説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】振動ダイヤフラムを一対のハウジングで挟着して該振動ダイヤフラムの上下の少なくとも一方にポンプ室を形成し、該ポンプ室と吸入ポートとの間に該吸入ポートから該ポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吸入側逆止弁を設け、上記ポンプ室と吐出ポートとの間に該ポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吐出側逆止弁を設け、振動ダイヤフラムを振動させてポンプ作用を得るダイヤフラムポンプにおいて、極めて簡単な構造で脈動の軽減ができるダイヤフラムポンプを得る。
【解決手段】一対のハウジングの間に、振動ダイヤフラムとは平面位置を異ならせて、吸入ポート及び吐出ポートに対応する一対の弾性材料からなる脈動軽減ダイヤフラムを挟着し、かつ、一対のハウジングにそれぞれ、該一対の脈動軽減ダイヤフラムの上下にそれぞれ可変容積の液室と空気室を画成する凹部を形成し、この一対の可変容積の液室をそれぞれ吸入ポート及び吐出ポートに連通させたダイヤフラムポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
振動するダイヤフラムによってポンプ作用を得るポンプとして、例えば圧電ポンプがある。圧電ポンプは、圧電振動子を一対のハウジングで挟着して該圧電振動子の上下の少なくとも一方にポンプ室を形成し、該ポンプ室と吸入ポートとの間に該吸入ポートから該ポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吸入側逆止弁を設け、ポンプ室と吐出ポートとの間に該ポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吐出側逆止弁を設けている。圧電振動子が振動すると、ポンプ室の容積が大きくなる行程では、流入側逆止弁が開き吐出側逆止弁が閉じて吸入ポートからポンプ室内に流体が流入し、逆にポンプ室の容積が小さくなる行程では、吐出側逆止弁が開き吸入側逆止弁が閉じてポンプ室から吐出ポートに流体が吐出され、ポンプ作用が得られる。
【0003】
本出願人は、このような圧電ポンプを用いてノートPCの発熱源(CPU、GPU、チップセット等)を冷却する水冷システムを開発中である。ノートPCに搭載するポンプは、安全規格であるUL規格を満足する必要があり、とくに耐電圧性を満たすようにハウジングを合成樹脂主体としたものにせざるをえない。合成樹脂製のハウジングは、材料に設計自由度のある配管部分と比べて、ハウジング自体が弾性変形しにくいため、逆止弁の開閉に伴う脈動(振動)の影響をうけやすい。従来、この圧電ポンプ(ダイヤフラムポンプ)の脈動防止構造は各種が提案されているが、構造が複雑化し、薄型化を妨げ、部品点数を増加させ、耐久性に問題があり、あるいは流量が犠牲になるという問題があった。
【特許文献1】特開平10-288160号公報
【特許文献2】特開平10-331771号公報
【特許文献3】特開2000-265964号公報
【特許文献4】特開2000-274374号公報
【特許文献5】特開2002-322986公報
【特許文献6】特開2005-2208100号公報
【特許文献7】特開2006-200524号公報
【特許文献8】特許3784566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、極めて簡単な構造で脈動の軽減ができるダイヤフラムポンプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、振動ダイヤフラムを挟着する一対のハウジングによって、同時に一対の脈動軽減ダイヤフラムを挟着し、この一対の脈動軽減ダイヤフラムの上下にそれぞれ、吸入ポート及び吐出ポートに連通する可変容積の液室と空気室とを形成すれば、簡単な構造でかつ組立性に優れた薄型のダイヤフラムポンプが得られるとの着眼に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち本発明は、振動ダイヤフラムを一対のハウジングで挟着して該振動ダイヤフラムの上下の少なくとも一方にポンプ室を形成し、該ポンプ室と吸入ポートとの間に該吸入ポートから該ポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吸入側逆止弁を設け、上記ポンプ室と吐出ポートとの間に該ポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吐出側逆止弁を設け、振動ダイヤフラムを振動させてポンプ作用を得るダイヤフラムポンプにおいて、一対のハウジングの間に、上記振動ダイヤフラムとは平面位置を異ならせて、上記吸入ポート及び吐出ポートに対応する一対の弾性材料からなる脈動軽減ダイヤフラムを挟着し、かつ、一対のハウジングにそれぞれ、該一対の脈動軽減ダイヤフラムの上下にそれぞれ可変容積の液室と空気室を画成する凹部を形成し、この一対の可変容積の液室をそれぞれ吸入ポート及び吐出ポートに連通させたことを特徴としている。
【0007】
脈動軽減ダイヤフラムは、具体的には、平面円形として、その周縁に一対のハウジングによって液密に挟着される環状ビードを設けることで、部品点数の削減ができる。
【0008】
本発明は、振動ダイヤフラムの上下の一方のみにポンプ室を形成した2バルブタイプのダイヤフラムポンプだけでなく、振動ダイヤフラムの上下にそれぞれポンプ室を形成し、この一対のポンプ室と単一の吸入ポートの間及び同一対のポンプ室と単一の吐出ポートの間にそれぞれ吸入側逆止弁と吐出側逆止弁を設けた4バルブタイプにも適用できる。
【0009】
4バルブタイプでは、振動ダイヤフラムを挟着する一対のハウジングにそれぞれ、一対のポンプ室の一方を形成する凹部と、該凹部に連通し該ハウジングの外面に開口する吸入側外部開口穴と吐出側外部開口穴を形成し、一対のハウジングの一方と他方に、互いに嵌合関係となって両ハウジングの吸入側外部開口穴と吐出側外部開口穴とを互いに連通させる対をなす筒状流路突起と接続穴とを形成し、一対のハウジングのうち、筒状流路突起を有する側のハウジングに、吸入側外部開口穴に連通する吸入ポートと、吐出側外部開口穴に連通する吐出ポートを形成することで、簡単な構成の4バルブタイプが得られる。
【0010】
吸入ポートと吐出ポートは、一対のハウジングのいずれか一方に双方を設けることができる。あるいは、同吸入ポートと吐出ポートを一対のハウジングの一方と他方に設ける態様も可能である。
【0011】
量産品では、一対のハウジングは、ともに合成樹脂材料の成形品から形成するのがよい。
【0012】
また、4バルブタイプでは、一対のハウジングの一方のハウジングの接続穴に他方のハウジングの筒状流路突起を挿入するだけで液密な自由液流路が構成されるように、筒状流路突起には、太径部と、この太径部の上部に位置する細径部と、この太径部と細径部を分ける軸線に対して直交しない環状斜面とを設け、外部開口穴には、大径穴と、この大径穴より内側に位置する小径穴と、この大径穴と小径穴の境界に位置し上記接続穴が連通する、筒状流路突起の環状斜面に対応する軸線に対して直交しない環状斜面とを設け、筒状流路突起の細径部に嵌めたOリングがこの両環状斜面の間に圧縮挟着されて液密を保持するように構成することが好ましい。
【0013】
振動ダイヤフラムは、具体的には、導電性金属薄板からなる少なくとも一枚のシムと少なくとも一層の圧電体層との交互積層構造を有する圧電振動子から構成すると、薄型のダイヤフラムポンプを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のダイヤフラムポンプは、振動ダイヤフラムを挟着する一対のハウジングの間に、該振動ダイヤフラムとは平面位置を異ならせて、吸入ポート及び吐出ポートに対応する一対の弾性材料からなる脈動軽減ダイヤフラムを挟着し、かつ一対のハウジングにそれぞれ、該一対の脈動軽減ダイヤフラムの上下にそれぞれ可変容積の液室と空気室を画成する凹部を形成し、この一対の可変容積の液室をそれぞれ吸入ポート及び吐出ポートに連通させたので、極めて簡単に脈動軽減構造を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この実施形態は、ダイヤフラムを挟着する一対のハウジングを組み立てることで実質的な流路構造を構成できる、本出願人が特願2007-275908号で提案した4バルブダイヤフラムポンプに本発明を適用したものである。
