説明

チャージポンプ回路

【課題】充放電電流の立ち上がりを高速にし、かつ誤動作のおそれがないチャージポンプ回路を提供する。
【解決手段】ダイオード接続されたトランジスタMp1と、トランジスタMp2と、指令信号UPbで制御されてMp1,Mp2のゲート間を接続するトランジスタMp3とで第1のカレントミラー回路が構成されている。トランジスタMp2のゲート電極と電源VDDの間には指令信号UPbで制御されるトランジスタMp4が接続されている。また、ダイオード接続されたトランジスタMn1と、トランジスタMn2と、指令信号DNで制御されてMn1,Mn2のゲート間を接続するトランジスタMn3とで第2のカレントミラー回路が構成されている。Mn2のゲート電極と接地の間には、指令信号DNbで制御されるトランジスタMn4が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop)回路に使用するチャージポンプ回路に関し、特に集積回路で構成された小形のチャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、チャージポンプ型PLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。
このPLL回路1は、位相比較器2、チャージポンプ回路3、ループフィルタ4、および電圧制御発振器5によって構成され、位相比較器2に基準クロックとともに電圧制御発振器5の出力であるVCO信号が帰還されている。位相比較器2は、基準クロックの位相と電圧制御発振器5のVCO信号(の分周信号)との位相を比較し、基準クロックに比べてVCO信号の位相が遅れていると、チャージポンプ回路3に周波数を上げる指令信号UPを出力する。また、基準クロックに比べてVCO信号の位相が進んでいるときは、周波数を下げる指令信号DNを出力する。チャージポンプ回路3では、指令信号UPが入力されると、ループフィルタ4に対して充電電流を供給して、後段の電圧制御発振器5における発振周波数を増加させ、指令信号DNが入力されると、ループフィルタ4の電荷を放電させて、後段の電圧制御発振器5における発振周波数を減少させる。
【0003】
電圧制御発振器5は、ループフィルタ4から出力されたアナログ信号が供給され、当該アナログ信号に応じた周波数のVCO信号を出力する。なお、電圧制御発振器5のVCO信号を帰還する際に、カウンタで構成される分周器等を用いて1/N(N:任意の自然数)に分周してから位相比較器2に供給すれば、VCO信号を基準クロックの周波数のN倍とすることができる。したがって、このNの値を任意に設定することによって、入力される基準クロックに対し、周波数の任意の自然数倍の周波数を得ることができる。
【0004】
図5は、従来のチャージポンプ回路の構成を示す回路図である。
チャージポンプ回路3は、その電源VDDと出力端子OUTの間に、定電流回路31およびPチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)Mp0が直列に接続されている。定電流回路31は、ミラー接続された第1、第2のPチャネルMOSFETMp1,Mp2と電流源32とから構成され、このうち第2のPチャネルMOSFETMp2のドレイン電極は、PチャネルMOSFETMp0のソース電極に接続されている。PチャネルMOSFETMp0のゲート電極には、指令信号UPを反転した信号UPbが供給され、アナログスイッチとして動作する。また、定電流回路31では、第1、第2のPチャネルMOSFETMp1,Mp2のゲート電極が互いに接続されて、第1のカレントミラー回路を構成しており、第1のPチャネルMOSFETMp1のドレイン電極とゲート電極は、それぞれ電流源32に接続されている。第2のPチャネルMOSFETMp2には、そのドレイン電極と基板電極の間の寄生容量Cppを破線で示している。
【0005】
一方、チャージポンプ回路3のグランド側には、定電流回路33およびNチャネルMOSFET(以下、NチャネルMOSFETという。)Mn0が直列に接続されている。定電流回路33は、ミラー接続された第1、第2のNチャネルMOSFETMn1,Mn2と電流源34とから構成され、このうち第2のNチャネルMOSFETMn2のドレイン電極は、NチャネルMOSFETMn0のソース電極に接続されている。NチャネルMOSFETMn0は、そのゲート電極に指令信号DNが供給され、アナログスイッチとして動作する。また、定電流回路33では、第1、第2のNチャネルMOSFETMn1,Mn2のゲート電極が互いに接続されて、第2のカレントミラー回路を構成しており、第1のNチャネルMOSFETMn1のドレイン電極とゲート電極は、それぞれ電流源34に接続されている。
