説明

チャンバ内土砂流動計測装置及びシールド掘進機

【課題】簡単な構成で、チャンバ内の土砂の流動方向を正確に計測することで、チャンバ内に注入する添加材の注入量を適切に設定する。
【解決手段】シールド掘進機1のカッタヘッド4とバルクヘッド5との間に形成されたチャンバ6内の土砂流動を計測する装置であって、バルクヘッド5に、チャンバ6内に出没自在に支持される棒状部材19と、棒状部材19の側面に周方向に間隔を隔てて複数配設され、棒状部材19の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計20と、これら各直交方向土圧計20の計測値に基づいて、チャンバ6内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ内土砂流動計測装置及びシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、シールド本体の前方に設けられた回転カッタで地山を掘削して、その後方でセグメントを順次組立てることにより、トンネルを構築していくものである。回転カッタの前端には複数のビットが配置されており、回転カッタを回転させてビットにより地山を掘削するようになっている。
【0003】
泥土圧シールド掘進機は、回転カッタとシールド本体の前端部近傍に設けられたバルクヘッドとの間に形成されるチャンバ内に添加材を注入し、チャンバ内の土砂(掘削土砂)を添加材と混合して、チャンバ内の土砂に適度な流動性を与えるものである。
【0004】
泥土圧シールド掘進機において、チャンバ内の土砂の流動状態は、特にチャンバ内に注入する添加材の注入量により変化する。また、チャンバ内の土砂の流動状態は、シールド掘進機の掘進速度、回転カッタの回転数、添加材の材質や添加材の注入位置等にも影響される。
【0005】
なお、特許文献1には、チャンバ内で回転板を回転させて、チャンバ内の土砂に対する回転板の回転抵抗から、チャンバ内の土砂の流動方向とその大きさとを推定する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献1には、チャンバ内に計測ロッドを設置して、チャンバ内の土砂が流動する際の計測ロッドの変形量から、チャンバ内の土砂の流動方向とその大きさとを推定する技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−191878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の回転板の回転抵抗から土砂流動を計測するものでは、回転板を回転させる装置が必要であり、構造が複雑となる。また、特許文献1の計測ロッドの変形量から土砂流動を計測するものでは、計測ロッドの変形と土砂の流動方向が必ずしも一致せず、チャンバ内の土砂流動を精度良く測定することができない虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成で、チャンバ内の土砂の流動方向を正確に計測することで、チャンバ内に注入する添加材の注入量を適切に設定することができるチャンバ内土砂流動計測装置及びシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、シールド掘進機のカッタヘッドとバルクヘッドとの間に形成されたチャンバ内の土砂流動を計測する装置であって、上記バルクヘッドに、上記チャンバ内に出没自在に支持される棒状部材と、該棒状部材の側面に周方向に間隔を隔てて複数配設され、上記棒状部材の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計と、これら各直交方向土圧計の計測値に基づいて、上記チャンバ内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段とを備えたことを特徴とするチャンバ内土砂流動計測装置である。
【0011】
請求項2の発明は、上記棒状部材は、上記バルクヘッドに回転自在に支持される請求項1に記載のチャンバ内土砂流動計測装置である。
【0012】
請求項3の発明は、シールド掘進機のカッタヘッドとバルクヘッドとの間に形成されたチャンバ内の土砂流動を計測する装置であって、上記バルクヘッドに、上記チャンバ内に出没自在に且つ回転自在に支持される棒状部材と、該棒状部材の側面に配設され、上記棒状部材の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計と、上記棒状部材を所定角度ずつ回転させた際の各角度における上記直交方向土圧計の計測値に基づいて、上記チャンバ内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段とを備えたことを特徴とするチャンバ内土砂流動計測装置である。
【0013】
