チップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法
【課題】 より正確にチップ抵抗器を製造できるチップ抵抗器の製造方法を提供すること。
【解決手段】 基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する工程と、基板材料7に、方向xに沿って延びているとともに表面7aから凹む複数の溝71を形成する工程と、溝71の側面711に導電体層3を形成する工程と、基板材料7に含まれているとともに溝71により区画された複数の基材73をそれぞれ方向yに沿って分離する工程と、を備える。
【解決手段】 基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する工程と、基板材料7に、方向xに沿って延びているとともに表面7aから凹む複数の溝71を形成する工程と、溝71の側面711に導電体層3を形成する工程と、基板材料7に含まれているとともに溝71により区画された複数の基材73をそれぞれ方向yに沿って分離する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図45、図46は、従来のチップ抵抗器の製造方法の一例を示している。図45(a)は、従来のチップ抵抗器の製造方法の一工程を示す平面図である。図45(b)は、図45(a)の9α―9α線に沿った要部断面図である。まず、図45(a)、(b)に示すように、絶縁板91を準備する。次に、絶縁板91の表面91aに、たとえば複数の矩形部からなる表面電極層94を形成する。次に、絶縁板91の表面91aに、たとえば複数の矩形部からなる抵抗体層92を、一部が表面電極層94と重なるように形成する。次に、絶縁板91の裏面91bに、表面電極層94と同様に、複数の矩形部からなる裏面電極層94’を形成する。次に、接着層963を介して絶縁板91をシート部材961に貼り付ける。次に、図46(a)に示すように、シート部材961に貼り付けた状態で絶縁板91をDx線(図45(a)を参照)に沿ってダイシングし、帯状の複数のバー部材911を形成する。次に、図46(b)に示すように、バー部材911をシート部材961から剥離する。次に、同図(c)に示すように、バー部材911を重ねるように整列させる。次に、同図(d)の矢印で示すように、バー部材911の側面に一括して電極層93を形成する。次に、複数のバー部材911を、図45(b)に示したようなシート部材に再度貼り付ける(図示略)。次に、バー部材911を、バー部材911の延びる方向に垂直な方向に沿って適当な大きさにダイシングし、上記シート部材から剥離する。これにより、チップ抵抗器が製造される。
【0003】
一方、近年、チップ抵抗器の小型化が図られている。チップ抵抗器の小型化に伴い、チップ抵抗器の製造に用いるバー部材911も細くなっている。シート部材961から剥離された細いバー部材911が所望の姿勢をとるようにこれらのバー部材911を整列させるには、非常に高精度な技術が要求される。このような事情から、電極層93をバー部材911の側面に正確に形成できない虞がある。これはチップ抵抗器の歩留まり向上を妨げるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−40401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より正確にチップ抵抗器を製造できるチップ抵抗器の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるチップ抵抗器の製造方法は、基板材料の表面に抵抗体層を形成する工程と、上記基板材料に、第1の方向に沿って延びているとともに上記表面から凹む複数の溝を形成する工程と、上記溝の側面に導電体層を形成する工程と、上記基板材料に含まれており且つ上記溝により区画された複数の基材をそれぞれ上記第1の方向と異なる第2の方向に沿って分離する工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記導電体層を上記溝の上記側面に形成するため、上記導電体層を形成するために上記基材をばらばらにする必要がない。上記基材をばらばらにしないならば、上記基材どうしの位置および姿勢を、上記溝を形成する工程から上記導電体層を形成する工程に至るまで、そのまま保持できる。これにより、位置ずれが少ない状態で、上記導電体層を形成できる。その結果、より正確にチップ抵抗器を製造できる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記溝は上記基板材料に形成された底面を有する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の方向に沿って且つ上記溝の幅より小さい幅で上記底面に追加の溝を形成することにより、上記基材どうしを分離する工程をさらに備える。このような構成によれば、上記基材どうしを分離する工程において、たとえばダイシングブレードに上記導電体層が接触しにくい。そのため、上記分離する工程において、上記導電体層が削られてしまうことをなるべく回避できる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列され且つ上記第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を有する複数の抵抗部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、上記複数の溝を形成する工程においては、上記抵抗部列どうしの隙間に上記溝を形成する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層を形成する工程の前に、上記基板材料の上記表面に表面電極層を形成する工程をさらに備え、上記表面電極層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列された複数の表面電極部を有する複数の表面電極部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第2の方向において隣り合う2つの上記表面電極部の少なくとも一部を各上記帯状抵抗部が覆うように、上記抵抗部列を形成する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を形成する工程を含む。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、印刷によりなされる、このような構成によれば、上記導電体層を形成する前段階として、後述のマスキング層を施す必要がない。そのため、上記チップ抵抗器の製造工程を削減できる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、スパッタリングによりなされる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する前に、上記基板材料の上記表面を覆っており且つ上記溝の上記側面を露出させる開口部を有するマスキング層、を形成する工程をさらに備える。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるチップ抵抗器は、表面および裏面と上記表面および上記裏面につながる側面とを有する基板と、上記基板の表面に形成された抵抗体層と、上記抵抗体層に導通し且つ上記側面に形成された導電体層と、を備えるチップ抵抗器において、上記基板には、上記側面の上記導電体層が形成された部分より上記裏面寄りの部分において、隆起している隆起部が形成されていることを特徴としている。このようなチップ抵抗器は、上記方法によって製造するのに適する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層は、上記表面の側にわたって形成されている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板の上記表面に形成され且つ上記抵抗体層と上記導電体層とに接する表面電極層をさらに備え、上記表面電極層は、上記導電体層と上記基板の上記表面とを介在している。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層は、第1の方向に沿って配列され且つ上記第1の方向と異なる第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を含み、上記導電体層は、上記第1の方向における端部に形成され且つ上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の上記導電部は、上記第1の方向に互いに離間している。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記隆起部は、上記導電体層に当接している第1面を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層と上記隆起部の一部とを覆うメッキ層をさらに備える。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示したチップ抵抗器の側面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1〜図3に示したチップ抵抗器の実装状態を表す図である。
【図5】図1に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図6】図5のα−α線に沿った要部断面図である。
【図7】図5に続く工程を示す図である。
【図8】図7のα−α線に沿った要部断面図である。
【図9】図7のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図10】図7に続く工程を示す図である。
【図11】図10のα−α線に沿った要部断面図である。
【図12】図10のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図13】図10に続く工程を示す図である。
【図14】図13のα−α線に沿った要部断面図である。