【0006】
なお、第2のNチャネルMOSFETMn2には、そのドレイン電極と基板電極の間の寄生容量Cpnを破線で示している。また、NチャネルMOSFETMn0のドレイン電極は、PチャネルMOSFETMp0のドレイン電極とともに出力端子OUTに接続され、後段のループフィルタ4への充放電電流を制御している。
【0007】
指令信号UPがH(High)レベルになると、PチャネルMOSFETMp0のゲート電極には反転したL(Low)レベルの信号UPbが供給されて導通することになって、定電流回路31から出力端子OUTに充電電流が流れる。反対に、指令信号DNがHレベルになると、チャージポンプ回路3のNチャネルMOSFETMn0が導通し、その出力端子から定電流回路33に放電電流が流れる。
【0008】
このようなPチャネルMOSFETMp1,Mp2やNチャネルMOSFETMn1,Mn2からなるカレントミラー回路では、比較的大きなサイズのトランジスタが使用される。そのため、PチャネルMOSFETMp2およびNチャネルMOSFETMn2のドレイン電極と基板との間には、上述したような接合容量(浮遊容量)を主とする寄生容量Cpp,Cpnが生じており、これらの寄生容量がアナログ回路としてのチャージポンプ回路3の動作に影響を及ぼす。
【0009】
すなわち、PチャネルMOSFETMp0が導通していないとき、PチャネルMOSFETMp2のドレイン電位は電源VDDの電位Vddと等しくなっており、PチャネルMOSFETMp0が導通するとPチャネルMOSFETMp2のドレイン電位は出力端子OUTの電位Vout(ただし、Vdd>Vout>0)になる。したがって、PチャネルMOSFETMp0の導通時には、寄生容量Cppを介してCpp(Vdd−Vout)の大きさの電荷Quが出力端子に流れ出す。同様に、NチャネルMOSFETMn0の導通時にも、出力端子から寄生容量CpnにCpn×Voutの大きさの電荷Qdが流れ込む。
【0010】
そのため、PLL回路1がロックする直前の指令信号UPあるいはDNのパルス幅が狭い状態になっているときには、本来の充放電電流と比較して、PチャネルMOSFETMp0やNチャネルMOSFETMn0の導通時に寄生容量CppやCpnを介して出力端子OUTに流れる電荷の大きさを無視することができなくなる。これにより、PLL回路1はその動作が不安定になったり、あるいは大きな位相差をもった状態でロックしたりするという不都合が生じていた。
【0011】
この種の問題は、PLL回路1での消費電力の削減、あるいはループフィルタの面積削減の観点から考慮すると、充放電電流の大きさを小さくした場合に顕著になる。こうした寄生容量の影響をなくすようにしたチャージポンプ回路については、つぎに述べる特許文献1で寄生容量に蓄積された電荷をキャンセルする技術として開示されている。
【0012】
特許文献1には、トランジスタMp0,Mn0の遮断時に、増幅器とスイッチを用いてトランジスタMp2,Mn2のドレイン電位を出力端子の電位Voutと同じ電位にする手法、あるいはチャージポンプ回路を2個用意して、寄生容量によって流入する電荷の影響をキャンセルする手法などが記載されている。ところが、PLL回路を集積回路として構成する場合にその回路構成が複雑になるという問題が残されていた。
【0013】
特許文献2には、ローパスフィルタ(同文献の図6におけるLFC、以下同様。)にチャージポンプ回路(CPC)からソース電流(Isource)を供給し、あるいはローパスフィルタ(LFC)からスィンク電流(Isink)を流すことで、電圧制御発振器RFVCOの発振周波数(fRFVCO)を制御するための位相制御電圧を生成するフラクショナルシンサセイザの発明が記載されている。
【0014】
図6は、特許文献2に開示されている従来のチャージポンプ回路の構成を示す回路図である。
