説明

チタニア含有高分子組成物

【課題】環境汚染物質等を迅速に分解することができ、高分子素材が分解され難いチタニア含有高分子組成物を提供する。
【解決手段】氷酢酸水溶液にチタンイソプロポキシドを加え、室温で攪拌し酸性チタニアゾルとする。この酸性チタニアゾルを合成フッ素マイカ500gを含む水懸濁液に加え、室温で3時間攪拌した後、固液分離を行い、乾燥してチタニア/粘土複合体の粉末を得る。こうして得られたチタニア/粘土複合体の粉末とポリ乳酸とを溶融混練し、チタニア含有ポリ乳酸を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒活性を有するチタニアが高分子素材に含有されたチタニア含有高分子組成物に関する。本発明のチタニア含有高分子組成物は、有機溶剤、農薬、界面活性剤、悪臭物質等の環境汚染物質を分解したり、抗菌性や表面汚れが自浄される等の機能を有するプラスチックや塗料として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
チタニアは光照射されることによって、強い酸化作用をもつ正孔と、強い還元作用をもつ電子とが生成し、チタニアと接触する分子種を強力に分解するという性質を有している。この性質を利用し、チタニアを練り込んだプラスチックが知られている(例えば特許文献1、2参照)
【特許文献1】特開平11−349423号公報(請求項8)
【特許文献2】特開2002−113053号公報
【0003】
こうしたチタニア含有プラスチックは、チタニアの光触媒作用により有機溶剤、農薬、界面活性剤、悪臭物質等の環境汚染物質を分解したり、抗菌性が付与されたり、表面に付着した汚れが分解されて自浄される等の機能を発揮することが期待される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、チタニアをプラスチックに含有させた場合、チタニアの有する強力な光触媒作用により、目的とする物質だけでなく、プラスチック自身も分解されることになる。このため、プラスチックの強度が低下したり、変色したりして、寿命が短くなってしまうという問題がある。
【0005】
こうした問題を解決するため、リン酸カルシウム(アパタイト)の被覆層を部分的に表面に形成させたチタニアをプラスチックに練り込むことも提案されている(特許文献3、4)。これらのチタニア含有プラスチックは、チタニアがプラスチックと直接接触することが少ないため、光照射によるプラスチックの劣化を防止することができる。しかしながら、その防止の程度は未だ満足できるものではない。
【特許文献3】特開平11−267519号公報(請求項11)
【特許文献4】特開平10−244166号公報(段落番号0011)
【0006】
また、チタニアの表面をアルミナ、シリカ、ジルコニア等の光に不活性なセラミックで被覆し、これをプラスチックに練り込んだチタニア含有プラスチックも知られている(特許文献5)。このチタニア含有プラスチックも、チタニアがプラスチックと直接接触することがないため、光照射によるプラスチックの劣化を防止することができる。しかし、チタニアを光に不活性なセラミックスで被覆した場合、環境汚染物質を分解したり、細菌を殺菌したりするためには、環境汚染物質や細菌がセラミックス被覆を通ってチタニア表面にまで到達しなければならない。このため、目的とする物質を分解したり、殺菌したりする能力が低下するという問題があった。
【特許文献5】特開2003−95805号公報
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、環境汚染物質等を迅速に分解することができ、高分子素材が分解され難いチタニア含有高分子組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチタニア/粘土複合体含有高分子組成物は、酸性チタニアゾルと膨潤性粘土とを混合して得られるチタニア/粘土複合体が高分子素材に含有されていることを特徴とする。
【0009】
本発明において用いられるチタニア/粘土複合体は、酸性チタニアゾルと膨潤性粘土とを混合して得られたものである。こうして得られたチタニア/粘土複合体は、チタニアが有している光触媒としての性質と、粘土層とチタニア微粒子とが形成する多孔体構造に起因する吸着性という性質を兼ね備えている(特許文献6、7参照)。このため、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、有機溶剤、悪臭物質等の環境汚染物質等を吸着し、さらにそれをチタニアによって分解することができる。
【特許文献6】特開平10−245226号公報