【図15】図13のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図16】図13に続く工程を示す図である。
【図17】図16のα−α線に沿った要部断面図である。
【図18】図16のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図19】図17に続く工程を示す要部断面図である。
【図20】図18に続く工程を示す要部断面図である。
【図21】本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の製造方法の変形例の平面図である。
【図22】図21のα−α線に沿った要部断面図である。
【図23】図21のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。
【図25】図24のXXV−XXV線に沿った断面図である。
【図26】図24に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図27】図26のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図28】図26に続く工程を示す図である。
【図29】図28のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図30】図28のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図31】図28に続く工程を示す図である。
【図32】図31のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図33】図31のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図34】図31に続く工程を示す図である。
【図35】図34のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図36】図34のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図37】図34に続く工程を示す図である。
【図38】図37のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図39】図37のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図40】本発明の第3実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す断面図である。
【図41】図40に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図42】図41に続く工程を示す図である。
【図43】図42に続く工程を示す図である。
【図44】図43に続く工程を示す図である。
【図45】従来のチップ抵抗器の製造方法の一工程を示す図である。
【図46】図45に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。図2は、図1に示したチップ抵抗器の側面図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【0027】
これらの図に示されたチップ抵抗器A1は、基板1、抵抗体層2、保護層s、導電体層3、表面電極層4、およびメッキ層5を備える。図1、図2においては理解の便宜上、保護層sおよびメッキ層5を省略している。
【0028】
基板1は、xy平面視で矩形状であり、たとえばアルミナなどの絶縁材料からなる。基板1の方向xにおける大きさは、たとえば900μmである。基板1の方向yにおける大きさは、たとえば400μmである。基板1の厚み(方向zにおける大きさ)は、たとえば100μmである。図3によく表れているように、基板1は、表面1a、裏面1b、および側面1cを有する。側面1cは、表面1aと裏面1bとにつながっている。基板1には、側面1cの裏面1b寄りの部分において隆起部11が形成されている。隆起部11は、基板1の方向yにおいて内側から外側に隆起した形状である。隆起部11の方向yにおける大きさ(厚さ)は、たとえば15μmである。隆起部11の方向zにおける大きさは、たとえば90μmである。隆起部11が形成されていることにより、側面1cは、面1d,11a,1eを有している。面1dおよび面1eは、zx平面に沿っている。面11aは、xy平面に沿っており、面1dおよび面1eとつながっている。基板1の裏面1bには図示しない保護層が形成されている。
【0029】
図1、図3に示すように、抵抗体層2は、基板1の表面1aに形成されている。抵抗体層2は、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体材料からなる。図1に示すように、抵抗体層2は、複数の帯状抵抗部21を有する。帯状抵抗部21はいずれも方向yに沿って延びている。各帯状抵抗部21は、方向xに沿って配列されている。帯状抵抗部21は、本実施形態においては4本形成されている。もちろん、4本と異なる本数の帯状抵抗部21が形成されていてもよい。帯状抵抗部21は、厚みがたとえば10μmの膜状である。
【0030】
図3に示すように、保護層sは、抵抗体層2を覆っており、抵抗体層2を保護している。保護層sは、たとえば等幅で方向xに沿って延びている。保護層sは、たとえば絶縁性樹脂からなる。
【0031】
図1、図3に示すように、表面電極層4は、基板1の表面1aに形成されている。表面電極層4は、たとえば銀などの導電性材料からなる。図1に示すように、表面電極層4は、複数の表面電極部41を有する。図1、図3に示すように、表面電極部41は、基板1の方向yの両端において、方向xに沿って4つずつ配列されている。表面電極部41はそれぞれ、方向yにおける中央寄りの部分を帯状抵抗部21に覆われている。これにより表面電極部41は、帯状抵抗部21と導通している。表面電極部41の厚みは、たとえば10μmである。
【0032】
図1〜図3に示すように、導電体層3は、基板1の側面1cから基板1の表面1a側にわたって形成されている。そのため、導電体層3は表面電極部41に重なっており、基板1の表面1aと方向z視において重なっている。導電体層3は、たとえばニッケルおよびクロムなどの導電性金属からなる。図1、図2に示すように、導電体層3は、複数の導電部31を有する。導電部31は、方向xにおいて互いに離間するように配置されている。図1に示すように、導電部31の方向xにおける大きさは、表面電極部41の方向xにおける大きさと異なっており、本実施形態においては、表面電極部41における大きさよりも大きい。なお、図3に示した場合と異なり、導電部31の方向xにおける大きさと、表面電極部41の方向xにおける大きさとが同じであっても構わない。図3に示すように、導電部31は面11aと当接しており、面1eを露出させている。導電部31の厚みは、たとえば10nmである。各導電部31は、表面電極部41と各別に接している。これにより各導電部31は、表面電極部41を介して帯状抵抗部21と導通している。
【0033】
図3に示すように、メッキ層5は、表面電極層4と、導電体層3と、隆起部11の一部とを覆っている。メッキ層5の厚みは、たとえば10μmである。メッキ層5は、ニッケルとスズの2層構造となっている。
【0034】
図4は、チップ抵抗器A1が配線パターンpに実装された状態を示している。図4においてチップ抵抗器A1は、基板1の表面1a側を実装面として用いられている。チップ抵抗器A1を配線パターンpに実装するためには、フィレットfを形成する。
【0035】
次に、図5〜図20を用いて、チップ抵抗器A1の製造方法について説明する。
【0036】
図5は、チップ抵抗器A1の製造工程における平面図を示す。図6は、図5のα−α線に沿った断面図を示す。
【0037】
まず、図5、図6に示すように、たとえばアルミナなどの絶縁材料からなる基板材料7を用意する。次に、基板材料7の表面7aに表面電極層4を形成する。より具体的には、複数の表面電極部列4Lを、方向yに互いに離間するように基板材料7の表面7aに形成する。各表面電極部列4Lは、複数の表面電極部41を有する。各表面電極部列4Lにおいて、表面電極部41は、方向xに沿って配列されている。
【0038】
次に、基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する。より具体的には、複数の抵抗部列2Lを、方向yに互いに離間するように形成する。各抵抗部列2Lは、複数の帯状抵抗部21を有する。抵抗部列2Lを形成する際には、帯状抵抗部21の方向yにおける両端が、表面電極部41の一部を覆うようにする。次に、帯状抵抗部21を覆うように保護層sを形成する。保護層sは、たとえば方向xに等幅で延びる帯状である。なお、帯状抵抗部21がいずれの部分に形成されているのかを理解しやすくするため、図5においては保護層sの記載を省略している。また後述する製造工程における図7、図10、図13などの平面図においても同様の理由により、保護層sの記載を省略している。
【0039】
次に、所定の接着剤などを用いて基板材料7をシート部材61に貼り付ける。これにより、シート部材61に基板材料7が接着層62を介して積層された格好となる。シート部材61は、たとえばPETフィルムなどの絶縁材料からなる。
【0040】
次に、図7、図8、図9に示すように、基板材料7の表面7aに方向xに沿う複数(図7においては3本)の溝71を形成する。この際、溝71が表面電極部列4Lと重なるようにする。図8、図9に示すように、溝71は、基板材料7を貫通しないように形成する。溝71は、基板材料7に形成された側面711および底面712を有する。図7に示すように溝71が形成されることによって、基板材料7は、複数の基材73に区画される。基材73は、方向xに沿って延びる帯状である。図7においては、4つの基材73を記載している。なお、溝71の幅(方向yにおける大きさ)は、たとえば70〜100μmであり、溝71の深さは、たとえば50〜100μmである。
【0041】
