説明

チタン板及びチタン板の製造方法

【課題】良好な耐焼付き性、耐割れ性を有し、かつ表面を平滑とすることで、優れたプレス成形性及び洗浄性を発揮するチタン板を提供する。
【解決手段】チタン板は、表面のC濃度が及びN濃度が、それぞれ6at%以下、7at%以下であり、表面の酸化皮膜の厚さが3〜15nmの範囲内であり、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.25μm以下であり、表面の最大高さ(Rz)が2.0μm以下である。製造方法はエステル油または油脂からなる潤滑油を用いて冷間圧延を行い、真空度が5×10−4torr以下、またはアルゴン雰囲気の不活性環境下で真空焼鈍を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形性と潤滑油の洗浄性に優れたチタン板及びチタン板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン板は、耐食性に優れているため、化学、電力及び、食品製造プラント等の熱交換器用部材、カメラボディ、厨房機器等の民生品や、オートバイ、自動車等の輸送機器部材、家電機器等の外装材に広く使用されている。その中でもプレート式熱交換器は、プレス成形によってチタン板を波目状に加工して表面積を増やすことで、熱交換効率を高めている。従って、チタン板により深い波目を付けるために、優れた成形性が必要となる。また、チタン板をカメラの筐体や家電製品の外装品、厨房機器向けの部材等に加工する場合は、優れた成形性とともに、潤滑油の洗浄性に優れていることも求められる。
【0003】
チタン板は、r値(ランクフォード値:一軸引張変形時における板厚方向の対数歪みに対する板幅方向の対数歪みの比)が高く、板材そのものの絞り成形性が高い。しかし、活性な金属であるため、成形工程で成形金型との焼付きが発生し、これが成形限界を低くする要因となっている。そのため、特に絞り加工を重視する成形品の分野においては、従来から、成形金型との焼付きを防止して成形性を向上させることが試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1〜5では、成形金型との焼付きを防止するために、チタン板表面に反応性の低い表面硬質層を形成することが提案されている。
特許文献1では、チタン板表面に0.1μm以上、1.0μm以下の窒化チタン層を形成し、その下層に窒素の拡散層を形成することが提案されている。また、特許文献2では、チタン板表面に0.5μm以上、5.0μm以下の窒素富化層を形成することが提案されている。また、特許文献3では、チタン板表面に250オングストローム以上の酸化皮膜を生成させることが提案されている。また、特許文献4では、チタン板表面の窒素濃度を所定範囲内に制御し、板表面の板表面の平均粗さRaを0.05〜0.5μmにすることが提案されている。また、特許文献5では、チタン板の表面近傍にTiC含有層を形成し、かつ、当該TiC含有層の厚さを300Å以上に制御することが提案されている。
【0005】
さらに、特許文献6,7では、表面硬質層を形成したチタン板の成形性を向上させるために、チタン板の表面硬さを適度に下げることが提案されている。
特許文献6では、チタン板表面における荷重50gfのビッカース硬さを180〜280、荷重200gfのビッカース硬さを170以下とし、エリクセン値を11.5mm以上とすることが提案されている。また、特許文献7では、チタン板表面における荷重200gfのビッカース硬さを170以下、酸化皮膜の厚さを150Å以上とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−60620号公報
【特許文献2】特開平10−204609号公報
【特許文献3】特開平6−248404号公報
【特許文献4】特開2004−244671号公報
【特許文献5】特開2006−291362号公報
【特許文献6】特許第3600792号公報
【特許文献7】特開2002−194591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5に記載されたチタン板は、耐焼付き性を重視する加工を施す製品への適用は好ましいが、張出成形や曲げ成形を重視する成形では、逆に表面の割れが発生しやすくなり成形性が劣化するという問題があった。
【0008】
また、特許文献6,7に記載されたチタン板は、冷間圧延後に酸洗処理を施すことでチタン板表面に凹凸が形成されるため、プレス成形時に用いられる潤滑油が当該凹凸に入り込み、プレス成形後の潤滑油の洗浄に時間がかかるという問題があった。従って、耐焼付き性、成形性及び潤滑油の洗浄性を全て兼ね備えるチタン板はこれまで存在しなかった。
【0009】