請求項4の発明は、上記棒状部材の先端に配設され、上記棒状部材の軸方向の圧力を計測する軸方向土圧計と、上記棒状部材を上記チャンバ内の土砂に貫入させた際の上記棒状部材の移動速度と上記軸方向土圧計の測定値とにより、上記チャンバ内の土砂性状を求める土砂性状演算手段とを備えた請求項1から3のいずれかに記載のチャンバ内土砂流動計測装置である。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のチャンバ内土砂流動計測装置を備えたシールド掘進機であって、上記土砂流動演算手段で求めた上記チャンバ内の土砂の流動方向に応じて、上記チャンバ内に注入する添加材の注入量を決定する添加材注入量決定手段を備えたことを特徴とするシールド掘進機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で、チャンバ内の土砂の流動方向を正確に計測することで、チャンバ内に注入する添加材の注入量を適切に設定することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。図2は、図1のII−II線矢視図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、シールド掘進機1は、略円筒状のシールド本体2と、シールド本体2の前部に回転自在に設けられ、円形断面を掘削する回転カッタ3とを備えている。
【0019】
シールド本体2の後部には、回転カッタ3により掘削した孔内にセグメントを組立ててトンネルを構築するためのエレクタ(図示せず)と、シールド本体2の内周に所定間隔を隔てて複数設けられ、セグメントに反力を取ってシールド本体2を推進させるためのシールドジャッキ(図示せず)とが設けられる。
【0020】
回転カッタ3(カッタヘッド4)と、シールド本体2の前端部近傍に設けられたバルクヘッド(隔壁)5との間には、回転カッタ3により掘削した土砂(掘削土砂)を取り込むチャンバ6が形成される。バルクヘッド5の下部には、これを貫通してチャンバ6に開口するスクリュコンベア7が設けられる。
【0021】
回転カッタ3は、バルクヘッド5に回転自在に設けられている。回転カッタ3は、その回転中心から半径方向外側に延出し、掘進方向と平行な軸廻りに回転されるカッタヘッド4を有している。カッタヘッド4の前面には、その半径方向中央にセンタビット8が配置され、そのセンタビット8よりも外周側に複数のカッタビット9が配置されている。カッタヘッド4は、スポーク状に形成されていても良く、面板状に形成されていても良い。
【0022】
カッタヘッド4の後面には、掘進方向後方に延出してチャンバ6内の土砂を撹拌するための撹拌羽根(回転撹拌羽根)10が複数設けられており、バルクヘッド5の前面には、掘進方向前方に延出してチャンバ6内の土砂を攪拌するための撹拌羽根(固定撹拌羽根)11が複数設けられている(図1参照)。
【0023】
また、カッタヘッド4の前面には、添加材をチャンバ6内に注入する添加材注入管の添加材注入口12が開口している。本実施形態では、添加材注入口12は、カッタヘッド4の中央部、カッタヘッド4の半径方向中間部、カッタヘッド4の外周部にそれぞれ設けられている(図1参照)。
【0024】
バルクヘッド5には、ギヤ13を有するリング状部材14が回転自在に支持されている。リング状部材14は、回転カッタ3のカッタヘッド4から掘進方向後方に延出する複数の中間ビーム15によって、カッタヘッド4と連結されている。中間ビーム15は、回転カッタ3の周方向に所定間隔を隔てて複数設けられる。シールド本体2内には、リング状部材14を回転させるための複数の駆動モータ16が設けられている。駆動モータ16にはピニオン17が取り付けられており、そのピニオン17がリング状部材14に設けられたギヤ13と歯合するようになっている。
【0025】
かかるシールド掘進機1を用いて掘進を行うには、シールドジャッキで既設セグメントを押しながら、駆動モータ16によって回転カッタ3(カッタヘッド4)を回転させる。これによって、シールド掘進機1が前方に推進しながら、地山が掘削される。
【0026】
このとき、回転カッタ3で掘削された土砂は、カッタヘッド4とバルクヘッド5との間に形成されたチャンバ6内に流入する。このチャンバ6内では、回転カッタ3(カッタヘッド4)の回転と共に撹拌羽根(回転撹拌羽根)10が回転しており、チャンバ6内の土砂はスクリュコンベア7によって順次バルクヘッド5後方の坑内へ搬出される。
【0027】
本実施形態のシールド掘進機1は、チャンバ6内の土砂流動を計測するチャンバ内土砂流動計測装置18を備えている。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係るチャンバ内土砂流動計測装置の側断面図である。図4は、チャンバ内土砂流動計測装置の側断面図であり、棒状部材をチャンバ内に貫入させた状態を示す。図5は、図3のV−V線矢視図である。図6は、図3のVI−VI線矢視図である。図7は、図3のVII−VII線矢視図である。図8は、図3のVIII−VIII線矢視図である。
