説明

チューリパリンコポリマー

α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、メタクリル酸メチル、および任意にアクリロニトリル、から誘導される構造単位を含むコポリマーを、UV感受性基材材料を含む多層物品における保護層として用いることができる。その多層物品は、シリコーンハードコートを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本発明は、広く、α−メチレン−γ−ブチロラクトンと、メタクリル酸メチル、スチレン、および任意にアクリロニトリル、とのコポリマー、およびそれらから作られる物品に関する。
【0002】
チューリパリン(tulipalin)、すなわちα−メチレン−γ−ブチロラクトン(MBL)から作られるポリマーは、50年を超える間、知られている(US2,624,723)。
【0003】
【化1】

【0004】
MBLは、ホワイトチューリップ中に比較的高濃度で存在するので、チューリパリンと呼ばれる。そのホモポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が195℃の脆弱なガラス質の材料である(Macromolecules 12,546(1979))。そのモノマーは、メタクリル酸メチルの環状類似体として見ることができ、フリーラジカル重合における反応性は、メタクリル酸メチルに匹敵するかそれを超える(Akkapeddi et.al,Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition、v20,2819,(1982)、およびPolymer,vol20,1215,(1979))。フリーラジカル反応性が高いのは、おそらく分子の環のひずみによる。
【0005】
MBLは、容易にスチレンおよび(メタ)アクリレートモノマーと共重合し、(メタ)アクリレートエステル、アクリロニトリルおよびスチレンとのコポリマーが報告されている(Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,v20,2819(1982))。JP9033736は、MBLと(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマーを含む透明な耐熱性樹脂を開示している。US5,880,235は、鋳造ガラスおよび熱寸法安定性成形材料を製造するためのMBLコポリマーを開示している。US6,642,346は、自動車クリアコートおよびクリアコート仕上げ剤用のMBLコポリマーを含む組成物を開示している。この特許は、エキソメチレンラクトンまたはラクタムの導入により、仕上げ剤の傷およびひっかき抵抗性が向上することを開示している(カラム1、63−65行)。US6,723,790は、MBLコポリマーと他のポリマーとのブレンドを開示している。US6,841,627は、良好な光学特性および耐熱および耐候性を得るための、MBLグラフトコポリマー、およびそのコポリマーと熱可塑性樹脂とのブレンドを開示している。US2003/0130414は、装飾用シートおよび物品用の、アルミナ三水和物を充填したMBLコポリマーの組成物を記載している。この組成物は、耐熱性、硬度、ひっかきおよび傷抵抗性、抗菌特性、低熱膨張係数、高屈折率および高度の透明性を有している。高いTg、耐候性および耐溶媒性を有する、MBLとスチレンおよびメタクリル酸メチル(MMA)とのコポリマーを記載している参考文献はない。
【0006】
(簡単な説明)
MBLとスチレンおよびメタクリル酸メチルとのコポリマー、およびMBLとスチレン、メタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルとのコポリマーが、優れた耐候性およびかなり向上した耐溶媒性を有することが、予想外にも発見された。Tgは、スチレンおよびアクリロニトリルのみ(SAN)、または、スチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチル(MMA−SAN)を用いて作られた、対応するポリマーよりかなり高い。高耐候性の多層物品を、それらから構成することができる。
【0007】
従って、いくつかの態様において、本発明は、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、メタクリル酸メチル、および任意にアクリロニトリル、から誘導される構造単位を含むコポリマーに関する。このコポリマーは、約110℃〜約175℃、好ましくは約120℃〜約150℃の範囲のガラス転移温度を有する。
【0008】
他の態様において、本発明は、基材の上に配された少なくとも一つの保護層を含む多層物品に関する。この保護層は、UV吸収剤と;MBL、スチレン、メタクリル酸メチル、および任意にアクリロニトリル、から誘導される構造単位を含むMBLコポリマーとを含み、基材はUV感受性材料を含む。
【0009】
さらに他の態様において、本発明は、シリコーンハードコートと;MBLコポリマーを含む少なくとも一つの保護層と、UV感受性材料を含む基材とを含んでなる多層物品に関する。
【0010】
(詳細な説明)