【特許文献7】特開平10−338516号公報
【0010】
また、本発明において用いられるチタニア/粘土複合体の構造については、チタニア微粒子が層状の結晶構造を有する膨潤性粘土の層間に侵入することによって層間隔が押し広げられ、層間空隙とよばれる隙間が生じていると考えられる。事実、チタニア/粘土複合体の比表面積の測定結果は大きな値となり、環境汚染物質等を吸着する能力が高められている。
【0011】
さらに、こうして吸着された環境汚染物質は、チタニア微粒子の光触媒作用によって分解される。しかも、チタニア/粘土複合体中のチタニアは、粘土の結晶の層間に入っていると考えられるため、これを高分子素材に練り込んでも、チタニア微粒子が高分子素材と直接接触することはない。このため、チタニア微粒子の光触媒作用による高分子素材の分解が防止される。
【0012】
したがって、本発明のチタニア含有高分子組成物は、環境汚染物質等を迅速に分解することができ、高分子素材が分解され難い。
【0013】
本発明のチタニア含有高分子組成物におけるチタニア/粘土複合体の含有量は0.1〜5質量%であることが好ましく、さらに好ましいのは、0.5〜3質量%の範囲である。発明者らの試験結果によれば、チタニア/粘土複合体の含有量には適切な範囲があり、この範囲であれば吸着能が大きく、光触媒活性も大きくなる。
【0014】
また、本発明に用いられるチタニア/粘土複合体は、水熱処理がなされていてもよい。チタニア/粘土複合体を水熱処理した場合、チタニア微粒子の結晶化が進行し、光触媒としての活性度の高いアナターゼ型とすることができる。
【0015】
チタニア/粘土複合体の窒素ガス吸着法によって測定されるBET法比表面積は70m2g以上とされていることが好ましく、さらに好ましいのは120m2/g以上である。こうであれば、チタニア/粘土複合体の吸着能が大きくなり、環境汚染物質等の分解が促進される。
【0016】
本発明において用いられる高分子素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等のプラスチックや、アルキド樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等の塗料を用いることができる。高分子素材が生分解性プラスチックである場合には、廃棄処分とされても土壌中で微生物によって分解されるという性質に加え、さらに環境汚染物質を吸着して分解するという環境浄化機能が付加されることとなり、環境保護にとって極めて優れた性質の素材となる。ここで生分解性樹脂とは、土壌中で微生物により生分解可能な樹脂の総称であり、例えば、澱粉、酢酸セルロース、(キトサン/セルロース/澱粉)重合系等の天然高分子由来のものや、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)ポリビニルアルコール等の合成高分子、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリデート)等の微生物産生系高分子、並びにそれらの混合物等が挙げられる。具体的には化学合成系グリーンプラ(登録商標)であるCargill-DOW社製のNature Works(登録商標)、UCC社製のTONE(登録商標)、(株)島津製作所製のラクティ(登録商標)、ユニチカ(株)製のテラマック(登録商標)、トヨタ自動車(株)のユーズ、昭和高分子(株)のビオノーレ(登録商標)、三菱ガス化学(株)のユーペック(登録商標)、三井化学(株)製のレイシア(登録商標)、(株)日本触媒製のルナーレ(登録商標)、Du Pont社製のBiomax(登録商標)、BASF社製のEcoflex(登録商標)、クラレ社製のポバール(商標)、Eastman Chemicals社製のEaster Bio(登録商標)、日本合成化学工業(株)製のゴーセノール(登録商標)、アイセロ化学(株)製のドロン(登録商標)、IRE CHEMICAL社製のエンポル(商標)、ダイセル化学工業(株)製のセルグリーン(登録商標)等を使用することができる。さらに、これから研究されるであろう全ての生分解性樹脂が使用可能であると期待できる。
【0017】
生分解性樹脂の中でもポリ乳酸又はポリ乳酸を主成分とする組成物が好ましい。ポリ乳酸はトウモロコシ、サトウキビ、イモなどのバイオマス資源を発酵・重合して製造することが可能であるため、例え使用後に生分解されず燃焼処分されたとしても、もともと大気中にあった二酸化炭素に戻るだけであり、石油由来の二酸化炭素を増大させることはない。こうした、いわゆるカーボンニュートラルな素材に対してチタニア/粘土複合体を含有させれば、環境浄化作用を付加させることができ、さらに環境にやさしい素材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を具体化した実施形態について詳細に述べる。
