説明

ダイポールアンテナおよびアレーアンテナ

【課題】 アンテナ基板の表面に形成されたダイポールアンテナにおいて、ダイポールアンテナに反射板を設ける際、アンテナ基板と反射板との間に生じる隙間から、反射板裏側へ不要波が漏洩することを防止する。
【解決手段】 アンテナ基板にトリプレート線路を構成し、トリプレート線路を介してダイポールアンテナのアンテナ放射部に給電し、トリプレート線路が通過するアンテナ基板の表面に地導体面を形成して、地導体面に反射板を接触させて導通を取るように、反射板をアンテナ基板に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に形成されたダイポールアンテナ、およびダイポールアンテナを複数配列したアレーアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に形成されたダイポールアンテナ(以下、プリント化ダイポールアンテナ)として、特許文献1や非特許文献1に記載されたものが知られている。このプリント化ダイポールアンテナは、一般的にマイクロストリップ線路からテーパバランを介して平行2線に変換した給電構造を持つ。プリント化ダイポールアンテナの素子アンテナを反射板の上方略1/4波長の高さに設置して利用する場合、給電線路が反射板と接触しないように、反射板にスロット状の穴を開ける。この反射板裏側には、給電回路が設けられるのが通例である。また、アクティブフェーズドアレーの素子アンテナとして用いる場合には、給電回路の他に、送受信モジュール、制御回路、電源等が反射板の裏側に配置されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−268433(図1)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電子情報通信学会編、アンテナ工学ハンドブック、P.42、図1・10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は、従来のプリント化ダイポールアンテナの概略構成を示す図である。図において、プリント化ダイポールアンテナは、誘電体基板1、放射部2、給電回路3、およびテーパバラン4と、反射板5から構成される。ダイポールアンテナの放射部2、給電回路3およびテーパバラン4は、プリント加工にて誘電体基板1上に構成される。放射部2とテーパバラン4は給電回路3によって接続される。反射板5はスロット穴6が形成されており、このスロット穴6から誘電体基板1が差し込まれて、放射部2および給電回路3が反射板5より上方に飛び出した構造となっている。
【0006】
ここで、従来のプリント化ダイポールアンテナの動作について説明する。アンテナは送信と受信の関係が可逆であるため、ここではアンテナから電波が放射される送信の場合を例に説明する。誘電体基板1上のマイクロストリップ線路(図に記載なし)に入力された送信信号は、平衡不平衡変換器であるテーパバラン4を介して平行2線である給電回路3に伝搬される。給電回路3が正常に動作するには反射板5との干渉を避ける必要があり、給電回路3が反射板5上に設けられたスロット穴6とは接触しないように隙間がとられている。その後、送信信号は給電回路3を伝わり放射部2に到達し、ダイポールアンテナが給電され、送信波が放射部2から空間に放射される。
【0007】
図に示すように配置された放射部2からは、送信方向(反射板5の法線方向でありこれを直接波と呼ぶ)と反対方向の反射板5に向かう方向にも、同量放射する(これを反射波と呼ぶ)。図4に示した従来のプリント化ダイポールアンテナでは、反射波がスロット穴6を通過して反射板5裏側に不要波として漏洩する。この漏洩波により、テーパバラン6を含む給電回路、送受信モジュール、制御回路、電源等の反射板5裏側に装備された各コンポーネントが、性能劣化や誤動作を生じるという問題があった。
【0008】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、プリント基板に形成されたダイポールアンテナの周辺に設けられた反射板の隙間を通じて漏洩する、反射波の影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるダイポールアンテナは、誘電体両面の表層に形成されたアンテナ放射部、前記誘電体両面の表層に形成され、前記アンテナ放射部が接続される地導体、前記地導体に挟まれた誘電体内層に形成され、前記アンテナ放射部に給電するトリプレート線路、がそれぞれ形成されたアンテナ基板と、前記アンテナ基板の地導体に電気的に接続され、前記アンテナ基板から立設した反射板と、を備えたものである。
