説明

ダンパ装置、離接機構、定着装置及び画像形成装置

【課題】簡単な構成による定着ローラ11及び加圧ローラ13の離接機構30。
【解決手段】ダンパ装置50は、回転自在に支持された軸部52と、軸部52に保持され、軸部52の回転に所定の負荷を付与するワンウェイベアリング60を備えたギヤ51とを有し、前記ギヤ51は、一方向に回転することで軸部52を固持し、一方向と反対方向に回転することで軸部52を所定負荷まで保持する。ギヤ部51は、所定負荷を越えて負荷が付与されたときは、一定の空転トルクで空転するように構成されている。離接機構30は、ダンパ装置50と、離接部材である定着ローラ11及び加圧ローラ13と、ギヤ51の回転により動作するカム37と、カム37との当接によって移動するレバー32とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置、離接機構、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダンパ装置、離接機構、定着装置及び画像形成装置に使われる動力切替装置は、複数の平行に配設され、回転自在に支持されたシャフト(軸)と、所定の方向に回転させようとしたときにロックするワンウェイベアリングを内蔵したワンウェイギヤを有する動力切替装置である。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、このような、ワンウェイベアリングを内蔵したワンウェイギヤを有する動力切替装置の技術が開示されている。即ち、第1及び第2の軸と、第1のワンウェイベアリングを内蔵した第1のワンウェイギヤと、第2のワンウェイベアリングを内蔵した第2のワンウェイギヤと、第3のワンウェイベアリングを内蔵した第3のワンウェイギヤとを有する動力切替装置であって、更に、本動力切替装置は、第1のワンウェイギヤと噛合する第1の出力ギヤと、第2のワンウェイギヤ及び第3のワンウェイギヤと噛合する第2の出力ギヤと、第1の軸に連結されたモータとを有する。このモータを正逆反転させて、第1のギヤを回転させたり停止させたりすることができると共に、第2の出力ギヤを同じ方向に回転させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−152054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のダンパ装置、離接機構、定着装置及び画像形成装置においては、複数のワンウェイベアリングによる複雑な構成が必要となり、装置も大型化するという課題あった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパ装置は、回転自在に支持された軸部と、前記軸部に保持され、前記軸部の回転に所定の負荷を付与するダンパ部を備えたギヤ部とを有し、前記ギヤ部は、一方向に回転することで前記軸部を固持し、前記一方向と反対方向に回転することで前記軸部を所定負荷まで保持することを特徴とする。
【0007】
本発明の離接機構は、前記ダンパ装置と、前記ギヤ部の回転方向により、少なくとも2以上の離接する離接部材を保持する離接部とを有している。
【0008】
本発明の定着装置は、前記離接機構を備え、第1の前記離接部材は、定着ローラであり、第2の前記離接部材は、加圧ローラであることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置は、前記定着装置と、前記ギヤ部に駆動力を付与する駆動源とを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明のダンパ装置によれば、一方向に回転するときには、軸部をロックして回転し、前記一方向と反対方向に回転する時には、一定の空転トルクで空転するので駆動源からの駆動力の伝達を所定負荷まで伝達することができる。
【0011】
本発明の離接機構によれば、上記のダンパ装置を用いることで、二つの方向の回転を用いた離接機構30の構造の簡略化が可能になる。
【0012】
本発明の定着装置及び画像形成装置によれば、離接機構の構造の簡略化に伴い、装置の小型化、及びコストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1の定着ユニットにおける離接機構の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置の概略を示す構成図である。
【図3】図3は図2中の定着ユニットの構成を示す断面図である。
【図4】図4は図2中の定着ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】図5は図1中のダンパ装置の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は図5中のワンウェイギヤに内蔵されたワンウェイベアリングの内部の構成を示す断面図である。