前記した通り、チタン板の表面に酸化皮膜等の表面硬質層を形成すると、張出成形、曲げ成形時に割れが発生しやすくなる。特に、冷間圧延と真空焼鈍の工程ではチタン板表面に炭化チタンが形成されやすく、例えば表面に一様に炭化チタン層が形成されている場合は、割れの発生率がさらに増大する。
【0010】
また、冷間圧延工程でチタン板が圧延ロールと焼付きを起こすと、チタン表面が潤滑油と反応して炭化チタンが形成される。また、焼付きによってチタン板表面に形成された微細な凹凸に潤滑油が入り込み、潤滑油を洗浄除去することが困難となる。その後の真空焼鈍工程でさらに炭化チタンが形成される。表面に炭化チタンが形成されれば、真空焼鈍工程で酸化チタンの形成が阻害される。
【0011】
また、チタン板表面に炭化チタン層を形成することは、成形金型との焼付き発生の原因ともなる。すなわち、炭化チタン層は酸化皮膜よりも硬度が高いため、単に表面硬さのみを制御したとしても、表面にそれよりも硬度の高い炭化チタン層が形成されていれば、相対的に表面硬質層の厚さが薄くなる。従って、プレス成形時に基地のチタンが露出して、成形金型と接触して焼付きを起こしやすくなる。
【0012】
プレス成形工程においては、このような焼付きを防止するために粘度の高い潤滑油を用いることがあるが、潤滑油の粘度を高くするとその洗浄除去がさらに困難となり、生産性を阻害してしまう問題があった(特に食品関連部材等、高い清浄度が要求される用途へ使用する場合)。
【0013】
なお、チタン板表面に炭化チタンを形成せず、かつ、適度な表面硬さを有する酸化皮膜を形成するために、冷間圧延または真空焼鈍後に酸洗処理を施して表面層を一度除去することも考えられるが、チタン板表面に凹凸が形成されて洗浄性が阻害されるとともに、プロセスが煩雑となるため好ましくない。
【0014】
本発明はこのような背景のもとになされたものであり、良好な耐焼付き性、耐割れ性、平滑な表面を有し、プレス成形性と潤滑油の洗浄性に優れたチタン板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために請求項1に係るチタン板は、表面のC濃度が6at%以下及び、N濃度が7at%以下であり、表面の酸化皮膜の厚さが3〜15nmの範囲内であり、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.25μm以下であり、表面の最大高さ(Rz)が2.0μm以下である構成とする。
【0016】
このような構成を備えるチタン板は、チタン板表面のC濃度及びN濃度を所定以下として、酸化皮膜の厚さを所定範囲内とすることにより、表面の硬度を調節して成形性を向上させることができる。また、表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)を所定範囲内とすることにより、油溜り部(凹凸部)のない平滑な表面を得ることができる。
【0017】
また、請求項2に係るチタン板は、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差が30〜60の範囲内である構成とする。
【0018】
このような構成を備えるチタン板は、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さを測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高くし、かつ、その差を所定範囲内とすることにより、チタン板表面の硬度を適切な範囲に調節することができる。
【0019】
また、請求項3に係るチタン板は、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径が、平均切片長さで20〜80μmの範囲内である構成とする。
【0020】
このような構成を備えるチタン板は、結晶粒径の大きさを所定範囲内に制御することにより、チタン板の加工硬化指数と強度とのバランスをとることができる。
【0021】
また、請求項4に係るチタン板は、板厚が1.0mm以下である構成とする。
【0022】
このような構成を備えるチタン板は、熱交換器用の部材として好適に使用することができる。
【0023】
そして、請求項5に係るチタン板の製造方法は、請求項1から4のいずれか1項に記載したチタン板を製造する方法であって、外径が150mm以上の圧延ロールと、エステル油または油脂からなる潤滑油と、を用いて、圧延速度15m/min以上、1パス当たりの圧下率15%以下で冷間圧延を行なう冷間圧延工程と、真空度が5×10−4torr以下、またはアルゴン雰囲気の不活性環境下で真空焼鈍を行なう焼鈍工程と、を有する構成とする。
【0024】