【0029】
図3から図8に示すように、本実施形態のチャンバ内土砂流動計測装置18は、バルクヘッド5に、チャンバ6内に出没自在に且つ回転自在に支持される棒状部材19と、棒状部材19をその長手方向に移動させるアクチュエータと、棒状部材19の側面に周方向に間隔を隔てて複数配設され、棒状部材19の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計20と、これら各直交方向土圧計20の計測値に基づいて、チャンバ6内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段とを備える。
【0030】
棒状部材19は、略円筒状の筒体21と、筒体21の先端に設けられた切頭円錐状の先端部22とから主に構成される。本実施形態では、棒状部材19は、バルクヘッド5に装着された略円筒状の支持筒体23を介して、バルクヘッド5に回転自在に支持される。支持筒体23の内周には棒状部材19の筒体21と支持筒体23との間をシールするシール部材24が配設される。
【0031】
本実施形態のアクチュエータは、棒状部材19の筒体21内に収容されたジャッキ(本実施形態では、油圧ジャッキ)25からなり、ジャッキ25の一端(図示例では、ロッド27)が棒状部材19の筒体21内に設けられた取付部21aに取り付けられており、ジャッキ25の他端(図示例では、シリンダチューブ26)がバルクヘッド5或いはシールド本体2に取り付けられている。
【0032】
本実施形態では、ジャッキ25のシリンダチューブ26に対してロッド27が周方向に回転して、これによりジャッキ25のロッド27に取り付けられた棒状部材19が周方向に回転するので、棒状部材19の回転を拘束する回転拘束機構28が設けられる。この回転拘束機構28は、例えば、棒状部材19の筒体21の内周に周方向に間隔を隔てて複数設けられ、棒状部材19の長手方向と平行に延出するレール29と、ジャッキ25のシリンダチューブ26に設けられ、レール29をその両側から挟み込んで係合するガイド30とから構成される。レール29の先端部31は先端に向かい幅が狭くなるテーパ状に形成されており、棒状部材19の筒体21の内周に設けたレール29がジャッキ25のシリンダチューブ26に設けたガイド30に対して掘進方向後方から係合し易くなっている。
【0033】
棒状部材19の回転を拘束する際には、ジャッキ25を伸長させて、棒状部材19のレール29がジャッキ25のガイド30に係合する位置まで棒状部材19を掘進方向前方側に移動させるようになっている(図4参照)。棒状部材19のレール29をジャッキ25のガイド30に係合させることで、棒状部材19の回転が拘束され、各直交方向土圧計20が所定の向きに位置決めされる。
【0034】
他方、棒状部材19を回転させて各直交方向土圧計20の向きを変える際には、ジャッキ25を縮退させて、棒状部材19のレール29がジャッキ25のガイド30から離脱する位置まで棒状部材19を掘進方向後方側に移動させるようになっている(図3参照)。棒状部材19のレール29がジャッキ25のガイド30から離脱し、且つ位置決めピン33が棒状部材19の筒体21の後端部に設けた位置決め穴21bから抜かれた状態で、治具32(図7参照)等を用いて、棒状部材19を周方向に所定角度だけ回転させて各直交方向土圧計20の向きを変えたならば、位置決めピン33を棒状部材19の位置決め穴21bに挿入するようになっている(図3参照)。
【0035】
本実施形態では、直交方向土圧計20は、圧力を検知する検知部が棒状部材19(筒体21)の外周面から露出するように、棒状部材19の筒体21に取り付けられている。
【0036】
本実施形態の土砂流動演算手段は、直交方向土圧計20の計測器34(図4参照)に接続された演算器35(図4参照)からなる。
【0037】
また、シールド掘進機1には、演算器35(土砂流動演算手段)で求めたチャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさに応じて、添加材注入口12からチャンバ6内に注入する添加材の注入量を決定する添加材注入量決定手段が設けられる。本実施形態の添加材注入量決定手段は、上記演算器35からなる。
【0038】
また、本実施形態では、同一構成のチャンバ内土砂流動計測装置18(棒状部材19)が、バルクヘッド5の下部(スクリュコンベア7の左右)、バルクヘッド5の内周部、バルクヘッド5の上部に、計7つ配設されている(図2参照)。
【0039】
チャンバ6内の土砂流動を計測する際には、ジャッキ25を伸長させて、棒状部材19(直交方向土圧計20)をチャンバ6内の所定位置まで掘進方向前方側に移動させる。