【図7】図7は図6の拡大部分断面図である。
【図8】図8は図7のA−A断面図である。
【図9】図9は図1中の離接機構の動作を示す説明図である。
【図10】図10は実施例2における図1中のダンパ装置の構成を示す斜視図である。
【図11】図11は図10のダンパ装置の変形例を示す構成図ある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0015】
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置の概略を示す断面図である。
【0016】
画像形成装置は、例えば、プリンタであって、用紙等の記録媒体Pを搬送する用紙搬送部1、記録光露光部材としての発光ダイオード(以下「LED」という。)ヘッド3、記録光に応じたトナー像を形成する現像装置であるトナー像形成部2、及び記録媒体P上にトナー像を定着させる定着装置である定着ユニット10からなる。記録媒体Pの搬送順にトナー像形成部2、定着ユニット10と配置されている。LEDヘッド3はトナー像形成部2に隣接して配置されている。
【0017】
このような構成の画像形成装置では、図示しない印刷制御部が印刷指示を受けると、用紙搬送部1によって画像形成のタイミングに合わせて記録媒体Pをトナー像形成部2へ搬送する。LEDヘッド3は印刷情報に応じた記録光をトナー像形成部2へ照射し、トナー像形成部2は照射された記録光に応じたトナー像を記録媒体P上に形成する。その後、用紙搬送部1によって記録媒体Pが、定着ユニット10へ搬送されると、定着ユニット10の熱と圧力によって記録媒体P上のトナー像が定着されて排出される。画像形成装置の動作は、図示しない制御部によって制御される構成になっている。
【0018】
(実施例1の定着ユニット)
図3は、図2中の定着ユニットの構成を示す断面図である。
【0019】
定着ユニット10は、印刷媒体Pを搬送しながら記録媒体Pに熱を供給する定着ローラ11と、定着ローラ11を加熱する加熱手段としてのヒータ12と、加圧部材としての加圧ローラ13と、加圧ローラ13を加熱する加熱手段としてのヒータ14と、定着ローラ11の表面温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ15と、加圧ローラ13の表面温度を検知する温度検知部材としてのサーミスタ16とを有している。
【0020】
更に、定着ユニット10は、定着ローラ11及び加圧ローラ13を保持する離接部であるフレーム17−1を有している。記録媒体P上には、トナー4によるトナー像が形成されており、記録媒体Pは、媒体搬送方向Xから定着ユニット10に搬送される。
【0021】
図4は、図2中の定着ユニットの構成を示す斜視図である。
定着ユニット10は、離接部である対向するフレーム17−1及び17−2と、これらの上部を嵌着するロッド部材18と、フレーム17−1側に設けられたリリース装置である離接機構30と、フレーム17−1及び17−2の間に設けられた離接部材である定着ローラ11及び加圧ローラ13とから構成されている。記録媒体Pは、記録媒体搬送方向Xから搬送される。
【0022】
定着ローラ11は、定着ユニット10のフレーム17−1にベアリングを介して回転自在に保持されている。また、加圧ローラ13は、フレーム17−1に対して軸部31を中心に回動自在に保持されるレバー32にベアリングを介して回転自在に保持されており、レバー32の動作により、定着ローラ11と接離可能に配設されている。更に、本実施例1において、定着ユニット10は、印刷動作が完了すると、第1の離接部材である定着ローラ11から第2の離接部材である加圧ローラ13を離間(リリース)して、各ローラが常時圧接することによる各ローラの変形を防止するように構成されている。
【0023】
本実施例1では、この定着ユニット10の離接動作を行う際、定着ユニット10を駆動する駆動源の回転方向の切換えを利用した定着ローラ11と加圧ローラ13の離接動作において、本実施例1のダンパ装置を利用することで、ギヤの組み換えを必要しない簡単な構成での駆動方向の切換とそれを用いた各ローラの離接機構30を実現している。
【0024】
(実施例1の離接機構)
図1は、本発明の実施例1の定着ユニットにおける離接機構の構成を示す斜視図である。
【0025】
離接機構30は、定着ローラ11の駆動系の回転方向に応じて、各ローラの圧接と離間を制御する機能を有している。離接機構30は、図示しない駆動源からの駆動力や回転を伝達する伝達部材としてのギヤ33と、ギヤ33からの駆動力や回転を伝達する伝達部材としてのギヤ34とを有している。駆動源は、本実施例1では、2方向に回転できるステッピングモータである。
