説明

チューブ状ポリイミドベルトの製造法

【課題】円筒状または棒状基材外表面上に純粋のポリアミック酸溶液ではなく、溶剤可溶性ポリイミド共重合体溶液を塗布して用いることにより、ポリイミド化焼成温度を低下せしめることを可能とすると共に、膜厚が均一で表面発泡のみられないチューブ状ポリイミドベルトの製造法を提供する。
【解決手段】溶剤可溶性ポリイミド共重合体の可溶性溶剤溶液を、円筒状または棒状基材外表面に塗布した後、250℃までの加熱乾燥およびベルト化焼成する工程において、150〜250℃での定速昇温工程を含み、かつ定速昇温の所定時間が30〜300分である工程を経て、チューブ状ベルトを形成させ、チューブ状ポリイミドベルトを製造する。ポリイミド共重合体溶液に導電性微粒子を分散させたポリイミド共重合体溶液を用いた場合には、半導電性を示すチューブ状ポリイミドベルトを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状ポリイミドベルトの製造法に関する。さらに詳しくは、中間転写体等として有効に用いられるチューブ状ポリイミドベルトの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、感光ドラム等の像担持体上に記録材で形成されたトナー像を直接または中間転写体を介して紙等の記録媒体に転写してから定着させることにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、像担持体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙等の記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとしては、例えばポリイミド系樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させたポリイミド系樹脂成形体が提案されている。
【特許文献1】特開2001−354782号公報
【0004】
また、ポリイミド無端ベルトを画像形成装置の転写、定着ベルトとして用いることも提案されている。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写させた後、この中間転写体を直接的または間接的に加熱することにより、接触している記録媒体に定着させる方法であり、加熱部が瞬時に所定の温度に達し、電源の投入から定着可能温度に達するまでの待ち時間がなく、また消費電力も少ないというすぐれた特徴がみられる。
【特許文献2】特開2006−213024号公報
【特許文献3】特開2005−17586号公報
【0005】
このような中間転写および定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐え得る物理的強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐えられることが要求される。このことから、中間転写および定着ベルトに用いられる材料としては、高い物理的強度と耐熱性とを併せ持つポリイミド系樹脂が適している。
【0006】
ポリイミド系樹脂の多くは、一般には有機溶媒不溶性であるため、その前駆体であるポリアミック酸の有機溶媒溶液を塗布し、乾燥、焼成してアミック酸基の脱水イミド化反応を行って、ポリイミド樹脂として使用している。このイミド転化反応は、一般的には約300〜400℃程度の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点で問題がみられた。また、ポリアミック酸の脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により、膜厚の均一性がとれないという問題があり、金型からの脱型が難しいなどの問題もある。
【0007】
さらに、ポリイミド系樹脂製定着ベルト等として使用する際には、転写画像に白抜けが発生し難くするために、その表面抵抗値の低いものが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、円筒状または棒状基材外表面上に純粋のポリアミック酸溶液ではなく、溶剤可溶性ポリイミド共重合体溶液を塗布して用いることにより、ポリイミド化焼成温度を低下せしめることを可能とすると共に、膜厚が均一で表面発泡のみられないチューブ状ポリイミドベルトの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、溶剤可溶性ポリイミド共重合体の可溶性溶剤溶液を、円筒状または棒状基材外表面に塗布した後、250℃までの加熱乾燥およびベルト化焼成する工程において、150〜250℃での定速昇温工程を含み、かつ定速昇温の所定時間が30〜300分である工程を経て、チューブ状ベルトを形成させるチューブ状ポリイミドベルトの製造方法によって達成される。