上記複数の通過孔を経由して吐出部の吐出口から押出して押出発泡させることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来と同等の樹脂発泡体を製造でき、かつ、メンテナンスが容易で、樹脂発泡体の生産性を向上できる押出発泡用のダイプレートおよび該ダイプレートを使用する熱可塑性樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1態様のダイプレートを上流側から見た図
【図2】本発明の第1態様のダイプレートを下流側から見た図
【図3】下流側プレートの変形例
【図4】本発明の第1態様のダイプレートのA−A’線断面図
【図5】テーパー角度θを説明する図
【図6】公知のダイプレートの断面図
【図7】本発明の第1態様のダイプレートの断面図
【図8】本発明の第1態様のダイプレートの変形例
【図9】本発明の第1態様のダイプレートのE−E’線断面図
【図10】本発明の第2態様のダイプレートを上流側から見た図
【図11】本発明の第2態様のダイプレートを下流側から見た図
【図12】本発明の第2態様のダイプレートのF−F’線断面図
【図13】本発明の第2態様のダイプレートの断面図
【図14】押出機先端に本発明のダイプレートを取り付けた状態の模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のダイプレートは、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を押出して、樹脂発泡体を製造する発泡押出成形装置の押出口に装着されるダイプレートである。
以下、本発明のダイプレート及び熱可塑性樹脂発泡体の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0013】
<本発明の第1態様>
図1は本発明の第1態様のダイプレートを上流側から見た図、図2は下流側から見た図、図4はそのA−A’線断面図である。
本発明の第1態様のダイプレートは、図4に示されるように、上流側の端面5から下流側の端面6に向かって貫通する通過孔20が複数設けられたダイプレートであって、該通過孔と直交して複数に分割可能であることを特徴とする。各通過孔20は、上流側の端面5に入口21が設けられ、この入口21から反対側に向かって孔径が均一な平行部22が上流側に形成されている。各通過孔20の下流側は、孔径が下流側に向かって次第に拡大し、プレート内部に逆テーパー状の空間を形成して逆テーパー部23をなし、出口側端面6で開口をなし、通過孔の吐出口(出口)24を形成する。
各吐出口24から発泡して得られるストランドを均一なものとするため、通過孔20の平行部22の長さ、逆テーパー部23の長さ、通過孔の形状は全ての通過孔で共通とすることが好ましい。
【0014】
ダイプレートの分割位置は、上記通過孔20を通る熱可塑性樹脂の押出方向に直交していれば特に制限はなく、複数箇所であってもよい。分割位置の例としては図4の平行部22で分割するB−B’線、平行部22と逆テーパー部23の境目で分割するC−C’線、逆テーパー部23で分割するD−D’線の位置が挙げられ、これらのうちの複数箇所でもよい。
【0015】
従来公知のダイプレートは1枚の板体からなり、その通過孔の断面積は、図6に示されるように上流側から下流側に向かって次第に小さくなり、次いで、断面積がほぼ同一である中央通過部を経て、断面積が次第に大きくなるように形成されていた。
従来公知のダイプレートを用いて熱可塑性樹脂発泡体の製造を終了した後に、ダイプレートの表面や通過孔の内部で固化した熱可塑性樹脂を取除く際、開口断面積が狭い中央部の通過孔内に固化した熱可塑性樹脂が残ることがあった。このような通過孔内に残った固化した熱可塑性樹脂は、細長い針金などを用いて各通過孔ごとに除去しなければならず、ダイプレートのメンテナンスに長時間を要するという問題があった。
【0016】
一方、本発明の第1態様のダイプレートは、通過孔の断面積が上流側から下流側に向かって次第に小さくなる部分を設けずに、通過孔の入口21から直接、該入口21と孔径が均一である平行部22を上流側に設けているので、固化した樹脂が通路内に詰まるという問題を軽減できる。さらに、通過孔の押出方向に直交して複数枚のプレートに分割可能である構成とすることにより、熱可塑性樹脂発泡体の製造終了後にダイプレートを分割することによって、上流側の端面5と下流側の端面6に加え、上記複数のプレートの向かい合っていた面からも固化した熱可塑性樹脂を取除くことができる。
特に、図4のB−B’線またはC−C’線を分割位置とすることにより、孔径の狭い平行部22に固化した樹脂が詰まった場合でも、エアダスターなどを用いて容易に除去することができる。
【0017】
