説明

チップ形電子部品の製造方法

【課題】本発明は、端面電極の厚み寸法ばらつきを小さくすることができるチップ形電子部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】シート状の基板11に第1のスリット20を形成する工程と、前記第1のスリット20の内部に導電性ペースト22を充填する工程と、前記第1のスリット20の幅よりも幅の細い第2のブレード24で導電性ペースト22を切断して端面電極25を形成する工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に採用されるチップ形電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のチップ形電子部品について、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図6は、従来のチップ形電子部品の一例であるチップ抵抗器の断面図を示したもので、この図6において、1はアルミナ等の磁器からなる絶縁性を有する基板で、この基板1の上面の左右両端部には一対の上面電極2が設けられている。3は前記一対の上面電極2に両端部が重なるように前記基板1の上面に設けられた抵抗体である。4は前記一対の上面電極2と対向するように基板1の裏面に設けられた一対の裏面電極である。5は前記抵抗体3の全面を覆うように設けられた保護層である。6は前記一対の上面電極2および一対の裏面電極4と電気的に接続されるように前記基板1の両端面に設けられた一対の端面電極である。7は前記一対の上面電極2の表面の一部と一対の端面電極6の表面および一対の裏面電極4の表面に設けられたニッケルめっき層である。8は前記ニッケルめっき層7を覆うように設けられたはんだめっき層である。
【0004】
次に、従来のチップ形電子部品の一例であるチップ抵抗器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0005】
図7(a)〜(c)および図8(a)〜(c)は従来のチップ抵抗器の製造工程図を示したもので、この図7(a)〜(c)および図8(a)〜(c)に基づいて、その製造方法を以下に説明する。
【0006】
まず、図7(a)に示すように、上面と裏面にそれぞれ1次分割溝1aと2次分割溝1bをあらかじめ形成したアルミナ等の磁器からなる絶縁性を有するシート状の基板1cを用意し、そしてこのシート状の基板1cの上面に、前記1次分割溝1aを跨ぐように複数の上面電極2をスクリーン印刷法で形成する。なお、図示していないが、シート状の基板1cの裏面にも、前記1次分割溝1aを跨ぐように複数の裏面電極4をスクリーン印刷法で形成する。
【0007】
次に、図7(b)に示すように、複数の上面電極2に一部が重なるように前記シート状の基板1cの上面に酸化ルテニウム等からなる抵抗体3をスクリーン印刷法で形成するとともに、抵抗体3における全抵抗値が所定の抵抗値の範囲内に入るようにレーザ等により抵抗体3にトリミング溝3aを施す。
【0008】
次に、図7(c)に示すように、複数の抵抗体3を覆うように保護膜5をスクリーン印刷法で形成する。
【0009】
次に、図7(c)に示す1次分割溝1aの部分で分割することにより、図8(a)に示すような短冊状の基板1dを構成するとともに、短冊状の基板1dの両端面に、上面電極2および裏面電極4と電気的に接続されるように導電性ペーストを塗布し、高温で硬化させることにより端面電極6を形成する。
【0010】
次に、図8(a)に示す短冊状の基板1dにおける2次分割溝1bの部分で分割することにより、図8(b)に示すような個片状の基板1eを構成する。
【0011】
最後に、図8(c)に示すように、上面電極2の表面の一部と裏面電極4の表面および端面電極6の表面にニッケルめっき層7(図示せず)を形成した後、はんだめっき層8を形成することにより、従来のチップ抵抗器を製造していた。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平7−86003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記した従来のチップ抵抗器においては、端面電極6を形成する場合、導電性ペーストを塗布して形成しているが、この導電性ペーストの塗布量を安定化させることは難しく、また導電性ペーストは図6に示すように中央がかまぼこ状の形状に塗布されるため、端面電極6の形状を安定化させることは難しい。この結果、端面電極6の厚みがばらつき、製品の長さ寸法が不安定になるという課題を有していた。この端面電極6の厚み寸法ばらつきは、高い寸法精度が要求される微小なチップ形電子部品においては大きな問題となるものである。
【0014】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、端面電極の厚み寸法ばらつきを小さくすることができるチップ形電子部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、シート状の基板にスリットを形成する工程と、前記スリットの内部に導電性ペーストを充填する工程と、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して端面電極を形成する工程とを備えたもので、この製造方法によれば、シート状の基板に形成したスリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して端面電極を形成する工程を備えているため、規定幅のスリットの内部に充填された導電性ペーストは規定幅のブレードで切断されることになり、これにより、端面電極の厚みを均一に形成することができるため、チップ形電子部品の長さ寸法を安定化させることができるという作用効果を有するものである。
【0017】
