説明

チタンクラッド組成物の火炎を阻止し予防するための方法および構造

初期発火に耐性を有し、さらに、一度発火し始めたら、反応性金属の燃焼を阻止する改善された能力を有する、チタンまたはジルコニウムのような反応性金属部材を接合させた金属基材を含む、化学的腐食と発火の両方に対して耐性を有する複合クラッド構造およびその製造方法である。複合材の構造は、構造的な基層(例えば炭素、低合金またはステンレス鋼);該構造的な基層にクラッドされた、高い熱伝導率を有する金属(例えば銅、アルミニウム、銀およびそれらの合金)の中間層;および該中間層にクラッドされた、チタン、ジルコニウムおよびそれらの合金からなる群より選択される耐食性の反応性金属層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化学的腐食、発火および火炎伝搬に耐性を有する、多層化したクラッド金属の複合材からなる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オートクレーブのような化学物質や高圧を伴うプロセスを利用する工業施設の建設は、構造的な完全性と、化学的腐食に対する耐性との両方を必要とする。一般的には、金属鉱石を処理するためのオートクレーブは鉄骨構造であり、極度に腐蝕性の環境に耐えるように耐食レンガまたは金属の内張りが用いられている。このような構造の内側を覆うのに適した金属は数少ないが、なかでもチタンおよびジルコニウム、ならびにそれらの合金のような反応性金属が挙げられる。オートクレーブ内に高い分圧の酸素が存在する状態で、これらの内張りの反応性金属は発火しやすく、それらの表面酸化物が除去されて迅速な再酸化が起こると、燃焼し続ける。表面酸化物の除去は、機械的部材の破損または部品同士の意図しない接触によって起こる可能性がある。また、表面酸化物の損失は、摩滅または摩耗によって起こる可能性もある。このような燃焼は、一度発生すると、発端となった酸素の流れを取り除いても、反応を維持するために周囲の空気または水からの酸素を利用して伝搬する可能性がある。反応性金属の火炎が高度に加圧されたオートクレーブの壁を突破するかもしれないという恐れのために、酸素が高濃度の環境の反応装置(実験スケールのユニットを除く)中のオートクレーブ壁へチタンのような金属を使用することは限定されてきた。
【0003】
構造のチタン部材の発火とその結果生じる燃焼の脅威は、問題の解決法を提唱しているいくつかの先行の特許で認識されている。その解決法の多くは、チタンを被覆して、チタン発火を引き起こし得る熱を外に逃がすように意図された被膜に関するものである。例えば、米国特許第4,642,027号は、ジェットエンジンのコンプレッサーセクションのチタン部分に、火炎またはプラズマ溶射による金属被覆として堆積させた熱伝導層を開示している。同様に、米国特許第4,935,193号、および、5,006,419号はそれぞれ、アルミニウム/ニオブ合金およびアルミニウム単独からなるチタンの燃焼を防止する保護被覆を備えたチタン合金部材を開示している。米国特許第5,114,797号では、接合を強化する金属製の基層、断熱酸化物中間層、および、金属製の被覆層からなる3層の燃焼防止被膜を、チタン基材上に提供することによって、これまでに示された開示を超える改善を探求している。米国特許第5,102,697号は、類似のアプローチを採用して、摂氏550度を超える温度にさらされるチタンまたはチタン合金の構造部材上に、多機能の保護被膜を提供することによって、チタンの燃焼を防止している。上記いずれの場合においても、チタンは構造部材であり、重層された被膜によって保護されている。
【0004】
米国特許第4,393,122号で開示されたクラッドプレートの目的は、チタンの燃焼を防止または保護することではない。特許権者は、鋼プレートに耐食性金属プレートを爆発溶接することに関して認識されている所定の問題を説明し、さらに、鋼プレートと耐食性プレートとの間に挿入された、薄い銅プレートとステンレス鋼ネットとを合体させ、この構造の2つの外側のプレート部材間でシーム溶接を行う代替の溶接プロセスを提示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術の総合的な背景に対して、本発明の主要な目的は、クラッド構造金属と反応性金属との複合材を提供することであり、本複合材においては、反応性金属を被覆することなく、反応性金属(例えばチタン)は初期の発火に耐性を有し、さらに、いったん反応性金属の燃焼が始まったら、それらを阻止する改善された能力を有する。
【0006】
本発明の他の目的は、高い分圧の酸素が存在する環境において反応性金属層を突破する燃焼を阻止するように意図された下地層または裏当てを含む、クラッド複合材物品を提供することである。
【0007】
本発明のさらにその他の目的は、反応性金属部材と、反応性金属の燃焼を遅らせ、かつ阻止する高伝導率の金属からなる中間層とを有するクラッド多層物品を提供することである。
【0008】
本発明のその他の目的およびさらにその他の目的、特徴、ならびに利点は、以下の本発明のプロセスと得られた製品の説明を読めばより明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明の好ましい形態は、構造的な鋼プレートと、チタンまたはチタン合金のシートとで構成され、その間に高い熱伝導率を有する金属(例えば銅、アルミニウム、金、銀またはそれらの合金)の中間シートがクラッドされている多層複合材の製造方法、および、得られた製品を提供することである。この耐食性のチタンの下に直接堆積された中間シートは、チタン表面から熱を逃がし、チタン表面でより低い温度を維持することによって、発火耐性を付与し、さらに、発火が起こると予想される場合は、燃焼を阻止することができる。高い熱伝導率を有する中間シートは、それより低い熱伝導率を有するチタンまたは炭素鋼よりも有効に、チタン表面で発生した熱を伝導するため、チタンの初期発火に対する耐性を有意に改善する。このような中間シートのより高い熱伝導率により、チタン表面で発火が起こったとしても、火炎伝搬の傾向は低減される。
【0010】