<実施形態>
本発明に用いられるチタニア/粘土複合体は、以下のような手順で調製することができる。
【0019】
まず、膨潤性粘土を用意する。膨潤性粘土としては、例えばモンモリロナイトやヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト、バーミキュライト、合成マイカ、合成マイカのフッ素置換誘導体等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0020】
さらに、酸性チタニアゾルを用意する。酸性チタニアゾルの原料となるチタン化合物としては特に限定はなく、例えば四塩化チタン、オキシ硫酸チタン、オキシ硝酸チタン等の無機チタン化合物を用いることができる。また、有機チタン化合物原料としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド等のチタンアルコキシド、トリノルマルブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート等のチタンアシレート、プロパンジオキシチタンビスエチルアセトアセテート等のチタンキレート等を用いることができる。これらの無機チタン化合物原料や有機チタン化合物原料を水や酸に溶解することによって、酸性チタニアゾルとすることができる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸を用いることができる。また、チタン化合物が分解して酸性を示すものについては、あえて酸を添加しなくてもよい。
【0021】
次に、上記膨潤性粘土を水に分散した懸濁液と酸性チタニアゾルとを混合し、さらに反応液を脱水、遠心分離等の手段によって固液分離し、回収した粉末を自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、超臨界乾燥等の乾燥手段によって乾燥させてチタニア/粘土複合体を得る。このチタニア/粘土複合体に、必要に応じてさらに500℃程度までの温度範囲で焼成処理を施しても差し支えない。得られたチタニア/粘土複合体は粉砕等の手段によって粉末とする。
【0022】
こうして得られたチタニア/粘土複合体の粉末を高分子素材に含有させる方法については特に限定はない。高分子素材が熱可塑性のプラスチックの場合には、チタニア/粘土複合体の粉末と熱可塑性プラスチックとを溶融混練機で混練することにより、含有させることができる。また、高分子素材が塗料である場合には、塗料中にチタニア/粘土複合体の粉末を加えて撹拌するだけでよい。
【0023】
以下、本発明をさらに具体的に示した実施例を比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0024】
(実施例1〜7)
<チタニア/粘土複合体の調製>
チタニア/粘土複合体の調製は以下のように行った。すなわち、氷酢酸3.22Lに水0.85Lを加えた水溶液にチタンイソプロポキシド1.68Lを加え、室温で攪拌し酸性チタニアゾルとする。こうして得られた酸性チタニアゾルを合成フッ素マイカ(コープケミカル株式会社製 ソマシフME−100)500gを含む水懸濁液50Lに加え、室温で3時間攪拌した。その後遠心分離機によって固液分離を行い、得られた生成物の水洗をくり返し、さらにこの湿潤生成物をフリーズドライ処理し、乾燥したチタニア/粘土複合体の粉末を得た。このチタニア/粘土複合体の窒素ガス吸着法によるBET法比表面積は329m2 /g、全細孔容積は0.300ml/g、平均細孔径は3.6nmであった。
【0025】
<ポリ乳酸との混練>
上記のようにして得られたチタニア/粘土複合体の粉末とポリ乳酸(ユニチカ(株)製、商品名:テラマックTE4000、)とを所定の割合(表1参照)となるように小型溶融混練機(Custum Scientific Instruments Inc. MODEL CS-183MMX)に投入し、175°Cで溶融混練し、押し出された混合物を切断機で細かく切断してペレットとした。さらにこのペレットをプラスチック成形機に投入して175°Cで成形することにより、ダンベル薄片形状の試験片(片面の面積約8cm2)を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
(比較例1〜3)
比較例1〜3では、市販の光触媒チタニア粉末(日本アエロジル株式会社 P−25)とポリ乳酸とを所定の割合(比較例1ではチタニアが2質量%、比較例2では5質量%、比較例3では10質量%)となるように混練した。他の条件は実施例1〜7と同様であり、説明を省略する。