【0026】
ギヤ34は、第1の離接部材であり、定着部材である定着ローラ11の芯金と同軸上に固定されて備えられており、ギヤ34の回転は、定着ローラ11の回転となる。離接機構30は、ギヤ34からの駆動力や回転を伝達する伝達手段であるワンウェイギヤ51を有しており、ワンウェイギヤ51は、動力を切り替える手段としてのダンパ部(例えば、ワンウェイベアリング)60を内蔵している。このワンウェイベアリング60は、所定の方向に回転させるとロックしてその駆動力を伝達し、所定の方向と逆方向に回転させたときに、所定の負荷以上の負荷が付与されると軸に対して空転して駆動力を伝達しないように構成されている。
【0027】
ワンウェイギヤ51は、定着ユニット10のフレーム17−1に対して、回転自在に支持され、また、ワンウェイベアリング60の駆動力や回転を伝達する手段の伝達支持体である軸52に支持されている。離接機構30は、更に、ワンウェイベアリング60がロックする方向に回転したときの軸52の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてのギヤ53と、ギヤ53の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてギヤ54と、ギヤ54の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてギヤ35とを有している。
【0028】
離接機構30は、また、離接部材としてギヤ35の駆動力や回転を伝達し、回転自在に支持された伝達支持体としての軸36と、軸36の駆動力や回転を伝達する伝達手段と加圧ローラ13を、軸31を中心に回転自在に支持する支持体としてのレバー32と、レバー32の位置を制御する伝達位置制御体としてのカム37と、レバー32を通して第2の離接部材であり、加圧部材である加圧ローラ13に荷重(付勢力)を加える付勢部材であるスプリング38とを有している。
【0029】
カム37とギヤ35は、軸36にロックピンによって固定されており、軸36が回転するときは、カム37とギヤ35は同じ方向に回転する。また、カム37の鉛直方向下方には、カム部である扇状のカム37の一方のカム端部37aと当接する位置出しプレート39が備えられている。位置出しプレート39は、媒体搬送方向Xにおける上流側の端部が、定着ユニット10における離接機構30のフレーム17−1に固定されており、X方向に延設されている。つまり、位置出しプレート39は、カム37によって付与される所定の力により、鉛直方向(−Z方向)へ変形することで、媒体搬送方向下流側端部が移動可能に備えられている。
【0030】
なお、扇状のカム37の一方のカム端部37aは、カム37が図1の矢印k方向に回転したときに最初に位置出しプレート39と接触する。このとき、カム37は位置出しプレート39と接触しており、矢印k方向の回転は、ワンウェイギヤ51が空転する方向なので、軸52に駆動力を伝達せず、ワンウェイギヤ51のみが空転する。
【0031】
次に、カム37と位置出しプレート39が接触した状態から、図1又は図9中の矢印d方向に所定量回転し、レバー32のカム37との接触部32aと接触し、レバー32を押すことで、レバー32が軸31を中心にi方向に回転し、定着ローラ11と加圧ローラ13とを所定量t離間させることができる。その扇状のカム37とレバー32との接触位置を、カム37の離間位置37bとする。なお、このとき、レバー32を介したスプリング38のレバー32に向いた押圧力方向Cと、カム37と、軸52とが直線上に並び、カム37の回転方向における力関係のバランスが均等化し、カム37は回転しない状態となる。この状態では、カム37とレバー32の接触位置を移動させない限り、つまり外力によってカム37を回転させない限り、定着ローラ11と加圧ローラ13は離間した状態を維持する。
【0032】
定着ローラ11と加圧ローラ13は離間した状態から、カム37を矢印d方向に回転させると、レバー32に対するカム37の接触位置が移動し、レバー32を介したスプリング38の押圧力方向と、カム37の力ム部と、軸52のバランスが崩れ、レバー32を介したスプリング38の押圧力によりカム37が回転する。これにより、レバー32が回転軸31を中心にh方向に回転して、加圧ローラ13を定着ローラ11に向けて移動させることにより加圧ローラ13と定着ローラ11が接触する。レバー32からカム37が離間すると、スプリング38によってレバー32が回転し、スプリング38の付勢力によって、加圧ローラ13が定着ローラ11に押圧される。
【0033】
