説明

チャック装置

【課題】チャック爪が把持動作を行うチャック動作時のダミーピンとチャックとのカジリ発生を防止して、チャック動作を繰り返し確実で滑らかに行うことができるチャック装置を提供すること。
【解決手段】チャック本体1にチャック爪2が軸方向に移動可能に支持され、チャック爪2の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪2の先端部にワークWを把持および解放するチャック装置であって、チャック爪2がワークWを把持する際に、チャック爪2の根元で把持可能なダミーピン4をチャック本体1に上下に移動可能に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸状のワークの搬送や加工の際などにおいて、ワークを把持するチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸状のワークをチャック爪で把持するチャック装置が知られている。そして、このようなチャック装置として、円筒状のチャック本体と、ワークを把持するべく縮径および拡径するチャック爪と、このチャック爪をチャック本体軸線方向の一方に押し出させるシリンダロッドを備えたエアシリンダ機構と、前記チャック爪を軸線方向に押し戻させる圧縮バネと、を備え、さらに、チャック本体の先端内周部とチャック爪の先端外周部とが当接する箇所と円筒構造体が当接する箇所、およびチャック爪とシリンダロッドとが当接する箇所には、テーパが設けられ、チャック爪がチャック本体内周部に摺動しながら上昇および下降するのに伴いチャック爪が開閉(拡径および縮径)動作する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平7−24581公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような従来のチャック装置において、チャック爪によるワークの掴み代が小さい場合、チャック爪の先端だけで把持するため片当たりによりチャック爪が傾き、ワークをしっかりと把持することができないことがある。
【0004】
そこで、チャック爪のワークを把持する箇所とは反対側にダミーピンを配置し、チャック爪が縮径した際に、先端でワークを把持するとともに、反対側の基端でダミーピンを把持するようにし、チャック爪が片当たりして傾くのを防止する対策が考えられる。
【0005】
しかしながら、このような対策をとっても、以下に述べる解決すべき課題が残る。
(問題点1)
チャック爪が上昇および下降する際には、チャック爪がダミーピンと摺動する。このため、くり返し使用したときにダミーピンとチャック爪との摺動抵抗によりカジリを起こし、チャック爪が滑らかに動作しない問題が生じる。
【0006】
(問題点2)
ワークを把持する際に、チャック爪は下降しながら縮径するため、ワークと摺動する。そのため、ワーク把持時に、ワークに対してチャック爪から下に押し付ける力が作用し、ワークや受け治具に衝撃を与える。さらに、繰り返しチャック動作を行うと、把持時にチャック爪とワークでカジリが発生し、把持に失敗することがある。
【0007】
(問題点3)
ワークを解放する時、チャック爪は上昇しながら拡径するため、ワークと摺動する。そのため、ワーク解放時に、摺動による摩擦抵抗によりワークが上方へ持ち上がることがある。この場合、ワークが一旦浮き上がってから解放されて落下するため、ワークと受け治具に衝撃を与え、精密なワークのハンドリングを行うことができない。
【0008】
そこで、本発明は、上述の従来の問題点に鑑み成されたもので、請求項1ないし3に記載の発明は、チャック爪が把持動作を行うチャック動作時のダミーピンとチャック爪とのカジリ発生を防止して、チャック動作を繰り返し滑らかに確実に行うことができるチャック装置を提供することを目的とする。また、請求項4に記載の発明は、チャック動作時のワークの下方向への押し付け防止、および、くり返し滑らかで確実なチャック動作を達成可能なチャック装置を提供することを目的とする。さらに、請求項5に記載の発明は、ワーク解放時のワークの浮き上がりを防止し、ワークおよび受け治具に余計な衝撃を加えないようにできるチャック装置を提供することを目的とする。請求項6および7に記載の発明は、チャック動作時のダミーピンとチャックとのカジリを防止して、チャック動作を繰り返し確実に滑らかに行うことを可能とすることと、ワーク解放時のワークの浮き上がりを防止して、ワークおよび受け治具に余計な衝撃を加えないようにすることと、を達成できるチャック装置を提供することを目的とする。請求項8に記載の発明は、チャック動作時のダミーピンとチャックとのカジリを防止して、チャック動作を繰り返し確実に滑らかに行うことを可能とすることと、チャック動作時のワークの下方向への押し付けを防止して、くり返し滑らかなチャック動作を行うことを可能とすることと、ワーク解放時のワークの浮き上がりを防止して、ワークおよび受け治具に余計な衝撃を加えないようにすることと、を達成できるチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上述の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に上下に移動可能に支持されていることを特徴とするチャック装置とした。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に固定され、前記チャック爪と前記ダミーピンとの摺動部分のいずれか一方に、把持時の摺動抵抗を低減させる軸受部材が設けられていることを特徴とするチャック装置とした。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のチャック装置において、前記軸受け部材が、回転可能に支持されたボールプランジャであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが設けられ、前記チャック爪において、前記ワークとの接触面に、ワーク把持時の相対移動方向で転がり、その反対方向の相対移動で転がりを規制するワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とするチャック装置とした。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に固定され、このダミーピンの先端が、前記ワーク把持時のワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さに配置され、前記ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とするチャック装置とした。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2に記載のチャック装置において、前記ダミーピンの先端が、前記ワーク把持時のワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さに配置され、前記ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のチャック装置において、前記ダミーピンが中空に形成され、このダミーピンの中空部分に配置されたブロックピンが前記チャック本体に固定され、このブロックピンが、前記ワークをチャック爪で把持したときのワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さにあり、ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のチャック装置において、前記チャック爪において、前記ワークとの接触面に、ワーク把持時の相対移動方向で転がり、その反対方向の相対移動で転がりを規制するワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載のチャック装置では、ダミーピンがチャック本体に軸方向に移動可能に支持されているため、チャック爪が軸方向に移動しながら縮径する際に、ダミーピンは、チャック爪との間で摩擦が作用すると、チャック爪と共に移動する。このため、チャック爪とダミーピンとのカジリの発生を防止し、繰り返し確実で滑らかなチャック動作を行うことができる。
【0018】
請求項2および請求項3に記載のチャック装置では、チャック爪とダミーピンとの摺動部分に軸受部材を設けたため、チャック爪が軸方向に移動しながら縮径する際に、軸受部材によりダミーピンとチャック爪との接触抵抗が低減する。このため、チャック爪とダミーピンとのカジリの発生を防止し、繰り返し確実で滑らかなチャック動作を行うことができる。特に、請求項3に記載のチャック装置では、軸受部材であるボールプランジャにおいて転がり接触となり、高いカジリ防止性能が得られる。
【0019】
請求項4に記載のチャック装置では、チャック爪が軸方向に移動しながら縮径してワークを把持する際に、ワークとチャック爪との接触が、ワンウェイクラッチを介した転がり接触となり、カジリを防止して繰り返し滑らかで確実なチャック動作を可能とし、かつ、摩擦による押しつけ防止を図りワークおよび受け治具へ衝撃を与えることを防止することができる。また、ワンウェイクラッチは、その反対方向には、転がらないため、把持したワークが転がりにより脱落することはない。
【0020】
請求項5に記載のチャック装置は、チャック爪が軸方向に拡径しながら移動してワークを解放する際に、ワークに上向きに力が作用しても、ダミーピンがワークの上昇を抑えるため、ワークおよび受け治具に余計な衝撃を加えないでワークのハンドリングを行うことができる。
【0021】
請求項6に記載のチャック装置は、請求項2に記載の発明の軸受部材によるカジリ防止効果と、請求項5に記載の発明のワーク解放時のワーク上昇防止効果と、を得ることができる。
【0022】
請求項7に記載のチャック装置は、ワークを把持する際には、請求項1に記載の発明と同様に、ダミーピンがチャック爪と共に移動して、チャック爪とダミーピンとのカジリの発生を防止することができる。一方、ワーク解放時には、ワークに上向きに力が作用しても、ブロックピンがワークの上昇を抑え、ワークおよび受け治具に余計な衝撃を加えないでワークのハンドリングを行うことができる。
【0023】