ポリイミド共重合体溶液に導電性微粒子を分散させたポリイミド共重合体溶液を用いた場合には、半導電性を示すチューブ状ポリイミドベルトを得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法によれば、円筒状または棒状基材外表面上に従来用いられていた純粋のポリアミック酸溶液ではなく、溶剤可溶性ポリイミド共重合体溶液を塗布して用いることにより、加熱乾燥およびポリイミド化焼成工程温度を250℃以下に迄低下せしめることを可能としており、ただしこの工程は150〜250℃での定速昇温工程を含み、かつ定速昇温の所定時間を30〜300分間と設定することにより、膨れなどを生じない、すなわちベルト膜品質のバラツキや体積収縮のないチューブ状ポリイミドベルトの製造を可能とする。形成されたチューブ状ポリイミドベルトの表面には、膨れが観察されず、膜厚が均一で表面発泡のみられないものが容易に得られる。
【0011】
さらに、ポリイミド共重合体溶液にカーボンブラック等の導電性微粒子を分散させたポリイミド共重合体溶液を用いた場合には、100Vにおける表面抵抗値が108Ω/cm2以下である半導電性チューブ状ポリイミドベルトを得ることができる。かかる半導電性チューブ状ポリイミドベルトは、表面抵抗値が低いため、転写画像に白抜けが発生し難く、しかも転写、運搬等の機能が良好で耐久性にもすぐれているので、中間転写体として、それを加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる中間転写および定着方式に有効に用いられる。
【0012】
かかる半導電性ベルトは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリまたはこれらの複合装置といった画像形成装置の中間転写ベルト、定着ベルト等として有効に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明方法で用いられる溶剤可溶性ポリイミド共重合体を形成させることは、本出願人の出願に係る特許文献4記載の方法にしたがって行われる。
【特許文献4】WO 01/029136
【0014】
ポリイミド共重合体は、(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物と(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾイミダゾールとの共重合体または(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物および(B)3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物よりなる2種類のテトラカルボン酸二無水物と(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾールとの共重合体よりなる。
【0015】
ポリイミド共重合体のテトラカルボン酸二無水物としては、イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物

またはこれと3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物

との混合物が用いられる。
【0016】
(A)成分と(B)成分とが併用される場合には、(B)成分は(A)成分との混合物中約90モル%以下、好ましくは約80モル%以下の割合で用いられる。(B)成分がこれ以上の割合で用いられると、相対的に(A)成分量が約10モル%以下となり、得られるポリイミド共重合体の有機溶媒溶解性が低下するようになる。
【0017】
これらのテトラカルボン酸二無水物と反応するジアミンとしては、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール

が用いられる。
【0018】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒中でも行われるが、好ましくはm-クレゾール等の極性溶媒中で行われる。実際には、テトラカルボン酸二無水物の極性溶媒溶液中に、約0〜60℃の温度を保ち、攪拌しながら、ジアミンの極性溶媒溶液を滴下し、滴下終了後約0〜60℃の温度で約0.5〜5時間程度攪拌条件下に反応させる。このような反応によってポリアミック酸が生成するものと考えられ、環化脱水反応によるポリイミド化反応を進行させるために、反応の後半において約100〜200℃、好ましくは約150〜200℃での加熱が攪拌条件下で約2〜8時間程度行われる。なお、テトラカルボン酸二無水物溶液中には、触媒としての安息香酸等が添加されて反応に用いられる。
【0019】
テトラカルボン酸二無水物(A)とジアミン(C)との反応により、次のような繰り返し単位を有するポリイミド共重合体が得られる。

また、テトラカルボン酸二無水物(A)と共に(B)を用いた場合には、ジアミン(C)との反応により、上記繰り返し単位に加えて、次のような繰り返し単位を有するポリイミド共重合体が得られる。

【0020】