なお、カム37の回転、つまり軸52の回転に必要な力は、定着ローラ11、加圧ローラ13の各々単体での回転に必要な力や、スプリング38による定着ローラ11と加圧ローラ13の押圧力、更にはレバー32の回転中心と加圧ローラ13との位置関係など様々な要因から決定される。本実施例1では、カム37の回転に必要な力は90gf・cmとする。
【0034】
ここで、ワンウェイギヤ51が一方向と反対方向に回転して空転するとき、つまり、定着ユニット10が記録媒体Pを媒体搬送方向Xへ搬送する回転をするときは、駆動源が正方向に回転している、つまり、正転しているとし、逆にワンウェイギヤ51が一方向に回転してロックするとき、つまり、定着ユニット10が記録媒体Pを、図3に示す媒体搬送方向Xと反対方向へ搬送するような方向へ回転するときは駆動源が逆方向に回転している、つまり、逆転しているとする。
【0035】
(実施例1のダンパ装置)
図5は、図1中のダンパ装置の構成を示す斜視図である。
【0036】
ダンパ装置50は、ワンウェイベアリング60を内蔵したワンウェイギヤ51と、ワンウェイベアリング60がロックする方向に回転したときの軸52の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてのギヤ53と、ギヤ53の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてギヤ54と、ギヤ54の駆動力や回転を伝達する伝達部材としてギヤ55とを有している。
【0037】
本実施例1において、ダンパ装置50は、ワンウェイギヤ51が軸52をロックするときはもちろん、ロックするときとは、逆回転である空転方向に回転するときも、カム37を回転させるために必要な力以上を伝達する必要がある。一方で、カム37が位置出しプレート39と接触した状態で、駆動源が正転するときは、カム37が回転しないように空転する必要がある。また、ダンパ装置50は、空転時のトルクが第1の所定値以上であり、且つ第2の所定値以下に設定する必要がある。上述の通り、カム37の回転には、本実施例1の離接機構30は、例えば、90gf・cmの駆動力が必要となる。
【0038】
従って、本実施例1にけるダンパ装置50は、例えば、100gf・cm〜200gf・cmの負荷が発生し、つまり駆動力であるトルクを発生させるワンウェイベアリング60を内蔵する駆動力切替手段としてのワンウェイギヤ51をもつ。ワンウェイベアリング60の空転時のトルクは、ワンウェイギヤ51内のS字形状の板ばねの強さによって決定される。
【0039】
このような構成のダンパ装置50では、ワンウェイギヤ51に内蔵するワンウェイベアリング60が図5のa´方向のロック方向に回転したときに、ワンウェイベアリング60と一緒に軸52が回転する。軸52は、Dカット形状を有し、同様のDカット形状の穴を持ち軸52に挿入される駆動力回転伝達手段としてのギヤ53を持つ。ダンパ装置50は、更に、駆動力回転伝達手段としてのギヤ54、ギヤ55、及びそれを支える軸56を持ち、前記ギヤ53の駆動力や回転はギヤ54へ伝達される。
【0040】
(実施例1のワンウェイギヤ)
図6は、図5中のワンウェイギヤに内蔵されたワインウェイベアリングの内部の構成を示す断面図であり、図7(a)、(b)は、図6の拡大部分断面図であり、図8は、図7のA−A断面図である。
【0041】
ワンウェイギヤ51には、ワンウェイベアリング60が内蔵されている。以下に、ワンウェイベアリング60の空転トルク特性を左右する要素を詳細に説明する。
【0042】
図6及び図7(a)、(b)は、ワンウェイギヤ51ワンウェイギヤ51に内蔵されたワンウェイベアリング60内部の構造の例を示す図であり、ワンウェイベアリング60は、ハウジング61、スリーブ62、リテーナ63、ニ一ドル64、S字状の板ばねであるスプリング65から構成されている。ワンウェイベアリング60の穴には、軸52が挿入されている。
【0043】
図7(a)において、反時計回り方向であるL方向にハウジング61を回転させたとき、ニードル64が、軸52をロックして、ハウジング61に対して相対移動しないときが、ワンウェイベアリング60のロック時となる。図7(b)において、逆に時計回り方向であるR方向にハウジング61を回転させたとき、ニードル64が、軸52をフリーにして、ハウジング61に対して相対移動するときがワンウェイベアリング60の空転時となる。即ち、反時計回り方向にハウジング61を回転させると、この回転にともなって、図7(a)に示すように、ニ一ドル64が挟持部に押し込まれるため、ニ一ドル64が軸52を押圧する押圧力が大きくなる。この押圧力によって、ニ一ドル64が軸52の回転をロックしてしまう。軸52がロックされると、この軸52は、ハウジング61に対して相対回転することができない。したがって、軸52がハウジング61にともなって反時計回り方向に回転する。