本発明者らは、ダイプレートの分割位置を通過孔20の平行部22と逆テーパー部23との境目の位置(図7のC−C’線)とした場合、樹脂発泡体の製造終了後に当該ダイプレートを分離すると、平行部22内で固化した樹脂は、大半が下流側プレート31の側に残り、上流側プレート30の平行部22内にはほとんど残らないことを見出した。このため下流側プレート31に付着して下流側プレート31からはみ出た形の平行部22内で固化した樹脂は、ヘラなどで掻き取った後に、エアダスターを用いて容易に取除くことができる。上流側プレートの平行部22内に樹脂が残った場合でも、エアダスターで簡単に除去することができ、メンテナンスを迅速に行うことができる。
【0018】
また、本発明の第1態様のダイプレートの通過孔20には、樹脂の通過方向に対して直交する開口断面積が狭まる箇所がないため、万が一溶融状態の樹脂中に固形物が混入した場合でも、流路が詰まることが少なく、ストランドの欠損が発生しにくいという利点がある。
【0019】
上記本発明の第1態様のダイプレートを使用しても、図6に示されるような公知のダイプレートを使用した場合と同様に、各ストランドが微細かつ均一で、高発泡倍率で発泡した樹脂発泡体を得ることができる。
【0020】
本発明の第1態様のダイプレートが、図7に示すような上流側プレート30と下流側プレート31の2部材からなる場合、上流側プレート30の下流側端面に設けられた通過孔の開口と、下流側プレート31の上流側端面に設けられた通過孔の開口とは、一部が対応しないものであってもよい。例えば、図1に記載の上流側プレート30を用いた場合に、下流側プレート31として、図3に示されるように長手方向の両端部において、上流側プレート30の平行部22に対応する逆テーパー部23が設けられていないプレートを用いることにより、より幅の狭い樹脂発泡体を得ることができる。このように吐出口の数を変えた下流側プレート31を準備するだけで、1枚のダイプレートを使用する場合と比べて、より安価で簡単に樹脂発泡体の形状や寸法を変更することができる。
【0021】
本発明の第1態様のダイプレートの寸法は、押出機の押出口の形状にも依存し、一概には言えないが、例として、長辺の長さ1,000〜2,000mm、短辺の長さ50〜100mm、上流側の端面から下流側の端面までの幅10〜30mmを挙げることができる。複数のプレートの1枚当たりの厚さは、強度の面から5mm以上とすることが好ましい。本発明のダイプレートの素材は、高温高圧の熱可塑性樹脂の流れに耐える必要があり、かつ、繰り返して長期間使用できるものであることが望ましい。このような素材の例として、ステンレス鋼を挙げることができる。
【0022】
本発明の第1態様のダイプレートは、上記通過孔の平行部22と逆テーパー部23との境目で分割可能であることに加え、図9に示されるように、上記平行部を備えるダイプレート(上流側プレート30)の上流側の面5に、熱可塑性樹脂が導入され液だまりとなる凹部10が形成され、この凹部の底面11から下流側に向かって複数の通過孔20が形成されたものであってもよい。なお、図8は、凹部10が形成された上流側プレート30を上流側から見た図、図9は図8のE−E’線断面図である。
上流側プレート30の上流側の端面5に凹部10を設けることにより、各通過孔20に導入される熱可塑性樹脂の圧力を均一にし、得られる熱可塑性樹脂の発泡倍率のバラツキを抑えることができる。
【0023】
凹部10の形状は、押出機の押出口の形状に応じて適宜設計することができるが、成形加工の容易さの観点から、図8に表されるように1つの大きな凹部とし、その底面11に通過孔の入口21を設けることが望ましい。凹部10の深さ(上流側端面5と凹部の底面11との距離)は、1mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがより好ましい。
【0024】
通過孔20の断面形状は特に制限されないが、加工が容易であることから、平行部22、逆テーパー部23ともに円形とすることが好ましい。この場合、平行部22の空間は円柱状、逆テーパー部23の空間は円錐状となる。平行部22の断面の径は、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂が円滑に通過できるように設計する必要があり、例として直径0.3〜2.0mmを挙げることができる。
【0025】
平行部22は、溶融状態の熱可塑性樹脂の流れを均一な状態に揃えるために機能する。平行部22の長さは、熱可塑性樹脂の流れを均一な状態に揃えることができる長さであればよいが、長すぎると熱可塑性樹脂の温度が低下するため、1mm〜12mmとすることが好ましく、1.5mm〜8mmとすることがより好ましい。
【0026】
逆テーパー部23は、熱可塑性樹脂の圧力を下げながら徐々に気泡を発生させて、樹脂発泡体中の気泡を均一なものとする機能を有する。このため、逆テーパー部23の断面形状は、図4に示されるように平行部22の終了点から下流側の端面6に設けられた通過孔の吐出口24まで一定の角度で広がる形状であることが好ましい。この場合、逆テーパー部23のテーパー角度θ(図5参照)は、5〜20°であることが好ましい。