【0040】
演算器35は、チャンバ6内に位置する各直交方向土圧計20の計測値に基づいて、チャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさを求め、求めたチャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさに応じて、添加材の注入位置、添加材の注入量を決定するようになっている。
【0041】
本実施形態では、演算器35は、棒状部材19の周方向に間隔を隔てて配置した各直交方向土圧計20の計測値の差に基づいて、土砂の流動方向及びその大きさを決定するようになっている。
【0042】
例えば、演算器35は、棒状部材19の周方向に間隔を隔てて配置した各直交方向土圧計20の内、最大値を得た直交方向土圧計20の計測値とその他の直交方向土圧計20の計測値との差に基づいて、土砂の流動方向及びその大きさを決定する。或いは、演算器35は、棒状部材19の周方向に間隔を隔てて配置した各直交方向土圧計20の内、最小値を得た直交方向土圧計20の計測値とその他の直交方向土圧計20の計測値との差に基づいて、土砂の流動方向及びその大きさを決定する。
【0043】
また、本実施形態では、演算器35は、土砂流動の大きさが所定値を超えている場合、又は土砂の流動化が十分で土砂が流動していると認められる場合(棒状部材19の周方向に間隔を隔てて配置した各直交方向土圧計20の計測値に所定値を超える差が生じる場合)に、チャンバ6内の土砂が十分に流動化していると判断し、チャンバ6内に注入する添加材の注入量を減少させるようになっている。
【0044】
一方、演算器35は、土砂流動の大きさが所定値以下である場合、又は土砂の流動化が不十分で土砂が流動していると認められない場合(棒状部材19の周方向に間隔を隔てて配置した各直交方向土圧計20の計測値に所定値を超える差が生じない場合)に、チャンバ6内の土砂が十分に流動化していない(閉塞している)と判断し、チャンバ6内に注入する添加材の量を増加させるようになっている。
【0045】
さらには、演算器35は、複数のチャンバ内土砂流動計測装置18により決定されるチャンバ6内の土砂流動(土砂の流動方向)が適正と思われる土砂流動(土砂の流動方向)と異なっている場合には、チャンバ6内に注入する添加材の量を増加させ、その後、複数のチャンバ内土砂流動計測装置18により決定されるチャンバ6内の土砂流動(土砂の流動方向)が適正と思われる土砂流動(土砂の流動方向)と相似したときに、チャンバ6内に注入する添加材の量を減少させるようになっている。
【0046】
また、本実施形態のチャンバ内土砂流動計測装置18は、棒状部材19の先端(先端部22の先端)に配設され、棒状部材19の軸方向の圧力を計測する軸方向土圧計36と、棒状部材19をチャンバ6内の土砂に貫入させた際の棒状部材19の移動速度と軸方向土圧計36の測定値とにより、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)を求める土砂性状演算手段とを備える。
【0047】
本実施形態では、軸方向土圧計36は、圧力を検知する検知部が棒状部材19(先端部22)の先端面から露出するように、棒状部材19の先端部22に取り付けられている。
【0048】
本実施形態の土砂性状演算手段は、直交方向土圧計36の計測器37(図9、図10参照)に接続された演算器38(図9、図10参照)からなる。
【0049】
また、シールド掘進機1には、演算器38(土砂性状演算手段)で求めたチャンバ6内の土砂の性状に応じて、添加材注入口12からチャンバ6内に注入する添加材の注入量を決定する添加材注入量決定手段が設けられる。本実施形態の添加材注入量決定手段は、上記演算器38からなる。
【0050】
図9及び図10にそれぞれ、チャンバ6内の土砂性状を計測するシステム構成の一例を示す。
【0051】
図9に示すシステム構成では、ジャッキ25のヘッド側油室39に供給する油量が一定油量となるようにジャッキ25のパワーユニット40を制御して、棒状部材19を一定の移動速度でチャンバ6内の土砂に貫入させる。
【0052】
図9に示すシステム構成にあっては、演算器38は、棒状部材19を一定の移動速度でチャンバ6内の土砂に貫入させた際の各貫入距離での軸方向土圧計36の計測値、貫入距離に対する軸方向土圧計36の計測値の変化パターンから、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)を決定するようになっている。棒状部材19の貫入距離及び移動速度は、棒状部材19のストロークセンサ41の検出値に基づいて求める。
【0053】