次に、図10、図11、図12に示すように、基板材料7の表面7a側に、印刷によりマスキング層63を形成する。図10、図11に示すように、マスキング層63には、矩形状の複数の開口部631が形成されている。各開口部631は、各表面電極部41の少なくとも一部が露出するように形成されている。各開口部631は、方向xに沿って配置されている。一方、図10、図12に示すように、溝71の表面電極部41どうしに挟まれていない部分の大半は、マスキング層63に覆われている。
【0042】
図10においてはマスキング層63を記載したが、後述する製造工程における図13、図16などの平面図においては理解の便宜上、マスキング層63の記載を省略しており、開口部631のみを2点鎖線で示している。また、図13、図16などの平面図においてはさらに、以下で述べる導電体層3のうちマスキング層63の表面に形成されるものの記載も省略している。
【0043】
次に、図13、図14、図15に示すように、基板材料7の表面7aに向かって、たとえばニッケルやクロムなどの導電性原子をスパッタリングする。すると、図13、図14によく表れているように、開口部631が形成されているためマスキング層63に覆われていない、表面電極部41と溝71の側面711および底面712とには、導電体層3が直接形成される。このように溝71の側面711などに直接形成された導電体層3は、方向xに沿って並ぶ複数の導電部31を構成している。複数の導電部31は、xy平面視で矩形状であり、方向xにおいて離間している。一方、図14、図15に示すように、表面電極部41、および溝71の側面711や底面712のうち、マスキング層63に覆われた部分には、マスキング層63の表面に導電体層3が形成されるから、導電体層3が直接形成されることはない。
【0044】
次に、図16、図17、図18に示すように、溝71の底面712に分離溝72を形成する。これにより、図16における方向xに延びるDx線に沿って、基材73どうしが分離する。分離溝72の幅(方向yにおける大きさ)は、溝71の底面712の幅(方向yにおける大きさ)より小さい。分離溝72の幅は、たとえば40〜60μmである。分離溝72を形成するにはたとえば図示しないダイシングブレードを用いる。次に、図16におけるDy線に沿って図示しない溝を形成するなどして、基材73を分離する。図17、図18によく表れているように、Dx線に沿って基材73どうしを分離する際、およびDy線に沿って基材73を分離する際には、基材73は接着層62によってシート部材61に貼り付けられたままである。また、分離溝72を形成する工程により、図3で示した隆起部11を有する基板1が形成される。
【0045】
次に、図19、図20に示すように、接着層62を所定の溶剤を用いて溶解する。図19は、図17に示した断面における次の工程を示す図であり、図20は、図18に示した断面における次の工程を示す図である。接着層62が溶解すると、基板1がシート部材61から分離される。これにより、基板1どうしは完全に分離する。次にマスキング層63も溶解させる。これにより、マスキング層63の表面に形成された導電体層3は、基板1から除去される。
【0046】
次に、図3に示したメッキ層5を形成し、チップ抵抗器A1の製造が完成する。
【0047】
次に、チップ抵抗器A1およびチップ抵抗器A1の製造方法の作用について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、図13〜図15に示したように、導電体層3を溝71の側面711に形成している。そのため導電体層3を形成するために基材73どうしを分離、整列させる必要がなくなっている。基材73どうしを分離、整列させないことで、基材73どうしの位置および姿勢を、基板材料7に溝71を形成する工程から導電体層3を形成する工程に至るまで、そのまま保持できる。基材73どうしの位置および姿勢を保持できると、位置ずれが極力少ない状態で、導電体層3を形成できる。これにより、より正確にチップ抵抗器A1を製造できる。すなわちより高精度のチップ抵抗器A1を製造できる。
【0049】
従来の技術においては、図46(b),(c)に示したように、シート部材961から剥離されたバー部材911どうしを所望の姿勢に整列させるために、高精度な技術を用いる必要があった。このような技術は極めて細いバー部材911を扱うことが困難であった。だが本実施形態によれば、基材73どうしを分離、整列させる必要がなくなっているため、この高精度な技術を必要としない。そのためこの技術を用いることに起因する困難がなく、より小型のチップ抵抗器A1を製造することが可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、たとえば図11、図12に示したように、溝71は、基板材料7に形成された底面712を有しており、基板材料7を貫通していない。すなわち、溝71の深さは、溝71が基板材料7を貫通する場合と比べて浅い。そのため、溝71の底面712にまで印刷を用いてマスキング層63を形成しやすくなっている。この結果、溝71の側面711の所望の部分以外に導電体層3が形成されてしまうことを防止できる。
【0051】
これにより、図13で示したように、複数の導電部31が方向xにおいて互いに離間するように、導電体層3を形成できる。このような方法は、チップ抵抗器A1において複数の帯状抵抗部21が形成されたいわゆる多連型のチップの製造に適する。
【0052】
また、図16で示したDy線に沿った基板1の分離工程において、複数のDy線の方向xにおける間隔を調整することで、帯状抵抗部21の数が4つでない多連型のチップ抵抗器や、帯状抵抗部21が1つであるいわゆる単品型のチップ抵抗器をも、容易に製造できる。
【0053】
図16〜図18に示したように、本実施形態によれば、分離溝72の幅は、溝71の幅より小さい。そのため、基板1どうしを分離する工程において、たとえば図示しないダイシングブレードが溝71の側面に形成された導電体層3に接触しにくくなる。これにより、基板1どうしを分離する工程において、導電体層3が削り取られることをなるべく回避できる。
【0054】
図7〜図12に示したように、マスキング層63を形成しているのは、溝71を形成した後であり、溝71を形成する前ではない。そのため、方向yにおける、溝71の大きさとマスキング層63に形成される開口部631の大きさとを一致させる必要がない。図10、図11に示したように、方向yにおいて、開口部631の大きさは溝71の大きさよりも大きい。これにより、図13、図14に示すように、導電体層3は溝71の側面711だけでなく、基板1の表面1a側にも形成されている。よって、導電体層3を表面電極層4に、より十分に接触させやすくなっている。
【0055】
図4に示したように、フィレットfは、基板1の側面1c側に形成されているメッキ層5の全体と接触するように形成されており、基板1の裏面1bと接触する程の大きさには形成されていない。そのため、フィレットfの方向yにおける大きさもさほど大きくなっていない。これにより、フィレットfの大きさを含めたチップ抵抗器A1の実装面積をより小さくすることが可能になっている。
【0056】
図21〜図23は、本実施形態の製造方法の変形例を示している。この変形例においては、図7〜図12における、マスキング層63を形成し、その後スパッタリングにより導電体層3を形成する工程を、印刷により導電体層3を形成する工程に替えている。
【0057】
図21〜図23によく表れているように、マスキング層を形成することなく、溝71の側面711や底面712における所望の位置のみに導電体層3を形成できる。すなわち、マスキング層を形成することなく、図21、図22に示すように、xy平面視において小さな正方形状の領域のみに導電体層3を形成している。一方、図21、図23に示すように、x平面視において上記正方形状の領域以外の領域には、導電体層3を形成していない。このような方法を用いることでマスキング層を形成する工程を省略できるから、チップ抵抗器A1の製造工程の削減を図りうる。また、このようにした場合であっても、上述のとおり溝71の深さが浅くなっているので、溝71の底面712にまで導電体層3を形成しやすい。
【0058】
図24〜図39は、本発明の第2実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0059】
図24は、本発明の第2実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。図25は、図24のXXV−XXV線に沿った断面図である。これらの図に示されたチップ抵抗器A2は、いわゆる単品型であって、抵抗体層2が複数の帯状抵抗部21を有しておらず1つの矩形状である点において、第1実施形態にかかるチップ抵抗器A1と主に相違する。チップ抵抗器A2においては抵抗体層2が1つのみしか形成されていないため、導電体層3、表面電極層4、およびメッキ層5も、抵抗体層2の両端に1つずつ形成しか形成されていない。図24においては、理解の便宜上、保護層sおよびメッキ層5の記載は省略している。
【0060】
次に、図26〜図39を用いて、チップ抵抗器A2の製造方法について説明する。
【0061】
まず、第1実施形態と同様、図26、図27に示すように、基板材料7を用意し、基板材料7の表面7aに表面電極層4を形成する。より具体的には、複数の表面電極部列4Lを、方向yに互いに離間するように基板材料7の表面7aに形成する。各表面電極部列4Lは、複数の表面電極部41を有する。
【0062】
次に、第1実施形態と同様に、基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する。より具体的には、複数の抵抗部列2Lを、方向yに互いに離間するように形成する。各抵抗部列2Lは、複数の帯状抵抗部21を有する。抵抗部列2Lを形成する際には、帯状抵抗部21の方向yにおける両端が、表面電極部41の一部を覆うようにする。次に、帯状抵抗部21を覆うように保護層sを形成する。保護層sは、たとえば方向xに等幅で延びる帯状である。なお、帯状抵抗部21がいずれの部分に形成されているのかを理解しやすくするため、図26においては保護層sの記載を省略している。また後述する製造工程における図28、図31、図34などの平面図においても同様の理由により、保護層sの記載を省略している。
【0063】
次に、所定の接着剤などを用いて基板材料7をシート部材61に貼り付ける。これにより、シート部材61に基板材料7が接着層62を介して積層された格好となる。
【0064】