請求項8に記載のチャック装置は、請求項6または請求項7に記載のチャック装置において、さらに、ワンウェイクラッチによるチャック爪とワークとのカジリ防止および摩擦による押しつけ防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態1のチャック装置を図1〜図4に基づいて説明する。
【0026】
実施の形態1のチャック装置は、図1に示すように、チャック本体1とチャック爪2と摺動機構3とダミーピン4とを備えている。
【0027】
チャック本体1は、円筒形状に形成され(図4参照)、チャック爪2、ダミーピン4、シリンダロッド5を軸方向(図中上下方向)に摺動可能に支持するもので、下端に、開口11が形成され、中間部には、摺動機構3を構成するエアシリンダ機構31のシリンダチューブとしてのエア室12が形成され、上端には、ダミーピン4を摺動可能に支持する支持プレート13が設けられている。
【0028】
チャック爪2は、3本の爪体2a,2a,2aで構成され(図4参照)、中間部外周に設けられたフランジ23を挟んだ下端部の外周と上部の外周とに、下方の先端へ向かうにつれて窄まった形状の第1テーパ面21と、上方の根元へ向かうにつれて窄まった形状の第2テーパ面22と、が形成されている。また、開口11の内周には、第1テーパ面21と接触し下方に窄まる形状の開口テーパ面11aが形成され、チャック爪2がチャック本体1に対し下方へ移動したときにチャック爪2が縮径するよう構成されている。
【0029】
摺動機構3は、チャック爪2およびシリンダロッド5を上下に摺動させる機構であり、エアシリンダ機構31とリターンスプリング32とを備えている。
【0030】
エアシリンダ機構31は、チャック本体1に形成されたエア室12と、このエア室12内に配置されてエア室12を上部室12aと下部室12bとに区画するピストン部51を外周に有したシリンダロッド5と、チャック本体1を貫通して上部室12aに連通された上部給排孔33および下部室12bに連通された下部給排孔34と、を備えている。そして、シリンダロッド5の下端部は、チャック爪2の第2テーパ面22の外周に装着され、かつ、第2テーパ面22と接触する内周に下方に拡がる形状のシリンダテーパ面52が形成されている。
【0031】
リターンスプリング32は、チャック爪2のフランジ23の下面と、チャック本体1の下端部との間に設置され、チャック爪2を上方へ付勢している。
【0032】
ダミーピン4は、ワークWと略同径の外径を有した金属などで形成された円柱であり、チャック本体1の中心軸線上に配置されて支持プレート13に上下方向に摺動可能に支持されている。また、ダミーピン4の上端には、フランジ41が設けられ、このフランジ41と支持プレート13との間においてダミーピン4の外周に、ダミーピン4を上方へ付勢するリターンスプリング42が装着されている。さらに、ダミーピン4の上方位置には、ダミーピン4の上方への移動を所定位置で規制するエンドプレート14が設けられている。そして、ダミーピン4は、エンドプレート14により上方移動を規制された位置において、その下端がチャック爪2の上部と水平方向で重なる長さに設定されている。
【0033】
次に、実施の形態1のチャック装置の動作について説明する。
【0034】
図1に示すチャック爪2が拡開した状態からワークWを把持する時には、摺動機構3のエアシリンダ機構31において、図2に示すように、上部給排孔33から上部室12aへ圧縮エアを供給する一方で、下部給排孔34すなわち下部室12bを大気解放する。これにより、シリンダロッド5が下方へ摺動されてリターンスプリング32の付勢力に抗してチャック爪2が押し下げられる。このシリンダロッド5およびチャック爪2の下方移動に伴い、第1テーパ面21が開口テーパ面11aに沿って下方へ移動されるとともに、第2テーパ面22に沿ってシリンダテーパ面52が下方移動され、これにより、チャック爪2が縮径される。
【0035】
このチャック爪2の縮径により、チャック爪2の先端部でワークWが把持される一方、チャック爪2の根元部で、ダミーピン4が把持される。このように、チャック爪2は、その先端部のみでワークWを把持する際に、それと同時に、その反対の根元部分でワークWと略同径のダミーピン4を把持するため、チャック爪2がワークWに片当たり状態となって傾くのが防止され、ワークWとチャック爪2との接触面を平行に保つことで把持力を強くすることができる。
【0036】
また、チャック爪2は、上述のように下方に移動しながら縮径され、チャック爪2の根元でダミーピン4を把持するが、このとき、ダミーピン4に対してチャック爪2との摩擦により下向きの力が作用すると、ダミーピン4は、リターンスプリング42の付勢力に抗して下降する。
【0037】
このように、ダミーピン4がチャック爪2の上下動作に連動して移動するため、ダミーピン4とチャック爪2とが摺動するのを抑え、両者間でカジリが生じるのを防ぎ、繰り返し確実で滑らかなチャック動作を行うことができる。
【0038】
