説明

ダンプトラックのボディマウント装置

【課題】 ブラケットの形状を簡素化するとともに、車両の軽量化を図ることのできるダンプトラックのボディマウント装置を提供する。
【解決手段】 一対の台座部11の着座面12は、車体の中心に対して左右対称に内側へ傾斜して配され、各着座面12に着座するブラケット5の着座面6は、着座面12の傾斜に沿わせて左右対称に外側に傾斜している。これにより、一対のブラケット5は、各着座面12に対して垂直方向に延設した配置構成となる。また、ブラケット5の上端縁8の中心は、補強部材21の延長線上に配されている。これにより、ブラケット5としての強度を有して、その形状を簡素化し、車両の軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックのボディを車体の中心方向に位置決めして支持するボディマウント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のダンプトラックのボディマウント装置としては、特許文献1に記載のボディ支持装置などに開示されている。特許文献1に記載されたボディ支持装置を本発明の従来例1として、図4には一般的なダンプトラックの概略側面図を示し、図5には特許文献1におけるボディマウント部の正面図を示している。特許文献1に記載されたボディ支持装置は、ダンプトラック31の荷台であるボディ32を車体フレーム36に回動自在に支持するヒンジピン34の構成に特徴を有している。しかし、本発明との関係では、ボディ32を車体の中心に位置決めして支持するボディマウント部39の配置構成が問題となるので、以下ではボディマウント部39の配置構成について説明を行う。
【0003】
図4に示すように、ダンプトラック31は、車体フレーム36上に荷台としてのボディ32を、ヒンジピン34を回動支点として昇降自在に支持している。また、車体フレーム36に設けた前部フレーム37とボディ32のボディ前面板33に設けたブラケット35とにより、ボディマウント部39が構成されている。ボディ32の下降時における、ボディ32の車体中心方向への位置決めと、ボディ32の支持とをボディマウント部39によって行っている。
【0004】
ボディマウント部39を正面から見た図5に示すように、ブラケット35は鉛直方向を向くようにボディ前面板33に取付けられている。ブラケット35の下端部に形成した一対の着座面35aが、前部フレーム37に形成した一対の着座面37aに当接して、ボディ32の車体中心方向への位置決め及びボディの支持が行われる。
【0005】
即ち、前部フレーム37に形成した一対の着座面37aは、車体の中心に向かって互いに逆向きに傾斜した形状に形成されており、各着座面37aにそれぞれ当接する一対の着座面35aには、着座面37aと対峙する向きの傾斜面が形成されている。対向する着座面35aと着座面37aとが当接することにより、ボディ1の車体中心方向への位置決めが行われるとともに、ボディ32の支持を行うことができる。
【0006】
また、対峙する着座面35aと着座面37aとの間には、ボディ32を着座させるときの衝撃を緩和するゴムパッド38が配設されている。
【特許文献1】特開平1−168534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたボディ支持装置では、図5の矢印で示す前部フレーム37の着座面37aからの反力を、一対のブラケット35がそれぞれ受けることになる。この反力によって、一対のブラケット35は互いに近接する水平方向の負荷力と垂直方向の負荷力とが同時に作用することになる。
【0008】
垂直方向の負荷力は、ボディ前面板33に対して鉛直方向に配設されたブラケット35に作用する圧縮力として抗することができるが、水平方向の負荷力は、一対のブラケット35に対する曲げモーメントとして作用することになる。曲げモーメントが作用することによって、一対のブラケット35は互いに近接する方向に変形することになる。
【0009】
これを防ぐためには、ブラケット35の長さを短く、例えば三角形状等に、構成して、水平方向の負荷力によってブラケットが水平方向に変形し難く構成したり、一対のブラケット35間に補強用のリブを構成したりすることが必要となる。あるいは、剛性を高めたブラケットを用いて構成することが必要となる。
【0010】
このように構成することによって、水平方向の負荷力に耐え得る構造とすることができるが、ブラケット35の長さを短く構成した場合には、前部フレーム37に形成する一対の着座面37aの高さ位置を高く構成しなければならない。一対の着座面37aの高さ位置を高く構成するためには、高さの高い前部フレーム37を構成しておかなければならず、車体フレームとしての重量が増大し、車両の重量を大きなものにしてしまう。