【0016】
最初に、図7について、4バルブダイヤフラムポンプの動作原理を説明する。このダイヤフラムポンプは、アッパハウジング10、ロアハウジング20、圧電振動子(ダイヤフラム)30、及び4つのアンブレラ(逆止弁)11、12、21、22を基本的な構成要素としている。アッパハウジング10と圧電振動子30の間、及びロアハウジング20と圧電振動子30の間にはそれぞれ、アッパポンプ室(可変容積室)13とロアポンプ室(可変容積室)23が形成されている。単一の吸入ポート31は、吸入側流路14Hと24Hに連通しており、吸入側流路14Hは吸入側逆止弁11を介してアッパポンプ室13に連通し、吸入側流路24Hは吸入側逆止弁21を介してロアポンプ室23に連通している。また、単一の吐出ポート32は、吐出側流路15Dと25Dに連通しており、吐出側流路15Dは吐出側逆止弁12を介してアッパポンプ室13に連通し、吐出側流路25Dは吐出側逆止弁22を介してロアポンプ室23に連通している。
【0017】
この4バルブダイヤフラムポンプは、圧電振動子30が正逆に弾性変形(振動)すると、アッパポンプ室13とロアポンプ室23のいずれか一方の容積が増大し他方の容積が減少する。アッパポンプ室13の容積が増大する行程はロアポンプ室23の容積が減少する行程であり、アッパポンプ室13の容積が増大するから吸入側逆止弁11が開いて吸入ポート31からアッパポンプ室13内に流体が流入し、ロアポンプ室23の容積が減少するからロアポンプ室23内の流体が吐出側逆止弁22を開いて吐出ポート32に流出する(図7(B))。逆にアッパポンプ室13の容積が減少する行程はロアポンプ室23の容積が増大する行程であり、ロアポンプ室23の容積が増大するから吸入側逆止弁21が開いて吸入ポート31からロアポンプ室23内に流体が流入し、アッパポンプ室13の容積が減少するからアッパポンプ室13内の流体が吐出側逆止弁12を開いて吐出ポート32に流出する(図7(A))。従って、吐出ポート32における脈動の周期を短くする(圧電振動子30の上下の一方のみにポンプ室が形成される場合に比して半分にする)ことができる。
【0018】
本実施形態は、以上の動作原理の4バルブダイヤフラムポンプを簡易な構造で実現し、さらに脈動を一層軽減するものであり、図1ないし図5についてその一実施形態を説明する。図1ないし図5では、図7と共通の構成要素には同一の符号を付している。
【0019】
図1、図2は、本4バルブダイヤフラムポンプの全体構造を示している。合成樹脂材料(例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂)の成形品からなるアッパハウジング10には、ロアハウジング20との対向面(合わせ面)に、アッパポンプ室13を形成する凹部13aが形成され、また、この凹部13aに連通する吸入側外部開口穴16と吐出側外部開口穴17が形成されている。この吸入側外部開口穴16と吐出側外部開口穴17は、図7の吸入側流路14Hと吐出側流路15Dを構成するもので、アッパハウジング10の外面に開口し、かつその開口端が吸入ポート31と吐出ポート32を構成している。
【0020】
また、アッパハウジング10には、ロアハウジング20との対向面(合わせ面)に、連通路16aを介して吸入側外部開口穴16に連通する平面円形の吸入側液室(凹部)101と、連通路17aを介して17に連通する平面円形の吐出側液室(凹部)102が形成されている。アッパハウジング10には、図3に示すように、この吸入側液室101(吐出側液室102)と同心の環状突起103(104)が形成されている。
【0021】
同じく合成樹脂材料(同)の成形品からなるロアハウジング20には、アッパハウジング10との対向面(合わせ面)に、ロアポンプ室23を形成する凹部23aが形成され、また、この凹部23aに連通する吸入側外部開口穴26と吐出側外部開口穴27が形成されている。この吸入側外部開口穴26と吐出側外部開口穴27は、図7の吸入側流路24Hと吐出側流路25Dを構成するもので、ロアハウジング20の外面に開口している。
【0022】
