説明

チェンジャー付き加工機制御装置

【課題】 加工プログラムの実行中に、出し入れする工具ホルダの判断がリアルタイムで行えて、手動操作による工具ホルダの出し入れの割り込み容易であり、その割り込みによる稼働効率の低下を抑えることのできるチェンジャー付き加工機制御装置を提供する。
【解決手段】 自動工具交換コントローラ33は、加工プログラム34の実行箇所をポインタ53で認識する。これにより、リアルタイムで、搬入すべき工具ホルダ7と搬出すべき工具ホルダ7を判断する。その判断した搬入,搬出搬出すべき工具ホルダ7の情報をチェンジャー制御装置32へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレス等の板材加工機や、その他の加工機に対して、工具ホルダチェンジャーを用いてタレット等の工具ホルダを交換するチェンジャー付き加工機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の工具を交換使用可能としたパンチプレスとして、タレット式のものが一般的である。しかし、タレットパンチプレスでは、タレット内に保持できるパンチ工具の種類が限られ、多彩な加工が行えない。
このような課題を解消するものとして、複数のパンチ工具を搭載したタレット形式の工具ホルダを、旋回可能な工具ホルダマガジンの円周方向複数箇所に着脱自在に保持するマルチタレット形式のものが提案されている。これは、工具ホルダマガジンの旋回により、希望の工具ホルダを所定の加工位置に割出し、その割り出された工具ホルダを旋回させて工具ホルダ中の希望のパンチ工具をパンチ加工に用いるものである。
【0003】
この形式のパンチプレスは、複数のパンチ工具を搭載する工具ホルダが工具ホルダマガジンに対して交換自在であるため、機外に工具ホルダを準備しておき、その工具ホルダを機内の工具ホルダマガジンの工具ホルダと交換することで多数のパンチ工具の使用が可能になる。機外の工具ホルダは、例えば機外工具ホルダマガジンに準備しておき、工具ホルダチェンジャーで機内と機外の間で工具ホルダの交換を行う。
また、加工位置に割り出された同じ工具ホルダに搭載されたパンチ工具を使用するときは、工具ホルダマガジン等に比べて小さくて軽量の工具ホルダを旋回させれば良いため、工具割出の時間が短縮でき、効率の良いパンチ加工が行える。
【0004】
上記のような機外工具ホルダマガジンおよび工具ホルダチェンジャーを備えたチェンジャー付き加工機において、工具ホルダの機内への搬入および機外への搬出を効率良く行えるようにするものとして、工具ホルダの搬入搬出のスケジュールを、最初に、つまり加工プログラム(NCプログラム)の実行前に作成しておくものが提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2006−281325号公報
【特許文献2】特開2006−281326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記提案例のシステムは、工具ホルダの搬入搬出のプログラムが、加工プログラムの最初に作成されるため、工具ホルダの搬入,搬出を手動で割り込むことができないという課題がある。そのため、作業者が、今、工具ホルダを段取りしたいと思っていても、加工プログラムの終了まで待たされていた。また、手動で搬入した工具ホルダを、現在加工中の加工プログラムで使用する場合、手動で搬出しなければ、加工が止まるという課題がある。板金加工の日常では、現在加工中の加工に対して割り込んで、先に別の加工を行うことが必要な場合が多くある。上記提案例のシステムは、効率良く工具ホルダの搬入搬出が行えるが、このような割込処理に課題があった。
【0006】
この発明の目的は、加工プログラムの実行による加工中に、出し入れする工具ホルダの判断がリアルタイムで行えて、手動操作による工具ホルダの出し入れの割り込みが容易であり、その割り込みによる稼働効率の低下を抑えることのできるチェンジャー付き加工機制御装置を提供することである。