次に、ワークWを解放するときには、エアシリンダ機構31において、図1に示すように、下部給排孔34から下部室12bへ圧縮エアを供給する一方で、上部給排孔33すなわち上部室12aを大気解放する。これにより、シリンダロッド5が上方へ摺動され、チャック爪2は、リターンスプリング32の付勢力により上方へ移動する。このチャック爪2の上方移動に伴い、チャック爪2が拡径され、ワークWおよびダミーピン4が解放される。なお、このチャック爪2の上方移動に伴ってチャック爪2を拡開方向に付勢する手段を設けてもよい。この付勢手段としては、板ばねや、チャック爪2の外周部分を吸気する手段などを用いることができる。
【0039】
また、チャック爪2がダミーピン4を解放すると、ダミーピン4は、リターンスプリング42の付勢力によりエンドプレート14に当接する初期位置まで戻る。
【0040】
以上のように、実施の形態1のチャック装置では、ダミーピン4が、チャック本体1に上下方向に摺動可能に支持されており、チャック爪2が縮径する際に、ダミーピン4はチャック爪2との間に生じる摩擦力により下方へ移動するようにしたため、チャック爪2とダミーピン4とでカジリを起こすことなく滑らかにチャック爪2の開閉ができるという効果を奏する。
【0041】
(他の実施の形態)
以下に、図面に基づいて他の実施の形態について説明するが、この説明にあたり、各実施の形態において同一ないし均等な構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2のチャック装置について図5および図6により説明する。
【0043】
この実施の形態2のチャック装置では、ダミーピン240の上端部がチャック本体1の支持プレート13に固定されている。なお、この固定は、本実施の形態2では、ダミーピン240の外周に形成したねじにナット241を締結し、フランジ41とナット241とで支持プレート13を挟持することで行っている。
【0044】
そして、ダミーピン240の下端部においてチャック爪2との摺動部分(水平方向で重なっている部分)の外周に軸受部材としてのボールプランジャ242が転がり可能に設けられている。また、ダミーピン240にあっては、ボールプランジャ242を含む外径がワークWの外径に略等しくなるように形成されていて、ダミーピン240としては、実施の形態1のダミーピン4よりも小径のものを用いている。
【0045】
他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0046】
次に、実施の形態2のチャック装置の動作について説明する。
【0047】
ワークWを把持する際には、実施の形態1のチャック装置と同様に、摺動機構3のエアシリンダ機構31によりシリンダロッド5が下方に移動されるとともに、チャック爪2が下方に縮径しながら移動され、チャック爪2の先端部でワークWが把持されるのと同時に、チャック爪2の根元でダミーピン240の下端部が把持される。
【0048】
また、ワークWを解放する際にも、実施の形態1のチャック装置と同様に、エアシリンダ機構31によりシリンダロッド5が上方に移動されるとともに、チャック爪2が拡径されながら上方に移動され、ワークWおよびダミーピン240が解放される。
【0049】
このように、チャック爪2がダミーピン240を把持および解放するのにあたって、チャック爪2は、ダミーピン240に対して上下方向に摺動しながら縮径および拡径するが、この実施の形態2では、チャック爪2は、ダミーピン240の下端部に設けられたボールプランジャ242と転がり接触しながら移動する。このため、チャック爪2とダミーピン240との間で作用する摺動抵抗が低く抑えられ、摺動時のカジリ付きを防止することができ、これにより、繰り返し確実で滑らかなハンドリングを行うことができる。
【0050】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3のチャック装置について図7〜図9により説明する。
【0051】
この実施の形態3のチャック装置は、実施の形態2の変形例であり、実施の形態2と相違する部分を中心に説明する。
【0052】
この実施の形態3では、図7に示すように、チャック爪320の先端部の内側において、ワークWを把持する部分にワンウェイクラッチ321が設けられている。このワンウェイクラッチ321は、チャック爪320がワークW2に対して、チャック爪320が下方に相対移動する時(縮径時)に転がり、その反対方向の相対移動では停止するワンウェイクラッチ構造となっている。すなわち、図9に示すように、ワンウェイクラッチ321は、チャック爪2の内側に現れている外周面が上方には転がり、下方には停止するようになっている。
【0053】
また、ダミーピン340は、実施の形態2と同様にナット241により支持プレート13に固定されている。このダミーピン340の外径は、ワークW2の外径に、チャック爪320からワンウェイクラッチ321が突出している寸法を足した寸法に形成されている。
【0054】
他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0055】
次に、実施の形態3のチャック装置の動作について説明する。
【0056】
実施の形態1のチャック装置と同様に、ワークW2を把持する際には、シリンダロッド5が下方に移動されるとともに、チャック爪320が下方に縮径しながら移動され、チャック爪320の先端部でワークW2が把持されるのと同時に、チャック爪320の根元でダミーピン340の下端部が把持される。