【0044】
一方、時計回り方向にハウジング61を回転させると、図7(b)に示すように、この回転にともなって、ニ一ドル64は、スリーブ62に沿って、スプリング65を撓ませながらスプリング65の方向に移動する。このようにニードル64が、スプリング65の方向に移動すると、このニードル64は、ハウジング61の回転にともなって回転する。すなわちこのニードル64が軸52に強く押付けられることがないので、このニードル64は、ハウジング61と軸52との相対回転をロックしない。空転時のトルクは、スプリング65がニ一ドル64に加える力で調整されている。
【0045】
図8では図7(a)、(b)のスプリング65が、S字の板ばね形状の場合の例を示している。S字の板ばねであるスプリング65の板厚や変形量等を調整してニ一ドル64に加える力が調整されている。更に、S字の板ばねを金属材料により金型で製造する場合、ばり面側が曲げの外側になる箇所があり、ニードル64に加える力を大きくし、なお且つ、折れなくするには、S字の板ばねの材料や形状等を調整する必要がある。本実施例1では、S字の板ばねであるスプリング65は、材料を例えば、SUS304とし、厚みを0.2mmとすることで、空転時のトルクを100gf・cm〜200gf・cmとすることができる。
【0046】
なお、本実施例1では空転時のトルクを、カム37を回転させるトルクから決定しているが、回転対象を回転させるために必要なトルクから適宣決定すれば良い。
【0047】
(実施例1の離接機構の動作)
図9は、図1中の離接機構の動作を示す説明図である。
【0048】
印刷動作時、つまり定着ローラ11と加圧ローラ13が接触して回転しているときは、ワンウェイギヤ51のワンウェイベアリング60が空転する方向に図示せぬ制御部によって図示せぬ駆動源が回転して、図1に示すギヤ33が回転すると、ギヤ34が回転する。ギヤ34の回転により、ギヤ34に固定されている定着ローラ11は回転する。加圧ローラ13は、従動ローラであり、接触している定着ローラ11の回転によって回転する。このとき、ワンウェイギヤ51は、軸52に対して空転方向に駆動するが、空転トルクによって軸52を回転できる。
【0049】
即ち、軸52は、カム37が他の部材に回転を阻害されない限り、ワンウェイギヤ51の空転トルクによって駆動力を伝達される。つまり、カム37は、図1中のkの方向に回転することができる。軸52の回転は、ギヤ53、ギヤ54、ギヤ35に順次伝達し、ギヤ35が固定された軸36を回転する。軸36が回転することで、軸36に固定されているカム37が、位置出しプレート39に押し付けられる。ここで、カム37のカム端部37aと位置出しプレート39とが当接した状態を、本実施例1では、ホームポジションとする。
【0050】
通常の印刷時は、駆動源を正転し続けて、定着ローラ11を、記録媒体Pを搬送方向する方向に回転してギヤ34を回転させている。カム37のカム端部37aと位置出しプレート39とが当接することにより、カム37の回転は阻害され、カム37の回転必要トルクは、例えば、空転トルク200gf・cmを大きく越えるため、ワンウェイギヤ51は空転を開始し、カム37は、位置出しプレート39と当接した状態以上に回転することができない。従って、印刷動作時は、図9(a)に示すように、カム37は常にホームポジションに位置し続ける。このとき、定着ローラ11と加圧ローラ13は、スプリング38によって圧接している。
【0051】
次に印刷が完了した後の動作について説明する。印刷が完了すると、定着ユニット10は、離接機構30によって、定着ローラ11と加圧ローラ13とを離間するリリースポジションに移行する。
【0052】
駆動源は、印刷動作時と逆回転を開始する。
図1において、図示せぬ駆動源の回転は、ギヤ33を回転させるため、定着ローラ11も逆回転を開始する。このとき、ワンウェイギヤ51は、軸52をロックする方向に回転するため、軸52を確実にロックし、軸52を回転させる。軸52の回転は、ギヤ53、ギヤ54、ギヤ35を回転させ、更にギヤ35に固定されている軸36とカム37を先の印刷動作時とは逆方向であるd方向に回転させる。
【0053】
図9(b)において、カム37は、d方向に回転する。カム37は、その結果、レバー32をスプリング38の付勢力に反して、図9(b)の矢印e方向に押す。そのため、レバー32に固定されている加圧ローラ13を、定着ローラ11からf方向に離間させる。なお、このリリースポジションへの移行は、印刷動作時にカム37の位置を、位置出しプレート39と当接させることで基準となるホームポジションに位置させてあり、また、ワンウェイギヤ51が軸52をロックして滑ることがないために、駆動源を所定量、印刷時とは逆回転させることで、カム37を確実に所定量回転させることにより、毎回確実に定着ローラ11と加圧ローラ13を所定量離間することができる。この定着ローラ11と加圧ローラ13の離間した状態を、ローラリリース状態とする。このローラリリース状態は、カム37の形状、及びレバー32とスプリング38の付勢力とのバランスにより、次にカム37に対して回転駆動が加えられない限り、維持される。