この発明の他の目的は、加工プログラムの実行が何処まで進んでいるかの認識が容易に行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、マルチタレット形式のパンチプレスに適用されて、上記の各目的を達成可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のチェンジャー付き加工機制御装置は、工具を保持した工具ホルダ(7)を複数装備可能で任意の工具ホルダ(7)を選択して加工に使用しかつ任意の工具ホルダ(7)を機外に対し交換可能な加工機(1)と、工具を保持した複数の工具ホルダ(7)を保管した機外工具ホルダマガジン(6)と、前記加工機(1)と前記機外工具ホルダマガジン(6)との間で任意の工具ホルダ(7)を出し入れする工具ホルダチェンジャー(3)とを備えたチェンジャー付き加工機を制御する装置である。
このチェンジャー付き加工機制御装置は、前記加工機(1)を加工プログラム(34)の実行により制御する加工機制御装置(31)と、前記工具ホルダチェンジャー(3)を制御するチェンジャー制御装置(32)と、このチェンジャー制御装置(32)の上位制御装置となる自動工具交換コントローラ(33)とを備える。
前記加工プログラム(34)は、加工に使用する工具を工具ホルダ(7)と共に選択する工具割出命令(56)よりも前に、加工に必要となる工具ホルダ(7)を記述した必要工具ホルダ要求命令(52)が記述されている。
前記チェンジャー制御装置(32)は、前記自動工具交換コントローラ(33)から送られる出し入れ動作命令(R2)毎に、その命令(R2)の工具ホルダ(7)につき、前記工具ホルダチェンジャー(3)に前記加工機(1)と機外工具ホルダマガジン(6)との間で工具ホルダ(7)の出し入れ動作を行わせ、かつ次の出し入れ動作命令(R2)を要求する要求信号(R1)を前記自動工具交換コントローラへ送信し、この送信する要求信号に、前記加工機制御装置(31)で実行している前記加工プログラム(34)の実行箇所の情報を付加する処理を行う機能を有する。
前記自動工具交換コントローラ(33)は、前記要求信号(R1)に応答して、前記要求信号(R1)に付加された加工プログラム(34))の実行箇所の情報から、この実行箇所に該当する加工プログラム(34)中の必要工具ホルダ要求命令(52)の工具ホルダ(7)を搬入すべき工具ホルダ(7)として判断すると共に、設定規則(A)に従って加工機(1)から搬出すべき工具ホルダ(7)を判断し、その判断した搬入すべき工具ホルダ(7)と搬出すべき工具ホルダ(7)の情報を前記出し入れ動作命令(R2)として前記チェンジャー制御装置(32)へ送信する機能を有する。
【0008】
この構成によると、チェンジャー制御装置(32)は、加工プログラム(34)の実行箇所の情報を付加して自動工具交換コントローラ(33)へ要求信号(R1)を送る。また、自動工具交換コントローラ(33)は、その加工プログラム(34)の実行箇所の情報から、この実行箇所に該当する加工プログラム(3)中の必要工具ホルダ要求命令(52)の工具ホルダ(7)を搬入すべき工具ホルダ(7)として判断すると共に、設定規則(A)に従って加工機(1)から搬出すべき工具ホルダ(7)を判断する。その判断した搬入すべき工具ホルダ(7)と搬出すべき工具ホルダ(7)の情報を前記出し入れ動作命令(R2)として前記チェンジャー制御装置(32)へ送信する。なお、搬出すべき工具ホルダ(7)として該当するものがない場合は、搬入すべき工具ホルダ(7)の情報のみを出し入れ動作命令(R2)として送信する。
このように、加工機(1)が加工プログラム(34)のどこを加工しているかが分かるようにして、その時点で、つまりリアルタイムで、必要な工具ホルダ(7)および不要な工具ホルダ(7)を判断するようにしたため、手動操作による割込があっても、その影響が抑えられ、その割り込みによる稼働効率の低下を抑えることができる。
【0009】
この発明において、前記加工プログラム(34)が命令の並び中の複数箇所にポインタ(53)を有し、前記チェンジャー制御装置(32)は、加工制御装置(1)で最新に読みだされたポインタ(53)を前記実行箇所の情報として前記要求信号(R1)に付加するようにしても良い。
このようにポインタ(53)を設けた場合、加工プログラム(34)の実行が何処まで進んでいるかの認識が容易に行える。
【0010】