一つの態様において、本発明は、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレンおよびメタクリル酸メチルから誘導される構造単位を含むコポリマー、およびα−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、メタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルから誘導される構造単位を含むコポリマーに関する。これらのコポリマーは、典型的には、ガラス転移温度が約110℃〜約175℃、特に約120℃〜約150℃の範囲である。MBLコポリマーにおいて、α−メチレン−γ−ブチロラクトンから誘導される構造単位の量は、約10重量%〜約75重量%、特に約20重量%〜約50重量%、さらには約20重量%〜約35重量%の範囲である。スチレンから誘導される構造単位の量は、約20重量%〜約80重量%、特に約20重量%〜約50重量%、さらには約25重量%〜約40重量%の範囲である。メタクリル酸メチルから誘導される構造単位の量は、約5重量%〜約50重量%、特に約10重量%〜約45重量%、さらには約15重量%〜約45重量%の範囲である。アクリロニトリルから誘導される構造単位を含むコポリマーにおいて、そのような単位の量は、5重量%〜約40重量%、特に約5重量%〜約35重量%である。全てのコポリマーについて、量が重量%で表される場合、その量はコポリマー合計重量を基準とする。MMA−SANポリマーにMBLを導入すると、典型的には、耐候性が向上し、同時にTgが上がり、耐薬品性が向上し、溶融加工時に黄色になることがない。
【0011】
スチレンおよび/または(メタ)アクリレートモノマーを重合するための既知の方法は、いずれもα−MBLコポリマーの調製に用いることができる。しかしながら、塊状重合法、およびγ−ブチロラクトン、トルエン、NMP、DMFおよびDMSOのような溶媒を用いる溶液重合法が、特に適している。
【0012】
他の態様において、本発明は、基材の上に配された保護層を含む多層物品に関する。保護層は、α−メチレン−γ−ブチロラクトンと、メタクリル酸メチル、スチレンおよび/またはアクリロニトリルとのコポリマー、特に、前述のようなMBLコポリマーを含む。保護層は、典型的には基材の上に直接配されるが、接着剤またはプライマー層を用いて、保護層を基材に積層することが望ましい場合もある。
【0013】
保護層は、充填剤(クレー、タルク等)、補強剤(ガラス繊維)、衝撃改質剤、可塑剤、流動促進剤、潤滑剤および他の加工助剤、安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤、難燃剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、および/またはUV吸収剤(UVA)のような添加剤を含んでもよい。適当なUVAとしては、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、シアノアクリレート、オキサニリド、ベンゾキサジノン;および粒径が約100nm未満である、酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛等の粒状無機材料が挙げられる。当該分野で知られており、「Plastics Additives Handbook」、5th edition、H.Zweifel編、Hanser Publishersのような標準的な参考文献に開示されている他のUVAを用いることもできる。UVAの混合物が特に効果的であり、特に、前記物質の混合物が効果的である。特定の態様において、UVAは、CIBA(登録商標)社からTINUVIN(登録商標)1577として販売されている2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシ−フェノールである。
【0014】
保護層で用いるUVAの量は、保護層中のポリマーの合計重量を基準として約0.0005重量%〜約10重量%、特に約0.001重量%〜約10重量%、さらには約0.1重量%〜約5重量%の範囲である。多層物品中の保護層の厚さは、典型的には、約2μ〜約2500μ、好ましくは約10μ〜約500μ、最も好ましくは約50μ〜約250μである。
【0015】
本発明の種々の態様における多層物品中で用いる基材は、UV照射に対して感光性、すなわちUVへの露光時になんらかの望ましくない変化を呈する材料である。望ましくない変化は、典型的には色の変化であるが、基材の化学的および機械的特性が影響を受けることもある。UV感光性材料としては、熱可塑性および熱硬化性のポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらのブレンドが挙げられる。適当な熱可塑性ポリマーとしては、ポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレート、ポリフェニレンエーテルのようなポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドのようなポリアリーレンスルフィド、ポリアミドイミドのようなポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトンのようなポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアミド、液晶ポリエステルのようなポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、およびポリエステルカーボネート、脂肪族オレフィンおよび官能化オレフィンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ(塩化ビニル−コ−塩化ビニリデン)、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のような(メタ)アクリレートポリマーおよびコポリマー)、ならびにアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)およびアクリロニトリル−スチレン(ASA)のようなビニル芳香族モノマーのポリマーおよびコポリマーが挙げられる。特に、基材は、一もしくは二以上のホモ−もしくはコ−ポリカーボネート、またはポリカーボネートのブレンド、あるいは、ポリカーボネートと他のポリマーとのブレンド、例えば、ポリカーボネートと、ポリエステル、ABSコポリマーまたはASAコポリマーとのブレンドであってよい。他の熱可塑性ポリマーがそこに存在してよいが、前述のポリマーまたはブレンドが、典型的には、その主要部分を構成する。