【0011】
また、一対のブラケット35間に補強用のリブを構成する場合でも補強用のリブを構成するための重量が必要となり、結果的に車両重量を増大させてしまう。更に、補強用のリブを構成するためには、ブラケット35の形状やボディ前面板33における配置構成が複雑なものになってしまう。
【0012】
水平方向の負荷力で変形しないように剛性を高めたブラケット35を用いて構成する場合には、ブラケット自体の重量が増大するとともに、剛性を高めたブラケット35を取付けるボディ前面板33の強度も高めておかなければならず、結果的に車両の重量を増大させてしまうことになる。
【0013】
本発明では、これらの不都合を解決し、ブラケットの形状を簡素化するとともに、車両の軽量化を図ることのできるダンプトラックのボディマウント装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願第1発明では、車体フレームと、車体の前後方向における後端部が、ヒンジピンを介して前記車体フレームに回動自在に取付けられた荷台と、前記荷台のボディ前面板に設けられた一対のブラケットと、前記車体フレームに設けられ、車体の左右方向に傾斜した一対の第1着座面を有する着座部と、を備え、前記各ブラケットの下端部に形成した第2着座面が、前記荷台の下降時に前記各第1着座面にそれぞれ当接してなるダンプトラックのボディマウント装置において、前記各第2着座面がそれぞれ前記各第1着座面に当接してなるとき、前記各ブラケットが、前記各第1着座面に対して垂直方向に延設した配置構成に形成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0015】
また、本願第2発明では第1発明の構成に、ボディ前面板に対する各ブラケットの取付け構成を特定したことを主要な特徴となしている。
更に、本願第3発明では第1発明又は第2発明の構成に、ボディ前面板の上下方向に配設した補強部材とブラケットの配置構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【0016】
更にまた、本願第4発明では第1発明乃至第3発明の構成に、第1着座面の構成を特定したことを主要な特徴となしている。
また、本願第5発明では第1発明乃至第4発明の構成に、対向する着座面間に緩衝部材を配設した構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【0017】
更に、本願第6発明では第1発明乃至第5発明の構成に、一対のブラケットの取付け方法を特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、ボディ前面板に取付けた一対のブラケットの取付け方向が、車体フレームに設けた第1着座面に対して垂直方向に延設した配置構成に形成されている。これによって、第1着座面からの反力を、反力の方向に沿って配設したブラケットの長手方向における圧縮力として全て受けることができる。このため、ブラケットに対して水平方向の負荷分力を発生させることがない。
【0019】
従って、上述した従来例のように水平方向の負荷分力に抗するための補強部材を設けたりすることなくブラケットを構成することができるので、ボディ前面板に取付けた一対のブラケットの形状を簡素化することができる。しかも、第1着座面からの反力を圧縮力として全て受けることができるので、ブラケットの受圧面積を設定すれば前記圧縮力による圧縮応力を調整することができる。このため、ブラケットの構成重量を増大させずに軽量化しても前記圧縮応力に抗する構成とすることができる。
【0020】
更に、水平方向の負荷分力に抗するための強度、補強材、構成形状を必要としない構成とすることができるので、車両重量を軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明のダンプトラックのボディマウント装置の構成としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0022】
図1には、ダンプトラック1におけるボディマウント装置15を示す要部斜視図を示している。ダンプトラック1の全体構成については、図4で示した構成と同様の構成を有しているので、ダンプトラック1の全体構成についての説明は、従来例の説明の欄で説明した図4の説明をもって代えることとする。
【0023】
また、図1では、荷台としてのボディ2が車体フレーム10に対して回動自在に支持されるヒンジピンについては図示していないが、図4において示している従来例と同様にヒンジピンを回動支点としてボディ2は昇降回動することができる構成となっている。