ここでは、チャージポンプ回路(CPC)のPチャネルMOSトランジスタ(MP1)のゲート入力端子が、アップ用のフリップフロップ(FF_Up)の出力信号Q(VQREF)により駆動されたスイッチ(アップ用のスイッチ10)により制御され、NチャネルMOSトランジスタ(MN1)のゲート入力端子が、ダウン用のフリップフロップ(FF_Dn)の出力信号Q(VQDIV)により駆動されたスイッチ(ダウン用のスイッチ20)により制御されている。この場合、ソース電流(Isource)の供給を止めるときは、信号VQREFにより駆動されたアップ用のスイッチ10によりPチャネルMOSトランジスタ(MP1)のゲート入力端子の電位をHレベルにしてPチャネルMOSトランジスタ(MP1)のソース・ドレイン間を高インピーダンスとする。また、スィンク電流(Isink)の供給を止めるときは、出力信号VQDIVにより駆動されたダウン用のスイッチ20によりNチャネルMOSトランジスタ(MN1)のゲート入力端子の電位をLレベルにしてNチャネルMOSトランジスタ(MN1)のソース・ドレイン間を高インピーダンスにする。こうした特許文献2の技術を、図5に示す従来のチャージポンプ回路に適用することで、NチャネルMOSFETMn2の寄生容量CpnおよびPチャネルMOSFETMp2の寄生容量Cppが出力端子OUTと直接接続され、PチャネルMOSトランジスタMp2やNチャネルMOSトランジスタMn2のドレイン電圧が常に出力端子OUTの電位Voutとなる。したがって、上述した図5に示す構成、あるいは特許文献1の構成のもので生じていたチャージポンプ回路(CPC)における寄生容量の影響が簡単に排除できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−266443号公報(段落番号[0039]〜[0070]、図1〜図7参照)
【特許文献2】特開2007−318290公報(段落番号[0024]、[0025]および図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、特許文献2に記載されたチャージポンプ回路(CPC)では、アップ用のスイッチ10およびダウン用のスイッチ20を交互に短絡させてソース電流(Isource)やスィンク電流(Isink)の供給を停止している状態から、これらのスイッチを開放(オフ)してソース電流(Isource)もしくはスィンク電流(Isink)の供給を開始する場合、ローパスフィルタ(LFC)にソース電流(Isource)を供給するために2つのPチャネルMOSトランジスタ(MP1,MP0)のゲート容量を充電する、あるいはスィンク電流(Isink)を流すために2つのNチャネルMOSトランジスタ(MN1,MN0)のゲート容量を充電する必要がある。このような充電時間が必要となるため、前段の位相比較器(PDC)からの出力信号(Q)のタイミングに対して、後段のローパスフィルタ(LFC)に実際に電流供給が開始され、あるいは放電が開始されるタイミングに遅れが生じるという問題があった。
【0017】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、充放電電流の立ち上がりを高速にし、かつ誤動作のおそれがないチャージポンプ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、前段に接続された位相比較器の指令信号に応じて後段に接続されたループフィルタに電流を供給するチャージポンプ回路が提供される。
このチャージポンプ回路は、ダイオード接続され定電流が供給される第1のPチャネルMOSFET、第2のPチャネルMOSFET、および第1の信号でゲートが駆動され、前記第1のPチャネルMOSFETと前記第2のPチャネルMOSFETの各ゲート間を接続する第3のPチャネルMOSFETからなる第1のカレントミラー回路と、前記第1の信号を反転した信号でゲートが駆動され、前記第2のPチャネルMOSFETのゲートと第1の電源の間を接続する第4のPチャネルMOSFETと、ダイオード接続され定電流が供給される第1のNチャネルMOSFET、第2のNチャネルMOSFET、および第2の信号でゲートが駆動され、前記第1のNチャネルMOSFETと前記第2のNチャネルMOSFETの各ゲート間を接続する第3のNチャネルMOSFETからなる第2のカレントミラー回路と、前記第2の信号を反転した信号でゲートが駆動され、前記第2のNチャネルMOSFETのゲートと第2の電源の間を接続する第4のPチャネルMOSFETと、を備え、前記第2のPチャネルMOSFETと前記第2のNチャネルMOSFETの各ドレインを接続して出力端子としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のチャージポンプ回路では、簡易な回路構成で精度よく出力電流を制御してグリッチ雑音(Glitch Noise)を抑制することにより、誤動作のおそれをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