この発明において、前記加工機(1)がパンチプレスであって、前記各工具ホルダ(7)はパンチ工具を保持し、これら複数の工具ホルダのうちの少なくとも一つは複数のパンチ工具を保持し、前記パンチプレス(1)は、前記複数の工具ホルダ(7)を円周方向に並べて保持して回転により任意の工具ホルダ(7)を使用位置に割出可能な機内工具ホルダマガジン(5)、および使用位置に割り出された工具ホルダ(7)の保持する任意のパンチ工具をパンチ動作させるパンチ加工ヘッド(4)を有するものであっても良い。すなわち、タレット式の機内工具ホルダマガジン(5)に、子タレットとなる工具ホルダ(7)を保持させるマルチタレット形式としても良い。
このようなマルチタレット形式のパンチプレスに適用された場合に、搬入,搬出を行う工具ホルダ(7)をリアルタイムで判断することによる効果、つまり手動操作による割込があった場合にその影響が抑えられ、割り込みによる稼働効率の低下を抑えることができるという効果が、より効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0011】
この発明のチェンジャー付き加工機制御装置は、工具を保持した工具ホルダを複数装備可能で任意の工具ホルダを選択して加工に使用しかつ任意の工具ホルダを機外に対し交換可能な加工機と、工具を保持した複数の工具ホルダを保管した機外工具ホルダマガジンと、前記加工機と前記機外工具ホルダマガジンとの間で任意の工具ホルダを出し入れする工具ホルダチェンジャーとを備えたチェンジャー付き加工機を制御する装置であって、前記加工機を加工プログラムの実行により制御する加工機制御装置と、前記工具ホルダチェンジャーを制御するチェンジャー制御装置と、このチェンジャー制御装置の上位制御装置となる自動工具交換コントローラとを備え、前記加工プログラムは、加工に使用する工具を工具ホルダと共に選択する工具割出命令よりも前に、加工に必要となる工具ホルダを記述した必要工具ホルダ要求命令が記述されており、前記チェンジャー制御装置は、前記自動工具交換コントローラから送られる出し入れ動作命令毎に、その命令の工具ホルダにつき、前記工具ホルダチェンジャーに前記加工機と機外工具ホルダマガジンとの間で工具ホルダの出し入れ動作を行わせ、かつ次の出し入れ動作命令を要求する要求信号を前記自動工具交換コントローラへ送信し、この送信する要求信号に、前記加工機制御装置で実行している前記加工プログラムの実行箇所の情報を付加する処理を行う機能を有し、前記自動工具交換コントローラは、前記要求信号に応答して、前記要求信号に付加された加工プログラムの実行箇所の情報から、この実行箇所に該当する加工プログラム中の必要工具ホルダ要求命令の工具ホルダを搬入すべき工具ホルダとして判断すると共に、設定規則に従って加工機から搬出すべき工具ホルダを判断し、その判断した搬入すべき工具ホルダと搬出すべき工具ホルダの情報を前記出し入れ動作命令として前記チェンジャー制御装置へ送信する機能を有するため、加工プログラムの実行による加工中に、出し入れする工具ホルダの判断がリアルタイムで行えて、手動操作による工具ホルダの出し入れの割り込み容易であり、その割り込みによる稼働効率の低下を抑えることができる。
【0012】
前記加工プログラムが、命令の並び中の複数箇所にポインタを有し、前記チェンジャー制御装置が、加工制御装置で最新に読みだされたポインタを前記実行箇所の情報として前記要求信号に付加する場合は、加工プログラムの実行が何処まで進んでいるかの認識を容易に行うことができて、内部処理が容易となる。
【0013】
前記加工機がパンチプレスであって、前記各工具ホルダはパンチ工具を保持し、これら複数の工具ホルダのうちの少なくとも一つは複数のパンチ工具を保持し、前記パンチプレスは、前記複数の工具ホルダを円周方向に並べて保持して回転により任意の工具ホルダを使用位置に割出可能な機内工具ホルダマガジン、および使用位置に割り出された工具ホルダの保持する任意のパンチ工具をパンチ動作させるパンチ加工ヘッドを有するものである場合は、マルチタレット形式のパンチプレスに適用されて、この発明の上記各効果を効果的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図3は、制御対象となるチェンジャー付き加工機の平面図である。このチェンジャー付き加工機は、加工機であるパンチプレス1と、プリセッター2と、工具ホルダチェンジャー3とを備える。パンチプレス1は、機内工具ホルダマガジン5を備え、個別工具8を搭載した複数の工具ホルダ7を、機内工具ホルダマガジン5に交換可能に装備するものである。工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1およびプリセッター2にそれぞれ設けられた機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の間で工具ホルダ7を自動交換する装置である。