【0057】
また、ワークW2を解放する際にも、実施の形態1のチャック装置と同様に、シリンダロッド5が上方に移動されるとともに、チャック爪320が拡径されながら上方に移動され、ワークW2およびダミーピン340が解放される。
【0058】
このように、チャック爪320がワークW2を把持および解放するのにあたって、この実施の形態3では、チャック爪320が下方に移動しながら縮径する際には、チャック爪320の下端部に設けられたワンウェイクラッチ321がワークW2に対して転がり接触しながら移動する。
【0059】
このため、チャック爪320とワークW2との間で作用する摺動抵抗が低く抑えられ、摺動時のカジリ付きを防止することができ、かつ、摩擦によりワークWを下方の図外の受け治具へ押し付ける不具合も生じない。
【0060】
また、ワンウェイクラッチ321は、下方への回転は停止されるから、把持したワークW2が落下することはない。
【0061】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4のチャック装置について図10および図11により説明する。
【0062】
この実施の形態4のチャック装置は、実施の形態2と同様に、ダミーピン440が支持プレート13に固定されている。さらに、ダミーピン440の下端は、チャック爪2がワークWを把持したときのワークWの先端に接するか、あるいは近接する高さに配置されており、下端には、ゴム・軟質樹脂・金属ばね・流体ばねなどからなり上下方向の衝撃を吸収する緩衝材442が設けられている。
【0063】
他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0064】
次に、実施の形態4のチャック装置の動作について説明する。
【0065】
実施の形態1のチャック装置と同様に、ワークWを把持する際には、シリンダロッド5が下方に移動されるとともに、チャック爪2が下方に縮径しながら移動され、チャック爪2によりワークWとダミーピン440が把持される。
【0066】
また、ワークWを解放する際にも、実施の形態1のチャック装置と同様に、シリンダロッド5が上方に移動されるとともに、チャック爪2が拡径しながら上方に移動され、ワークWおよびダミーピン440が解放される。
【0067】
また、チャック爪2がワークWを解放する際に、チャック爪2は上昇しながら拡径するため、ワークWと摺動する。そのため、摩擦によりワークWが持上げられる方向に力が作用するが、ワークWは、その上側に当接あるいは近接する位置に配置されたダミーピン440の下端に当たり、ワークWが持上げられることなく解放される。
【0068】
したがって、ワーク解放時のワークWの浮き上がりを防止でき、ワークWおよび受け治具に余計な衝撃を加えずにワークWのハンドリングを行うことができる。しかも、ダミーピン440の下端には緩衝材442を設けているため、ワークWがダミーピン440に当たっても、ワークWに衝撃や傷を与えることがない。
【0069】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5のチャック装置について図12および図13により説明する。
【0070】
この実施の形態5のチャック装置は、実施の形態1と同様に、ダミーピン540が支持プレート13に上下方向に摺動可能に支持され、リターンスプリング42により上方に付勢されている。
【0071】
また、この実施の形態5では、ダミーピン540が、中空に形成され、この中空部分において、ダミーピン540と同軸にブロックピン500が設けられている。
【0072】
このブロックピン500は、その上端部がエンドプレート14に固定され、かつ、その下端は、チャック爪2がワークWを把持したときのワークWの先端に接するか、あるいは近接する高さに配置され、かつ、下端に、ゴム・軟質樹脂・金属ばね・流体ばねなどからなり上下方向の衝撃を吸収する緩衝材501が設けられている。
【0073】
次に、実施の形態5のチャック装置の動作について説明する。
【0074】
実施の形態1のチャック装置と同様に、ワークWを把持する際には、シリンダロッド5が下方に移動されるとともに、チャック爪2が下方に縮径しながら移動され、チャック爪2によりワークWとダミーピン540が把持される。
【0075】
このとき、実施の形態1と同様に、ダミーピン540が下方に移動するため、カジリ付きを防止することができ、これにより、繰り返し確実で滑らかなハンドリングを行うことができる。
【0076】
また、ワークWを解放する際にも、実施の形態1のチャック装置と同様に、シリンダロッド5が上方に移動されるとともに、チャック爪2が拡径しながら上方に移動され、ワークWおよびダミーピン540が解放される。
【0077】
また、チャック爪2がワークWを解放する際に、チャック爪2は上昇しながら拡径されるため、ワークWと摺動する。そのため、摩擦によりワークWが持上げられる方向に力が作用するが、ワークWは、その上側に当接あるいは近接する位置に配置されたブロックピン500の下端に当たり、ワークWが持上げられることなく解放される。
【0078】