また、ロアハウジング20には、アッパハウジング10との対向面(合わせ面)に、アッパハウジング10の吸入側液室101に対応する平面円形の空気室(凹部)201と、吐出側液室102に対応する平面円形の空気室(凹部)202が形成されている。ロアハウジング20には、図3に示すように、空気室201(202)と同心に、アッパハウジング10の環状突起103(104)に対応する環状溝203(204)が形成されている。
【0023】
平面円形をなす脈動軽減ダイヤフラム301(302)の周縁ビード部303(304)は、ロアハウジング20のこの環状溝203(204)に嵌められる。そして、ロアハウジング20上にアッパハウジング10を重ねて環状突起103(104)を環状溝203(204)に嵌め、環状ビード部303(304)を圧縮することで、脈動軽減ダイヤフラム301(302)の図の上下にそれぞれ吸入側液室101(吐出側液室102)と空気室201(202)が形成される。空気室201(202)は密閉しても大気に開放してもよい。
【0024】
脈動軽減ダイヤフラム301(302)は、ゴム材料の加硫成形品からなっており、吸入側液室101(吐出側液室102)と空気室201(202)の圧力差に応じて弾性変形し、吸入側液室101(吐出側液室102)と空気室201(202)の容積を変化させる。
【0025】
逆止弁11と12は、吸入側外部開口穴16と吐出側外部開口穴17の凹部13a側の端部に設けられ、逆止弁21と22は、吸入側外部開口穴26と吐出側外部開口穴27の凹部23a側の端部に設けられている。図示実施形態の逆止弁11、12、21、22は、同一の形態のアンブレラバルブであり、流路に接着もしくは溶着固定される穴あき基板11a、12a、22a、凹部23aに、弾性材料からなるアンブレラ11b、12b、22b、23bを装着してなっている。
【0026】
圧電振動子30は、アッパハウジング10とロアハウジング20の間に、Oリング33、34を介して液密に挟着保持され、凹部13aとの間にアッパポンプ室13を構成し、凹部23aとの間にロアポンプ室23を構成する。圧電振動子30は、導電性金属薄板からなるシムの表裏の少なくとも一方に圧電体を積層してなり、交番電界を与えることによりシムの面と垂直な方向に正逆に振動する周知のものであり、本実施形態は、圧電振動子30の構成の如何は問わない。例えばユニモルフ、バイモルフのいずれのタイプでもよい。
【0027】
以上のアッパハウジング10の外部開口穴16(吸入側流路14H)とロアハウジング20の外部開口穴26(吸入側流路24H)は、図2に示すように、アッパハウジング10に一体に形成した吸入側筒状流路突起43Hと、ロアハウジング20に形成した吸入側接続穴42Hとによって連通し、アッパハウジング10の外部開口穴17(吐出側流路15D)とロアハウジング20の外部開口穴27(吐出側流路25D)は、アッパハウジング10に一体に形成した吐出側筒状流路突起43Dと、ロアハウジング20に形成した吐出側接続穴42Dとによって連通している。すなわち、吸入側筒状流路突起43Hと吸入側接続穴42Hは相互に嵌合関係となって外部開口穴16と26(吸入側流路14Hと24H)を連通させ、吐出側筒状流路突起43Dと吐出側接続穴42Hは相互に嵌合関係となって吐出側流路15Dと25D(吐出側流路15Dと25D)を連通させる。この筒状流路突起43H(43D)と接続穴42H(42D)は、左右対称構造であり、その詳細を図4、図5で説明する。図2と図4では、上下を逆にして示している。
【0028】
ロアハウジング20に形成した外部開口穴26(27)は、図4に詳細に示すように、該ロアハウジング20の外面に開口する大径穴26a(27a)と、この大径穴26a(27a)より内側に位置する小径穴26b(27b)と、この大径穴26a(27a)と小径穴26b(27b)の境界に位置する軸線に対して直交しない環状斜面26c(27c)とを有している。また、ロアハウジング20に形成した接続穴42H(42D)は、この外部開口穴26(27)の環状斜面26c(27c)部分に位置させて、該外部開口穴26(27)と直交して連通するように形成されている。これらの外部開口穴26(27)及び接続穴42H(42D)は、成形型(抜き型)によりロアハウジング20と一体に成形されている。
【0029】