次に、図28、図29、図30に示すように、基板材料7の表面7aに方向xに沿う複数の溝71を形成する。この際、溝71が表面電極部列4Lと重なるようにする。図29、図30に示すように、溝71は、基板材料7を貫通しないように形成する。溝71は、基板材料7に形成された側面711および底面712を有する。図28に示すように溝71が形成されることによって、基板材料7は、複数の基材73に区画される。基材73は、方向xに沿って延びる帯状である。ここまでの工程は、第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図31、図32、図33に示すように、基板材料7の表面7aにマスキング層63を形成する。マスキング層63には、方向xに沿って延びる帯状の複数の開口部631が形成されている。各開口部631は、各表面電極部41の溝71寄りの部分が露出するように形成されている。
【0066】
図31においてはマスキング層63を記載したが、後述する製造工程における図34、図37などの平面図においては理解の便宜上、マスキング層63の記載を省略しており、開口部631のみを2点鎖線で示している。また、図34、図37などの平面図においてはさらに、以下で述べる導電体層3のうちマスキング層63の表面に形成されるものの記載も省略している。
【0067】
次に、図34、図35、図36に示すように、基板材料7の表面7aに向かって、導電性原子をスパッタリングする。すると、溝71の側面および底面712には方向xの全体にわたって、導電体層3が形成される。また、図34、図35によく表れているように、開口部631が形成されているためマスキング層63に覆われていない表面電極部41にも、導電体層3が形成される。
【0068】
次に、図37、図38、図39に示すように、溝71の底面712に分離溝72を形成することにより、Dx線に沿って基材73どうしを分離する。その後、Dy線に沿って基材71を分離するなどして、第1実施形態で述べた工程と同様の工程を経ることにより、図24、図25に示したチップ抵抗器A2の製造が完成する。
【0069】
次に、チップ抵抗器A2およびチップ抵抗器A2の製造方法の作用について説明する。
【0070】
本実施形態においても、導電体層3の一部を溝71の側面711に形成している。これにより、第1実施形態と同様に、高精度なチップ抵抗器A2を製造することができる。また、本実施形態においても、上述の実施形態において述べたその他の利点を有する。
【0071】
また、本実施形態においても、図21〜図23に示した変形例のように、図31〜図36に示した、マスキング層63を形成し、その後スパッタリングにより導電体層3を形成する工程を、印刷により導電体層3を形成する工程に替えてもよい。
【0072】
図40〜図44は、本発明の第3実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0073】
図40は、本実施形態にかかるチップ抵抗器A3の断面図である。図40は、第2実施形態において示した図25に対応する。チップ抵抗器A3は、導電体層3が表面電極層4上に形成されていない点において、第2実施形態にかかるチップ抵抗器A2と相違する。
【0074】
図41〜図44を用いて、チップ抵抗器A3の製造方法について説明する。図41〜図44は、図26、図28等におけるγ―γ線に沿った断面図に対応する。チップ抵抗器A3の製造方法は、マスキング層63を形成する工程(図41参照)および溝71を形成する工程(図42参照)の順序が、チップ抵抗器A2の製造方法における順序(図29、図32参照)の逆になっている。
【0075】
まず、図41に示すように、第2実施形態における図26、図27で示した工程と同様に、基板材料7の表面7aに表面電極層4と抵抗体層2とを形成し、基板材料7をシート部材61に貼り付ける。次に、基板材料7の表面7aにマスキング層63を形成する。
【0076】
次に、図42に示すように、基板材料7およびマスキング層63を一括してダイシングすることにより、基板材料7に溝71を形成する。次に、図43に示すように、基板材料7の表面に向かって導電性原子をスパッタリングすることにより、溝71の側面711および底面712に導電体層3を形成する。このとき、マスキング層63の表面にも導電体層3が形成されている。次に、図44に示すように、分離溝72を形成し、Dx線に沿って基材73どうしを分離する。その後、第2実施形態にかかるチップ抵抗器A2の製造工程と同様の工程を経ることにより、図40に示すチップ抵抗器A3が製造される。
【0077】
本実施形態においても、導電体層3を溝71の側面711に形成している。これにより、上述の実施形態と同様に、高精度なチップ抵抗器A3を製造することができる。
【0078】
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかるチップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0079】
A1,A2,A3 チップ抵抗器
1 基板
1a 表面
1b 裏面
1c 側面
1d 面
1e 面
11 隆起部
11a 面
2 抵抗体層
2L 抵抗部列
21 帯状抵抗部
3 導電体層
3L 電極部列
31 導電部
4 表面電極層
41 表面電極部
4L 表面電極部列
5 メッキ層
61 シート部材
62 接着層
63 マスキング層
631 開口部
7 基板材料
7a 表面
71 溝
711 側面
712 底面
72 分離溝(追加の溝)
73 基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図45、図46は、従来のチップ抵抗器の製造方法の一例を示している。図45(a)は、従来のチップ抵抗器の製造方法の一工程を示す平面図である。図45(b)は、図45(a)の9α―9α線に沿った要部断面図である。まず、図45(a)、(b)に示すように、絶縁板91を準備する。次に、絶縁板91の表面91aに、たとえば複数の矩形部からなる表面電極層94を形成する。次に、絶縁板91の表面91aに、たとえば複数の矩形部からなる抵抗体層92を、一部が表面電極層94と重なるように形成する。次に、絶縁板91の裏面91bに、表面電極層94と同様に、複数の矩形部からなる裏面電極層94’を形成する。次に、接着層963を介して絶縁板91をシート部材961に貼り付ける。次に、図46(a)に示すように、シート部材961に貼り付けた状態で絶縁板91をDx線(図45(a)を参照)に沿ってダイシングし、帯状の複数のバー部材911を形成する。次に、図46(b)に示すように、バー部材911をシート部材961から剥離する。次に、同図(c)に示すように、バー部材911を重ねるように整列させる。次に、同図(d)の矢印で示すように、バー部材911の側面に一括して電極層93を形成する。次に、複数のバー部材911を、図45(b)に示したようなシート部材に再度貼り付ける(図示略)。次に、バー部材911を、バー部材911の延びる方向に垂直な方向に沿って適当な大きさにダイシングし、上記シート部材から剥離する。これにより、チップ抵抗器が製造される。
【0003】
一方、近年、チップ抵抗器の小型化が図られている。チップ抵抗器の小型化に伴い、チップ抵抗器の製造に用いるバー部材911も細くなっている。シート部材961から剥離された細いバー部材911が所望の姿勢をとるようにこれらのバー部材911を整列させるには、非常に高精度な技術が要求される。このような事情から、電極層93をバー部材911の側面に正確に形成できない虞がある。これはチップ抵抗器の歩留まり向上を妨げるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−40401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より正確にチップ抵抗器を製造できるチップ抵抗器の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるチップ抵抗器の製造方法は、基板材料の表面に抵抗体層を形成する工程と、上記基板材料に、第1の方向に沿って延びているとともに上記表面から凹む複数の溝を形成する工程と、上記溝の側面に導電体層を形成する工程と、上記基板材料に含まれており且つ上記溝により区画された複数の基材をそれぞれ上記第1の方向と異なる第2の方向に沿って分離する工程と、を備えることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記導電体層を上記溝の上記側面に形成するため、上記導電体層を形成するために上記基材をばらばらにする必要がない。上記基材をばらばらにしないならば、上記基材どうしの位置および姿勢を、上記溝を形成する工程から上記導電体層を形成する工程に至るまで、そのまま保持できる。これにより、位置ずれが少ない状態で、上記導電体層を形成できる。その結果、より正確にチップ抵抗器を製造できる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記溝は上記基板材料に形成された底面を有する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1の方向に沿って且つ上記溝の幅より小さい幅で上記底面に追加の溝を形成することにより、上記基材どうしを分離する工程をさらに備える。このような構成によれば、上記基材どうしを分離する工程において、たとえばダイシングブレードに上記導電体層が接触しにくい。そのため、上記分離する工程において、上記導電体層が削られてしまうことをなるべく回避できる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列され且つ上記第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を有する複数の抵抗部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、上記複数の溝を形成する工程においては、上記抵抗部列どうしの隙間に上記溝を形成する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層を形成する工程の前に、上記基板材料の上記表面に表面電極層を形成する工程をさらに備え、上記表面電極層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列された複数の表面電極部を有する複数の表面電極部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第2の方向において隣り合う2つの上記表面電極部の少なくとも一部を各上記帯状抵抗部が覆うように、上記抵抗部列を形成する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を形成する工程を含む。