説明

チュービングポンプ構造

【課題】 チューブのへたりを抑え、且つ、部品点数の少ないチュービングポンプ構造を提供する。
【解決手段】 チュービングガイド10a、10bと、段部5’を設けたバックプレート5と、単一部材からなるシャトル7と、から構成される吐出機構を有するチュービングポンプ駆動部1により、チューブ押圧時には完全密閉せず、チューブ開放時にはチュービングガイド10a、10bでチューブの外形を復元し、チューブのへたりを抑え、且つ、シャトル7を単一部材で構成することにより、部品点数の少ないチュービングポンプの提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブを押圧し、輸液を行うチュービングポンプ駆動部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液を行うチュービングポンプにおいて、その吐出方式の一例として、蠕動(ペリスタルティックフィンガー)方式が用いられてきた。この蠕動方式とは、チューブの長手方向に沿って個別駆動されるフィンガーを複数備え、前記フィンガーで前記チューブを順次押圧して輸液を行うものである。
【0003】
図5は、チューブにおける流路の上流部と下流部にバルブを設け、その上流部バルブと下流部バルブとの間に、複数の谷形状を有するスライド部材を設け、前記スライド部材と同形状のバックプレートを反転配置し、噛み合わせ、スライド運動させることにより、チューブを押圧し、輸液を行う方式を示すものである(特許文献1)。また、図6では蠕動方式のチュービングポンプにおいて、第1フィンガーと第nフィンガーを完全圧閉可能とし、第2〜第(n−1)フィンガーを順次中間圧閉させることにより、輸液を行う方式を示すものである(特許文献2)。さらに、図7は、同様に蠕動方式のチュービングポンプではあるが、複数あるフィンガーに各々クランプを設け、チューブを押圧しないときは前記クランプによりチューブの形状を復元させるチュービングポンプ構造が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】EP426273B1
【特許文献2】特開平09−151856
【特許文献3】実登3060192
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3のような従来の蠕動(ペリスタルティックフィンガー)方式のチュービングポンプでは、複数のフィンガーを備えなくてはならず、その複数のフィンガーを順次完全圧閉していくことにより、チューブのへたりも大きい。また、特許文献1、2のような複数のフィンガーや複数の谷形状を有するスライド部材を用いてチューブを押圧する場合、各々の部材の加工精度のばらつきにより、そのストローク量にもばらつきが生じてしまい、安定した吐出を行えなくなってしまう。
【0005】
したがって、本発明は、上記の問題点を解決し、チューブのへたりを抑制し、部品点数の低減を可能としたチュービングポンプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、流路の上流部と下流部でチューブを完全密閉するバルブと、チューブの形状を復元するチュービングガイドと、断面略T字状の段部を設けたバックプレートと、往復運動することによりチューブを押圧する単一部材からなるシャトルと、前記バルブと前記チューブガイドと前記シャトルとが連動するように接続されたカムシャフトと、から構成され、前記チュービングガイドは、前記シャトルが上死点まで上昇し、チューブを押圧するときは左右に開き、前記バックプレートに形成された前記段部に収まり、前記シャトルが下死点まで下降するときは、チューブ形状を復元する方向へ前記チューブを押圧することを特徴とするチュービングポンプ駆動部である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、流路の上流部と下流部にバルブを備えることにより、シャトルが押圧するチューブを完全密閉する必要が無くなる。また、チュービングガイドと、段部を設けたバックプレートを備えることにより、シャトル下降時には、シャトルはチューブを開放し、チュービングガイドがチューブ形状を復元し、チューブのへたりを低減することが可能となり、シャトル上昇時には、シャトルはチューブを押圧するが、チュービングガイドはバックプレートの段部に収められる。且つ、チューブを押圧するシャトルを単一部材で形成することにより、部品点数の低減を可能にし、部品加工精度に影響を受けない流量精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態として、ポンプ駆動部1においてドア3を閉じた状態の外観斜視図を図1(a)に示す。また、ポンプ駆動部1においてドア3を開いた状態の外観斜視図を図1(b)に示す。ここで、本発明のポンプ駆動部1は、ボックス2、ドア3、ベース4、バックプレート5、上流バルブ6a、シャトル7、上流バルブ用カム8a、カムシャフト9、チュービングガイド10a、10b、および後述される下流バルブ6b、下流バルブ用カム8b、とから構成される。
【0009】
このとき、前記ドア3はヒンジ部を介し、前記ボックス2に開閉自在に係止されており、前記ベース4には、チューブをセットする溝部11a、11bが形成され、また、前記バックプレート5は前記ドア3に組込まれ、段部5’が設けられる。
【0010】
また、図1における前記ポンプ駆動部1の上面図を図2(a)、そのP−P断面を図2(b)、前記ポンプ駆動部1の側面図を図3(a)、そのQ−Q断面を図3(b)にそれぞれ示す。
【0011】
この図2(b)で示す通り、前記ボックス2内には前記シャトル7と、前記チュービングガイド10a、10bと、前記カムシャフト9に連動したシャトル用カム8cと、前記シャトル7の往復運動を規制するシャトルガイド12が備えられている。