逆テーパー部23の長さ、すなわち、平行部22の終了点から下流側の端面6までの距離は、気泡の発生を均一にできる長さであればよく、熱可塑性樹脂の圧力にも依存するが、長すぎると熱可塑性樹脂の温度が低下するため、3mm〜20mmとすることが好ましく、6mm〜15mmとすることがより好ましい。
【0027】
吐出口24の直径が小さいと、吐出口での熱可塑性樹脂の圧力が高くなり発泡が不均一となるおそれがあるため、吐出口24の直径は、3mm以上とすることが好ましく、4mm以上とすることがより好ましい。一方、直径を大きくすると充分な発泡倍率を得られないことがあるため、直径は、8mm以下とすることが好ましく、7mm以下とすることがより好ましい。
【0028】
複数の吐出口24の配置は、所望の発泡体の形状に応じて決定すればよい。例えば、シート状の発泡体を製造する場合には、図2に示されるように横長のシート状の領域に吐出口24を密集させて配置する。この際、吐出口24を格子状に配置して発泡体中の隙間を多くすることにより、柔軟性の高い発泡体を得ることができる。一方、図2に示されるように、吐出口24をハニカム状に配置することにより、各ストランドどうしの接触面積を多くして、曲げ強度に優れた発泡体を得ることができる。
【0029】
本発明のダイプレートを構成する複数のプレートは、隙間ができないように密着させる必要がある。各プレートを密着させるための方法の一例として、図1〜3に示されるように、プレートの四隅に貫通孔4を設け、ボルトとナットを用いて締め付ける方法が挙げられる。
【0030】
<本発明の第2態様>
図10は本発明の第2態様のダイプレートを上流側から見た図、図11は下流側から見た図、図12はF−F’線断面図である。図12に示すように、本発明の第2態様のダイプレートは、発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔20を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、上記通過孔20は、孔径が下流側に向かって次第に縮小するテーパー部25と、孔径が均一な平行部22と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部23とをこの順に有し、上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であることを特徴とする。
【0031】
本発明の第2態様のダイプレートは、外形及び断面形状は図6に示す従来公知のダイプレートと同様であるが、熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数のプレートに分割できるので、上記本発明の第1態様のダイプレートと同様に、熱可塑性樹脂発泡体の製造終了後にダイプレートを分割することによって、分割した各プレートの両面から固化した熱可塑性樹脂を取除くことができ、メンテナンスが極めて容易である点で優れている。
【0032】
ダイプレートの分割位置は、上記通過孔を通る熱可塑性樹脂の押出方向に直交していれば特に制限はなく、複数箇所であってもよい。分割位置の例としては、図12に示すように、テーパー部25と平行部22との境目を通る面で分割するG−G’線、平行部22の中央を通る面で分割するH−H’線、平行部22と逆テーパー部23との境目を通る面で分割するI−I’線、逆テーパー部23を通る面で分割するJ−J’線の位置が挙げられ、これらのうちの複数箇所でもよい。
【0033】
本発明の第2態様の好適な例として、図12のH−H’線で示される平行部22の中央部分を分割位置とする、同一形状の2枚のプレートを合わせてなるダイプレートが挙げられる。それぞれのプレートは、一方の面に通過孔の入口21が複数形成され、それぞれ反対側の面に向かって通過孔20の断面が次第に縮小するテーパー部25(逆テーパー部23)と、該テーパー部25の終点から反対側の面まで孔径が均一な平行部22が形成されている。ダイプレートを構成する2枚のプレートを、同一形状のプレートとすることにより、プレートの製造に必要な金型の製造コストを削減でき、ダイプレートの製造効率を1枚の板体からなるダイプレートと同程度にすることができる。
【0034】
また、本発明の第2態様においては、図13に示されるように、分割位置をテーパー部25と平行部22の境目および平行部22と逆テーパー部23との境目の2箇所とし、上流側から、上流側プレート40、中央プレート41および下流側プレート42の3枚のプレートを合わせてなるものとしてもよい。このような構成とすることにより、樹脂発泡体の製造終了後に、テーパー部25と平行部22との境目や平行部22内に固化した樹脂が詰まった場合でも、各プレートを分離することにより、容易に除去することができる。
【0035】
この場合、上流側プレート40と下流側プレート42を同一形状とすることによりプレートの製造に必要な金型の製造コストを削減でき、製造効率を向上することができるので好ましい。