一方、アッパハウジング10に一体に形成した筒状流路突起43H(43D)は、図4、図5に詳細に示すように、太径部43aと、この太径部43aの上部に位置する細径部43bと、この太径部43aと細径部43bを分ける(の境界を定める)軸線に対して直交しない環状斜面43cとを有し、その軸部に、外部開口穴16(17)と連通する内部流路44が形成されている。この筒状流路突起43H(43D)も、成形型(抜き型)によりアッパハウジング10と一体に成形されている。
【0030】
外部開口穴26(27)の環状斜面26c(27c)と筒状流路突起43H(43D)の環状斜面43cとは対応関係にあり、図示例では、環状斜面26c(27c)(環状斜面43c)は、外部開口穴26(27)(筒状流路突起43H(43D))の軸線に対して45゜をなしている。この角度は、30゜〜60゜程度の範囲で変えることができる。筒状流路突起43H(43D)の細径部43bの周囲(環状斜面43cの上)には、Oリング46が嵌められており、筒状流路突起43H(43D)を接続穴42H(42D)に嵌めると、外部開口穴26(27)の環状斜面26c(27c)と筒状流路突起43H(43D)の環状斜面43cとの間に、Oリング46が挟着されて圧縮され、内部流路44によって、外部開口穴16と26(外部開口穴17と27)が連通する。
【0031】
従って、本実施形態の4バルブダイヤフラムポンプは、図2のように、アッパハウジング10とロアハウジング20を組み合わせ、アッパハウジング10の筒状流路突起43H(43D)をロアハウジング20の接続穴42H(42D)に嵌めるだけで、外部開口穴26(27)の環状斜面26c(27c)と筒状流路突起43H(43D)の環状斜面43cとの間にOリング46を圧縮し、内部流路44によって、外部開口穴16と26(外部開口穴17と27)を連通させ、液密構造を得ることができる。
【0032】
アッパハウジング10とロアハウジング20の間には、圧電振動子30と脈動軽減ダイヤフラム301(302)が挟着される。すなわち、圧電振動子30は、アッパハウジング10とロアハウジング20の間に、Oリング33、34を介して液密に挟着保持され、凹部13aとの間にアッパポンプ室13を構成し、凹部23aとの間にロアポンプ室23を構成する。また、脈動軽減ダイヤフラム301(302)の周縁ビード部303(304)は、ロアハウジング20の環状溝203(204)に嵌められ、アッパハウジング10の環状突起103(104)を環状溝203(204)に嵌めることで周縁ビード部303(304)が圧縮される。その結果、脈動軽減ダイヤフラム301(302)の図の上下にそれぞれ、液密(気密)の吸入側液室101(吐出側液室102)と空気室201(202)が形成される。
【0033】
以上の圧電ポンプは、圧電振動子30が正逆に弾性変形(振動)すると、前述のように、アッパポンプ室13とロアポンプ室23のいずれか一方の容積が増大し他方の容積が減少する。アッパポンプ室13の容積が増大する行程はロアポンプ室23の容積が減少する行程であり、アッパポンプ室13の容積が増大するから吸入側逆止弁11が開いて吸入ポート31からアッパポンプ室13内に流体が流入し、ロアポンプ室23の容積が減少するからロアポンプ室23内の流体が吐出側逆止弁22を開いて吐出ポート32に流出する。逆にアッパポンプ室13の容積が減少する行程はロアポンプ室23の容積が増大する行程であり、ロアポンプ室23の容積が増大するから吸入側逆止弁21が開いて吸入ポート31からロアポンプ室23内に流体が流入し、アッパポンプ室13の容積が減少するからアッパポンプ室13内の流体が吐出側逆止弁12を開いて吐出ポート32に流出する。
【0034】
このポンプ作用中においては、吸入側外部開口穴16と吐出側外部開口穴17内の圧力が変動する。この圧力変動は、連通路16aと17aを介して吸入側液室101と吐出側液室102に及び、吸入側液室101(吐出側液室102)の圧力が上昇するときには、脈動軽減ダイヤフラム301(302)が空気室201(202)側に弾性変形し、下降するときには、吸入側液室101(吐出側液室102)側に弾性変形する。このため、吸入ポート31と吐出ポート32内の液体圧力に表れる脈動(振動)を減少させる作用をする。
【0035】