【0016】
適当なポリカーボネートとしては、下記式で示される構造単位を含むホモおよびコポリカーボネートがある。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、各A1およびA2は単環式2価アリール基であり、Zは架橋基であり、そのうちの一または二以上の炭素原子がA1とA2を分離させている。特に、A1とA2は、非置換フェニレンまたはその置換誘導体であってよく、架橋基Zはメチレン、シクロヘキシリデンまたはイソプロピリデンであってよい。さらに特に、ポリカーボネートは、ビスフェニールAポリカーボネートであってよい。ポリカーボネートは、コポリエステルカーボネートであってもよい。そのようなポリマーは、カーボネート単位に加えて、イソフタレートおよび/またはテレフタレートのような、芳香族ジカルボキシレート基に結合している−A1−Z−A2−部分を有するエステル単位を含む。適当なポリエステルとしては、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特に、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(PETG)およびポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)が挙げられる。
【0019】
適当なポリアリーレートは、芳香族ジヒドロキシ化合物および芳香族ジカルボン酸化合物から誘導される構造単位、特にビスフェノールAおよび/またはレゾルシノールと組み合わせたテレフタレートおよび/またはイソフタレート構造単位から誘導される構造単位を含む。適当なポリエーテルイミドが、米国特許第3,803,085および3,905,942に記載されている。
【0020】
前記ポリマーのいずれかのブレンドを用いることもできる。これらには、熱硬化性ポリマーと、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリエステルのような熱可塑性ポリマーとのブレンドが挙げられる。熱可塑性ポリマーは、典型的には硬化前の熱硬化性モノマー混合物と組み合わされる。セルロース性材料と熱硬化性および/または熱可塑性ポリマーとのブレンドも含まれる。
【0021】
ポリマー材料を含む基材は、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラス繊維または球状物、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、焼成クレー、タルク、カオリン、アスベスト、セルロース、木粉、コーク、綿および合成織物繊維のような充填剤、特にガラス繊維および炭素繊維のような補強性充填剤、ならびに金属フレーク、ガラスフレークおよびビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、および有機、無機または有機金属性であってよい染料および顔料のような着色剤、を混入してもよい。
【0022】
多層物品は、溶媒からのコーティング、フィルムラミネーション、異形押し出し、シート押し出し、共押し出し、押し出しブロー成形および熱成形、および射出成形のような種々の既知の方法により調製することができる。例えば、保護層と基材を共押し出しして、多層物品を形成してもよい。
【0023】
一部の態様において、多層物品は、さらに保護層の上に配されたシリコーンハードコートを含んでよい。この場合、MBLコポリマーをシリコーンハードコート用のプライマーとして用いてよい。シリコーンハードコートと共に用いるMBLコポリマーは、MBLから誘導された構造に加えて、他のビニルモノマーから誘導された構造単位を含む。適当なビニルモノマーとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、アクリル酸ジメチルアミノエチルおよびメタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルのような(メタ)アクリル酸およびそれらの誘導体、ならびにスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンおよびt−ブチルスチレンのような芳香族ビニル化合物が挙げられる。特に、前述のもののようなものを含む、MBLと、メタクリル酸メチル、スチレン、および/またはアクリロニトリルとのコポリマーを用いることができる。
【0024】
保護層/プライマーに接着すること以外に、用いてよいシリコーンハードコートのタイプに関して制限はない。従って、塩基性、中性または酸性コロイド状シリカから調製される被覆を用いてよい。MBLコポリマーを保護層/プライマーとして用いる場合に使用可能なシリコーンハードコートとしては、例えば、コロイド状シリカと、式:RSi(OR)37(式中、各Rは独立して、炭素数1〜3のアルキル基、または置換もしくは非置換芳香族基;好ましくはメチル基である)で示されるトリアルコキシシランまたはトリアルコキシシランの混合物との水性分散液を加水分解することにより調製されるものがある。ハードコートは、相溶性紫外線吸収剤、およびポリシロキサンポリエーテルコポリマーのような従来の添加剤を含んでもよい。増粘剤、顔料および染料のような他の添加剤も、従来用いられている目的で含まれてよい。適当なシリコーンハードコートの調製の説明を、U.S.4,373,061に見出すことができる。
【0025】
(定義)
本発明の文脈において、アルキルは、低級アルキルおよび高級アルキルなどの、直鎖状、分岐鎖状または環式炭化水素構造およびそれらの組み合わせを含むことが意図されている。好ましいアルキル基は、C20以下のものである。低級アルキルは、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ならびにn−、s−およびt−ブチルが挙げられる。高級アルキルは、炭素数7以上、好ましくは7〜20のアルキル基を意味し、n−、s−およびt−ヘプチル、オクチルおよびドデシルが挙げられる。シクロアルキルは、アルキルの下位概念であり、炭素数3〜8の環式炭化水素基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびノルボルニルが含まれる。