【0054】
次に印刷を再開するときの動作について説明する。画像形成装置の制御部が印刷データを受信すると、制御部は、駆動源を所定量逆転させる。この逆転動作は、上述のリリースポジションへの移行動作と同様にカム37を図9(b)の矢印d方向に回転させる。カム37は、所定量回転させられる過程で、駆動源からの逆回転駆動力と、スプリング38の付勢力とのバランスにより、更に図9(c)の矢印d方向に回転し、レバー32から離間する。レバー32は、スプリング38の付勢力により、図9(c)の矢印g方向に回転し、定着ローラ11に対して加圧ローラ13をj方向に移動させて接触させる。次に、制御部は、駆動源を正転させることで、カム37はホームポジションに移行し、印刷を開始する。
【0055】
以上により、ダンパ装置50によるワンウェイギヤ51のロックと空転トルクを利用することで、ギヤの組み換えや駆動を切り替えるための複雑なギヤの配列や構成を必要としない、簡単な構成で駆動方向の切換と、それを用いた定着ローラ11と加圧ローラ13の離接機構30を実現している。
【0056】
(実施例1の効果)
本実施例1のダンパ装置50によれば、正転時には一定の空転トルクで空転し、逆転時には、軸部52をロックして回転するので駆動源からの駆動力の伝達を所定負荷まで伝達することができる。
【0057】
本実施例1の離接機構30によれば、上記のダンパ装置50を用いることで、ワンウェイギヤ51のワンウェイベアリング60が空転する方向に力が加わった場合でも、ギヤ53の回転量を制御することを可能とした。また、二つの方向の回転を用いた離接機構30の構造の簡略化が可能となる。
【0058】
本実施例1の定着装置10及び画像形成装置によれば、離接機構30の構造の簡略化に伴い、装置の小型化、及びコストダウンが可能になる。
【実施例2】
【0059】
(実施例2のダンパ装置)
本発明の実施例2の構成は、ダンパ装置50Aの構成を除き、実施例1と同様である。以下、実施例2におけるダンパ装置50Aについて説明する。
【0060】
実施例1では、ワンウェイギヤ51の空転トルクを任意の一定の値に設定することで、所定量までの駆動力の伝達を可能とした。しかし、ワンウェイギヤ51は小型が進んでおり、S字の板ばねであるスプリング65を格納できる空間にも限界があり、また、スプリング65の板ばねの厚さに対する変形量や応力が大きくなり板ばねの耐久性を低下させてしまう問題等があるため、空転側に回転するときに発生させる空転トルクを大きくすることは難しい。
【0061】
そこで、実施例2では、ワンウェイギヤ51Aの空転トルクを小さくし、空転トルクの発生部のみを別体化した。
【0062】
図10(a)、(b)は、実施例2における図1中のダンパ装置の構成を示す斜視図である。
【0063】
図10(a)において、ダンパ装置50Aは、空転時のトルクが30gf・cm以下の小型のワンウェイベアリング60Aを内蔵したワンウェイギヤ51Aを有している。更に、このワンウェイギヤ51Aが、ワンウェイベアリング60Aのロック方向に回転したときに、ワンウェイベアリング60Aと一緒に回転する駆動力回転伝達手段としての軸52Aを有している。そして、軸52Aは、Dカット形状をなしており、そのDカット形状部に、同様のDカット形状の穴を持つギヤ53Aが挿入されている。軸52Aには、トルクが100gf・cm以上のトルクリミッタ57が装着されている。
【0064】
図10(b)において、ギヤ53Aは、ギヤ54へ駆動力や回転を伝達する。ギヤ53Aは、ピン52aにより軸52Aに係止されている。空転トルク発生部であり負荷発生部であるトルクリミッタ57は、軸受け部55aを有しており、トルクリミッタ57と軸52Aとは、軸受け部55aに設けられた固定部55cによって固定される。また、トルクリミッタ57の外装部55bをワンウェイギヤ51Aに固定部55dを嵌合させることで固定する。
【0065】
トルクリミッタ57の軸受け部55aは、外装部55bに対して負荷発生部55eを介して回転可能に配設されている。したがって、軸受け部55aに対して外装部55bの回転は、負荷発生部55eにより所定量の負荷を付与されることになる。本実施例2では、上記の通り例えば、100gf・cm以上の負荷が発生するように構成されている。なお、負荷発生部55eは、本実施例2ではスプリングを内蔵したトルクリミッタ57を採用するが、オイルの粘度による負荷の調整なども採用できる。