このようにして得られる溶剤可溶性ポリイミド共重合体は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、m-クレゾール等の可溶性溶剤に可溶性であるので、共重合反応に用いられた反応溶媒がそのまま用いられ、ポリイミド共重合体の可溶性溶剤溶液として用いられる。
【0021】
ポリイミド溶液の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、成形体としての特性発現のために高分子量であり、かつ加工可能な濃度とするためには、約5〜50重量%であることが好ましく、特に約10〜30重量%が好適である。固形分濃度が約5重量%未満では重合度が低く、最終的に得られる成形体の強度が低下し易くなる。一方、固形分濃度が約50重量%を超えると、溶剤溶液に不溶部分が生じ、ポリイミド化反応が進行し難くなる。
【0022】
このようにして形成されるポリイミド共重合体溶剤溶液(塗工液)は、円筒状または棒状基材外表面に塗布した後、250℃までの加熱乾燥およびベルト化焼成工程が適用される。
【0023】
塗工液がその外表面側に塗布される円筒状または棒状基材としては、円筒形金型が好ましいが、金型の代りに樹脂製、ガラス製、セラミックス製等の任意の素材の円筒体または棒状体を用いることができる。これらの基材表面には、形成されたチューブ状ベルトが剥離し易いように、予め離型剤の塗布または離型層の形成をしておくことが好ましい。円筒状金型への塗工液の塗布段階で、均一な塗工液厚みの制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型等を用いなくともよい。
【0024】
次に、塗工液を塗布した円筒状金型を約70〜150℃程度の加熱状態に置き、そこに含有される溶媒を揮発させるための乾燥処理が行われる。この過程では、雰囲気の蒸気である揮発した溶媒等を効率よく循環して取り除くことが好ましいが、塗膜中に溶媒が残留しても格別問題はなく、塗膜表面が乾燥し、自己支持性のある膜が得られる状態であればよい。この乾燥処理は、例えば70℃-20分間、90℃-20分間、110℃-25分間および150℃-20分間というように段階的に行うことが好ましい。
【0025】
その後行われるベルト化焼成工程においては、150〜250℃での定速昇温工程を含み、かつ定速昇温の所要時間が30〜300分である工程がとられる。したがって、その昇温速度は3.3℃/分〜0.33℃/分に設定され、これよりも高い昇温速度でベルト化のための焼成を行うと、形成されたチューブ状ポリイミドベルトに膨れなどを生ずるようになる。
【0026】
塗工液であるポリイミド共重合体溶液には、その固形分100重量部当り約1〜20重量部、好ましくは約2〜5重量部の導電性微粒子を分散させたものを用いることができ、その場合には半導電性を示すチューブ状ポリイミドベルトを形成させることができる。
【0027】
導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の酸化金属系微粒子、短繊維、ガラス等の非導電性微粒子の表面を金属または酸化金属でコートしたものなどが用いられ、分散の容易性の点からは、非金属系であるカーボンブラックが好んで用いられる。
【0028】
カーボンブラックは、粒子径、DBP吸収量、揮発分、比表面積、pHなどの特性項目が種々異なった種類が存在し、それらの違いによるストラクチャーの形成状況や挙動が異なり、結果として導電性にレベル、分散性、樹脂との相溶性などが決まってくる。一般には、ファネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックと大別されるカーボンブラックの内、ファネスブラックが好んで用いられ、その粒径は約1〜100nm程度であることが好ましい。
【0029】
実際には、市販品である東海カーボン製品#4300、#5500、三菱化学製品#3030B、#3350B、ライオン製品ケッチエンブラックECP600JD等の少なくとも一種が用いられる。これらのカーボンブラックは、好ましくはポリイミド溶液形成に用いられたものと同じ溶媒中に、約5〜30重量%の固形分濃度で分散させた分散液として、ポリイミド溶液に添加されて用いられる。
【0030】
導電性微粒子を分散させたあるいはさせないポリイミド溶液である塗工液中には、得られるポリイミドベルトの補強材として、シリカ、マイカ、タルク、ウィスカー、硫酸バリウム等の絶縁性無機粉体を、ポリイミドの固形分100重量部当り約5〜60重量部を含有せしめることができる。さらに、必要に応じて、分散剤、補強剤、消泡剤、滑剤等の加工助剤を添加して用いることもできる。
【0031】