【0026】
アリールおよびヘテロアリールは、窒素、酸素または硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含む5−または6−員芳香族またはヘテロ芳香族環;窒素、酸素または硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含む9−または10−員芳香族またはヘテロ芳香族環系;または、窒素、酸素または硫黄から選択される0〜3個のヘテロ原子を含む13−または14−員芳香族またはヘテロ芳香族環系を意味する。芳香族6−〜14−員炭素環式環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリンおよびフルオレン;および5−〜10−員芳香族ヘテロ環式環としては、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾールおよびピラゾールが挙げられる。
【0027】
アリールアルキルは、アリール環に付加されたアルキル残基を意味する。ベンジルおよびフェネチルが例である。ヘテロアリールアルキルは、ヘテロアリール環に付加されたアルキル残基を意味する。ピリジニルメチルおよびピリミジニルエチルが例示される。アルキルアリールは、付加された一または二以上のアルキル基を有するアリール基を意味する。トリルおよびメシチルが例示される。
【0028】
アルコキシまたはアルコキシルは、酸素を介して親構造に付加された、炭素数が1〜8の、直鎖状、分岐鎖状、環式およびそれらの組み合わせである基を意味する。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、およびシクロヘキシルオキシが例示される。低級アルコキシは、炭素数1〜4の基を意味する。
【0029】
アシルは、カルボニル基を介して親構造に付加された、炭素数が1〜8の、直鎖状、分岐鎖状、環式、飽和、不飽和および芳香族ならびにそれらの組み合わせである基を意味する。親化合物への付加点がカルボニルを維持する限り、アシル基の一または二以上の炭素が窒素、酸素または硫黄で置換されてよい。アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルが例示される。低級アシルは、炭素数1〜4の基を意味する。
【0030】
ヘテロサイクルは、1〜3個の炭素が、酸素、窒素または硫黄のようなヘテロ原子で置換されているシクロアルキルまたはアリール残基を意味する。本発明の範囲に入るヘテロアリールとしては、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として現れる場合は、一般的に、メチレンジオキシフェノールと呼ばれる)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、ジオキサン、ならびにテトラヒドロフラン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、およびトリアジンが挙げられる。
【0031】
置換基は、限定はされないが、アルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールのような構造単位を意味する;ここで、残基の3個までのH原子は、低級アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ハロアルキル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルコキシ、カルボキシアミド、アシロキシ、アミジノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、OCH(COOH)2、シアノ、1級アミノ、2級アミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジロキシ、ヘテロアリールまたはヘテロアリーロキシで置換されている;前記フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリールおよびヘテロアリーロキシの各々は、任意に、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、ハロアルキル、アルコキシ、シアノ、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、カルボキサミド、ヘテロアリール、ヘテロアリーロキシ、ニトロまたは−NRR(ここで、Rは独立してH、低級アルキルまたはシクロアルキルであり、−RRは融合して、窒素との環式環を形成してよい)から選択される1〜3個の置換基で置換される。
【0032】
ハロアルキルは、一または二以上のH原子がハロゲン原子で置換されているアルキル基を意味し、ハロアルキルという用語はパーハロアルキルを含む。本発明の範囲に含まれるハロアルキル基としては、例えば、CH2F、CHF2およびCF3がある。
【0033】
ここで用いられる任意の数値は、低い値から高い値への1単位ずつの全ての値を含むが、いずれかの低い値と高い値との間に少なくとも2単位のひらきがあるものとする。例えば、成分の量が、または例えば温度、圧力および時間等のようなプロセス変数の値が、1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると述べられた場合、この明細書においては、15〜85、22〜68、43〜51、および30〜32等の値が、明確に列挙されるものとする。1より小さい値については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1と考える。これらは、具体的に示された実施例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、本出願において同様に明確に述べられていると考えるべきである。