【0015】
工具ホルダ7は、図5に示すように、平面形状が円形のタレットであり、一つまたは複数の個別工具8が搭載される。個別工具8は、工具ホルダ7に設けられた貫通孔等からなる工具支持部7a内に、交換自在に搭載される。個別工具8は、パンチ工具またはダイ工具である。パンチ工具およびダイ工具は、上下に対として用いられるものであり、工具ホルダ7は、パンチ工具用のものとダイ工具用のものとが、上下に対として設けられる。図では、パンチ工具用の工具ホルダ7のみを示し、ダイ工具用の工具ホルダは、図示を省略している。なお、個別工具8は、具体的には、工具部分とその工具部分を保持する工具ホルダとで構成される。
【0016】
個別工具8は、パンチ加工する孔形状や寸法が種々異なるものがあり、工具ホルダ7に設けられた複数の工具支持部7aには、それぞれ異なる孔形状,寸法の加工用のものが搭載される。
また、工具ホルダ7は、図4のように工具支持部7aの個数,配置,寸法等の種々異なる複数種類のものが準備される。同じ工具支持部7aに、外径寸法の合う複数種類の個別工具8の搭載が可能であり、各種類の工具ホルダ7の工具支持部7aに、適合可能な任意の個別工具8を搭載して工具ホルダ7の工具編成が行われる。
【0017】
機内工具ホルダマガジン5は、水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部5aが設けられている。機内工具ホルダマガジン5は、上下に一対のものが同心に設けられ、それぞれパンチ側およびダイ側の工具ホルダ7を保持して同期して旋回するが、図では上側の機内工具ホルダマガジン5のみを示している。
【0018】
図3において、パンチプレス1は、工具割出機構として、マガジン割出部と工具ホルダ割出部(いずれも図示せず)とを有する。マガジン割出部は、機内工具ホルダマガジン5の任意の工具ホルダ保持部5aが、パンチ加工ヘッド4の中心位置等の所定位置であるパンチ加工ヘッド位置Qに来るように機内工具ホルダマガジン5を旋回させる機構である。工具ホルダ割出部は、パンチ加工ヘッド位置Qにある工具ホルダ7を保持してその工具ホルダ中心回りに旋回させ、工具ホルダ7の任意の個別工具8を所定のパンチ位置Pに割出す機構である。
パンチ位置Pに割り出された個別工具8は、サーボモータ等のパンチ駆動原により、昇降自在なラムを介してパンチ加工のための昇降動作が与えられる。
前記パンチ加工ヘッド4は、前記工具ホルダ割出部と、前記パンチ駆動原およびラム等により構成される。
【0019】
パンチプレス1は、テーブル9上の板材Wを直交2軸(X軸,Y軸)方向に移動させる板材送り機構10を有しており、その移動により、板材Wの加工すべき箇所がパンチ位置Pへ移動させられる。板材送り機構10は、Y軸方向に進退するキャリッジ11に、X軸方向に進退可能にクロススライド12を搭載し、板材Wの端部を把持する複数のワークホルダ13を、クロススライド12に取付けたものである。
【0020】
プリセッタ2は、機外工具ホルダマガジン6を旋回割出可能に設置したものであり、パンチプレス1の背後に設置されている。プリセッタ2には、機外工具ホルダマガジン6に対して作業者が工具ホルダ7の交換を行うための段取り用交換部17が設けられている。 機外工具ホルダマガジン6は、機内工具ホルダマガジン5と同様に水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部6aが設けられている。機外工具ホルダマガジン6も、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に同心に設置され、旋回割出の駆動がマガジン割出手段(図示せず)で行われる。
【0021】
工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5と、機外工具ホルダマガジン6との間で工具ホルダ7を交換する装置であり、これらマガジン工具5,6の所定の交換用割出位置R,Sで交換を行う。