【0036】
本発明の第2態様のダイプレートの好ましい寸法は、押出機の押出口の形状にも依存し、一概には言えないが、例として、長辺の長さが1,000〜2,000mm、短辺の長さが50〜100mm、上流側の端面から下流側の端面までの幅10〜30mmを挙げることができる。複数のプレートの1枚当たりの厚さは、強度の面から5mm以上とすることが好ましい。ダイプレートの素材の例としては、第1態様と同様に、ステンレス鋼が挙げられる。
【0037】
本発明の第2態様のダイプレートにおける、テーパー部25と平行部22は、溶融状態の熱可塑性樹脂の流れを均一な状態に揃えるために機能する。この整流機能を発揮させるため、テーパー部25は、長さを3mm〜20mmとすることが好ましく、平行部22は長さを1mm〜12mmとすることが好ましい。逆テーパー部23は、熱可塑性樹脂の圧力を下げながら徐々に気泡を発生させて、樹脂発泡体中の気泡を均一なものとする機能を有する。この機能を発揮させるため、逆テーパー部23の長さは、3mm〜20mmとすることが好ましい。
【0038】
通過孔20の断面形状は特に制限されないが、加工が容易であることから、テーパー部25、平行部22、逆テーパー部23のいずれも円形とすることが好ましい。この場合、平行部22の空間は円柱状、テーパー部25と逆テーパー部23の空間は円錐状となる。テーパー部25および逆テーパー部23のテーパー角度θ’、θはいずれも5〜20°であることが好ましい。平行部22の断面の径の例として、第1態様と同じ直径0.3〜2.0mmを挙げることができる。
吐出口24の直径は、第1態様と同様の理由から3〜8mmとすることが好ましく、4〜7mmとすることがより好ましい。上流側の端面5に形成された通過孔の入口21の直径は、特に制限されないが、製造が容易であることから、吐出口24と同様にすることが好ましい。
【0039】
通過孔の入口21、吐出口24の配置も、第1態様と同様に所望の熱可塑性樹脂発泡体の形状に応じて決定すればよい。また、本発明の第2態様のダイプレートを構成する複数のプレートの固定方法の例としては、第1態様と同様に、各プレートの4隅に貫通孔4を形成して、ボルトとナットを用いて締め付ける方法が挙げられる。
【0040】
<熱可塑性樹脂発泡体の製造方法>
本発明の第1態様のダイプレートを用いて熱可塑性樹脂発泡体を製造する場合を例にとると、まず、本発明のダイプレートを構成する図8に記載の上流側プレート30と図2に記載の下流側プレート31を、各通過孔が連通することを確認しながらボルトとナットなどを用いて固定して、図9に示されるような本発明のダイプレート1とする。次いで、図14に示されるように、ダイプレート1の上流側の端面5を押出機52の熱可塑性樹脂の流路53の先端と向かい合わせにして取付ける。
【0041】
本発明の製造方法において、原料となる熱可塑性樹脂の例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、これらのうちの1種類の単独重合体でもよく、2種以上を組み合わせて混合樹脂として使用してもよい。
熱可塑性樹脂は、チップなどの固形状のものを押出機に投入し、融点以上に加熱する。
【0042】
次いで、溶融状態とした熱可塑性樹脂に発泡剤を添加する。発泡剤の例としては、二酸化炭素、窒素などの無機不活性ガス、ブタン、ペンタンなどの炭化水素系ガスが挙げられる。熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いる場合には、発泡剤として超臨界状態の二酸化炭素を用いることが好ましい。この場合、押出機内部で二酸化炭素が気化することを防止するため、熱可塑性樹脂を7MPa以上の圧力に保つ必要がある。
【0043】
図14は押出機52の押出口に本発明の第1態様のダイプレート1を取付けた際の模式図である。溶融状態の熱可塑性樹脂は、押出機52からダイプレート1に導入され、通過孔の吐出口24に近づきながら徐々に圧力が低下し、発泡がはじまる。熱可塑性樹脂の急激な硬化を防ぐため、ダイプレートをヒーターなどで硬化温度以上に保持してもよい。吐出口24から押出された樹脂発泡体が上下方向に膨張しすぎることを防ぐため、吐出口24の上下にガイダー54を設けることも有効である。
【0044】
また、製造される樹脂発泡体の流れを円滑にし、表面のうねりを減らすため、ガイダー54の下流側に冷却ロール55や引取ロール56を設置し、樹脂発泡体をロールで上下から挟みながら冷却することも有効である。
【実施例】
【0045】
平ダイを備えたタンデム押出機(φ90−φ120)を用いて密度0.9g/cm3のポリプロピレン樹脂を押出成形し、発泡剤として二酸化炭素を1段目押出機に圧入し、平ダイに取付けたダイプレートから発泡させた。
【0046】
(実施例1)