【0028】
(比較例4)
比較例4では、アパタイトで被覆されたチタニア粉末(昭和電工株式会社製 ジュピターF4−AP)が2質量%となるようにポリ乳酸と混練した。他の条件は実施例1〜7と同様であり、説明を省略する。
【0029】
<評 価>
以上のようにして得られた実施例1〜7及び比較例1〜4のダンベル薄片形状の試験片について、吸着能試験、分解性能試験及び耐光性試験を行った。
【0030】
(吸着能試験)
吸着能試験は次のように行った。まず、ブラックライトを用いて試験片に紫外線(1mW/cm2)を24時間照射した後、試験片をテドラーバッグ(容量5L)内に封入する。次に吸着試験の対象となるガスを所定の割合で含有する空気を3L注入し、暗所に放置する。この間、テドラーバッグ内の空気を所定時間ごとにガラスシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフで対象ガスの濃度の経時変化を測定した。そして、ガス濃度がほとんど変化しなくなった時点の濃度から平衡吸着量を求めた。対象となるガスとしては、アセトアルデヒド及びトルエンを用い、初期濃度はアセトアルデヒドの場合には40ppmとし、トルエンの場合には50ppmとした。
【0031】
(分解性能試験)
分解性能試験は次のように行った。上記吸着性能試験が終了後(すなわち、暗所における吸着平衡が達成された後)、テドラーバッグの外からブラックライトによって紫外線(1mW/cm2)を照射した。これにより、試験片において光触媒反応が起こり、テドラーバッグ内のガスが試験片によって分解され、再びガスの濃度が変化する。このときのガス濃度の経時変化をガスクロマトグラフで測定することにより、ガスの分解速度を求めた。
【0032】
(結 果)
アセトアルデヒドについての吸着能試験の結果を図1に示す。この図から、ポリ乳酸にチタニア(P−25)を含有させた比較例1〜3及びアパタイト被覆チタニアを含有させた比較例4では、アセトアルデヒドを全く吸着しないのに対し、チタニア/粘土複合体をポリ乳酸に含有させた実施例1〜7では、アセトアルデヒドが吸着されることが分かった。また、比較例1〜4の試験片ではアセトアルデヒドの吸着が認められないことから、実施例1〜7の試験片におけるアセトアルデヒドの吸着は、ポリ乳酸によるものではなく、含有されているチタニア/粘土複合体によるものと明らかになった。
【0033】
また、アセトアルデヒドについての分解性能試験の結果を図2に示す。この図から、チタニア/粘土複合体をポリ乳酸に含有させた実施例1〜7では、チタニア/粘土複合体含有量が0.1〜5質量%の範囲において特にアセトアルデヒドの分解速度定数が大きいことが分かった。この原因については明らかとされていないが、次のように推測される。すなわち、チタニア/粘土複合体含有量の増加は、触媒量の増加により光触媒反応の頻度を増加させるが、一方、ポリ乳酸へ混練した場合のチタニア/粘土複合体粉末の分散性の低下にもつながる。チタニア/粘土複合体の分散性の低下は、チタニア/粘土複合体粉末の凝集を引き起こし、吸着および光触媒反応に有効な表面の減少につながると考えられる。こうした二種類の効果が重ね合わされて、ある範囲内で分解速度が特に速くなるのではないかと考えられる。一方、比較例1〜4では、チタニア含有量にかかわらず、分解速度定数は低い値となった。
【0034】
次に、トルエンについての吸着能試験の結果を図3に示す。この図における実施例1〜7におけるトルエン吸着量から、実施例の場合には、チタニア/粘土複合体含有量が低くても、トルエンを多量に吸着することが分かる。これに対し、比較例の場合では、チタニア/粘土複合体含有量が多い比較例2、3では多量のトルエンを吸着するものの、チタニア/粘土複合体含有量が少ない比較例1、4ではトルエンの吸着量が少なくなることが分かる、
【0035】
また、トルエンについての分解性能試験の結果を図4に示す。この図から、実施例1〜7では、チタニア/粘土複合体含有量が0.2〜3%と低い領域である実施例1〜5において、特にトルエンを迅速に分解できることが分かる。これは、アセトアルデヒドの分解性能試験での考察で説明したように、チタニア/粘土複合体含有量の増加による、光触媒反応頻度の増加と、複合体粉末の分散性の低下の二種類の効果の重ね合わせによるものと考えられる。これに対して、比較例1〜4では、特にチタニアの含有量が低い範囲で分解速度が遅いという結果になった。
【0036】
(耐光性試験)