このような構成を備えるチタン板の製造方法は、圧延ロールの外径、潤滑油の種類、圧延速度、圧下率を所定範囲に規定することで、冷間圧延中に板表面に導入される潤滑油の量を増大させ、冷間圧延中の温度上昇を抑えることができる。また、真空焼鈍を施すことで冷間圧延のひずみを開放して再結晶を促進し、十分な伸びを得ることができる。また、真空焼鈍の真空度を所定数値以下とすることにより、酸化皮膜厚を調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係るチタン板によれば、チタン板表面のC濃度及びN濃度を所定以下として、酸化皮膜の厚さを所定範囲内とすることにより、優れた成形性を発揮することができる。また、表面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)を所定範囲内として平滑な表面を得ることで、圧延ロールや成形金具との焼付きを防止することができると共に、潤滑油の洗浄性を向上させることができる。
【0026】
請求項2に係るチタン板によれば、チタン板表面の硬度を適切な範囲に調節することで、成形時の割れを適切に防止することができる。
【0027】
請求項3に係るチタン板によれば、結晶粒径の大きさを所定範囲内に制御してチタン板の加工硬化指数と強度のバランスを取ることで、成形性を向上させることができる。
【0028】
請求項4に係るチタン板によれば、成形性及び洗浄性に優れたチタン板を、熱交換器用の部材として好適に使用することができる。
【0029】
請求項5に係るチタン板によれば、圧延ロールの外径、潤滑油の種類、圧延速度、圧下率を所定範囲を適正化して冷間圧延中に板表面に導入される潤滑油の量を増大させることで、冷間圧延中の焼付きを防止することができる。また、真空焼鈍の真空度を所定数値以下として酸化皮膜の厚さを調整することにより、チタン板の成形性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は、成形性の評価を行なうための成形金型の形状を示す平面図である。(b)は、(a)のF−F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明では、チタン板表面のC濃度及びN濃度、表面粗さ等の表面状態の制御に着目することで、耐焼付き性、成形性及び潤滑油の洗浄性を兼ね備えるチタン板を提供する。ここで、成形性とは、素材の加工性、耐割れ性、プレス成形金型に対する耐焼付き性等を総称したものである。以下、本発明に係るチタン板について、詳細に説明する。
【0032】
(組成)
本発明は特定の組成のチタン板に限定されるものではないが、一例としてTiおよび不可避不純物からなる純チタン板が挙げられる。上記不可避不純物としては、たとえばO,Fe,H,C,Nなどが挙げられるが、母材の成形性確保の観点から、Oを1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制し、Feを1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制し、Hを130ppm以下に抑制し、Cを800ppm以下に抑制し、Nを300ppmに抑制することが好ましい。
【0033】
(表面状態)
耐焼付き性と耐割れ性を兼備するために、酸化チタンから成る所定の厚さ範囲の酸化皮膜(表面硬質層)を形成する。ここで、酸化皮膜が薄すぎると、成形工程で素材が延ばされた際に、酸化皮膜が破れて基地のチタンが露出し、成形金型と焼付きを起こしやすくなる。一方、酸化皮膜が厚すぎると、成形工程で割れが発生・進展しやすくなり、成形性が阻害される。なお、本発明におけるチタン板の「表面」とは、チタン板の最表面から200nmまでの深さ範囲のことをいう。
本実施例に係るチタン板の表面状態は、具体的には以下のように規定する。
【0034】
(1)C濃度、N濃度
チタン板表面に硬度の高い窒化チタン、炭化チタンが所定量以上含有されている場合は特に割れが発生しやすいと考えられる。従って、表面のC濃度は、6at%以下、好ましくは5at%以下、より好ましくは3at%以下とする。また、表面のN濃度は、7at%以下、好ましくは6at%以下とする。なお、チタン板表面のC濃度は、後記するように、冷間圧延工程の圧延ロール径、圧延速度、1パス当たりの圧化率、潤滑油を適正化することで、制御することができる。また、N濃度は、後記するように、真空焼鈍時の雰囲気を適正化することで、制御することができる。
【0035】
(2)酸化皮膜の厚さ
チタン板表面の酸化皮膜の厚さが薄すぎると工具と焼付きを起こしやすくなり、厚すぎると成形性が低下する。従って、酸化皮膜の厚さ(深さ)は3〜15nmとする。また、好ましくは5〜15nm、より好ましくは5〜10nmとする。なお、酸化皮膜の厚さは、後記するように、圧延時の炭化物の生成を抑制すると共に、真空焼鈍時の雰囲気における真空度を適正化することで、制御することができる。
【0036】