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、印刷によりなされる、このような構成によれば、上記導電体層を形成する前段階として、後述のマスキング層を施す必要がない。そのため、上記チップ抵抗器の製造工程を削減できる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する工程は、スパッタリングによりなされる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層を形成する前に、上記基板材料の上記表面を覆っており且つ上記溝の上記側面を露出させる開口部を有するマスキング層、を形成する工程をさらに備える。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるチップ抵抗器は、表面および裏面と上記表面および上記裏面につながる側面とを有する基板と、上記基板の表面に形成された抵抗体層と、上記抵抗体層に導通し且つ上記側面に形成された導電体層と、を備えるチップ抵抗器において、上記基板には、上記側面の上記導電体層が形成された部分より上記裏面寄りの部分において、隆起している隆起部が形成されていることを特徴としている。このようなチップ抵抗器は、上記方法によって製造するのに適する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層は、上記表面の側にわたって形成されている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板の上記表面に形成され且つ上記抵抗体層と上記導電体層とに接する表面電極層をさらに備え、上記表面電極層は、上記導電体層と上記基板の上記表面とを介在している。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記抵抗体層は、第1の方向に沿って配列され且つ上記第1の方向と異なる第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を含み、上記導電体層は、上記第1の方向における端部に形成され且つ上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、複数の上記導電部は、上記第1の方向に互いに離間している。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記隆起部は、上記導電体層に当接している第1面を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記導電体層と上記隆起部の一部とを覆うメッキ層をさらに備える。
【0023】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示したチップ抵抗器の側面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1〜図3に示したチップ抵抗器の実装状態を表す図である。
【図5】図1に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図6】図5のα−α線に沿った要部断面図である。
【図7】図5に続く工程を示す図である。
【図8】図7のα−α線に沿った要部断面図である。
【図9】図7のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図10】図7に続く工程を示す図である。
【図11】図10のα−α線に沿った要部断面図である。
【図12】図10のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図13】図10に続く工程を示す図である。
【図14】図13のα−α線に沿った要部断面図である。
【図15】図13のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図16】図13に続く工程を示す図である。
【図17】図16のα−α線に沿った要部断面図である。
【図18】図16のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図19】図17に続く工程を示す要部断面図である。
【図20】図18に続く工程を示す要部断面図である。
【図21】本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の製造方法の変形例の平面図である。
【図22】図21のα−α線に沿った要部断面図である。
【図23】図21のβ−β線に沿った要部断面図である。
【図24】本発明の第2実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。
【図25】図24のXXV−XXV線に沿った断面図である。
【図26】図24に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図27】図26のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図28】図26に続く工程を示す図である。
【図29】図28のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図30】図28のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図31】図28に続く工程を示す図である。
【図32】図31のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図33】図31のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図34】図31に続く工程を示す図である。
【図35】図34のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図36】図34のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図37】図34に続く工程を示す図である。
【図38】図37のγ−γ線に沿った要部断面図である。
【図39】図37のδ−δ線に沿った要部断面図である。
【図40】本発明の第3実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す断面図である。
【図41】図40に示したチップ抵抗器の製造方法の一例における一工程を示す図である。
【図42】図41に続く工程を示す図である。
【図43】図42に続く工程を示す図である。
【図44】図43に続く工程を示す図である。
【図45】従来のチップ抵抗器の製造方法の一工程を示す図である。
【図46】図45に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。図2は、図1に示したチップ抵抗器の側面図である。図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
【0027】
これらの図に示されたチップ抵抗器A1は、基板1、抵抗体層2、保護層s、導電体層3、表面電極層4、およびメッキ層5を備える。図1、図2においては理解の便宜上、保護層sおよびメッキ層5を省略している。
【0028】
基板1は、xy平面視で矩形状であり、たとえばアルミナなどの絶縁材料からなる。基板1の方向xにおける大きさは、たとえば900μmである。基板1の方向yにおける大きさは、たとえば400μmである。基板1の厚み(方向zにおける大きさ)は、たとえば100μmである。図3によく表れているように、基板1は、表面1a、裏面1b、および側面1cを有する。側面1cは、表面1aと裏面1bとにつながっている。基板1には、側面1cの裏面1b寄りの部分において隆起部11が形成されている。隆起部11は、基板1の方向yにおいて内側から外側に隆起した形状である。隆起部11の方向yにおける大きさ(厚さ)は、たとえば15μmである。隆起部11の方向zにおける大きさは、たとえば90μmである。隆起部11が形成されていることにより、側面1cは、面1d,11a,1eを有している。面1dおよび面1eは、zx平面に沿っている。面11aは、xy平面に沿っており、面1dおよび面1eとつながっている。基板1の裏面1bには図示しない保護層が形成されている。
【0029】
図1、図3に示すように、抵抗体層2は、基板1の表面1aに形成されている。抵抗体層2は、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体材料からなる。図1に示すように、抵抗体層2は、複数の帯状抵抗部21を有する。帯状抵抗部21はいずれも方向yに沿って延びている。各帯状抵抗部21は、方向xに沿って配列されている。帯状抵抗部21は、本実施形態においては4本形成されている。もちろん、4本と異なる本数の帯状抵抗部21が形成されていてもよい。帯状抵抗部21は、厚みがたとえば10μmの膜状である。
【0030】
図3に示すように、保護層sは、抵抗体層2を覆っており、抵抗体層2を保護している。保護層sは、たとえば等幅で方向xに沿って延びている。保護層sは、たとえば絶縁性樹脂からなる。
【0031】
図1、図3に示すように、表面電極層4は、基板1の表面1aに形成されている。表面電極層4は、たとえば銀などの導電性材料からなる。図1に示すように、表面電極層4は、複数の表面電極部41を有する。図1、図3に示すように、表面電極部41は、基板1の方向yの両端において、方向xに沿って4つずつ配列されている。表面電極部41はそれぞれ、方向yにおける中央寄りの部分を帯状抵抗部21に覆われている。これにより表面電極部41は、帯状抵抗部21と導通している。表面電極部41の厚みは、たとえば10μmである。