そして、図9に示すシステム構成にあっては、演算器38は、各貫入距離での軸方向土圧計36の計測値が所定値を下回っている場合に、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)が適正な性状(硬さ)よりも軟らかいと判断し、チャンバ6内に注入する添加材の量を減少させ、一方、各貫入距離での軸方向土圧計36の計測値が所定値以上である場合に、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)が適正な性状(硬さ)よりも硬いと判断し、チャンバ6内に注入する添加材の量を増加させるようになっている。
【0054】
また、図10に示すシステム構成では、ジャッキ25のヘッド側油圧室39とパワーユニット40とを結ぶ油圧供給ライン42に制御弁43が設けられており、棒状部材19をチャンバ6内の土砂に貫入させる際に軸方向土圧計36の計測値が一定となるように、制御弁43によりジャッキ25のヘッド側油室39に供給する油量を調整して、棒状部材19を一定の圧力でチャンバ6内の土砂に貫入させる。
【0055】
図10に示すシステム構成では、演算器38は、棒状部材19を一定の圧力でチャンバ6内の土砂に貫入させた際の各貫入距離での棒状部材19の移動速度、貫入距離に対する棒状部材19の移動速度の変化パターンから、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)を決定するようになっている。棒状部材19の貫入距離及び移動速度は、棒状部材19のストロークセンサ41の検出値に基づいて求める。
【0056】
そして、図10に示すシステム構成にあっては、演算器38は、各貫入距離での棒状部材19の移動速度が所定値を超えている場合に、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)が適正な性状(硬さ)よりも軟らかいと判断し、チャンバ6内に注入する添加材の量を減少させ、一方、各貫入距離での棒状部材19の移動速度が所定値以下である場合に、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)が適正な性状(硬さ)よりも硬いと判断し、チャンバ6内に注入する添加材の量を増加させるようになっている。
【0057】
本実施形態では、バルクヘッド5にチャンバ6内に出没自在に支持された棒状部材19の側面に、棒状部材19の周方向に間隔を隔てて複数の直交方向土圧計20を配設したので、棒状部材19(直交方向土圧計20)をチャンバ6内の所定位置に位置させた状態でその棒状部材19を回転させることなく、チャンバ6内における圧力が高い方向(土砂の流動方向)を検知することができるので、チャンバ6内の土砂流動(チャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさ)を正確に知ることができる。
【0058】
また、本実施形態では、棒状部材19がバルクヘッド5に回転自在に支持されるので、棒状部材19をチャンバ6内の土砂に貫入させる際の棒状部材19の角度(直交方向土圧計20の検知部が向く方向)を、チャンバ6内の土砂の流動方向に応じて変えることができ、より正確にチャンバ6内の土砂流動(チャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさ)を知ることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、棒状部材19の先端にも土圧計(軸方向土圧計36)を配設したので、棒状部材19をチャンバ6内の土砂に貫入させた際の貫入抵抗を検知することができ、チャンバ6内の土砂の性状(硬さ)を知ることができる。上記貫入抵抗は、棒状部材19を一定速度でチャンバ6内の土砂に貫入させた際に棒状部材19(軸方向土圧計36)が受ける圧力(軸方向土圧計36の計測値)に対応し、或いは棒状部材19を一定圧力でチャンバ6内の土砂に貫入させた際の棒状部材19の移動速度に対応するので、図9に示すシステム構成にあっては、棒状部材19を一定速度でチャンバ6内の土砂に貫入させた際の各貫入距離での軸方向土圧計36の計測値から求めることができ、図10に示すシステム構成にあっては、棒状部材19を一定圧力でチャンバ6内の土砂に貫入させた際の各貫入距離での棒状部材19の移動速度から求めることができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0061】
例えば、上述の実施形態では、棒状部材19がバルクヘッド5に回転自在に支持されるとしたが、棒状部材19の側面に周方向に間隔を隔てて複数直交方向土圧計20を配設しており、棒状部材19を回転させることなくチャンバ6内の土砂の流動方向を検知することができるので、棒状部材19を必ずしもバルクヘッド5に回転自在に支持させる必要はない。
【0062】