ここで、C濃度、N濃度及び酸化皮膜の厚さは、X線光電子分光分析によって得た原子プロファイルの結果を用いる。すなわち、チタン板の最表面から200nmまでの深さ範囲を測定し、当該測定範囲でのC濃度とN濃度の最高値が上記の値以下となるように規定する。また、酸化皮膜の厚さは、チタン板表面と、Oの濃度がピーク値から半減した深さ位置との間の距離によって定義される。
【0037】
なお、X線光電子分光分析の測定条件は、X線源を単色化Al−Kα、X線出力を43.7W、光電子取り出し角を45°、Ar+スパッタ速度をSiO換算で約4.6nm/minとした。
【0038】
(表面粗さ)
チタン板の表面が平滑であると潤滑油を洗浄しやすくなるため、表面粗さを規定する。表面粗さは、後記するように、冷間圧延工程の圧延ロール径、圧延速度、1パス当たりの圧化率、潤滑油を適正化することで、制御することができる。チタン板は圧延方向と平行に伸びた凹凸が形成されやすいため、表面粗さの測定値は圧延方向と垂直方向に測定した値とした。また、表面粗さは、具体的には以下の2つの値によって規定した。
【0039】
(1)算術平均粗さ(Ra)
算術平均粗さ(Ra)は、板材表面の平均的な凹凸を規定するものである。ここで、算術平均粗さ(Ra)が0.25μmを超えると、凹凸の隙間に潤滑油が入り込んで洗浄による潤滑油の除去が困難となる。従って、算術平均粗さ(Ra)は0.25μm以下とする。なお、算術平均粗さ(Ra)は、0.22μm以下が好ましく、0.20μm以下がより好ましい。算術平均粗さ(Ra)の下限値は特に規定しないが、現実的には0.05μm以上となる。
【0040】
(2)最大高さ(Rz)
最大高さ(Rz)は、板材表面の凹部の深さを規定するものである。ここで、最大高さ(Rz)が2.0μmを超えると、凹凸に潤滑油が入り込んで、洗浄除去することが困難となる。従って、最大高さ(Rz)は2.0μm以下とする。なお、最大高さ(Rz)は、1.8μm以下が好ましく、1.7μm以下がより好ましい。最大高さ(Rz)の下限値は特に規定しないが、現実的には1.0μm以上となる。
【0041】
算術平均粗さ(Ra)と、最大高さ(Rz)の測定は、例えば、表面粗さ形状測定機を使用し、JIS B 0601:2001に準拠した方法で測定する。その際、測定距離と測定速度を所定の値に設定し、圧延方向に垂直方向を5点測定し、その平均値を測定値とする。
【0042】
(ビッカース硬さ(表面硬さ))
耐焼付き性と耐割れ性を兼備するために、チタン板表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さを測定し、これらの差が所定の範囲内となるように規定した。本発明では、後記するように、冷間圧延及び真空焼鈍の条件を調整してチタン板の表面状態を所定範囲に規定することにより、ビッカース硬さを制御することができる。
【0043】
ここで、測定荷重0.098N(10g)でのビッカース硬さは、チタン板最表面の硬さを評価することができ、測定荷重4.9N(200g)でのビッカース硬さは、材質内部の硬さを評価することができる。また、これらの差を取って硬質層の形成度合いを評価することができる。
【0044】
チタン板表面に酸化皮膜が形成されると、その厚さの増加に伴いビッカース硬さも上昇する。そして、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差が30未満だと、工具との焼付きが発生する場合がある。一方、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差が60を超えると、成形時に表面の割れが発生しやすくなり、成形性が劣化する場合がある。従って、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差は、30〜60の範囲内とすることが好ましい。なお、より好ましくは40〜60の範囲内であり、さらに好ましくは40〜55の範囲内とする。
【0045】
ビッカース硬さの測定は、例えば、測定面をチタン板表面とし、JIS Z 2244に準拠した方法で実施する。その際、測定荷重を4.9N及び0.098Nとして各測定荷重について10点測定し、その平均値を測定値として用いる。測定荷重4.9Nの測定には、マイクロビッカース硬さ試験機を、測定荷重0.098Nの測定には、超マイクロビッカース硬さ試験機を用いる。そして、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さと、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さとの差を算出する。
【0046】
(結晶粒径)