【0032】
図1〜図3に示すように、導電体層3は、基板1の側面1cから基板1の表面1a側にわたって形成されている。そのため、導電体層3は表面電極部41に重なっており、基板1の表面1aと方向z視において重なっている。導電体層3は、たとえばニッケルおよびクロムなどの導電性金属からなる。図1、図2に示すように、導電体層3は、複数の導電部31を有する。導電部31は、方向xにおいて互いに離間するように配置されている。図1に示すように、導電部31の方向xにおける大きさは、表面電極部41の方向xにおける大きさと異なっており、本実施形態においては、表面電極部41における大きさよりも大きい。なお、図3に示した場合と異なり、導電部31の方向xにおける大きさと、表面電極部41の方向xにおける大きさとが同じであっても構わない。図3に示すように、導電部31は面11aと当接しており、面1eを露出させている。導電部31の厚みは、たとえば10nmである。各導電部31は、表面電極部41と各別に接している。これにより各導電部31は、表面電極部41を介して帯状抵抗部21と導通している。
【0033】
図3に示すように、メッキ層5は、表面電極層4と、導電体層3と、隆起部11の一部とを覆っている。メッキ層5の厚みは、たとえば10μmである。メッキ層5は、ニッケルとスズの2層構造となっている。
【0034】
図4は、チップ抵抗器A1が配線パターンpに実装された状態を示している。図4においてチップ抵抗器A1は、基板1の表面1a側を実装面として用いられている。チップ抵抗器A1を配線パターンpに実装するためには、フィレットfを形成する。
【0035】
次に、図5〜図20を用いて、チップ抵抗器A1の製造方法について説明する。
【0036】
図5は、チップ抵抗器A1の製造工程における平面図を示す。図6は、図5のα−α線に沿った断面図を示す。
【0037】
まず、図5、図6に示すように、たとえばアルミナなどの絶縁材料からなる基板材料7を用意する。次に、基板材料7の表面7aに表面電極層4を形成する。より具体的には、複数の表面電極部列4Lを、方向yに互いに離間するように基板材料7の表面7aに形成する。各表面電極部列4Lは、複数の表面電極部41を有する。各表面電極部列4Lにおいて、表面電極部41は、方向xに沿って配列されている。
【0038】
次に、基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する。より具体的には、複数の抵抗部列2Lを、方向yに互いに離間するように形成する。各抵抗部列2Lは、複数の帯状抵抗部21を有する。抵抗部列2Lを形成する際には、帯状抵抗部21の方向yにおける両端が、表面電極部41の一部を覆うようにする。次に、帯状抵抗部21を覆うように保護層sを形成する。保護層sは、たとえば方向xに等幅で延びる帯状である。なお、帯状抵抗部21がいずれの部分に形成されているのかを理解しやすくするため、図5においては保護層sの記載を省略している。また後述する製造工程における図7、図10、図13などの平面図においても同様の理由により、保護層sの記載を省略している。
【0039】
次に、所定の接着剤などを用いて基板材料7をシート部材61に貼り付ける。これにより、シート部材61に基板材料7が接着層62を介して積層された格好となる。シート部材61は、たとえばPETフィルムなどの絶縁材料からなる。
【0040】
次に、図7、図8、図9に示すように、基板材料7の表面7aに方向xに沿う複数(図7においては3本)の溝71を形成する。この際、溝71が表面電極部列4Lと重なるようにする。図8、図9に示すように、溝71は、基板材料7を貫通しないように形成する。溝71は、基板材料7に形成された側面711および底面712を有する。図7に示すように溝71が形成されることによって、基板材料7は、複数の基材73に区画される。基材73は、方向xに沿って延びる帯状である。図7においては、4つの基材73を記載している。なお、溝71の幅(方向yにおける大きさ)は、たとえば70〜100μmであり、溝71の深さは、たとえば50〜100μmである。
【0041】
次に、図10、図11、図12に示すように、基板材料7の表面7a側に、印刷によりマスキング層63を形成する。図10、図11に示すように、マスキング層63には、矩形状の複数の開口部631が形成されている。各開口部631は、各表面電極部41の少なくとも一部が露出するように形成されている。各開口部631は、方向xに沿って配置されている。一方、図10、図12に示すように、溝71の表面電極部41どうしに挟まれていない部分の大半は、マスキング層63に覆われている。
【0042】
図10においてはマスキング層63を記載したが、後述する製造工程における図13、図16などの平面図においては理解の便宜上、マスキング層63の記載を省略しており、開口部631のみを2点鎖線で示している。また、図13、図16などの平面図においてはさらに、以下で述べる導電体層3のうちマスキング層63の表面に形成されるものの記載も省略している。
【0043】
次に、図13、図14、図15に示すように、基板材料7の表面7aに向かって、たとえばニッケルやクロムなどの導電性原子をスパッタリングする。すると、図13、図14によく表れているように、開口部631が形成されているためマスキング層63に覆われていない、表面電極部41と溝71の側面711および底面712とには、導電体層3が直接形成される。このように溝71の側面711などに直接形成された導電体層3は、方向xに沿って並ぶ複数の導電部31を構成している。複数の導電部31は、xy平面視で矩形状であり、方向xにおいて離間している。一方、図14、図15に示すように、表面電極部41、および溝71の側面711や底面712のうち、マスキング層63に覆われた部分には、マスキング層63の表面に導電体層3が形成されるから、導電体層3が直接形成されることはない。
【0044】
次に、図16、図17、図18に示すように、溝71の底面712に分離溝72を形成する。これにより、図16における方向xに延びるDx線に沿って、基材73どうしが分離する。分離溝72の幅(方向yにおける大きさ)は、溝71の底面712の幅(方向yにおける大きさ)より小さい。分離溝72の幅は、たとえば40〜60μmである。分離溝72を形成するにはたとえば図示しないダイシングブレードを用いる。次に、図16におけるDy線に沿って図示しない溝を形成するなどして、基材73を分離する。図17、図18によく表れているように、Dx線に沿って基材73どうしを分離する際、およびDy線に沿って基材73を分離する際には、基材73は接着層62によってシート部材61に貼り付けられたままである。また、分離溝72を形成する工程により、図3で示した隆起部11を有する基板1が形成される。
【0045】
次に、図19、図20に示すように、接着層62を所定の溶剤を用いて溶解する。図19は、図17に示した断面における次の工程を示す図であり、図20は、図18に示した断面における次の工程を示す図である。接着層62が溶解すると、基板1がシート部材61から分離される。これにより、基板1どうしは完全に分離する。次にマスキング層63も溶解させる。これにより、マスキング層63の表面に形成された導電体層3は、基板1から除去される。
【0046】
次に、図3に示したメッキ層5を形成し、チップ抵抗器A1の製造が完成する。
【0047】
次に、チップ抵抗器A1およびチップ抵抗器A1の製造方法の作用について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、図13〜図15に示したように、導電体層3を溝71の側面711に形成している。そのため導電体層3を形成するために基材73どうしを分離、整列させる必要がなくなっている。基材73どうしを分離、整列させないことで、基材73どうしの位置および姿勢を、基板材料7に溝71を形成する工程から導電体層3を形成する工程に至るまで、そのまま保持できる。基材73どうしの位置および姿勢を保持できると、位置ずれが極力少ない状態で、導電体層3を形成できる。これにより、より正確にチップ抵抗器A1を製造できる。すなわちより高精度のチップ抵抗器A1を製造できる。
【0049】
従来の技術においては、図46(b),(c)に示したように、シート部材961から剥離されたバー部材911どうしを所望の姿勢に整列させるために、高精度な技術を用いる必要があった。このような技術は極めて細いバー部材911を扱うことが困難であった。だが本実施形態によれば、基材73どうしを分離、整列させる必要がなくなっているため、この高精度な技術を必要としない。そのためこの技術を用いることに起因する困難がなく、より小型のチップ抵抗器A1を製造することが可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、たとえば図11、図12に示したように、溝71は、基板材料7に形成された底面712を有しており、基板材料7を貫通していない。すなわち、溝71の深さは、溝71が基板材料7を貫通する場合と比べて浅い。そのため、溝71の底面712にまで印刷を用いてマスキング層63を形成しやすくなっている。この結果、溝71の側面711の所望の部分以外に導電体層3が形成されてしまうことを防止できる。
【0051】
これにより、図13で示したように、複数の導電部31が方向xにおいて互いに離間するように、導電体層3を形成できる。このような方法は、チップ抵抗器A1において複数の帯状抵抗部21が形成されたいわゆる多連型のチップの製造に適する。
【0052】
また、図16で示したDy線に沿った基板1の分離工程において、複数のDy線の方向xにおける間隔を調整することで、帯状抵抗部21の数が4つでない多連型のチップ抵抗器や、帯状抵抗部21が1つであるいわゆる単品型のチップ抵抗器をも、容易に製造できる。
【0053】
図16〜図18に示したように、本実施形態によれば、分離溝72の幅は、溝71の幅より小さい。そのため、基板1どうしを分離する工程において、たとえば図示しないダイシングブレードが溝71の側面に形成された導電体層3に接触しにくくなる。これにより、基板1どうしを分離する工程において、導電体層3が削り取られることをなるべく回避できる。
【0054】