したがって、ワーク解放時のワークWの浮き上がりを防止でき、ワークWおよび受け治具に余計な衝撃を加えないようにワークWのハンドリングを行うことができる。しかも、ブロックピン500の下端には緩衝材501を設けているため、ワークWがブロックピン500に当たっても、ワークWに衝撃や傷を与えることがない。
【0079】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6のチャック装置について図14および図15により説明する。
【0080】
この実施の形態6のチャック装置は、実施の形態5の変形例であり、実施の形態5との相違点は、チャック爪2に替えて実施の形態3で示したチャック爪320を用いた点である。
【0081】
したがって、この実施の形態6のチャック装置にあっては、 実施の形態1のチャック装置と同様に、ワークWを把持する際には、シリンダロッド5が下方に移動されるとともに、チャック爪2が下方に縮径しながら移動され、チャック爪2によりワークWとダミーピン540が把持される。このとき、実施の形態1と同様に、ダミーピン540が下方に移動するため、カジリ付きを防止することができ、これにより、繰り返し確実で滑らかなハンドリングを行うことができる。
【0082】
また、この実施の形態6のチャック装置にあっては、実施の形態3と同様に、ワンウェイクラッチ321によりチャック爪320とワークW2との間で作用する摺動抵抗が低く抑えられ、摺動時のカジリ付きを防止することができ、かつ、摩擦によりワークW2を下方へ押し付ける不具合も生じない。また、ワンウェイクラッチ321は、下方への回転は停止されるから、把持したワークWが落下することはない。
【0083】
しかも、実施の形態5と同様に、ブロックピン500によりワーク解放時のワークW2の浮き上がりを防止でき、ワークW2および受け治具に余計な衝撃を加えないようにワークW2のハンドリングを行うことができる。しかも、ブロックピン500の下端には緩衝材501を設けているため、ワークW2がブロックピン500に当たっても、ワークW2に衝撃や傷を与えることがない。
【0084】
(実施の形態7)
次に、実施の形態7のチャック装置について図16および図17により説明する。
【0085】
この実施の形態7のチャック装置は、実施の形態2の変形例であり、実施の形態2との相違点は、チャック爪2に替えて実施の形態3で示したチャック爪320を用いた点である。
【0086】
したがって、この実施の形態7のチャック装置にあっては、実施の形態2と同様に、チャック爪320がダミーピン240を把持および解放するのにあたって、チャック爪320は、ダミーピン240の下端部に設けられたボールプランジャ242と転がり接触しながら移動される。このため、チャック爪320とダミーピン240との間で作用する摺動抵抗が低く抑えられ、摺動時のカジリ付きを防止することができ、繰り返し確実で滑らかなハンドリングを行うことができる。
【0087】
さらに、この実施の形態7のチャック装置にあっては、実施の形態3と同様に、チャック爪320とワークW2との間で作用する摺動抵抗が低く抑えられ、摺動時のカジリ付きを防止することができ、かつ、摩擦によりワークW2を下方へ押し付ける不具合も生じない。また、ワンウェイクラッチ321は、下方への回転は停止されるから、把持したワークWが落下することはない。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、実施の形態では、軸受部材としてボールプランジャ242を示したが、軸受部材としては、摺動抵抗を低減させることのできるものであれば、これに限定されないし、設置箇所としても、ダミーピンに限らず、チャック爪に設けてもよい。例えば、チャック爪に設ける場合、軸受部材として、実施の形態3で示したローラ状のものを用いることもできる。また、摺動相手に対して転がるものに限定されず、摺動相手との接触を点接触あるいは線接触する軸受部材を用いてもよいし、素材として摺動抵抗の低いテフロン(登録商標)などを用いてもよい。
【0089】
また、実施の形態では、チャック爪として三つ爪式のものを用いたが、これに限定されず、2または4以上の複数の爪を有するものでもよい。
【0090】
また、チャック爪を摺動させる手段として、実施の形態で示したものに限定されるものではなく、モータなど他のアクチュエータを用いたものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施の形態1に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係るチャック装置の側面図である。
【図4】実施の形態1に係るチャック装置の底面図である。
【図5】実施の形態2に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図6】実施の形態2に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図7】実施の形態3に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図8】実施の形態3に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図9】実施の形態3に係るチャック装置のチャック爪の側面図である。