以上の実施形態では、アッパハウジング10の筒状流路突起43H(43D)をロアハウジング20の接続穴42H(42D)に嵌めるだけで液密構造を達成できるという利点があるが、例えば外部開口穴26(27)の開口端を別の部材によって塞ぐことで液密を保持することも可能であり、この場合には筒状流路突起43H(43D)と接続穴42H(42D)の液密を例えばOリングで確保すればよい。
【0036】
以上の実施形態では、アッパハウジング10に吸入ポート31と吐出ポート32の双方を設けたが、ロアハウジング20に両ポートを形成し、あるいはアッパハウジング10とロアハウジング20にそれぞれ一つずつのポートを設けることもできる。その際のルールは、吸入側筒状流路突起を有する側のハウジングに、吸入ポートを設け、吐出側筒状流路突起を有する側のハウジングに、吐出ポートを設けるというルールである。また、図示実施形態では、吸入ポート31と吐出ポート32(吸入側外部開口穴16(26)と吐出側外部開口穴17(27))をハウジング10(20)の反対側に延長したが、同一の側に延長させてもよい。
【0037】
以上の実施形態は、4バルブダイヤフラムポンプに本発明を適用したものであるが、本発明は2バルブダイヤフラムポンプにも適用できる。図6は、その実施形態であり、図2において、吸入側逆止弁21、吐出側逆止弁22及びその関連構成を除去し、ロアハウジング20に、凹部23aと、空気室201(202)だけを形成した実施形態に相当する。凹部23aと圧電振動子30によって空気室Aが構成される。この他の構成は、図2の実施形態と同一であり、同一要素には同一の符号を付した。
【0038】
また、以上の実施形態では、脈動軽減ダイヤフラム301(302)を、筒状流路突起43H(43D)と逆止弁11、12、21、22の間に設けているが、筒状流路突起43H(43D)と吸入ポート31、吐出ポート32の間に設けてもよい。
【0039】
以上の実施形態では、ダイヤフラムとして圧電振動子を例示したが、本発明は他の振動するダイヤフラムを用いた液体ポンプに広く適用できる。
【0040】
上記実施形態では、ハウジング及びこれに関連する要素に便宜上「アッパ」「ロア」の名前を付けたが、使用状態でのそれを限定するものではないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を4バルブダイヤフラムポンプ(圧電ポンプ)に適用した実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面展開図である。
【図3】図2のIII部拡大断面図である。
【図4】図2のIV部拡大断面図である。
【図5】(A)、(B)は、ロアハウジングから突出させた筒状流路突起の形状例とOリングの関係を示す、見る方向を変えた斜視図である。
【図6】本発明を2バルブダイヤフラムポンプ(圧電ポンプ)に適用した実施形態を示す、図2に対応する断面展開図である。
【図7】(A)、(B)は、4バルブダイヤフラムポンプの原理を示すスケルトン図である。
【符号の説明】
【0042】
10 アッパハウジング
11 12 21 22 逆止弁
13 アッパポンプ室
13a 凹部
14H 24H 吸入側流路
15D 25D 吐出側流路
16 26 吸入側外部開口穴
17 27 吐出側外部開口穴
20 ロアハウジング
23 ロアポンプ室
23a 凹部
30 圧電振動子(ダイヤフラム)
31 吸入ポート
32 吐出ポート
33 34 Oリング
40 自由液流路
40 外部開口穴
26a 27a 大径穴
26b 27b 小径穴
26c 27c 環状斜面
42H 42D 接続穴
43H 43D 筒状流路突起
43a 太径部
43b 細径部
43c 環状斜面
44 内部流路
46 Oリング
101 吸入側液室(凹部)
102 吐出側液室(凹部)
103 104 環状突起
201 202 空気室(凹部)
203 204 環状溝
301 302 脈動軽減ダイヤフラム