【0010】
また、前記ダイポールアンテナが、複数配列されてアレーアンテナを構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイポールアンテナを形成する誘電体基板と反射板との間に生じる隙間をなくし、反射板方向へのダイポールアンテナの放射波が不要波として反射板裏側に漏洩することを抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施の形態1によるプリント化ダイポールアンテナの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1によるプリント化ダイポールアンテナのスルーホールの接続構造を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態2によるプリント化ダイポールアンテナアレーの構成を示す断面図である。
【図4】従来のプリント化ダイポールアンテナの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1によるプリント化ダイポールアンテナの概略構成を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面線AA’の断面図である。プリント化ダイポールアンテナ10は、アンテナ基板を構成する誘電体多層基板11と、反射板18から構成される。誘電体多層基板11は、一方の誘電体基板11aと、他方の誘電体基板11bから構成され、一方の誘電体基板11aと他方の誘電体基板11bとを積層して、1枚の誘電体多層基板11を形成する。
【0014】
地導体12は、誘電体多層基板11における一方の端部側の両表面(両面の表層)に形成されている。放射部13は、誘電体多層基板11における他方の端部側で両表面(両面の表層)に形成された一対のストリップ導体線路から構成されている。給電部14は、誘電体多層基板11の両表面にそれぞれ形成された1対の放射部13にそれぞれ接続される、1対のストリップ導体線路から構成される。放射部13、給電部14は、いずれも誘電体多層基板11の両表面上の地導体12をエッチングするプリント加工によって形成されている。また、誘電体多層基板11の同一表面上の1対のストリップ導体線路からなる給電部14は、スロット線路15を構成している。
【0015】
給電部14は、誘電体多層基板11の同一表面上の1対の2つのストリップ導体線路が地導体12の端部ラインから垂直に突き出して、地導体12に接続されている。給電部14は、地導体12の端部ラインから垂直に突き出した後、第1の屈曲部で直角に屈曲してから、再び地導体12の端部ラインに対し第2の屈曲部で垂直な方向に直角に屈曲する、二段階の折れ曲がり形状をなしている。また、放射部13は、給電部14に対し接続部から直角に折れ曲がって接続され、その長手方向が地導体12の端部ラインに平行な方向となるように配置されている。このとき、給電部14を構成する2つのストリップ導体線路は、給電部14の第2の屈曲部と放射部13との間で、互いに近接してスロット線路15を形成する平行2線を構成するように、第1、第2の屈曲部で2つのストリップ導体線路が近付くように折れ曲がる。また、誘電体多層基板11の同一表面上で放射部13を構成する1対のストリップ導体は、スロット線路15を構成する1対のストリップ導体線路の一方の端部に各々接続される。1対の放射部13は、2つのストリップ導体がそれぞれ同一直線上で反対方向を向き、スロット線路15との接続部から相互に離れる方向に延伸して配置される。この1対の放射部13は、2つの放射部13の最外端同士の距離が、誘電体多層基板11の電気長で入力信号の略1/2波長となるように配置される。スロット線路15を構成する1対のストリップ導体線路の他方の端部は、前記第1、第2の屈曲部で折れ曲がることで、ロの字形状をなしており、端部が変形してスロット幅が広がった形状のスロット線路を構成している。
【0016】