【0012】
このとき、前記ベース4には切欠部4’が形成され、前記チュービングガイド10a、10bには、突起部10a’、10b’が形成される。前記シャトル7に組みつけられた前記チュービングガイド10a、10bは、前記シャトルの上下運動により、前記突起部10a’、10b’が前記ベース4と干渉し、その切欠部4’をガイドとし、開閉運動を行うことが可能である。
【0013】
また、図3(b)で示す通り前記ボックス2の両側には上流バルブ6a、下流バルブ6bが備えられ、それぞれ上流バルブ用カム8a、下流バルブ用カム8bを備え、前記ボックス2内を貫通する前記カムシャフト9を介して、前記シャトル用カム8cとともに連動する。
【0014】
以上の構成により、本発明のポンプ駆動部1では、前記ドア3を開け、前記ベース4に形成された溝部11a、11bおよび、前記チュービングガイド10a、10bにより構成された溝にチューブをセットし、前記カムシャフト9と、前記上流バルブ用カム8a、前記下流バルブ用カム8b、前記シャトル用カム8cで連動する、前記上流バルブ6a、前記下流バルブ6b、前記シャトル7で、チューブを押圧することによって、チューブ内の液体を輸液する。
【0015】
このとき、前記上流バルブ6a、前記下流バルブ6b、前記シャトル7は以下のように連動する。まず、前記シャトル7が下死点に下降すると、前記下流バルブ6bが閉塞され、次に前記上流バルブ6aが閉塞される。次に、前記下流バルブ6bを開放して、前記シャトル7が上死点まで上昇し、チューブを押圧する。そして再度前記下流バルブ6bを閉塞し、前記上流バルブ6aを開放し、前記シャトル7は下死点まで下降する。この行程を繰り返すことにより、輸液を行う。
【0016】
また、図4に、チュービングガイドによるチューブ形状の復元を行う行程を示す。まず、図4(a)では、シャトル7が下死点にあり、同図(a)〜(c)のように前記シャトル7が上昇し、チューブを矢印R方向に押圧する。このとき前記チュービングガイド10a、10bはシャフト13を支点とし、バックプレート5によるチューブの押圧を妨げないように左右に開く。そして、図4(c)において、シャトル7が上死点に達すると、前記チュービングガイド10a、10bは、前記バックプレート5に形成された段部5’に収められる。次に、同図(c)〜(a)のように前記シャトル7が下降すると、前記チュービングガイド10a、10bが閉じ始め、チューブ形状を復元する方向へチューブを押圧する。すなわち、チューブを圧閉する方向と垂直になる方向へチューブを押圧し、チューブ形状の復元を図ることができる。
【0017】
以上より、チューブの復元と部品点数の低減を同時に図り、安定した吐出を行うポンプ駆動部を製作することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、チューブを復元するチュービングガイドを備え、且つ、チューブを押圧するシャトルが単一部材で形成されることにより、チューブのへたりを抑え、部品点数の少ないチュービングポンプを提供することができるため、高精度、長寿命化、更には、コスト削減といった効果を要求される医療用ポンプ等に利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)本発明のポンプ駆動部においてドアを閉じた状態の外観斜視図である。 (b)本発明のポンプ駆動部においてドアを開いた状態の外観斜視図である。
【図2】(a)本発明のポンプ駆動部における図1の上面図である。 (b)図2(a)におけるP−P断面図である。
【図3】(a)本発明のポンプ駆動部における図1の側面図である。 (b)図3(a)におけるQ−Q断面図である。
【図4】本発明のポンプ駆動部におけるチューブの押圧工程の説明図である。
【図5】特許文献1における、従来のチュービングポンプ構造の説明図である。
【図6】特許文献2における、従来のチュービングポンプ構造の説明図である。
【図7】特許文献3における、従来のチュービングポンプ構造の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ポンプ駆動部
2 ボックス
3 ドア
4 ベース
4’ 切欠部
5 バックプレート
5’ 段部
6a 上流バルブ
6b 下流バルブ
7 シャトル
8a 上流バルブ用カム
8b 下流バルブ用カム
8c シャトル用カム
9 カムシャフト
10a,10b チュービングガイド
10a’,10b’ 突起部
11a,11b 溝部
12 シャトルガイド
13 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の上流部と下流部でチューブを完全密閉するバルブと、
チューブの形状を復元するチュービングガイドと、
断面略T字状の段部を設けたバックプレートと、
往復運動することによりチューブを押圧する単一部材からなるシャトルと、
前記バルブと前記チューブガイドと前記シャトルとが連動するように接続されたカムシャフトと、から構成され、
前記チュービングガイドは、前記シャトルが上死点まで上昇し、チューブを押圧するときは左右に開き、前記バックプレートに形成された前記段部に収まり、前記シャトルが下死点まで下降するときは、チューブ形状を復元する方向へ前記チューブを押圧することを特徴とするチュービングポンプ駆動部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−23803(P2007−23803A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203268(P2005−203268)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】