【図2】第2の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
【図3】第3の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
【図4】チャージポンプ型PLL回路の一般的な構成を示すブロック図である。
【図5】従来のチャージポンプ回路の構成を示す回路図である。
【図6】特許文献2に開示されている従来のチャージポンプ回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
ここでは、ダイオード接続された第1のPチャネルMOSFETMp1、第2のPチャネルMOSFETMp2、および第1,第2のPチャネルMOSFETMp1,Mp2のゲート間を接続する第3のPチャネルMOSFETMp3によって第1のカレントミラー回路が構成されている。第3のPチャネルMOSFETMp3のゲート電極には、指令信号UPbが供給される。また、第2のPチャネルMOSFETMp2のゲート電極と電源VDDの間には、第4のPチャネルMOSFETMp4が接続され、そのゲート電極には指令信号UPが供給されている。
【0022】
また、ダイオード接続された第1のNチャネルMOSFETMn1、第2のNチャネルMOSFETMn2、および第1,第2のNチャネルMOSFETMn1,Mn2のゲート間を接続する第3のNチャネルMOSFETMn3によって第2のカレントミラー回路が構成されている。第3のNチャネルMOSFETMn3のゲート電極には、指令信号DNが供給されている。そして、第2のNチャネルMOSFETMn2のゲート電極と接地(グランド)の間には、指令信号DNbで制御される第4のNチャネルMOSFETMn4が接続されている。
【0023】
ここで、指令信号UP,UPbおよび指令信号DN,DNbは、それぞれ互いに反転信号となるようLレベルとHレベルが制御される。また、図5の従来回路に対応する部分には、同一の符号を付けてある。
【0024】
つぎに、上記のように構成されたチャージポンプ回路の動作について説明する。
いま、第1のカレントミラー回路への指令信号UPがHレベルになると、その反転された指令信号UPbはLレベルとなって、PチャネルMOSFETMp3が導通すると同時にPチャネルMOSFETMp4が遮断される。そのため、PチャネルMOSFETMp2のゲート電位がPチャネルMOSFETMp1のゲート電位に等しくなって、第1のカレントミラー回路のミラー比に応じた電流が電源VDDから第2のPチャネルMOSFETMp2に流れる。そこで、出力端子OUTから所定の充電電流が後段のループフィルタ4に供給されるが、図5に示す従来回路とは異なり、第2のPチャネルMOSFETMp2の寄生容量Cppが出力端子OUTと直接接続されているため、そこから不要な電荷が流れ出るおそれはない。
【0025】
また、本実施の形態では以下の理由でPチャネルMOSFETMp2のオン電流の立ち上がりが早くなる。すなわち、第1のカレントミラー回路から後段のループフィルタ4への充電電流供給を開始する場合、特許文献2ではカレントミラー回路を構成する2つのPチャネルMOSFETMp1,Mp2のゲート容量を電流源32の電流Ibuによりゼロから充電する必要があり、そのため、PチャネルMOSFETMp2のオン電流の立ち上がりが遅くなる。これに対し、本実施の形態では、PチャネルMOSFETMp3が遮断しているときもPチャネルMOSFETMp1のゲート電位が電流源32の電流Ibuを流すのに必要なレベルを保ったままとなっているため、PチャネルMOSFETMp3が導通した瞬間にPチャネルMOSFETMp1のゲート容量の電荷がPチャネルMOSFETMp1のゲート容量とPチャネルMOSFETMp2のゲート容量に再分配されて、PチャネルMOSFETMp2によるある程度の電流の供給が瞬時に開始される。その後、電流源32の電流Ibuにより2つのゲート容量の充電が行われるが、これは一方のPチャネルMOSFETMp2のゲート容量を充電する量の電荷だけを供給すればよいため、充電時間も短くできる。すなわち、特許文献2の場合、供給電流はゼロから徐々に増加する形となるが、本実施の形態では瞬間的にあるレベルの電流の供給が開始されるため、その後の所定の電流値を出力するまでの時間も短縮することができる。