ベルト化焼成処理後、形成されたチューブ状ベルトをエアー注入などの方法により脱型することにより、ポリイミドベルトが得られる。ポリイミドベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値の観点から好ましくはなく、逆に薄すぎるとその靱性が小さくなりすぎるため好ましくない。したがって、ポリイミドベルトの用途を考慮すると、形成されるベルトの厚さは約5〜1000μm、好ましくは約30〜150μmであることが望ましい。また、チューブ状ポリイミドベルトの長さは、一般には円筒状金型の長さによって左右されるが、これらの一連の操作を連続的に行うことによって、無端のチューブ状ポリイミドベルトを形成させることも可能である。また、その径は、用途によっても異なるが、一般にチューブ径として約15〜100mm、好ましくは約20〜80mm程度とされる。
【実施例】
【0032】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0033】
実施例1
窒素置換雰囲気中の攪拌装置を備えた容量1Lの四口フラスコ中の
イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物 52.0g(0.1モル)
安息香酸10g含有m-クレゾール(421.6ml)溶液
に、
6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール 22.4g(0.1モル)
を30℃を超えないようにして仕込み、室温条件下で1時間攪拌した後200℃まで昇温させ、この温度で5時間攪拌して、ポリイミド溶液A 447gを得た。
【0034】
このようにして得られたポリイミド溶液Aを、内径56mm、外径60mm、長さ300mmの円筒形金型の外表面に均一に塗布した。次いで、円筒形金型を回転させながら、温度70℃-20分間、90℃-20分間、110℃-25分間および150℃-20分間の乾燥処理を行った後、250℃-60分間(250℃までの昇温速度2℃/分、昇温時間50分間)での焼成を行った。その後室温に戻し、円筒形金型から脱型してチューブ状ポリイミドベルトを得た。形成されたチューブ状ポリイミドベルトの表面には、膨れが観察されず、膜厚が均一で表面発泡のみられないものであった。
【0035】
実施例2
窒素置換雰囲気中の攪拌装置を備えた容量1Lの四口フラスコ中の
イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物 26.0g(0.05モル)
3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 16.1g(0.05モル)
安息香酸8.9g含有m-クレゾール(365.5ml)溶液
に、
6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール 22.4g(0.1モル)
を30℃を超えないようにして仕込み、室温条件下で1時間攪拌した後200℃まで昇温させ、この温度で5時間攪拌して、ポリイミド溶液B 415gを得た。
【0036】
このようにして得られたポリイミド溶液Bを用い、実施例1と同様にして、円筒形金型への塗布、加熱および金型からの脱型を行ってチューブ状ポリイミドベルトを得た。形成されたチューブ状ポリイミドベルトの表面には、膨れが観察されず、膜厚が均一で表面発泡のみられないものであった。
【0037】
実施例3
実施例2において、ポリイミド溶液Bを円筒形金型に塗布し、乾燥処理、溶媒除去および焼成を同様にして行った。ただし、250℃までの昇温時間を1℃/分、昇温時間を100分間に変更した。焼成時室温に戻し、円筒形金型から脱型してチューブ状ポリイミドベルトを得た。形成されたチューブ状ポリイミドベルトの表面には、膨れが観察されず、膜厚が均一で表面発泡のみられないものであった。
【0038】
実施例4
窒素置換雰囲気中の攪拌装置を備えた容量1Lの四口フラスコ中の
6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール 22.4g(0.1モル)
イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物 26.0g(0.05モル)
N-メチル-2-ピロリドン 219.0ml
を仕込み、190℃まで昇温して4時間攪拌した後、冷却して室温まで戻し、
3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 16.1g(0.05モル)
N-メチル-2-ピロリドン 146.5ml
を加え、室温で1時間攪拌した後190℃まで昇温し、この温度で6〜8時間攪拌を継続し、ポリイミド溶液C 418gを得た。
【0039】
このようにして得られたポリイミド溶液Cを用い、実施例1と同様にして、円筒形金型への塗布、加熱および金型からの脱型を行ってチューブ状ポリイミドベルトを得た。形成されたチューブ状ポリイミドベルトの表面には、膨れが観察されず、膜厚が均一で表面発泡のみられないものであった。
【0040】
比較例1
実施例2において、ポリイミド溶液Bを円筒形金型に塗布し、乾燥処理、溶媒除去および焼成を同様にして行った。ただし、250℃までの昇温時間を4℃/分、昇温時間を25分間に変更した。焼成後室温に戻すと、円筒形金型外表面上のチューブ状ポリイミドベルトには膨れが発生し、均一なベルトを得ることができなかった。