【0024】
ボディ前面板3には、一対のブラケット5が溶接により取付けられており、ブラケット5の上端部間の間隔よりも下端部間の間隔が広くなるように取付けられている。ブラケット5のボディ前面板3への取付け手段は、溶接による取付けに限定されるものではなく、他の公知の取付け手段を採用することができる。
【0025】
ブラケット5のボディ前面板3に取り付けた付根部7の上端縁8は、ボディ前面板3の上端縁と略平行に形成されており、ボディ前面板の上端部で、プロテクタ20の下方に配された補強部材21の延長線がブラケット5の上端縁8の略中心を通る配置関係に構成されている。図2に示すように、ブラケット5の下端部には、着座面6(本発明における第2着座面)が形成され、車体フレーム10に取付けた一対の台座部11にそれぞれ形成した着座面12(本発明における第1着座面)に当接することができる。尚、ブラケット5の着座面6と台座部11の着座面12との間には、ボディ2の下降時の衝撃を吸収する緩衝部材18が設けられている。
【0026】
緩衝部材18としては、例えば、一対の鋼板間に防振ゴム等の弾性部材をサンドウィッチ状に挟んだ構成のものを用いることができる。図示例の緩衝部材18は、台座部11の着座面12に取付けられた構成を示しているが、緩衝部材18をブラケット5の着座面6に取付けた構成とすることもできる。
一対のブラケット5と台座部11とによってボディマウント装置15が構成されている。
【0027】
ボディマウント装置15の正面図である図2に示すように、一対の台座部11における着座面12は、車体の中心に対して左右対称に内側へ傾斜した配置構成となっている。また、一対の台座部11の各着座面12にそれぞれ着座する一対のブラケット5は、各着座面12に対して垂直方向に延設した配置構成となっている。このため、各ブラケット5の着座面6は、台座部11の着座面12の傾斜に沿わせて左右対称に外側に傾斜した当接面として構成されている。
【0028】
即ち、図2の矢印で示す各着座面12からの反力方向と、各ブラケット5の長手方向における中心線とが、略同一線上に配される構成となるように、一対のブラケット5はボディ前面板3に取付けられている。また、各ブラケット5の上端縁8における上下方向の中心線と、ブラケット5の上部において上下方向に配されている補強部材21の中心線とが、略同一線上に配される構成となっている。
【0029】
一対のブラケット5及び一対の台座部11は、共に剛板等により構成することができる。台座部11の車体フレーム10への取付けは、溶接等の適宜の取付け手段を用いて取付けることができる。また、一対の台座部11が左右対称に傾斜して配設されていることにより、ボディ2の下降時においてボディ2は左右方向に調整されながら車幅方向に安定した状態で位置決め支持されることになる。
【0030】
図2に示すように、各着座面12からの反力方向に沿って各ブラケット5が配設されているので、各ブラケット5は着座面12からの反力を全てブラケット5の長手方向における圧縮力として受け止めることができる。このため、各ブラケット5に対して水平方向の負荷分力が発生しないので、一対のブラケット5間を連結して、水平方向の分力に抗するための補強材を配することが必要なくなる。
【0031】
着座面12に平行なブラケットの断面における肉厚、同断面を囲繞したブラケット5の受圧面積を適宜設定することにより、着座面12からの反力によって作用する圧縮応力の値を調整することができる。
【0032】
また、図2に示すようにブラケット5の上端部におけるボディ前面板3に取付けた付根部7が、ボディ前面板3の上端部において上下方向に配設した補強部材21の下部に配されているので、ブラケット5の付根部7からボディ前面板3に作用する上下方向の荷重は、補強部材21によって強固に支持されることになる。
【0033】
しかも、ブラケット5の長さは適宜の長さを有する形状に構成することができるので、台座部11の高さを高く構成する必要がない。このように、ブラケット5の形状を簡素化することができる。また、図1に示すように、ブラケット5の形状としては、多角面体形状の構成しておくことができ、ボディ前面板3に固定される面積領域を大きく構成しておくことができる。
【0034】
また、多角面体形状に構成しておくことにより、ブラケット5の前面が、車両の前方部位に緩衝しないように面取りを行った形状としておくことができる。尚、ブラケット5の形状は、多角面体形状に限定されるものではなく、曲面部を有する立体形状に構成することもできる。
【実施例2】
【0035】