【0026】
反対に、指令信号UPがLレベルになると、その反転された指令信号UPbはHレベルとなって、PチャネルMOSFETMp4が導通してPチャネルMOSFETMp3が遮断する。そのため、PチャネルMOSFETMp2のゲート電位が電源VDDの電位に等しくなって、出力端子OUTには電流が流れない。また、PチャネルMOSFETMp1のゲート電位は、電流源32への電流Ibuを流すのに必要なレベルを保ったままとなる。
【0027】
一方、第2のカレントミラー回路への指令信号DNがHレベルになると、その反転された指令信号DNbはLレベルとなって、NチャネルMOSFETMn3が導通すると同時にNチャネルMOSFETMn4が遮断される。そのため、NチャネルMOSFETMn1,Mn2の各ゲート電位が等しくなって、第2のカレントミラー回路のミラー比に応じた放電電流が出力端子OUTから第2のNチャネルMOSFETMn2に流れ込む。すなわち、後段のループフィルタ4からNチャネルMOSFETMn2に電流が引き込まれるが、その際でもNチャネルMOSFETMn2の寄生容量Cpnが出力端子OUTと直接接続されているため、そこに不要な電荷が流れ込むおそれはない。
【0028】
また、本実施の形態では以下の理由でNチャネルMOSFETMn2のオン電流の立ち上がりが早くなる。すなわち、第2のカレントミラーによる後段のループフィルタ4からの放電電流の引き込みを開始する場合、特許文献2ではカレントミラーを構成する2つのNチャネルMOSFETMn1,Mn2のゲート容量を電流源34の電流Ibdによりゼロから充電する必要があり、そのため、NチャネルMOSFETMn2のオン電流の立ち上がりが遅くなる。これに対し、本実施の形態では、NチャネルMOSFETMn3が遮断しているときもNチャネルMOSFETMn1のゲート電位が電流源34の電流Ibdを流すのに必要なレベルを保ったままとなっているため、NチャネルMOSFETMn3が導通した瞬間にNチャネルMOSFETMn1のゲート容量の電荷がNチャネルMOSFETMn1のゲート容量とNチャネルMOSFETMn2のゲート容量に再分配されて、NチャネルMOSFETMn2によるある程度の電流の引き込みが瞬時に開始される。その後、電流源34の電流Ibdにより2つのゲート容量の充電が行われるが、これは一方のNチャネルMOSFETMn2のゲート容量を充電する量の電荷だけを供給すればよいため、充電時間も短くできる。すなわち、特許文献2の場合、引き込み電流はゼロから徐々に増加する形となるが、本実施の形態では瞬間的にあるレベルの電流の引き込みが開始されるため、その後の所定の電流値を引き込むまでの時間も短縮することができる。
【0029】
反対に、指令信号DNがLレベルになると、その反転された指令信号DNbはHレベルとなって、NチャネルMOSFETMn4が導通してNチャネルMOSFETMn3が遮断する。そのため、NチャネルMOSFETMn2のゲート電位が接地電位と等しくなって、そこには電流が流れない。また、NチャネルMOSFETMn1のゲート電位は、電流源34からの電流Ibdを流すのに必要なレベルを保ったままとなる。
【0030】
なお、指令信号UP,DNがともにLレベルであれば、2つのカレントミラー回路はいずれも動作しない。
図2は、第2の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
【0031】
ここでは、第1のカレントミラー回路における第1のPチャネルMOSFETMp1のゲート電極と電源VDDの間にコンデンサCuを設け、同様に、第2のカレントミラー回路における第1のNチャネルMOSFETMn1のゲート電極と接地の間にコンデンサCdを設けている。これにより、図1のチャージポンプ回路に比較して、さらに2つのカレントミラー回路の電流の立ち上がりが早くなる。
【0032】
すなわち、PチャネルMOSFETMp3もしくはNチャネルMOSFETMn3が導通した瞬間にPチャネルMOSFETMp2もしくはNチャネルMOSFETMn2のゲート容量に分配される電荷が多くなり、PチャネルMOSFETMp3もしくはNチャネルMOSFETMn3が導通した直後にPチャネルMOSFETMp2もしくはNチャネルMOSFETMn2が流れる電流を第1の実施の形態の場合より大きくすること、すなわち最終値に近づけることができる。ここで、コンデンサCu,Cdの容量を大きくするほど、PチャネルMOSFETMp3もしくはNチャネルMOSFETMn3が導通した直後にPチャネルMOSFETMp2もしくはNチャネルMOSFETMn2が流れる電流を最終値に近くすることができる。