工具ホルダチェンジャー3は、これら機内工具ホルダマガジン5と機外工具ホルダマガジン6の交換用割出位置R,Sに渡って設けられたガイドレール21と、このガイドレール21に沿って走行する走行体22と、プリセッタ2の機外工具ホルダマガジン6を旋回駆動する機構とを備える。走行体22は、それぞれ工具ホルダ7を保持する2つのチャック23,24が走行方向に並んで設けられている。これら2つのチャック23,24は、いずれか片方のチャック23,24で交換用の工具ホルダ7を保持しておき、空の方のチャック23,24で工具ホルダマガジン5,6から工具ホルダ7を受け取り、上記片方のチャック23,24で保持していた交換用の工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に渡す動作を行う。これにより、走行体22の両工具ホルダマガジン5,6間の一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
【0022】
なお、走行体22は、チャック23,24を1個のみとし、交換用割出位置R,Sの付近に設けた仮置き台(図示せず)に、交換用の工具ホルダ7を仮置きすることによっても、一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
また走行体22に設けられる上記チャック23,24は、いずれも各工具ホルダマガジン5,6と同じく、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に並んで設けられている。
【0023】
つぎに制御系につき説明する。図1に示すように、このチェンジャー付き加工機制御装置は、加工機であるパンチプレス1を、加工プログラム34の実行により制御する加工機制御装置31と、工具ホルダチェンジャー3を制御するチェンジャー制御装置32と、このチェンジャー制御装置32の上位制御装置となる自動工具交換コントローラ33とを備える。
加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、および自動工具交換コントローラ33は、物理的には同じコンピュータ等に構成されたものであっても良く、また別のコンピュータ等で構成されてネットワークで接続されたものであっても良い。これら加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、および自動工具交換コントローラ33は、共通の操作盤46によって操作される。
【0024】
加工機制御装置31は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマルブルコントローラ等からなり、加工プログラム34を解読して実行する演算制御部35と、シーケンス制御部(図示せず)とを備える。
【0025】
加工プログラム34は、基本的には、一つの孔を加工する加工命令50を順次並べて記述したものとされる。加工命令50は、板材Wを移動させる各軸毎の移動命令54,55と、工具割出命令56とを1行に記述したものである。演算制御部35は、加工命令50を読み出すと、その移動命令54,55で指定された各軸方向の位置へ板材Wを移動させ、工具割出命令56で指定された個別工具8をパンチ位置Pに割出し、その割り出された個別工具8をパンチ動作させる一連の制御を行う。個別工具8のパンチ位置Pへの割出しは、機内工具ホルダマガジン5の旋回割出し過程と、工具ホルダ7の旋回割出し過程とを含む。同じ工具ホルダ7を続けて使用する場合は、工具ホルダマガジン5の旋回割出は不要であり、その動作は生じない。移動命令54,55は、移動の軸方向X,Yを示す文字と移動量または座標値を示す文字、例えば「X−Y−」として示される。
【0026】
工具割出命令56は、例えば「T0101」等のように、工具ホルダ7の識別番号「T01」に続いて、その工具ホルダ7におけるどの工具支持部7aであるかを指定する番号「01」を記述したものである。
【0027】
加工プログラム34は、加工命令50の他に、この実施形態の特徴として、必要工具ホルダ命令52と、ポインタ53とが、準備コード51に続いて1行に記述されている。