【0066】
このような構成のダンパ装置50Aの動作は、実施例1と同様である。即ち、図10において、ワンウェイギヤ51Aに内蔵するワンウェイベアリング60Aがロック方向に回転したときに、ワンウェイベアリング60Aと一緒に軸52Aが回転する。軸52Aは、Dカット形状を有し、同様のDカット形状の穴を持ち軸52Aに挿入される駆動力回転伝達手段としてのギヤ53Aを持つ。ダンパ装置50Aは、更に、駆動力回転伝達手段としてのギヤ54、ギヤ55、及びそれを支える軸56を持ち、前記ギヤ53の駆動力や回転はギヤ54へ伝達される。
【0067】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1の効果に加え、空転トルクの発生をトルクリミッタ57によって発生させているため、ワンウェイギヤ51Aの構造を複雑にすることなく、実施例1よりも、より大きな空転トルクを発生させられる。カム37の回転に必要なトルクが比較的大きな場合でも、トルクリミッタ57による空転トルクでカム37を回転させることができる。また、空転トルク発生部であるトルクリミッタ57をワンウェイギヤ51Aと別体としたことで、ワンウェイギヤ51A内のS字の板ばねの発生させるトルクを弱めることができる。そのため、S字の板ばね応力発生を小さくできるので、S字の板ばねの長寿命化が図れる。従って、ワンウェイギヤ51Aの長寿命化に繋がる。また、トルクリミッタ57単体での負荷の制御を可能にするため、トルクリミッタ57単体での性能を確保することで、装置寿命までの空転トルクの安定化と空転トルクの信頼性の向上を図ることができる。
【0068】
(実施例2の変形例)
図11は、図10のダンパ装置の変形例を示す構成図である。
【0069】
空転時のトルクが例えば、30gf・cm以下のワンウェイベアリング60Bを内蔵したワンウェイギヤ51Bを有している。更に、ワンウェイギヤ51Bが、ワンウェイベアリング60Bのロック方向に回転したときに、ワンウェイベアリング60Bと一緒に回転する軸52Bを有している。そして、軸52Bは、Dカット形状をなしており、そのDカット形状部に、同様のDカット形状の穴を持つギヤ53Bが挿入されている。更に、ギヤ53Bとギヤ51Bとの間には1枚、若しくは複数のプレート71があり、プレート71の間に荷重を加えるための凸部を有した複数のウェープワッシャ72が挿入されている。そして、プレート71間の隙間をワンウェイベアリング60Bが空転する方向の軸52Bのトルクを例えば、100gf・cm以上、且つ、200gf・cm以下に設定するためにギヤ53Bとワンウェイギヤ51Bの両側にストッパとしての止め輪73が装着されている。なお、本変形例では、ウェーブワッシャ72を2枚用いている。このウェーブワッシャ72によって発生する負荷によって、53Bは、ギヤ54へ駆動力や回転力を伝達する。つまり、ウェーブワッシャ72の厚さ(本変形例では、0.2mm)と凸部の高さ、及びプレート71の間隔(=tmm)によって、空転トルクが決定される。
【0070】
このような構成のダンパ装置50Bの動作は、実施例1と同様である。即ち、図11において、ワンウェイギヤ51Bに内蔵するワンウェイベアリング60Bがロック方向に回転したときに、ワンウェイベアリング60Bと一緒に軸52Bが回転する。軸52Bは、Dカット形状を有し、同様のDカット形状の穴を持ち軸52Bに挿入される駆動力回転伝達手段としてのギヤ53Bを持つ。ダンパ装置50Bは、更に、駆動力回転伝達手段としてのギヤ54、ギヤ55、及びそれを支える軸56を持ち、前記ギヤ53の駆動力や回転はギヤ54へ伝達される。
【0071】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
【0072】
(a) 駆動方向の変更に応じてローラを離接する定着装置10を例として説明したが、駆動によって離接する装置ならば多くの装置に適用可能であり、例えば、現像装置において、感光体と転写部とを有する場合、正転方向に駆動することで感光体と転写部とを接触させて媒体にトナー像を形成し、逆転方向に駆動することで感光体と転写部を離間させても良い。
【0073】
(b) 画像形成装置1として、プリンタに適用した例を用いて説明したが、プリンタだけではなく複写機、ファクシミリ、MFP等であっても利用可能である。
【0074】
(c) 記録媒体Pとしては、普通紙のほかにOHPシート、カード、葉書、秤量が200/m相当以上の厚紙、封筒、熱容量の大きいコート紙等の特殊紙を使用することができる。
【0075】
(d) 定着装置10は、画像形成装置に対して一体的に装着されても、画像形成装置から脱着可能となっていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 用紙搬送部