耐光性試験として屋外暴露試験を8月1日から8月31までの一ヶ月間行った。試験片は傾斜角を45度とし、南向きに取り付けた。そして、暴露前後における表面状態を走査電子顕微鏡によって観察した。その結果、実施例6の試験片では、暴露前(図5参照)及び暴露後(図6参照)後において、それほど表面状態は変化していなかった。これに対し、チタニア(P−25)を含有する比較例2では、暴露前では平滑であった表面(図7参照)が、暴露後において表面が著しく荒れていることが分かった(図8参照)。また、アパタイト被覆チタニアを含有させたポリ乳酸である比較例4においても、暴露後にかなり表面が荒れることが分かった(図9及び図10参照)。
【0037】
上記吸着能試験、分解性能試験及び耐光性試験の結果から明らかなように、実施例のチタニア含有ポリ乳酸は、環境汚染物質であるアセトアルデヒドやトルエンを多量に吸着し、光の照射によって吸着したそれらの環境汚染物質を迅速に分解することができる、また、これらの結果から、細菌に作用し抗菌効果を発現したり、表面に付着した汚れを迅速に分解する防汚作用の発現が容易に推測される。さらに、このチタニア含有ポリ乳酸は、光触媒反応によるポリ乳酸の劣化は起こり難くされている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、有機溶剤、農薬、界面活性剤、悪臭物質等の環境汚染物質を分解したり、抗菌性や表面に付着した汚れが分解されて自浄される等の機能を有するプラスチックや塗料に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アセトアルデヒドに対する吸着能試験の結果を示すグラフである。
【図2】アセトアルデヒドに対する分解性能試験の結果を示すグラフである。
【図3】トルエンに対する吸着能試験の結果を示すグラフである。
【図4】トルエンに対する分解性能試験の結果を示すグラフである。
【図5】実施例6の試験片の耐光性試験前における表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6の試験片の耐光性試験後における表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例2の試験片の耐光性試験前における表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例2の試験片の耐光性試験後における表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例4の試験片の耐光性試験前における表面の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例4の試験片の耐光性試験後における表面の走査電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性チタニアゾルと膨潤性粘土とを混合して得られるチタニア/粘土複合体が高分子素材に含有されていることを特徴とするチタニア含有高分子組成物。
【請求項2】
膨潤性粘土はスメクタイト、バーミキュライト、合成マイカ、及び合成マイカのフッ素置換誘導体の1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載のチタニア含有高分子組成物。
【請求項3】
チタニア/粘土複合体の含有量は0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタニア含有高分子組成物。
【請求項4】
チタニア微粒子/粘土複合体の窒素ガス吸着法によって測定されるBET法比表面積は70m2/g以上とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のチタニア含有高分子組成物。
【請求項5】
高分子素材は生分解性プラスチックであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のチタニア含有高分子組成物。
【請求項6】
生分解プラスチックはポリ乳酸又はポリ乳酸を主成分とする組成物であることを特徴とする請求項5記載のチタニア含有高分子組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−232865(P2006−232865A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44907(P2005−44907)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(593227132)ダイトーエムイー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】