上述の実施形態では、棒状部材19の側面に周方向に間隔を隔てて直交方向土圧計20を複数設けるとしたが、棒状部材19の側面に直交方向土圧計20を一つだけ設けても良い。その場合、棒状部材19を所定角度ずつ回転させて直交方向土圧計20の検知部が向く方向を変え、その都度棒状部材19をチャンバ6内の土砂に貫入させて所定角度毎にチャンバ6内の土圧を直交方向土圧計20で計測し、各角度における直交方向土圧計20の計測値に基づいて、チャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさを求める。
【0063】
また、土砂流動演算手段(演算器35)で求めたチャンバ6内の土砂の流動方向及びその大きさ、土砂性状演算手段(演算器38)で求めたチャンバ6内の土砂の性状(硬さ)に基づいて、シールド掘進機1の掘進速度、回転カッタ3の回転数や添加材の材質等を決定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の側断面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線矢視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るチャンバ内土砂流動計測装置の側断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るチャンバ内土砂流動計測装置の側断面図であり、棒状部材をチャンバ内に貫入させた状態を示す。
【図5】図5は、図3のV−V線矢視図である。
【図6】図6は、図3のVI−VI線矢視図である。
【図7】図7は、図3のVII−VII線矢視図である。
【図8】図8は、図3のVIII−VIII線矢視図である。
【図9】図9は、チャンバ内の土砂性状を計測するシステム構成の一例を示す概略図である。
【図10】図10は、チャンバ内の土砂性状を計測するシステム構成の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1 シールド掘進機
4 カッタヘッド
5 バルクヘッド
6 チャンバ
18 チャンバ内土砂流動計測装置
19 棒状部材
20 直交方向土圧計
35 演算器(土砂流動演算手段、添加材注入量決定手段)
36 軸方向土圧計
38 演算器(土砂性状演算手段、添加材注入量決定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機のカッタヘッドとバルクヘッドとの間に形成されたチャンバ内の土砂流動を計測する装置であって、
上記バルクヘッドに、上記チャンバ内に出没自在に支持される棒状部材と、該棒状部材の側面に周方向に間隔を隔てて複数配設され、上記棒状部材の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計と、これら各直交方向土圧計の計測値に基づいて、上記チャンバ内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段とを備えたことを特徴とするチャンバ内土砂流動計測装置。
【請求項2】
上記棒状部材は、上記バルクヘッドに回転自在に支持される請求項1に記載のチャンバ内土砂流動計測装置。
【請求項3】
シールド掘進機のカッタヘッドとバルクヘッドとの間に形成されたチャンバ内の土砂流動を計測する装置であって、
上記バルクヘッドに、上記チャンバ内に出没自在に且つ回転自在に支持される棒状部材と、該棒状部材の側面に配設され、上記棒状部材の長手方向に直交する方向の圧力を計測する直交方向土圧計と、上記棒状部材を所定角度ずつ回転させた際の各角度における上記直交方向土圧計の計測値に基づいて、上記チャンバ内の土砂の流動方向を求める土砂流動演算手段とを備えたことを特徴とするチャンバ内土砂流動計測装置。
【請求項4】
上記棒状部材の先端に配設され、上記棒状部材の軸方向の圧力を計測する軸方向土圧計と、上記棒状部材を上記チャンバ内の土砂に貫入させた際の上記棒状部材の移動速度と上記軸方向土圧計の測定値とにより、上記チャンバ内の土砂性状を求める土砂性状演算手段とを備えた請求項1から3のいずれかに記載のチャンバ内土砂流動計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のチャンバ内土砂流動計測装置を備えたシールド掘進機であって、
上記土砂流動演算手段で求めた上記チャンバ内の土砂の流動方向に応じて、上記チャンバ内に注入する添加材の注入量を決定する添加材注入量決定手段を備えたことを特徴とするシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−13894(P2010−13894A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176928(P2008−176928)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】