図7〜図12に示したように、マスキング層63を形成しているのは、溝71を形成した後であり、溝71を形成する前ではない。そのため、方向yにおける、溝71の大きさとマスキング層63に形成される開口部631の大きさとを一致させる必要がない。図10、図11に示したように、方向yにおいて、開口部631の大きさは溝71の大きさよりも大きい。これにより、図13、図14に示すように、導電体層3は溝71の側面711だけでなく、基板1の表面1a側にも形成されている。よって、導電体層3を表面電極層4に、より十分に接触させやすくなっている。
【0055】
図4に示したように、フィレットfは、基板1の側面1c側に形成されているメッキ層5の全体と接触するように形成されており、基板1の裏面1bと接触する程の大きさには形成されていない。そのため、フィレットfの方向yにおける大きさもさほど大きくなっていない。これにより、フィレットfの大きさを含めたチップ抵抗器A1の実装面積をより小さくすることが可能になっている。
【0056】
図21〜図23は、本実施形態の製造方法の変形例を示している。この変形例においては、図7〜図12における、マスキング層63を形成し、その後スパッタリングにより導電体層3を形成する工程を、印刷により導電体層3を形成する工程に替えている。
【0057】
図21〜図23によく表れているように、マスキング層を形成することなく、溝71の側面711や底面712における所望の位置のみに導電体層3を形成できる。すなわち、マスキング層を形成することなく、図21、図22に示すように、xy平面視において小さな正方形状の領域のみに導電体層3を形成している。一方、図21、図23に示すように、x平面視において上記正方形状の領域以外の領域には、導電体層3を形成していない。このような方法を用いることでマスキング層を形成する工程を省略できるから、チップ抵抗器A1の製造工程の削減を図りうる。また、このようにした場合であっても、上述のとおり溝71の深さが浅くなっているので、溝71の底面712にまで導電体層3を形成しやすい。
【0058】
図24〜図39は、本発明の第2実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0059】
図24は、本発明の第2実施形態にかかるチップ抵抗器の一例を示す平面図である。図25は、図24のXXV−XXV線に沿った断面図である。これらの図に示されたチップ抵抗器A2は、いわゆる単品型であって、抵抗体層2が複数の帯状抵抗部21を有しておらず1つの矩形状である点において、第1実施形態にかかるチップ抵抗器A1と主に相違する。チップ抵抗器A2においては抵抗体層2が1つのみしか形成されていないため、導電体層3、表面電極層4、およびメッキ層5も、抵抗体層2の両端に1つずつ形成しか形成されていない。図24においては、理解の便宜上、保護層sおよびメッキ層5の記載は省略している。
【0060】
次に、図26〜図39を用いて、チップ抵抗器A2の製造方法について説明する。
【0061】
まず、第1実施形態と同様、図26、図27に示すように、基板材料7を用意し、基板材料7の表面7aに表面電極層4を形成する。より具体的には、複数の表面電極部列4Lを、方向yに互いに離間するように基板材料7の表面7aに形成する。各表面電極部列4Lは、複数の表面電極部41を有する。
【0062】
次に、第1実施形態と同様に、基板材料7の表面7aに抵抗体層2を形成する。より具体的には、複数の抵抗部列2Lを、方向yに互いに離間するように形成する。各抵抗部列2Lは、複数の帯状抵抗部21を有する。抵抗部列2Lを形成する際には、帯状抵抗部21の方向yにおける両端が、表面電極部41の一部を覆うようにする。次に、帯状抵抗部21を覆うように保護層sを形成する。保護層sは、たとえば方向xに等幅で延びる帯状である。なお、帯状抵抗部21がいずれの部分に形成されているのかを理解しやすくするため、図26においては保護層sの記載を省略している。また後述する製造工程における図28、図31、図34などの平面図においても同様の理由により、保護層sの記載を省略している。
【0063】
次に、所定の接着剤などを用いて基板材料7をシート部材61に貼り付ける。これにより、シート部材61に基板材料7が接着層62を介して積層された格好となる。
【0064】
次に、図28、図29、図30に示すように、基板材料7の表面7aに方向xに沿う複数の溝71を形成する。この際、溝71が表面電極部列4Lと重なるようにする。図29、図30に示すように、溝71は、基板材料7を貫通しないように形成する。溝71は、基板材料7に形成された側面711および底面712を有する。図28に示すように溝71が形成されることによって、基板材料7は、複数の基材73に区画される。基材73は、方向xに沿って延びる帯状である。ここまでの工程は、第1実施形態と同様である。
【0065】
次に、図31、図32、図33に示すように、基板材料7の表面7aにマスキング層63を形成する。マスキング層63には、方向xに沿って延びる帯状の複数の開口部631が形成されている。各開口部631は、各表面電極部41の溝71寄りの部分が露出するように形成されている。
【0066】
図31においてはマスキング層63を記載したが、後述する製造工程における図34、図37などの平面図においては理解の便宜上、マスキング層63の記載を省略しており、開口部631のみを2点鎖線で示している。また、図34、図37などの平面図においてはさらに、以下で述べる導電体層3のうちマスキング層63の表面に形成されるものの記載も省略している。
【0067】
次に、図34、図35、図36に示すように、基板材料7の表面7aに向かって、導電性原子をスパッタリングする。すると、溝71の側面および底面712には方向xの全体にわたって、導電体層3が形成される。また、図34、図35によく表れているように、開口部631が形成されているためマスキング層63に覆われていない表面電極部41にも、導電体層3が形成される。
【0068】
次に、図37、図38、図39に示すように、溝71の底面712に分離溝72を形成することにより、Dx線に沿って基材73どうしを分離する。その後、Dy線に沿って基材71を分離するなどして、第1実施形態で述べた工程と同様の工程を経ることにより、図24、図25に示したチップ抵抗器A2の製造が完成する。
【0069】
次に、チップ抵抗器A2およびチップ抵抗器A2の製造方法の作用について説明する。
【0070】
本実施形態においても、導電体層3の一部を溝71の側面711に形成している。これにより、第1実施形態と同様に、高精度なチップ抵抗器A2を製造することができる。また、本実施形態においても、上述の実施形態において述べたその他の利点を有する。
【0071】
また、本実施形態においても、図21〜図23に示した変形例のように、図31〜図36に示した、マスキング層63を形成し、その後スパッタリングにより導電体層3を形成する工程を、印刷により導電体層3を形成する工程に替えてもよい。
【0072】
図40〜図44は、本発明の第3実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0073】
図40は、本実施形態にかかるチップ抵抗器A3の断面図である。図40は、第2実施形態において示した図25に対応する。チップ抵抗器A3は、導電体層3が表面電極層4上に形成されていない点において、第2実施形態にかかるチップ抵抗器A2と相違する。
【0074】
図41〜図44を用いて、チップ抵抗器A3の製造方法について説明する。図41〜図44は、図26、図28等におけるγ―γ線に沿った断面図に対応する。チップ抵抗器A3の製造方法は、マスキング層63を形成する工程(図41参照)および溝71を形成する工程(図42参照)の順序が、チップ抵抗器A2の製造方法における順序(図29、図32参照)の逆になっている。
【0075】
まず、図41に示すように、第2実施形態における図26、図27で示した工程と同様に、基板材料7の表面7aに表面電極層4と抵抗体層2とを形成し、基板材料7をシート部材61に貼り付ける。次に、基板材料7の表面7aにマスキング層63を形成する。
【0076】
次に、図42に示すように、基板材料7およびマスキング層63を一括してダイシングすることにより、基板材料7に溝71を形成する。次に、図43に示すように、基板材料7の表面に向かって導電性原子をスパッタリングすることにより、溝71の側面711および底面712に導電体層3を形成する。このとき、マスキング層63の表面にも導電体層3が形成されている。次に、図44に示すように、分離溝72を形成し、Dx線に沿って基材73どうしを分離する。その後、第2実施形態にかかるチップ抵抗器A2の製造工程と同様の工程を経ることにより、図40に示すチップ抵抗器A3が製造される。
【0077】
本実施形態においても、導電体層3を溝71の側面711に形成している。これにより、上述の実施形態と同様に、高精度なチップ抵抗器A3を製造することができる。
【0078】
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかるチップ抵抗器およびチップ抵抗器の製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0079】
A1,A2,A3 チップ抵抗器
1 基板
1a 表面
1b 裏面
1c 側面
1d 面
1e 面
11 隆起部
11a 面
2 抵抗体層
2L 抵抗部列
21 帯状抵抗部
3 導電体層
3L 電極部列
31 導電部
4 表面電極層
41 表面電極部
4L 表面電極部列
5 メッキ層
61 シート部材
62 接着層
63 マスキング層
631 開口部
7 基板材料
7a 表面
71 溝
711 側面
712 底面
72 分離溝(追加の溝)
73 基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材料の表面に抵抗体層を形成する工程と、
上記基板材料に、第1の方向に沿って延びているとともに上記表面から凹む複数の溝を形成する工程と、
上記溝の側面に導電体層を形成する工程と、
上記基板材料に含まれており且つ上記溝により区画された複数の基材をそれぞれ上記第1の方向と異なる第2の方向に沿って分離する工程と、
を備えることを特徴とする、チップ抵抗器の製造方法。
【請求項2】
上記溝は上記基板材料に形成された底面を有する、請求項1に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項3】