本発明に係るチタン板は、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径を、平均切片長さで20〜80μmの範囲内とすることが好ましい。結晶粒径の平均切片長さが20μm未満では、加工硬化指数が低く、優れた張出成形性が得られない場合がある。一方、結晶粒径の平均切片長さが80μmを超えると、材料強度が低下する場合がある。従って、結晶粒径の平均切片長さは、チタン板の成形性と強度特性の観点から上記範囲内とすることが好ましい。なお、さらに好ましくは35〜80μmとする。チタン板の結晶粒径は、冷間圧延時の圧下率、ならびにその後の真空焼鈍工程における保持温度と保持時間によって制御することができる。
【0047】
本発明に係るチタン板は、板厚が1.0mm以下であることが好ましい。このような板厚とすれば、熱交換器用の部材、例えば放射板として好適に使用することができる。なお、板厚はこれに限定されないことはいうまでもなく、取り扱い性や使用用途に応じてこれよりも板厚を厚くすることもできる。
【0048】
また、本発明に係るチタン板の使用用途は、前記した熱交換器用の部材に限定されず、例えば、カメラボディ、厨房機器等の民生品や、オートバイ、自動車等の輸送機器部材、家電機器等の外装材等にも使用することができる。
【0049】
以上、本発明に係るチタン板について詳細に説明した。かかるチタン板によれば、C濃度、N濃度、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)によって表面状態を適切に制御したため、優れた耐焼付き性、耐割れ性、成形性及び潤滑油の洗浄性を発揮することができる。また、本発明に係るチタン板は、表面に対してX線源をCu−Kαとする入射角1°の薄膜法によるX線回折を行なった際に、TiC、TiNのピークが検出されない。つまり、表面に炭化チタン、窒化チタン等の表面硬質層が形成されておらず、プレス成形時に割れの発生が抑制されると共に、金型との焼付きが抑制される。
【0050】
以上に説明したチタン板は、次に説明する本発明に係るチタン板の製造方法によって好適に製造することができる。ここで、本発明に係るチタン板の製造方法について具体的に説明する前に、冷間圧延後のチタン板の代表的な製造工程を2つ紹介する。一つ目は、冷間圧延後に真空焼鈍を行なうものであり、二つ目は、冷間圧延後に大気焼鈍を行い、その後酸洗処理を施すものである。
【0051】
後者の場合は酸洗処理を行なうため、平滑な表面を簡便に得ることが難しい。従って、本発明では、前者の製造工程をベースにして、冷間圧延工程及び真空焼鈍工程において、チタン板の表面粗度を下げて滑らかな表面とし、かつ、炭化チタンの形成を防止すると共に、チタン板表面に所定厚さの酸化皮膜を形成することで、耐焼付き性、耐割れ性及び、洗浄性を兼備するチタン板を製造可能とした。
【0052】
具体的には、冷間圧延工程において、圧延ロール径、圧延速度、1パス当たりの圧下率、潤滑油を適正化することで、圧延ロールとの焼付きと炭化チタンの形成を抑制して、平滑な表面を得ることができた。また、その後の真空焼鈍工程において、温度、保持時間、雰囲気を適正化することで、チタン板の表面状態と結晶粒径を制御することができた。以下、本発明に係るチタン板の製造方法について、詳細に説明する。
【0053】
本発明に係るチタン板は、例えば、溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、焼鈍工程を経て製造される。ここで、溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程は当業者に周知の技術を用いて行なうことができる。そして本発明では、冷間圧延工程、焼鈍工程の条件の適正化することによって、プレス成形性と潤滑油の洗浄性に優れたチタン板を製造することを特徴とする。
【0054】
冷間圧延の条件は、以下の通りである。
(圧延ロール径)
圧延ロール径が小さい程、チタン板が圧延ロールと接触する距離が短くなって焼付きにくくなるとも考えられるが、実際には圧延ロール径が大きい程、炭化チタン層の形成抑制に好ましいことが判明した。従って、圧延ロール径は150mm以上、好ましくは200mm以上とする。
【0055】
圧延ロール径を上記数値以上とした上で圧延を実施すると、圧延中に板表面に導入される潤滑油の量が増えると共に、圧延中の温度上昇を抑えることができるためと考えられる。従って、チタン板と圧延ロールとの焼付を抑えて炭化チタン層の形成が抑制すると共に、表面粗さ、ビッカース硬さを前記した所定範囲内に制御することができる。また、炭化チタンが形成されないために、チタン板表面に酸化皮膜が形成される。さらに、チタン板表面に焼付きが生じないため、チタン板表面も平滑に仕上げることが可能となる。一方、圧延ロール径を上記数値以下とすると、チタン板表面に焼付きが生じて炭化チタン層が形成され易くなり、C濃度が上昇する。
【0056】
(圧延速度)