【図10】実施の形態4に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図11】実施の形態4に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図12】実施の形態5に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図13】実施の形態5に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図14】実施の形態6に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図15】実施の形態6に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【図16】実施の形態7に係るチャック装置のワーク解放状態を示す断面図である。
【図17】実施の形態7に係るチャック装置のワーク把持状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 チャック本体
2 チャック爪
4 ダミーピン
240 ダミーピン
242 ボールプランジャ
320 チャック爪
321 ワンウェイクラッチ
340 ダミーピン
440 ダミーピン
500 ブロックピン
540 ダミーピン
W ワーク
W2 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、
前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に上下に移動可能に支持されていることを特徴とするチャック装置。
【請求項2】
チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、
前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に固定され、
前記チャック爪と前記ダミーピンとの摺動部分のいずれか一方に、把持時の摺動抵抗を低減させる軸受部材が設けられていることを特徴とするチャック装置。
【請求項3】
前記軸受け部材が、回転可能に支持されたボールプランジャであることを特徴とする請求項2に記載のチャック装置。
【請求項4】
チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、
前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが設けられ、
前記チャック爪において、前記ワークとの接触面に、ワーク把持時の相対移動方向で転がり、その反対方向の相対移動で転がりを規制するワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とするチャック装置。
【請求項5】
チャック本体にチャック爪が軸方向に移動可能に支持され、前記チャック爪の軸方向移動に連動して縮径および拡径を行いチャック爪の先端部にワークを把持および解放するチャック装置であって、
前記チャック爪がワークを把持する際に、前記チャック爪の根元で把持可能なダミーピンが、前記チャック本体に固定され、
このダミーピンの先端が、前記ワーク把持時のワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さに配置され、前記ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とするチャック装置。
【請求項6】
前記ダミーピンの先端が、前記ワーク把持時のワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さに配置され、前記ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とする請求項2に記載のチャック装置。
【請求項7】
前記ダミーピンが中空に形成され、
このダミーピンの中空部分に配置されたブロックピンが前記チャック本体に固定され、
このブロックピンが、前記ワークをチャック爪で把持したときのワーク先端の高さに接する高さかほぼ接触する高さにあり、ワークを解放したとき前記チャック爪との摩擦によりワークが持ち上がることを抑制する機能を有することを特徴とする請求項1に記載のチャック装置。
【請求項8】
前記チャック爪において、前記ワークとの接触面に、ワーク把持時の相対移動方向で転がり、その反対方向の相対移動で転がりを規制するワンウェイクラッチが設けられていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−38340(P2007−38340A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224796(P2005−224796)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】