【0034】
(実施例)
<実施例1:コポリマー合成>
材料:α−メチレン−γ−ブチロラクトンはTCIから入手し、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルは全てAldrichから入手した。全て、使用直前に塩基性アルミナカラムを用いて禁止物質から精製した。
【0035】
一般的重合手順:真空フラスコに、溶媒としてのγ−ブチロラクトンと共に、意図する組成に基づいて必要な量のスチレン、アクリロニトリル、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、メタクリル酸メチルを仕込んだ。ラジカル開始剤としてAIBNを加えた。必要であれば、連鎖移動剤を加えることができる。濃度は、反応発熱を回避するために、50%未満、好ましくは30%に維持した。融解時に窒素パージする凍結−融解サイクルにより、フラスコを2回脱気した。加熱用オイルバス温度を65〜70℃で4時間維持し、次に、室温まで冷却した。ポリマーサンプルをメタノール中で2回沈澱させ、低温真空炉で一晩乾燥した。ポリマー組成を、定量C13分析により決めた。
【0036】
Mwが30〜220kダルトンである、ポリ(スチレン−コ−アクリロニトリル−コ−メタクリル酸メチル−コ−α−メチレン−γ−ブチロラクトン)を異なる比で作った。組成および分子量を表1に示す。
【0037】
分子量および多分散度は、移動相として3.6%(v/v)のイソプロパノールを含むクロロホルムを用いて、Polymer Laboratoriesサイズ排除カラム(PLgel 5μm MIXED−C、300×7.5mm、40℃に維持)を備えたPerkin Elmer Series 200 GPCにおいて、ポリスチレン標準に対して決めた。
【0038】
gは、Perkin−Elmer DSC−7にてPyrisソフトウェアを用いて測定した。典型的DSCサンプル寸法は5〜10mgとし、DSC加熱および冷却速度は20℃/分とした。結果を表1に示す。α−メチレン−γ−ブチロラクトンを約20〜30モル%含むポリマーのTgは、α−メチレン−γ−ブチロラクトンを用いない組成よりも、約20〜30%増加した。
【0039】
Perkin Elmer TGA 7を用いて、10℃/分の加熱速度で温度を走査しつつ、TGAサンプル(3.5〜7.0mg)を空気中で試験した。TGA分析も、コポリマーが、少なくとも350℃まで熱的に安定であることを示した。
【0040】
【表1】

【0041】
<実施例2:耐候性決定>
Carverプレスにおいて、シムとしてテフロン被覆アルミニウム箔を用いて、温度約160℃および圧力4000psiで、ポリマー粉末サンプルを圧縮成形して、厚さ約100ミクロンのフィルムとした。そのフィルムをアルミニウムフレーム上に乗せ、Atlas Ci4000キセノンアークウェザオメーター中で露光した。キセノンアークランプは、日光を最適化するための、CIRA(IR−反射性石英)内部フィルター、および、ソーダライムガラス外部フィルターを有していた。サンプルを、340nmにて0.75W/m2/nmの照射量で連続的に照射した(スプレー期間を除く)。相対湿度30%にて、ブラックパネル温度は55℃であり、空気温度は35℃であった。サンプルは、1週間に1回、30分間の水スプレーを受けた。
【0042】
GretagMacbeth ColorEye 7000Aスペクトロメーターを用いて、転送モードで色測定を行った。ASTM D−1925に従ったイエローインデックスとして、色を報告する。結果を図1に示す。MBLコポリマーの全てが、市販のSANまたはMMASANより黄変しなかった。
【0043】
<実施例3:耐溶媒性>
フィルムを、SANおよびMMASANと比較した、強塩基および有機溶媒への耐性について試験した。実施例2に示された手順を用いて、MBLコポリマーフィルムを調製した。フィルムを結晶化皿に入れ、試験薬品の一滴(25μL)を分注ピペットによりフィルム表面上に乗せた。サンプルを含む皿を、65℃の炉に1時間入れた。フィルムに視覚的損傷があるかどうかについて、合格または不合格の観察を行った。結果を表2に示す。MBLコポリマーは、向上した耐薬品性を示した。
【0044】
【表2】

【0045】
<実施例4:多層物品>
調製:MMASAN530、PMMA、SAN581およびMBL(#33、#38および#41)サンプルについて、クロロホルム9mL中のキャップ層(caplayer)ポリマー2.0gおよびTINUVIN(登録商標)1577UV吸収剤(Ciba Specialty Chemicalsの製品)0.02gから溶液を作った。組成を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
溶液を、ガラスプレート上に注ぎ、10milドクターブレードを用いて延伸し、溶媒を蒸発させた。フィルムを、水を用いてガラスから浮かせ、さらに、強制換気炉において65℃で2時間乾燥させた。最終的なフィルムは、厚さが約40ミクロンであった。フィルムの一部を、2%二酸化チタン顔料を含むLexan(登録商標)140ポリカーボネート樹脂の2 1/2"×2 1/2"×1/8”プラーク(plaque)の上に積層した。積層は、165℃の加熱プレスにおいて、接触圧にて3 1/2分間、続いて4000psiにて1分間、および6000psiにて1/2分間行った。キャップ層を、ポリカーボネート樹脂に強固に接着させた。キャップ層を有さないサンプルは、非積層Lexanポリカーボネートプラークとした。
【0048】
<実施例5:耐トルエン性>