圧延速度は15m/min以上とすることが好ましい。また、20m/min以上とすることがより好ましく、40m/minとすることがより一層好ましい。圧延速度が15m/min未満だと、冷間圧延時に焼付きが発生し易くなり、表面のC濃度が上昇する。これは、圧延ロールと素材表面間に潤滑油の油膜が形成され易いためと考えられる。また、表面粗さ、ビッカース硬さを前記した所定範囲内に制御することが困難となる。
【0057】
(1パス当たりの圧下率)
1パス当たり15%以下の圧下率で圧延することが好ましい。1パス当たりの圧下率が15%を超えると、冷間圧延時に焼付きが発生して表面のC濃度が上昇する。また、表面粗さ、ビッカース硬さを前記した所定範囲内に制御することが困難となる。なお、1パス当たりの圧下率は、10%以下がより好ましい。
【0058】
(潤滑油)
ニート油等の鉱油をベースとする潤滑油を用いると、チタン板が圧延ロールと焼付きを起こして表面のC濃度が上昇する。また、表面粗さ、ビッカース硬さを前記した所定範囲内に制御することが困難となる。従って、潤滑油としては例えば、合成エステル油、油脂を用いることが好ましい。
【0059】
真空焼鈍の条件は、以下の通りである。
(温度及び保持時間)
真空焼鈍の温度は、600〜750℃とすることが好ましい。焼鈍温度が600℃未満だと、再結晶が十分に起こらず(冷間圧延のひずみが開放されず)、十分な伸びが得られない場合がある。また、真空焼鈍はバッチ処理であるため短時間での処理ができない。従って、焼鈍温度が750℃を超えると、保持時間が数分であっても粒径が80μmを超えるおそれがある。なお、保持時間は5分以上5時間以下が好ましい。
【0060】
真空焼鈍の温度は600〜750℃の範囲内であればどの温度域で処理してもよく、酸化皮膜の厚さと結晶粒径の大きさを制御するために、保持温度に応じて保持時間を適宜選択することができる。例えば、真空焼鈍の温度が650℃であれば、保持時間は2時間程度とする。
【0061】
(雰囲気)
真空焼鈍時の雰囲気は、チタン板表面の酸化皮膜の厚さ及びN濃度を制御するために重要である。当該雰囲気は、真空焼鈍の温度と保持時間に影響を受けるものの、真空度(熱処理炉内の気圧)を5×10−4torr以下とする。真空度が5×10−4torrを超えると、チタン板が雰囲気中の酸素と反応して、表面の酸化皮膜が15nmを越えやすくなる。また、チタン板表面のN濃度が7at%を超えやすくなる。なお、真空度は、2×10−4torr以下とすることがさらに好ましい。
【0062】
ここで、本発明において所定の真空度を示す熱処理炉内に酸素、窒素が占める圧力を酸素分圧、窒素分圧とし、雰囲気の組成は基本的に大気と同じで窒素:酸素が4:1で構成されるものとする。そして、真空度を所定値以下として熱処理炉内の酸素分圧、窒素分圧を下げることにより、チタン板表面の酸化皮膜の厚さとN濃度を所定範囲内に制御することができる。なお、焼鈍雰囲気を窒素などの窒化雰囲気にした場合には、チタン板表面に窒化物が形成されて表面硬度が向上して割れが生じ易くなってしまうため、焼鈍雰囲気を窒化雰囲気にしないように調節することが好ましい。
【0063】
真空度の下限値については、現実的な熱処理炉の排気能力を考慮して特に定めない。なお、規定の圧力まで真空排気後、アルゴン等のチタンと反応しない不活性ガスを導入した雰囲気で真空焼鈍を行なっても、上記と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを対比して、本発明の効果を説明する。本試験では、JIS−1種相当のチタン材を用いて行なったが、本発明の効果は、JIS−2種相当のチタン材をはじめ、他のグレードの純チタン材やチタン合金材を用いたチタン板についても同様の効果を発揮することはいうまでもない。
【0065】
素材としては、工業用純チタン板(JIS−1種)を使用した。化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、その他残部:Tiと不可避不純物である。当該チタン板は、チタン原料に当業者に周知の溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程を施して得られたものである。そして、酸洗処理によってスケール除去した圧延コイルを出発材とした。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に、冷間圧延及び真空焼鈍の条件を示す。本実施例では、表1に示す条件で板厚0.5mmまで冷間圧延を実施して洗浄した後、同表に示す条件で真空焼鈍を施して試験体No.1〜14を得た。なお、板厚が0.5mmになるように最終パスの圧下率は微調整している。
【0068】
また、比較のために、冷間圧延後に大気焼鈍を行い、その後酸洗処理を施した試験体を作製した。冷間圧延工程までは前記した通りであり、その後、フッ酸硝酸混合液にチタン板を浸し、減肉量が片面10μmの酸洗処理を施して試験体No.15を得た。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に、表1の条件で冷間圧延及び真空焼鈍を行なった試験体No.1〜15の特性を測定した結果を示す。