平行部22と逆テーパー部23の境目で分割可能である図9に示すタイプの本発明の第1態様のダイプレートを用いて、ポリプロピレン樹脂発泡体を製造した。用いたダイプレートは、2枚のプレートからなり上流側プレートに凹部10を有し、平行部22の穴径はφ0.6mm、長さは2.2mm、逆テーパー部23の出口径はφ4.4、長さは10mm、通過孔20の穴数は1336個である。運転条件は押出機内の温度180〜240℃、押出機の圧力13〜18MPa、押出機出口樹脂温度183℃、ダイ圧力8MPa、押出量75kg/Hにて42時間運転を行った。得られた発泡体の倍率は約20倍で表面外観も良好であった。樹脂発泡体の製造終了後、ダイプレートの清掃にかかった時間はわずか15分であった。ダイプレートを2つに割り、エアダスターで吹くとほとんどの樹脂が取れ、わずかに残った穴の中の樹脂を針金や真鍮ブラシ等で簡単に清掃することができた。
【0047】
(比較例1)
図6に示すタイプの1枚の板体からなる従来公知のダイプレートを平ダイに取付け、それ以外は実施例と同様に運転を行い、ポリプロピレン樹脂発泡体を製造した。用いたダイプレートは、テーパー部25、逆テーパー部23の入口径、出口径がともにφ4.4mm、長さは8.9mm、平行部22の穴径がφ0.58mm、長さは2.2mm、穴数は1336個である。得られた発泡体の倍率は約22倍で表面外観も良好であった。樹脂発泡体の製造終了後、ダイプレートの清掃にかかった時間は150分であった。平行部に詰まった固化したポリプロピレン樹脂は、エアダスターではほとんど取れず、針金等で突いて取除いた。
【0048】
(比較例2)
穴数が1002個であること以外は比較例1と同じタイプのダイプレートを用いて、比較例1と同様に運転を行い、ポリプロピレン樹脂発泡体を製造した。得られた発泡体の倍率は23.7倍で表面外観も良好であった。樹脂発泡体の製造終了後、ダイプレートの清掃にかかった時間は110分であった。
【0049】
実施例、比較例1、及び比較例2に用いたダイプレートの形状、発泡体、清掃時間等を表1に示す。

【符号の説明】
【0050】
1 ダイプレート
4 貫通孔
5 上流側の端面
6 下流側の端面
10 凹部
11 凹部の底面
20 通過孔
21 通過孔の入口
22 平行部
23 逆テーパー部
24 通過孔の吐出口
25 テーパー部
30 上流側プレート
31 下流側プレート
40 上流側プレート
41 中央プレート
42 下流側プレート
52 押出機
53 熱可塑性樹脂の流路
54 ガイダー
55 冷却ロール
56 引取ロール
θ 逆テーパー部のテーパー角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、
上記通過孔は、孔径が均一な平行部と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部とを有し、かつ、上記平行部が上流側に配置されるとともに、上記逆テーパー部が下流側に配置されており、
上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であるダイプレート。
【請求項2】
前記平行部と前記逆テーパー部の境目で分割可能である請求項1に記載のダイプレート。
【請求項3】
前記ダイプレートの上流側の面に、前記熱可塑性樹脂が導入される凹部が形成されており、該凹部の底面から下流側に向かって前記複数の通過孔が形成されている請求項1に記載のダイプレート。
【請求項4】
発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を上流側から下流側に、複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させるためのダイプレートであって、
上記通過孔は、孔径が下流側に向かって次第に縮小するテーパー部と、孔径が均一な平行部と、孔径が下流側に向かって次第に拡大する逆テーパー部とをこの順に有し、
上記通過孔の上記熱可塑性樹脂の押出方向に直交して複数に分割可能であるダイプレート。
【請求項5】
同一形状の2枚のプレートを合わせてなり、分割位置が前記平行部の中央である請求項4に記載のダイプレート。
【請求項6】
前記テーパー部と平行部の境目および前記平行部と逆テーパー部との境目で、上流側プレート、中央プレートおよび下流側プレートの3枚に分割可能である請求項4に記載のダイプレート。
【請求項7】
前記上流側プレートと下流側プレートが同一形状である請求項6に記載のダイプレート。
【請求項8】
発泡剤を含む溶融状態の熱可塑性樹脂を請求項1〜7のいずれか1項に記載のダイプレートに導入し、該樹脂を、上記複数の通過孔を経由して押出して押出発泡させることを含む熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−22808(P2013−22808A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158773(P2011−158773)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】