トルエン一滴を、サンプルの表面上に、室温で1または2分間乗せ、次に、綿棒を用いて拭き取った。表面を損傷について視覚的に評価し、無し、ごく僅か、僅か、ひどい、または非常にひどいとして判断した。結果を表4に示す。結果は、チューリパリン含有サンプルは、トルエンに対して良好ないし優れた耐性を有しており、スチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルのコポリマーは、耐性が非常に劣っていることを示している。
【0049】
【表4】

【0050】
<実施例6:多層物品の促進された耐候性>
サンプルを、表5に示す条件にて、Atlas Ci35aキセノンアークウェザオメーター中で露光した。340nmで測定した2785kJ/m2/nmの露光期間後に、サンプルを取り出した。この量の露光は、フロリダ州マイアミでの約1年間に相当する。色の変化は、ASTM D 1925により定義される黄変インデックス(ΔYI)における変化として、Macbeth Coloreye 7000Aスペクトロメーターにより測定した。結果を表4に示す。これらは、チューリパリン含有コポリマーから作られた積層体が、非積層ポリカーボネート、SAN積層体より色変化が小さく、MMASANコポリマーよりも優れているか匹敵していることを示している。
【0051】
【表5】

【0052】
本発明の特定の特徴のみをここに示して記載したが、当業者は多くの改良および変更をすることができる。従って、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような改良および変更が、本発明の真の精神の範囲に入るように包含していると解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】スチレン−アクリロニトリルコポリマー、またはスチレン、アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルのコポリマーと比較した、MBLコポリマーの耐候性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、メタクリル酸メチル、および任意にアクリロニトリル、から誘導される構造単位を含むコポリマー。
【請求項2】
アクリロニトリルから誘導される構造単位を含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
α−メチレン−γ−ブチロラクトンから誘導される構造単位の量が、合計重量を基準に、約10重量%〜約75重量%、好ましくは約20重量%〜約35重量%の範囲である請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
スチレンから誘導される構造単位の量が、合計重量を基準に、約20重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%、より好ましくは約20重量%〜約40重量%の範囲である請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
メタクリル酸メチルから誘導される構造単位の量が、合計重量を基準に、約5重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約45重量%、より好ましくは約15重量%〜約45重量%の範囲である請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
アクリロニトリルから誘導される構造単位の量が、合計重量を基準に、約0重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約35重量%の範囲である請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
基材とその上に配された少なくとも一つの保護層とを含み、その少なくとも一つの保護層は、α−メチレン−γ−ブチロラクトンコポリマー、および任意に少なくとも一つのUV吸収剤、好ましくは2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシ−フェノール、を含んでなる多層物品であり、前記α−メチレン−γ−ブチロラクトンコポリマーが、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、メタクリル酸メチル、および任意にアクリロニトリル、から誘導される構造単位を含み、前記基材がUV感受性材料を含む多層物品。
【請求項8】
さらに、前記保護層の上に配されたシリコーンハードコートを含む請求項1に記載の多層物品。
【請求項9】
シリコーンハードコートと、
α−メチレン−γ−ブチロラクトンから誘導される構造単位を含むコポリマー、および任意に少なくとも一つのUV吸収剤、好ましくは2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシ−フェノール、を含む少なくとも一つの保護層と、
UV感受性材料を含む基材と
を含む多層物品。
【請求項10】
前記コポリマーが、さらにメタクリル酸メチルから誘導される構造単位を含む請求項9に記載の多層物品。
【請求項11】
前記コポリマーが、さらにスチレンから誘導される構造単位を含む請求項9に記載の多層物品。
【請求項12】
前記コポリマーが、さらにアクリロニトリルから誘導される構造単位を含む請求項9に記載の多層物品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−517538(P2009−517538A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543408(P2008−543408)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045644
【国際公開番号】WO2007/064680
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】