【0033】
したがって、後段に接続されるループフィルタ4での応答特性が改善され、小さな面積の回路で誤動作の少ないPLL回路を実現することができる。
図3は、第3の実施の形態に係るチャージポンプ回路を示す回路図である。
【0034】
ここでは、第1のカレントミラー回路における第1のPチャネルMOSFETMp1のゲート電極と第3のPチャネルMOSFETMp3のドレイン電極との間をボルテージフォロアアンプX1uで接続し、同様に、第2のカレントミラー回路における第1のNチャネルMOSFETMn1のゲート電極と第3のNチャネルMOSFETMn3のドレイン電極との間をボルテージフォロアアンプX1dで接続している。PチャネルMOSFETMp3,NチャネルMOSFETMn3が導通すると、これらのボルテージフォロアアンプX1u,X1dは、電流源32,34より大きな電流駆動能力でPチャネルMOSFETMp2,NチャネルMOSFETMn2のゲート容量を充電するので、ミラー電流の立ち上がりの遅れをなくすことができる。
【0035】
いずれの実施の形態においても、カレントミラー回路は簡易な回路構成で実現することができるだけでなく、充放電電流の立ち上がりを高速にし、かつ誤動作のおそれがないチャージポンプ回路が提供できる。
【符号の説明】
【0036】
1 PLL回路
2 位相比較器
3 チャージポンプ回路
4 ループフィルタ
5 電圧制御発振器
31,33 定電流回路
32,34 電流源
Cpp,Cpn 寄生容量
Mn0〜Mn4 NチャネルMOSFET
Mp0〜Mp4 PチャネルMOSFET
X1u,X1d ボルテージフォロアアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段に接続された位相比較器の指令信号に応じて後段に接続されたループフィルタに電流を供給するチャージポンプ回路において、
ダイオード接続され定電流が供給される第1のPチャネルMOSFET、第2のPチャネルMOSFET、および第1の信号でゲートが駆動され、前記第1のPチャネルMOSFETと前記第2のPチャネルMOSFETの各ゲート間を接続する第3のPチャネルMOSFETからなる第1のカレントミラー回路と、
前記第1の信号を反転した信号でゲートが駆動され、前記第2のPチャネルMOSFETのゲートと第1の電源の間を接続する第4のPチャネルMOSFETと、
ダイオード接続され定電流が供給される第1のNチャネルMOSFET、第2のNチャネルMOSFET、および第2の信号でゲートが駆動され、前記第1のNチャネルMOSFETと前記第2のNチャネルMOSFETの各ゲート間を接続する第3のNチャネルMOSFETからなる第2のカレントミラー回路と、
前記第2の信号を反転した信号でゲートが駆動され、前記第2のNチャネルMOSFETのゲートと第2の電源の間を接続する第4のPチャネルMOSFETと、
を備え、前記第2のPチャネルMOSFETと前記第2のNチャネルMOSFETの各ドレインを接続して出力端子としたことを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
前記第1のカレントミラー回路には、前記第1のPチャネルMOSFETのゲートと前記第1の電源の間に第1のコンデンサが設けられ、
前記第2のカレントミラー回路には、前記第1のNチャネルMOSFETのゲートと前記第2の電源の間に第2のコンデンサが設けられていることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
前記第1のカレントミラー回路には、前記第1のPチャネルMOSFETのゲートと前記第3のPチャネルMOSFETの間に第1のボルテージフォロア回路が設けられ、
前記第2のカレントミラー回路には、前記第1のNチャネルMOSFETのゲートと前記第3のNチャネルMOSFETの間に第2のボルテージフォロア回路が設けられていることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9993(P2012−9993A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142426(P2010−142426)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】