上記第1の方向に沿って且つ上記溝の幅より小さい幅で上記底面に追加の溝を形成することにより、上記基材どうしを分離する工程をさらに備える、請求項2に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項4】
上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列され且つ上記第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を有する複数の抵抗部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、
上記複数の溝を形成する工程においては、上記抵抗部列どうしの隙間に上記溝を形成する、請求項1ないし3のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項5】
上記抵抗体層を形成する工程の前に、上記基板材料の上記表面に表面電極層を形成する工程をさらに備え、
上記表面電極層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列された複数の表面電極部を有する複数の表面電極部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、
上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第2の方向において隣り合う2つの上記表面電極部の少なくとも一部を各上記帯状抵抗部が覆うように、上記抵抗部列を形成する、請求項4に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項6】
上記導電体層を形成する工程は、上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を形成する工程を含む、請求項4または5に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項7】
上記導電体層を形成する工程は、印刷によりなされる、請求項1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項8】
上記導電体層を形成する工程は、スパッタリングによりなされる、請求項1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項9】
上記導電体層を形成する前に、上記基板材料の上記表面を覆っており且つ上記溝の上記側面を露出させる開口部を有するマスキング層、を形成する工程をさらに備える、請求項8に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項10】
表面および裏面と上記表面および上記裏面につながる側面とを有する基板と、
上記基板の表面に形成された抵抗体層と、
上記抵抗体層に導通し且つ上記側面に形成された導電体層と、
を備えるチップ抵抗器において、
上記基板には、上記側面の上記導電体層が形成された部分より上記裏面寄りの部分において、隆起している隆起部が形成されていることを特徴とする、チップ抵抗器。
【請求項11】
上記導電体層は、上記表面の側にわたって形成されている、請求項10に記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
上記基板の上記表面に形成され且つ上記抵抗体層と上記導電体層とに接する表面電極層をさらに備え、
上記表面電極層は、上記導電体層と上記基板の上記表面とを介在している、請求項10または11に記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
上記抵抗体層は、第1の方向に沿って配列され且つ上記第1の方向と異なる第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を含み、
上記導電体層は、上記第1の方向における端部に形成され且つ上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を含む、請求項10ないし12のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
複数の上記導電部は、上記第1の方向に互いに離間している、請求項13に記載のチップ抵抗器。
【請求項15】
上記隆起部は、上記導電体層に当接している第1面を有する、請求項10ないし14のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項16】
上記導電体層と上記隆起部の一部とを覆うメッキ層をさらに備える、請求項10ないし15のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項1】
基板材料の表面に抵抗体層を形成する工程と、
上記基板材料に、第1の方向に沿って延びているとともに上記表面から凹む複数の溝を形成する工程と、
上記溝の側面に導電体層を形成する工程と、
上記基板材料に含まれており且つ上記溝により区画された複数の基材をそれぞれ上記第1の方向と異なる第2の方向に沿って分離する工程と、
を備えることを特徴とする、チップ抵抗器の製造方法。
【請求項2】
上記溝は上記基板材料に形成された底面を有する、請求項1に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項3】
上記第1の方向に沿って且つ上記溝の幅より小さい幅で上記底面に追加の溝を形成することにより、上記基材どうしを分離する工程をさらに備える、請求項2に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項4】
上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列され且つ上記第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を有する複数の抵抗部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、
上記複数の溝を形成する工程においては、上記抵抗部列どうしの隙間に上記溝を形成する、請求項1ないし3のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項5】
上記抵抗体層を形成する工程の前に、上記基板材料の上記表面に表面電極層を形成する工程をさらに備え、
上記表面電極層を形成する工程においては、上記第1の方向に沿って配列された複数の表面電極部を有する複数の表面電極部列を、上記第2の方向に互いに離間するように形成し、
上記抵抗体層を形成する工程においては、上記第2の方向において隣り合う2つの上記表面電極部の少なくとも一部を各上記帯状抵抗部が覆うように、上記抵抗部列を形成する、請求項4に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項6】
上記導電体層を形成する工程は、上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を形成する工程を含む、請求項4または5に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項7】
上記導電体層を形成する工程は、印刷によりなされる、請求項1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項8】
上記導電体層を形成する工程は、スパッタリングによりなされる、請求項1ないし6のいずれかに記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項9】
上記導電体層を形成する前に、上記基板材料の上記表面を覆っており且つ上記溝の上記側面を露出させる開口部を有するマスキング層、を形成する工程をさらに備える、請求項8に記載のチップ抵抗器の製造方法。
【請求項10】
表面および裏面と上記表面および上記裏面につながる側面とを有する基板と、
上記基板の表面に形成された抵抗体層と、
上記抵抗体層に導通し且つ上記側面に形成された導電体層と、
を備えるチップ抵抗器において、
上記基板には、上記側面の上記導電体層が形成された部分より上記裏面寄りの部分において、隆起している隆起部が形成されていることを特徴とする、チップ抵抗器。
【請求項11】
上記導電体層は、上記表面の側にわたって形成されている、請求項10に記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
上記基板の上記表面に形成され且つ上記抵抗体層と上記導電体層とに接する表面電極層をさらに備え、
上記表面電極層は、上記導電体層と上記基板の上記表面とを介在している、請求項10または11に記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
上記抵抗体層は、第1の方向に沿って配列され且つ上記第1の方向と異なる第2の方向に延びる複数の帯状抵抗部を含み、
上記導電体層は、上記第1の方向における端部に形成され且つ上記帯状抵抗部と各別に導通する複数の導電部を含む、請求項10ないし12のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
複数の上記導電部は、上記第1の方向に互いに離間している、請求項13に記載のチップ抵抗器。
【請求項15】
上記隆起部は、上記導電体層に当接している第1面を有する、請求項10ないし14のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項16】
上記導電体層と上記隆起部の一部とを覆うメッキ層をさらに備える、請求項10ないし15のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公開番号】特開2011−29414(P2011−29414A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173782(P2009−173782)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]