本発明の請求項2に記載の発明は、シート状の基板の上面に上面電極および機能素子を形成する工程と、前記上面電極を切断するように前記シート状の基板にスリットを形成する工程と、前記シート状の基板の上面側が固定テープに接するようにシート状の基板を固定テープに貼り付ける工程と、前記シート状の基板の裏面側から前記スリットの近傍とスリットの内部に導電性ペーストを充填する工程と、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して裏面電極と端面電極を同時に形成する工程を備えたもので、この製造方法によれば、シート状の基板に形成したスリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して裏面電極と端面電極を同時に形成する工程を備えているため、端面電極の厚みを均一に形成することができ、これにより、チップ形電子部品の形状寸法を安定化させることができるとともに、裏面電極と端面電極が同時に形成されることにより、工程が簡略化されるため、低コスト化が実現できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明のチップ形電子部品の製造方法は、シート状の基板にスリットを形成する工程と、前記スリットの内部に導電性ペーストを充填する工程と、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して端面電極を形成する工程とを備えているため、規定幅のスリットの内部に充填された導電性ペーストは規定幅のブレードで切断されることになり、これにより、端面電極の厚みを均一に形成することができるため、チップ形電子部品の形状寸法を安定化させることができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップ形電子部品の一例であるチップ抵抗器の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(d)および図4(a)〜(d)は、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図である。
【0021】
まず、図1(a)に示すように、焼成済みのアルミナ等の磁器からなる絶縁性を有するシート状の基板11を用意する。そしてこのシート状の基板11の上面に、銀を主成分とする電極ペーストをスクリーン印刷し、ピーク温度850℃の焼成プロファイルで焼成することにより、複数の上面電極12を升目状に並べて形成する。なお、シート状の基板11の周辺部には、上面電極12を形成しない領域を設けておく。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、複数の上面電極12に一部が重なるように、すなわち複数の上面電極12と電気的に接続されるように、スクリーン印刷工法により酸化ルテニウム系の複数の抵抗体13を前記シート状の基板11の上面に形成し、ピーク温度850℃の焼成プロファイルで焼成することにより、抵抗体13を安定な膜とする。この抵抗体13の形成により、抵抗体13と前記第1の上面電極12は一列につながって形成されるもので、この列を多数、平行に並んだ状態に形成する。また、この抵抗体13を形成する際に同時に、抵抗体13と同じ材料を用いて位置合わせマーク14を形成する。
【0023】
次に、図1(c)に示すように、上面電極12間の抵抗体13を覆うように、スクリーン印刷工法により鉛ホウケイ酸ガラス系のガラス層15を前記シート状の基板11の上面に形成し、ピーク温度600℃の焼成プロファイルで焼成することにより、ガラス層15を安定な膜とし、さらに、複数の上面電極12間の抵抗体13の抵抗値を一定の値に調整するために、レーザトリミング工法により抵抗体13にトリミングを行い、トリミング溝16を形成する。
【0024】
次に、図2(a)に示すように、複数の抵抗体13を覆うように、スクリーン印刷工法によりエポキシ系樹脂を主成分とする保護膜17を形成し、ピーク温度200℃の硬化プロファイルで硬化させることにより、保護膜17を安定な膜とする。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、シート状の基板11を上面電極12を形成した面を上にして基材18aと紫外線光の照射(UV照射)で硬化する粘着層18bからなる第1の固定テープ18に貼り付ける。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、位置合わせマーク14を基準にして、高速回転する第1のブレード19によるダイシング工法により、抵抗体13と上面電極12からなる列と直交する方向に、上面電極12が切断されるようにシート状の基板11に、シート状の基板11を上下方向に貫通する第1のスリット20を形成する。なお、この第1のスリット20は、シート状の基板11の周辺部を残すように形成されるものである。
【0027】
次に、第1の固定テープ18の粘着層18bを硬化させて粘着力を低下させた後で、図3(a)に示すように、シート状の基板11を第1の固定テープ18から引き剥がす。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、シート状の基板11における上面電極12を形成した面が粘着層21bと接するように第2の固定テープ21にシート状の基板11を貼り付ける。ここでこの第2の固定テープ21は、基材21aの表面に紫外線光の照射(UV照射)で硬化する粘着層21bを有する構成である。
【0029】
次に、図3(c)に示すように、第1のスリット20の内部に、樹脂系の導電性ペースト22を充填するとともに、シート状の基板11における第1のスリット20の近傍の裏面側にも導電性ペースト22を塗布し、高温で乾燥させる。そして、この裏面側の導電性ペースト22が裏面電極23となるものである。
【0030】
次に、図3(d)に示すように、高速回転する第2のブレード24で第1のスリット20の内部に充填した導電性ペースト22を切断する。このとき、第2のブレード24は第1のスリット20の幅よりも幅が狭いものを用いるもので、これにより、第1のスリット20の内壁に導電性ペースト22が一定の厚さで残ることになるため、裏面電極23と端面電極25が同時に形成されるものである。
【0031】
次に、図4(a)に示すように、位置合わせマーク14を基準にして、高速回転する第3のブレード26によるダイシング工法により、抵抗体13と上面電極12からなる列と平行な方向に、抵抗体13を切断しないようにシート状の基板11に、シート状の基板11を上下方向に貫通する第2のスリット27を形成する。そして、この第2のスリット27が形成されることによって、シート状の基板11は図4(b)に示すように個片化されて複数の個片状基板11aに分離される。