必要工具ホルダ命令52は、加工に必要となる工具ホルダ7を記述した命令であり、工具割出命令56よりも前に、例えば工具割出命令56の直前行に、その工具割出命令56で指定される工具ホルダ7を指定して記述される。必要工具ホルダ命令52は、例えば「U02」等のように、必要工具ホルダ命令である旨を示す「U」の頭文字と、工具ホルダ7の識別番号「T○○」から頭文字「T」を除いた部分の文字列とで構成される。
【0028】
ポインタ53は、加工プログラム34の実行箇所を示すために、加工プログラム34中の複数箇所に設けられる記述であり、例えば「V○○」のように、ポインタであることを示す頭文字「V」と、何番目のポインタであるかを示す番号「○○」とで構成される。ポインタ53の位置や個数は特に限定されないが、この例では、各必要工具ホルダ命令52に続いて、同じ命令行に記述されている。
なお、加工プログラム34の実行箇所は、加工プログラム34中の実行しているシーケンスナンバーで認識可能であるため、ポインタ53は必ずしも設けなくても良い。しかしポインタ53を設けることで、必要工具ホルダ命令52や工具割出命令56の位置が明確となり、また加工プログラム34の命令の追加や削除に影響されず、チェンジャー3の制御のためのプログラム作成が容易となる。
【0029】
チェンジャー制御装置32は、自動工具交換コントローラ33から送られる出し入れ動作命令R2毎に、その命令R2の工具ホルダ7につき、工具ホルダチェンジャー3にパンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5とプリセッタ2の機外工具ホルダマガジン6との間で工具ホルダ7の出し入れ動作を行わせる装置である。チェンジャー制御装置32は、機械制御部36によって、上記出し入れ動作命令R2を実行してチェンジャー3を制御する。
チェンジャー制御装置32は、この他に要求生成部37および監視部38を有し、要求生成部37は、機械制御部36による動作が完了すると、次の出し入れ動作命令を要求する要求信号R1を自動工具交換コントローラ33へ送信する。また、要求生成部37は、この送信する要求信号R1に、加工機制御装置31で実行している加工プログラム34の実行箇所の情報を付加する処理を行う。実行箇所は、監視部38によって監視する。監視部38は、加工プログラム34にポインタ53が記述されている場合は、加工機制御装置31で最新に読みだされたポインタ53を、その添付する実行箇所の情報とする。加工プログラム34にポインタ53を記述しない場合は、実行中の行のシーケンスナンバーを実行箇所の情報とする。
【0030】
自動工具交換コントローラ33は、この実施形態では、チェンジャー付き加工機のスケジュール管理手段を兼ねており、スケジュール管理部42と、加工プログラム記憶手段43とを有する。加工プログラム記憶手段43には、複数の加工プログラム34が記憶可能であり、スケジュール管理部42は、定められたスケジュールに該当する加工プログラム34を、加工機制御装置31に転送し、実行させる。
【0031】
自動工具交換コントローラ33は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成され、要求受理部39、搬入搬出ホルダ判断部40、および出し入れ動作命令出力部41を有する。要求受理部39は、チェンジャー制御装置32の要求信号R1を受ける手段である。
搬入搬出ホルダ判断部40は、前記要求信号R1に応答して、この要求信号R1に付加された加工プログラム34の実行箇所の情報(例えばポインタ53)から、この実行箇所に該当する加工プログラム34中の必要工具ホルダ要求命令52の工具ホルダ7を搬入すべき工具ホルダとして判断すると共に、設定規則Aに従って、パンチプレス1から搬出すべき工具ホルダ7を判断する。その判断した搬入すべき工具ホルダ7と搬出すべき工具ホルダ7の情報は、出し入れ動作命令出力部41により、前記出し入れ動作命令R2としてチェンジャー制御装置31へ送信する。
【0032】
搬入搬出ホルダ判断部40は、図1,図2のように、ポインタ53が必要工具ホルダ要求命令52の直後に記述されている場合は、ポインタ53の直前の必要工具ホルダ要求命令52で指定する工具ホルダ7を、搬入すべき工具ホルダ7とする。