トリプレート線路16は、誘電体多層基板11の内層において、誘電体基板11aと誘電体基板11bの間に形成される。トリプレート線路16は、ストリップ導体線路が誘電体多層基板11の両表面に等しく構成された地導体12に挟まれてトリプレート線路を形成している。また、トリプレート線路16は、ストリップ導体線路が誘電体多層基板11の両表面に等しく構成された給電部14に挟まれてトリプレート線路を形成している。トリプレート線路16は、給電部14から構成されるスロット線路15に対して、直交して交差するように配置される。スルーホール17はトリプレート線路16の端部に設けられる。スルーホール17は、トリプレート線路16の端部を、前記第2の屈曲部の近辺で誘電体多層基板11の両表面に設けられた給電部14にそれぞれ短絡している。このとき、誘電体多層基板11の同一表面上で給電部14を構成する2つのストリップ導体線路のうち、一方の線路にスルーホール17が接続される。給電部14とスルーホール17の接続部では、給電部14を構成する2つのストリップ導体線路が近接して配置されている。すなわち、スルーホール17は、トリプレート線路16がスロット線路15と交差した直後に設けられる。
放射部13からスロット線路15までの導体線路は、誘電体多層基板11の両表面に、同形状で構成されている。
【0017】
反射板18は、金属板または誘電体基板の表面全面に導体膜が付着して構成される導電板からなる。反射板18は、誘電体多層基板11の板に垂直な法線が反射板18の板に垂直な法線と直交するように、誘電体多層基板11から立設して配置される。誘電体多層基板11は、放射部13および給電部14が反射板18より上方に飛び出している。反射板18は、放射部13から入力信号の略1/4波長(空気の電気長)離れた位置に配置される。このとき、誘電体多層基板11の地導体12は、反射板18と導通するように、反射板18の端面に密着して接続される。これによって、反射板18と地導体12(あるいは給電部14)の間に隙間が介在しなくなる。また、反射板18と地導体12の接触面は、導通が得られるように導電性接着剤を介して密着させてもよい。また、反射板18は、例えばL字形状に曲げた接触面を設けて、同接触面を介して誘電体多層基板11に取り付けられてもよい。
【0018】
なお、反射板18は、板の厚み方向に貫通した溝状の貫通穴(スロット)を形成してもよい。この場合、誘電体多層基板11は、反射板18の貫通穴に差し込まれて反射板18を貫通するように配置される。このときの反射板18における溝状の貫通穴の溝幅は、誘電体多層基板11の地導体12を含めた厚みよりも僅かに小さいか同じ大きさとなり、誘電体多層基板11が反射板18に圧入されることとなる。また、製造上の寸法公差により、反射板18における溝状の貫通穴の溝幅が誘電体多層基板11の厚みよりも僅かに大きくなる場合は、反射板18の貫通穴と誘電体多層基板11の地導体12との間に若干の隙間を生じるので、その隙間を埋めるように導電性接着剤を充填して、反射板18と地導体12の導通を取ってもよい。いずれにしても、地導体12と反射板18を隙間無く直接導通接続できることが構造的な特長である。
【0019】
次に、本実施の形態1に係るプリント化ダイポールアンテナの動作について、送信の場合を例に説明する。アンテナは送信と受信の関係が可逆であるため、ここではアンテナから電波が放射される送信の場合を例に説明する。
図1の入力端から入力される入力信号としての送信信号は、トリプレート線路16を伝搬し、スロット線路15との交差点にて電磁結合によりスロット線路15側に伝搬する。
【0020】
ここで、給電部14は地導体12と導通している。トリプレート線路16は、スロット線路15と交差した直後にスルーホール17にて誘電体多層基板11の両表面上にある給電部14と導通する構造としているので、トリプレート線路16はスロット線路15との交差点で短絡状態となる。
【0021】
これにより、交差点ではトリプレート線路16上に電流が最大で流れるためスロット15側に効率よく電磁結合できる。また、この構造をとることで、従来のプリント化ダイポールアンテナに設けられたスタブ(整合回路)は必要なく、設計および構成が容易で、かつ、ダイポールアンテナの反射特性を広帯域化できる。また、トリプレート線路16との交差点近傍のスロット線路15の端部形状はスロット線路15における、交差点から端部を見た場合が開放状態となる範囲内で任意に選択できる。この形状、大きさによってプリント化ダイポールアンテナ10の反射特性を制御でき、広帯域化も実現できる。
【0022】
また、入力信号は、給電部14内のスロット線路15上を伝搬し、放射部13に到達して、放射部13を給電する。その後、給電された放射部13上に電流が流れ、放射部13が励振して、プリント化ダイポールアンテナ10からの送信波が空間に放射される。一般に、ダイポールアンテナの特性上、送信波は反射板18の法線方向(これを直接波と呼ぶ)のほかに、反射板18に向かう側にも同じ大きさで放射される(これを反射波と呼ぶ)。前述の通り、反射板18は放射部13から入力信号の略1/4波長(空気の電気長)離れているので、反射波は反射板18で反射して同相で直接波に重畳し、アンテナ正面方向で利得が2倍となる。