2 トナー像形成部
3 LEDヘッド
4 トナー
10 定着ユニット
11 定着ローラ
13 加圧ローラ
17−1,17−2 フレーム
30 離接機構
31 軸部
32 レバー
32a 接触部
33,34,35 ギヤ
36 軸
37 カム
37a カム端部
38 スプリング
39 位置出しプレート
50,50A,50B ダンパ装置
51,51A,51B ワンウェイギヤ
52,52A,52B 軸
53,53A,53B ギヤ
54,55 ギヤ
56 軸
57 トルクリミッタ
60 ワンウェイベアリング
61 ハウジング
62 スリーブ
63 リテーナ
64 ニードル
65 スプリング
71a,71b プレート
72 ウェーブワッシャ
73 止め輪
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持された軸部と、
前記軸部に保持され、前記軸部の回転に所定の負荷を付与するダンパ部を備えたギヤ部とを有し、
前記ギヤ部は、
一方向に回転することで前記軸部を固持し、前記一方向と反対方向に回転することで前記軸部を所定負荷まで保持することを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記ギヤ部は、前記所定負荷を越えて負荷が付与されたときは、一定の負荷で空転するダンパ部を有することを特徴する請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記一定の負荷は、100gf・cm以上であることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記ダンパ部は、ワンウェイベアリングであることを特徴とする請求項2または3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記ダンパ装置は、
負荷が第1の負荷以下であるワンウェイベアリングを有するギヤ部と、
前記軸部に装着され、その負荷が第2の負荷以上であるダンパ部
とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1の負荷は、30gf・cmであり、前記第2の負荷は、100gf・cmであることを特徴とする請求項5に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記ダンパ部は、トルクリミッタであることを特徴とする請求項5または6に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記ダンパ部は、前記空転トルクを発生させるスプリングを内蔵していることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載のダンパ装置と、
前記ギヤ部の回転方向により、少なくとも2以上の離接する離接部材を保持する離接部と、
を有することを特徴とする離接機構。
【請求項10】
前記離接部は、
前記ギヤ部の回転により動作するカム部と、
前記カム部との当接によって移動するレバー部と、
を有することを特徴とする請求項9に記載の離接機構。
【請求項11】
前記ギヤ部は、前記反対方向に回転することで、前記一定の負荷で前記カム部を回転させて前記離接部材を接触させ、更に、前記一方向に回転することで、前記軸部を固持して前記カム部を回転させ、前記レバー部に当接して押圧し、前記離接部材を離間させることを特徴とする請求項10に記載の離接機構。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の離接機構を備え、
第1の前記離接部材は、定着部材であり、
第2の前記離接部材は、加圧部材である
ことを特徴とする定着装置。
【請求項13】
前記定着部材は、定着ローラであり、
前記加圧部材は、加圧ローラである
ことを特徴とする請求項12に記載の定着装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の定着装置と、
前記ギヤ部に駆動力を付与する駆動源と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
前記駆動源は、一方向及びその反対方向の2方向に回転可能なステッピングモータであることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−81148(P2011−81148A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232746(P2009−232746)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】