搬出すべき工具ホルダ7を判断する設定規則Aは、任意に設定すれば良いが、例えば、要求命令52のポインタ53以降に加工プログラム34に記述されたいずれの工具交換命令56にも含まれず、パンチプレス1の中に存在する工具ホルダ7とされる。このような条件を充足する工具ホルダ7が複数ある場合は、適宜定めた基準に従って、その複数の中から一つの工具ホルダ7を選択する。
また、上記設定規則Aは、後に工具ホルダ7の交換回数が最少となるホルダ交換スケジュール44を作成し、そのホルダ交換スケジュール44の中の最初に搬入,搬出する工具ホルダ7につき、出し入れ動作命令R2として出力するようにしても良い。
【0033】
なお、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5の各工具ホルダ保持部5aは、常に全て工具ホルダ7が搭載された状態にする必要はなく、いずれかの工具ホルダ保持部5aを空き状態としても良い。したがって、出し入れ動作命令R2は、パンチプレス1から搬出する工具ホルダ7のみを定めた命令であってもよい。
【0034】
上記構成のチェンジャー付き加工機制御装置によると、チェンジャー制御装置32は、加工プログラム34の実行箇所の情報となるポインタ53を付加して、自動工具交換コントローラ33へ要求信号R1を送る。自動工具交換コントローラ33は、その実行箇所の情報であるポインタ53から、このポインタ53に該当する加工プログラム34中の必要工具ホルダ要求命令52の工具ホルダ7を、搬入すべき工具ホルダ7として判断する。また、設定規則Aに従ってパンチプレス1から搬出すべき工具ホルダ7を判断する。その判断した搬入すべき工具ホルダ7と搬出すべき工具ホルダ7の情報を出し入れ動作命令R2としてチェンジャー制御装置32へ送信する。搬出すべき工具ホルダ7として該当するものがない場合は、搬入すべき工具ホルダ7の情報のみを出し入れ動作命令R2として送信する。
【0035】
このように、ポインタ53によりパンチプレス1が加工プログラム34のどこを加工しているかが分かるようにして、その時点で、必要な工具ホルダ7および不要な工具ホルダ7を判断するようにしたため、手動操作による割込があっても、その影響が抑えられ、その割り込みによる稼働効率の低下を抑えることができる。
また、実行箇所の情報をポインタ53で示すようにしたため、加工プログラム34の実行が何処まで進んでいるかの認識が容易に行え、加工プログラム34の保守等があっても間違いが生じ難い。
さらにこの実施形態では、マルチタレット形式のパンチプレスに適用したため、搬入,搬出を行う工具ホルダ7をリアルタイムで判断することによる効果、つまり手動操作による割込があった場合にその影響が抑えられ、割り込みによる稼働効率の低下を抑えることができるという効果が、より効果的に発揮される。
【0036】
なお、上記実施形態では、加工機がマルチタレット形式のパンチプレス1である場合につき説明したが、この発明は、加工機が例えば図6に示すような、一般形式のタレットパンチプレス1Aであって、機外工具ホルダマガジン6Aおよび工具ホルダチェンジャー3Aを有するものである場合にも適用するできる。同図のパンチプレス1Aは、タレット5に設けられた各工具支持部5Aaに工具ホルダ7Aを搭載するものである。この場合の工具ホルダ7Aは、図5の個別工具8における工具ホルダ部分に相当するものである。すなわち、図5の個別工具8は、前述の工具部分と、その工具部分を保持する工具ホルダとで構成されるが、この個別工具8の工具ホルダおよび工具部分に相当するものが、図6の例における工具ホルダ7Aおよびこれに保持される工具となる。図6の機外工具ホルダマガジン6Aおよび工具ホルダチェンジャー3Aは、それぞれ、上記構成の工具ホルダ7Aの保持、および交換を行うものである。
【0037】
さらに、この発明は、制御対象となる加工機が、パンチプレスである場合に限らず、切削加工を行う工作機械である場合にも適用することができる。すなわち、工具を保持した工具ホルダを複数装備可能で任意の工具ホルダを選択して加工に使用しかつ任意の工具ホルダを機外に対し交換可能な加工機と、工具を保持した複数の工具ホルダを保管した機外工具ホルダマガジンと、前記加工機と前記機外工具ホルダマガジンとの間で任意の工具ホルダを出し入れする工具ホルダチェンジャーを備えたチェンジャー付き加工機であれば、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るチェンジャー付き加工機制御装置の概念構成を示すブロック図である。