【0023】
反射波が反射板18で反射する際、プリント化ダイポールアンテナ10の本体(給電部14)と反射板18との間に隙間が存在しないので、反射板18裏側に不要波として漏洩しない。このため、反射板18裏側に配置されたコンポーネントが性能劣化を生じない。すなわち、実施の形態1のアンテナ構造を構成することによって、高アイソレーションの下で反射板18の裏側に、給電回路、送受信モジュール、制御回路、電源等のコンポーネントを組み込むことができる。また、このように構成することで、プリント化ダイポールアンテナ10とコンポーネントを、電波漏洩の影響を受けない同軸コネクタによって接続する必要がなく、コネクタレスにてプリント化ダイポールアンテナ10とコンポーネントを一体化する構成が可能となる。
【0024】
次に、プリント化ダイポールアンテナ10の基板内層の詳細構造について説明する。図2は、プリント化ダイポールアンテナ10のスルーホールの接続構造を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)はBB’断面図である。図において、スルーホール19は、反射板18の裏側近傍で誘電体多層基板11の両表面の地導体12に接続され、地導体12と導通を取る。このスルーホール19は、地導体12の端部ラインと平行に反射板18に沿って、使用周波数における波長に対して短い(例えば、略1/8以下)間隔で複数配置される。また、スルーホール21は、誘電体多層基板11の両表面の地導体12に接続され、地導体12と導通を取る。このスルーホール21は、反射板18の裏側近傍でトリプレート線路16に沿って、使用周波数における波長に対して短い(例えば、略1/8以下)間隔で、トリプレート線路16の両側近傍(両脇)に複数個配列される。
【0025】
プリント化ダイポールアンテナ10と反射板18とは導通を保って接続されており、空間中および給電部14上を伝搬する不要波は反射板裏側には漏洩しないが、誘電体多層基板11中に発生した不要波は、反射板18のみでは裏側への漏洩を防げない。スルーホール19は、波長に対して十分に短い間隔で複数配置することで、前記誘電体多層基板11内を伝播する不要波について、反射板18裏側への漏洩を抑える効果がある。
【0026】
また、スルーホール21は、トリプレート線路16の両脇に設けられている。スルーホール19と同じように波長に対して十分に短い間隔で複数配置することで、たとえトリプレート線路16からの不要波が発生しても、誘電体多層基板11内の伝播を抑えて他部に影響を与えないようにすることができる。
【0027】
また、図2において、スルーホール20は、誘電体多層基板11の両表面における放射部13および給電部14に接続され、放射部13および給電部14と導通を保って配置されている。前述の通り、放射部13および給電部14は同形状をなし、誘電体多層基板11の両表面に構成され、地導体12と接続されている。このため、両者は同電位0となり、両者を導通するスルーホール20を設けてもプリント化ダイポールアンテナ10の特性に悪影響を及ぼすものではない。このスルーホール20を所望の位置に配置することで、誘電体多層基板11内で生じる不要共振を抑えることが期待できる。
【0028】
なお、図1、2において、スロット線路15の一方の端部がロの字形状を構成しているが、2つのストリップ導体線路の間隔を維持したまま直線形状をなすように、スロット線路15を構成してもよい(この場合スロット線路15端部の直線形状部の長さは電気長で略1/4波長となる)。
【0029】
また、図1、2において、スルーホール17を介してトリプレート線路16の端部が給電部14と短絡するように構成しているが、トリプレート線路16の端部位置を延長してオープンスタブ(電気長で略1/4波長)を構成することで、スルーホール17を除去するように構成してもよい。
【0030】
以上説明した通り、実施の形態1によるプリント化ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナを形成する誘電体基板と反射板との間に生じる隙間をなくしたことにより、反射板方向へのダイポールアンテナの放射波が不要波として反射板裏側に漏洩することを抑圧することができる。
また、ダイポールアンテナの反射特性において、広帯域化が図れる特長もある。
【0031】
実施の形態2.