(表面状態の測定)
各試験体の表面状態を測定した。具体的には、各試験体表面のC濃度、N濃度、酸化皮膜厚をX線光電子分光分析によって、前記した条件で測定した。
【0071】
(表面粗さの測定)
各試験体の算術平均粗さ(Ra)と、最大高さ(Rz)を測定した。測定には、表面粗さ形状測定機(東京精密社製サーフコム1400D)を使用し、JIS B 0601:2001に準拠した方法で測定した。その際、測定距離は7mm、測定速度は0.3mm/秒とし、圧延方向に垂直方向を5点測定し、その平均値を測定値とした。
【0072】
(ビッカース硬さの測定)
ビッカース硬さの測定は、測定面を試験体表面とし、JIS Z 2244に準拠した方法で実施した。測定荷重を4.9N(200g)及び0.098N(10g)として各測定荷重について10点測定し、その平均値を測定値として用いた。測定荷重4.9Nの測定には、マイクロビッカース硬さ試験機(MATSUZAWA SEIKI DMH−1)を、測定荷重0.098Nの測定には、超マイクロビッカース硬さ試験機(AKASHI MVK−G3)を用いた。また、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さと、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さとの差を算出した。
【0073】
(結晶粒径の測定)
結晶粒径の測定は、各試験体をJIS G 0552の切断法に準拠した方法で切断し、その断面組織を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径を測定することで行なった。なお、結晶粒は等軸状を呈していた。
【0074】
(成形性の評価)
成形性の評価は、各試験体に対してプレート式熱交換器の熱交換部分を模擬した成形金型を用いたプレス試験を行い、成形性を評価した。図1(a)に示すように、成形金型の形状は、成形部が100mm×100mmで、ピッチが10mm、最大高さが4mmの綾線部を6本有し、各綾線部は、頂点に、図1(a)の上から下に向かって順にR=0.4,1.8、0.8,1.0,1.4,0.6の6種のR形状を有している。なお、図1(b)に示す通り、測定位置Cは、金型中央を通る線の山側であり、測定位置C’は、金型中央を通る線の谷側である。
【0075】
この成形金型を用いて80t油圧プレス機にてプレス成形を行なった。プレス成形は、各試験体の両面に動粘度34mm/s(温度40℃)のプレス油を塗布し、各試験体の圧延方向が図1(a)の上下方向と一致するように下金型上に配置し、フランジ部を板押さえで拘束した後、プレス速度1mm/s、押し込み深さ3.6mmの条件で実施した。そして、成形性の評価は、プレス成形後に各試験体に認められる割れの数で評価した。具体的な評価方法は以下の通りである。
【0076】
図1(a)に示す稜線部と点線(山側5つ、谷側1つ)の交点計36箇所について、各試験体の割れの有無を目視で観察した。そして、割れの起点となる測定位置A、C、C’、Eについては、割れが認められない場合を2点、くびれが認められた場合を1点、割れが認められた場合を0点として点数を付けた。また、その他の測定位置B、Dについては、割れが認められない場合を1点、くびれが認められた場合を0.5点、割れが認められた場合を0点として点数を付けた。そして、各点数に加工Rの逆数を掛けて割れの状態を数値化し、その合計を求めた。この合計値を、完全に割れ、くびれが認められない場合を100として規格化した後、温度(T)、潤滑油粘度(μ)、試験片板厚(t)に依存する関数F(T、μ、t)、ならびに金型の綾線の角度(α)、ピッチ(p)に依存する関数G(α、p)を掛け合わせ、成形性スコアとして算出した。なお、FならびにGは0から1の値を取る。以上の成形性スコア算出方法が下記式(1)によって表される。
【0077】
成形性スコア=F×G×ΣE(ij)/R(j)/(ΣA,C,C’,E2/R(j)+ΣB,D1/R(j))×100 ・・・式(1)
【0078】
ここで、式(1)において、
A,C,C’,Eの場合は、E(ij)=1.0×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)とし、
B,Dの場合は、E(ij)=0.5×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)として算出した。
また、本実施例では温度(T)、潤滑油粘度(μ)、試験片板厚(t)、金型の綾線の角度(α)、およびピッチ(p)を一定としたため、F×Gを便宜的に1としてスコアを算出した。
【0079】
各試験体の成形性スコアを表2に示す。成形性スコアは、65点以上を成形性が良いとし、65点未満を成形性が悪いとした。