本願発明に係わる他の実施例として、ブラケット5の傾き方向を正面視において実施例1におけるハの字形状とは逆向きの、逆ハの字形状に配設した例について図3を用いて説明する。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成となっている。このため、実施例1と同様の構成については、実施例1において用いた部材符号と同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。
【0036】
ボディマウント装置15の正面図である図3に示すように、一対の台座部11における着座面12は、車体の中心に対して左右対称に外側へ傾斜した配置構成となっている。逆に、一対のブラケット5の着座面6は、内側に傾斜した配置構成となっている。また、ブラケット5の上端縁8と補強部材21との配置関係は、実施例1と同様の配置関係となっている。
【0037】
実施例2におけるブラケット5の側面構成等については特に図示していないが、図1におけるブラケット5と同様に、多角面体形状又は曲面部を有する立体形状に構成することができる。このように構成した実施例2においても、実施例1で説明したと同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、本発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ダンプトラックの要部斜視図である。(実施例1)
【図2】ボディマウント装置の要部正面図である。(実施例1)
【図3】ボディマウント装置の要部正面図である。(実施例2)
【図4】ダンプトラックの概略側面図である。(従来例)
【図5】ボディマウント部の要部正面図である。(従来例1)
【符号の説明】
【0040】
2・・・ボディ、3・・・ボディ前面板、5・・・ブラケット、6・・・着座面、10・・・車体フレーム、11・・・台座部、12・・・着座面、15・・・ボディマウント装置、18・・・緩衝部材、21・・・補強部材、33・・・ボディ前面板、35・・・ブラケット、35a・・・着座面、36・・・車体フレーム、37・・・前部フレーム、37a・・・着座面、39・・・ボディマウント部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
車体の前後方向における後端部が、ヒンジピンを介して前記車体フレームに回動自在に取付けられた荷台と、
前記荷台のボディ前面板に設けられた一対のブラケットと、
前記車体フレームに設けられ、車体の左右方向に傾斜した一対の第1着座面と、
を備え、
前記各ブラケットの下端部に形成した第2着座面が、前記荷台の下降時に前記各第1着座面にそれぞれ当接してなるダンプトラックのボディマウント装置において、
前記各第2着座面がそれぞれ前記各第1着座面に当接してなるとき、前記各ブラケットが、前記各第1着座面に対して垂直方向に延設した配置構成に形成されてなることを特徴とするダンプトラックのボディマウント装置。
【請求項2】
前記各ブラケットの上端部における前記ボディ前面板に取付けられる付根部が、前記ボディ前面板の上端部に配されてなることを特徴とする請求項1記載のダンプトラックのボディマウント装置。
【請求項3】
前記各第2着座面がそれぞれ前記各第1着座面に当接してなるとき、前記ボディ前面板の上下方向に配された補強部材によって、前記付根部に作用する荷重の上下方向成分が支持されてなることを特徴とする請求項2記載のダンプトラックのボディマウント装置。
【請求項4】
前記一対の第1着座面が、車体の中心に対して左右対称に傾斜してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダンプトラックのボディマウント装置。
【請求項5】
前記一対の第1着座面又は前記一対の第2着座面のいずれか一方の着座面に、緩衝部材が配設されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダンプトラックのボディマウント装置。
【請求項6】
前記一対のブラケットが、溶接手段により前記ボディ前面板に取付けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダンプトラックのボディマウント装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−176251(P2007−176251A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374996(P2005−374996)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】