【図2】その加工プログラムの例の説明図である。
【図3】同制御装置の制御対象となるチェンジャー付き加工機の一例を示す平面図である。
【図4】同チェンジャー付き加工機の各マガジンおよびチェンジャーの拡大平面図でくあ。
【図5】同チェンジャー付き加工機の工具ホルダの拡大斜視図である。
【図6】同制御装置の制御対象となるチェンジャー付き加工機の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A…パンチプレス(加工機)
3,3A…工具ホルダチェンジャー
4…パンチ加工ヘッド
5…機内工具ホルダマガジン
6,6A…機外工具ホルダマガジン
7…工具ホルダ
8…個別工具
9…テーブル
31…加工機制御装置
32…チェンジャー制御装置
33…自動工具交換コントローラ
34…加工プログラム
50…加工命令
52…必要工具ホルダ命令
53…ポインタ
54,55…移動命令
56…工具割出命令
A…設定規則
R1…要求信号
R2…出し入れ動作命令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持した工具ホルダを複数装備可能で任意の工具ホルダを選択して加工に使用しかつ任意の工具ホルダを機外に対し交換可能な加工機と、工具を保持した複数の工具ホルダを保管した機外工具ホルダマガジンと、前記加工機と前記機外工具ホルダマガジンとの間で任意の工具ホルダを出し入れする工具ホルダチェンジャーとを備えたチェンジャー付き加工機を制御する装置であって、
前記加工機を加工プログラムの実行により制御する加工機制御装置と、前記工具ホルダチェンジャーを制御するチェンジャー制御装置と、このチェンジャー制御装置の上位制御装置となる自動工具交換コントローラとを備え、
前記加工プログラムは、加工に使用する工具を工具ホルダと共に選択する工具割出命令よりも前に、加工に必要となる工具ホルダを記述した必要工具ホルダ要求命令が記述されており、
前記チェンジャー制御装置は、前記自動工具交換コントローラから送られる出し入れ動作命令毎に、その命令の工具ホルダにつき、前記工具ホルダチェンジャーに前記加工機と機外工具ホルダマガジンとの間で工具ホルダの出し入れ動作を行わせ、かつ次の出し入れ動作命令を要求する要求命令を前記自動工具交換コントローラへ送信し、この送信する要求信号に、前記加工機制御装置で実行している前記加工プログラムの実行箇所の情報を付加する処理を行う機能を有し、
前記自動工具交換コントローラは、前記要求信号に応答して、前記要求信号に付加された加工プログラムの実行箇所の情報から、この実行箇所に該当する加工プログラム中の必要工具ホルダ要求命令の工具ホルダを搬入すべき工具ホルダとして判断すると共に、設定規則に従って加工機から搬出すべき工具ホルダを判断し、その判断した搬入すべき工具ホルダと搬出すべき工具ホルダの情報を前記出し入れ動作命令として前記チェンジャー制御装置へ送信する機能を有する、
ことを特徴とするチェンジャー付き加工機制御装置。
【請求項2】
前記加工プログラムは、命令の並び中の複数箇所にポインタを有し、前記チェンジャー制御装置は、加工制御装置で最新に読みだされたポインタを前記実行箇所の情報として前記要求信号に付加する請求項1記載のチェンジャー付き加工機制御装置。
【請求項3】
前記加工機がパンチプレスであって、前記各工具ホルダはパンチ工具を保持し、これら複数の工具ホルダのうちの少なくとも一つは複数のパンチ工具を保持し、前記パンチプレスは、前記複数の工具ホルダを円周方向に並べて保持して回転により任意の工具ホルダを使用位置に割出可能な機内工具ホルダマガジン、および使用位置に割り出された工具ホルダの保持する任意のパンチ工具をパンチ動作させるパンチ加工ヘッドを有するものである請求項1または請求項2記載のチェンジャー付き加工機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288998(P2009−288998A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140286(P2008−140286)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】