図3は、本発明に係る実施の形態2に係るプリント化ダイポールアンテナアレーの構成を示す図である。実施の形態2のプリント化ダイポールアンテナアレーは、実施の形態1のプリント化ダイポールアンテナを素子アンテナとして、フェーズドアレーアンテナを構成している。図3(a)はプリント化ダイポールアンテナの1次元配列のアレー構成を示す斜視図であり、図3(b)は図3(a)の矢印方向からみた側面図である。図3(a)に示す1次元配列アレーを構成する基板が、2次元状に配列されて2次元配列のアレーを構成する。以下では、このフェーズドアレーアンテナが、アクティブフェーズドアレーアンテナを構成する場合を例に説明する。なお、実施の形態1と同符号のものは、同一のものを示す。
【0032】
図3において、アンテナ基板30は、実施の形態1で説明した複数のプリント化ダイポールアンテナ10が、誘電体多層基板上に直線的に一元配列されて、一体的に構成されている。これによって、プリント化ダイポールアンテナ10が一次元アンテナアレーを構成する。反射板31は、実施の形態1で説明した反射板18から構成されている。反射板31は、アンテナ基板30に形成される実施の形態1の地導体12(図3に図示せず)と接触して、導通が得られるように、アンテナ基板30から立設している。また、アンテナ基板30は、冷却構造体33と送受信モジュール34が装荷されている。冷却構造体33と送受信モジュール34は、反射板31を間に挟んでプリント化ダイポールアンテナ10の設けられていない裏面側に配置される。送受信モジュール34と冷却構造体33は、アンテナ基板30を間に挟むように配置される。
【0033】
送受信モジュール34は、金属シャーシ、または外周全面が導電性金属により被覆された誘電体多層基板パッケージから構成される。送受信モジュール34の内部には、増幅器、移相器、ミキサ、サーキュレータなどの高周波回路が収納されている。送受信モジュール34の外周表面は、アンテナ基板30と導通が取られている。冷却構造体33は、内部に循環する冷媒や高熱伝導性の部材が設けられている。冷却構造体33は、送受信モジュール34で発生する熱を冷却する。反射板31は、裏面が冷却構造体33の側面に接触し、ねじ32によって冷却構造体33に締結され、固定される。アンテナ基板30は所定の間隔を設けて、アンテナ基板30の板厚方向に複数個配列される。これによって、プリント化ダイポールアンテナ10が二次元アンテナアレーを構成する。また、反射板31は、隣接するアンテナ基板30に装着された送受信モジュール34の外周上(図3(b)の上面)に配置される。このとき、反射板31は、ガスケット35を介して、隣接するアンテナ基板30の送受信モジュール34と導通が取れている。
【0034】
次に、本実施の形態2によるプリント化ダイポールアンテナアレーの動作について説明する。図示しないアンテナアレーの入力端から入力される送信信号は、分配回路を介して各素子単位に伝達されて、各素子アンテナ(プリント化ダイポールアンテナ10)に装荷されている送受信モジュール24に伝達される。送受信モジュール24に伝達した送信信号は、増幅、位相制御等されて、素子アンテナ(プリント化ダイポールアンテナ10)の入力端(図1(a)参照)に伝わる。この入力端への入力以降の動作は、前記実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。各素子アンテナ(プリント化ダイポールアンテナ10の放射部13)から放射された送信波は、空間合成されて所望の放射特性を実現する。
【0035】
実施の形態2に係るプリント化ダイポールアンテナアレーは、実施の形態1のプリント化ダイポールアンテナ10を適用しているので、アンテナ基板30と反射板31との間に隙間は存在しない。このため、反射板裏側への不要波漏洩は起こらず、アンテナ後段に装備された給電回路、送受信モジュール、制御回路、電源等の各コンポーネントが、この不要波の漏洩による性能劣化や誤動作などを、発生しない。
【0036】
また、反射板31は隣接アンテナ基板30との間で導通取るために、図3(b)に示すように、反射板31と、隣接アンテナ基板30に導通している例えば隣接の送受信モジュール34の外表面との間に、ガスケット35を設ける。ガスケット35は、導電性フィラーの含浸されたゴム状弾性体であっても、導電性接着剤であってもよい。
【0037】
加えて、反射板31を前面からネジ32で、隣接の冷却構造体33に留める構造とする。これにより、隣接するアンテナ基板30間に隙間を生じない構成とすることができる。また、アンテナアレーを構成した状態でも、反射板裏側に不要波を漏洩させない効果を得ることができる。
【0038】