【0080】
(洗浄性)
各試験体を20×25mmに切断してアセトン洗浄を行い、質量測定を行った後、各試験体の片面に動粘度34mm/s(温度40℃)のプレス油を25μl塗布した。そして、70℃に加温された純粋2Lをスターラーで撹拌し、その中に各試験体を3分間浸漬させて取り出した。その後、各試験体を乾燥させて質量を測定し、プレス油塗布前の質量との差から残留している油分量を評価し、残留油分が0.5mg/cm以下の場合を洗浄性が良いとし、0.5mg/cmを超える場合を洗浄性が悪いとした。
【0081】
表2に示すように、冷間圧延条件と真空焼鈍条件が本発明の必要条件を満たす試験体No.1〜7(実施例)は、表面状態、ビッカース硬さ(測定荷重0.098Nと4.9Nとの差)、表面粗さ、結晶粒径を本発明が規定する範囲内に規制することができ、成形性、洗浄性が良いことが分かる。
【0082】
一方、冷間圧延条件と真空焼鈍条件のいずれかが本発明の必要条件を満たさない試験体No.8〜15(比較例)は、表面状態、ビッカース硬さ、表面粗さ、結晶粒径のいずれかを本発明が規定する範囲内に規制することができず、成形性、洗浄性が悪いことが分かる。
【0083】
試験体8,9は、冷間圧延の潤滑油に鉱油ベースのニート油を使用しているため、冷間圧延時に試験体が圧延ロールと焼付きを起こし、表面のC濃度、表面粗さ及びビッカース硬さが高く、成形性と洗浄性が共に良好ではない。特に、圧延ロール径の小さく、圧延速度を10m/minとした試験体9は、その傾向が顕著である。
【0084】
試験体10は、圧延速度を10m/min、1パス当たりの圧下率を30%としたため、冷間圧延時に焼付きが生じて、表面のC濃度が高く高硬度となり、かつ、表面粗さ及びビッカース硬さが大きくなっている。そのため、成形性と洗浄性が共に良好ではない。
【0085】
試験体11,12は、径の小さい圧延ロールを使用しているため、冷間圧延時に焼付きが生じて、表面のC濃度が高く高硬度となり、かつ、表面粗さ及びビッカース硬さが大きくなっている。そのため、成形性と洗浄性が共に良好ではない。
【0086】
試験体13,14は、冷間圧延条件が適正範囲であるため、冷間圧延時に焼付きが発生せず、表面のC濃度及びN濃度が低く、また、平滑な表面が得られている。しかし、その後の真空焼鈍時における真空度が所定値を越えているため、表面酸化被膜が厚くなりすぎてビッカース硬さが大きくなっている。そのため、成形性が良好ではない。
【0087】
試験体15は、冷間圧延後に酸洗処理を施しているため、表面のC濃度及びN濃度は低いものの、試験体表面の凹凸が大きく、当該凹凸に潤滑油が入り込むため、表面粗さが大きく、ビッカース硬さが小さい。そのため、洗浄性が良好ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面のC濃度が6at%以下及び、N濃度が7at%以下であり、
表面の酸化皮膜の厚さが3〜15nmの範囲内であり、
表面の算術平均粗さ(Ra)が0.25μm以下であり、
表面の最大高さ(Rz)が2.0μm以下であることを特徴とするチタン板。
【請求項2】
表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差が30〜60の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のチタン板。
【請求項3】
JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径が、平均切片長さで20〜80μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載のチタン板。
【請求項4】
板厚が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のチタン板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載したチタン板を製造する方法であって、
外径が150mm以上の圧延ロールと、エステル油または油脂からなる潤滑油と、を用いて、圧延速度15m/min以上、1パス当たりの圧下率15%以下で冷間圧延を行なう冷間圧延工程と、
真空度が5×10−4torr以下、またはアルゴン雰囲気の不活性環境下で真空焼鈍を行なう焼鈍工程と、
を有することを特徴とするチタン板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−20135(P2011−20135A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166319(P2009−166319)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】