【0032】
次に、第2の固定テープ21から、第1のスリット20と第2のスリット27の形成により切断されて個片化された複数の個片状基板11aを剥離して、図4(c)に示すような個片状基板11aを得る。ここで、端面電極25の厚みは略均一で、その表面はフラットな形状となっているものである。
【0033】
最後に、図4(d)に示すように、上面電極12の表面と端面電極25の表面および裏面電極23(図示せず)の表面にバレルめっき法により、ニッケルからなる第1のめっき層28(図示せず)と、すずからなる第2のめっき層29を形成して、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器を製造する。
【0034】
図5は、上記製造方法により製造した本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図を示したものである。
【0035】
上記した本発明の一実施の形態においては、シート状の基板11に形成した第1のスリット20の幅よりも幅の細い第2のブレード24で導電性ペースト22を切断して端面電極25を形成する工程を備えているため、規定幅の第1のスリット20の内部に充填された導電性ペースト22は規定幅の第2のブレード24で切断されることになり、これにより、端面電極25の厚みを均一に形成することができるため、チップ抵抗器の長さ寸法精度を格段に向上させることができるものである。
【0036】
また、上記した本発明の一実施の形態においては、シート状の基板11の裏面側からシート状の基板11に形成した第1のスリット20の近傍と第1のスリット20の内部に導電性ペースト22を充填するとともに、前記第1のスリット20の幅よりも幅の細い第2のブレード24で導電性ペースト22を切断して裏面電極23と端面電極25を同時に形成する工程を備えているため、端面電極25の厚みを均一に形成することができ、これにより、チップ形電子部品の形状寸法を安定化させることができるとともに、裏面電極23と端面電極25が同時に形成されることにより、工程が簡略化されるため、低コスト化が実現できるという効果を有するものである。
【0037】
なお、上記本発明の一実施の形態においてはチップ形電子部品の一例として、機能素子として抵抗体13を有するチップ抵抗器に適用したものについて説明したが、このチップ抵抗器に限定されるものではなく、抵抗体以外の機能素子、例えばコイルやコンデンサなどを有する電子部品にも適用できるもので、この場合においても、上記本発明の一実施の形態と同様の作用効果が得られるものである。
【0038】
また、上記本発明の一実施の形態においては、裏面電極23と端面電極25を同時に形成するようにしているが、これに限定されるものではなく、裏面電極23と端面電極25は別々に形成しても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係るチップ形電子部品の製造方法は、スリットの内部に導電性ペーストを充填し、そして、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで、導電性ペーストを切断することにより、均一な厚みの端面電極を形成することができるようにしたものであり、特に、厳しい寸法精度が要求される微小なチップ抵抗器に適用することにより、有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)〜(c)本発明の一実施の形態におけるチップ形電子部品の一例であるチップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図2】(a)〜(c)同チップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図3】(a)〜(d)同チップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図4】(a)〜(d)同チップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図5】同チップ抵抗器の断面図
【図6】従来のチップ形電子部品の一例であるチップ抵抗器の断面図
【図7】(a)〜(c)同チップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【図8】(a)〜(c)同チップ抵抗器の製造方法を示す製造工程図
【符号の説明】
【0041】
11 シート状の基板
12 上面電極
13 抵抗体
19 第1のブレード
20 第1のスリット
21 第2の固定テープ
22 導電性ペースト
23 裏面電極
24 第2のブレード
25 端面電極
26 第3のブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基板にスリットを形成する工程と、前記スリットの内部に導電性ペーストを充填する工程と、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して端面電極を形成する工程とを備えたチップ形電子部品の製造方法。
【請求項2】
シート状の基板の上面に上面電極および機能素子を形成する工程と、前記上面電極を切断するように前記シート状の基板にスリットを形成する工程と、前記シート状の基板の上面側が固定テープに接するようにシート状の基板を固定テープに貼り付ける工程と、前記シート状の基板の裏面側から前記スリットの近傍とスリットの内部に導電性ペーストを充填する工程と、前記スリットの幅よりも幅の細いブレードで導電性ペーストを切断して裏面電極と端面電極を同時に形成する工程とを備えたチップ形電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−220860(P2007−220860A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39010(P2006−39010)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】