【0041】
実施例5
カーボンブラック(ライオン製品ケッチエンブラックECP600JD)3gを、ホモジナイザを用いてN-メチル-2-ピロリドン97g中に分散させたカーボンブラック分散液を調製した。このカーボンブラック分散液を、実施例1で用いられたポリイミド溶液A 200g中に投入し、30分間攪拌して、カーボンブラック分散ポリイミド溶液Aを得た。このカーボンブラック分散ポリイミド溶液Aを用い、実施例1と同様にして、チューブ状ポリイミドベルトを得た。
【0042】
また、得られたポリイミドベルトを温度23℃、湿度60%RHの環境下に4時間放置した後、この環境下でHEWLETT PACKARD社製HIGH RESISTANCE METER 4339Aを用い、100Vにおける表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0043】
実施例6
実施例5において、実施例2で用いられたポリイミド溶液Bを用い、カーボンブラック分散ポリイミド溶液Bを調製し、それを用いてチューブ状ポリイミドベルトを得た。得られたポリイミドベルトについて、実施例5と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0044】
実施例7
実施例5において、実施例2で用いられたポリイミド溶液Bを用い、カーボンブラック分散ポリイミド溶液Bを調製し、それを用いて実施例3と同じ製造条件下でチューブ状ポリイミドベルトを得た。得られたポリイミドベルトについて、実施例5と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0045】
実施例8
実施例5において、実施例4で用いられたポリイミド溶液Cを用い、カーボンブラック分散ポリイミド溶液Cを調製し、それを用いてチューブ状ポリイミドベルトを得た。得られたポリイミドベルトについて、実施例5と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0046】
比較例2
実施例2で得られたポリイミドベルトについて、実施例5と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は1014Ω/cm2以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤可溶性ポリイミド共重合体の可溶性溶剤溶液を、円筒状または棒状基材外表面に塗布した後、250℃までの加熱乾燥およびベルト化焼成する工程において、150〜250℃での定速昇温工程を含み、かつ定速昇温の所定時間が30〜300分である工程を経て、チューブ状ベルトを形成させることを特徴とするチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項2】
ポリイミド共重合体溶液にその固形分100重量部当り1〜20重量部の導電性微粒子を分散させたポリイミド共重合体溶液が用いられる請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項3】
溶剤可溶性ポリイミド共重合体が、(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物またはそれと(B)3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とかなる1種類または2種類の芳香族テトラカルボン酸二無水物および(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾールとの共重合体である請求項1または2記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項4】
(A)成分10〜100モル%に対し(B)成分が90〜0モル%の割合で2種類の芳香族テトラカルボン酸二無水物が用いられた請求項3記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項5】
請求項2記載の方法で製造された半導電性を示すチューブ状ポリイミドベルト。
【請求項6】
100Vにおける表面抵抗値が108Ω/cm2以下である請求項5記載の半導電性チューブ状ポリイミドベルト。
【請求項7】
中間転写体として、それを加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる中間転写および定着方式に用いられる請求項6記載の半導電性チューブ状ポリイミドベルト。

【公開番号】特開2010−105258(P2010−105258A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279119(P2008−279119)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】