303 304 周縁ビード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動ダイヤフラムを一対のハウジングで挟着して該振動ダイヤフラムの上下の少なくとも一方にポンプ室を形成し、該ポンプ室と吸入ポートとの間に該吸入ポートから該ポンプ室への流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吸入側逆止弁を設け、上記ポンプ室と吐出ポートとの間に該ポンプ室から吐出ポートへの流体流を許容しその逆方向の流体流を許さない吐出側逆止弁を設け、振動ダイヤフラムを振動させてポンプ作用を得るダイヤフラムポンプにおいて、
上記一対のハウジングの間に、上記振動ダイヤフラムとは平面位置を異ならせて、上記吸入ポート及び吐出ポートに対応する一対の弾性材料からなる脈動軽減ダイヤフラムを挟着し、かつ、
上記一対のハウジングにそれぞれ、該一対の脈動軽減ダイヤフラムの上下にそれぞれ可変容積の液室と空気室を画成する凹部を形成し、この一対の可変容積の液室をそれぞれ上記吸入ポート及び吐出ポートに連通させたことを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記脈動軽減ダイヤフラムは、平面円形でその周縁に、一対のハウジングによって液密に挟着される環状ビードを備えているダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
請求項1または2記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記ポンプ室は、振動ダイヤフラムの上下にそれぞれ形成されており、この一対のポンプ室と単一の吸入ポートの間及び同一対のポンプ室と単一の吐出ポートの間にそれぞれ上記吸入側逆止弁と吐出側逆止弁が設けられているダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
請求項3記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記振動ダイヤフラムを挟着する一対のハウジングにはそれぞれ、上記一対のポンプ室の一方を形成する凹部と、該凹部に連通し該ハウジングの外面に開口する吸入側外部開口穴と吐出側外部開口穴が形成されており、
一対のハウジングの一方と他方に、互いに嵌合関係となって両ハウジングの吸入側外部開口穴と吐出側外部開口穴とを互いに連通させる対をなす筒状流路突起と接続穴とが形成されており、
一対のハウジングのうち、筒状流路突起を有する側のハウジングに、吸入側外部開口穴に連通する上記吸入ポートと、吐出側外部開口穴に連通する上記吐出ポートが形成されているダイヤフラムポンプ。
【請求項5】
請求項4記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記吸入ポートと吐出ポートは、一対のハウジングのいずれか一方に双方が設けられているダイヤフラムポンプ。
【請求項6】
請求項4または5記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記一対のハウジングはともに合成樹脂材料の成形品からなっているダイヤフラムポンプ。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記筒状流路突起は、太径部と、この太径部の上部に位置する細径部と、この太径部と細径部を分ける軸線に対して直交しない環状斜面とを有し、
上記外部開口穴は、大径穴と、この大径穴より内側に位置する小径穴と、この大径穴と小径穴の境界に位置し上記接続穴が連通する、上記筒状流路突起の環状斜面に対応する軸線に対して直交しない環状斜面とを有し、
上記筒状流路突起の細径部に嵌めたOリングがこの両環状斜面の間に圧縮挟着されて液密を保持するダイヤフラムポンプ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項記載のダイヤフラムポンプにおいて、上記振動ダイヤフラムは圧電振動子であるダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−180163(P2009−180163A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20423(P2008−20423)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】