なお、ガスケット35を設ける代わりに、反射板31の端部をフィンガー状に折り曲げて弾力性を持たせることで、隣接する送受信モジュール34の外周表面に付勢して接触させる構造としてもよい。また、反射板31と送受信モジュール34を、ガスケット35を介して導通を取ることについて説明したが、反射板31と隣接するアンテナ基板30に装荷された冷却構造体33との間で、ガスケット35を介して導通を確保する構成でもかまわない。また、前記の説明のように、直接送受信モジュール34や冷却構造体33に反射板31を接続するのではなく、金属ブロックやその他の導電体を介して、反射板31を接続する構成であってもよく、要するに反射板31が隣接するアンテナ基板30に対して導通を確保できればよい。
【0039】
本実施の形態2によれば、反射板31を隣接するアンテナ基板30に導通させて固定することを特徴とする。これにより、複数のアンテナ基板30が所定の間隔で複数個配列されて構成されるアンテナアレーにおいて、個々のアンテナ基板30の構成単位で、アンテナ前面から容易にアンテナ基板30を挿抜することが可能となる。これにより、反射板31の裏側に装荷された、あるコンポーネントで故障がある場合も、一体化したアンテナ基板単位で容易に取り外し、交換することが可能である。
【0040】
ところで、反射板31の代わりにアンテナ基板30が貫通できる穴が開いている一体化反射板を用いてもよい。この場合、アンテナ基板30と一体化反射板の穴との間、および一体化反射板と冷却構造体や送受信モジュールの外表面などとの間に、ガスケットを塗布するなどして導通を確保することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本実施の形態1によるプリント化ダイポールアンテナは、例えば各種レーダ用アレーアンテナ(固定局、移動局問わず)の素子アンテナとして用いられ、レーダ、通信等幅広い用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 プリント化ダイポールアンテナ、11 誘電体多層基板、12 地導体、13 放射部、14 給電部、15 スロット線路、16 トリプレート線路、17 スルーホール、18 反射板、19 スルーホール、20 放射部、21 スルーホール、30 アンテナ基板、31 反射板、33 冷却構造体、34 送受信モジュール、35 ガスケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体両面の表層に形成されたアンテナ放射部、
前記誘電体両面の表層に形成され、前記アンテナ放射部が接続される地導体、
前記地導体に挟まれた誘電体内層に形成され、前記アンテナ放射部に給電するトリプレート線路、がそれぞれ形成されたアンテナ基板と、
前記アンテナ基板の地導体に電気的に接続され、前記アンテナ基板から立設した反射板と、
を備えたダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記反射板の周囲において、前記誘電体両面の地導体に接続されたスルーホールを備えた請求項1に記載のダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ放射部と前記地導体の間に接続されたスロット線路を備え、
前記トリプレート線路は、前記スロット線路と交差して前記スロット線路に電磁結合される請求項1または請求項2に記載のダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記トリプレート線路がスロット線路と交差した直後に、前記トリプレート線路をスルーホールにて前記スロット線路の一部に短絡した請求項3に記載のダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記スロット線路は、前記地導体との接続部周辺でスロット幅が広がった請求項3に記載のダイポールアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ基板は、前記請求項1から請求項5の何れか1項に記載されたアンテナ放射部およびトリプレート線路が複数配列されたアレーアンテナ。
【請求項7】
前記請求項1から請求項5の何れか1項のアンテナ基板が所定の間隔をなして複数配列され、反射板が導電体を介して隣接するアンテナ基板に接触して導通したアレーアンテナ。
【請求項8】
前記請求項1から請求項5の何れか1項のアンテナ基板が所定の間隔をなして複数配列され、弾性を有した反射板が隣接するアンテナ基板に接触して導通したアレーアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156943(P2012−156943A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16569(P2011−16569)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】