高い熱伝導率を有する中間シートを提供することに加えて、本発明は、特に高い分圧の酸素が存在する環境(例えばある種のオートクレーブ中に生じる環境)において、チタン層を突破する燃焼を阻止するための、耐酸化性を有する構造的な裏当て材の選択(例えばステンレス合金鋼)も想定している。
【実施例】
【0011】
図面の説明
図1は、本発明の多層化した複合材の部分断面図である。
【0012】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1は、得られた本発明の複合製品2を断面図で説明している。構造強度を有する裏当て金属4は、好ましくは圧力容器の炭素、低合金、または、ステンレス鋼製である。鋼の裏当て構造の上面全面にわたって、銅のような材料からなる高い熱伝導率を有するシート10が堆積され、それらに密着してクラッドされる。その銅シートの上面に、チタン、ジルコニウムまたはそれらの合金のような反応性金属層8がクラッドされる。この反応性金属層は、本発明の複合製品2で構築されたオートクレーブまたは類似の装置の内部を覆う耐食性の表面材として作用する。
【0013】
本明細書および請求項において用いられる、クラッドすること、とは、全てのクラッド技術を含み、例えば、爆発溶接、圧延接合、拡散接合、または、冶金学的な接合を用いて、または用いないで、表面同士を密着させて接触させた状態にするその他のあらゆる接合法または接着法が挙げられる。好ましくは、周知の爆発溶接プロセスである。
【0014】
銅は、そのコスト、利用可能性、高い熱伝導率および耐酸化性のために、中間シートに好ましい金属である。しかしながら、同様の伝導率または耐酸化特性を有するその他の金属を用いてもよい。このような代替の金属群としては、アルミニウム、金、銀およびそれらの合金が挙げられる。
【0015】
様々な層の寸法は重要ではないが、本発明の目的を達成しつつ、製品のコストを抑えるために、相対的な比率が重要な場合もある。裏当て用の鋼の寸法は、主に構造的な必要条件によって決定される。チタン層の厚さは、腐食や浸食の問題、加えてコストによって決定される。導電材料からなる中間シートは、好ましくは、チタン表面から熱を伝導させる際の有効性を最大にするのに実用的な厚さと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の多層化した複合材の部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的腐食と発火の両方に対して耐性を有する、複合溶接したクラッド構造の製造方法であって:
構造強度を有する金属を含む基層を確立する工程、
該基層に、高い熱伝導率を有する金属の中間層をクラッドする工程、および、
該中間層に、反応性金属からなる群より選択される材料の耐食層をクラッドする工程、
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記クラッドする工程の少なくとも1つは、爆発溶接法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラッドする工程の少なくとも1つは、圧延接合法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クラッドする工程の少なくとも1つは、拡散接合法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記耐食層の材料は、チタンまたはチタン合金である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記中間層は、銅、アルミニウム、金およびそれらの合金からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
クラッド金属の構造複合材であって、
構造金属の基層、
該構造金属層にクラッドされた、高い熱伝導率を有する金属の中間層、および、
該中間層にクラッドされた、耐食性の反応性金属層、
を含む、上記構造複合材。
【請求項8】
前記基層は、炭素またはステンレス合金鋼である、請求項7に記載の複合材。
【請求項9】
前記耐食性の反応性金属層は、チタンまたはチタン合金である、請求項7に記載の複合材。
【請求項10】
前記チタンを合金化する元素は、ニオブ、パラジウム、および、ルテニウムからなる群より選択される、請求項9に記載の複合材。
【請求項11】
前記耐食性の反応性金属層は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金である、請求項7に記載の複合材。
【請求項12】
前記中間層の金属は、銅、アルミニウム、金、銀およびそれらの合金からなる群より選択される、請求項7に記載の複合材。
【請求項13】
クラッド金属の複合材であって、
合金鋼の構造的な基層、
該合金鋼の構造的な基層にクラッドされた、高い熱伝導率を有する金属の中間層、ここで、該金属は、銅、アルミニウム、金、銀およびそれらの合金からなる群より選択される、および、
該中間層にクラッドされた、耐食性の反応性金属層、
を含む、上記複合材。
【請求項14】
前記耐食性の層は、チタンまたはチタン合金である、請求項13に記載の複合材物品。
【請求項15】
前記耐食性の層は、ジルコニウムまたはジルコニウム合金である、請求項13に記載の複合材物品。
【請求項16】
前記構造的な基層は、ステンレス鋼である、請求項13に記載の複合材物品。

【図1】
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【公表番号】特表2008−512249(P2008−512249A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530480(P2007−530480)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/031734
【国際公開番号】WO2006/029165
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507053688)
【出願人】(507053703)
【Fターム(参考)】